ミッションズ・オブ・リング ~知ってるも何も…~
それは、いつもの出来事。
「やれやれ。今度はここですかぁ。」
まったくどうして。
それでなくても…うううううっ。
思わずなきたくなってしまう。
いや、自分にはそもそも涙なんてものはないのであるが。
「そもそもですねぇ。まさかあの『御方』があのような形でううっ。
しかも、誰にもいったりしたら駄目なんて…よく僕、今の今まで滅びませんよねぇ…」
はぁぁぁ~。
ため息のひとつでもつきたくなるものほぼ道理。
何しろ、ことの起こりは、一年前。
あの少女が誕生したときから。
「一応、あのリナさんとガウリイさんのお子さんですからご挨拶がてらに向かったのはいいんですけどねぇ~…」
まさかそこで、想像すら絶する事実を目の当たりにすることになろうとは。
それ以後-。
どちらかといえば、母親と同じように便利なアイテム扱いをされている節があるのだが。
まあ、それは仕方がない、というかどうにもならない。
何しろ、逆らうことなどはできはしないのだから。
だからこうして。
前々からのお仕事。
写本の処分。
それで気を紛らわせているのは、仕方ない、といえば仕方がないと言っても過言ではない。
そう、自分自身にと言い聞かせ。
「ここにくるまで、とりあえず、盗賊さんたちを百件壊滅ですかぁ。何か僕、リナさんみたいですねぇ。あっはっはっ。」
などと笑いつつも。
その手にもった錫杖をすっと目の前にと突き出しつつ。
「まあ、冗談はほどほどにして…ここが次の写本のあるところですか…」
いいつつも、その手にした書き物をしみじみと眺める、
にこにことした笑みを浮かべる、どこにでもあるような真っ黒い神官服をまとった青年が一人。
そのまま。
すたすたと。
人気のない森の中に突如としてぽつんと存在するその建物の中にと。
そのまま、すたすたと足を踏み入れてゆく。
「な゛!?まさか!?高位魔族召喚?!」
思わずリナは身構える。
まさか、どうみても、雑魚、としかいいようのないこんなあからさまに怪しい人物が。
そんな彼らには手には負えないようなものを召喚できるとは。
はっきりいって考えも及ばないこと。
リナがそんな考えをめぐらせている間にも。
その場にとやってきた九人がそろって地面にその各自にともったレイピアを、地面にと向け、
そしてそのレイピアの形にて、逆五寶星を形作る。
地面にと浮かび上がる、淡い光を放つ、逆五寶星。
それは、正なる力の流れを負にと変える要素をもつ。
リナが身構えるのとほぼ同時。
その地面にと浮かび上がった魔法陣-逆五寶星のその中心に。
やがてひとつの影が浮かび上がる。
「―くっ!」
見た限り、どうもかなりの高位魔族だと、あたりに満ちる力の具合で判断ができるが。
だがしかし。
「お…おや?リナさんじゃないですか?」
そこに出現したのは、なぜか、顔色も悪くそれでいてなぜかやせこけたようにと見える、
見覚えたくはないが、よく見知っている人影ひとつ。
「ご、ごほっ。げほげほっ!」
人間がむせこむ、というのはこういった感じなのか。
などとも思うが。
だがしかし。
実態を保つのがこれほど苦しく感じたのは今までにないかつてないほどの脅威。
しかも、たっているのも何かよろよろとしてしまうような気がするのは。
自分が完全に人のそれにと擬態しているからか、それともほかに原因があるからなのか。
そんなことを彼は思うが。
「ゼ・ゼロス!?」
思わずリナがその姿を目にして叫ぶのもほぼどうり。
そこに出現したのは、リナがよく見知りおいている、とある魔族。
リナいわく、パシリ神官、またはゴキブリ神官と呼んではいるが。
「い、いやぁぁぁ。お、お久しぶりですねぇ…」
ぜいぜい。
そういう声もまたかれてしまう。
そんなかすれた、しかも息を乱しつつ、いかにも病人かもしくはかなりの重病人。
そんな態度を見せているそんなソレをみて、思わず唖然としているリナ。
まあ、さもありなん。というところであろうが。
「あ、あんた、何?!精神生命体なのになんかやつれてる?!
