まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちら

ひさしぶりに、ルナの邪魔にあいつつの打ち込みです。
最近おとなしかったのに(汗
キーの上にのってきてなかなか作業がすすみません(苦笑
最近はあまり邪魔してくることなかったんですけどねぇ?
それはそうと、相変わらず、父がこりずにまたミヤ(チビクロネコ)脱走させ中・・・おひ(涙

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迷・ネオスレイヤーズ

シードラゴン。
プラズマドラゴンなどどいった普通の竜とはまったく異なるドラゴンの一種。
ドラゴン、と呼ばれている種類でもいろいろとあり、レイクドラゴンなどはかなりの高級品。
とまでいわれているが、そのかわりに料理するのに半年以上かかかるというしな。
だがしかし、このシードラゴンはくさみもなく、薄くスライスした肉をそのままでも問題はない。
ほのかに味がついているだけなのでそのままで食べるような輩はまずいないが。
「ふ~。食べた食べた」
材料があまりない。
というのでシードラゴンを一体ほどあたしたちが調達し調理してもらったのはついさきほど。
「しかし、あの姉ちゃん、大丈夫なのか?」
「ああ。ナーガのこと?」
シードラゴンをしとめるときに一緒くたに吹き飛ばされてはぐれたが。
ま、いつものことだし。
「いつものことだし。そのうちに高笑いしながら合流してくるわよ」
「いつものことって……」
何か首をかしげてるガウリイの姿があったりするけど。
まあ、出会って間もないからナーガの性格を把握してないのは仕方がない。
というか初対面で性格を見抜いていればそれはそれですごいものがある。
「グレイシアのやつ。大丈夫かのぉ?あの子は母親ににて病弱じゃからのぉ」
「どこがっ!!」
しっかりと食事を食べ終わりながらもそんなことをいうフィルさんに思わずつっこむ。
ナーガのどこをどうみたら病弱、という言葉があてはまるのやら。
このままあたしとしては二度とあらわれてほしくないのは山々なれど、
お宝の数々をあたしがもっていることもあり絶対にでてくるのは明らか。
父親とお宝を測りにかけるとすれば、ナーガのことだからたぶんお宝を優先させるとおもうし。
…あたしならまちがいなく姉ちゃんがそこにいるとすれば、姉ちゃんを避ける方を優先させるけど……
「ま。とりあえず。進んでたら合流してくるでしょうし」
「そういうもんか?」
「そういうもんっ!」
疑問符を浮かべるガウリイの台詞を一言で返しておく。
この村はフィルさんの顔パス、というのもあり食事は無料。
このままここでゆっくりとくつろぎたいのは山々なれど、ナーガとはぐれた以上、話は別。
ナーガのやつははぐれたりしたときはとんでもない行動を絶対にとってくる。
それに何より村できいたことがちと気にかかる。
最近、このあたりでレッサーデーモンなどが多数発生しているとか。
そんなところに長居は無用。
原因究明の依頼でもうけていれば話しは別だが。
フィルさんが正義感?を燃やしてそれをどうにかしなければ。
などといっていたりもするのだが。
そんなものの原因究明など面倒なことこの上なし。
このあたりに何か魔族を呼び寄せる何かでもあれば別であろうが。
…たとえば、写本とか。
異界黙示録クレアバイブル、と呼ばれている物がある。
それを写し取った書物を一般的に写本と呼び称す。
異世界の魔術などに関しても記されているというその書物は世界中の魔道士などがのどから手がでるほどほしい品。
まあ、そんなレアな品にめったにお目にかかれるはずもなし。
そもそも、レッサーデーモンなどが多発するのに別に意味とかあまりないだろうし。
そんなことにでもなれば下手をすれば姉ちゃんからの指令の手紙がとどきかねない。
「と、とにかく。あたしの都合もあることだし。とっととフィルさんをセイルーンに送り届けますから」
「うむ。まあ、あまり国をあけるわけにはいかないしのぉ」
…なら、お忍びで旅にでるなっ!旅にっ!
