まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ
さてさて。ようやくラストですv
ちなみに、続編考えてない、という当初の説明通り(こらこらこら)
ラストが普通と異なってますよ~(笑
何しろ私のかくもの、と思えば納得するかと(だからまて
さくっとのばしまくったわりにあっさりおわるというこの話v
ま、児童書版ってそんなものか。ととらえてくれればなによりです(かなり問題だが
何はともあれゆくのですv
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迷・ネオスレイヤーズ
しかし、本気で遊んでいる。
絶対に。
魔王がかるく手を…しかも今ではその姿はレゾのソレとまったく同じになっているので余計にタチがわるい。
そのレゾを中心として具現化している紅い海老のような巨大な何か。
それが伝説の中にある赤眼の魔王・シャブラニグドゥであることは疑いようがない事実。
『逃げられたりでもしたら面白くないからな』
いけしゃあしゃあとそんなことをソレはいってくる。
「…ひどい……」
それはほんの一瞬のこと。
【レゾ】がふっと手をひと振り。
ただそれだけ。
その瞬間、あたしたちの背後に巨大な爆発が巻き起こり、振り向いたあたしたちの目に映ったのは、
さきほどまであったはずの町がきれいになくなっており、あるのはクレーターの中にと浮かぶ溶岩のみ。
つまりはその気になれば魔王はあたしたちをどうにかすることなんていともたやすいことを意味している。
しかも厄介なことに魔王を中心として溶岩の中から現われている幾多もの炎の龍のような何か。
「「崩霊裂!!」」
ナーガとアメリアが示し合わせたようにそんな【レゾ】にと呪文を放つ。
が、しかしその術は【レゾ】に届く前に綺麗さっぱりとかききえる。
「でやっ!!」
だがしかし、一瞬の隙ができたととらえたのかその隙に剣を片手に魔王に斬りかかっているガウリイの姿。
よくもまあ並みいる炎の龍をかいくぐり魔王のもとにまでたどり着けるものである。
かくいうあたしもまた炎の龍に対処するためにひたすらに呪文を解き放っているのだが。
この炎の龍。
炎版のどうやらレッサーデーモンらしく、物質攻撃はほとんどきかず、もっぱら精霊魔法のみが有効。
『ほぅ。ゴルンノヴァ。か。おもしろいものを従えておるな。
だが剣の姿をしているソレは、かつて不完全装甲ゼナファ…生きているものどもはザナッファーと呼んでいたか。
そのサイラーグを一夜で滅ぼした魔獣、とよばれていたそれを倒したものだな。
だが、この我にそれが通用するとでもおもったか?か弱き人間よ』
ガウリイが光の剣を携えそのまま【レゾ】に斬りかかるが、その光の刃は【レゾ】のすでで握られており、
ガウリイもまた身動きができなくなっているようである。
そのまま剣ごとぶんっとひと振りすると同時におもいっきりガウリイは吹き飛ばされる。
ちなみにそのあとに魔力弾のおまけつきで。
吹き飛ばされて空中にいながらもそれをどうにかよけているガウリイの反射神経はすごいと認めるざるを得ない。
それでもさすがに全部は無理だったのか足に直撃をうけ…
「ガウリイ様!!」
シルフィールの悲鳴が周囲にこだまする。
その様子を【レゾ】は笑みを浮かべたままでこちらをみつつも、
『何。そう簡単にはころさんよ。長い間封じられていたので今一つしっくりこなくてな。
トレーニングがてらに相手をしてやっているのに簡単に殺してはトレーニングにもならないからな』
言い放つと同時に何か仕掛けようとしていたらしいゼルガディスのほうにと視線をむける。
と。
「ぐわっ!!?」
「ゼルガディスどの!?」
ちらりと視線をゼルガディスに向けたのちに、そのままその視線をバトルアックスをもっている男性。
ちなみに名前は忘れたというか聞いたような聞いてないような。
とにかく、ゼルガディスの仲間の一人ら向けて笑みを浮かべる。
それと同時、炎がその男を包み込みそうになり、
間一髪のところその男をゼルガディスがつきとばしその男の代わりにとゼルガディスが炎にと包まれる。
『愚かな。使えぬものをかばうとはな。まああのものの体はレゾがキメラにしているからまだ死にはせんだろう』
そういい、ふっと魔王が空に手を伸ばすと同時にその手の中に出現する何か。
その手の中には骨のような変わった杖のようなものが持たれている。
あれは…伝説の武器の一つ、魔王がもつという餓骨杖!?
