過去からの希望―第4話―


「わーいvv」
「あ゛あ゛!!リナ様!!走っては危ないですぅぅぅ!!!!」
栗色の髪の二歳程度の子供に。
必死になって、叫んでいる黒い服を基調とした、神官風の男。
おかっぱの紫の髪がかぜになびく。
「ぜろちゅ!!おちょい!!」
つたない口調でいう子供。
今日は、いつも、一緒に、常に側にいるお気に入りの男性が、側にはいないが。
代りに、このゼロスが自分の付き添いである。
今日は、ちょっと、遠出。
いつもは、必ずといっていいほど自分の側にいる金髪の男性は、本日は、少女の家の手伝いで合流が遅れているのである。
少女の名前は。
リナ。
リナ=インバース。
二年前、とある出来事をきっかけとして、子供へと変わったリナ。
世間では、リナ=インバースが死亡したとか、根拠のない噂が流れていたりするが。

ゼフィーリア王国。
ここは、毎回のことながら、リナの出生に関しては・・・。
頭を悩めるだけである。
いつ、元に戻るのか。
はたまた、このまま、また年月を重ねて大きくなっていくのか。
前回は、普通の人間同様に、成長した。
だが・・今回は??

すこし、勝手が違う。
リナは、自らのどうしようもない感情を抑えるために。
そして・・・・
最も大切な人を裏ぎりそうになってしまった自分が許せなかったために。


・・・結果として。
精神の安定のために、子供へと帰りゆいたのだ。

そして。
リナを世界よりも、自らよりも、大切にしていたその人もまた。
リナの子供への変貌により、・・・自らの存在意義を覚醒し。
ルナに頼み込んで、リナの側に、常にいるのである。
リナはまだ思い出してはいない。
過去のことも自分が本当はどんな存在なのかも。
そして、前回、自分が理解していた感情も。
だが・・・
心から引かれていた存在だけあって。
気がつけば、その人間・・・・・。
ガウリイ=ガブリエフは、リナの最も好きなお気に入りの人物となっていた。
かつての、誕生して間もないときと同じように・・・

ルナとしては、見守るしかない。
そして、ガウリイとしてもまた。
自分のことを思い出してもらえなくても。
消滅してまでも、リナを今度こそ、守り抜く。
そう硬く誓っているのである。


『もし、失敗するとそなた、消滅。それとあの子にはおまえに関する記憶・・消すから。』

かの御方に言われているその言葉。
それが何を意味するのか、ガウリイにはよくわかっていた。
だが・・・
それでも。
自分が転生すらもままならなく、完全に消滅しようとも。
リナを守りたかったのだ。
最も大切な存在ゆえに―。

期限は100年。
その間、もし、リナがガウリイを思い出さなかったら・・・・。
そして、もし、リナがガウリイに惹かれなかったら。
彼・・ガウリイ・・いや、スティファレス世界の神魔の王。
碧玉の王(スティファランス)カウチェリィキルティッシュ=スティルバイトは。
この世界から完全に存在そのものから、全てが消滅するにも関らず。
リナをあの御方より預かっている存在としてはあまり面白くないが。
唯一、自分と対等に剣の手試合ができる存在ゆえに。
その存在…ルナ。
この世界・・・いや、この世界の神を任されている。
赤の竜神(フレアドラゴン)ルナティック=スィーフィード。
そして、リナの世間表面上の姉―。


ざわり・・・。
「くっ・・・しまった!!!!」
かっきぃぃぃぃん・・・・・
水晶に全てのものが捕らえられる。
「くぅ!!」
「無駄だ。スィーフィードごときの力では我には勝てん。」
にやりと笑う漆黒の髪の男性。
「くぅ!!!あんた・・!!ラグール!!!!リナ様に手出ししたら!!!」
ルナが叫ぶ。
何とかしてその束縛より逃れようとする。
だが。
この漆黒の髪の男性、ラグールは。
ルナよりも、はるかに強い存在なのだ。
元は、彼もまた、一つの世界の神魔の王であった。
だが。
彼は、今。
世界そのものに、反逆する―。
いわゆる、反逆者と成り果てている。
「・・まさか、こんな所に、金色の王が隠していたとはな・・・。」
にやりと笑うラグール。
「そこで、待っているがいい。・・・・時期・金色の王が殺される様をな!!はははは!!!」
ゆらり。
そのまま、姿が解け消える。
「・・・・ラグゥルゥゥ!!!リナ様ぁぁぁぁ!!!!!」
ルナの悲鳴がこだまする。