つーか!何、一応、仮にも、降魔戦争の【竜を滅する者(ドラゴン・スレイヤー)】ともあろうモノが。
何あんた人間なんか、しかもこんなやつらに召喚されてんのよ!?」
リナの叫びもほぼ道理。
「い、いやぁ、それがですねぇ。僕たち、というか僕たち魔族って人間なんかの負の感情を糧にしてるじゃないですか…
で、逆に好感情をもたれてしまうと、本来の力をどんどん失ってしまう、
というか一時期ではありますけど弱体化してしまうんですよねぇ~いやぁ、以外な弱点があったものです。はっはっはっ」
いいつつもよろよろとどうにか錫杖を支えに立ち上がる。
「いや、あたしがいいたいのは…」
そこまでいって、はたと気づき。
「ん?好感情?って??」
意味がわからずに首をかしげるリナ。
そんなリナの言葉と、そこに現れた、これでも一応は魔族である、獣神官ゼロスの出現とほぼ同時。
『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
黄色い歓声の声が辺りにとこだまする。
「か~わ~い~い!」
いいつつ、腕を胸の前でくみつつ、その頭からかぶっていたローブを下ろし、素顔を見せたそこには九人の女性たち。
一人はそんなゼロスの様子にまるで悶えつつ、頭を左右に振りながら、ゼロスの名前を連発し。
あるものは、かわいい。かわいい。という言葉を連発し。
「ゼロスさまぁぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁぁ!なぞめいた雰囲気が素敵ぃぃい!」
「きゃぁぁぁぁ!こっちむいてぇぇぇぇ!」
などといった、女性たちの黄色い歓声の声が響き渡る。
ずざっ。
そんな声を聞くと同時に。
一瞬ではあるがそこにあるゼロスの姿が一瞬透けかけるが。
「…あ、面白い。」
まるで素直なまでの感想をぽつりと漏らしているリナ。
あのゼロスがここまでなるなんて、めったと見れるもんではないわね。
などとリナは思っているのだが。
「いくわよぉ。いっせぇの!」
そんなリナがつぶやきをもらすのとはまた別に。
先ほど、リナ達を襲ってきた刺客達、およそ九人。
彼らは全員が女性であったことが、今彼女たちは頭のローブを下げているので見ても明らか。
デモンサモナー・ナズグル九人衆たち。
そんな彼女達の一人の言葉と同時に。
全員が全員にっこりと。
ものの見事に寸分たがわずに、右手を少しあげ、そして人差し指を右の頬にとあて。
そして、少しばかり首をかしげ。
『それはヒミツでぇぇぇ~す♡』
などと異口同音、しかも、動作まで同じにしつつ、にこやかにと黄色い声を上げつつ言い放つ。
「ぐはぁぁぁぁ!」
もういやだぁぁぁぁぁ!!!
そんな彼女達の言葉に本気で涙を流しているゼロス。
そもそも、涙なんてものは彼らもまた具現化させているのではあるが。
だがしかし、無意識のうちにそこまで細かく具現化しているゼロスもまたゼロスなのだが。
そんな彼女達やゼロスの様子をみつつ。
…ゼ…ゼロスファンクラブ?もしかして??
・・・・・・・・・・何考えてんだろ・・・・この人たち・・・・・
至極当然な疑問がリナの中にと浮かび上がる。
「あんたたち…コレが何者かわかってんの?姿だって擬態だし。
こいつの本体はゴキブリみたいな、曰く黒い三角錐みたいなやつなのよ?
