まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちら

リナの一人称はいいんですけど、それだとリナがいないところが表現できない(汗
まあ、そのあたりはおいおいと第三者からの説明でどうにかするとして。
しかし、フィルさんの問答無用の強さの表記がなかなかに難しい……
何はともあれゆくのですvv

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迷・ネオスレイヤーズ

うららかなのどかな昼下がり。
先ほどの襲撃が嘘のようなのどかな景色が広がっている。
あたしたちの前に転がっているのはなぜか焦げている男たちの姿。
ちなみに、周囲は香ばしいにおいが漂っていたりする。
「しかし。フィルさんにフードをかぶってもらっただけでこうも簡単にいくとはねぇ」
どうもお財布さん…もとい、盗賊や山賊はフィルさんの姿をみて尻ごみしていたのか、
あれから後、念のためにフィルんさにフードをかぶってもらい顔を隠してもらったところ、
街道沿いを進むあたしたちの前にまあでてくるでてくる宝の山…もとい、お財布さん…もとい、悪人さんたちが。
いく度めかの襲撃をうけて、男たちをとらえて近くの村にと連れていき礼金をもせしめて順調な旅路である。
あれから魔族を含んだ襲撃がない、ということからあきらめたのか、それともあたしたちを見失ったのか。
とにかく油断は禁物。
「それで。普通の定期便にのっていくのか?」
「それもねぇ。とりあえず港にいって船の持ち主に交渉してみようとおもうのよ」
下手に定期便にのってそこで襲撃をうけて被害が拡大したら…と思うと。
いや、別に被害が出るのはあたし的には問題ないような気もしなくもないけども。
しかし、定期便、というからにはゼフィーリアのほうにも話しが伝わる可能性が高いわけで…
そ、それだけは何としてでも阻止せねばっ!!
「なるほど」
ガウリイの質問にさらっとこたえるあたしの答えに何やらうなづいているガウリイの姿。
「しかし。あの一味はいったいなにものなんじゃ?」
「白のゼルガディスが動いていることから、赤法師レゾがらみなのは間違いなさそうですけどね。お父様」
ナーガが○○様、とかいってるのがものすっごく違和感ありまくり。
「ふむ…昔、母さんが率先して調べたあのレゾ殿か。
  内容が内容だけに周囲にはあまり知らせないようにしていたがのぉ」
…どうやらレゾのことを調べたのはナーガの母親が発端だったらしい。
ちなみに、あたしを先頭にしてそのななめ後ろにガウリイ。
そしてその背後にナーガとフィルさんが並んで四人で裏街道を進んでいるあたしたち。
しかし、内容が内容って……
「世間では聖者、と呼ばれていても裏では何をしているかわからない。という典型的な例だしね。
  お~ほっほっほっ!つまり!何事も自身の目で調べてみることが肝心ということよっ!
  お~ほっほっほっ!」
「うむ。上にたつものは、そうでなければ務まらぬ!」
いや、それはかなり迷惑です。
そう口にだしたいがぐっとこらえ、
「赤法師レゾって世間ではかなり聖者、として有名だけど。裏ではそうではないわけ?」
とりあえずさりげにそんな二人の会話に割って入る。
「お~ほっほっほっ!愚問ね!リナ!そんなことも知らないの!?
  噂では彼は自分の目を開くためだけにいろいろと実験をしているらしいわよ?
  中には自身の人造人間を創って、実験をしたところすんなりと目が開いたから。
  といってそのコピーに魔族を数体掛け合わせたという話もあるし。
  あとは目的のものがなかったからといってはらいせについ村ひとつ壊滅させたりとかはざららしいわよ?」
いや、魔族と合成って…それってむちゃくちゃに高度な技術というか、禁忌とされているはずじゃぁ……
というか、あっさりと魔族を捕まえられるのか?
