まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ
リナの一人称であり、さらにはさらに短くしよう、というもくろみ上。
かなり省いている個所があるのはまあお約束?
その間の間は読み手に想像してもらって楽しんでもらう、という他人任せな手法をとってるこの話。
そろそろレゾと魔王を出したい今日この頃。
何はともあれゆくのですv
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迷・ネオスレイヤーズ
何でもこのゼルガディスというややこしい名前の合成獣の兄ちゃんはレゾにこんな体にされたらしい。
何で一緒にいたのかきけばあのレゾと血縁関係にあるとかないとか。
祖父だか曾祖父にあたる人物らしい。
つまりは身内を本人の同意なく合成獣にした、ということとなる。
何だかなぁ。
「それで。だ、あんたはあの例の品をこの俺に渡すきはあるのか?」
「ないわね。そもそも、そっちの事情もわかったけど。こっちにもこっちの事情ってもんがあるし」
あくまでも賢者の石をアレから取り出している、ということは伏せておく。
「だけど、赤法師レゾってたしか聖人としても有名よね。そんな人がどうして……」
アメリアのみはどうも納得がいかないらしい。
「あいつは己の目が開くためならばどんな手段もいとわないからな。
黒魔法、白魔法を極めたのもすべては自分の目を開くための布石にすぎない。
旅をしながら人々を直している、というのもあくまでもそれらは実験の一部にすぎないんだ」
何か聞けば聞くほど赤法師レゾのイメージがなぁ。
しかし、そんなに目を開くことに固執するならば何でゼフィーリアにいかなかったのやら。
一部の神官とかってあの地ではなんでか神聖魔法がつかえる人もいることだし。
つ~かあたしの姉ちゃんも使えるし。
話しによれば女王様もつかえるらしい。
今だに女王様が一体【何】なのかは姉ちゃんも苦笑して話してくれないが。
彼女もまた普通でないことは確かである。
「白魔法をも極めてる、とはきくけど神聖魔法はためしたわけ?」
あたしの至極もっともな質問に対し、
「?何いってるの?リナ。神聖呪文なんて使えるのはゼフィーリアの関係者くらいなものよ」
さらっと何げにいってくるアメリアの姿。
さすがに王族ということもあり、そのあたりのことは一応は知っているらしい。
たしかになぜか王室関係者はこぞって神聖呪文…ほとんどが水竜王関係の術を使えるのも事実である。
「しかし、どうやら無駄話しをしている暇はなさそうだ」
「だな」
そんな会話をしている最中、ふとガウリイとゼルガディス、と名乗った男が身構える。
それとほぼ同時。
「おや。ゼルガディス。この私を裏切る、というのですか?」
ゆっくりと森の影から現われる紅い人影がひとつ。
じゃらじゃらとしたわっかのついた杖をもち、全身紅づくめのその男性。
その瞳はしっかりとじられていることから、もしかして、もしかしなくてもこいつは……
「レゾ!俺は貴様のいいなりになるのはもうたくさんだ!
よりによってセイルーンを壊滅させろ。なんて命令を下すあんたにはもうついていけない!」
・・・なんですと!?
「な。なんじゃと!?それはまことなのか!?」
フィルさんがその言葉に素早く反応し、
「なんですって!?そんなことをこの人いったんですか!?」
などと驚きの声をあげているアメリア。
というかレゾはそんな命令だしてたんかいっ!?
そちらのほうの驚きのほうがあたしとしてはかなり大きい。
「これはまた。ただ私はセイルーンの首都で騒ぎをおこし。
その騒ぎを収めるために彼らが私を求めるようにしなさい。といっただけですよ。
自我の低い子供に下級魔族などを憑依させて人々を恐怖させ、
それらを解決するためには私の力が必要とかいって人々を扇動するのがてっとりばやい。
私はそう命令したはずですよ?ゼルガディス?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・かなりまて。
自我のある人間に魔族を憑依させるなど…まるでかつてのルヴィナガルドがやっていた実験のような……
「黙れ!あんたはもう、俺があこがれていたかつてのレゾではない。
あんたがそこまで暴走するなら俺も覚悟をきめてあんたを止めるために行動するのみ」
しかし何か違和感が……
何かがおかしい。
「あなたがあのリナ=インバースさん、ですか。噂はおいおい聞いておりますよ。
あなたはゼルガディスほど聞きわけが悪いとは思えないのですが。
どうでしょう?この私に素直に女神像を渡してもらえませんか?」
にこやかな笑みをたたえたままでそんなことをいってくるその人物…レゾ。
この男…できる。
話していても隙がまったくない。
何かわからない違和感を感じはするが、おそらくここで断れば何か仕掛けてくるのは間違いがない。
「いやだ。といったら?」
「みなさんを殺していただくまでですよ」
さらっととんでもないことをいってくる。
「…わかったわ。その前にきかせて。なぜあなたはそこまでしてアレを追い求めるの?
