まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちら

さてさて、今回はギャグ&戦闘?もどきを含めたお話です。
あまり話しが進んでない、と自覚はありますが。
複線は出しまくりですよ~(笑
何はともあれ、ゆくのですv

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迷・ネオスレイヤーズ

「しかし、まあ、よく無事につけたわよねぇ」
たどり着いたのはイルマートではないにしろ。
よくもまあ、本当に無事に沿岸諸国連合の中の一つの浜辺に流れ着いたものである。
「がっはっはっ。グレイシアはおちゃめなところがあるからのぉ」
「そ、それですますなぁっ!!」
思わずそんなフィルさんの声につっこむあたしは間違っていない。
絶対に。
「…ああ。生きてるってすばらしい」
船を操縦していた船の持ち主が手を組んで空にむかって祈りをささげている姿が印象深い。
海原にでてしばらくすると夜が明けた。
しばらくは順調な航海だったのだが、やはりというかお約束。
「ふっ。仕方ないじゃない。暴走したのは私のせいじゃないわ。お~ほっほっほっ!
  それより感謝してほしいわね!!あの群れを撃退できたのも私のおかげよっ!お~ほっほっほっ!」
いや違う。
断じて違うっ!!
「あのねぇ!あたしのドラスレのおかげでしょうがっ!!あんたのせいであたしたち、もう少しで遭難よっ!?」
海上に現れた十匹程度のレッサーデーモンもどき。
もどき、というのは一般的に知られているレッサーデーモンと多少姿が異なったがゆえにそういっているのだが。
おそらくは海、という特徴から海に住む生物を媒体にして姿を表している魔族達であったのだろう。
魔族に関する知識はなぜか姉ちゃんがみっちりとあたしに仕込んでいるので普通よりはかなり詳しい自信がある。
だからといって、そこでいきなり電撃竜プラズマドラゴンを召喚するナーガもナーガである……
さて、問題です。
あたしたちがいたのは海の上。
しかも、海水は電撃をよく通す。
さらにもって、ナーガの術はほとんど暴走することが実証されている。
はたして、ナーガが召喚し、『やっつけておしまいっ!』と命令した電撃竜プラズマドラゴンは…例にもれず……
反動で津波がおこったりしたのはあたしのせいではない。
マストなどがぼろぼろになりながらも、どうにか無事にどこかの浜辺にたどり着いたのがつい先ほど。
なぜかここが、沿岸諸国連合の一つであろう、とわかるかといえば至極単純。
ロマール山脈を越えたがゆえに嫌でもわかる。
遠くに山脈がかすんでみえていることから位置は大体把握できる。
ロマール山脈はこの世界において、カタート山脈に続いて有名な山脈。
標高がかなり高く切り立った断崖絶壁。
ゆえに旅人の中ではかなりの難所、としても知られている山脈であり、
そしてまた、大国を隔てる山脈としても有名。
もう一つのカタート山脈のほうは嘘かまことか、その山脈には魔王が眠っている。
という噂があるが。
これはまあ、おそらく十中八九真実。
何しろうちの国の女王様なども認めていることであるし。
姉ちゃんもそんなことをいっていた。
だがしかし、一般の人たちにとってはそれは眉唾ものの話、としてしかとらえられていないが。
約二十年ほど前にあったディルスによるカタート進行。
その話を知らないものはまずいない。
当時の国王がかなりの数の兵士などをひきいてカタート山脈に出向き…そして誰一人もどってこなかった。
という話は有名中の有名。
「ふっ。こまかいことで騒ぐなんてリナ、あなたまだまだ修行がたりないわねっ!