…うちの姉ちゃんともしかしたらいい勝負なのかもしんない。
どうやら話をざっときいただけでもお近づきになりたい人物ではなさそうである。
そんな人物がどうして賢者の石を欲するのやら。
何となく勘ではあるが、あたしの第六感というか7勘が相手に石を渡してはいけないと叫んでいる。
それがなぜかはわからないが。
「そ、そう。あ、町がみえてきたわよ」
そんな会話をしていると、やがて山のふもとのほうにと見えてくる町並みがひとつ。
その先には広大にと広がる海の姿も垣間見える。
裏街道を歩いていたのでちょうど小高い丘の上から見下ろす格好になっているあたしたち。
まあ、いくら何でも大きな町などで騒ぎはおこしてはこないでしょう。
とりあえず、その話はそれまでにし、あたしたちはそのまま町にとむかってゆくことに。

わいわい、がやがや。
さすがに交易の盛んな港町の一つ。
夜だというのに酒場ではかなりの人だかり。
「しかし、あんたまでこなくてもよかったのに」
ナーガが寝静まったのを確認してせっかく宿を抜けだした、というのに。
ナーガがいたらそれはそれで絶対にややこしいことになることは目にみえているがゆえの行動。
「そうはいくか。小さな女の子がこんな夜に出歩くのを黙って見過ごすわけにはいかんだろ」
こ、こいつは…まだあたしを子供扱いするか!?
「…少しきくけど、あたしをいくつだとおもってるわけ!?」
「十歳」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
すぱこぉっん!!
呪文で吹き飛ばしたい衝動を何とかこらえ、無言で懐から取り出したスリッパでおもいっきりはたく。
「十五よっ!十五っ!!」
「ええ!?それにしては胸が…」
ぎろり。
「い、いえ、何でもない…というか、そのスリッパは何なんだ!?」
ぎろりとガウリイをにらむとあたしの手にしたスリッパをみて何かいってくるけど。
「乙女のたしなみよ」
きっぱり。
まったく。
こんなか弱いかわいい美少女を捕まえて、子供とみているとは何としたこと。
「本来なら呪文で吹き飛ばすところだけど。乙女を傷つけた代償はその剣でカンベンしてあげるわ」
「だから!これは譲る気はないといってるだろう!?」
どうもフィルさんは宿で爆睡中らしい。
まあ、あのフィルさんのこと。
一人でほうっておいても何かある、とは絶対におもえない。
ナーガが問題を起こすほうが確率は高い。
「さってと。とりあえず……」
ガウリイが何か抗議してくるけどさくっと無視。
まずはきょろきょろと周囲を見渡しお目当ての人物を探し出す。
こういう場には必ず情報屋、という人物が紛れ込んでいるわけで……
かといって、そういう人物は自分が情報屋です、とは目印をつけているわけではない。
だがしかし、こういうのは雰囲気でわかる。
それはまあ、旅をしている中で見についた勘、とでもいうのであろう。
「?お、おい?」
何か横でガウリイがいいかけてるけど。
そのまますたすたとカウンターの隅のほうの一角に座っている人物のほうへむかってあるいてゆく。
一見したところ、どこにでもいる男性であろうが、見る人がみれば絶対にわかる。
「話があるんだけど、いいかしら?」
あたしの言葉にその男は顔のみを横にとむけ、
「ガキにようはねぇ。かえんな」
むかっ。
「は・な・し、があるんだけど?」
にこやかに笑みを浮かべて指の先にちょっとした光の球を出現させる。
ちなみにファイアーボールとはいえ威力をかなり押さえているのでひと一人ほど丸焦げにする程度。
あたしの笑みと、指先に生まれた光の球が何なのか悟ってか即座に顔色を変え、
「わ、わかった!わかったから!…話し、とは何なんだ?」
あのミイラ男よりもこの男のほうがかなり見る目はあるらしい。