そもそもあの女神像の中に賢者の石が入っているとは限らないんじゃないの?」
あくまでもこちらが石を取り出していることを勘づかれないようにと問いかける。
まあ、気づかれている可能性も高いが。
「ゼルガディスからきいたのですね。答えは簡単です。私はずっとアレを追い求めてきました。
その結果、女神像の中に賢者の石が隠されていることはすでに証明されているんですよ。
私の願いはただ一つ。この瞳が開くことのみ。目がみえるあなた方にはわからないかもしれませんがね。
さまざまな黒、白魔術をきわめても私の目は開きませんでした。第三者での実験はすべて成功しているのに。
おそらくは私のもつ魔力容量が関係しているのかもしれませんが。
ならば人為的に魔力を増幅させてその枷をはずすのみ。オリハルコン製の品のはずですしね。
ここで私が呪文であなたたちごと吹き飛ばして品物を手にいれることも可能なんですよ」
にこやかにとんでもないことをまたまたいってくる。
「しかし、それをしないのは、ほかならぬ、リナ=インバースさん。あなたの功績に免じて、なのですよ。
あなたの異名は私とて知っていますからね」
あたしの功績、といっても何もしてないが。
こういうにこにこして害のないようでいてさらっととんでもないことをいう輩こそやっかい。
というのは今までの経験上よくわかっている。
「ではレゾ殿。赤法師レゾとして、また賢者レゾ殿として名の通っているお主に問う。
お主は目的のものを手にいれれば二度と非道な行いはしない、と誓えるのかの?」
「ちょっ。フィルさん!?」
今までだまっていたフィルさんがいきなり会話にと割って入ってくる。
「私の目的はあくまでも視力を得るためのもの。
せっかく力を与えたゼルガディスは言うことを聞きそうにありませんしね……」
そんなフィルさんの言葉にこたえてなのか、もしくは無視してなのか。
何やらいいつつも、何やら小さくつぶやくレゾ。
と。
「う…が…あああっ!?」
いきなりその場に頭をかかえてしゃがみこむゼルガディスとなのった白づくめの男の姿が。
「ゼ、ゼルガディスどの!?」
あ、そ~いやこいつらもいたんだった。
みれば何やらゼルガ何とかとなのった男性がその場にうづくまっていたりする。
そんな彼にとミイラ男ともう一人の人物がそんな彼に声をかけるが。
次の瞬間。
声をかけた男たちまでもがいきなりもがきだし、
「うおおおっ!!」
「ちょっ!?」
いきなり襲いかかってくるゼルガディスと彼らの仲間らしき二人の男たち。
…瞳の色が尋常ではない。
こ、これは、まさか…!?
「あんた、まさか!?」
きっとあたしがレゾをにらむとにこやかに、
「ゼルガディスは私が力を与えたのですよ?私の意のままに操ることなどはたやすいこと。
このままゼルガディスにあなたたちを殺させてもいいのですよ?」
笑みをたやさずそんなことをいってくる。
よくもまあ、しゃあしゃぁと……
こいつやはりかなりタチが悪い。
しかも、それと同時にミイラ男たちまで目の色がかわっているのをみると同時に操られているらしい。
同時にいくつも呪文を悟られないように使うとは…やはり噂は伊達ではない。
ということか。
さすがに現代の賢者の一人、といわれていることはある。
そのうちの六番目の賢者、といわれている人物にはあったことはあるけども。
彼から教わったのは道具を使わずに突発的に限られた時間魔力を増幅させる術がある、ということ。
彼はあたしに教えたのちに、狙われているからといってそのまま旅だったけども、それはそれ。
「卑怯な!いきなり自分の手を汚さずに他人の手を汚させて目的を達成させようとすること、
それすなわち悪!!たとえ誰もが許してもこの私は正義の名のもとに許してはおけませんっ!!」
びしっと指をつきつけてポーズをとりながらアメリアがそんなことをいっている。
…状況わかってないんじゃ…このお姫様は……
さすがあのナーガの妹。
「お主。なぜに賢者、といわれているのにも関わらずに非道な行いに手をそめる?!