  お~ほっほっほっ!!お~ほっほっほっ!!」
「…もしかして、あんたものすごく苦労してたのか?」
そんなナーガをみつつ、ガウリイが同情気味にいってくる。
その通り。
このナーガのせいであたしは今までどれほど苦労してきたことか。
「…まあね。と、とにかく先を進みましょ」
男は気づけばとっとといつのまにか逃げ出していなくなっているけど、まあ気持ちはわかるわな。
別に問題はないし。
津波にのまれ、襲撃でずたぼろになった船から降りたあたしたちはそのまま先を進むことに。
おそらく浜辺にふつうの小さな船があったりすることから近くに村か何かあるはずである。
まずはそこで情報収集でもするとしますか。
少し歩くとみえてくる家並み。
どうやらやっぱり村が近くにあったらしい。
「…何か雰囲気がおかしいぞ?」
ガウリイがその村をみてぽそっと何やらいってくる。
確かに、すでに夜があけて明るくなっており、普通ならば村人の声とか聞こえてもおかしくない。
にもかかわらず、まったくもって人々のざわめきも、犬や猫の鳴き声もまったく聞こえない。
あげくは鶏などの鳴き声も。
近づくにすれその違和感の正体ははっきりと目にみえて明らかとなってくる。
確かに家並みはあるにはあるが、壊れた家屋が建ち並び、
そしてまた大地には黒い焦げ目のようなものが広がっている。
…どうやら、この村は何かの襲撃をうけて壊滅した村らしい。
こんな場所に誰かが住んでいる、とは到底思えないが…
こういうときは先手必勝!!
烈閃槍エルメキアランス!!ブレイクっ!!」
バシュ!!
チュドド!!
あたしの指を鳴らす合図とともに、繰り出した技が分裂する。
術をきちんと把握して仕組みを理解しているからこそできる技。
青白い光の槍を創り出し空に無造作に投げると同時、
合図と同時に光の槍は、無数の小さな光の槍にと分裂し周囲全体に降り注ぐ。
本来ならば一本の青白い槍を創り出し相手の精神にと攻撃をしかける技ではあるがこういうアレンジも可能。
この術で便利なのは物質的な建造物などをすり抜けて生物のもっている精神体にダメージをあたえるというところ。
つまり、人間にあたったりすれば肉体的にはダメージはないが精神的なダメージをうけ、
ものすごい疲労感、もしくはその威力により下手をすれば死にいたることもある。
しかし、待ち伏せしているような輩に手加減などは問答無用。
まだ完全に魔力が回復していない状態なのでさほど威力はないにしろ足止めなどには十分である。
そもそも、魔力が落ちるのはおそらく精神的なバランスが一時的に崩れるからだ、と姉ちゃんの教え。
克服しようとがんばったが、人間、得て不得手、というものがあり。
または、痛みもひとによってそれぞれ。
これでも昔よりはだいぶましになった、と自覚はあるが、あたしはまだまだだとおもう。
とにかく姉ちゃんなどはまったく魔力の衰退がみえないし。
いつなんどきも魔力を常に保つ、というのが当面の目標。
そんなことを思いつつも術を解き放つ。
「くっ。や、やりやがったなっ!?」
…うや?
廃屋の影からでてくる影がひとつ。
「あ。この前のイヌ」
よろよろとでてきたのはこの間のイヌもどき。
「お~ほっほっほっ!わんこが何のようかしら!?」
ナーガもそんなことをいってるけど。
というか、こいつ無事だったんだ。
よくもまあ無事だったなぁ。
ドラスレで一緒に吹き飛ばしたとばかりおもってたのに。
狼とトロルのハーフ云々っていってたけど、だからといってよくもまあ直撃をうけて無事だったもんだ。
ある意味感心してしまう。
そりゃまあ、あのときあたしは多少威力を削減してはなったけど。
「だ、誰が犬だっ!こ、この前はやすやすと遅れをとったが、今日はそうはいかないぜ!」
いや、すでに遅れをとってないか?
そもそも、ちらりとみれば一緒につれてきたらしい他のオークたちなどはその場に倒れて痙攣してるし。
そんなことを思っていると、
「先生方、おねがいしますっ!」
何やら闇がより濃いほうにと叫んでいる犬もどき。
すでに日が昇っている、というのにも関わらずにも不自然な闇たまり。
そこからゆっくりとあらわれてくる人影一つ。
身長はそれほど高くもなく低くもなく。
一般的な青年の平均身長くらいだろうか。
全身ぴっちりときこんだような体のラインがよくわかるツギハギのない真っ黒な服。
そして、整った丹誠な顔立ち。
…ただし、顔半分のみ。
残りの顔半分は夜の闇のごとくにのっぺりとして何もない。
え…え~と……
「ふっ。お~ほっほっほっ!!そんなもので私たちがだまされるとでもおもって!?」
ナーガが少し警戒気味の笑い声をあげているけど。
おそらくナーガも気づいているはずである。
一体コレが何なのか。
「何だ。また魔族の人か」
「って、何でまた魔族がでてくるのよ!?」
ガウリイがソレをみてさくっといい、あたしはあたしで思わず叫ぶ。
というか、何で魔族がこう何体もでてくるわけ!?