ちなみに、対をなす赤の竜神スィーフィードが使っていた、といわれているのが赤竜の剣、である。
伝説の七神器、ともいわれている品物の一つ。
冗談じゃない。
そんなものまでとりだされてはっ!
ふと気付けばガウリイに治療呪文をかけているシルフィールが手にした光の剣が、
ガウリイが使うときよりもはるかな光の量を放ち光の刃を出現させていたりする。
もしかして、あれって…!?
究極の選択をするにしても他のはったりのような時間稼ぎは絶対に必要。
「アメリア!ゼルの治療を!そしてシルフィール!それをこっちにっ!!」
「え?あ、はいっ!」
『ほう。まだあがくか。おもしろい。どこまであがけるかやってみるがよい』
あたしの言葉に従い、はっと我にもどったアメリアがあわててゼルガディスの治療にかけだし、
シルフィールもはっとして手の中にある光の剣をあたしのほうにと投げてくる。
もしもあたしの予測が正しければ…っ!
「光よっ!」
ヴッンっ!
あたしの予想を裏付けるかのごとくに、ガウリイが使っていたときの長さはロングソード程度だったものから、
その出現した光の刃はバスター・ソード以上の長さにとなり具現化する。
どうやらこの光の剣、簡単にいえばひとの意思力を具現化するようなモノに近いらしい。
その証拠に呪文になれているシルフィールやあたしが手にしたときのその光の量はガウリイの比ではない。
それに、何よりもすでに経験していることなのだが…
「ゼル!!これをつかって!!光の剣で呪文をかけて増幅っ!!」
『何!?』
魔王の言葉に若干焦りの色がみえているような気がするのはあたしの願望か。
「光の剣はドラスレすらも収束して増幅させるはずよっ!!ならっ!!」
あたしの言いたいことがわかったのか、治療呪文をかけてもらい復活したゼルガディスがそれを受け取り、
そのまま無言でその横にいるアメリアと見つめ合う。
どうやらあたしの言いたいことがわかったらしい。
「トレーニング。といったわよね。つきあってあげるわよ。最も、後悔することになるだろうけどね」
『ほぅ。かの赤の竜神騎士くらいだと我の相手にちょうどいいのだがな。
少しは楽しませてくれそうか?お嬢ちゃん。殺しがいがありそうだ』
「そのスィーフィードナイトは今ごろウェイトレスのバイトで大忙しよ」
?
あたしの言葉の意味がよくわからないのか少し魔王が戸惑ったような感じをうけもするが。
実際にそうなんだから仕方ない。
『いいだろう。この世界を混沌に還すその前に我自らが相手をしてやろう』
冗談。
そう簡単に還ってたまりますかっ!!
「そう簡単に殺されるつもりはまったくないぜ」
どうやらガウリイもまたシルフィールの治療のおかげで復活したらしい。
「そうよ。レゾ=シャブラニグドゥ」
ぴくり。
うや?
