まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ
神託の内容。
すぐに思い浮かんだ人はスレイヤーズの通ですね(笑
ええ。リナがSP時代にさわぎまくったあれです(まて
でも、あの神託って…事実でしたよね(苦笑
ただ、解釈をまちがいまくってた村人がアレだったのがいけなかったわけでv
何はともあれ、ようやく物語も佳境ちかし。
ゆくのですv
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迷・ネオスレイヤーズ
「…神託が?」
「はい」
とりあえず、シルフィールという女性を寝かしたのちに、どうしてここにアメリアさんたちがいるのかを聞いているあたしたち。
「サイラーグ…って、ああ、あのご飯がうまかった姉ちゃんかっ!!」
ここにいたり、ようやくガウリイはあの女性がだれかを思い出したようであるが。
そういう覚え方しかされていないあの人はかなり気のどくである。
何でもアメリアさんの説明によれば、サイラーグにとある神託が下されたらしく、
しかもそれはサイラーグだけでは力ある巫女や神官といったものたちはすべてきいたらしい。
これはただ事ではない、というので代表してシルフィールさんがセイルーンに派遣されてきた、とのこと。
「それで、その神託をうけて、シルフィールさんが代表してセイルーンにやってきたらしく。
ちょうどそのころ、セイルーンでもにたような神託をうけまして」
サイラーグとセイルーン。
二か所で下されたという神託。
その内容がかなり気にかかる。
わざわざサイラーグ、つまりはディルス王国からここ、セイルーン王国まで出向く必要性がある。
と判断されたほどの神託。
あまりよくない内容であることは否めないであろう。
「ふむ。それでクリス。お主は何とみる?」
上位の神官、と見受けた人物は何とフィルさんの弟らしい。
あのランディという弟といい、このクリスという弟といい。
ここまで似ていない兄弟も珍しい。
まあ、フィルさんが特別なのかもしんないが。
もしかしたらもしかしなくても全員母親が違うのかもしれない。
まあ、王族にはそういったことはよくあるらしいし。
それでよく他の国などではお家騒動が持ち上がるわけで。
ちなみに、このフィルさんの弟。
つまりは、セイルーンの第二皇太子。
クリストファ=ウル=ブロッゾ=セイルーン。
セイルーンの神官長を務めているらしい。
「何かがおこっているのは間違いないでしょう。
最近のレッサーデーモンなどの大量発生などにも関係しているのかもしれません」
しかし、紅き闇…って、ものすっごく嫌な予感がさらに増してるんですが。
さきほど聞いた神託の内容を聞いて不安がどうしても頭から離れない。
「なら、詳しい人にきけばいいんじゃないのか?」
こ、こいつは~……
は~……
ものすっごくとぼけたことを、話しあいの場で提案してくるガウリイのセリフに思わずため息。
「あのねぇ。詳しい人って。あのゼル何とかってやつとかにきくつもり?」
確かに彼なら何かしってるかもしれないけど。
敵対しているあたしたちに素直に情報をくれるとはおもえない。
そもそも、どうしてそこまで必至に賢者の石を追い求めるのかすらも謎なのだから。
「でもさ。襲撃の中に魔族の人も今までいく人かいただろ?」
今、この場にいるのは関係者のみ。
それでも、ガウリイの魔族、という言葉にアメリアさんやクリストファさんはかなり驚いたような表情を浮かべてるが。
まあ、普段の生活の中でそんな単語なんてでてくるはずもなければ出会う確率もないし当然といえば当然の反応か。
「まあ、魔族をいく人、と数えるかどうかは別として。それがどうかしたわけ?」
こいつは何がいいたいのやら。
「だから。そこのフィルさんの弟さんといっしょにいた魔族の人にきけばわかるんじゃないのか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
ガウリイが何をいいたいのか理解不能。
「ほら。さっき一緒にいただろ?顔に傷がある魔族の人」
いや、え~と…
顔に傷がある人って…たしか、クリストファさんいわく、王宮のお抱え魔道士とか何とか…
って……
「え…ええええ!?」
がたんっ!!
