まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ
ふふふふふ。
今回でようやく登場!ゼルガディス!!
しかし、仲間になるのは当分先ですvv
ナーガのよくわからん情報網が発揮するときですv(かなりまて
スレイヤーズ、第一巻の内容にようやくはいっていくのですv
何はともあれゆくのですv
しかし、児童書版のスレイヤーズの副題…ゼルがみたら怒るな(笑
合成獣の魔道士って(爆vv
そりゃ、赤き闇とかやったらネタバレでしょうけどねぇ。
さてさて、フィルさんには今後活躍してもらいましょう。
ナーガも平和主義者クラッシュつかえることがスレRにて判明したことですし…ね♪
何はともあれゆくのですv
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腐れ縁のナーガとともにいつものように盗賊いじめをしていたところ。
なんでかそのまま危ないから、といって旅の同行を無理やりにかってでてきたひとのいい兄ちゃん。
そしてまた、そんなガウリイと名乗るたびの剣士の兄ちゃんとほぼ同時。
受けた依頼は…何とナーガの父親!?
…ナーガの出生の秘密というか正体はともかくとして。
家柄は頭からおいだして、ひとまず父娘である、ということで自分を納得させている今日この頃。
はてさて。
そんな中、ナーガの家のお家騒動にまきこまれ、結果としてナーガとフィルさんを二人の故郷まで送り届けることに。
はてさて。
このはちゃめちゃ父娘とともにまともな旅ができることやら……
迷・ネオスレイヤーズ
「しかし、ほんと。めぼしいものはあまりないわよね……」
女ばかりの旅と違い、男が一緒にいる。
というだけでほとんどでてこない盗賊さんたち。
まあ、フィルさんを遠目からみて同類であろう人物を襲おうとする根性のある盗賊がいない。
ということなのかもしれないが。
道中、売り払った精製した魔法道具。
護符を創り出し、それをうっぱらった金額はさほど高い金額で引き取ってはもらえなかった。
「だけど。リナ。ずるいわよっ!その女神像は絶対に私のものよっ!」
今だにナーガが何か文句をいってくる。
この間、盗賊を壊滅させて手にいれたお宝の中にちょっとしためぼしいしながいくつかあった。
その中でけっこう値うちものであろう、とおもわれるのがこれ。
オリハルコン製の女神像。
手にとると中に何かはっているような音がするが、わざわざ壊してまで中身を確認したくない。
何しろこれだけでちょっとしたひと財産である。
「何いってんのよ!それに、こんな田舎でこれが売れるはずないじゃない。あんたに渡してたら絶対になくすし」
ナーガに物をまかせておいて無事だった試しは一度もない。
とりあえず、街道沿いにとある小さな食堂兼宿屋。
そこに二部屋とり今日のところは休むことにしたあたしたち。
隣の部屋にはガウリイとフィルさん。
あたしはナーガと同室。
お宝を分けるときにおこるいつもの言い争い。
「…ま、それはそうとして」
「ふっ。どうやらお客さんのようね」
相手は気づかれている、とわかっているのかいないのか。
扉の外に気配が二つ。
どうやら気配を隠していることから通常の人ではない。
かといって殺気はあまり見受けられない。
多少の殺気はあるものの、本格的な刺客とかなら殺気すら押し殺す。
顔を見合わせ警戒体制をとるのとほぼ同時。
トントン。
ゆっくりと部屋の扉がノックされる。
ふと聞き耳をたてれば隣の部屋でもいつでも飛びだせる体制をとっているのか、
聞き耳をたてているらしき雰囲気が感じ取られる。
中にはフィルさんのものとみられるちょっとした大きないびきもきこえてくるが…それは無視することにする。
「誰?」
警戒しつつも扉の向こうにむけてといかけるそんなあたしの声に反応し、
「あんたたちに話しがある。取引がしたい。あんたたちが手にいれたものについて……」
多少くぐもったようなそんなこえが扉のむこうから聞こえてくる。
「ふっ。こんな夜に、しかも乙女の部屋を訪ねるような輩と取引もなにもないわね。
あからさまにあやしいことこの上ないじゃないのよ」
「ええ!?ナーガ。あんた、どこか熱でもあるの!?まともなこといってる!?」
あまりといえばあまりのナーガのまともな意見におもわずびっくり。
「ちょっと!リナ!あんた、あたしを何だとおもってるのよ!?」
「そのまんま」
きっぱり。
「ふっ。リナ。あなたとはゆっくりと話しあいが必要だとおもってたのよね」
「ふっ。望むところよっ!」
「……取り込み中のところを申し訳ないが、話を聞いてはもらえないか?