今からでも遅くはない、改心せよっ!そうでなければ儂自ら正義の鉄槌を下してまっとうな道にひきもどそうぞ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この親にして二人の娘あり。
セイルーン…先がないわね。
絶対に。
「ゆくぞ!アメリア!」
「はい。父さん!!」
いいつつ父娘はそのまま身構え攻撃モードにはいっている。
あ~もう!
ナーガといい、フィルさんといいアメリアといい、事態をややこしくするのは天性の性なわけ!?
そんな二人の声に笑みを絶やすこともなく、
「おやおや。聞きわけのない人たちですねぇ」
いいつつも、すっとその手にした杖を軽くひと振り。
そしてそのまま地面に杖を突き立てるとほぼ同時。
「炸弾陣」
どぐわぁぁぁぁぁっん!!!!!
桁はずれの魔力がいきなり収縮しその魔力は言葉とともに解き放たれる。
混沌の言葉も何もなく、ただ力ある言葉のみでの発動。
ものすごい熱風と衝撃があたしたちの体を包み込む。
何となくいやな予感がして素早く風の結界をまとっていたのが功をそうしたらしい。
その集まっていた魔力を拝借して瞬間的に魔力を高めてはった風の結界。
ちなみにこの方法はよく姉ちゃんがやっていたのであたしも独自に覚えて習得したもの。
ガウリイやアメリア、そしてフィルさん、ゼルガディスたちなどに注意を促すヒマもなかったのも事実。
とりあえず気配はあるので死んではいないだろう。
うん。
あたしの周囲には視界もままならないほどの熱気と煙が立ち込めていたりする。
しかし、さっきの言葉って…炸弾陣、と唱えたわよね?
それでこの威力って…恐るべき、レゾ。
しかし、これでは周囲の熱気が収まるまで手も足もでないのも事実。
とにかく、少しでも上空にのぼってしばし時間を稼ぐとしますか。
一時後。
けほっ……
「な…何これ……」
ゆっくりと大地に降り立つものの、未だにある熱気で風の結界を解くことはできない。
だが風にあおられ周囲の煙が晴れてゆくに従い周囲の状況がはっきりとしてくる。
たしかにそこは森の一角だったはずなのに見渡すかぎりの更地と化している。
しかも大地がとても熱く煮えたぎっているのか大地より煙が立ち上っている。
「なんかすごいな~」
ふと近くから聞こえてくるのんびりとした声に驚きふりむくと、青白い光に包まれた人影一つ。
「あんた無事だったの?」
というかよくもまあこんな呪文の中無事だったものである。
声の主はどうやって助かったのかガウリイだったらしく、その姿が煙の中から浮かび上がる。
「咄嗟に光の剣を発動させたからな」
なるほど。
いわれてみれば光の剣の光がガウリイの体を包み込むように淡く光っている。
ふむ。
やっぱり光の剣はいろいろと研究のし甲斐がありそうである。
そういえぱアメリアとフィルさんは…?
まああのナーガの関係者だから滅多なことはない、とおもうけど。
「な、何ですか!?今のは!?」
「何がおこったんじゃ!?」
ガラガラ…
大地の中より風の結界に守られているらしきひとつの球がゆっくりとのぼってくる。
その中には見覚えのあるアメリアとフィルさんの姿が。
どうやらあの一瞬にすばやくアメリアが風の結界の呪文を唱えそのまま術に巻き込まれたらしい。
やっぱし無事だったか。
悪運が強いのはナーガと一緒のようである。
「今のは……」
確かにあの瞬間、レゾが唱えた呪文は…それほど威力があるものではなかったはず。
そう、一般的には。
だが、その魔力が大きければ大きいほどその威力は桁ハズれのものとなる。
そう、今の現状のように。
魔法とは、本来それを唱えるべき存在の魔力の大小が関係し威力もまた異なるものなのだから。
しかも近くにあった山までけし飛んでいることからその威力のすごさがうかがえる。
ある意味竜破斬並み。
「どうです?素直に渡すつもりになりましたか?ならないのならこの地区ごと吹き飛ばしてもよいのですよ?」
ふとみれば、大地に足をつけることなく浮かんでいるレゾの姿。
「あなた方も一緒に消してしまってもよかったのですけど。私としてもあまりコトを大きくしたくありませんしね。
あなたがたが素直に女神像を渡してくだされば、これ以上被害はひろがりませんが、いかがです?」