おもわず席を立ちあがるあたしは間違っていない。
絶対に。
「が、ガウリイどのと申されましたな。何をおかしなことを。彼はれっきとした人間ですよ?どうみても人間でしょう?」
いや、実力ある魔族なら見た目はどうにでもなる。
「たしか。あのものはお主の知り合いじゃったのぉ」
「え。ええ。昔馴染みです。幼馴染でもありますし。まちがえるはずありませんよ」
しかし、もしもガウリイがいうことが真実だとして……
「お~ほっほっほっ!なら、確認してみればいいじゃないのよ」
そんな会話の中、珍しく着替えて、まともな格好をしている黒いドレス姿のナーガが口を挟んでくる。
こういう格好をしてだまっていればたしかにナーガもどこぞのお嬢様、とみえなくもない。
あくまでもだまっていれば、だけど。
「ナーガ。そういうけど確認ってどうするつもりよ?」
ナーガにしては珍しくまともな意見。
ゆえに疑念を抱きつつも問いかける。
「ふっ。忘れたの?リナ。魔族は純粋であればあるほど嘘はつけないのよ?」
「あ、そ~いえば」
そんなことをあのラギアソーンもいってたっけ?
精神生命体である魔族が嘘をつくことは、自身の存在すらをも否定することになるのでつけないとか何とか。
だからといって真実もいわない。
ジョンを探索するにあたり、彼より聞きだした魔族の真実。
どちらともつかない言動をして人々を翻弄させるのが当たり前とか何とか……
人間でもいるし。
そんな理解不能なやつは。
ジョンの口添えをしてくれた上位魔族がそれらが得意だったんですよ。
とラギアソーンはにこやかにいっていた。
そんなことが得意な知り合いはいりません。
絶対に。
と。
コンコン。
「何じゃ?今は会議中であるがゆえに誰も近づかないようにといっておいたはずじゃが?」
そんな話し合いの中、いきなり部屋の扉がノックされる。
「申し訳ありません。殿下。実は別のところからも神官様がおみえになられたようです」
別のところ?
思わず顔を見合わせるあたしたち。
ガチャリ、と扉をあけるとそこにはかしこまった兵士が一人。
「して、今度はどこから?」
「それが、詳しくは話せないのでひみつです。としかいわれませんが。
その口ぶりからおそらくはどこかの国からの秘密の使者とおもわれます」
まあ、国がらみとかならばめったに口を割らないであろう。
というか、わざわざ詳しくは話せない。
というあたり、少し抜けているというか何というか。
「ふむ。あってみよう」
即決ですか。
…よく暗殺とかされないなぁ。
このフィルさん。
相手の身元も何もわからないのに即座に決定するのはあるいみいいことなのか悪いことなのか。
…まあ、レッサーデーモンですらすでで倒せるフィルさん相手に暗殺も何もないのかもしれないけど。
いいつつも、部屋からでてゆくフィルさんの姿。
「と、とりあえず。ガウリイ。さっきの話、本当なの?」
「だってみればわかるだろ?魔族の人かどうか、なんて」
いや、わからんってば。
うちの姉ちゃんじゃあるまいし。
「まあ、確かに。ひとでないのは確かね」
ナーガまで!?
「ええ!?そうなの!?姉さん!?」
「ふっ。お~ほっほっほっ!アメリア。もしも人間ならばこのナーガ様の美しさに驚くところよ!
なのにあのカンヅェルとかいう人は私をみても何の反応もなかったわっ!」
「なるほど!」
・・・・・・・・・・・納得しますか。
そ~ですか。
この姉にしてこの妹あり、なのね……
は~。
この中で性格に常識的に判断できるのってもしかしてあたしだけ!?