よくまあ、国政をしきっているといわれている第一王位継承者を旅にだすものである。
…まあたぶん、誰も止められなかったとみた……
おもいっきり突っ込みをいれたいがおごってくれた恩もありどうにかこらえる。
「じゃ、いきますか」
食後のデザートも食べたことだし。
のんびりしていれば下手をすれば途中で野宿になってしまう。
今から出発すれば夜までに次の町にとたどり着けるはずである。
あたしのたべっぷりに何やら驚いている店の人たちをその場に残しそのままあたしたちは先を急ぐことに。

マレン湖を挟んで位置している街道沿い。
山道ではあるが、一応さまざまな交易の主体であり、道も一応整備されている。
結構馬車などが通ることもあり、道並みに一部分ほど石が敷き詰められている。
ときどき山崩れがあるのがタマに傷。
このあたりからは小道などがけっこう頻繁にわかれており、さまざまな場所へと移動が可能。
ちなみに木々が生い茂っていることもあり、待ち伏せなどにはもってこい。
しかし、このあたりに被害がでるといろいろと不都合があるから、というので村に国よりの駐留兵士が在留している。
ゆえに盗賊に出会いたいのならば少しばかり離れた場所にと進まなければならない。
しかし、物事には何事も思い通りにいかないことは多々とあるわけで……
「フィルさん。さがって」
いいつつも背後にフィルさんをかばうようにして前にと出る。
「嬢ちゃんも。ここはオレにまかせろ。でも嬢ちゃん。よく気配わかったな~」
こ、こいつは…いまだにあたしを子供扱いしているし。
…いっしょくたにふきとばしちゃろうかしらん?
一歩前にとでるあたしを押しのけるようにガウリイが前にとでていってくる。
というか、こんな雑魚ならだれでもわかるってば。
それとほぼ同時。
「へへへ。痛い目をみたくなかったら金目のものをおいていくんだな」
いいつつも、木陰からでてくる男たちが数名。
格好からしてどこにでもいるおいはぎさん。
わらわらと手にした円月刀や短剣、そしてなぜか鍬などがとても目につく。
こういうやつらの獲物ってどうしてこう似通ったばかりなのやら。
「お前たちこそ痛い目をみたくなかったらおとなしくひきさがるんだな」
何やらそんなことをガウリイはいっているけど。
男たちはちらり、とあたしたちのほうをみて、
「うん?同業者か?そっちのチビガキはみたところ売り飛ばすガキか?それにしちゃあムネがないな。
  まあいい、オレ達に出会ったのが運のつきとおもって……」
むかっ。
炸弾陣ディルブランドっ!!」
ドゴガッ!!
あたしの言葉に従い、男たちを中心にちょっとした円形上に大地が吹きあがる。
『うわっ!?』
何やら男たちの声がしてきたような気もするが。
「んっふっふっ…いってはならないことを…地霊咆雷陣アークブラスっ!!!」
バチバチバチィッ!!
ここは森の中。
火系の術だと火事になる可能性が大。
ゆえにおちゃめな呪文で対応するあたしは何て親切。
あたしの言葉に従い、周囲に電撃が巻き起こる。
あたしがはじめに放った術で視界を失っていた盗賊さんたちはものの見事に電撃の直撃をうけて何やら踊っているけども。
「うわっ!!って、いきなり何すんだっ!?」
そんな中、ガウリイが必至にそんな電撃を交わしているけど。
ふむ。
運動神経はいいとみた。
さってと。
破砕鞭バルスロッド!!んっふっふっ。どこの口がチビですってぇぇ!?」
ぱしっ。
今だに電撃が周囲に広がる最中、次の呪文を即座に唱え、手に光の鞭を出現させる。
ちなみに、あたしの周りには風の結界をめぐらせたので電撃の影響はない。
人が気にしていることをいったやからに素早く光の鞭を直撃させる。
「お、おいおい。やりすぎじゃぁ……」
「んっふっふっ。ガウリイはだまってて。人がきにしていることをいったこいつらがわるいっ!