「・・・きゃ!!」
どん。
リナは誰かにぶつかる。
「・・・・誰?おじちゃん?」
お・・おじちゃん・・・・。
ぴくぴくとこめかみを痙攣させている漆黒の黒髪の男性。
ストレートの髪が、風もないのに、なびいている。
「ほぅ・・・。これはこれは・・・・・・」
好都合だな。
彼―ラグールはにやりと笑った。
これは、好機だ・・・と。
面影は似ても似てつかないが。
感じる気配は間違いなく・・・・リナのもの。
「・・・・!!!!!リナ様!!!!」
ごうぅぅぅぅ!!!!
紫の髪の男性が、あわてて、結界をはり、リナを守る。
「ふん。獣神官ごときが!!我の邪魔ができるとでも!!」
いって、結界をすんなりと破壊する。
「・・きゃ!!・・・・あ!!りなの!!」
リナの指にはめられていたガラスの指輪が今の衝撃で転がって行く。
リナがもっとも気に入っているなぜか自分の名前が入っている指輪は、リナには大きすぎて指にははいらない。
だから、それは、いつも、ネックレスにして首にかけている。
リナが指に入らない。
といって、泣いていたら、彼が買ってくれた。
玩具の指輪。
とりあえず、今は、これでな。
ぽんぽんとリナをかるくわらってあやしてくれたお気に入りの人。
「まって!!」
リナは、それをつかもうと、無謀にも、攻撃が吹き荒れているその場所へと移動してゆく。
「リナ様!!」
ゼロスがいうが、ゼロスもまた。
あまりの力の大きさに、力をそがれて動けない。
― 力によって、束縛されているのだ。
獣神官ゼロス。
この世界の赤瞳の魔王(ルビーアイ)レイスアナ=シャブラニグドゥの五人の腹心の一人。
獣王(グレータービースト)ゼラス=メタリオムの直属の部下。
神官と将軍の力を兼ね備えた。
腹心以外では、並ぶもののない、この世界の魔族では力の持ち主。

だが。
次元が違うのだ。
今攻めて来たこいつは。
てくてくと、無防備なリナ。
「しねぇぇぇ!!!!ネオ・ロードオブナイトメア!!!!」
ラグールの手に、力が収束する。

きぃぃぃぃぃぃんんんんんんんんん!!!!!!!


「ま・・・・間に合った!!!!」
「あ!!がうりいだぁぁぁ!!!」
抱きついて喜んでいるリナ。
ガウリイは、寸前のところで、リナを保護する。
人の身体にも関らず、空間を渡ってきたガウリイ。
「・・・ガウリイさん!」
ゼロスが叫ぶ。
「・・・ゼロス!!リナを頼む!!」
いいつつも、リナを安全な場所に移動させ。
ラグールへと立ち向かってゆくガウリイ。
「ふっ。人間に我がどうにかできるとでも?」
「命に代えてもリナは守ってみせる!!」
きぃぃぃぃんんんん!!!!
ば・・馬鹿な!!
ガウリイからくれだされる剣技は。
まぎれもなく、人のそれではない。
「貴様・・人間にしてはやるな!!だが!!」
きぃぃん・・
人には聞きなれない言葉が紡ぎだされる。
だが、ガウリイは、それをあっさりと剣で無効化させる。
「りなのなの!!」
まだ、指輪があきらめきれないリナ。
いいつつ、また指輪を拾いに戦いが続いている方向へと進んでくる。