その言葉からどうやらあの一瞬にあたしたちにのみ術の威力がかぶらないように何か仕掛けたとみた。
とんでもない人物である。
しかし、だからといって渡せば何もしないという保証もない。
だけど……
レゾの手にしている杖はまっすぐにあたしたちのほうを指し示しながらいってきている。
「…わかったわ」
ここで突っぱねることも可能ではあるが、それに伴うリスクのほうがかなり高い。
というかこれ以上やっかいなことになって姉ちゃんの耳にでもはいったらそれこそこわい。
「そのかわり、あたしたちの姿というか気配を感じなくなってから品物を確認してもらえるかしら」
まだ中身さえ確認されなければどうにかなるかもしれない。
というか、中身が賢者の石ではなかった、と諦めるかもしれない。
そんな期待を含めつつ、
懐というかマントの後に隠していた小さな皮袋を取り出してそっとその場におきながら問いかける。
これはいわゆるかけである。
「ふむ…どうやらそこにあるのは間違いないようですね。いいでしょう。
品物さえ素直に渡してくれるのであればその条件、のみましょう」
どうやらあたしが地面においた袋の中にオリハルコンがあるのを感じ取ったのかいってくるレゾ。
「ちょっと、リナ!?」
「おいおい。いいのか?」
横のほうで何やらアメリアとガウリイがいってくるけど。
「これ以上、自然破壊されてもこまるでしょ。あたしたちはとりあえず町にもどりましょ」
いくら何でも町の中にまではいれば中に目的の品がない、とわかっても手だしはしてこないだろう。
何やらわめくアメリアをさくっと無視し、そのままあたしはすたすたと町にむけて歩き出す。
こういう場合は振り向むいたらまけである。
オリハルコンが手にはいらないのは痛いが厄介事に巻き込まれるのも困る。
どうやら気配からしてあたしたちがたしかに立ち去るまでその場を動こうとしていないのはわかる。
できれば、自分の勘違いでした。
というのでレゾが諦めてくれることを期待しつつあたしはあたしでもう一つの気がかりにむけて進むことに。
何しろあの町にナーガ残してきてるからなぁ……
ま、まあいくらあのナーガでも自分の国で厄介事はしでかしてない…と思いたい……
「な、なんじゃぁ!?」
まず目にはいったのはもくもくと立ち上る煙と、がれきと化した町の姿。
町にと戻ったあたしたちを待ち受けていたのはそんな光景。
ちなみに町の地面には無数にヒビのようなものがはいって地面がぱっくりと割れている。
その風景をみて思わず唖然とするあたしたち。
一番驚愕したのはフィルさんなのか驚きの声を意の一番にあげてくる。
「で、殿下!!」
ふとそんなあたしたちに気づいたのか兵士の一人がかけよってくる。
しかもなにやらかなりぼろぼろの状態で…いったい何が?
「これは一体なにごとです!?」
アメリアがそんな兵士に問いかけるものの、
「そ、それが私たちにもさっぱり……グレイシア様達がかろうじて町の人々を守ってくださってはいますが…」
言葉少なにいってくる兵士その一。
兵士その一の説明を要約すると、いきなり町にいた動物たちがこぞって異形の姿にと変化したらしい。
その変化とはいわゆるレッサーデーモン化であり、町はあっというまに大パニック。
ナーガが何やら聖なる方陣を描いてその中に町の人々を避難させているらしい。
ナーガも結構やるときはやるもんだ、と別の意味で感心してしまう。
しかし…生きている動物がデーモン化って…まさか…まさかねぇ?
以前、うちの姉ちゃんからそのあたりの定義はしつこく聞かされてはいはするものの、でもまさか……
だったら郷里の姉ちゃんとかが出てきても不思議ではなさそうな今回の事件。
もしもそんなことになったらあたしの命は絶対にないっ!
「それより、話をしている暇はなさそうだぜ?」
ガウリイがいつのまにか剣に手をかけ、とある一点をみつめていってくる。
それとほぼ同時。
今まであたしたちと話していた兵士がいきなり石と化す。
あたしたちが驚き一瞬固まるのとほぼ同時、その背後より生まれいずる紅き闇がひとつほど。
それはやがて人の形をなしてゆき……
「こまりましたねぇ。先ほどあなたからもらったこの中には肝心なモノがふくまれていませんよ?