  それとも、乙女にいってはならないことをいったこいつらを許せとでも!?」
「ひ、ひぇぇっ~!!!」
なぜか襲いかかろうとしていた盗賊たちからは悲鳴しかきこえないが。
「リナどの。人間、話し合えばわかりあえるであろう。そのくらいで」
フィルさんも何やらいってくるが。
「んっふっふっ。これがあたし流の話し合いなんですよ♡さぁて、じっくりと話し合いましょうか♡」
にこやかにいいつつも、鞭を持ち直す。
「…な、なんかおまえ、目がすわってないか?」
「あら?ガウリイも鞭にたたかれたい?」
にこやかに笑みを浮かべるあたしの言葉になぜかぶんぶんと首を横にふっているガウリイの姿。
多少あたしの目は笑っていないではあろうが、そんなことはどうでもいい。
『うどわぁぁ~~!!?』
しばし、なぜかしばらく大の男たちの叫び声が周囲にと木霊してゆく。
「ちっ。あまりもってなかったわね~。あいつら」
「おいおい……」
とりあえず、襲ってきた男たちを身ぐるみはがし、もっていた荷物もすべて没収し、
その付近の木々にくくりつけて先を進んでいるあたしたち。
奪った…もとい没収した品物を歩きながら物色しつぶやくあたしに横でガウリイが何やらいってるけど。
「しかし。あの男たちはほうっておいてもいいのか?リナ殿?」
フィルさんはどうやら気になっているようではあるが。
ちなみに、フィルさんには二度と悪事をする気がおこらないように知らしめる必要性がある。
と誠意ある説得により納得してもらった。
ゆえに、盗賊さんたちの身ぐるみをすべてはぎとり、持っていた品物もすべて没収し、
そのうちに見回りのものが見つけるだろうから、というので反省をこめて木にと結びつけるのを了解してもらった。
そうでもいわないと、延々と人間だれしも悪いものはいないだの、鬱陶しい説教が始まりそうな気配がしたのもあるのだが。
このフィルさん、顔に似合わずそういった面はかなり五月蠅いらしいがあたしの説得に同意したのを考えると、
周囲の意見をきいて柔軟に対応するタイプらしい。
…顔というかその容姿からは想像がつかないが。
「まあ、あそこが重要な街道沿いでなきや、ドラスレで吹き飛ばしてたけどねぇ」
「「…?ドラスレ?」」
あたしのぽつりとしたつぶやきに、二人顔を見合せてつぶやいているガウリイとフィルさん。
「あ。きにしない、きにしない。こっちのこと」
というか、フィルさん…ドラスレ、といわれてわからないっていったい……
セイルーン、どうなっているのやら。
いくら何でも黒魔法の最高峰、といわれているアレを知らない、とは信じられないが。
ま、ともかく。
「とりあえず、これらは襲撃された心の痛みの慰謝料としてもらうとして」
「…痛い目をみたのはあいつらだけだとおもうんだが…い、いや。何でもないです」
ぽそりというガウリイをぎろりとにらむとあわてて言い返してくるガウリイの姿。
しかし、あの電撃をすべてかわしているこのガウリイという兄ちゃん。
もしかして結構な腕の持ち主なのかもしんない。
まあ、オリハルコンの女神像をきったときにもおもったが。
あの綺麗な断面をつくれて、しかも動きも素早い。
となれば剣士とすればおそらく超一流になるのであろう。
しかし、けっこうその手の名前はあたしも聞いたことがあるが、ガウリイ、という名前はきいたことがない。
そういや、フルネームきいてないや。
ま、いっか。
「それで。ここからセイルーンにむけて船とかでてましたっけ?」
簡単に荷物を物色し軽く仕分けして袋にといれなおす。
そしてその変わりに地図を取り出し念のためにフィルさんにと確認。
「うむ。我がセイルーンには海はないが、我が国にくる旅人のために常に定期便を出してもらうように協定を結んでいる」
まあ、沿岸諸国連合の中にはそういった交易品などで財政を保っている国々も多々とある。
セイルーンにと面している沿岸諸国連合。
海を領土にもたないセイルーンはそういった外交面をもしている…とは旅をしているものならば常識中の常識。
一番いいのは、セイルーンの息のかかった船があれば船賃がただになる…はずである。
「なら、やっぱり一番近い港は……」
ここから一番近い港まで約二日。
「船旅か~」
そんなあたしたちの横でガウリイが何かいってるけど。
…依頼料をもらったらとっととこの兄ちゃんにはおいとましてもらおう。
うん。
さて…と。
そうときまれば。
「それじゃ、港にむけて出発しますか」
とりあえず、近くの町か村でめぼしいものを換金すれば多少の資金にはなるでしょう。
うん。

「しかし、グレイシアのやつ、大丈夫かのぉ?」
あたしとすれば、久し振りに一晩ゆっくりぐっすりと寝られたかもしれない。
何しろナーガと一緒だとなかなかゆっくりとできなかったし。
ガウリイとフィルさんを同室にしてあたしはゆっくりと部屋で寛いだ昨晩。
まあ今までの経験上、大体一晩か二晩程度でいきなりあらわれるのが定番なんだけど……
あたしたちが進んでいるのは周囲がごつごつとした岩山だらけの場所。
街道沿いを進んでもいいのだが、こちらのほうがかなりの近道。
と。
「お~ほっほっほっ!お~ほっほっほっ!ついに見つけたわよっ!リナっ!!」
あ゛~……
予測通りというか何というか。
聞きなれた笑い声に思わずこめかみにと手をあてる。
「な、何だ、何だ!?」
ガウリイがそんなことをいいつつ周囲を見渡しているけども。
そんなガウリイとは対象的に、
「おお!グレイシア!!」
喜々とした声をあげているフィルさん。
「リナ!私をのけものにしてお宝を一人占めする気でしょうけど!そうは問屋がおろさないわよっ!