あたしの言葉に反応してか魔王がぴくり、と身じろぎする。
『さて…ならばそろそろいくとするか』
そういうとどうじに魔王は手にした杖でトン、と軽く地面をたたく。
それと同時に大地から無数の岩の蛇のようなものが出現し、それらは魔王に魂を与えられてあたしたちを取り囲む。
ちなみに先ほどシルフィールが気絶させた男はといえば、先ほどゼルガディスのかばった男とともにいる。
まあ下手に介入してきて足手まといになっても困るのでアレはアレでほっとこう。
「ふむ。以外とつまらないありきたりな芸ね」
魔王にしてはみみっちい、としかいえない技である。
どうやらまだこの魔王はあたしたちに対して遊びのつもりが大きいらしい。
その油断が命取りだということをこの魔王はわかってはいないのだろう。
絶対的な力ゆえに、弱者に敗れることなどみじんもおもってなどいない。
それは強大な力をもつ存在にはよくあること。
「地撃衝雷!!」
すかさずそれらをみてとりゼルガディスが呪文を放ち、あたしたちのたっている地面が揺れる。
その揺れで多少、溶岩と隔たれた足場が多少少なくなっていたりはするがそんなことはどうでもいい。
それとほぼ同時すかさず唱えた光の球をおもいっきり魔王にむかって投げ放つ。
そんなあたしに対し、
『ほう。火炎球、か。一応アレンジはしてあるのだな』
自分の周りを飛び回る光の球をみつつも平然とそんなことをいってくる【レゾ】。
『しかし、これで直撃をうけたとしても我はかゆくもいたくもないぞ?』
それはそうだろう。
精神世界のその身をおく魔王に物質的な術が通じるとはおもわない。
だがしかし、具現化している以上、そこに隙はできる。
「でしょうね。わかってるわ。これは単なるデモクストレーションよ」
いいつつも、ちらり、とゼルガディスとナーガに視線をむける。
どうやらあたしの視線だけでその意図をくみ取ったらしく、気付けば四人が一か所に集まっているのが見て取れる。
『ふむ。だが我はそういうのにつきあうつもりはないな』
魔王がそういったその刹那。
「ブレイク!」
パチンッ。
あたしが指を鳴らすと同時に、光の球は螺旋を描いて無数の光の筋となり魔王の周囲に降り注ぐ。
『な、何と!』
さすがの魔王もこれは予想していなかったのか驚いたような、それでいて面白そうな声を上げているが。
炎と砂煙とがあたしたちと、そして魔王の視界からそれぞれを遮断する。
「今よっ!!」
「「「「崩霊裂!!!」」」
それとほぼ同時。
あたしの声を合図にしたかのようにそれぞれが呪文を唱え、ゼルガディスの構えた光の剣にそれぞれがその言葉を紡ぎ出す。
崩霊裂。
精霊魔法の中においては最高峰、とされている呪文。
ちなみに、ナーガがこれを使えることはあたしは腐れ縁ともいえる付き合いの中でしっているし。
また、ナーガの妹のアメリアもまた巫女頭を務めていることから使えるだろう、と予測はついていた。
シルフーィルにしてもまた、サイラーグの巫女頭。
サイラーグといえばかつては魔道都市としても有名であり、今でも魔道は結構重宝されているという場所。
ナーガ、アメリア、ゼルガディス、そしてシルフィールの放った呪文は光の剣に収縮し、
それらは数倍にも膨れ上がり太い光の柱のようなモノの姿にと剣を介して具現化されそのまま魔王にと突き進む。
だがしかし、魔王をこれで倒せる、なんてそんな簡単な思いなんてあたしだってしちゃいない。
『くっ!!ほざけっ!!』
魔王がその意思でその攻撃に気を取られそれを防いでいるのは声からしてわかる。
何よりも、この攻撃はこちらの世界、すなわち物質世界、というよりは精神世界方面のほうが威力が強い。
ゆえにそちらで何か、が起こっているのではあろう。
「…闇よりもなお暗きもの 夜よりもなお深きもの 混沌の海よ たゆたいし存在」
そんな最中、あたしは究極の呪文を唱え出していることを忘れてはいない。
『な…なにっ!?こ…こむすめっ!!な…なぜ!?なぜきさまごときがあの御方のことをしっている!?』
シルフィールたち四人の攻撃をうけそちらに気を取られていた魔王はあたしの言葉に気づき驚愕のこえを上げてくる。
今度ばかりはあからさまな驚愕の色がその声からも、そして表情からもうかがえる。
「金色なりし闇の王」
そこまでいうとあたしの頭上に無明の闇が出現する。
今にも暴走しそうなほどのソレ。
ちなみにその前にこっそりと姉ちゃんの目を盗んでならっておいた魔力増幅の言葉を紡いでいるのはお約束。
この魔力増幅。
周囲の魔力を使うために自分の魔力には影響はない。
周囲の魔力を自分のものとして、そしてそららを使用するので必要なのはそれらをコントロールする意思力のみ。
この呪文内容は、ほぼ竜破斬と形式は同じ。
だがしかし、詠唱をささげる相手はこの世界の闇を統べる赤眼の魔王ではない。
「みんなっ!リナの詠唱の補佐をするわよ!」
「はいっ!」
「あ、ああっ!」
ナーガも以前、この術…あのときは不完全版であったが。
をみているのであたしがしようとしていることを察したらしく、援護攻撃を促しているのが聞き取れる。
暴れ狂うその混沌の元ともいえる、否、混沌そのもの、といえる闇。