今度こそ本当に例の品を渡していただけますか?でなければ人々はこのまま目覚めることはありませんよ?」
にこやかに笑みを浮かべたままでそんなことをいってくるのは言うまでもなく……紅き衣をまとった男。
「レゾ!きさま、何をした!?」
そんな男性…赤法師レゾにといっているゼルガディスの姿が見て取れる。
「別に大したことではありませんよ。素直に品物さえわたしてくださればすぐにでも石化は解除しましょう。
悩んでいる時間はありませんよ?この石化は時間とともに魂までをも破壊しますから」
しかもとんでもない発言をかましてくれるし、こやつは……
と。
「お~ほっほっほっ!!ついに尻尾をだしたわね!!このナーガ様の目の黒いうちは勝手はさせないわよっ!!」
…あ゛~……
またやっかいなやつが……
場違いなまでの高笑いとそして声が聞こえてくる。
ふとみれば少し先の教会らしき鐘つき堂のてっぺんにすくっとたって高笑いをあげている人影一つ。
見なかったことにしよう。
うん。
「お~ほっほっほっ!!リナ!覚悟はいいかしら?
私にお宝を渡したくないばかりに町の人たちを石化するとは!あなたも語るにおちたわね!お~ほっほっほっ!!」
だぁぁっ!!
この状況がわかってないこやつを誰か何とかしてぇぇっ!!
そんなあたしの心の叫びを知ってか知らずか、
「さすが姉さんですっ!」
…え~と、どこをどうみたらそのように褒め言葉が?
ねえ?
脱力せざるを得ないのはおそらくあたしだけではない…と思いたい。
「リナ=インバース!覚悟なさいっ!!魔結球!!」
…げっ。
た、たしかこの術は!!
ナーガの言葉に従い、あたしたちの上空にちょっとしたひとつの球体が出現し、そして……
ヒュ…バシュバシュバシュ!!!
その球体より無数の氷のつららが出現し、あたり構わず雨のようにと降り注ぐ。
「…だあっ!何で状況をいつもややこしくさせるのよぉっ!!」
と…とにかくあの球体をどうにかしなければ。
それこそレゾだけでなくナーガの相手なんて冗談じゃないっ!!
上空から降り注ぐ氷のつららに対応し、ともかく逃げるのが精いっぱい。
と。
「炎の矢!!」
ポシュ。
ナイスッ!
さすがに空中に浮かんでいるソレが原因、とわかったらしくすかさずゼルガディスが呪文を放つ。
氷と炎の相互交換にてものの見事にソレはかききえる。
対消滅、というやつである。
ふわり。
そうこうしている最中、小さな皮袋がふわりと空中にと浮かび上がり、それはそのままレゾのほうにとむかってゆく。
「やれやれ。手間をかけさせてくれましたね。しかし…これで……」
まさか、あれは!?
あわててアレを入れていたはずの場所をまさぐるが、そこには例の品物はなし。
今のどさくさにまぎれて何をしたのかわからないがどうやらレゾはまんまと品物が入った袋を奪ったらしい。
レゾが皮袋を手にすると同時にボッ、と炎をあげて炭と化す袋の中から小さな石ころが姿を表す。
ちっ。
同じことを思ったらしく、ゼルガディスは呪文を唱え出し、ガウリイはガウリイで光の剣を出現させる。
あたしの勘がやばそうだ、と告げている。
すかさずあたしもまた呪文を唱えはじめ…
「何!?」
そう叫んだのは誰の声なのか。
ふとみればレゾは迷うことなく手の中にとある小さな石を一息にと飲み下す。
それとほぼ同時。
立っていられないほどの突風と、何ともいえない威圧感が襲いくる。
「うっ……」
威圧感とほぼ同時に何ともいえない瘴気すらもたちこめる。
おもわず口を押さえて呪文詠唱を止めたくなるほどに。
「ふ…ふははっ!!みえる、みえるぞっ!!」
そんな中で一人、哄笑を上げているレゾの姿。
「崩霊裂!!」
間髪いれずにゼルガディスの力ある言葉が解き放たれる。
こ、こいつこんな呪文つかえるんだ。
精霊魔法の中では最高峰、とされている呪文。
が、しかしその青白い光は瞬く間にとかききえ、そして……
ゆっくりと開いたとおもわしきレゾの瞳は…まごうことなく深紅。
その周囲には瘴気の渦が立ちこめ、レゾを中心として問答無用で広がっている。
それと同時にそこに立っているはずのレゾ…だったものはあきらかに姿を変化させている。
ごっそりと肉はそげおち、その下からは硬質な何か、がのぞいている。
