まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ
さてさて。今回、あまり重要でない部分はすっとぱしてさくさくと進める予定v
なのでおもたる主要人物は揃う…かな?
元たる原作と事件起こったときにいたりする人物が異なるのはまあお約束v
あ、ちなみに。こちらはアメリアの口調も原作のままでいきますので、あしからず♪
何はともあれゆくのですvv
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世界は混沌の海の上に付き立つ杖の上になりたっており、
そして世界はその柱の上に成り立つことによって構成されている。
それは魔道をかじったものがまず始めに教わる知識――
迷・ネオスレイヤーズ
ガタゴト。
ガタゴト。
荷馬車が揺れる。
結局のところ、昨日ガウリイに世界の成り立ちやそれに伴って発生した争い。
さらにいえばガウリイのもつ光の剣のことにも関係あるサイラーグの事件にまで触れたというのに、
途中でねていたこのガウリイ。
当人いわく、何でも難しい話をきいていたらねむくなるとか…
まあ、おもいっきりハリセンではたいたのはいうまでもないが。
ナーガと旅をするにあたり、スリッパ、もしくはハリセン常備は必需品。
酒場においていろいろとその場にいた人々に話しをきいたところ、
ちょうどセイルーン方面にゆく予定がある、という行商人の人がいたので途中まで乗せてもらうことになったあたしたち。
荷台に積まれた藁の山。
そしてまた牛乳がびっしりと詰まっている樽が数個。
見上げる空は今日はどんよりと曇っていて青空はみえないが、雨の気配はなさそうである。
「とりあえず、おおむね平和よね」
あたしたちを一緒に載せてくれたのは護衛の意味をも兼ねているらしい。
この荷馬車はゆく先々で品物と品物を物々交換しているらしい。
まあたしかに牛乳はあまり日持ちしないしなぁ。
気になるのはたしかに、少し街道などを離れればレッサーデーモンなどが出た、という話を途中でもよくきくこと。
レッサーデーモンなどはめったにでるものではないのに、この現象はいったい全体何なのか。
魔族があっさりと人間にくみしていることといい、何かいやな予感がひしひしと。
「この先で完了だ。あんたたち、ここまででいいのか?」
ガタン。
とある村にとたどり着き、荷台を止めてそんなことをいってくる親切な男性たち。
ちなみに、この二人、夫婦でこの仕事をしているらしい。
こういう生活もけっこういいかもしんない。
「うん?何じゃ。もうついたのか?」
フィルさんは大物だとおもいます。
荷台の上で爆睡してたし。
ナーガもいっしょくたによくねてたし。
まあ、こいつは寝ていたほうが楽でいいが。
「はい。ありがとうございました。ほら、ナーガ。ついたわよ!とっととおきるっ!!」
「う~ん。もう、何もたべられな……」
何をねぼけているのやら。
こういうときには手早く……
チャリンッ。
「お~ほっほっほっ!!それは私のものよっ!」
ほら起きた。
金属音に反応してガバッと飛び起きてそのまま地面に飛びつくナーガ。
そのまま地面にころがっているソレを素早く拾い、
「…何よ。お金じゃないの?」
ものすっごく残念そうな声をだしていたりする。
ちなみに、今あたしが落としたのはただの金属のかけら。
「反応はやいなぁ~…この姉ちゃん」
そんな様子をみてガウリイが呆れたようにいってるけど。
ま、ナーガだし。
「ようやくおきた?さ、じゃ、あたしたちもいきますか。おばちゃん、おじちゃん、ありがとね」
とりあえず、この親切な夫婦とともにいたときに刺客がこなかったのは不幸中の幸いである。
こんな親切な人を巻き込みたくはないしね。
セイルーンの国境付近まであと少し。
近道をいけばおそらく明日には国境にとたどり着けるはず。
とりあえず、親切な夫婦にお礼をいい、あたしたちはあたしたちで先をすすむことに。
そんな夫婦と別れて進むことしばし。
やがて見えてくる小さな村の姿。
森の中に位置している小さな集落。
森を切り開いて作られた集落らしく、周囲は森にと囲まれている。
立ち上る煙がひとが住んでいる温かさを物語っている。
「とりあえず、今日はあそこで宿をとりましょ」
どこかの倉庫とかでもいいから軒下でねれればそれはそれでよし。
「小さな村ねぇ。でも何か雰囲気がおかしくないかしら?」
珍しくナーガがそんなことをいってくるけど。
別に何ともおもわないけど…はて?