今のところそちらに危害を加える気はさらさらない。考えようによってはあんたたちにも利がある話しだ。
あんたたちがもっているとある品物を、あんたたちが提示したいいね。それよりも倍以上で買い取りたい。
話をきくだけでもきいてみないか?」
倍以上。
その言葉に素早く反応し、
「お~ほっほっほっ!そういうことなら話しだけならきいてあげてもいいわよっ!」
いうがいなや、そのまま考えなしに部屋のかんぬきをはずしているナーガ。
こういうときのナーガはいっても無駄。
こちらはこちらですばやくすぐに対応できるように口の中で呪文を唱え、すばやく待機。
ガチャリ。
「お~ほっほっほっ!さあ、話をききましょうか?お~ほっほっほっ!!」
ナーガがゆっくりと扉をひらくと、扉の先にみえる二つの人影。
真白いローブにフードをかぶり、全身白づくめ。
いかにも怪しいです、といわんばかりの人物に。
そしてまた、その背後にいるのは何やら見覚えのある全身包帯だらけのミイラ男が一人。
手の平の中に光球を隠し持ち、
「ああ!この間のミイラ男!!」
叫ぶあたしの声に対し、
「誰がミイラ男だ!誰が!」
何か抗議してくるその包帯男。
というか、どうみてもミイラ男だし。
「ゾルフ。やめろ。失礼した。こいつはゾルフといってどうも先走る癖があるのでな。許してほしい」
白づくめの男の声に何かさらにいいかけたミイラ男が口をつぐむ。
ふむ。
どうやらこの白づくめの男はこのミイラ男よりも実力があるのか、はたまた地位が上らしい。
「二人とも。大丈夫か!?」
そんな会話をしていると、心配したのかとなりの部屋からでてくるガウリイの姿。
部屋の中にあたしとナーガ、扉のところに白づくめとミイラ男。
その背後にガウリイ。
つまり、白づくめの男とミイラ男があたしたちによってはさみうちにあっている形となる。
「いっとくけど。変なことしたら、すぐにでも反撃するわよ。とりあえずはいって」
「おいおい。こんなやつらを部屋に入れる気か!?」
あたしの言葉に驚いたのかガウリイがそんなことをいってくるけど。
「だから。ガウリイは扉のところで待機しといてね。変なそぶりしたら攻撃しちゃって♡」
にこやかにいうあたしのセリフに戸惑いつつも苦笑し、
「嬢ちゃん、度胸すわってるんだなぁ」
「だから!リナだってば!!」
いまだにこの兄ちゃんはあたしを子供扱いしてるし…何だかなぁ~……
ともあれ、扉の出入り口にガウリイが待機させ、部屋の中に二人をゆっくりと招き入れる。
「…で?人と話しをするのにフードで顔を隠したままなわけ?」
いつでも術が発動できるようにすでに待機状態にしているがゆえに警戒は解かない。
入ってきた男にと警戒をこめて問いかける。
どうでもいいが、目だけをだしているその姿はいかにも怪しさ大爆発。
まあ、ナーガのいつもの格好のほうがかなり怪しさ大爆発だが…
今は寝間着を着ているのでいつのも格好よりもだいぶまし。
「すまない。ひと目にあまり見られる姿ではないものでな」
そんなことをいってくる。
「ふっ。あなた。礼儀というものをしらないのかしら?」
それはナーガ、誰もがあんただけにはいわれたくないそ思うぞ?