まあ、ゼロスの本体を真正面から見たことなどはないが。
だが幾度か。
ゼロスがそんな三角錐の黒い錐を使い、敵を倒したのは見たことがある。
そう。
ラーシャートの一件のときや、かつてとある一件でサイラーグに向かっていっていたそのときに。
「うっうっうっ。リナさぁぁぁぁん…」
どうにかリナに救いの手を頼んでいるゼロス。
ゼロスからすれば、今の状況からどうにか逃げ出したいのが本音。
「つーか、何あんた、こいつらなんかに召喚されてんのよ?」
あっけにとられつつ、どうにか錫杖を頼りにふらふらと立ち上がっているゼロスをみつつ。
少しばかりそんなゼロスの様子をこっけいに思いつつもあきれつつも問いかける。
もっともな疑問、といえば疑問であろう。
そもそも、これでも、このゼロスは…
「うん?リナ殿?知り合いかの?」
そんな様子をみつつ、ひげを相変わらず触りつつ質問してくるマッケラン。」
「知り合いたくはないけどね。このゴキブリ魔族。これでも一応は高位魔族で。獣神官ゼロス。
一応こんなやつだけどこれでも腹心の次に魔族の中では実力のあるやつみたいだけどね。
実際はしがないお役所神官、またはパシリ魔族以外の何ものでもないという…」
うん、我ながら的確な表現ね。
リナは自分でそんなことを思うが。
「うっうっうっ。リナさん…ひどい…」
そのままその場にて膝をつき。
いじいじと、よろめく手の先にもった杖の先にて【の】の字を地面にと書き出すゼロス。
そんなゼロスの様子をみつつ。
「きゃぁぁぁあ!いじけたゼロス様ってかわいー!!」
「きゃぁぁあ!ゼロス様、こっちむいてぇぇ!きゃぁぁぁあ!」
などといまだに九人の黄色い声がこだまする。
「…つーか。あんたら、何こいつなんかのファンクラブみたいなことしてんのよ?」
とりあえず、ゼロスがいじけるのはまあいつものことなので完全にと無視し。
ゼロスに黄色い歓声の声を上げている、ナズグル九人衆にとむかって、とりあえず質問を投げかけているリナ。
そんなリナの言葉に。
堂々と胸をはりつつ。
「ふっ!おろかな!」
などといいつつ、その両手を腰にとつけ。
胸を張って言い放つ、ナズグル九人衆のうちの一人。
そして、そんな九人衆のうち、というか彼女達の仲間の言葉にさらにと続け。
「私たちは人物萌えだけがすべてなのよ!
つまりは美形、もしくはかわいければそれでよし!さらに謎差加減が加わるとさらによし!」
ぴしっ!
おーほっほっほっ!
高らかに笑いつつ、左手を腰にとつけ、右手は人差し指を少し挙げ、ピシャリと言い放つ、ナズグル九人衆のうちの一人の女性。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
な、何かんがえてんだ?こいつらは??
そんな女性の言葉に思わずリナは目を点にするが。
「何!あのちんちくりん!ゼロスさまをなれなれしく『コイツ』だなんて!」
「きぃぃい!許せないぃぃぃぃい!」
などと、リナに対してそんな声を投げかけている一部の者たちもいたりするのだが。
「町の掲示板に悪口書き込んでやりましょう!」
「リスクも責任も背負わずに匿名で安全な位置から他人を誹謗中傷するのって最高よね!」
などといって意気投合しつつ、熱くなっている女性たちも一部いたりするが。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そんな彼女達をみてさらに無言になっているリナ。
そして、とりあえず、いまだにいじけているゼロスにと視線をうつし。
「…あーた、何だってんなやつらに召喚軽々しくされてんのよ?一応はいくらバシリ神官でもあんたは高位魔族でしょうに?」
あきれつつもとりあえず気にはなるのでゼロスにと問いかける。
「うっうっうっ。聞いてくださいよぉ。僕、彼女達にだまされたんですよぉ…」
というか。
瞳に涙をうるうるさせ、膝をついた魔族など…どこの世界を探してもまずはお目にかからないであろうが…
「少し前にお仕事で写本の処分をしに彼女達がもっていたそれを処分させてもらったまではいいんですけど…」
いいつつ、涙ながらにゼロスによる説明が開始される。
だがしかし、そんなゼロスとリナの会話を目にし。
「ああ!あの胸なし女!私たちのゼロスさまとお話なんかして!」
―ぷちり。
そんな一人の女性の言葉にリナの中で何かが切れる。
リナには一番の禁句…
「誰が胸なしじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!まとめてふっとべぇぇぇえ!ドラグスレイブ!!!!!」
ドゴガァァァァン!!!!!!