まあ、変な村は今まで多々とみてきているのでマヒしてるのかもしれないが。
「じゃぁ、ナーガは野宿がしたいわけ?」
「ふっ。野暮をきかないでよ。リナ!私が野宿なんてするはずないじゃないっ!
いざとなったら人徳で犬小屋でも譲り受けてねてるわよっ!お~ほっほっほっ!」
いや、それはそれで問題かと……
「とりあえず。フィルさんはここでまっててくださいね」
フィルさんの容姿で誤解されるのはものすっごく避けたいところ。
「とりあえず。あたし一人で交渉してくるわ。ガウリイはナーガたちと一緒にここでまってて」
フィルさんの身に万が一のことがあればもらえる依頼料ももらえなくなってしまう。
それゆえに、ナーガ、フィルさん、ガウリイをその場に残し、あたし一人で村の中にとはいってゆくことしばし。
村にはいり、周囲を念のためにと確認する。
小さな村である。
ちらほらと小さな子供の姿がところどころにみえるが、基本的に住人はそれほど多くないらしい。
よくて十数人、程度であろうか?
基本は農耕であるらしく、切り開いた広場には牛さんやヒツジさんなどが放牧されている。
よくもまあ、森の中だというのに狼などに狙われないものだ、とあるいみ感心。
狼などといった野生の生物はこういった牧畜されている家畜をよくおそう。
ゆえに毎回のことながら人間と野生動物との知恵比べがいまも昔も延々と続いている。
何ともほのぼのとした村の様子におもわずなごむ。
「すいませ~ん」
村にある井戸に水を汲みにきたらしい村人その一にと声をかける。
「はい?」
こういった村人はかなり親切か、もしくはかなり疑り深いかのどちらか。
今まで旅をしてきた中では問答無用で敵とみなしてきた村村もあったりもしたが…さて?
「すいません。私たち、セイルーンにむかっているんですけど。
どこかの小屋でもいいんで、今夜の夜露をしのげる場所を貸していただけませんか?
もちろん、それなりの御礼はいたします」
なるべく警戒させないように柔らかな口調で話しかける。
「それは大変だね。あんた一人でかい?」
「いえ。他にも連れがいるんですけど。あまり大人数で押しかけても失礼かとおもいまして。四人旅なんです」
人懐っこい笑みを浮かべて話しかけてくる村人その一。
しかし油断は禁物。
人のよさそうな顔をして無理難題をいってくる人をあたしはいく人も知っている。
「それは大変ですね。うちにお泊りしてはいかがでしょう?」
にっこりと笑みをうかべてそんなことをいってくるし。
「ええ!?でも御迷惑では?」
「いえいえ。困ったときはお互い様ですから、遠慮なさらずに」
「しかし、連れの容姿がちと常識離れしてまして、驚かせるかもしれませんし」
そういわれても、はいそうですか。
というわけにはいかないしなぁ~……
しかし、何か親切すぎないか?
何か裏がありそうな……
「ははは。そんなことは気になさらずに。今夜は冷えますよ?」
申し出はありがたいが…だけどなぁ。
「いやでも……」
しばしの押し問答。
というかここまで勧めてくる人も珍しい。
けっきょくあまり断っても失礼かも、というか何か裏があるのかもしれない。
と勘繰りつつも、たしかに寒い最中で野宿はご免。
さて…どうするか?