紅いまるで海老の甲殻のようなそれ。
そして、それよりもさらに血の流れよりも紅き一対の深紅の瞳。
たらっ。
さすがのあたし、でもわかる。
今、あたしたちの目の前でいったい何が起こっているのか、ということが。
「…え?こ…これは…ちょっと、リナちゃん。これって本格的にやばくない!?」
ナーガがさすがに普通でないことに気づいたらしくそんなことを今さらながらにいってくる。
「みてわかるでしょうがっ!」
そんなナーガに問答無用で思わず突っ込みをいれるあたしもある程度はゆとりがあるのかもしれない。
アメリアとフィルさんに至ってはほぼ絶句状態。
「…まさか……ルビーアイ…赤眼の魔王・シャブラニグドゥ……」
赤眼の魔王・シャブラニグドゥ。
かつて神である赤の竜神スィーフィードと戦い、その戦いの末に七つに分断されたという伝説の魔王。
事実、千年ばかり前にその七つの欠片のうちの一つが復活し世界は混乱を極めた。
一般的にはひとの心の中にとソレは封印された、と伝わっているが事実は異なる。
心の中、というよりは人の魂そのものに封印されているらしい。
そして…今。
あたしたちの目の前にいるのは、おそらく間違いなく……
「え?え?リナ。それに姉さん、いったい…!?」
一人よくわからないのか戸惑いの声をあげているアメリア。
「な、なんじゃ!?いったいレゾ殿に何が!?」
そしてこれまた何やらわめいているフィルさんの姿。
「って一人で先ににげるなっ!!」
どさくさにまぎれてこの場から逃げだそうとするナーガの首根っこをひっつかむ。
「い、いやぁねぇ。リナちゃん。別に逃げたりはしないわよ。ただちょっとお花畑に……」
「この状況で嘘をつくなっ!」
というか、まずい。
かなりマズイ。
レゾ…否、魔王より発せられる瘴気によってそこにあった町並みはこぞってぼろりと脆くも崩れ去っていたりする。
と。
「崩魔陣!!」
第三者の別の声。
それと同時に魔王を中心とした聖なる六紡星が出現する。
今しかないっ!
「黒霧炎!!」
かつてレゾであったソレを包み込む光の魔方陣。
それにあわせたかのように、あたしの放った黒い霧が周囲を覆い尽くし視界をふさぐ。
…魔王にこんな子手先の技が通用するかどうかはまず無駄だろうが。
「ガウリイ様!それにドラマタのリナさんっ!いったい何があったんですか!?」
そんなあたしたちのほうにと駆け寄ってくる黒髪の女性。
あ、そ~いやこの人もいたんだったっけ?
というか、さりげにこの人、毒づいてないか?
「あんたはたしかサイラーグの……」
どうやらゼルガディスは彼女のことを知っているらしい。
まあレゾの関係者ならばサイラーグくらいはいっていても不思議ではない。
「どうもこうもないわよ。というか、よく無事だったわね」
「何かものすごくよくない予感がしたので人々を安全な場所まで避難させていたんです。
ですが兵士さんたちは呪文が間に合わなくていきなり石になってしまって……」
聞けば、町の人たちが危険、と判断してなのか近くの町まで人々を兵士たちは避難させていたらしい。
といっても今だに全員避難が完了した、というわけではなさそうだが。
「わるいが、話をしている暇はなさそうだぜ?」
光の刃を出現させたまま、きっと闇のほうを見据えて固い声でいってくるガウリイの姿。
ゆっくりとあたしの放った黒い霧はまるでかききえるようにと解け消え、その中より現れる紅き闇がひとつ。
先ほどとは異なり、そこにはたしかにレゾ当人、としか視えない人物がいるものの、
そのレゾより発生した瘴気は紅き甲殻をともない、何ともいえない異形の姿にと変化していたりする。
大きさ的にドラゴン等は比ではない。
【レゾ】から発生している瘴気がそれらを形づくっているのだとわかるものの、だからといってどうにかできるものでもない。
ゆっくりと【それ】は歩むでもなく、かといってこれでもか、という存在感を感じさせつつも、
『選ばせてやろう。好きな道を』
レゾの姿でレゾではない異なる声であたしたちにむかって【ソレ】はいってくる。
『この我を再び復活させたそのささやかな礼として』
お礼、という言葉でぴくりとナーガが反応するが、