そんなナーガの言葉に心の中でおもいっきり突っ込みをいれる。
そんなあたしたちの言葉にしばし悩んだのちに、ゆっくりと顔部分をかくしているフードにと手をかける白づくめの男。
フードの下からのぞいたのは、岩とも何ともいえない肌。
だがしかし、その瞳に宿る光はひとのそれ。
どうやら人をベースにした合成獣であるらしい。
ってそれって魔道士うちでもかなりタブーのはずなんだけど……
まあ、何か事情があるんだろうけど。
誰も好き好んで合成獣になろう…という輩はいないだろうし。
あのディオルとかのような人物ならともかくとして。
と、ともかく。
「で?そのミイラ男はあんたの知り合い?それとも手下?」
先ほどの問いかけの続きを問いかける。
何しろ一度は問答無用で攻撃をしかけてきた相手である。
警戒しないほうがどうかしている。
ちょうど彼らは部屋の真ん中で立ち止まっている状態。
「ミ…ミイラ男だと!?誰のせいでこうなったと…っ!」
誰のせいだというのやら。
あたしはこんなミイラは知らないし。
「ゾルフ!」
「は……」
強い口調の男の言葉に、ゾルフ、と呼ばれた男性はだまりこむ。
ふむ。
どうやら実力的にはこちらのほうがかなり上とみた。
「ま。いいわ。それで?その話っていうのは?」
「話しを聞く気になったのか?」
「話によるわね」
「お~ほっほっほっ!先ほどの言葉、嘘ではないでしょうね?」
そんなあたしとナーガの言葉をうけ。
「ああ。言葉にウソ偽りはない。あんたたちがこの間、盗賊から奪った品物。
そちらのいい値で買い取りたい。だが、こちらが何をほしい。
といえばかなりの金額をふっかけられる可能性もある。
だからあんたたちのほうから品物それぞれに値段をつけていってほしい。商談はそれからだ」
この間、盗賊からうばったしな?
はて?
その中でこいつらがほしがるようなものといえば……
ふむ……
「奪ったなんて人聞きがわるいわね。ま、いいわ。めぼしいものはこんなところかしらね」
いいつつも、荷物の中からいくつかの品物を取り出して床にと並べる。
何らかしらかの術のかかったちょっとした細工ものの短剣がひとつ。
オリハルコン製と思われる女神像がひとつ。
かつて滅んだとある亡国の金貨が数枚。
宝石類はどこにでもあるようなものなのでとりあえず省いておく。
「宝石類ははぶくけど、いいわよね?」
「ああ。かまわない」
どうやら相手のほしいものはこの中にあるらしい。
ここは商売人の血がさわぐ、というものである。
「じゃあ。さっそく商談にはいりましょうか」
訳ありの容姿をとやかく問いただす、というのはあまりよくない。
そのことに触れてさわがれても面倒、というのもある。
「とりあえず。そうねぇ。まず、じゃあ、この剣。けっこう古いものだから…千五百……」
「ほぅ」
あたしの提案に何やらうなづく白づくめ。
「金貨千五百枚、ってとこね」
すべしゃっ!