かといって、あまり断り過ぎても怪しまれる。
「それでは、お言葉にあまえます。すいません」
こういうときはこちらから折れるときも必要。
だけども警戒だけは崩さない。
よくあるのである。
村ぐるみなどで親切ぶって旅人を襲い金品を奪うような場所も。
ちなみに、うちの父ちゃんがいっていたが、こともあろうに魔族に脅されてそのようなことをしていた村もあったとか。
どちらにしても魔族が原因とはいえ魔族は金品までを必要とはしない。
ゆえに、金品を奪っていたのは村人の考えということになる。
そのまま村をほうってきちんと近くの町というか役人に事情を説明しただけでその村をあとにしたらしいが。
しかしこちらが警戒している、と勘繰られてはどうにもならない。
こういうものは狐と狸のある意味ばかしあい。
まあ、本当に親切心からいってくれているのであればそれはそれでこしたことはないが……
さて、鬼がでるか、それとも邪がでるかな?
違和感の正体。
ナーガが村にはいる前にいっていた違和感の正体は夜になってほぼ判明。
聞こえるはずのむしの声もフクロウなどの声も一切聞こえてこない夜の闇。
そういえばこの村の近くにきたときにも一切生き物の気配がしなかった。
あたしたちを泊まらせてくれる、といった村人は夕飯もだしてきたものの、
少し食べてみれば案の定というか何というか、微量ながらにとある食べ物が含まれていた。
こっそりと呪文を唱えてその威力は無効にさせて食べることには食べたのだが。
相手がどのようにして出てくるのかを見極めるのが何よりも先決。
「何だ、何だ?」
ぐっすりと寝ていたはずなのにその気配を感じてかがばっと飛び起き周囲をみているガウリイ。
まあ、私も眠くなった振りをして相手の出方をうかがっていたのだが。
横ではいまだにぐ~ぐ~ねているナーガとフィルさんの姿があったりするが。
まあ、あれだけばかすかブルーリー入りの食べ物を解毒もせずにたべていればねぇ。
ガウリイもまたたべていたようだけど、耐性があるのか、はたまた気配に飛び起きたのか。
どうやらこの兄ちゃん、光の剣をもっているのは伊達ではないらしい。
まあ気配に鋭くないと傭兵なんて絶対に務まらない職業だし。
「どうやら、うごきだしたようね」
とりあえず、ナーガが起きる前にカタをつけたほうがよさそうである。
下手をすればナーガはあたしたちごと巻き込む攻撃をしかねない。
というか絶対にする。
これだけは断言できる。
そうならないうちに手をうたねば!
「しかし、あいつら何なんだ?生きてる気配がないぞ?」
扉の外にいる存在達に対してガウリイがそんなことをいってくる。
い…生きてる気配がないって…
窓の外から外を伺えば、建物の周囲を取り囲んでいる人影が多数。
しかし、問題はその人影の中に異形の姿が入り混じっていること。
相手のほうはあたし達が眠っているとおもっているのかすぐに攻撃をしかけてはこない。
こっそりと窓から外をうかがっていると、月を覆っていた雲がゆっくりと流れ、
やがて外にいるそれらの姿を月明かりの下、浮かび上がらせる。
そこにいるのは村人たち。
小さな子供の姿もみうけられれば、大人の姿も。
だがしかしそれらすべての人々がゾンビのような姿になっている。
肉は崩れおち、かろうじて人の形を保っている状態。
ここにいた村人たちはいったい全体どこにいったのか。
最悪の可能性として村人たちがゾンビに変えられたことも否めない。
と、とにかくまずはこの場をどうにかしなければ。
「炸弾陣!!」
どごがっ!!!
アレンジして窓の外に術を解き放つ。
相手が一瞬ひるんだすきに、すばやく扉から外にと躍り出て、次に唱えていた呪文を解き放つ。
「烈閃槍!!」
あたしの放った術により青白い光の槍が空から大地にむけて降り注ぐ。
本来ならばこの技は一本の槍を放つものなれど、アレンジによって数を増やすことは可能。
「お~ほっほっほっ!お~ほっほっほっ!!」
それとほぼ同時、いきなり背後から聞こえてくる笑い声!
げっ。
おきたか!?