夜よりもなお深きすべてのものの母なる闇。
この術は制御しようとして制御できるものではない。
不完全版ならともかくとして。
だがしかし、不完全版だと魔王を倒せるは限らない。
ならば。
かつて、あたしは姉ちゃんと立ち寄ったとある国でその存在のことを知った。
闇の王。
魔王の中の魔王。
天空より落とされた金色の魔王、と。
だがしかし、真実は……
『ムダだというのがわからんのかっ!!』
魔王の声に焦りの声が垣間見える。
そのまま呪文詠唱なしで…まあ、力があるものならば力ある言葉もいらずに攻撃を繰り出すこともできるらしい。
そのことはうちの姉ちゃんによって身をもってあたしは知っている。
が、しかしその攻撃のことごとくはあたしの頭上に生み出され始めている闇の中にとかききえる。
「我 ここに汝に願う、我 ここに汝に誓う 我が前に立ちふさがりし すべてのおろかなるものに
我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことをっ!!」
瞬間。
あたしの意識は深い闇の中にと沈んでゆくのを自覚する。
すべてと引き換えにしても譲れないものがある。
そしてまた引き下がれないものもあるのだ。
あたしがあたしであるように。
人がひとであるように。
生きとしいけるものがすべてその命を輝かしているように。
そして…また。
魔族、と呼ばれているものはその対の位置にいる存在であるのだ。
生きているものたちが生きることを望むように、魔族は自らの意思で滅びを切望する。
またそのために彼らもまた生きている。
滅びと再生。
それは光と闇のようにどちらがかけても世界は成り立たない。
生と死が必ずあるように。
――ほう。自らの運命にあらがうか。
…声が、聞こえた。
誰?とはいわない。
あたしはこの【声】の主はわかっているから。
運命、なんてものはあたしは認めない。
運命、というので終わらせたくはない。
自分自身ができうる限りのことを。
そのためにこの【世界】はある、といっても過言ではない、とあたしは思っている。
――汝の願いは生きるものとして当然のもの。そして汝の意思も純粋たる生を望むもの。
そう。
生きているからにはその命をきちんと大切にしなければならない。
それこそが世界の【理】なのだから。
――…よいだろう。
瞬間、目の前を金色の光がはじけ飛ぶ。
魂の奥底に記憶しているかのような、暖かな、それでいて強烈なる鮮烈までの光が。
かつて、あたしが試しに不完全版を使ったその場所は今だにミズゴケすらも生えない個所と化している、という。
だがそれは、あたしが本質を理解していなかったがゆえにその一部しかその力を引き出していなかった証拠でもある。
人間と魔王、その器の容量…すなわちキャパシティの差は歴然なれども魂からしてみれば、
闇、の部分しかもたない魔王と、光と闇、その両方の属性をもつ人の魂。
そして…そのどちらをも生み出し、否、創り出したのはほかならぬ……
ゆっくりと瞳を開くと、何やら風にのって何かきいたことのない呪文らしきものを唱えていた魔王の声がぴたり、とやむ。
わからないはずなのに、今のあたしにはそれが何だったのかがよくわかる。
それと同時に流れ込んでくる魔王、の戸惑いの感情も。
「やめろっ!もうやめてくれっ!あんたがあんなにも視たがっていた世界だろ!?レゾっ!!」
ふと流れ込んでくる映像の中には魔王の攻撃をうけたのかずたぼろになっているシルフィールたちの姿。
地面に突っ伏したままで、あたしに攻撃をしかけようとした魔王にと何やら訴えかけているゼルガディスの姿も視てとれる。
あたしにはこんな能力はない。
これらを可能にしているのは、おそらく間違いなく……
「私は……」『…おろかなことを』
【レゾ】の口から声がもれる。
レゾの声とそして魔王。
それぞれ異なる声が。
やはり。
先ほど…否、レゾのことを聞いてから感じていた違和感の正体、それはすなわち…答えは今、ここに。
「赤法師レゾ!選びなさい。このまま自らの仇をとるか、あるいは魔王にその魂を食いつくされるかっ!」
「おおっ」『馬鹿なっ!?』
勘気の声と驚愕の声が同時に【レゾ】の口から紡ぎだされる。
あたしの頭上にはいまだに収縮しつつある闇よりも深き無明の闇がひとつ。
「重破斬っ!!!!!」
力が満ちるのをうけて、あたしはそのまま魔王にむけてそれを投げ放つ。
否、投げ放つような感覚ではあるものの、それらは実際には瞬時に魔王の上空にと移動し形をなす。
『…な…』
「…魔王……」
あがこうとする魔王を押しとどめるレゾの魂。
そう、視えないはずなのにものすごい霊気を放っているので嫌でもわかる。
魔王の頭上にとどまった黒き球体は周囲のものすべてを飲み込み言うまでもなく魔王すらをも飲み込んでゆく。
『く…くははは。まさか人間風情にこのようなまねができるとはな…気に入った。気に入ったぞ。小娘。
よもやあの御方のことを理解してなおかつ気まぐれすらをも起こさせるとは……』
ぴくり。
あたしの中の【何か】がその言葉に反応する。
魔王、一言多いい、と思うのはあたしの気のせいだろうか?