そもそも、純魔族といわれているような輩は滅多にあうはずもない存在なのにっ!?
しかし、この魔族の容姿も見た目かなりインパクトがある。
なまじ人間そっくりなだけに恐怖も格別。
まだ、多少顔が崩れているとかならば違う見方もできるのだが。
「お前たち、ヴィゼア様にかなうはずもなかろう。大人しく品物を渡せ!」
…どうやらこの魔族とおもわしき輩の名前はヴィゼア、というらしい。
しかし、虎の意を借る狐、とはよくいうが……
「…あんた。なさけなくい?他人の力で威張って」
「う、うるさい!それだけじゃないぞ!でてこいっ!!」
『が~!!』
犬もどきの獣人の掛声とともに、周囲の森からでてくるトロルたちが十数匹。
どうでもいいが、何であたしたちがここにくる、とわかったんだ?
ここに流れ着いたのはあくまでも偶然なのに。
ち。
魔族にトロルにさらには獣人、か。
「お、おのれいっ!問答無用でいきなり襲いかかろうとしてくるとはなにごとじゃ?!」
フィルさんがそんなことをいってるけど。
「そっちのほうが問答無用だろうがっ!この前なんかいきなりあんな攻撃しやがってっ!」
フィルさんの言葉に反応した犬もどきが何やらいいかえしていたりする。
「あんた、けっこうできそうだな」
「いえいえ。そちらこそ。しかし私にかないますかな?」
ふとみれば、いつのまにか魔族とガウリイは臨戦態勢。
フィルさんと獣人はぎゃいぎゃいと言い合いしているし。
あんまりこの技、やりたくないんだけど…仕方がない。
相手に魔族がいることから、何より先手必勝、である。
炎の矢フレアアロー!!!」
バシュバシュ!!
あたしの力ある言葉に従い、周囲に炎の雨が降り注ぐ。
よっし!
魔力は完全復活!!
炎の状況で自分の状態を客観的に把握。
それと同時に降り注いだ炎の雨によってところかしこで炎が炸裂する。
「お~ほっほっほっ!!お~ほっほっほっ!!崩霊裂ラティルト!!!」
なに!?
…ナーガにしては珍しい。
白魔法の中でもかなり高度な術の一つである崩霊裂。
ちなみにあたしはあまり必要性がないので覚えてない。
ああいった白魔法系統はあたしの性格上にあってないし。
珍しくナーガがまともな術を放っていることに驚愕しつつも、さらに次の呪文の詠唱にと入る。
それと同時に短剣を手にし、だっと駈け出しトロルたちにとむかってゆく。
「な、何!?」
ナーガの放った崩霊裂が魔族の足元に光りの魔方陣を創り出し、青白い炎の柱が出現する。
精霊魔法の中では最高峰のこの魔法。
精神体にかなりのダメージを与え、人間にあたれば即死亡、といった術である。
ちなみに、もともと精神生命体である魔族にこれほど有効な術はない。
ヴィゼアと呼ばれた魔族はあわててその場を退こうとするものの、
「光よ!!」
ヴッン。
その隙を逃さずガウリイの声が周囲にと響き渡る。
それと同時にガウリイの手にした剣より出現する光の刃。
「ぎ…ぎゃぁぁっ!!」
…どうやらあちらはあっさりと始末がついたらしい。
「な、何ぃ!?」
獣人の驚愕した声がきこえていたりするが、そんなことはどうでもいい。
右往左往しているトロルたちの合間をぬって、短剣で軽く傷をつけその直後に唱えていた術を解き放つ。
術、といっても至極簡単なもの。
傷をつけたその直後にトロルに触れてながら駆け抜ける。
この技は治癒の術の特性を生かしたもの。
トロルなどはその再生能力がかなりたかく、ゆえに逆に治癒力を促進する術を少しばかり変えてかけるとどうなるか。
答えは簡単。
あたしがつけた傷ぐちにまるでトロルたちは吸い込まれるように肉塊ごと収束し、
やがて何ともいえない音と叫びとともにかききえる。
この術はきき具合によっては周囲に血肉が飛び散ることからあまりきれいな術とはいえないが。
しかし、一番周囲に被害がでない術ではある。
一見したところ、かなり地味な攻撃にみえるが地味な攻撃もまた使いようによっては武器となる。
「グレイシア!?」
フィルさんの叫びがきこえ、ふと振り向くと、その場で気絶しているナーガの姿。
えっと。
どうやらオーガたちの血をみて気絶したらしい。
ナーガのやつ、なぜか血をみたらすぐに失神するからなぁ。
周囲はいまだにあたしの放った炎の矢の影響で熱気に包まれている。
「く…くそ!次こそはこうはいかないぞっ!!」
よくいる三流悪党なようなセリフをほざいてそのまま森の中に逃げてゆく獣人。
「あ、逃げた」
「グレイシア。おい。しっかりしろっ!」
そんな中でフィルさんがナーガを抱き抱えて何か叫んでるけど。
ただ気絶してるだけだってば。
と、とにかく。
「フィルさん!とガウリイ。また襲撃あってもいけないから、とにかくここから離れるわよっ!