「ふっ。リナ!この私を寝ている間にそんなゾンビたちと一緒に襲撃しようだなんて落ちたものねっ!お~ほっほっほっ!!」
・・・・・・・・・・・・・・
「ど、どこをどうみたらそうなるんじゃぁっ!!」
おもわずそんなナーガに突っ込み。
「ふっ。言い返すのが肯定しているようなものね!しかぁっし!このナーガ様にこんな輩は通用しないわよっ!!崩魔陣!!」
カッ!
ナーガの言葉に従い、ナーガを中心として魔方陣が大地にと浮かび上がる。
この術は精霊魔法の中でもかなり高度な技とされている術の一つ。
アンデッドなどにはかなり効果的。
ナーガの放った術により、周囲にいたゾンビもどきさんたちはモノの見事に浄化されもがきながらもきえてゆく。
「ほぅ。やるな。人間」
そんなことをいってくるのは、とある男性。
とはいえ男性、というのはそのように見えるだけ。
姿形は人間のそれとまったく変わり映えがない。
…その姿が真っ黒ですきとおって多少発光とかさえしてなければ。
しかもその顔には口がない。
「って、ちょっとリナ!何でまた純魔族までいるのよ!?」
それにさすがにきづいたらしく、ナーガが驚愕したように今さらながらにいってくる。
こ、こいつ…きづいてなかったんかい。
まあ、ナーガらしい、といえばナーガらしいが。
「今回のは挨拶代わりだ。お前たちがわれらの目的を阻む限り。
お前たちが立ち寄るすべての人々を我らが主は変化させるとおっしゃっている。
この意味がきさまらにわかるかな?」
口がないのにくぐもった声で淡々とした感じでいってくるそれ。
「ちょっと。どういう意味よ!?」
「今にわかる。せいぜい自分たちの力のなさをふがいなくおもい恐怖するのだな」
そういうと同時にその場からそのままかききえるその魔族。
「いったい……」
いきなりといえばいきなりあらわれて消えたことに戸惑いを隠しきれない。
「…なあ、これって……」
ガウリイがふと、地面に残された服などを指さして何か言いたげな表情をうかべてくる。
いわれてみてみれば、そこには見慣れた服がいくつか。
食事のときに聞いた手作りだというアクセサリーが共にころがっている。
つまり、それが意味することは……
「さっきのゾンビたちって、もしかしなくても…」
「ガウリイ。それから先はいわないで」
ガウリイのいわんとすることはわかる。
おそらく…その可能性は間違いなく真実であろうことも。
信じたくないがおそらく、あのゾンビたちはこの村にいた人々のなれの果て。
いつからゾンビにされていたのかは不明なれど、だけどもそれが真実のはず。
「…とにかく。フィルさんを起こして出発しましょ」
このままここにとどまることはあまり好ましくない。
ナーガもその意味を悟ったのか珍しく顔色もわるく素直にとうなづいてくる。
「でも、あの噂ってやっぱり真実なのかしら?」
ふと空を見ながらナーガがそんなことをふとつぶやく。
?
「あの噂?」
「情報収集した中に、レゾは死者をよみがえらせて手足として使えることができるなんて眉唾ものの話があったのよ」
・・・・・・・・・・・かなりまて。
そんなことができるなど、それではまるで…まるで、ひとではなくて…魔族そのものじゃないの!?