「・・危ない!!」

ガウリイがとっさにリナをかばう。

つぅ・・・

ガウリイの頬から一筋の血。

「がうりい・・がうりい!!」
リナはそれをみて、悲鳴を上げる。
「ほら。リナのだろ?」
にっこりと笑う彼の手には、リナの指輪が握られていた。
「ほら、これもって、ゼロスのとこにいろ。」
「・・・いたい?いたい?がうりい?」
リナが心配そうにいう。
「・・・大丈夫さ。」
ちゅ。
リナの額にかるくキスをする。
「さ。」
「うん。がうりいにきずすけてら、だめだかなね!!」
ゼロスの方に向かいながらも、ラグールに一言いっているリナ。
根性はある。
「・・・・貴様、本当に人間か!?」
ラグールが驚愕する。
このガウリイ。
かなり人離れしている。
だが、感じる気配からは、まぎれもなく人のもの。
「大切なリナを守るためだからな!!」
ガウリイがひたと見据える。
「・・・人間が何をいっている!!わかっているのか!?あのリナが成長したら、どうなるか!!!!」
・・・・わかっているさ。
心の中で、リナを想うガウリイ。
リナは、かの御方の一部。
そして、リナはリナ。
そして、金色の母に継ぐ力の持ち主。
そして―何よりも、金色の母の一人娘。
この世界の混沌そのもの。
だが、彼にとっては、そんなまどろっこしい全てのことより、何よりも。
リナという一人の存在が。
世界よりも何よりも大切であった。
― それが、たとえ、自らが消滅する原因となろうとも。
身分がとうてい違いすぎるとも。
そして、金色の母に逆らってでも、リナを守りたいというその想い―。


「リナを傷つけるやつは許さん!!」
きぃぃぃぃんん!!!
激しく攻撃するガウリイ。
「・・・・!!!がうりい!!うしろ!!!!」
リナが気づく。
「・・何!?しまっ!!!!」

ごうっ。

きぃぃぃぃぃんんん・・・・・。

ガウリイが振り向くと同時に。
ガウリイの身体が水晶に包まれる。
「まったく・・・・何をやっている・・・・ラグールよ・・・・・・」
ラグールの後ろから、別の人物が現れ出でる。
黒を主体としつつ、どこか危険の雰囲気をかもし出している。
「・・・・・・・・・・・!!!!アザチェス!!!!」
ガウリイが叫ぶ。
最も、危険な存在。
すきあらば、金色の母を倒し、自らが混沌になろうとしているもの。
それが・・・アザチェス。
到底無理のことだが。
だが、アザチェスは・・・それを出来ると勝手に信じ込んでいる。
それゆえに。
ことあるごとに。
金色の母に反逆するものを集めて、反逆者の組織を作り上げているのだ。
言ってみれば、反逆者の親玉。
影の王。
リナを殺し。
その力を取りこむことで、それは格段に手間隙が早くなる。
そう感じている彼は・・・・。
昔から、リナの存在を知った直後から、リナを付けねらっているのである。
「ほぅ・・・・。我を知っているのか・・・人間よ・・・・。では、そのまま、見ているがいい・・・。我が世界に近くなる瞬間をな!!」
ふはははは!!
笑いながら、リナに近づいていく。
「リナ様!!」
ゼロスが必死に防御するが。
「無駄だ!!」
「ぐわっ!!!」
「ぜろちゅ!?」
あっさりとゼロスははじかれる。
「さぁて、観念してもらいましょうか??時期悪夢を統治する存在よ(ネオ・ロードオブナイトメア)よ。」
・・・・?
リナはどこかで聞いたことがあるその名前に、首をかしげる。
「リナ!!」
ガウリイは束縛から逃れようと、必死である。
力を使えば、簡単である。
だが・・・・。
一度、使ってしまうと。
制約に違反することとなり。
だから、自力で、中から逃れようとする。
「・・・・五月蝿いですよ・・・・。」
アザチェスがガウリイの捕らえられている水晶をにらむ。

・・・びし。

水晶に入るヒビ。


どくん・・・・。

リナの心臓が高鳴る。


― これは、人の魂を結晶化させたもの。つまり、これを砕けば本当の死さ ―。

頭の中に声がする。
どくん。
どくん。

―まだやらないんだ。ふぅん。じゃあやっぱり、誰か殺さないとわからないんだね。・・そうだ。彼にしよう。どうせもうすぐ死んじゃうんだし。―

黒い髪の少年が水晶に力を放つ。
水晶の中にいるのは・・・・・。


「い・・・・・・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」


ごうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!