  フィルさん。ナーガおねがいできる?」
「か弱いのに母さんに似て無理をするから。こやつは」
どこがか弱いんだろう?
ナーガがか弱かったら世の中の人類はみなより貧弱ということになるだろうに。
突っ込みたいのは山々なれど今はこの場を離れるのが先。
火の手はどうやら森のほうにいくことなく、廃墟となった村の中のみでくすぶっている。
火事、と騒がれて野次馬がくるまえにここから立ち退く必要がある。
「と、とにかくいきましょ!」
遠くにざわざわとした声が聞こえてくるのを確認し、あたしたちはとにかく森の中にとみをひるがえしてゆく。

サラサラサラ…
静かな川の音が響いてゆく。
裏街道沿いにそうようにと流れているひとつの小川。
ちなみに、ナーガはフィルさんがおぶっている格好で進んでいるあたしたち。
というか未だにナーガは目覚めないし。
太陽の高さより判断するにそろそろ昼近く。
かといってこのあたりには食堂も何もなかったはず。
街道沿いによくある宿屋兼食堂もこの付近にはない。
一人ならばとっとと翔封界でとんでゆくところなのだがこればっかりは仕方がない。
しかも、考えようによっては魔族を二体も送りこんできたことからまた魔族を送りこんでくるかもしれない。
という懸念もある。
できれば一般の人たちを巻き込みたくないのが本音。
ああいう輩は周囲の迷惑を顧みずにいきなり襲ってきかねない。
彼らの糧が恐怖や絶望、といった負の力であるからこそなおさらに。
「とりあえず、ここで昼食にでもしましょうか」
念のためにと付近を調べ目当ての花が咲いているかどうかを確認する。
それと川の様子をより注意深く確認する。
もしかしたら上流より毒などが流されている可能性もあるし、また水質的に問題があるかもしれない。
水質がきれいな川にのみ生息しているとある花が付近に生えているがどうかを確認するのは旅人の常識中の常識。
近くに落ちていた長めの枝を拾い、石を積み上げて簡単なかまどをつくる。
あとは、釣り糸となるものだけど……
「ガウリイ。髪の毛一本、貰うわね♡」
この男。
男性のわりに髪の毛が長い。
しかもあたしの髪の毛と違い、さらさらストレート。
つり糸代わりにするのはうってつけ。
「へ?って、いてっ!!」
いいつつも、ぐいっとガウリイの髪の毛を引っ張り数本ゲット。
というかうらやましすぎるほどのつやつや感なんですけど。
こいつの髪をこっそりと切り取って売れば結構なお金になるかもしんない。
綺麗な髪の毛がある筋では高くうれるのは常識中の常識である。
まあ、ともあれ。
「何するんだ!?」
「文句いわない。それよりガウリイは近くで何か食べられる果物か何かないかみてきて。ついでに見回りかねてね」
一人旅をしていたようだから、食べられるものとそうでないものの区別はつくであろう。
ナーガに取ってきてもらったりした時にはよく毒キノコなどが入っていたりしておおごとになったことがある。
ゆえに、あたしの中の不文律。
ナーガの作ったわけのわからんものは食べるな!