しかし、まあ、あのカンヅェルに紹介されたとき、ナーガはいつもの格好であったわけで。
…ある意味、ナーガの直感も間違ってないかもしんない。
普通の人間ならばナーガの格好をみて絶対にびっくりするのが当たり前だし。
だけど、それがなかったしなぁ。
さらっとながしてたし。
大概、目を泳がすとかそういった動作があるけどあの男性にはまったくなかった。
ただ、冷たい視線でこちらをじっとみていたのみ。
「と、とにかく。確認してみましょ」
もしも魔族だったとしたら、それこそまたまたやっかい。
あのレゾの一味なのか、はたまた別の口なのか。
どちらにしても厄介なことにはかわりがない。
人型をしている、しかも人間とかわりがない、というのはかなり実力がある魔族、ということになる。
クリストファさんのいうとおり、幼馴染云々、というのが真実で、その容姿に瓜二つ。
というのを考えればクリストファさんの記憶を操作しているのか、はたまた相手の姿を借りているのか。
それか死んだ人間を魔族にして下っ端として使っているか。
そういう方法もある、と以前郷里の姉ちゃんがいっていた。
それか、クリストファさんが嘘をついているか。
まあ、人がよさそうなふりをして実は黒幕、なんてよくあることだし。
まあナーガ達の手前いえないけど。
何しろこの前、第三王位継承者であるランディオーネの事件があったばかりだし。
「アメリアさん。そのカンヅェルさんの部屋は?」
「アメリア、でいいですよ?私もリナって呼びますから。いいですよね?」
このあたりのきやすさは王族にしては珍しい。
まあ、ナーガもフィルさんも王族らしくないので彼女にとっては至極当然なのであろう。
「こっちです」
アメリアさん…もとい、アメリアに案内されるままに、あたしたちは協会の一室にむかうことに。
「あれ?父さん?」
「あら。お父様」
カンヅェルがいる、という部屋にむかっているとその部屋の中でぱったりとフィルさんと出くわしてしまう。
というか確か誰かきてたんじゃなかったっけ?
ふとみればフィルさんの後に一人の男性の姿がみてとれる。
「?フィルさん。この人は?」
「おお。この人はゼロス殿、と申されてな。とある調査をしておられるらしい。
それでカンヅェルどのの話をしたところぜひに会いたい、と申されてな」
にこやかな笑みをたたえたどこにでもあるような錫杖をもった黒い神官服の男性。
その黒いおかっぱ頭とラーメンどんぶりのような文様がついている神官服が印象深い。
ゼロス?
何かその名前に少しばかりひっかかるのもを感じるが、しかしそんな名前の知り合いはいないし。
というかこんな人物みたこともないのでおそらくあたしの気のせいであろう。
「どうも。ゼロスといいます。あの、こちらの方々は?」
にこやかにいいつつも、フィルさんに問いかけているゼロスというその神官。
「うむ。こちらが儂の娘のグレイシアにアメリア。そして魔道士リナ殿とガウリイ殿じゃ」
普通、こういう紹介のときにはフルネームで説明すべきところでは?
まあ、下手にあたしの名前をいわれて相手がおどろきでもしたらあたしはキレかねないが。
こういう神官とかってあからさまな反応するからねぇ。
あたしの名前をきいただけで。
「そうですか。ところで、あなたたちはどうしてここに?」
にこやかに笑みをたやさないまでも、それでも的確にきいてくるこの男。
けっこうこの男、かなり食えない神官である。
「私たち、カンヅェルさんに聞きたいことがあってやってきたんです」
警戒するあたしをよそにアメリアがかわりにこたえているが。
「では、一緒にはいろうかの」
いいつつも、コンコンと部屋の扉をノックする。
しばしの間があり、
「はい。どうぞ」
扉の奥より聞こえてくるとある声。
はて?
さっきまで気配が二つあったような気がするけど、開いた先にいるのはカンヅェル一人のみ。
たしかに扉の向こうに気配が二つ、確実にあったような気がしたんだけど??
ちなみに、この場にはクリストファさんはいない。
ここにくる途中であわててやってきた兵士の伝言を何かきき、そのままばたばたとどこかにいった。
扉の先にはこじんまりした部屋がひとつ。
机がひとつと戸棚がひとつ。
何ともかなりシンプル極まりない部屋である。
奥に小さなベットがひとつみえているが、ここがどうやら彼に与えられている寝室兼私室らしい。
「これは殿下。ようこ……」
カンヅェル、と名乗った王宮魔道士はフィルさんの姿をみて挨拶をしかけ、その場でなぜか硬直する。
その視線の先にいるのは……
「やぁぁっとみつけましたよぉ。カンヅェルさぁん。こんなところに隠れていらっしゃったんですねぇ」
にこやかな笑みをたたえたままにそんなことをそんな相手に言い放っているのは…
「ち、ちょっと!あんた!こいつと知り合いなの!?」
「ええ。ちょっと事情がありまして♡」
事情って…魔族と知り合う事情って…ま、まああたしも知り合いいるから魔族と知り合うはずがない。
とは言い切れないのが悲しい。
「ゼ…ゼロス!?きさま、どうしてこんなところに!?」
「それはこちらのセリフです♡それより、クロツさんとマゼンダさんの行方を知りませんかねぇ?