「な゛!?」
「アザチェスさま!!!」
とっさにアザチェスをかばうラグール。
「くっ!!!!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

どおおおおぉ・・・・・・

リナの感情の爆発に伴って。
・・・・あふれ出る混沌の力。
・・いけない!!!
このままでは、リナの精神が!!!
このままでは、リナは暴走した自分の力に傷ついてしまう。
・・・・止めないと!!!!

ぱきぃぃぃぃぃぃぃぃんん!!!!!!!!!


ガウリイは、制約も何も無視して、・・・力を解き放つ。
『何!?』
驚愕するアザチェス。
すでに、ラグールは・・・リナから生まれでた混沌に飲み込まれている。
無差別にあれくるう混沌の闇の力。
「いやぁぁぁぁ!!!!!」
リナはわめく。
記憶が・・混乱しているのだ。
かつての出来事とが。
大切な人が死に掛けたときのことを思い出し。
同じ・・同じだった。
あのときも・・・。
ガウリイが水晶に閉じ込められて・・・・・。
「いやぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!!!!!!!」
リナの周りが蝕んでゆく。
「落ち着け!!!!落ち着け!!!リナ!!!!」
くぅ!!!!
瞬時に、水晶から抜け出たガウリイ。
・・いや、すでにその姿は・・・。
ガウリイ=ガブリエフのものではなくなっていた。
空色の瞳は碧玉の色と化し。
服もいたって、戦いに向いているシンプルなその姿。
長い金髪は変わりがないが。
人であったときよりも、その凄烈さは高まっている。
リナの力をその身にすべて吸収しながら、つよくリナを抱きしめるガウリイ。

とくん。
とくん。
暖かい・・・・。
懐かしいこの感覚・・・・
リナは包まれる暖かい想いに包まれ・・・・
ゆっくりと、力を治めてゆく。
リナから放出された力は、全てガウリイがその身に取りこんで。
リナの精神に傷をつけることを防いでいる。
その身に、混沌の力を取りこむとどうなるのか・・・。
それでも。
ガウリイは、リナを守りたかったのだ。

やがて、ゆっくりと、リナの力が収束し。
リナがふと気絶する。
「ふぅ・・・・。ゼロス・・・・リナを頼む。」
「す・・・スティルバイト様・・・(汗)」
ガウリイは、ゼロスの周りに、結界を張り。
リナには一切手出しできないように工夫する。
リナをゼロスに抱き上げて手渡してから。
ゼロスには分っていた。
もし、ガウリイが・・・本来の姿に戻ってしまうと・・・
・・・それは、完全に彼の消滅が決定してしまうということ。
そういう制約だったのだ。
あの御方の。
それが、いつ何どきになるかはゼロスも、またガウリイも知らない。

「・・・・なるほどな・・・。また貴様か!!!スティルバイト!!!!」
アザチェスが叫ぶ。
「アザチェス!!何回もいうようだが!!リナには絶対に手出しはさせん!!!」
「ほざけ!!!!何ゆえに、リナをかばう!!!そのものは、存在するものにとって、脅威にしかならないのだぞ!!!」
「違う!!!!」
吹き荒れる力の攻防。
精神世界においては、はげしくぶつかり合いが続いている。
ゼロスは、ただ、おろおろするしか統べはない。
精神世界からの移動で逃げようにも。
自分では今、精神世界に行ってしまえば、間違いなく滅んでしまう。
今、自分が無事なのも。
ガウリイ・・スティルバイトが結界を張って、自分の本体と、そして、リナを守っているからに他ならないのだから。