これはもう決定的。
いまだにナーガが気絶しているのが不幸中の幸いである。
食事の用意ができれば嫌でもおきてくるであろうが。
「…ったく。ひと使いがあらいお嬢ちゃんだこと」
いまだに子供扱いしていることも気にはなるが。
ナーガだけでも気力を使い果たしかねないのにこのガウリイを取りあっていたらいくら身があってももたない。
ゆえにさくっと聞かなかったことにする。
「さってと。あたしはお魚さん、お魚さん♪」
拾った小枝にガウリイの髪の毛をくくり付け、そのまま川の中にと髪のけを垂らす。
ちなみに、針も何もつけていない。
きちんとした旅先の魚釣りというものは、
小枝などをつかってさらには川の中にいるむしを使いそれらを餌にしてつるのが常識。
だがしかし、虫とて魚にも好き嫌いがあるわけで。
しかも常につれる、とも限らない。
さらにいえば、近くに木々が生えている、とも限らない。
荷物の中に簡単な伸縮ができる棒を入れてはいるが、それより近くで調達したほうがはるかに楽。
あたしが川の中に髪の毛を垂らしてすぐに、びくり、とした反応が。
「よっしゃっ!!」
ばしゃっ!
かかったと同時に一気に吊り上げる。
本来ならば重さのない髪の毛は川の流れの中にはいることなく揺れるだけであろうが、
これはあたしのオリジナル魔法のひとつ。
このノウハウを乱用すれば魚がいなくなってしまいかねないので誰にも教えようとはおもわないが。
簡単にいえば、少しばかり髪の毛に重しを加えて川にとたらし、
さらには魚に幻術なようなものをみせて吊り上げるようなもの。
魔力の針が仕掛けられているので対照物にしか反応しない。
そんなこんなでものの数分もしないうちにと、いっきにその場につみあがるお魚さんの山。
「何と。お主。漁師か何かか?」
それをみて自分がまとっていたフードをはずしてその上にナーガを寝かせていってくるフィルさん。
どこかこのフィルさんもずれてると思うのはあたしの気のせいだろうか?
「そうじゃないけど。旅の常識よ。よっし。またかかった!」
フィルさんが横で興味深げにそんなことをいってくるけどさくっと交わす。
岩塩がとれる位置にて瓶づめにしている塩を振りかけてこんがりと焼けば焼き魚の出来上がり。
枯れ木を積み上げた石のかまどに敷き詰めてある品物を放り投げる。
これもあたしのオリジナル魔法道具の一つ。
まあ、魔法道具、とまでいうような品物ではないが。
発火性の高い草木を水につけてふやかし、小さく丸め乾燥させたもの。
そこにとある品を加えることにより反作用の法則により自然に発火する。
ちなみに、発火する条件は光と水が合わさること。
それだけだと袋にいれている最中に発火しかねないので放り投げるときにあることを施す必要があるにはあるが。
ナーガに教えたら乱用しそうなので教えてはいない。
見る間に積み上げられてゆくお魚さん。
それらの魚を余っていた枝にと付きさしかまどの周囲にと並べてゆく。
パチパチとした音とともに炎が燃え上がり、周囲に香ばしいにおいが漂い始める。
「お~い。こんなものしかなかったぞ?」
そうこうしていると、ガウリイが果物らしきものを見つけたらしくもどってくる。
まあ、このあたりでとれる果物といえば限られているか。
「ちょうどよかったわ。こっちもそこそこ釣れたから焼いているところだし。じゃ、食事にしましょうか」
「お~ほっほっほっ!お~ほっほっほっ!ご飯ですって!?」
ほら、おきた。
あたしの食事、という言葉に反応し、気絶していたはずのナーガががばっと飛び起きる。
「おお!グレイシア。気分はどうじゃ?」
「あら。お父様。私、どうしたのかしら?」
「お主は母さんににて病弱なんじゃから、あまり無理をするんでないぞ?」
「お~ほっほっほっ!リナ!この私をのけおいて食事をしようなんてさては私には何もたべさせない気ね!」
え~と。
ナーガとフィルさんの会話がかみあってないんですけど?