「汝は汝の役目をなんとみる?」
あたしの口からあたしでない別の声が漏れ出でる。
「汝たちの役目は自らの意思によってなしえるもの。しかし汝は……」
さらり、と目につくあたしの神の色は金色。
意識はあるのに、あたしがあたしでない不思議な感覚。
その言葉にぴくり、と魔王は反応し、
『…お…おゆるしを……。人間よ。リナ=インバース、という稀代の魔道士よ。
いずれ汝とはまたあいまみえたいものよの。長き時の果てに……』
「汝は再び眠りにつくがよい」
ごうっ!!
その言葉と同時に魔王の体が瞬く間にと黒い球体の中にと吸い込まれてゆく。
『お前自身に敬意を表してここは大人しく身を引くとしよう』
声が聞こえた。
それらを見届けるとほぼ同時、【あたし】がふっと手をかざす。
と同時周囲のかききえていたはずのすべてが元通りにと再生される。
それと同時にふっと遠のく意識と、さらり、と目にはいってくる真白い白い髪。
ああ、そうか。
アレ、は自らの場所に還ったのか。
否、還った、というよりはあたしの体、という器を通してその意識を少しばかりこちらに向けていただけなのだろう。
きっと。
後には何ごともなかったかのような、元通りの自然と町並みがそこにあるのみ。
魔王によって瞬時に壊滅させられたはずの町並みも、そして壊された自然もすべて元通り。
あるべき姿にとおさまっているのがみてとれる。
それらを確認すると同時にあたしの体にもまたものすごい疲労感と疲れがいっきに襲いかかり、
あたしは一時そのまま意識を手放してゆく。
チチチ……
小鳥の声が聞こえる。
ふわり、と体に感じる風はとても心地よい。
ふっと目を開いた視界にはいるのは突き抜けるような青空。
「何が……」
あれほど大怪我をおっていたはずなのに、気づけばどこも何ともない。
まるで悪い夢をみていたかのような様子で呆然と戸惑い気味に近づきながらもいってくるゼルガディス。
「リナさん。さっきのは……」
顔色の悪いシルフィール。
もしかしたらもうひとりのあたしでない【あたし】をみたのかもしんない。
「それより、リナ!魔王はどうなったの!?」
そんなシルフィールの言葉をさえぎりナーガが胸もとをつかんで問いかけてくる。
「滅んだわ。レゾのおかげでね」
というか、滅んだ、というよりは最後に流れ込んできた【彼女】の考えからして無事ではすまないんだろう。
…姉ちゃんが異様に畏れていたわけがよぉ~くわかったような気がする……
【彼女】もあえてあたしにソレをわからせたような感じをうけなくもないし。
ともあれ、そんなことまで説明したら話しがややこしくなるので伏せておく。
「おわった…のか?しかし…いったいこれは……」
ガウリイも信じられないのか周囲を見渡し呆然とつぶやいてくる。
まあたしかに。
目の前であっさりと消滅したはずの町並みや、挙句は自然が元通りになっている。
というのはにわかには信じられない事柄であろう。
「もしかしてさっきまでの戦いは、すべて魔王の張った結界の中でのことだったのかしら?