なるほど。
金色の王も考えたものだ。
まさか、スティルバイトがリナの側にいたとは・・・な。
リナの護衛をするにはうってつけだろう。
何しろ、このスティルバイト。
リナのためなら、命を賭してでも、なぜかリナを守り通す存在なのだから。
ほくそえむ、アザチェス。


「うん・・・。」
リナは目を開く。
何か・・・
自分はとても大事なことを忘れている。
「リナ様!!」
ゼロスがリナをかばう。
結界の中ですら、衝撃波が荒れ狂う。
「・・・・あ!!!!」
すばっ。
リナの大切に首から提げていた首飾りのチェーンが衝撃波で切れる。
先ほどのとは違って、一番大切な物が。
「だめぇぇ!!!」
「リナ様!!!!」
ゼロスが必死に止めようとするが。
ゼロスは吹きあれる衝撃波によって、身動き取れない。
ころころところがる、銀色のピンクのダイヤが生みこまれているそれ。
裏には、リナにもよめない文字が刻まれている。
唯一、リナに理解できるのは、
その文字の一部に、自分の名前が入っているということ。
ガウリイが、かつて、リナに渡そうと、作っていた・・・・。
・・・・婚約指輪が。
古代神聖文字で、リナを永遠に愛し守りぬく。
といった文字が刻まれているのだが。
リナはそんなこと、知る由もない。
ただ、ガウリイから貰った指輪だから。
一番、大切にしているその指輪が。
大切に、首飾りにしていつも身に着けていたのに。
それが・・・・地面に転がってゆく。



「!!!!!!!」
ガウリイがリナが結界より出たのに気づく。
「ふん!!!!」
そのすきを捕らえるアザチェス。
「リナ!!!!」 
ガウリイは、アザチェスとの戦いをすべて無視して。
リナの方へとゆく。
結界から出ると、リナが傷ついてしまうがゆえに。

どしゅ!!!!

吹き上げる鮮血。
リナが指輪を手にすると同時に。
リナに放たれた攻撃をガウリイがかばい。
ガウリイはまともに、背中に攻撃を受ける。
さきほど身に取り込んだ混沌が力を奪う。


「・・・???っ!!!!!!!」

目を開けたリナが見たのは。
真っ赤に染まるガウリイの姿。
小さな手には、べっとりと赤いものがついている。
・・・りなの・・・リナのせいで!!!!
誰よりも、好きな人が、自分を庇って大怪我している。
それがリナには衝撃を与えた。
「・・大丈夫か!!リナ!!」
その目・・その姿はいつもと違う。
でも、同じなのは・・・優しい目。
自分をすべて包み込み、守ってくれる優しい目。
空色の瞳ではないけれど、碧玉の目に宿る光は変わらない。

・・・・どこかで。

・・・・どこかで、彼には・・・・・・。

リナの思考が回転する。



「ふっ!!!そうか!!貴様!!スティルバイト!!!やけに、攻撃の手が鈍いとおもったら・・・・!!!
  貴様、さきほどのリナの力の暴走をその身に取りこんだな!!!!
  馬鹿め!!!!混沌の力をそのおまえごときがとりこんだら!!」
勝利を確信するアザチェス。
・・・混沌の力????
「させない!!!リナは・・リチェウスィは俺が守る!!!!!」
・・・・とくん。
傷を負ったまま、自分を殺そうとしている人物に立ち向かってゆくガウリイ。
・・・・どこかで。
・・・・・・・・・どこかで。
・・・・・・以前にもこの風景は・・・・・・。

「死ねぃぃ!!!碧玉の王(スティファランス)スティルバイトよ!!!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!!!!!