『この我に従うならば天寿を全うすることもできよう。しかしもしそれがどうしても嫌だ、というのならば仕方がない。
水竜王に動きを封じられたもう一人の我。北の魔王を解き放つ前に相手をしてやろう。選ぶがいい』
とんでもないことをいってくる。
というか、北の魔王が復活したらそれこそ世界は終わりである。
かつて水竜王がその力を込めて魔王のかけらをカタート山脈に封じたのは昔話でも有名すぎる話。
中にはまゆつばもの、ととらえている人々も多数いるが。
それが真実だ、としっているものもこの世界には多々といる。
魔王…すなわち魔族の望みは滅びと滅亡。
混沌へと還ることこそが彼らの存在意義なのだ、と口をすっぱくして姉ちゃんから聞かされている。
ゆえにそんな魔族の王が復活するなど世界の存亡にかかわる出来事。
いやまあ、今すでに七つの欠片のうちの一つが復活してしまっている時点で大問題なんだけど。
「…そうか。レゾの瞳が開かなかったのは…あんたがいたから…あんた、レゾに何かしてたわね?」
これはいわゆる虚勢のようなもの。
何かいわないと周囲に満ちた瘴気と圧倒されそうなまでの存在感に押しつぶされそうになってしまう。
もっとも、そう簡単にやられるつもりもさらさらないが。
『我はこのものの魂の中に封じられていたからな。内部よりちょっと干渉しただけで人とは弱いものよ』
そんなあたしの質問に律儀にも質問にこたえてくる【レゾ】…否、レゾ=シャブラニグドゥ。
「そんな…そんな…まさか、あの神託が現実になったというの!?」
シルフィールがそれをみて半ば半狂乱になりながらそんなことを叫んでるし。
そういやそんなこといってたっけ。
紅き闇がどうの…って、アメリアが。
普通に考えれば神々と覇権を争った魔王に人がかなうはずもない。
しかし魔王が復活したことはすなわち、世界の滅亡をも意味しているのに他ならない。
おそらく目の前のコレもそのきになればあたしたちなんてちっぽけな人間は一瞬のうちに消し去ることができるであろう。
かといって、魔王に従うなんて選択をしようものならそれこそあたしの命はないっ!!
…個人的な事情はさておいて。
というか、人の矜持としてそれはどうか、という問題である。
「ほざけっ!何をたわけたことを!おごるな!おまえが時間の裏側に封印されている間人間も進歩している。
旧時代の魔王などこのゾルフが片づけてくれるっ!」
…おひこら。
約一名、この状況を理解していないやつ発見。
びしっと指をつきつけ、そして両手を高々とあげ、
「黄昏よりも暗きもの、血の流れよりも紅きもの、時の流れに埋もれし、偉大なる汝の名において……」
って、このカオスワーズは竜破斬!?
…ただの三流ミイラ魔道士ではなかったのか。
だがしかしっ!
「やめなさい。無駄よっ!」
「えいっ」
ごいっん…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あたしの言葉と、ゾルフと名乗った元ミイラ男の頭に岩が直撃するのがほぼ同時。
「…あんた、おとなしそうな顔してやるな……」
一瞬驚いたのか、それでも安堵の表情を浮かべてそんなことをシルフィールにといっているゼルガディス。
そう、何とシルフィールが石でおもいっきり相手の頭をなぐったのだ。
たしかにあのまま彼に呪文を唱えさせていたらどうなっていたことか。
「?シルフィール?」
理解していないのか、ガウリイが首をかしげつつ、頭を抱えている男をちらりと横目でみながら問いかける。
「竜破斬は魔王の力を借りて放つ攻撃呪文です。相手が魔王当人なのにその魔王の力を借りた攻撃なんて。
それこそ問題外ですわ。この人、きちんと魔術の特性や特徴を理解していないのですの?」
見た目おしとやかな女性にやられたら立ち直れないだろうな~、たぶん。
『ほう。魔術の特性をきちんと把握していたか。少しは楽しめそうだな。
長きにわたりこのレゾの内に封じられていたのでまだ力がなじまないことでもあるしな。
お前たちがその気ならば我の復活を祝ってトレーニングにつきあってもらおう。
汝らは我に従うつもりはさらさらないのであろう?命あるものたちよ』
そう【レゾ】がいうのと同時。
ぶわっ!!