それなら結界がなくなったあと、本来の物質世界に何ごとも被害がない、というのもうなづけるわ」
一人、何やら自分の中で納得したのかそんなことを珍しくまともにつぶやいているナーガの姿も見て取れる。
ナーガにしてはものすっごく珍しくまともな意見である。
しかしまあ、ここはナーガのこの案にのったほうがかなり楽というか説明がはぶけるというもの。
「魔王を倒したから、でしょうね」
あえてそれが真実だとも嘘だともいわずに事実だけを述べておく。
その言葉にゼルガディスも納得したらしく、それでもやはり信じられないように、
「しかし、いったいどうやったんだ?さっきのあの黒い術は何だ?」
見たことがない、とばかりに戸惑い気味にときいてくるゼルガディス。
ちなみになぜか例の元ミイラ男は怪我をしたのか身動きがとれない状況になっているらしい。
…ゼルガディスたちの怪我は治したものの、アレの怪我は治していない。
というのはその根本たる本質がわかっていない彼への戒めだろう、きっと。
「アレの中にまだレゾの魂が残っていたのよ。
長い年月をかけて魔王に蝕まれ内側からをもむしばまれていたであろうレゾの魂が。
あのレゾの人として残っていた人かけらの良心がいままで自分を欺いていた魔王に対する憎しみと手を結び、
そして最後の最後で魔王の魂を押さえたのよ」
そして共に混沌に還る道を選んだ。
願わくばレゾに母なる彼女の慈悲があらんことを期待したい。
「って、リナさん!?その髪!?」
今さらながらにシルフィールがあたしの髪の色に気づいたらしく驚愕の声を上げてくる。
あたしの髪は自慢の栗色からいまは色素がきれいさっぱり抜け落ちてもののみごとに白髪となっている。
銀色に近い白髪。
これは生体エネルギーを使い過ぎたときにおこりえる現象であるが、力が満ちれば元にと戻る。
「大丈夫よ。ちょっとぱかり力を使い果たしただけだから。…疲れてはいるけどね。みんなはへいき?」
「お~ほっほっほっ!何はともあれ!魔王を倒せたのもこの白蛇のナーガ様の手助けがあったがこそね!お~ほっほっほっ!」
こ、こいつは。
脅威がなくなったとしったらこの反応。
「は!?そうだ!父さんたちは!?」
いや、あのフィルさんはナーガと同様、たぶん殺しても死なないとおもいます。
今だによく状況を把握できないものの、それでも自分の立場を思い出してそんなことをいっているアメリア。
ナーガ、あんたも同じ姉妹なら見習いなさいよね。
まったく。
「神託の虚無が具現化する、というのは免れたのでしょうか?」
…ぎくっ。
すいません。
一時、【彼女】に体を使われていたのは事実です。
はい。
しかしそれはあえて言わないでおく。
紅き闇の復活のあとに、そういえばシルフィールが別の虚無が具現化して世界を滅ぼす。
という旨の神託を受けていた、とはきいてはいたが。
まあ、【彼女】あっての世界だしなぁ。
「でも、みなさん御無事でよかったです。って、ああ!?わたくしが気絶させた人はどうなったんでしょうか!?」
…シルフィール。
今さらそれをいいますか。
ねぇ?
なんか彼女もかなりいい性格してそ~である。
「おお!アメリア!それにグレイシア!リナ殿達も!無事じゃったかっ!!」
そんな中、馬の蹄のような音と同時に聞こえてくるとある声。
あ~…予測はついていたがよくもまあ無事だったものだよな。
それとも、何だろうか?
【彼女】は失われた命までをも再生させたのだろうか?
そんな期待も一瞬浮かぶ。
馬を走らせてきたその人物…人、といっていいのかもこれまた謎だが。
とにかくちょっとしたドワーフを小柄にしたようなその男性。
フィリオネル=エル=ディ=セイルーンことフィルさん、ナーガとアメリアのこれでもまったく似てないが実の父親。
その彼は馬をかりあたしたちのほうにとやってきて、
「いやはや。よかったよかった。さすがにこの儂もびっくりしたぞ。いったい何がどうなったというんじゃ?