ま、まあ気にしないでおこう。
「ナーガ。いつものように独り占めする気じゃないでしょうね!?」
「お~ほっほっほっ!こういうことは早いもの勝ちなのよ!」
いつものごとくに食事の奪い合い。
「お、おいおい……」
そんなあたしたちをみてガウリイが呆れたような声をだし、
「がっはっはっ。食欲があることは元気があるあかし!よきかな、よきかな。がっはっはっ!!」
フィルさんはフィルさんでそんなことをいってくる。
「ちょっと!ナーガ!たべるんだったら自分でつりなさいよっ!」
「お~ほっほっほ!すでに焼けているものが私のものよっ!!」
「何ですってぇぇ!?」
と。
「しっ」
いきなりガウリイがあたしたちに対して静かにするように、と指示を出してくる。
いつのまにか周囲にいくつかの気配が現れており、しかも完全に囲まれている。
刺客!?
と一瞬身構えるが、気配からしてそうではないらしい。
「何よ。コブリンじゃない」
コブリン。
最もポピュラーで誰もが知っている生物の一つ。
大人の胸のあたりまでしかない背丈が特徴で夜行性。
しかもそこそこの知能をもっており、頻繁に人家などに入り込み食材を荒らし、さらには家畜などをさらったりする。
ゆえに、コブリンの生息範囲というかテリトリー内にはそういったことを懸念して宿などはほとんどつくられない。
理由は簡単。
コブリンとの知能比べになり儲けがなく被害が拡大するばかりとなり赤字となり経営が成り立たない。
知能をもっていることから武器などを手にもち旅人などを襲撃したりすることもざら。
でもまあ、強くないのでからかうにはもってこいの相手ではある。
まあ、昔謎におもっていた彼らがもっていた武器など。
それらの調達方法はとある一件からどのようにして調達しているのか知った今となっては深く追求しないことにした。
確かにナーガの言うとおり、あたしたちの周囲をコブリンが取り囲んでいたりする。
「なんじゃ。お主たちもおなかがすいたのか?いっしょにくうか?」
フィルさんがそんなコブリンたちに話しかけてるけど。
フレンドリーに話しかけられてコブリンたちは戸惑い顔。
さて、こいつらを普段ならからかって遊ぶところであるが……
『ぎいっ!?』
コブリンたちが何やら警戒声を発しているのが気にかかる。
あたしたちを遠巻きにしながらも、その視線は川の方にと向けられている。
「…しつこいやつらだなぁ~」
確かに。
それとほぼ同時。
ざばっ。
川が一気に盛り上がり、
「見つけた。見つけた。レゾ様の命令。大人しくする」
いいつつも、ぬちゃりとした音とともに川からあがってくる物体ひとつ。
え~と…
何といっていいものか。
どうみても魚。
魚に手足がついており、なぜかポーズをつけているのが気にかかる。
俗にいう魚人、らしいが……
しかし、どうみても強そうではない。
というか、そもそも実際に黒幕の名前をいうなど考えがない、としか言いようがない。
「お~ほっほっほっ!そういわれておとなしくするとでも!?お~ほっほっほっ!」
そんな魚人に対してナーガが高らかに言い放つ。
どうでもいいけど、両手に焼き魚をもったままで高笑いしていても間抜け以外の何ものでもない。
「おれ。ヌンサ。お前たち始末して荷物奪う。かくご」
…どうも考えがない刺客らしい。
レゾ側もとうとう人材がつきたか?
いうが早いかいきなりあたしたちのほうに突っ込んでくるヌンサ、と名乗った魚人。
だがしかし、その直線上にはあたしたちが料理をするのにつくっていたかまどがあるわけで…
「あ…あつぅっ!おのれ、よくもやったなっ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そのまま直進して火に足をつっこんであたしたちに文句をいってくるそれ。
え~と…何といったらいいんでしょうか?こういう場合?