まあ、あのミイラ男のほうが見る目がなさすぎた、という言い方もできるのだが。
あわてて言い繕ってくる男の言葉に満足し、そのままなぜかあいた隣の席にと腰をかける。
なぜか男の横に座っていた別の客はあたしの指の先に生まれた光の球をみてあわてて席をたったのだが。
それはそれで関係なし。
「船を探しているのよ。セイルーンにいきたいの」
いいつつも、懐から小さめな皮袋を一つ取り出して男の目の前にすとん、とおく。
男はそれに手を伸ばし、あたしとその皮袋をしばらく見渡したのちに、少しばかりその重さを確かめ
「船。か。当然定期便のような【表】のではないようだな」
「まね。ちょっと事情があってね」
こういう輩は話が早くて助かる。
ここにナーガがいればおもいっきり話しがこじれるので寝静まるのをまってやってきたのだから。
「ふむ。どうやら訳あり。か。……希望の時期と人数は?」
「早ければ早いほど。あたしを含めて四人」
あたしの言葉に男はにやりと笑みを浮かべ、
「四人。か。おあつらえむきのがあるぜ。明朝。夜明け前に第七倉庫まできな。これはもらっていくぞ」
「あら?まだ渡すとはいってないわよ?あたしたちがきちんと船に乗れたらこれは渡すわよ」
こういう輩でそのまま持ち逃げをする、という奴らはかなりいる。
ゆえに、先に金銭をちらつかせて、きちんと目的が達せられないと渡さないという旨を伝えたほうが効果的。
ときどきそこでごねる輩もいるにはいるが、そういうときは多少誠意ある説得をすればわかってもらえるものである。
その誠意ある説得ののちになぜか交渉相手がずたぼろになっていたりするのはあたしのせいではない。
断じて。
ちなみに、あたしの指の先にはいまだに炎の小さな光の球が出現しているままである。
男はしばし、あたしとその指先の光の球を交互にみて、しばらくのち、溜息ひとつ。
「…わかった。仲介料はそのときでいい。あんたの名前は?」
「リナよ」
「…リナ?まあいい。夜明け前に第七倉庫だ。安心しな。あのリナ=インバースとの約束はほごにはしないぜ」
どうやらリナ、という名前だけであたしが誰かわかったらしい。
まあ、どこで当人と把握したのかはきかないことにしておく。
「あ。そう。じゃ明日の朝」
いいつつ、男の目の前に出されていたコップと食事に目をやり、持てあましていた火の球をすっと投げる。
それと同時に男が頼んでいた食事が一瞬炎にと包まれる。
こんがりとした香ばしいにおいが周囲にと立ちこめる。
ちなみに男が頼んでいたのは野菜炒めである。
それがあたしの放った炎によって黒こげになっていたりするけどそんなことはどうでもよい。
それをみて男はなぜか一瞬震えあがり、
「…きちんと話しはつける」
こくこくとうなづきながらもそんなことをいってくる。
「おねがいね。じゃ、ガウリイ。もどりましょっか」
無言ではあるが、あたしの言いたいことは伝わったらしい。
すなわち、嘘をついたらどこまでも探し出して彼自身をそのようにする。
というあたしの意思をそれから嗅ぎ取ったらしい。
なぜか遠巻きにこちらをみてくる他の客たちをそのままに、ひとまず酒場をでるあたしたち。
「さってと。じゃあ、早いとこ今日はねて……」
どごぉっんっ!!
あたしがいいかけたその刹那。
夜の闇に爆発の音と、ちょっとした炎が巻き起こる。
え…え~と……
あっちの方角って…い、嫌な予感……
炎はどうやら裏路地の一角から上がっているらしい。
に、荷物を念のために全部もってきていてよかった。
でなくてっ!
「ガウリイ!急いで宿にもどるわよっ!」
もしここでフィルさんに何かあったら…絶対にそんなことはないだろうけど。
あたしがいままで建て替えたお金がもどってこない!
それだけは何としてでも避けなければっ!!