いきなり町は消えて溶岩は噴き出すは。炎の龍は出現するわ。挙句は周囲のものが黒い渦に飲み込まれるわ。
そして気付けば町並みはかつてのように復興しているわ」
あ~…たしかに、ハタメからみればそうとしかみえないわな。
つうかんほっとうによく無事だったなぁ。
このフィルさん。
そんなフィルさんの言葉にその場にいた全員が顔を見合わせる。
そしてそのままその視線はあたしのほうにと向けられる。
…こりはやはりちょっとばかり説明しないといけない…かな?
うみゅぅ……
数日後。
「や~。これでようやくおいしいものが食べられてゆっくりねられるってものよねっ!」
遠くにみえているのはセイルーンの首都たる町並み。
「リナさん。わかってます?私たちがいくのは、今回の出来事の説明をするため、ということを?」
そんなあたしを溜息とともに見ながらもそんなことをいってくるシルフィール。
「そんなのわかってるわよ。でも説明の仕様もないことも事実だし」
そう。
下手に魔王が復活しました、といっても信じるものはまずいないだろう。
というかそんな相手を人間が倒せる、なんてもっと信じてもらえないのは明白。
とはいえ、町並みは確かに再生され、自然も元通りになっていたものの失われた人々は戻ってはいなかった。
さすがにそこまでサービスしてはくれなかったか。
まあ、【彼女】が力を貸してくれたのもあるいみ幸運だったのだからして。
下手をしたらあのままあの力にこの惑星…もとい世界ごと飲み込まれていたことは否めない。
まあわかってて使ったあたしもあたしだが。
あたしの根本的な理論からして、他人にされるよりは自分で行動して失敗したほうがましっ!
というのがあるのも事実。
「しかし。えらく長く時間くっちまったな~」
のんびりと荷馬車の中でそんなことをいっているガウリイ。
あたしたちは今回の出来事の説明をかねて、セイルーンが用意した馬車で首都へと向かった。
そして数日後。
ようやく目の前に首都が見えてきたのだが。
あたしの髪もようやく元通りの色を取り戻しつつある。
今だに寝ていると目の前に金色の光がはじけるのはおそらく召喚の後遺症のようなものだろう。
「でも、シルフィールまでくる必要はないんじゃない?」
というか、彼女とて故郷にはやく説明をしなければいけないだろうに。
なぜかシルフィールまでもがあたしたちにとついてきていたりする。
「いいんです。それにわたくしには別の役目もできましたし」
「役目?」
「はい。光の剣を狙う邪悪な魔導師からガウリイ様をお守りする、という」
きっぱりはっきりいいきってくる。
おひ。
「ほ~。いうわねぇ。その邪悪な魔導師、って誰のことかしら?」
「リナさんのほかにいまして?」
この子、ほんっといい性格してるわ。
あたしはこの道中というかあの町でもずっとガウリイに光の剣をくれるように交渉していただけなのに。
それで邪悪といわれてはたまったものではない。
まあ、おそらくガウリイに対して好意を抱いているようだからして一緒にいたい、というのがあるだろうが。
気のどくなことにガウリイはその気はまったくないらしい。
つ~か、かわいそうだから名前を間違えてよぶのだけはやめといたげて……
「…まあ、俺でも銅貨十枚、はひどいとおもうぞ?」
横からぽそっと口を挟んでくるゼルガディス。
今回の当事者だから、というのでゼルガディスも渋ったがフィルさんに押し切られる形で訪問が決定している。
ゼルガディスの二人の手下たち、ロディマスとゾルフ、というらしいが。
彼らはレゾがいなくなったのをうけて、それでもレゾが何かほかにもいろいろとたくらんでいたのは知っているので、
そのあたりのことを調べてみる、というので別行動。
たしかに、マインの村を拠点とする暗黒組織とのかかわりといい、セイルーンに入り込んでいたという魔族とのかかわりといい。
レゾがどんな名目でいろいろとやっていたのかはゼルガディスですら知らないことは多いらしい。
ともあれ。
主要たる国家に神託として下された内容が内容だけに説明に訪れるものが必要。
という至極もっともらしい理由であたしたちは招かれたのだが。
あたしとしても、ゆくあてというものもなかったこともあるし。
何よりも今ではガウリイの光の剣を譲ってもらう、という大義名分も追加された。
ゆえにガウリイのゆくところについていく気満々なのだが。
それに、きになるのは魔王のあの言葉。
光の剣のことを【ゴルンノヴァ】と呼んでいたし。
あたしが姉ちゃんから習っている異世界の魔族の中でその名前を聞いたことがある。
異世界の魔王の腹心ともいえる彼らの中にその名前はあった。
同じ名前なのか、それともはたまたそう、なのか。
もそもそうだとすれば対処を謝ればそれこそ再び世界は恐怖に陥ってしまう。
てっとり早い方法は、光の剣を郷里に持ち帰ること。
そうすれば真意のほどはいやでもわかる。
「フィルさん。例の依頼料は忘れないでよ!?」
荷台の横を進む白い馬にまたがっているフィルさんにひとまず窓から顔をのぞけて念を押す。
いくら大事件があったとしても、それで受けていた依頼を忘れておざなりにするなどあたしの信念が許さない。
「うむ。それは大事ない。さて。城門がみえてきたぞ?」
何やら人々の大歓迎ぶりをうけつつも、あたしたちの乗った馬車は城門をくぐってゆく。
フィルさん、容姿はともかくとして一応はやはり国民に人気はあるようである。
しかしもし、彼が本当にこの国をついだとき…この国に未来はあるのであろうか?