「よくもやったな!かくご!!」
いいつつも、またまた直進してくる魚人。
ひょいっ。
軽く身をかわすあたしたちの間を通り抜け、魚人がつっこんだ先には…
『ぎいいいっ!!』
あ。
コブリンの群れの中につっこんだ。
それをうけて怒りをあらわにして叫んでいるコブリン達。
そのまま、武器をそれぞれ手にして魚人にと襲いかかる。
多勢に無勢。
大きさ的にはコブリンのほうが不利であろうが数的には圧倒的にコブリンの方が上。
「おまえたち。邪魔しない。って、いたい、いたいっ!!」
「・・・・・え~と。そろそろいきましょっか」
「そうね」
そのままコブリンたちに袋叩きになっている魚人の姿が視界に入る。
とりあえず何事もなかったことにしてその場を片づけ始めるあたしたち。
「あれはほっといていいのか?」
ガウリイがそんなことを聞いてくるけど。
「いいのよ」
「そんなものなのかのぉ?」
あたしの即答にフィルさんが不思議そうに首をかしげていたりするけど。
「や、やめろ。やめ…」
何か今だにコブリンたちか魚人に襲いかかってるのが見て取れる。
コブリンは普段おとなしいけど怒らしたら面倒だからねぇ。
ま、あたしたちには関係ない…っと。
そのまま何事もなかったことにして、火の始末をきちんとし、あたしたちは先にと進むことに。

「殿下!?殿下ではありませぬかっ!!」
街道をひたすらに進みつつ、ときどき襲撃もあったりもしたが、どうやら普通の襲撃だったらしい。
ゆえに襲撃者である盗賊さんたちからお財布さんを没収し、今のところ旅は順風満帆に進んでいる。
やがてたどり着いた大きな町。
いきなり声をかけられて思わず立ち止まる。
この町は今は流れの傭兵や魔導師などを雇ってレッサーデーモン対策をとっていることから、
フィルさんの容貌でもあまり目立たないだろう、というので今はフードをはずして歩いている。
町の中には他にもいかつい姿の人物が多々とおり、町は異様な雰囲気にと包まれている。
そもそも、ここまでしてレッサーデーモン対策するのは何ごと?
という気もかなりしなくもないが、ここの領主が異様に熱をいれているらしい。
「うん?おお。グランシス殿か。久しぶりじゃのぉ」
話しかけたきた人物はどうやらフィルさんの知り合いらしい。
なごやかに挨拶を交わしていたりする。
「フィルさん。知りあい?」
「うむ。こちらはグランシス=コードヴェル殿。ある国の要職についている人物じゃ。
  してグランシスどのは何用でこんなところに?」
「いえ。それは……」
どうやらそのとある国の国家がらみか何かの言えない何かの役目か何からしい。
「それより、殿下のほうこそどうしてこのような場所に?
  うん?そちらにおられるのはもしかしてグレイシア様ですか?
  いや、昔おあいしたときにはまだ幼くしておられましたがおきれいになられましたなぁ」
え~と。
その前にナーガの格好をみて驚くところじゃないですか?
ねえ?
「うむ。儂ににて美人じゃろ?」
容姿だけは似てないとおもいます。
性格はあるいみ似たり寄ったりなのかもしれないけど。
「お~ほっほっほ!お~ほっほっほっ!!褒めても何もでないわよっ!当たり前のことですもの!
  お~ほっほっほっ!お~ほっほっほっ!!」
高いを上げるナーガを異様な目を眺めつつ、
「ねえ。お母さん。あのお姉ちゃん何?」
「し。みてはいけません」
いいつつもかかわり合いにならないほうが賢明。
と受け取り不自然に視線をはずして離れてゆく人々の姿が目にとまる。
あ~。
これが普通の反応だしなぁ。
慣れてきているあたし自身が何よりも怖い。
「それより、殿下。おはやく国に戻られたほうがよろしいかと存じます」
「うむ。それは儂とて今むかっているところじゃが、何かあったのかの?」
「いえ。先日、そちらにお世話になっている魔道士殿に用事があり出向きましたら、
  あまりよくない話しを耳にしたもので……あ、あの…」
「うん?」
「いえ、何でも。では、私はこれにて」
何かいいたそうではあったが。
どうもあたしが立ちいってはいけない国家がらみの何か、なのかもしれない。
つれのあたしたちに視線をむけて言葉を濁したのが何よりの証拠。
いいつつも、お時儀をして立ち去ってゆくとある男性。
しかし、よくない噂、というのが気にかかる。
ちょっとばかり急いだほうがいいのかもしれない。
あの賢者の石にしろ、セイルーンで保管してもらうか、
もしくは姉ちゃんの献上品として持って帰ったほうが絶対に問題ないだろうし。
一番いいのはセイルーンから送ってもらうのが一番であろう。
いくら何でも王宮から送った品物を強奪するような馬鹿な真似まではしない…と思いたい。
まあ、とりあえず、セイルーンで何かがおこっているらしい、というのは何となくだが判断できる。
こりゃ、まともに依頼料もらえるんだろうか?