だっと駈け出すあたしに続き、
「な、何だっていうんだ?いったい?」
よくわかっていないらしいガウリイがそんなつぶやきをもらしている。
おそらく、絶対に間違いなく。
ナーガのやつが何かしでかしたに違いないっ!!
さすがに夜も更けていることもあり、周囲は静か。
そんな中で巻き起こった爆発の音。
…?
それにしては誰も起きてこないのがかなり気にかかる。
というか、店をでたその直後に何かの魔力を感じたので即座に風の結界をまとったのも事実である。
火の手はやがて信じられないほどに素早くおさまったらしく夜の闇を焦がしていた赤い光が消えてゆく。
それとほぼ同時。
「お~ほっほっほっ!お~ほっほっほっほっほっ!!」
あ~……やっぱし……
夜の闇に響くかのようなナーガの高笑いする声があたしの耳にと届いてくる。
「?リナ。何かあそこ。へんなやつらが進んでるぞ?」
「へ?」
ガウリイが指示した方向にはただただ暗闇があるのみ。
「何かトロルとかが歩いてるんだけど」
え~と、町中をですか?
ということは、ナーガがねぼけて呪文を放ったとかではないのかな?
というかよくみえるなぁ…こいつ……
まあ、嘘をいっているようにはみえないし。
となれば本当なのかもしれないがまずは状況確認が先である。
「と、とにかく。宿にむかうわよ!」
あたしたちが止まっていた宿屋に向かう最中、やはり誰も町の人々が出てこない。
というのにもひっかかる。
異様に静まり返っている町の中をかけてゆくことしばし。
「お~ほっほっほっ!このナーガ様に恐れをなしたのね!お~ほっほっほっ!!」
静まりかえった夜のヤミの中、唯一響いている声が異様に大きく聞こえてくる。
見たところ、宿屋に変化はないが。
というか確かに火の手があがったようにみえたのにその痕跡が見当たらない。
となれば、火の手は別のところからあがったものだったんだろうか?
「グレイシア。もう夜も遅い。風邪をひくぞ?」
窓から顔をのぞけて屋根の上にいるナーガにフィルさんがそんなことをいっている姿が目に留まる。
「フィルさん!」
「うん?おお。リナ殿にガウリイ殿。どこにいっておったんじゃ?
  先ほど刺客とおもわしきものたちがやってきて大変だったんじゃぞ?」
窓から身を乗り出しながらフィルさんがあたしたちの姿をみとめてそんなことをいってくる。
…やっぱし。
「ちょっと。それより詳しいことを教えてもらえますか?」
「うむ。お~い。グレイシア。ほどほどにしてはいってこいよ?お前は病弱なんだから」
「どこがっ!?」
フィルさんの声に思わず突っ込みをいれてしまうあたしは絶対に間違っていない。
しかし、これだけ大声をあげているのに宿の客どころか周囲の人々も起きてこないとは……
やはり何らかしらの術が掛けられているようである。
…しかも、どこからも人々が出てこないのをみれば信じられないことだが町全体に。
「あの姉ちゃん、病弱なのか?」
「真に受けないっ!と、とにかく。宿に戻るわよ」
しかし、襲撃があったとは…いなくてよかったのか、はたまた損したのか…
とぼけたことをいってくるガウリイに念のためにとくぎを刺し、あたしたちは宿の中へ。
宿の中は出かけたときとさほどかわりがない。
念のためにあたしとナーガが止まっていた部屋をのぞいたけども戦いの痕跡すらまったく残っていない。
「それで?いったい何があったんですか?」
「いきなり娘の部屋から爆音がしてな。あわてて起きたら異様な者どもがやってきておってな。
  こちらは誠意ある話し合いをしようとしているというのに問答無用でつっかかってきて。
  じゃが、説得を続けているうちに男やトロルたちはやがてこの場からたちのいたんじゃがの」
その説得の内容が気になりはするけども、聞いたら頭が痛くなりそうなのできかないでおくとする。
とりあえず、フィルさんとガウリイが止まっていた部屋にと入りフィルさんから話をきいているあたしたち。
「立ち退いた?」
「うむ。そのあとでレゾと名乗る人物がやってきたんじゃが……」
「レゾ!?」
まさか赤法師レゾ当人が!?