  お~ほっほっほっほっ!!」
などと、岩山の上のほうからポーズをとりそんなことをいってくるのはまちがいなく……
「しかし。ナーガ。よくまあ、方向音痴のあんたが迷うことなくおいつけたわねぇ」
何でか予測は簡単につくけど。
「お~ほっほっほ!親切な人たちがつれてきてくれたのよっ!!」
それと同時に岩陰からでてくる数名の姿。
獣人にトロルといった数々は、どうみても親切な云々…とは結びつかない。
「ふ。みつけたぜ。あんたたちに恨みはないが、
  あんたたちからある品を奪わないとオレたちも困るんでな。死んでもらうぜ?」
どうやらこの襲撃者たちの親分格であろうか、獣人がそんなことをいってくる。
…犬?
あたしがそんなことをおもっていると、
「犬…ではないか。おまえさん。トロルと狼の気配がするけど?もしかしてハーフか?」
うおいっ!!
そんな犬のような獣人ワーウルフをみて、ガウリイが首をちょこん、と首をかしげつつもさらっと何やらいってるし。
つうか、見ただけで気配を言い当てるなんてうちの姉ちゃんじゃあるまいし……
というか、まじですか?
ねえ?
こ、この兄ちゃんっていったい……
しかし、この獣人、どうみても二本足でたっている犬にしかみえないのもまた笑えるんですけど。
「ほぉ。このオレ様の正体を言い当てるとはな。確かにオレはトロルと狼のハーフだ。
  しかし、それを言い当てたのはあのお方以外はお前がはじめてだ」
犬もどきがそんなことをいってくる。
「え~と。どっちが父親でどっちが母親なのかがかなり気になるんですけど……」
あんまり想像したくないが、思わず想像してしまうのはひとの性。
「がははっ!愛に区別はないということじゃの!よきかな、よきかな!がはははっ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
フィルさん…それですましますか?
ねえ?
と、とりあえず気を取り直して…
「ちょっと!ナーガ!こいつらに案内されてここまできたわけ!?」
一応確認をこめて問いかける。
「お~ほっほっほっ!ふっ!愚問ね!リナ!
  シードラゴン料理を食べ損ねていじけていたら、この親切な人たちがたべさせてくれたのよっ!お~ほっほっほっ!!」
あ~…そういう理由ですか。
「それであっさり、あたしたちがどこにむかってるか話したのね?」
溜息まじりにおもわずつぶやくあたしは間違っていない。
絶対に。
「お~ほっほっほっ!当たり前じゃないのよっ!
  親切にされてしかも教えれば奢るといわれて、聞かれて答えない人がどこにいるのよ!お~ほっほっほっ!」
そりゃ、ナーガならまちがいなく話すわな。
というか小銭ちらつかせでもしたら奢るとかいわなくてもすんなりとナーガはすぐに話すだろうし。
そんなナーガの台詞をきいてか、
「おお!さすがわわが娘っ!!人の親切には素直にこたえる!何とすばらしいっ!!」
フィルさん…どこかずれてませんか?
こ~いう育て方でこういう娘になったのか……
まさか、妹というのもこんなナーガのような性格なのか?