周囲に何ともいえない熱気が立ち込める。
次の瞬間。
あたしたちのいた周囲以外、一瞬のうちに大地が崩壊しそこから溶岩が吹き出しあたりを埋め尽くす。
「ちっ。フィルさんは人々の避難をっ!」
「う、うむ」
さすがにこの状況で説得云々、と言い出さないだけまだよしとしよう。
あたしの言葉にはっと我にもどったのか、あわてて町のほうにとむかっているフィルさんの姿。
魔王がそんなフィルさんをそのまま見逃したのは、ほうっておいても問題ない、と判断してなのか。
それともはたまたあがくあたしたち人間の行動をみて楽しんでいるのか。
おそらく後者。
「ち。勝てないのはわかっていてもやるしかない、か」
そんな【レゾ】を見据えつつぽそり、とつぶやくゼルガディス。
どうなら同じ気持ちなのか、バトルアックスをもっている男性もその言葉にうなづいていたりする。
まったく、この男どもは……
「あたしは…死にたくないわ。死ぬつもりで戦うなんて馬鹿げているし」
「リナさん!?まさか魔王に組みするのですか!?わたくしはあきらめません。死ぬつもりで戦いを挑みます」
そんなあたしにシルフィールが何やら横からいってくるけど。
ああもうっ!
「だ・か・らっ!!その気持ちからして負けてるのよっ!!あたしは死ぬ気はさらさらないわっ!
かといって魔王の手下になんてなる気もこれっぽっちもない。あたしの主はあたしのみ。
あたしのことはあたし自身で決める。誰に指図されるいわれもないわ。
シルフィール、あんたもっ!それにゼルガディス達も!死んでもいいから、なんて口がさけてもいわないのっ!
たとえ勝てる確率が1%以下だとしても、負ける、とはじめからおもって戦えばその確率も0になる。
つまりっ!戦うからには絶対にかつ!絶対に死なない!そう思って戦わないと意味がない。といってるのよっ!」
そう。
どんな不利な状況においても、人間、少しでも負けを意識すればどうしてもそちらに心もひっぱられる。
そしてまた、人の心はごくまれに強い力を生むもの。
心の強さにおいて奇跡すらなしえるほどに。
絶望にとらわれたらそれこそ終わり。
負の心はさらなる負を呼びこみ、そしてそれは闇の生き物たちの糧となる。
「あたしはこれっぽっちも負けるだなんてみじんも思ってないわ。
魔王。あんたたちからみれば人間なんてちっぽけなものでしょうけど。それでも短い命を懸命に生きてるのよ。
そんな命をあんたの好きにさせてたまるものですかっ!
それにっ!あたしの命はあたしのお宝っ!大切なお宝をあげれるはずないでしょっ!」
そう、命にかえられるものなどはない。
だからこそ…あたしは、ひかない。
負けもしない。
『なるほど。生きとし生けるもの達の中で、久しぶりにみたな。その絶望を知らぬその瞳。
よいだろう。あがいてみるがよい。ちっぽけな存在よ。我らが望みは絶望と恐怖。
お前のような存在の絶望と恐怖はさぞよい味がするであろう』
…それが、戦いの開始の言葉。
あたしは絶対にまけない。
というか負けるわけにはいかないのよっ!
そうでないとあとで姉ちゃんにどんな目にあわされるかっ!!
-続くー
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あとがきもどき:
薫:のんびりと打ちこみしつつも、訂正箇所をみつめては訂正しまくってたら、upが遅くなったのはすいません(汗
それでもまだまだ訂正する場所が全部みつけられていないのはこれいかに?
そ~いえば、ちょっとしたつぶやき。
新装版のスレイヤーズさん。
作者、訂正箇所や追加してる個所はある、とはいっていましたけど。
誤字は訂正してないんですね…
いや、一巻さん、北の魔王、レイ=マグナス=シャブラニグドゥを封印したの、天竜王、になってますよ(笑
元もたしか間違っていたはず。
その前の降魔戦争の類ではきちんと水竜王、になってますけどね(苦笑
そういやド忘れしたエル様の武器の例の大鎌の名前。
どこかに書いたのは覚えてるけどそれがどこかは皆目不明。
…大量にあるメガブラさんのホンから探し出すかなぁ…
それか、漫遊のトップに人物紹介をいれてそれらの公式設定さんを書きだしとくかな?
まあ、個人的な事情とぼやきはともかくとして。
ではまた次回にてv
次回でようやくラスト、魔王との戦い、決着ですvv
ではでは~♪
2009年2月9日(月)某日
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