ま、あたしには関係ないけどね。
問題は…今回のこと、やっぱり郷里に説明しないといけない…だろうなぁ。
そうおもうとあたしはどうしても気が重くなってしまう。
何しろ今回、あたしが使ったあの重破斬は完全版。
完全版は、それすなわち、金色の魔王…つまりは【すべての混沌を生み出せし存在】を呼びだすもの。
混沌こそが彼女であり、また彼女そのものが混沌を生み出した存在でもある。
ゆえに、混沌、と呼ばれているそれも彼女の一部であり、また彼女自身でもある。
裏を返せば、すべての世界は混沌より生まれ、そして混沌の中にと還ってゆく。
つまりは、すべてなる存在と世界の産みの母、といえる存在。
そんなのをあたしは呼び出したわけなわけで……
姉ちゃんのことだから絶対に気づいている。
あたしの予感ではセイルーンにすでに姉ちゃんからの手紙がとどいているような気もしなくもない。
もしも、もどってこいとかいわれたら、まちがいなくお仕置きは確定なので、
だまくらかしてどうにかガウリイにも一緒にいってもらって光の剣の存在で今回のことをうやみやにしてしまおう。
うん。
そんな決意を心の中に秘めつつも、あたしたちはセイルーンの城の中にとはいってゆく。
人生、何があるかがわからない。
だから旅はおもしろい。
これからまたどんなことがあたしの前に立ちふさがるかはわからない。
だけどもあたしはあたしらしく、あきらめずにあたしの生をせいいっぱいいきてゆく。
何しろ誰にとっても一番の宝は自らの【命】なのだから。
-エピローグへー
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おまけ♪
まったく。
あのリナ=インバース、という人間はあたしのことをきちんと把握しているからまあいいとして。
問題はっ!
「S。覚悟はいいかしら?」
にこやかに目の前のソレにとほほ笑みかける。
まったく。
トレーニング、つまりは練習で世界を滅ぼしてみよう、だなんてあたしはそんな子に育てた覚えはないわよ!
そもそも、復活したならしたできちんと対をなす存在にも知らせてそして世界の根源の元を創り出さねばならないのに。
あたしが光と闇、という両方の属性をもつ存在を生み出してそれぞれの世界に配置しているのは至って簡単。
反発する力はより大きな力をうみ、その力はより活力を生み出す。
ゆえにそのように創りだしているにすぎない。
そ・れ、を!
んっふっふっ♪
さあって。
根回ししだけは一応やってはいたみたいだけど本質的にきちんと仕事をこなしてなかったこいつにどんなお仕置きをしましょうかね♪
――終わり♪――
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あとがきもどき:
薫:さてさて。ようやく完了です♪最後、いろんなパターンを考えて迷ったんですけどねぇ。
リナの一人称、なので伏せてはいますけど、寝ているときに金色云々。
あれ、ヒマしてるエル様がリナの体かりて世界に具現化してたりします(笑
リナは当然、寝ているので知りませんが(大問題
あ、でもむちゃはしてませんよ~♪ただおもしろがって成り行きみてるだけですから♪
まあ、エル様のお仕置きが北の魔王にも向かったのは…いうまでもないでしょうねぇ。ええ(笑
2009年2月10日(火)某日
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