あの人たち、僕のお仕事の邪魔をしてくれてるんですよ♡」
にこやかな笑みを浮かべたままで、それいてどこか食えないかんじで問いかける。
クロツ?
マゼンダ?
「ま…まさか、クロツが手にしようとしているのは!?」
え~と。
まったく話しがみえないんですが?
あからさまに驚愕しているカンヅェル。
「ええ。お察しの通りです。素直に話していただけませんかねぇ?
僕だってお仕事以外のことをしたくないんですよぉ。まああなた方をどうにかしろ。
という命令は今のところうけてませんしねぇ」
ちょっとまて。
あなたがた?
しかも命令?
もしかして、こいつ…まさか……
「……仲間を売る、とおもうか?」
「いいえ♡ですけど話していただかないのであればそれなりに僕にも考えがありますので♡」
「?ゼロス殿?いったい?」
「ああ。すいませんねぇ。先ほども説明しましたけど。
このカンヅェルさんがとある組織にかかわりがあるらしくて。僕はその組織を今調べてるんですよ」
組織?
フィルさんの説明ににこやかに説明してくるこのゼロス。
「その組織って。クロツ。という名前からしてもしかして暗黒邪教集団のあの集団のことかしら?
赤眼の魔王・シャブラニグドゥを神としてあがめている邪教集団。確か本拠地はマインじゃなかったかしら?」
さらっとナーガが思い当たることがあるらしくそんなことをいってくる。
「な!?なぜそれを!?」
そんなナーガの言葉に驚愕した声をあげてくるカンヅェル。
つまりそれは肯定しているのも道理。
「お~ほっほっほっ!このナーガ様の情報網をあなどらないでほしいわねっ!
マインにアジトがあるなんて常識中の常識よっ!!お~ほっほっほっ!!」
え~と。
どこか話しがずれてない?
となれば、こいつらはレゾとは無関係。
というわけか。
しかし…また、ここでも『魔王』の単語がでてくるとは……
「どうやら、カンヅェルさんの反応から間違いないようですね。どうもありがとうございました。
フィル殿下。お世話をおかけいたしました。では、僕はこれにて♡」
「ま、まて!ゼロス!きさま…何をするきだ!?」
「きまっているでしょう?僕は僕のお仕事をするだけですよ♡」
にこやかにそう言い放ち、何ごともなかったかのようにすたすたとその場を歩いてゆく。
「あ、まっ!!」
はっと我にかえり、あわてて追いかけるものの、廊下の角を曲がったところで見うしなってしまう。
そう。
まるで相手が瞬時にかききえたのごとくに。
まさか、あいつもまた……
「く…くそっ!」
「うおっ!?」
周囲を見渡すとほぼ同時。
カンヅェルの何か切羽詰まったような声と、それと同時、フィルさんの驚いたような声が聞こえてくる。
「父さん!?」
「お父様!?」
「きさま!?」
あわてて振り向けば、そこに何か蔦のようなものに絡まれて空中に浮かんでいるフィルさんと、
そしてその背後にうかんでいるカンヅェルの姿が見て取れる。
そんな光景をみてアメリアとナーガ、そしてガウリイが声をあらげているが。
「あいつが動いているとなればもう悠長なことはしておられん。
フィリオネル王子は預かった。返してほしくば町はずれの遺跡にくるがよいっ!」
そういい捨てるや否や、そのままフィルさんを蔦のようなものでしばったままその姿をかき消すカンヅェル。
「フィルさん!?」
「父さん!」
「お父様!?」
バタバタ。
「何ごとだ!?」
カンヅェルが姿をかき消すより少し前、兵士たちが騒ぎをききつけて駆けつけてくるものの、
そんな彼らとあたしたちの目の前で姿をかき消してゆくカンヅェル。
「ま…まさか。そんな…あ、兄上ぇっ!!」
ふとみれば、後のほうでがくん、と膝をついているクリストファさんの姿が目にとまる。
と、とにかく。
「…クリストファさん。詳しい話、聞かせてもらえますか?」
この場で一番事情に詳しいのは彼のはず。
ゆえにあたしは彼にと事情を問いただすことに。
しかし、あのカンヅェルが魔族、というのはおそらく間違いはないのであろうが。
あのゼロスってやつは一体?