あ、こけた。
なぜかミイラ男がそのまま床にとつっぷして何もないのにこけてるし。
白づくめの男は目をまんまるとして唖然としている。
「こっちの女神像はオリハルコン製だろうから。金貨で五百億。びた一文まからないわね」
ずべっ。
そのままその場にてひっくりかえる白づくめ。
なぜか扉の前ではガウリイまでもがこけてるようだけど。
「お~ほっほっほっ!値段の倍をつける、といったんだから、それくらいぽんとだしてくれるんでしょうね!」
ナーガもナーガであたしに同意したかのように参戦してくる。
こういうときのナーガはけっこう話しあわせてくれるから楽なんだけどねぇ~。
「そ…相場の二倍や三倍をふっかけられるのは覚悟していたが……」
よろよろと立ち上がりながらも白づくめの男が何やらつぶやいてくるけども。
「ええいっ!往生際がわるいっ!言い値の倍以上で買う、っていったんだから。
これくらいの金額、ぽ~んと気持ちよくだしなさいよね!金貨で八百億!」
きっぱり。
「ってさっきいったのより増えてるじゃないかっ!」
なぜかそんな声がミイラ男よりきこえてくるが。
「こ…この前なぁ。どこかの城の領主が広大な敷地に使用人もつけて城を売りだしていたが…
百五十億で売り出していたぞ!?」
なぜかコメカミに手をやりながらもそんなことをいっくてる白づくめさん。
そういえば、とある領主が国ごと売りにだしてたっけ。
正確には沿岸諸国連合の中の小さな国が国ごと売りにだしたらしいけど。
まあ、それはどうでもいいこと。
「あ。ちなみに、分割払いとかは一切なしね」
とどめとばかりに言い放つ。
「なしね。…って……まさかこれほどふっかけられるとは……」
ぼやく白づくめとは対照的に、
「こ、このガキっ!だまっていれば…!」
「氷結弾」
カキッン。
よっし。
静かになった。
手の平の中にうんでいた光の球をそんなミイラ男にと投げつける。
その姿勢のままその場にて氷の彫像と化すミイラ男。
「「・・・・・・・・・・・・・・・」」
なぜかその姿をみて無言になっている白づくめさんとガウリイの姿が目にとまる。
炎の術を用意していてもよかったのだが、それだと家屋に燃え移る可能性が高い。
それよりは氷系の術のほうが効率性もよい。
というか、相手が術を留め置いているかどうかくらい把握しないと。
どうやらこの白づくめのほうは勘づいて間合いをとっていたようだけど。
「……分割払いとかは、やっぱりダメ…なのだろうな」
仲間が氷漬けにされたというのにあまり動じることもなく、溜息まじりにそんなことをいってくる。
けっこう度胸というか根性がすわってるらしい。
だいたい、こういったのをみれば離れしてなければあわてふためいてぼろをだすものなのだが……
「問題外、ね」
きっぱりはっきりいいきるあたしのセリフに盛大にため息をつき、
「……なら。これは最終的なアイデアなんだが。俺達に手をかさないか?
一年で…いや、半年でお前さんたちがはじめにいった金額の二倍。いや数十倍は払えるだろう」
「十数倍!?」
その言葉にナーガが飛び付きそうになるけど。
「却下。そうしましょう。といわれて油断したところ、用がないとばかりに殺されてはたまらないもの」
油断したところでばっさり。
そういうことはよくあること。
「お~ほっほっほっ!この白蛇のナーガ様達をなめないでよね!