ともあれ。
「とりあえず、確かここからセイルーンに向けての荷馬車がでてたはずよね」
ここの雰囲気がおかしくなって最近はこの町に立ち寄ったりはしてないけども、
あたしの記憶が確かならばたしか定期的に荷馬車がでていたはずである。
もしくは行商にいくための馬車などもいくつかでているはず。
その中のどれかにまぎれて進んだほうが敵の目もごまかせるかもしれない。
「とりあえず。酒場にいきましょ」
昼間でもこういった輩が増えている以上、酒場も経営しているはず。
さきほどのグランシスさんの話も気にはなるものの、ひとまず情報収集のためにあたしたちは酒場へとむかうことに。
わいわい、がやがや。
どうでもいいがよくいるごろつきのような輩の姿も多々と目にはいるのが気にかかる。
「何だかねぇ。領主さまも何かんがえておられるんだか。魔物より人間たちで治安がわるくなってるよ」
酒場にたどり着き、あたしたちのテーブルにお水を運んできた従業員がそんなことをいってくる。
たしかに。
どうみてもごろつき風情の姿がちらほらと視界にとはいる。
いくらレッサーデーモン対策とかいってもこれは少しやりすぎのような気がするのはあたしの気のせいではないとおもう。
人数が増えればそれだけ犯罪も増す。
それなのに町にはあまり兵士などの姿は見受けられない。
「駐留している兵士とかはいないんですか?」
とりあえず確認を込めてきいてみると、
「それがねぇ。兵士たちは見回りのためにほとんどではらっててねぇ。
  でも、本当、何がおこっているのかしらねぇ。噂では再び降魔戦争が始まる。
  とかいって邪教集団とかまでではじめているらしいし……」
それはたしかに穏やかではない。
しかしどこからどうなって降魔戦争が復活云々、という話がでているのかも気にかかる。
「じゃあ少々まってくれね」
そんな会話をしつつも料理を注文しおわり、従業員のおばちゃんはあたしたちの席から離れてゆく。
おばちゃんが離れるのとほぼ同時。
「邪教集団?それってクロツとかいう人がひきいている集団のことかしら?」
出た。
ナーガのよくわからん情報網。
というかよくまあ旅をしていてそこまで詳しい情報を会得しているものである。
「うむ。そういえば噂をきくのぉ。どこまで真実かわからないから諜報員達に探らせているにはいるが」
…いるんだ。
そういう諜報系の役目の人が、やっぱし。
ナーガとフィルさんがしみじみとそんなことをいってるし。
「なあ?その降魔何とかって…何だ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
「あ、あんた本気でそんなことをいってるわけっ!?」
おもわず目を点にしたのちに、ガタン、と席を立ちあがりながらも叫ぶあたしは間違っていない。
絶対に。
「何かどこかできいたような気がしなくもないけど」
ほ、本気でいってるよ…この兄ちゃん…あうっ……
「そもそも。あんたのもってるその剣もそのころにつくられたものでしょうが!?」
「そうなのか?」
いや、そうなのかっ…って…
「本気で知らないの?降魔戦争のこと?」
サイドの問いかけにきょとん、として首を横にふるこのガウリイという兄ちゃん。
…よくこんなんで流れの傭兵なんかこいつやってけたな……
「ふぅ。いいわ。話してあげる。とりあえずこの世界の仕組みからね」
話しても無駄のような気がさらさらしなくもないが、そこから説明しなければ意味がない。
しょうがない。
昔話でも話しかけるかのごとくに説明するとしますか……


                   -続くー

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あとがきもどき:
薫:んっふっふっ。さてさて、複線でてきているのわかる人はわかるかな?
  グランシス=コードヴェルv
  いうまでもなく、あのジェイドたちの父親ですvええ(まて
  つまり、フィルさんとは顔見知りであった、という設定ですね。
  時期的に、すでに魔族がディルスに入り込んでいるとおもうんですよねぇ(笑
  偵察組の形でv(だからまてってば
  今回のこの話、さてさて、何巻分の話が入り混じった作品になっているでしょうv(丸わかりでしょうけどね
  そろそろ出番のゼルガディスv
  今だに誘拐?される人物設定をドレにするか悩みつつ、どのパターンも考えているのでその場ののり。
  で決めようとおもっている今日この頃。
  何はともあれ、次回に続きますv

2009年2月6日(金)某日

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