どうやら魔族の中でも何かがおこっているのかもしれない……
何でも幼馴染、というのは周囲にむけての名目だったらしい。
と、いうのも息子のアルフレッドが彼のことを覚えているのに自分はまったく覚えていない。
といわれ、さらには息子にも父さんが昔、僕に紹介してくれたじゃない?
とかいわれ、覚えてない、とは体裁上まったくいうこともできずにそのままそういうことにしてしまったとか。
つまりは、知らないのに知っているふりをしていたわけで。
息子のほうはもしかしたら操られていたのか何かをしていたのか、
はたまた息子が魔族にそそのかされたのかは知らないが。
まあその問題のクリストファの一人息子のアルフレッドという人物は首都にいるらしいので聞き出すことは不可能。
まず、とにかくフィルさんの救助が先決である。
延々と救助にむけた話しあいを行ったものの、結局拉致があかず。
いてもたってもいられなくなったのか、一人飛び出していったアメリアを追いかけてあたしたちも合流にいたっている今現在。
ナーガいわく、
「お父様は魔族なんかにどうこうされるようなタマじゃないわよ」
と自信タップりにいっていたりしたのだが。
まあ、それはあたしも同感。
すでに夜も更けており、周囲にはフクロウなどの鳴き声が響き渡っている。
まだむしの声などがしていることから周囲に敵はいない、と認識できる。
自然界の状態ほど敏感なものはない。
フィルさんが連れ去られてすでに半日以上が経過している。
いったいあの魔族の目的が何なのかは不明。
ナーガはとりあえず混乱を押さえるためと、狼狽しているクリストファの代わりに取り仕切る、
とかで一緒にはきていない。
ナーガが取り仕切ったほうがかなり怖いような気がするんだけども。
…ま、まあ身内や兵士などがいるんだからそう怖いことにならない…と思いたい。
町はずれの遺跡。
と相手はいったものの、その位置は不明。
というのもこのあたりにはごろごろと降魔戦争以前の遺跡が存在していることでも有名。
それでも、魔族が向かいそうな場所。
というのでナーガに心当たりがあったらしく、そちらにむかって進んでいるあたしたち。
何でも昔、不死を追い求め魔族と契約し領民を殺しまくった領主の城の遺跡がのこっているらしい。
そこに出向いた冒険者は誰ひとりとて戻ってこない、と噂になっている場所でもあるらしい。
…こわせ。
そんな不吉な場所は。
ナーガいわく、その周囲は肉食植物が多数生息しているのでそのせいではないか。
ともいっていたが。
まあたしかに魔族とかが好みそうな場所ではある。
竜破斬でおもいっきり吹き飛ばしても誰からも文句を言われない一体であることは間違いないだろう。
と。
ドゴッン!!
「何!?」
「爆発!?」
ふと、向かっている方向の逆方向。
そちらのほうからいきなり聞こえてくる爆発の音。
それと同時に眠っていたであろう鳥たちが一斉に飛び立ち騒ぐ声。
夜の闇にその声は深く響き渡る。
「とにかく。いってみましょう!父さんかもしれませんっ!」
「ちょっと!アメリア!まちなさいっ!!」
有無を言わさずにそういうと同時にかけだしてゆくアメリア。
ちっ。
「ガウリイ。アメリアをお願い。あたしは空からいってみるわ。翔封界!!」
夜なのであまり使いたくないが、そうはいってはいられない。
高速飛行の術を唱え、とにかく空から確認するためにと飛び上る。
空を移動するのは敵がいる場合、隙だらけになるので実用性はかなり低い。
が、急いでいるときなどにはこの術は重宝する。
アメリアが走っていったことからおそらくこの呪文は使えないのであろう。
そういえばナーガのやつはこの呪文をつかっているあたしをみて覚えたらしいが。
そう簡単に身につく術ではないはずなのだが…
そのあたり、変に高度な魔術というか魔力をもっているナーガである。
その理由はこの間、その血筋からようやく納得いったが……
と、とにかく。
本当にフィルさんなのか、あるいは……
よぞらを飛び交っているのはどうやらカラスたちらしい。
この森はどうやらカラスのねどこだったらしい。
いまだに空中でカラスたちは騒いでいる。
そんなカラスたちの少し下。
木々のてっぺんより少し下をくぐりぬけつつ飛んでゆく。
いくらあたしでもあんなカラスの大軍の中につっこんでいきたくない。
近づくにつれ音がさらに大きくなってくる。
それとほぼ同時、金属が絡み合うような音も聞こえてくる。
これは、フィルさんでなくてもしかしたら普通の盗賊たちかもしんない。
あたしがそんな思いを抱き始めるのとほぼ同時。
どうやら音の元凶らしきモノたちの姿がみえてくる。
即座に術を解き放ち、近くの木の影にと隠れ様子をうかがう。
みれば、あの白づくめの男と、そしてまたミイラ男。
そして何かバトルアックスをもっている騎士くずれにみえなくもない男性。
そして白づくめ達は犬もどきとそしてトロルやオーガといった者たちとたたかっている。
よくよくみればなぜかフィルさんまでもがそんな白づくめたちとともに戦っている。
え~と…これっていったい??