「話し合いをしたんじゃが、よくわからんことをいってのぉ。シャブシャブがどうとかと」
シャブシャブ?
はて?
「話し合いをしている最中、娘もやってきて一緒に話し合いをしたんじゃが……」
おそらく相手は話にならないので逃げたとみた。
というかよく無事だったなぁ。
フィルさん。
まあ、おそらくむちゃくちゃ常識はずれなことをしたんだろうと予測はつくけど。
「あ、あのぉ?そのシャブシャブって?何で食べ物の話が?」
「さて?儂にもよくわからんのじゃが」
…どうやらフィルさんに聞いてもラチがあかないとみた。
そんな会話をしている最中。
「お~ほっほっほっ!お父様。シャブシャブでなくて、シャブラニグドゥよ!
  何とぼけたことをいってるのかしら?お~ほっほっほっ!」
いきなり窓から乱入してくるナーガの姿。
「…って、ナーガ。今あんた何ていったの!?」
「そんなことよりリナ!あなた、この私を指し押してさてはおいしいものをたべにいっていたわねっ!!」
「だあっ!どうしてそうなるっ!それより!今の話!」
「ふっ!とぼけても無駄よっ!この私の目はごまかせないわっ!
  そしてそこでこの私を襲撃させるように誰かに頼んだんでしょうっ!!おろかな行為ねっ!」
「だから!ひとの話をきけぇっ!つうかそんなことするかっ!!」
と。
「うるさいぞ!何時だとおもってやがるっ!!」
バンッ!と扉がたたかれたかとおもうと第三者の声が扉の向こうよりきこえてくる。
それと同時に静かであった空気が何やらざわめきを増してくる。
「これこれ。二人とも。もう夜も遅い。他の客の迷惑にもなろうて。
  しかし、はて?あの騒ぎで一人も起きてこなかったのは謎じゃのぉ?」
そんなあたしたちに対してフィルさんがそんなことをいってくるけど。
謎の一言ですますフィルさんって……
「おそらく。人々は魔術で眠らされていたんだとおもいますよ?」
ちなみに宿の人々だけでなく町の人々すべてを含んで。
この様子だと、おそらく酒場にいた人々もあたしたちが店を出るのとほぼ同時、眠らされているとみた。
でないと野次馬が店からでてこなかったことの言い訳がたたないし。
と、とりあえず。
「す、すいません。つれが寝ぼけてさわいだらしくて。ごめんなさい」
ウルウルと瞳を潤ませて、ガチャリと少しほど扉をあけて扉の先にいるであろう客にと話しかける。
ちなみに軽く服の上に毛布をばさっとかぶるのがミソ。
傍目からみればねまきの上にあわてて毛布をかぶっている、としか見られない。
ちょこっと隙間からのぞくかわいい女の子が瞳を潤ませてそんなことをいってくれば、
たいていの男はころっとひっかかる。
案の定、
「ま、まあ。そういうことなら…とにかく、騒がずにねるこったな」
「はい。すいませんでした」
毒気を抜かれたのか扉の外でわめいていた客その一は戸惑ったような顔を浮かべてひっこんでゆく。
とにかくひたすらにしおらしく。
そのまま少しばかり本気で謝っているような格好をとりつつも、再びガチャリと扉を閉める。
「ふぅ。これでよし」
「…お前さん。絶対に役者ででもたべていけるぞ?」
「ほっといてよ。とりあえず、場所を移して話しませんか?
  ここで話していたら他のお客さんたちにも迷惑でしょうし。ナーガもそれでいいわね?