はてしなく怖い。
怖すぎる……
『……娘?』
待ち伏せしていた獣人達がナーガとフィルさんを見比べて同時にそんなことをつぶやいてくる。
あ、その気持ちわかる。
まったくもってにてないし。
性格はともかくとして。
「実の?」
あ~……
ものすっごく心情はわかるけど。
獣人があたしのほうをみて戸惑い気味にと問いかけてくる。
とりあえずこくりと小さくうなづいて肯定の意を返すと、しばし目をテンにしたのち。
「と、とにかく!あんたたちにはわるいがここで死んでもらおうっ!そっちのまぬけな姉ちゃんもなっ!」
などといってナーガのほうをみていってるし。
「ちょっと!誰が間抜けよっ!」
どうみてもあんたのことをいってるでしょうが。
自覚がないのがナーガらしいといえばナーガらしいが。
ナーガの叫びをあっさりと無視し、
「どうかしら?そう簡単にいくとおもってるのかしら?」
笑みを浮かべて呪文を唱えようとしたその刹那。
ぞわっ。
何やら言い知れぬ悪寒がしてばっと今立っている位置を素早く飛び退く。
それと同時に先ほどまであたしがたっていた位置に針のような何かが着弾する。
「ほぉう。よくわかったな。勘だけはいいらしい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ってまていっ!
何なわけ?
このぼろきれまとったような老人のような格好をしている、しかも手などが枯れ木にしかみえない存在はっ!
「って、何だ。魔族の人もいたのか」
「って、あんたはそれであっさりと納得すなぁっ!」
それをみてガウリイがさらっとそんなことをいってるけどおもわず突っ込みをいれてしまう。
「何!?こやつは魔族なのか!?」
こんな人間が普通にいればお目にかかりたいものである。
そもそも、足がなく、腕が枯れ木、しかもフードの下の顔には三つの瞳。
が、しかし、その瞳は空洞になっているだけで光は何も宿していない。
緑のローブがその異様差を際立たせている。
人型をとっていることからしてかなりの実力をもっている魔族であることがうかがえる。
というか、何で純魔族まででてくるわけ!?
「人間よ。素直に品物さえわたせば命だけは助けてやろう。
  そうでなければわが純魔族の力をその身をもって知ることになろう」
淡々とふわふわと浮かびながらも魔族もどきがそんなことをいってくる。
「えええ!?リナ!?この人、魔族なの!?」
「って、あんたは見てわからんかったんかいっ!!!」
高笑いをしすぎて岩山から転げ落ちていて、それでもなお無傷であり近くによってきていたナーガがそんなことをいってくる。
そんなナーガにおもわず突っ込み。
「そりゃ、人間にしてはかわってるなぁ。とおもったけど。
  それに、魔族かもとは思ったけど、魔族にもいい人はいるでしょうし。かわった魔族の心当たりもあったし」
「…それはわかるけど」
ナーガのかわった魔族、という相手に心当たりがあるがゆえに思わずしみじみ納得してしまう。
が、しかし今はそれどころではない。
「魔族とて話し合えばわかろうて。一体お主たちの望みは何なのじゃ?
  我が娘を救ってくれたことには礼をいうが。じゃがもし、暴力で物事を進めよう。
  というのであれば、いくら平和主義者の儂とてだまってはおらぬ」
フィルさんはフィルさんで魔族相手にそんなことをいってるし。
つ~か、話しあってわかりあえる相手か?
「それはいえぬ。じゃが、我が主からはお前たちを殺してでも奪ってこい。とのご命令だ。悪くおもうな」
主…って。
たしか、魔族は自分より実力ある相手にしか従わないはずである。
もしくは契約した相手か。
「ま、そういうこった。ゼルガディスのやつは穏便に、と思ったらしいが。こっちはそんなのしったことではないからな」
…どうやらあの白づくめのゼル何とかという奴らとは仲間ではあるらしいが、仲間うちでも何かありそうな感じである。
魔族の爺ちゃんもどきの言葉につづいて、獣人がそんなことをいってくる。
「おのれ!話しあいをすることもなく問答無用とは何ごとか!?」
あ~…何かフィルさんがいたら余計に話しがややこしくなりそうなんですが……
「まあ、少しは楽しませてくれるかのぉ?嬢ちゃんたち」
いうなり、爺ちゃんもどきの魔族が何やら呟く。
それと同時。
ざわっ。
あたりの空気が一瞬重くなり、次の瞬間。
『ルヴワァッ!!』
いきなりレッサーデーモンなどの咆哮が聞こえてきて、そのままこちらにむけて多数のレッサーデーモンがやってくる。
その数、およそ数十匹以上。
…かなりまていっ!