「だ・・・・・だめぇぇぇぇ!!!!!!!!!カウリィぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!」

ごうっ。

リナの姿が、一瞬、闇に包まれる。
・・・・そして、そこにいたのは・・・・・


「・・・・リナ様!?」
ゼロスが驚愕の声を上げる。
そこにいたのは、先ほどまでのリナではない。
金色の髪に、金の瞳。
まごうことなき、金色の王と生き写しのその姿。
「リナ!?」
「駄目!!カウリィを傷つけないで!!!」
リナが力を放つ。
自らの意思で。
「ちっ・・・・覚醒したか!!!!勝負はまたな!!!スティルバイト!!」
「まて!!!!」
リナが覚醒しては分がないと判断して。
またたくまに、アザチェスの姿はかき消えてゆく。
「・・・・・スティルバイト!!!!」
リナがガウリイにしがみつく。
「・・・・・リナ・・・・お前・・・・・・。」
「ゴメン!!忘れてて!!!!ごめん!!!ガウリイを裏切りそうになって!!」

ガウリイの心がわからなくて。
つい、他の人間に気を許しそうになってしまったかつての自分。
人間としてのリナ=インバース。
そして、それがガウリイの命を狙っている刺客だと、知ったとき・・・・
そして、自分を狙っていたのも、ガウリイを追い詰めるためという理由を知ったとき・・
リナは、自分で決着をつけることにした。
その結果。
リナは、不覚にも、あいつの毒による攻撃で。
純潔を奪われそうになり・・・・。
だが、持ち前の精神で、それを撃退し、しかし毒による被害と精神における苦痛は大きくて・・・・。

・・・・あたしは逃げたのだ。子供の姿に。
すべての記憶をまた封印して。
そんな思いをすべて込め、ガウリイにしがみついているリナ。

リナのすべてをこめた、それだけの言葉に。
ガウリイは、ただ、やさしく、リナを抱きとめる。
「・・・馬鹿だな。気にするなよ。リナはリナ・・だろ?」
いつもと同じ、すべてを受け止めるガウリイのその言葉。
「・・・・・カウリィ・・・・」
ガウリイには分っているのだ。
リナがこういう恋愛という感情にはとことん疎いというのを。
そして、自分の感情にも疎いというのを。
誰よりも・・・よくわかっていた。
リナが誕生して、まもないときから、
リナの側にずっといたスティルバイトなればこそ・・。
カウリィ。
それは、リナがスティルバイトにつけた愛称。
スティルバイトは一般に、知れ渡っている名前なので。
本来の名前。
カウチェリィキルティッシュからリナが考え付いた名前。
この名前で呼ぶのは・・・リナだけである。



「ガウリイって・・・スティルバイト!!!」
ルナがなんとか束縛から逃れ、リナを助けにやってくる。
「ルナか。リナは大丈夫だ。」
「・・・・・え・・・と。り・・・・リナ様?」
ルナはリナが覚醒しているのに気づく。
いつものリナの姿ではない。
ましてや、人としての姿でも。
その姿は、まぎれもなく、万物の母たる一人娘の姿のもの。
「・・スティルバイト・・・彼方・・・力を解き放ったら・・・・。」
ルナがいう。
「仕方ないだろ?リナを助けるためだ。・・・俺は後悔しない。」
「・・・・!?どういう!?」
リナが混乱に満ちた瞳をする。