状況がよくわからないが、とにかくほうってはおけない。
彼らが戦っているそばには川が流れている。
これを利用しない手はない。
本当ならば火系の呪文でおもいっきりやりたいが、山火事とかになる可能性が高い。
ナーガだけならごまかせるので思いっきりやるのに……
あたしが術を唱えようとしたその刹那。
「お待ちなさい!悪人どもよ!!今こそ正義の裁きをうけるときですっ!!」
・・・・・はい?
おもいっきり目を点にしてみてみれば、少し先の木の枝にと登り戦っているそちらにむかっていい放っているアメリアの姿。
え~と……
「おお!アメリア!助けにきてくれたのか!!」
そんなアメリアの姿をみとめて、フィルさんがそんなことを叫びながらもすででトロルを撃退していたりする。
「父さん!私がきたからには好き勝手にはさせません!
悪の心があるかぎり、正義の声が呼ぶ限り。このアメリア=ウィル=テスラ=セイルーン!!
世界の果てまで悪を成敗しに参上するのみっ!とうっ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
せ、正義おたく云々…という噂はきいていた。
いたけど・・・こ、これは…え~と……
べしゃ。
あ、着地失敗してる。
目を点にしているあたしをよそに、アメリアは木から飛び降り、そのまま着地に失敗。
「ふっ。ゼルガディスさんよ。おもしろい助っ人がきたもんだが。
そんな相手が俺達に通用するとでも?レゾ様を裏切ったお前に手加減はしないぜ?」
「ふっ。ディルギア。お前にできるかな?」
そんな会話が風にのって聞こえてくる。
夜なので声がよくとおるのかあたしのいるところまで明瞭に聞こえてくるので何となくつかめる状況。
え~と。
何?
つまり、仲間割れ?
「おじょうちゃん。いい子は家でねてな。まあ、あんたと父親、両方人質にとればレゾ様も褒めてくれるだろうがな」
そんなことを犬もどきはいっていたりする。
いや、ちょっとまってよ。
フィルさんをさらったのはあのカンヅェルとかいう魔族であって、レゾとは無関係のはずじゃなかったの?!
ねえ!?
何がどうなっているのか理解不能。
あたしが混乱している最中。
「ふ!悪人に明日はないわ!さあ、観念なさいっ!!」
いいつつも、立ち上がり姿勢をただしてポーズをつけてそんな彼らに言い放っているアメリアの姿。
まあ、悪人に明日はない。
というアメリアの言い分はあたしも同感。
と。
ざわっ。
一瞬体に悪寒が走る。
「何を遊んでいるのだ。ディルギア。様子をみにくれば……」
それとともに闇から現れるカンヅェルの姿。
だがしかし、その姿はあたしが見知っているそれではなく。
顔はたしかにカンヅェルのままなのだが、その体はどちらかといえば昆虫にと近い。
立ちあがったかまきり、というところか。
しかし、顔だけが人間のカンヅェルのまま、というのでさらに異様な雰囲気をかもしだしている。
顔がカンヅェルのそれでなければ同一人物?であるとは絶対にわからなかった。
「けっ。旦那か。だまっていてくれ。こいつはオレたちの問題だ。
それに。あんたたちがセイルーンを支配しようとしているのはオレ達には関係ない。
ただ、レゾ様は寛大なおかただからな。あんたたちのような輩にも手厚くしてるだけだ」
…どうやら、レゾと彼らはつながっていたらしい。
「それに。あんたたちは自分たちで例の品をうばいたいんだろう?