「ま、あくまで真実性は薄いけどね」
しかし、そんな噂というか情報があった、ということ事態、何か意味があるのかもしれない。
…どうやら今回の一件。
何かまだまだ裏がありそうな気がひしひしとするんですけど…
何でこんなことになったのかなぁ……
はぁ~……
「おお。国境がみえてきたの」
図太い神経というか何というのか。
襲撃をうけている最中も寝ていたフィルさんの性格は確かにナーガの父親である。
と納得がいった先日の出来事。
ともあれ、なるべく人気のない道を選びつつもようやくセイルーンの国境の砦が見えてきた。
フィルさんが先にとみえる国境の砦をみつつもそんなことをいっている。
ちなみにあたしたちが通っているのは正規の道ではないので国境の砦を通ることはまずないが。
きちんとした街道や裏街道。
そういった箇所にはきちんとした砦はあるものの、それ以外はほぼ無法地帯。
つまりは砦を通らずともに簡単に出入りができたりするのが現状。
最も、砦付近は多少なりとも壁があり空を飛ぶか砦の門をくぐらなければ出入りは不可能となっている。
「そうね。だけども、その前に」
「だな」
確かに砦はみえてきている。
だがしかし、確かに感じる気配がひとつ。
「お~ほっほっほっ!待ち伏せとは低俗な考えね!お~ほっほっほっ!!」
ナーガも気づいてか高笑い。
しかし、周囲に他に気配がない、というのは隠れているのか、それともあとからくるのか。
とにかく油断は禁物である。
「なんじゃ?誰かおるのか?」
フィルさんだけがどうやら気づいてないらしい。
よくこれで無事に旅ができてたなぁ。
という気はさらさらしなくもないが、フィルさんの容姿が襲撃を免れていた原因なのかもしれない。
「隠れてないででてきたらどう?」
身がまえて警戒するあたしたちの視線の先。
少しさきの木陰からでてくる人影がひとつ。
全身、真白なローブとマントに身をつつんだ、たしか…
「たしか。ゼロディガスだっけ?」
「あら?ゼルガディスじゃなかった?」
そんなあたしとナーガのセリフに、
「ゼルガディスだ!!あ~。こほん。とにかく、お前たち、セイルーンにむかっているようだが辞めたほうがいい。
あいつは何をしでかすかわからんぞ。大人しく品物さえわたせばこれ以上の被害もでることはないだろう」
身構えるでもなく淡々とそんなことをいってくるその男。
「あいつは目的のためならば手段はえらばん。少し時間をやる。
セイルーンを壊滅させたくないのならば素直に品物を渡すことだな」
いいつつも、ちらり、とあたしたちのほうに視線をむけただけでそのまま再び木陰にと身を投じる。
「あ、ちょっ!!」
あわてて追いかけるものの、そこにはその姿はなし。
どうやらがさがさと茂みがかきわけられる音が離れた場所からしてきていることから、
あのまま走ってこの場を立ち去ったらしい。
「何だったのかしら?あいつ……」
しかし、セイルーンを壊滅させたくなければ。
ときたものだ。
かなり大きなことをいってきたものである。
脅し、にしては規模がでかい。
かといって大国セイルーンを敵に回すようなことをいくら何でも相手がするとはおもえない。
一人でそんなことをいいにきたあの敵にどんな意図があるのか…真意は謎。
「おお。そこの国境のしるしを超えればセイルーンじゃ」
そんなことをおもっていると、フィルさんが森の中の一角にあるとある杭のようなものを指さしていってくる。
たしかに。
見ればそこに杭のようなものがさしてあり、道しるべのようなものが建てられている。
このあたりは狩猟などで生計を立てている人々もおおく、
そんな人々のためにところかしこにこういった案内表示がなされているらしい。
「ふっ。脅しにしては大きくでたわね。とにかくいきましょ。私お腹すいたし」
いいつつも、すたすたと歩いてゆくナーガの姿。
まあ、ナーガの目的は、ふかふかのお布団で眠りたい、というのもあるだろうけど。
「この森を抜ければ駐留兵がおる町にとでる。そこで王宮に連絡をとってもらうとしよう」
そうしてもらえればこちらも助かる。
とっととこの二人を送り届けてもらうものだけはもらってとんずらしたいのが本音。
しかし、頭では理解していてもフィルさんから王宮云々、という言葉をきくのは何となく違和感が……
「とりあえず、先にいこうぜ」
そんなあたしの思いを知ってかしらずか、すたすたと歩いているガウリイ。
ま、考えていても仕方がない。
あたしとしてもゆっくりと休みたい。
きちんと兵士たちがいる場所ならばすくなくとも安心して休める場所であることは確かである。
「そうね。とりあえずいきましょ」
先ほどの敵の言葉に一抹の不安を感じつつも、ひとまずあたしもまた先を進むことに。
さってと。
ようやくゆっくりとくつろげるかな?