「・・・・まったく・・・・・・・・・・。」
ふいに。
その場が、金色に輝く。
「・・・・まったく・・・。あいつもあきないわねぇ・・・。
  あたし自らが制裁加えようかしら??それはそうと。・・・・覚悟は・・・いい?スティルバイト?」
出現した、リナとまったく同じ容姿。
だが、雰囲気が全然まったくといっていいほど違う。
圧倒されるその雰囲気。
「覚悟・・といっても。ただ、心残りなのは・・・・・。・・・・リナをこれから・・・・守ってやれないことだけです。エル様。」
きっぱりと、いいきるその目には、自分が消滅する恐れはない。
ただ、リナを守れない。
というその悔しさのみ。
「・・・・!?スティルバイト!?母様!?」
リナが悲鳴に近い声を上げる。
「制約だったからね。彼方が、人間として、リナを守れるか。・・・・もし、力を使ってならば・・・・。」
静かに言い放つ、金色の母。
・・・言葉が物語っている・・・それは・・・つまり・・・
「・・・駄目!!!お母様!!駄目ぇぇぇぇぇ!!!!」 
リナがスティルバイトを庇うようにして立ち塞がる。
「駄目駄目駄目ぇぇぇ!!!!いやぁぁぁぁぁ!!!!!カウリィがいなくなる・・・そんなの駄目ぇぇぇぇ!!!!」
「のきなさい!!リナ!!!そのものは、彼方の精神を乱した・・・。・・・・それだけでも、十分過ぎる利用はあるでしょぅ!?」
「駄目駄目駄目ぇ!!!!母様でも、それは駄目!!!!スティルバイトがいない世界なんて・・・・あたしもいなくなる!!」
「リナ!!!!」
初めて母に逆らう。
だが、・・・譲れないこともあるのだ。
「・・・・リナが・・・・あたしに・・初めて・・・逆らった?」
呆然と一瞬なる金色の母と呼ばれしエル。
「・・・・!!スティルバイト!!!!早く!!」
ぐいっ。
スティルバイトの腕をつかみ。
リナは、その場からかき消える。

守ったのだ。
母から。
スティルバイトが消滅させられてしまうのを。
初めて、大好きな母に逆らってでも。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

そのまま、しばらく、リナが消えた空間を見つめる金色の母ことエル。

「あ・・・あの?エル様?」
あまりの静寂に、ルナが恐る恐る口を開く。
見れば、エルは、しっかりと唇をかみ締めている。
「・・・リナが・・リナが・・・・。」

ふぃ。

そのまま、エルの姿がかき消える。



別時空の別の混沌で。
「うわぁぁぁぁぁんんん!!!!リナがさからったぁぁぁぁぁ!!!!」
「・・・・はぁ・・・・。はいはい・・・・・。」
泣いている金色の女性を慰めている黒い髪の少女。
「あんなに素直でいい子だったのにぃぃい!!!」
赤いリボンが揺れる。
「・・・でも、仕方ないんじゃない?・・・エル、面倒だからって・・・・・。
  その、スティルバイトの魂・・・・カウリィ=ルシフェル=ウル=ナイトメアから・・・・。・・・・作り出したでしょう?」
「・・・・う゛(汗)」
確かに。
全員部下を創るのが面倒だったので、数多の世界にいる魔王や神々、そして、力のある彼には・・・・。
自らの一部であり、そして、息子でもある、ルシフェルの魂をコピーしたのだ。
力や存在は違うこそすれ。
「でもでもでもぉ!!」
「・・・確かに。でも、五千年は・・早すぎたわねぇ・・・・・。・・・・・他の存在に取られるのは・・・。」
なぐさめつついうそのの言葉に。
「そうなのよぉぉぉ!!!!!
  リナスとルーは、まあ、あたしの娘と息子だからいいとしても!!!よりによって、ただの部下にぃぃぃ!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
  ・・・・・・・・・・・・・人間や、ただの中間管理職の魔族よりは・・・・・。
  ・・・・いいと想うけど・・・・。」
ふと、エルの世界のことを思い出す。
かなりやっているのだ。
世界を作り出し。
そして、そこの世界の混沌・・つまり、自分の一部を完全に切り離し。
自我をもたせて、管理させている区域を。
このエルは。
確かに。
面白い方法ではあるが・・・・。
ちなみに、リナスとルーというのは、世界・・つまり、とある一つの混沌の宇宙を作り出したときに、エルが行ったこと。
その世界そのものの、混沌を二つの生命に分けたのだ。
・・・・完全に、彼らの成長とともに、混沌・・つまり、宇宙が発展してゆくように。
そのときも。
あの二人は、完全に、真っ白な状態で・・エルは育てていったけど・・・・。
ふと、私は思う。
「エルも、たまには、普通の人のふりして、交流してみればいいじゃない♡・・結構面白いわよvv人の子供を産むのも♡」
私の言葉に。
「ユニットぉぉぉぉ~!!!」
「はいはい。まあ、きのすむまで、付き合ってあげるって。」
「うわぁぁぁぁんんん!!!」
絶対に、こんな姿・・・。
エルの世界の一部・・存在たちは、想像できないわね。
そんな考えがふとよぎるが。
「・・・・・でも、エル・・・・このままだと・・・・・。完全に、リチェウスィ=ナファレス=ネオロードは♪
  カウチェリィキルティッシュ=スティルバイトの物になるわよvv」
「いわないでぇぇぇぇ~!!!!
  ・・・・・あ゛・・・・・あいつ・・・・・・・・・・・・・・リナおぉぉぉぉ!!!!」
「あ・・・・とうとうやったわねぇ・・・」
「ユニットぉぉぉぉ~!!!!!」