レゾ様に手渡すのを懸念している、ときいたぜ?」
「それはきさまの知るところではない。しかしなぜとっととフィリオネルを殺さん」
え~と。
どうやら仲間うちで言い争っているうちがチャンスのようである。
ふとみれば、ガウリイもまた走ってそんな彼らのほうにと駆け寄っていたりする。
ちょうど位置的にはあたしがいる木の真下。
確か伝説ではアレでアレができたはず。
考えていても仕方がない。
チャンスは生かさないと。
自分自身にいいきかせ、あたしはひとまず身をひるがえしてガウリイのもとにとむかってゆく。
あたしの計画を伝えるために――
チャンスは一度。
敵が油断している今が最大のチャンス!
ドゴガァァッン!!!!!!!
しばしのち、夜の闇にちょっとした爆発音が響き渡り、もくもくと森の一角に巨大な爆発雲が立ち上ってゆく。
あたしのたてた計画はいたって単純。
素手で敵をなぎ倒しているフィルさんと、アメリアとを背後に回し、
そこでガウリイに光の剣を発動させてもらい、光の剣において特殊防壁を張ってもらう。
ということ。
ガウリイに確認したところ、そういった使い方もやはり可能であるらしく、ならばというので計画を実行したまで。
ちょうどアメリアを心配してか、はたまた一緒に攻撃に移ろうとしていたのか。
とにかくアメリアとフィルさんが近くにいたのもまた後期。
いくら仲間割れしていたとはいえ相手の意図はわからないし、こちらの味方、とも限らない。
ガウリイが光の剣を構えたのをみてとりすばやくあたしはあたしで唱えていた術を発動。
手加減なしの一発は、周囲の森ごと巻き込んで、巨大なちょっとしたクレーターを出現させる。
不意打ちをくらった襲撃者たちはあれを食らって無事でいられるはずがない。
クレーターに川の水が流れ込み、そこにちょっとした湖が出来上がるのはそう時間はかからない。
「…おまえさん、むちゃするなぁ」
光の剣を片手に構えつつも、唖然としてあたしをみていってきているガウリイに。
「あああ!リナ!私が悪人をやっつけたかったのにっ!!」
などといっているアメリア。
「何と。リナどの。ワシを助けてくれたあの白い男ごとふきとばしてしまったのか?」
・・・・はい?
え~と。
今、フィルさん、何といいました?
「は?フィルさん?今、助けた…とかって?」
あたしのそんな問いかけをさえぎるかのごとく。
「…むちゃをしてくれる。さすがは噂のリナ=インバース。というところか」
何やら聞きなれた声が上空から。
ばっとあわてて上空をふり仰げばそこに浮かんでいる人影が三つ。
よくよく眼をこらして視てみれば、どうやら風の結界を素早くまとい、空に浮かんで逃れたらしい。
ちっ。
運のいいやつ。
おそらく、あたしの唱えている呪文の声が聞こえたか何かしてあわてて対策をとったのであろう。
そこに浮かんでいるのは全身白づくめのゼル何とかという男性と、そしてミイラ男ともうひとり。
あの獣人のイヌもどきの姿はみあたらない。
魔族であったカンヅェルの姿も見当たらないことからおそらく直撃をうけて消滅したのであろう。
魔族を倒すには、一撃必殺、不意をつく。
これぞ常識。
それは普通のレッサーデーモン達にもいえること。
「おお!ゼロガディス殿。無事であったか!」
「ゼルガディス」
フィルさんの声にすばやく突っ込みの声がだれともなく戻ってくるが。
思わず身構えるあたしやガウリイ、そしてアメリアとは裏腹に、ゆっくりとその風の塊は降りてくる。
地面につくと同時に彼らがまとっていた風の結界は解除され、彼らは大地に足をつけそのままあたしたちと向き合う形に。
「どういうこと?」
とりあえず今のフィルさんの発言も気にかかる。
だがしかし警戒体制はとかずに相手にと問いかける。
「きさま!いきなり何て術をっ!!」
「ゾルフ!」
つっかかってこようとするミイラ男を制しながら、
「今、そこのフィリオネル王子がいったと…」
「こ、この人を王子だなんてよばないでっ!!」
おもいっきりすばやくその言葉を否定する。
あ、頭ではわかっていてもその単語をきくのと聞かないのでは精神面的に違うのよっ!!