こ、こりは大技一発でしのいだほうが早いかも。
「お~ほっほっほっ!このナーガ様にたかがレッサーデーモンを仕向けて勝てるとでも!?
  ふっ!見くびられたものねっ!お~ほっほっほっ!」
というか、あんたが連れてきたんでしょうがっ!あんたがっ!
自分のことをすっかり棚にあげてナーガがそんなことをいってるし。
「おのれいっ!善良にも話しあいで解決しよう。という儂達の心を踏みにじるとは何事かっ!
  そちらがその気ならばこちらも黙ってはおらぬっ!」
いうなり、じりじりと向かってくるレッサーデーモンたちにむかってかけだしてゆくフィルさんの姿。
「って、フィルさん!?」
魔族相手に…!?
あ、でも一応、何か魔法でも使えるのかな?
…外見からはまったくもって判断つかないけど。
「平和主義者クラァッシュっ!!」
どごっ!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
この間みたのはやっぱり見間違いではなかったのか。
というか、おもいっきり現実逃避をしたい今日この頃。
フィルさんは叫ぶなりかけだし、並みいるレッサーデーモンたちにむかって拳を繰り出し、
それと同時に断末魔の悲鳴をあげて消滅してゆくレッサーデーモンたち。
…え~と…ノーコメント、ということにしておこう。
みていないことにしよう。
うん。
「…アレ、本当に人間か?」
「さあ?と、とにかく!魔族となんか取引するつもりはさらさらないわっ!」
いいつつも、びっと魔族もどきと向き合う。
一緒にでてきているオーガたちはすでで魔族をなぎ倒しているフィルさんを戸惑い気味にと眺めている。
しかし、獣人ワーウルフと魔族…か。
この獣人、雰囲気的にただの雑魚でもなさそうだし。
「おおっと。このオレを忘れてもらってはこまるな。嬢ちゃんは危ないからさがってな」
いいつつも、ぽんぽんとあたしの頭をたたいて何やらいってくるガウリイだし。
…また子供扱いするし。
こいつは……
「ほぉ。いっとくが。このオレには生半可な技も剣も通用しないぞ?そこのゾロムのヤツなどはいうまでもないがな」
どうやらかなりこの犬もどきは自分の腕に自信があるらしい。
しかし、そういう輩に限ってけっこう弱かったりするもので……
う~ん。
ま、ナーガの父親だし問題ないでしょ。
言いくるめる自信は結構あるし。
「ガウリイ。時間稼ぎお願いっ!」
ダメもとで一応ガウリイにと叫んであたしはあたしで呪文を唱えるためにと構えなおす。
「ほう。おわかいの。捨て駒にされたかの?このワシにかなうとでも?
  まさかそんな剣でこの純魔族たるゾロムが斬れるとおもっているわけでもあるまいて」
構えるガウリイにそんなことをいっている爺ちゃんもどき魔族の姿。
というか、この魔族、ゾロムって名前なんだ。
まあ敵の名前なんかどうでもいいけど。
普通、魔族相手にふつうの剣では傷一つつけられない。
魔族とは本来、精神世界に位置している精神生命体であり、
そんな生命体が何らかしらの手段を用いて実体化しているのが俗に知られている魔族の数々である。
自力で実体化できる輩と、この世の中にいるナニかの物体を媒介として存在している輩とでは力が格段に異なる。
しかぁしっ!
いくらそんな自力で実体化しているとおもわれる純魔族とて、この術には耐えられまいっ!!
「黄昏よりも暗きもの 血の流れより紅きもの 時の流れに埋もれし 偉大なる汝の名において」
精神を集中させて呪文を唱える。
これぞ必殺。
この世界に君臨するという魔王、赤眼の魔王ルビーアイ・シャブラニグドゥの力を借りた最高峰の黒魔法。
一般的に知られている黒魔法の中では最強の攻撃魔法である。
最も、あたしにはこれよりもさらに高位の魔王の力をかりた究極技もあるにはあるが。
あれはあまりに危険極まりないからなぁ~……
あれはどちらかというと魔王、というよりは……と、とにかくっ今はまずこいつらをどうにかするのが先決。
「な、何!?しまった!おまえたち、あの娘をっ!!」
犬もどきの獣人があたしが何を唱えているのか察してそんな命令を下しているが。
そんな一方で、
「お若いの。どうやら早く死にたいらしいの。では望みどおり殺してやろう」
ガウリイにむかってそんなことをいっている爺ちゃんもどきの魔族の姿がちらりと視界に入ってくる。
しかし、そちらを気にしている余裕などない。
「さあ。どうかな?」
いって、ガウリイが何かかけだす気配とほぼ同時。
「我と汝が力もて、ひとしく滅びを与えんことをっ!!竜破斬ドラグスレイブ!!!!!」
「しまっ!!」
ちゅどぉぉぉぉぉぉぉぉっん!!!!!!!