  それとも。ここで話していて他の客たちに怒鳴られたい?」
「ふっ。お~ほっほっほっ!し、仕方ないわねっ!しかしリナ。きちんと話しはつけますからねっ!」
…話しをつけるも何も、あたしは何もしてないってば。
しかしここでナーガと不毛な争いをしていれば、いつ何時、襲ってきたという刺客が再びくるかもしれない。
ゆえにさくっとナーガのたわごとはいつものごとくに無視。
まあ、何か飲ませたり食べさせたりすればナーガはすぐさまに黙るし……
「じゃぁ、まず各自。荷物をきちんともって一度宿から出ましょうか」
旅人が夜中に宿をでることは少なくない。
ゆえに宿屋とすればはじめにきちんと金額を払う仕組みになっている。
寝不足は美容の大敵なれど、こんな町中で仕掛けてくるような輩を相手にのんびりとしてはいられない。
酒場のほうにも追手がかかっているかもしれないが、
それだとあたしたちがもどってくるまでにはち合わせしていなければおかしい。
戻るまで、ガウリイが見えると言ったトロル達の集団、というのとも結局すれ違わなかった。
最も、あちらがこちらに気づいていれば攻撃をうけていた可能性は高いが。
先ほどと違い、虫の声などが夜の空気の中にと響いている。
やはりさっきは何かが仕掛けられていたらしい。
つまりは、何ものかが騒ぎを起こしても気づかれないように町ごと眠らせていた可能性が大。
しかし、町ごとすべてに術をかけるほどの実力の持ち主が何であんなものをほしがるのやら?
使ってみてわかったがあの賢者の石はさほど威力は大きくない。
せめて数倍程度に魔力が増幅されるという品である。
まあ、何か手を加えれば協力無比な魔力増幅機になるのかもしれないが。
とりあえず、いくら何でも周囲に人々が多くいればそれだけ異変も早くわかるというもの。
ゆえに、フィルさんとナーガを伴って別の酒場にとあたしはひとまず移動することに。
先ほどの酒場だと追手の一部がいかねない、という懸念もあるし…ね。

「ふむ……」
ぱくりと、注文していたふるふるデザートを一口して思わず唸る。
ちなみに、このふるふるデザート。
この町の名物料理らしく、その触感が売りで、美容にもいい、と巷では評判の品。
要領を得ないナーガやフィルさんの話を総合すると、寝ていたところいきなり刺客がなだれ込んできたらしい。
いきなりのことだったのでそれらを呪文ごとナーガは吹き飛ばしたとか…
やっぱしあの爆音はナーガのせいでしたか。
そうですか。
その後、武器をもった男たちもまたやってきたらしいが。
フィルさんが説得をつづけていたところ、いきなり男たちは撤退したとかしないとか。
「そのとき、全身赤づくめの男がやってきてのぉ」
ずずっとスープを吸いつつも、淡々といってくるフィルさん。
「赤づくめ?」
「うむ。服も何もかもすべてが紅い色で統一されていてのぉ。当人はレゾと名乗っていたが」
「レゾ!?本当に当人なわけ?」
しかし、全身紅づくめって…想像つかないんですけど。
「さあのぉ。しかし、目は閉じておったが」
いや、目はつむっていれば誰でもごまかせるし。
「あら。お父様。当人に間違いないとおもうわよ。吹き飛ばされた部屋を瞬時に修理していたしね」
いやあの、瞬時、というのがかなり気になるんですけど?
うちの姉ちゃんがよくそんなことをやっていたけど。
ともすればかなりの魔力知識にたけた人物とみた。
「しかしどうも、あやつは信用ならぬとみた」
ふむ。
どうやらこのフィルさん、一応人を見る目はちょっとはあるのかもしれない。
「口先では何か優しそうなことをいっておったが。何かを感じたのも事実じゃのぉ。
  シャブ何とかの復活をたくらむ輩から世界を助けるためなど御大層なことをいっておったが」
・・・・かなりまて。
シャブ何たらという名前でしかも復活って…かなり嫌な予感がするんですが?