ざわざわざわ。
さすがに国境を越えてすぐにあるちょっとした交易の要の町、ということもあり町は活気にと満ちている。
道にはさまざまな荷台がいきかい、道端にはさまざまな露店が開かれている。
「まあ、殿下!殿下ではありませんか!」
「おお!フィリオネル殿下!!」
町にはいってしばらくすると、一人の声をかわきりにあっというまに人々にと取り囲まれてしまう。
ふむ。
どうやらこのフィルさん、その容姿のわりに人望はあるとみた。
「ありがとうございます。殿下。おかげさまでうちの子も助かりました」
「殿下のおかげで水路の調子もよくなりました。ありがとうございます」
え~と。
フィルさん、あ~た、何してるんですか?
何やら人々からちょっとぱかり唖然とするような声がかけられているのがものすっごく気にかかる。
「うむ。みなのもの、かわりはないか?またこまったことがあればいつでも意見してくるとよい」
「…ナーガ。いったいフィルさん、何やってるわけ?」
とりあえず小声でナーガにと問いかける。
「お父様はいつも自身の目で民を見ることが大切、といって常に城下にて民と触れ合っているのよ」
…さいですか。
それってつまり、考えようによってはかなり有難迷惑でないのか?
…きっと苦労してるんだろうなぁ。
フィルさんの周囲の人たち……
「そういえば。殿下。今アメリア様がいらっしゃっておりますよ」
「何?アメリアが?」
「あら。あの子がきてるの?」
うん?
アメリアって…たしか、セイルーンの巫女頭をやってるというセイルーンの第二王女でなかったっけ?
あったことはないけど。
噂にきくところでは、何でもものすっごぉぉぉぉぉい正義おたくで常に城を抜けだしては正義を広めているとかいないとか。
…つまり娘たちの有難迷惑な性格は父親ゆずり、というわけか…
そんな一人の言葉に反応して、何やら話しこんでいるフィルさんとナーガ。
しかし、気になるのは人々の反応である。
ナーガの格好をみてもあまり驚いていないのはどういうことか。
…セイルーン国民ってもしかしたらこの格好、おかしい、とおもわないのかもしれない……
「たしかここの魔道士協会に出向かれているはずですよ?」
「うむ。そうか。ちょうどいい。たちよってみよう。リナ殿達も是非娘にあってくだされ」
会いたくないです。
といえる雰囲気ではない。
「は、はぁ……」
何やら人々に流されるまましかたなくあたしもまた、フィルさんたちとともにこの町の魔道士協会にと向かってゆくことに。
何だかなぁ。
町の人たちがこぞってフィルさんのそばにきて騒いでいるこの状態からして人気があることだけは確かだが。
…何か王族っていえば権力をかざしていばっているイメージが強いけど。
もしくは問答無用の強さを誇って誰をも畏怖させていたりとか。
まあ、王族らしくない風貌とこのひとがらが人気の秘密なのかもしれない。
しかし、何だってセイルーンの巫女頭ともあろう王女がこんな国境付近の町なんかにきてるんだろう?
はて??