それはそうと。あなた。その白づくめの姿といい、その姿といい。
あの白のゼルガディスじゃなくて?ならばなおさらその話は信じられないわねっ!お~ほっほっほっ!」
でた。
ナーガのよくわからん情報網。
今ではこの情報網の元も理解できたが。
…たぶん、実家の関係でいろいろと詳しくなっていたんだろう。
きっと。
「白のゼルガディス?」
あたしはあまり知らないけども。
有名なんだろうか、この白づくめ。
「ふっ。裏の世界では有名よ。赤法師レゾの闇の部分。裏の汚れた部分を始末している人物として。
たしか、レゾの血縁者で赤法師レゾが当人の意思を無視して合成獣化したんじゃなかったかしら?」
つ~か、かなりまて。
「って、ちょっと。レゾって…あの赤法師レゾ!?」
「お~ほっほっほっ!聖者として一般的には知られているけど。
その内情はひとにいえないいろいろなこともしでかしてるのは常識よっ!」
いや、知らないってば。
というか、赤法師レゾ、といえば現代の賢者としても名高い人物なんですが……
一般的に知られているのは無償で人々を治療して回っているとかいないとか。
「昔。国賓としてレゾを招こうという話になって。だけどもきちんと調べたほうがいい。
という意見でちょっと調べたところいろいろとでてきたので見送ったのよ」
あ~…
つまり、国家がらみの情報、となれば信憑性はかなり高い。
ちまたにあるよくある眉唾話とはまた別の信憑性がある。
「…国賓?」
「あ~。何でもない。とにかく。仲間になるきもまったくないわ。金貨で八百億!びた一文まからないわっ!」
あたしの言葉にしばし戸惑いつつも。
「…交渉決裂、だな」
いってくるりと背をむけて扉のほうへと歩き出す。
そしてふと思い出して向きをかえ、氷のオプジェとなっているミイラ男にと手をあてる。
その手の平からは炎の術が発せられているのかゆっくりと氷が溶けだし中の男が顔をだす。
「今日のところは約束なので大人しく身をひく。
だが明日の朝。お前たちがこの宿を出たその瞬間からオレ達は敵となる。またな。気の強いお嬢さん」
「へっくしゅっ!こ、このあまぁっ!」
「ゾルフ!いくぞっ!」
氷から抜けだした男がわめくと同時に一括し、男をひきつれて扉のほうへと歩いてゆく。
そして、再びぴたりと足をとめ、
「そうそう。言い忘れていたが。そっちの姉ちゃんがいっていたとおり。オレの名前はゼルガディスだ」
バタン。
そう言い放ち、そのまま外にとでてゆく白づくめの男…ゼルガディス。
ミイラ男のゾルフとかいうやつはどうでもいい。
明かりと火炎球の区別の差すらつかない三流魔道士なんかはどうでもいい。
しばらくまだ何か仕掛けてくるかも。
と警戒するものの、やがて窓の外にそのまま素直にこの場を立ち去る二人の姿が目にとまる。
「いったみたいね」
「つ~か。お前さん。なんつ~金額をふっかけるんだよ」
あたしの言葉に扉のところに座り込んだままのガウリイがそんなことをいってくるけども。
「あら?別にむちゃな金額でもなんでもないわよ」
そもそも、どうみてもあんな怪しい輩と取引などする気はさらさらなかったわけだし。
「だけど。リナ。今度はいきなり襲ってくるとかないでしょうね?ゆっくり寝られないのは私はいやよ?」
どこかずれていることをいってくるナーガ。
「まあ、大丈夫でしょ。ああいうタイプは自分でいったことを曲げたりしないものだしね。
だけど、ナーガ。あたしがああいわなかったらあんた、そのままあっさりと相手の口車にのってたでしょ?」
「ぐっ。い、いやぁねぇ。リナちゃんったら。お父様にバレタラ怖いからそんなことするはずないじゃない」
…ナーガにも怖いものがあったんだ……
しかし、ここにフィルさんがいなかったらつまり、あっさりと口車にのってた、ということか。
まあ、あの場で相手側に寝返ってそのまま呪文をぶっぱなされなかっただけでもよしとしよう。
「それより、ナーガ。さっきの話なんだけど……」
いいかけて、はっと気づく。
「って、いつまで乙女の寝室にいるき!?はい!とっととでるでる。はい、おやすみ~!!」
いまだにその場にいるままのガウリイにふと気付き、そのままぐいぐいと部屋の外にと押し出し扉を閉める。
「お、おいおいっ…」
「はい。おやすみ~」
何やら文句をいってきそうなガウリイの言葉をさらっと遮りにこやかに手をふり部屋から追い出す。
「…女の子はわからん……」
何かそんなことをいいながら部屋の扉から離れてゆくガウリイの声が聞こえてくるけど。
用事もなくなったのに乙女の寝室に入り込んでいる、ということ自体が万死に値する。
ということをあの兄ちゃんはどうやらわかっていないらしい。
本来ならば呪文で問答無用で追い出すところを丁寧に追いだしただけなんだから感謝してほしいものである。
「さってと。ナーガ。詳しく話してもらいましょうか?」
「ふわぁ。私、もうねむいから。もう、ねるわね。じゃ、おやすみ~」
「って、勝手に一人でねるなぁぁっ!!」
疑問を多々と残しつつ、気づけばあっさりとそのまま眠っているナーガの姿。
ちょっと!