あたしの叫びに目をぱちくりしつつも、
「……なるほど。最もだ」
あ、同意してきた。
「どういう意味ですか!?リナもそちらの人も!失礼ですよ!
そりゃ、父さんはこんな容姿で一般的な王子のイメージとはかけ離れてますけどとっても優しいんですよっ!!」
「つまり。アメリアも容姿云々は認めてるんだ」
「うっ」
娘ですらどうやら認めていたらしい。
言葉につまるアメリアをちらりとみつつ、
「まあ、早い話が。セイルーンを敵に回してもこちらに利益はない。と踏んだわけだ。
それよりあんたたちと手を組んだほうがはるかに能率的にも目的達成もかないそうだしな」
目的達成?
「いっとくけど。まだ手を組むとも何もいってないわよ?そっちの目的は何?」
「ぶっちゃけていおう。俺の目的は、あのレゾを倒すことだ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?
「はい?」
え~と。
あたしの聞き間違いだろうか?
こいつってレゾの手下…だったわけで。
その手下がレゾを倒す?
「あんたたちとなら、あのレゾを出しぬけそうだ。そう判断したにすぎない。
あいつのやり方は日に日に残虐性をましているっ!!」
いいつつも、だんっ、と近くの木にとこぶしをたたきつける。
それと同時にメキメキと倒れる気の毒な木さん。
暗闇でみえるその肌は白く異様にみえ、よくよくみればその肌には岩がちらほらと垣間見える。
…合成獣。
すぐさまにその言葉が頭によぎる。
それは前回のときにわかってはいたが。
が、人工的につくられた合成獣にしては彼にはきちんと瞳に光があり意思が垣間見える。
「と、とにかく。父さん。姉さんたちが心配しています。ひとまずもどりましょう」
「じゃの。おお。お主たちもわしを助けてくれた礼がしたい。一緒にくるがよい」
アメリアの言葉にうなづきつつも、そんな彼らに話しかけているフィルさんの姿。
え~と。
フィルさん。
彼らにさんざん襲われてたの…忘れてない?
ねえ?
しかしまあ、詳しく話しを聞いてみる必要性はありそうである。
何しろこちらは相手のことをまったくしらない。
レゾの…彼らの事情をしるにはいい機会。
ま、いくら何でも正規の兵士がいる中で騒ぎをおこしたりはしないだろうし。
「とりあえず、もどりますか。ナーガが何かしでかしてないか気になるしね」
まあ、彼らよりもナーガの行動のほうがかなりきがかりだよなぁ。
どうか、何ごともおこっていませんように……
-続くー
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あとがきもどき:
薫:さてさて。フィルさんの誘拐。さらっと流れてしまったのはリナの一人称であるがゆえv
いうまでもなく、レゾに反旗を翻したゼルガディスが助けたんですけど(笑
カンヅェルとレゾの関係。まあ、彼らも所詮は下っ端。ということで。
力あるものの命令には従わざるを得ないんですよ。ええ。
何しろ上司からはレゾ抹殺を命令されてはいるものの、実力的にはかなうはずもなく。
かといってあきらめました、とはじょうしにはいえないし。
なので協力体制、ということをとって機会をうかがっているということにしているわけで。
事実、機会があれば…とはおもってるけど、内心はそのまま王の望みがかなってほしいわけでもあり。
造反してしまった存在の下っ端さんは哀れなのです(だからまて
レゾもまたセイルーンの影響力を利用しよう、とも画策していたので利害が一致した。
という形にしております。
何はともあれ、次回からようやくゼルガディスもお仲間にvv
それでようやくS復活vv
さてさて、セイルーンの領土内でSの復活だ~vv
何はともあれではまた次回にてvv
2009年2月8日(日)某日
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