この町は国境付近にある町、とはいえ規模的にはそこそこの大きさを誇る。
というのもこの町には沿岸諸国連合などからの交易品などが真っ先にはいる町であり、
ゆえに自然と規模もおおきくなっている。
この町にくれば沿岸諸国連合にある品物は大概そろう、とまでいわれている町である。
そんな町に属している魔道士協会。
セイルーンは赤の竜神スィーフィードを信仰している国であり、ゆえに魔道士協会のシンボルもまたスィーフィード。
あたしとしてはあまりその名前にいい思い出はさらさらないが。
…嫌でも郷里の姉ちゃん思い出すしなぁ~……
町の中心にはスィーフィードをかたどった彫像があり、ちょっとした広場になっている。
その広場の向かい側にある魔道士協会。
建物の外見はほぼ教会と酷似しており、ここの魔道士協会は普通の教会をも兼ねている。
ゆえに人々の出入りが絶えまない。
セイルーンは信仰深き国、としても有名であることがうかがえる。
魔道士協会の前には常に衛兵が存在しており、人々の安全を守っている。
しかし、フィルさんの二人目の娘か。
…フィルさんそっくりの娘だったら怖いぞ。はてしなく。
そんなあたしの不安をよそに、
「やっほ~!!父さん!おかえりなさい!!姉さんもおかえりなさいっ!!」
何とも元気な声が協会の中からきこえてくる。
みれば、協会の中から元気にかけてくるおかっぱの女の子が一人。
はっきりいおう。
かわいい。
切りそろえたつややかな黒髪。
いうまでもなくフィルさんには微塵もこれっぽっちも似ていない。
どちらかといえばナーガに似ていなくもないかもしれない。
そしてまた。
「え?まさか。ガウリイ様!?」
?
ふとその後からでてきた人物がそんなことをいってくる。
長い黒髪の巫女服を着こんだその女性。
これぞ巫女です、というようないかにも清楚な感じの女性であるが。
「?ガウリイ。知りあい?」
どうやらその女性はガウリイのほうをみて目をうるうるさせてしかも両手を組んでかけよってくる。
「?え~と…誰だっけ?」
ごけっ。
おもわずガウリイの言葉にこけそうになってしまう。
それはどうやら相手も同じらしくずっこけそうになりながら、
「わたくしです!シルフィールですっ!こんなところでガウリイ様にお目にかかれるなんて」
いいつつその瞳はあきらかに恋する乙女モードのもの。
え~と。
どうもこの様子からしてこの女性、ガウリイに好意をもっているらしいが。
「??」
一方の当事者はきょとんとしまったくもって誰だかわからないらしい。
こ、こいつは~…
「あんたは、ほんとうにおぼえてないんかいっ!!そんなのこの人に失礼でしょうがっ!!」
すぱこぉおっん!!
本気でわかっていないガウリイにおもわずいらいらしてしまい、すばやく懐からスリッパを取り出しおもいっきりはたく。
「いてえっ!そういうけどな!このオレが名前を覚えているなんてめったとないことなんだぞ!?」
「って、いばるなっ!!」
きっぱりはっきりいばっていえることかっ!
「ガウリイ様…。と、ところで、その。…あの?アメリアさん?あの…」
ガウリイのことも気になるらしいが、アメリアの反応のほうが気になるらしい。
というか、この女性って誰?
「ああ、すいません。シルフィールさん。父さん。こちらグレンおじ様の姪のシルフィールさんです。
サイラーグの巫女頭をされているんですが、今回こちらに立ち寄られているんです」
フィルさんを父、と呼んだおかっぱの女の子がフィルさんにその黒髪の女性を指さしながら紹介する。
「何?あのグレン殿のか。するとエルク殿の娘ごか。しかし、アメリア。どうしてこのような場に?」
「父さんこそ。ランディオーネおじ様と出かけたっきりで心配してたんですよ?