あたしはまだまだ聞きたいことが山とあるのよっ!
しかし、レゾって…本当にあの赤法師レゾがかかわっているんだろうか?
だとすれば、何のために?
「……も、ねてるし」
ここで体力を消耗してもバカらしいだけ。
とりあえずあたしも寝ることに。
も、なるようになれ、よ!
このリナ=インバース。
逃げも隠れもしないんだからっ!!
うららかな太陽の日差しが降り注ぐ。
昨日の騒ぎから一転、一夜あけた今朝がたは多少の雲はあるもののそこそこの天候にと恵まれている。
「何と。夕べそのようなことがあったのか」
フィルさんやナーガの格好から注目されまくっているのはわかっているのであえて朝食中は話題をさけた。
宿をでてから夕べあったことを軽くフィルさんにも説明しておく。
そうでないと何かあったときに対処が難しくなってくる。
「しかし。儂を起こしてくれればよかったのに」
いや、あの場にフィルさんがいたらもっとややこしくなってたとおもうぞ?
何しろ見た目はどうみてもフィルさんこそ山賊のかしらかその筋の人物、としかみえないんだし。
もしくはちょっとしたドワーフの変異体か。
「で。結局。やつらの目的の品は何だったのかしら?」
ナーガがそんなことをいってくる。
「というか。ナーガ。わからなかったの?あいつらが反応したのは女神像のときだったじゃない」
「なるほど!つまり、あいつらもアレが高くうれるとおもってる、ということねっ!」
何となくそれだけじゃないとおもうのだが。
ナーガのいったとおり、本当に赤法師レゾがかかわっていれば…であるが。
たかがオリハルコン製だからといって…あの有名なレゾが手にいれたい。
とおもうかどうか、である。
何かがある、とみて間違いはない。
「たぶん。予想だけどこの中にはいっている何か。が目当てとみるべきでしょうね」
女神像をふると、何かがはいっているらしくカラカラと音がする。
ただのオリハルコンがほしいのならば手のこんだことはしないはず。
もしも、この中にはいっているものが目当てだとすれば。
考えられるパターンはいろいろとある。
まずは、どうしてオリハルコンで作られたしなものの中にはいっているのか。
これは、中にはいっているしなものの魔力を遮断する、という役割も考えられる。
オリハルコンは魔力を遮断、もしくは無効化する効力があることでよく知られている。
一般的には最高度の硬度をもつ鉱物、という感じでしか知られていないが魔道士内では有名すぎる事実。
ゆえに、見つけられたくないものなどはあえてオリハルコンの中に隠す、というのは常識中の常識。
もし目的のものが剣だとすれば、剣に金額をつけた時点でもう少しリアクションがあったはずである。
だがしかし、彼らが反応したのは女神像につけた値段。
ゆえに次の金貨の反応をみるまでもなかったのだが……
「なら取り出して確認してみればいいんじゃないのか?」
しごくものすごくとぼけたことをいってくる。
は~……
わかってない。
わかってないし。
「あのねぇ。ガウリイ。オリハルコンよ?オリハルコン。この世界の中で一番固い物質とまでいわれてるのよ?