犬もどきの悲鳴とも叫びとも言えない声とほぼ同時。
周囲を揺るがす爆音が響き渡ってゆく。

もくもくとたちのぼる煙。
「お~ほっほっほっ!お~ほっほっほっ!!」
・・・・・・・・・・・・
もくもくと立ち上る煙の向こうから高笑いのみが聞こえてるけど。
ま、いつものことだしな。
たぶん、埋もれている状態で笑い声をあげているとみた。
「ふぅ。ビクトリー!!」
おもわずがっつポーズをつくってブイサイン。
「な、なんじゃ!?今のは!?」
ガラガラガラ……
無傷で土の下より這い出して、何か叫んでいるフィルさん。
…さすがナーガの父親……
あたしの目の前にはぽっかりと空いたクレーターがひとつ。
これぞ必殺、あたしの得意中の得意の呪文。
竜破斬ドラグスレイブ
手加減一つで国ひとつ、ましてや山ひとつくらいはかるく消滅させるほどの威力をもつ。
それに含める魔力の強弱で威力はかなり変わってくる。
もくもくとたちのぼる煙のさなか、なぜかほのかに青白く光っている場所があり思わず凝視する。
よくよくみれば、そこには光る何かをもっている誰かがたっていて……
「お、お前なぁっ!いきなりんな危ない技を放つなっ!!」
何か文句をいってきているその声からどうもそれはガウリイらしい。
が、しかあっし!
問題はそんなことではないっ!
あたしの視線はガウリイが手にしているソレにくぎづけ。
「ち…ちょっと!?それってまさか…光の剣じゃないの!?」
ガウリイが手にしている剣の柄からは、青白く光る光の刃が出現している。
話しには聞いたことはあったが……
「え?あ、まあ。そうだが……」
「ガウリイっ!!その剣。ちょうだいっ!!」
ずべっ!
あ、こけた。
あたしの至極まともな意見にガウリイがその場につんのめりになってなぜか地面とキスをする。
「あ、あのなぁ!何でそうなる!?」
「何でもなにも、ちょうだいったらちょうだいっ!襲撃から助けたんだしっ!」
「どこが助けたうちにはいるんだ!?下手したら巻き込まれてただろうがっ!!」
ちっ。
屁理屈をこねてくる。
「なら、うって!銅貨十枚で。う~ん、何てあたしってふとっぱらっ!!」
ずざざっ。
あ、こんどは滑った。
立ち上がりかけていたガウリイが何やらそのままの姿勢でクレーターの底にめがけて滑り落ちてゆく。
「あ、あのなぁっ!どこの世界にそんな値段で交渉するやつがいる!?」
「ここにいる」
そもそも、お金は銅貨一枚とて無駄にはしない。
これぞ商売人の心得である。
あたしの実家が商売をしていることからあたしもお金にはシビアな感覚の持ち主なのだから、
そんなあたしが銅貨十枚だす、というのだから素直に売ってくれればいいものを……
「と、とにかく、ダメなものはだめだっ!それにこの剣はオレの家の家宝だ!
  いくら積まれても譲る気はさらさらないっ!」
う~ん。
「な、なら、ええいっ!銅貨五十枚!これでどうだっ!」
「だ、だからなぁっ!!」
「お~ほっほっほっ!リナ=インバース!!どさくさにまぎれてこの私を吹き飛ばすとはいい度胸ねっ!
  いくらお宝を一人占めしたいからってそうは問屋がおろさないわよっ!!お~ほっほっほっ!!」
あ゛~…余計なやつまで復活したしっ!!