それにグレイシア姉さんと一緒だなんておどろきました」
「なぁに、旅の途中でたまたま偶然になっての。がっはっはっ」
なごやかに会話をしているに手も似てつかないこの父娘。
あ、何か黒髪のシルフィールとか呼ばれた女性の顔色がだんだんとわるくなってる。
…たぶん、理由はいうまでもないんだろうなぁ~……
「あ、あのぉ?もしかして、もしかしなくても、そちらの人って……」
とにかく否定してほしいのか、みしらずのあたしにと問いかけてくる。
気持ちはわかるけど。
現実はあまくない。
「あ。シルフィールさん。紹介しますね。こちら私の父。フィリオネル=エル=ディ=セイルーン。
で、姉のグレシイア=ウル=ナーガ=セイルーン。です。で、父さん?こちらの方々は?」
「アメリアさんのお父様って…つまり……」
声が震えてるし。
あ~……こんなお嬢様タイプの人にはこの現実は…きついよねぇ。
「王子!こんなときにお戻りになられて、これぞ神のお導きですな!」
「「い…いやぁぁっ!」」
それとほぼ同時。
建物からでてきた別の男性、服からして神官か何か、であろう。
しかもけっこう上位の。
とにかく、そんな人物がフィルさんをみてそんなことをいってくる。
その直後、あたしとシルフィール、という人の叫びが同時に重なる。
「こ、この人を王子だなんてよばないでぇっっ!!」
あたしの心からの叫びと。
「いやぁぁ!王子様って、王子様ってぇぇっ!!」
ばたっ。
「あ。おい。え~と。シルなんとかってひと、しっかり!」
「だから!あんたはあんたで知り合いなんでしょぅがあっ!!」
その現実に耐えられなくなったシルフィールがその場で卒倒し、それを支えたガウリイがまたまたぼけたことをいっている。
というか、本当に知り合いだろうに、こ、この男はぁっ!!
あたし、何かこの人に同情します。
いや、まじで……
「ああ。シルフィールさん!?…きっと旅の疲れがでたんしょうね」
いや、違うとおもいます。
断じて。
気絶したシルフィールをみてそんなことをいっている、アメリア、と呼ばれたその少女。
歳のころはあたしより一つか二つしたくらいであろう。
しかし、姉といい妹といい…ハラがたつほどこの姉妹、きっちりと胸があるんですけど……
怒りがわくほどに。
すぐさまにそこに目がいってしまうのは自分の胸がなかなか大きくならないがゆえ。
いろいろと試しているのになかなか大きくならないのがあたしの最もなコンプレックス。
どこをとっても申し分ないあたしだが、その唯一の欠点といえば欠点の場所。
「シルフィール殿はサイラーグからいったいなぜこんなところにきてるのじゃ?」
「それなんですけど、父さん、とりあえず建物の中にはいりませんか?そこで説明します。
えっと、そちらのお二人も父さんのお連れさんですか?」
「うむ。リナ殿とガウリイ殿じゃ。ワシたちの護衛を頼んでおる」
ものはいいよう。
まあ、あるいみ護衛といえば護衛なんだけど……
「そうですか。えっと。改めてごあいさつさせていただきます。
私、アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンと申します。父と姉がお世話になりました」
いってぺこりと頭をさげてくるアメリアさん。
う~ん。
姉とちがって礼儀正しい子だなぁ。
「あ。えっと、こちらこそはじめまして。リナ=インバースです」
ざわ。
あたしが名乗ると同時に周囲のほかの兵士や町の人たちがざわめきが一瞬まきおこる。
「ドラマタの!?」
「ロバーズキラーの!?」
うぉいっ!
ぎろりとそんな人々をにらむとあっという間に並みがひくように人々は遠ざかる。
あたしは危険人物かっ!
「えっと。オレはガウリイです。それより、この子、どうすりゃいいんだ?」
あ、忘れてた。
いまだにさっきのシルフィールとかいう子は気絶したままでガウリイが支えている状態である。
「じゃあ、とりあえず奥の部屋へ。つれてきてもらえますか?」
「わかった。しかし、この子、何でオレのことしってたんだ?」
「だから!あんたの知り合いでしょぅがあっ!!」
「自慢じゃないが、オレは出会ったひとをいちいちおぼえてないっ!」
「それっていばっていえるかぁっ!!」
こ、このガウリイ…見た目はいいのに…どうやら記憶力に問題があるようである……
何であたしの周りって何か問題があるひとばっかりあつまってるんだろ?
謎である……
-続くー
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あとがきもどき:
薫:さてさて。ついにゼルガディス以外そろった主要メンバーv(笑
なぜ、アメリア&シルフィールが出てきたのか。
その謎は次回にだす予定。
ま、予測はつくでしょうけどねぇ。
それからようやく誘拐もどきをやってから、S復活だ!!10話以内でおわるかな?
何はともあれ、ではまた次回にてvv
2009年2月7日(土)某日
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