しかもこれは魔法とかははじく効果をもっているので魔法で傷つけたりすることも不可」
溶ける温度もかなりのもの、ときく。
それでも特殊な技術をつかえばこのような細かな細工を施すことも可能らしいのだが。
それらは昔、ドワーフたちの得意とするところであったらしい。
うちの姉ちゃんはいともあっさりと切り刻むが…今はいうまい……
まあ、あたしの腕でも斬れることは斬れるのだが……
しかし、傷をつけたら高くうれるものも売れなくなるし。
…今だに研究途中の物質移動の術が完成していれば、中身だけ取り出すことは可能なのに。
「そういえば。昔。オリハルコン製の品物の中に賢者の石を入れたものがある。
っていう話を噂話できいたことがあるけど。まさかねぇ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おひ。
ナーガがふと思い出したようにといっくてる。
「ちょっとまってよ!ナーガ。それマジ?!」
「そんなに大声出さないでよ。うちの図書館の文献の一つにのっていただけで詳しいことはわからないわよ」
いや、それは十分におおごとのような気がするんだけど。
ナーガが詳しいことはわからない、と言葉を濁すときにかぎってその情報はけっこう信憑性が高い。
こいつは信憑性が低い情報であればあるほどなぜか自信満々にいってくるという癖がある。
「う~ん…もったいないけど、まずは中身を確認しないといけないかなぁ……」
しかし、綺麗に断面を切り取れば再生も可能であろうが、そうでなければ女神像はただの鉱物と化してしまう。
断面をぴたりと綺麗に斬ることができれば、どうにかなるのだが……
物質には生物と同じく、一応生気、というものがある。
それゆえに、術が利きにくい物質でも多少の効果がでることは実証されている。
つまり、きれいに斬ることができれば、治癒の術で女神像は元通りになる可能性は大。
「ええい。女は度胸。綺麗な断面を作れるかわからないけど、斬るしかない、か」
溜息とともに荷物を降ろし、女神像を取り出して一息つく。
「?よくわからんが。それを綺麗に斬ればいいのか?」
うぉいっ。
何でもないようにこの兄ちゃんはいってくるし……
「あのねぇ。そう簡単にいわないでくれる?断面を滑らかに斬らないといけないんだから」
人にやらせて後悔するよりも自分がやって後悔したほうがよい。
「まあまあ」
「え。ちょっっ!!!」
そんなあたしの言葉を聞いていないのか、いきなりひょいっと女神像をつかんでぽいっと空にと投げ放ち。
そのまま、
「やっ!!」
いいつつも、剣を一閃させる。
止めるまもない。
というのはこういうことをいうのであろう。
「ちょっ!!」
あたしが抗議の声をあげたときには時、すでに遅し。
しかし、斬れたのか斬れていないのかそのままの姿で女神像は落ちてくる。
あわてて落ちてくる女神像を受け止める。
と。
…キィッンッ。
手にするとほぼ同時、女神像の中心に線が走ったかとおもうとぱかりと綺麗に真っ二つ。
断面はまるで舐めたように滑らかで割れた断面を合わせると斬れているとはまったくおもえないほど。
「……嘘……」
というか、この兄ちゃん、もしかしてもしかしなくてもかなりの腕の持ち主?
かなりの腕の持ち主でなければここまで綺麗な断面は作れない。
あたしですらここまでの域には達していない。
「それより。リナ。中にはいってるのは何?」
ナーガにいわれてはっとして、あわてて女神中の中身をのぞく。
少しふれば、ころん、とでてくる小さな木炭のような小さな石が一つ。
どこにでもあるような石である。
が、手にすればおのずとわかる。
直接手に触れているからこそわかるものがある。
感じる力は今まで感じたことのないもの。
「まさか…ねぇ。炸弾陣っ!!!」
どごがっ!!!!!!
懸念しつつもくるり、と振り向きざまに呪文を一つ。
今放ったのは簡単なこけおどしの呪文の一つ。
だがしかし、その威力はといえば……
あの日が近いせいでかなり魔力が低下しているのだが……
『うどわぁっ!?』
何やら悲鳴が聞こえてくるけどそれはそれで問題なし。
こっそりとこちらの様子をうかがっていた輩がいたのは知ってたし。
そいつらごとふっとばしてみただけのこと。
「こ、これ本物よっ!?」
「ええ!?ずるいわっ!リナ!私にもよこしなさいっ!!」
「あんたにわたしたら被害が拡大するでしょうがっ!!」
威力が低下しているはずなのに普段よりも数段に高い威力を発揮した。
つまり、この石ころもどきによって魔力が増幅されることが実証されたわけなのだ。
らっき~♪
棚からぼたもち、とはこういうのをいうのかもしれない。
そりゃ、そんな魔力増幅アイテムならば誰でもどんな手をつかってでもほしがるわ。
「?その賢者の石とはなんじゃ?」
・・・・・・・・
ごけっ。
「フィルさん!?本当に知らないの!?」
というか、それでもセイルーンの王位継承者なのか!?