あまりかかわりたくないかもしんない。
「…とりあえず。ここに長居していたら面倒なことになりそうね。
  さっき酒場で話しをつけて船の手配はどうにかなりそうだから、早めにでかけましょう。
  セイルーンにまでいけば何か詳しいことがわかるかもしれないし」
もし、あたしの考えが正しければ、セイルーン内ならば何か情報があるかもしれない。
あたしの考え違いでありますように……
「ええ?もういくの?」
ナーガがビールジョッキを片手にそんなことをいってくるけど。
「あのねぇ。ナーガ。それとも何?また襲撃をうけたいわけ?」
「そ、それは……」
あたしの言葉に言葉につまるナーガ。
こうして理論を積み重ねればこういう場合は面倒なことにならないで済むのは腐れ縁の中で培った知識。
「とりあえず、待ち合わせが第七倉庫なんだけど……」
言葉に詰まっているナーガを無視し、とりあえず話しを進める。
話しをつけたのは夜明け前。
時間的にすでにもう真夜中を過ぎている。
襲撃があったのがほぼ真夜中。
夜遅くだからこそああいった情報屋などが普通に酒場に出没するのは常識中の常識。
しばし、あたしたちによる話し合いが裏路地にとある酒場の一角において繰り広げられてゆく。

草木も眠る丑三つ時。
とはよくもまあいったもの。
しんと静まり返った港の一角。
酒場も夜中中あいているわけでもなく、ある程度の時刻になったら閉じられる。
夜明け前、とは言われたが、早くにこしたことはない。
「…あ、あんたら…早かったな」
なぜかおっかなびっくりで酒場であった情報屋が歩くあたしたちをみつけて声をかけてくる。
「まあね。ちょっと事情があってね」
そんなあたしをちらりとみて、フィルさんやナーガにと視線をむけ。
ちなみにフィルさんにはいつものごとくにフードをかぶってその姿を隠してもらっている。
こういった港町ではどこにフィルさんの正体をしっている人がいるとも限らない。
…まあ、誰も真実をいっても知っているものでなければ信じないであろうけど。
しかしどうやらナーガの格好をみて納得いくものがあったのか。
「なるほど。そんな姉ちゃんが一緒だと普通に船旅はできないわな」
「ちょっと!どういう意味よっ!このナーガ様のセンスがわからないて。あなたまだまだね!お~ほっほっほっ!!」
・・・・・・普通の感想だと思います。
このナーガの格好をみて普通の人間、とおもう人のほうがぜったいにおかしい。
「あ~。きにしないでこいつのことは。それより、例のやつは?」
ナーガをとりあっていたら時間がいくらあっても絶対に足りない。
「話しはつけてある。こっちだ」
人目を気にしているのか周囲を気にしつつ男がそんなことをいってとある方向を指さし歩き出す。
ふむ。
ここは素直についていくしかない。
今だにわめいているナーガをそのままに、男のあとをついてゆく。
「ちょっと!この私をおいていくなんてどういうつもりよっ!!」
何やらさらにわめいているけどさくっと無視。
そのまま男の後を歩いてゆくと、どうやら男は町の端にとある岩山のほうにと向かっているらしい。
何かあればすぐに対処できるように警戒だけはとかないでおく。
進んでゆくことしばし。
岩山にとある洞窟の中、その海に面した場所に位置している船が一艘。
そこからでてきた男と何やら情報屋が話しを進め、
「この船でイルマートまで送ってもらえるらしい。話を進めてもいいか?」
そんなことをいってくる。
なるほど。
イルマートといえば、避暑地としても有名で、噂では密輸船なども結構あるとはきいていたが。
おそらくこの船もその一つとみた。
「イルマート?そういえば、リナが昔作ったあれ、町の名物になってるらしいわよねぇ」
ぎくっ。
こいつはいらんことを思い出してっ!!