無傷でクレーターの底のほうからぼこり、と土を盛り上げていきなり高笑いしつつあらわれてくるナーガの姿。
まあ、これはいつものことといえばいつものことなんだけど。
「おお!グレイシア!お主も無事であったかっ!!」
「お~ほっほっほっ!当たり前よっ!お~ほっほっほっ!そういうお父様こそ!」
え~と…この父娘はひとまず無視しよっと。
「と、とにかく、売ってってば売ってっ!!」
「ダメだったらだめだっ!!」
そんなやり取りをすることしばし、ふとナーガがそんなあたしたちのほうに気づいて、
「あら?それって光の剣じゃないの。あなた、ガブリエフ一族の者だったのね」
さらっとそんなことをいってくるナーガの姿。
「光の剣?」
ナーガの言葉に首をかしげているフィルさんの言葉に、セイルーンの未来を思い思わず唖然とするあたし。
…フィルさん…あ~た、それでも巨大大国セイルーンの王位継承権の持ち主ですか?
セイルーンもおそらく絶対に長くはもたないだろう。
しかし、ナーガが参戦してくる前に商談をまとめねばっ!!
「それより、リナ!!いきなりドラスレはないじゃないのよっ!!」
あ~、うるさい。
こ、ここは話題を転換させて!!
「と、とりあえず。また追ってがきても面倒だし。とっととこの場から離れましょうよ。
  ナーガだってまた魔族に襲撃とかされたらイヤでしょ?ガウリイ。それあとで売ってね♡」
「だから、売らないってばっ!!」
んっふっふっ。
これで伝説の光の剣はあたしのもの♡
「しかし。おのれぃっ!いきなりこのような巨大な術をつかってくるとは。相手は何をかんがえておるんじゃ!?」
…どうやらフィルさんはこのクレーター、敵さんがやった、とおもっているらしい。
ま、別に訂正する必要もないか。
「と、とにかく。また襲撃されないうちに、とっとと港にいきましょ。いくら何でも海にでればおそってなんかこないでしょうし」
まがりなりにも海は広い。
そんな中で襲撃してくるとは思えない。
「しかし。魔族まで出てくるなんて…相手の望みは一体全体何なのかしら?ナーガ。あんた何かしらないの?」
いくら何でも魔族までつかってほしがるものかなぁ?
賢者の石とか。
…まあ、たしかに魔力増幅アイテムであることには違いないが。
ある賢者の発見したアレのほうがかなり能率的には使いやすいのに。
あたしがそんなことをおもっていると、
「お~ほっほっほっ!ついにリナ!この私に屈することにしたのねっ!お~ほっほっほっ!」
そんなことをいってくるナーガの姿。
どこをどうとらえたら屈する、という話になるのやら。
「とりあえず、夕飯を奢ってくれたら話してあげるわよっ!お~ほっほっほっ!」
「って、今までもあたし、あんたやあんたの父親の食事代もすべて立て替えてるんですけど?」
まあ、シードラゴン料理のみはフィルさんのツテがきいたから別料金ではあったが。
「ふっ。それとこれとは別よっ!お~ほっほっほっ!」
「あ~。はいはい。じゃ、あとであんたの知ってることを話してもらうわ」
まあ、あとでしっかりとフィルさんに請求すればいいわけだし。
とりあえず、さらっと話題をはぐらかし、あたしたちはその場にできた巨大なクレーターのそばからひと先ず離れることに。
しかし…魔族まででてくるとは……
そこまでして、賢者の石を求める赤法師レゾの目的は一体???
なぞである……


                   -続くー

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あとがきもどき:
薫:さてさて。とりあえず、リナの一人称なのでわからない個所もありますが。
  ゾロムと対峙していたガウリイは、ゾロムの目の前で剣を抜き放ち、柄だけにしてたりします。
  それで、目の前で柄のみで切りかかりにいき、切りつけたその刹那。
  リナの竜破斬が炸裂した、という状況に周囲はなっています(まて
  ちなみに、ナーガはナーガでいつものごとくに術を暴走させてたり、
  フィルさんは素手でひたすらにレッサーデーモンたちを駆逐していっていたりしていました(笑
  それで、まともにフィルさん、ナーガ、ガウリイを巻き込んで竜破斬の炸裂vv
  ガウリイは光の剣の防壁もあり無事ですが、直撃うけたフィル&ナーガもあの父娘なので無傷だったり(あの二人だし…
  さて。
  そろそろようやく再びゼルガディスの登場ですね。
  ではまた、次回にて♪

2009年2月4日(水)某日

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