何だかなぁ~……
聖王国のイメージがことごとく崩れていっている今日この頃。
と、とりあえず。
「まずは。これに…と」
手近にある普通の石を拾って女神像の中の空洞部分にとほうりこみ、軽く呪文を唱える。
呪文を唱えるとみるまに斬り口がふさがり、一度中身を取り出したなどわからないように再生される。
「よっし。これはこれでよし」
これで多少の目くらましにはなるはずである。
あたし自身に探査錯乱の術を施してあるので相手側から場所を特定されるようなことは滅多とないはず。
つまり。
追ってさえ降り切れば、万事解決!!
…だったらいいなぁ~……
「ちょっと!リナ!聞いてるのっ!」
何やらナーガが声を荒げてくるが。
「そういえば、この先のマレン湖ってシードラゴンの料理が有名よね。
今日の昼食はマレン湖のふもとの村でレイクドラゴン料理でもたべましょうか?」
「えええ!?シードラゴン!?それは大賛成だわっ!
あそこの渚の海竜亭のコブリン風ソースは抜群だしっ!
まったりとして肉に絡む深みのあるソース。実家にいたころはよく食べていた好物の一つよっ!
セイルーン王家御用達でもあるしね。お~ほっほっほっ!リナ!そうときまればいそぎましょうっ!」
よっし。
食べ物につられて賢者の石のことはナーガの頭から離れた。
「海竜の鼻息亭の焼き肉も有名よね。たしか」
「…何か話しがとことんずれてないか?」
ガウリイが横で何やらぽそりといってるけど。
人間、食べることほど重要なことはないわけで。
「あ。フィルさん。セイルーン王家御用達、というんだったら、つけききますよね?」
「うむ?それは問題ないぞ?そうか。世話になってるんじゃし。
わしのつけででは今日の昼食はたべてもらうとするかの」
「よっしゃぁっ!!」
自分でお金を払わずに名物がたべられる。
これほど好条件はない。
「なら、ナーガ!鼻息亭と海竜亭。両方を食べ比べするわよっ!」
「お~ほっほっほっ!のぞむところよっ!」
「…お~い。おもいっきり話しがずれてないか~?」
一人つぶやくガウリイをそのままに、あたしたちはそのままかけだしてゆく。
目的はもちろん。
マレン湖のほとりにとある街道沿いにとあるとある村。
「ま、いいか」
そんなあたしたちをみながらも、苦笑しながら納得しているガウリイに、
「しかし、あやつらは一体…?」
背後のほうで吹き飛ばされた輩のことを心配してかそんなことをフィルさん。
悪人の心配をする必要性はさらさらない。
ということで。
んっふっふっ。
食べるわよ~vv
-続くー
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あとがきもどき:
薫:さて、この会話にでてきた二つのお店。
いうまでもなく、スレイヤーズのRPGにでてきたあのお店です(笑
まあ、これにはヴィオラとかはでませんけどねぇ(苦笑
あ、でも知らない人のほうが多いんでしようねぇ……
DS版とかで、アニメ化記念とか、児童書版記念とかででないかな?
ちなみに、全作品。ムーピー閲覧可能。のようにして。
(クロノトリガー形式)
あ、でもきちんとエンディングの画像も保存できるアンジェリーク形式でvv
何はともあれ、ではまた次回にてvv
2009年2月3日(火)某日
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