エルの世界で。
とうとう、スティルバイトがリナを自分の物にしていたりする。
・・・・・つまり、とうとうリナを抱いていたり。

「いやぁぁ!!部下に。部下にぃぃぃ!!!!」
「・・・あきらめなさい。エル・・・・・。」
わめくエルをなだめる私。
・・・・でも、エルの方法も・・・面白そうよね♡
私の方も今度やってみましょ♡


                            ―続く―


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####################################

まえがき:
こんにちわ♪
ううん・・・・・。絶対、題名と小説の内容がかみあってない、この事実・・・(汗)
・・・・しかも、まだ第一部を打ち込んでもいないのに、
二部の最終から打ち込んでいる私って・・・・・(汗)
・・気分やだからなぁ・・・・(かなりまてぃぃい!!!!)
では、ま・・・そーいうことで・・・・(だからまて!!)


###################################

あとがき:
薫:参考資料(まて!!!!)
  まず、リナスレイヤー=トゥエル=ウル=ナイトメア。
  この名前の、エル様の一部である娘としての存在を。エル様は、数人、作り出しています。
  エル様以外には、たどりつけないエル様の抱擁する混沌の世界に。
  ちなみに。
  どこかの中間管理職というのは・・・・・。ははははは(笑)
  そこの世界の獣神官ゼロスとリナスとことです(笑)
  この話は・・・管理人の・・『混沌の娘2』を参考に・・(まて!)
  あと、人間というのが・・・。はい。
  やっぱり、ガウリイ=ガブリエフ。『混沌の娘』を参考に(だからまて!)
  あと、ガウリイが監視者・・つまり、エル様の力を抱擁している混沌の一族(?)といった設定の話も・・・・(笑)←リナの約束&干渉
  あと、ちよこっと出てきたリナスとルー。
  これは。『見果てぬ夢』の裏設定です。
  リナスレイヤー=トゥエル=ウル=ナイトメア。
  カウリィ=ルシフェル=ウル=ナイトメア。
  こちらは、エル様の一人娘(ここの混沌そのもの)と一人息子(爆!)
  ・・この二人・・できてます(笑)
  この話の設定は。
  『未来への希望』『過去からの希望』
  とある世界の神魔の王。
  碧玉の王(スティファランス)カウチェリィキルティッシュ=スティルバイト。
  彼は、エル様と同じ、さらさらの金色の髪の実体と精神体も持ち主です。
  そして。
  エル様が人間界で。気まぐれに誕生させた存在。
  それが。リチェウスィ=ナファレス=ネオロード。
  時期・金色の王(ネオ・ロードオブナイトメア)です(笑)
  お分かりかと思いますが・・・・(まて!!!)
  ガウリイ=ガブリエフ。リナ=インバースの二人です。ええ(笑)
  ・・・・ではでは、また次回で・・・・。
  (だから一部も打ち込まないで何やってる!!!!・・しかも、覚醒偏のクライマックスのさわりから打ち込む私って・・・汗)
  次回は。ガウリイとリナがあれからどうなったのか・・・・・。 
  ・・・・・・隠し部屋・・つくらないとな(まて!)
  ではでは♪

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