「おー、よくとんだのぉぉぉぉ。」
カオスワーズの詠唱がなかったがゆえに、威力はかなり極力少なくなっているものの、
それでもやはり、人一人というかちょっとした集団を吹き飛ばす威力は十分。
黒こげになりつつ吹き飛ばされてゆく九人の女性たちを目の前に手をかざしつつ眺めて、
のんびりとそんなことをいっているマッケラン。
さすが、こちらもまたゼフィーリア出身の魔道士なだけあり、こういったこと程度では動じる気配は微塵もない。
「ぜいぜい。まったく…。」
パンパンバン。
とりあえず、ウザったい、というか邪魔なナグズル九人衆は吹き飛ばしたことだし。
などと思い、手を軽くはたきつつ。
そして、きっと、その視線をゼロスにとむけ。
「んで?どうしてアンナヤツラにあんたは召喚なんかされてるわけ?意味もなく?」
そういうリナの目は完全に据わっていたりする。
「…リ…リナさん…目が据わってます…そもそもはですねぇ…」
だらだらと何か精神的に追い詰められる感覚にと陥りつつ。
無意識のうちに、冷や汗を大量に全身から噴出しつつ。
さすがは高位魔族、といったところか。
こういった変なところまで凝るのが、高位魔族の特徴なのか…それは誰にもわからないが…
何しろ彼らの本体は、実態のない、というか物質世界では実態のない、精神生命体。
彼らの本体は、精神世界面(アストラル・サイド)というところにと存在し。
それらの本体を見たことのある人間など、はっきりいって皆無。
こうして今リナの目の前にいるこの姿というか実態は、彼らがその力をもってして物体的に具現化させたもの。
つまりは人を模した擬態。
ゆえに、そのすべてが彼らの力をもってして具現化させているのである。
汗ひとつにしろ、服にしろ、何においても。
まあ、こういった細かい細工?といえるのかどうかわからないが。
こういった細かなところまでができるのもまた高位魔族の特徴ではあるらしいのだが…
何はともあれ。
ゼロスは精神的にリナにと脅迫されているような感覚を覚えつつ。
― もし、ここで本当のことをいわなかったら。あの、レイナさんの中にいらっしゃるあの御方にどんな目にあわされますか…
ゼロスからすれば、選択肢など…あるはずもなく。
どうしてあんな彼女達にと召喚されるにいたったのか。
その経緯をかいつまんで説明を開始してゆく……
-続くー
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今回は。
ほとんど漫画と同じですv(おいこらまて!)
なので、突っ込みは・・・あってもいいけど非難はやめてねv(笑
何はともあれ、いっきますv
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あとがきもどき:
薫:参考。このたびの話は、ほとんど、ドラゴンオールスター青版。
スレイヤーズ『指輪道』あれとほぼ同時、というか同じですv
見比べてみたらわかりやすいですよーv(笑)
ちなみに。
ゼロスがどうしてあんな女の子たち、というか女性たちに召喚されるにいたったか。
そのエピソードも考えてみたりとか。
自分的にはゼロスらしい理由と思うんですけど…どうですかねぇ?
とりあえず、次回はゼロスの召喚されることにいたった理由・・・かな?
何はともあれ、ではまた、次回でv
2004年2月5日某日
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