「と、とりあえず。あたしたち、急いでるの。それで?運賃はいくらかかるのかしら?」
ナーガのつぶやきに突っ込みをいれられないように素早く話題をすすめるあたし。
何しろアレはあまり思い出したくないしなぁ。
まさか、あそこまでの威力があるとはあたしですらおもってなかったんだし。
あれはちょっとしたハライセにあの術をぶちまけたら副作用があっただけであってあたしのせいではない。
断じて。
うん。
まあ、それはそれとして。
そんなあたしの申し出に、
「成るほど。噂どおりだな。あのリナ=インバースからぼったくったりしたらあとがこわい。普通の料金でいいぜ?」
どこをどうみて噂どおり、ととらえたのかかなり気になるところではあるが…
ここはあえてぐっとこらえる。
ちっ。
ぼったくろうとしたら多少誠意ある話し合いをしてでも無料にしてもらおうとおもってたのに。
だいたい、呪文を数発放てば対外の交渉人は大人しくなるのは実証済みだし。
「じゃ、さっそくだけど、お願いするわ。いっとくけど。変なまねをしたら、わかってるわよね?」
「わ、わかってるよ。俺達だってまだ死にたくねぇ」
よろしい。
よくわかっているようである。
あたしのにこやかなほほ笑みになぜかびくつきながらもそんなことをいっくてる男の姿。
「じゃ、話はまとまったな」
とりあえず手を伸ばしてくる男に皮袋をそれぞれ一袋づつ。
それを受け取り、すばやく逃げるようにかけだしてゆく情報屋の姿。
「さて。じゃぁ、さっそく出発するとしよう。のってくれ」
「なんじゃ。もう出発か?あわただしいのぉ」
フィルさんがそんなことをいっているけど。
「こういうのは早いほうがいいのよ」
「そういうものなのかのぉ?」
「船旅か~」
何か納得のいかないらしいフィルさんのつぶやきとは対照的に、のんびりとそんなことをいっているガウリイの姿。
ともあれ、あたしたちはその男の船に乗り込み、一路、沿岸諸国連合のひとつ。
イルマート公国にといくことに。
「そういえば、最近はイルマートにいっておらんのぉ。何かと忙しくて」
「イルマートといえば温泉ね!お~ほっほっほっ!!」
フィルさんとナーガがそんなことをいっている。
どうでもいいけど、【狙われている】という自覚はこの父娘にあるのやら。
まだ明けきらない夜明け前である。
ゆえにしんと静まり返った海の上、ナーガの高笑いが異様に響く。
しかも、二人して舳先にてそんなことをいってるし。
そういえば、たしかイルマートってセイルーン王家の別荘があったはず。
もしかしたらセイルーンにまでいかなくてもそこで依頼料がもらえるかもしんない。
最近は海の上にまでレッサーデーモンたちが出現するという話をきくにはきくが。
何でも飛行型のレッサーデーモンとか。
ゆえに必ず定期船にも魔道士が一人や二人、乗り込むきまりになっていたりする今日この頃。
いったい世の中に何がおこっているのかわからないが。
少なくとも、何かが起ころうとしているのは間違いないのかもしれない。
ま、あたしにかかわりがなければそれはそれでいいけどねvv
目指すは一路、セイルーン。
さてさて、面倒なことにならずにとっとと依頼料がもらえますように♡


                   -続くー

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あとがきもどき:
薫:ちなみに、リナとガウリイが出かけている間に襲撃があった、という設定です(笑
  そこでナーガとフィルさんはレゾに出会っていたりするんですけどね。
  まあ、このあたりはリナ&ガウリイがいない、というだけで原作そのまま、とおもってくださいなv(まて
  さてさて、ガウリイの影が薄いなぁ~(自覚あり
  まあ、次回からがドンパチ…かな?
  さて、ゼル達にとらわれるのはナーガにするかフィルさんにするか(だからまて
  何はともあれ、ではまた次回にて♪

2009年2月5日(木)某日

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