まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちら

さてさて。ようやく2話目です。
今回はスレイヤーズの原点?ともいえるお話ですv
アニメ版のアレでなくSP版できちんとつくってほしいとおもう今日このごろ(苦笑
何はともあれいっきますv

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迷・ネオスレイヤーズ

逃げそびれた……
というのも。
依頼による報酬金額が莫大であったこと。
しかも、一人につき金貨千枚、という何とも太っ腹な金額。
国税とかからの支出では姉ちゃんにどやされそうであるが。
気になって聞けばフィルさんのポケットマネーからでるらしく、それでは遠慮する必要はない。
ちょうどお人よしのガウリイがいることもあり、つまりあたしの手取りは金貨二千枚…というわけで。
何しろ交渉途中にガウリイは寝ていたのでそのあたりの交渉の実情は知られていない。
何でも平和を重んじるその国政に不満を抱いたあるセイルーンの関係者がディルスに潜伏し、
しかもディルス王国と手を組み軍事開発をたくらんでいる。
という話がフィルさんの耳にとびこんできたらしい。
それが本当ならばそれこそ国際問題になりかねない。
下手をすればディルスとセイルーンは他の国々から非難され、さらには戦争にもなりかねない。
ゆえに、真相を調べるべく一人お忍びで旅にでたフィルさんはその重要人物。
という人物がいる場所をようやくつかんだらしい。
まだどうやらディルス王国とはつなぎはとっていないらしいが、近隣の村々を荒らしては資金を集めているとか何とか。
内密に処理するつもりはないが、しかし王家自らが成敗することに意義がある、とのこと。
国家がらみのごたごたにはあまりかかわりあいになりたくはない。
が、もし話しをきいたのに何もしなかった、と姉ちゃんの耳にはったとすれば…
そんな思いもあり引き受けた今回の依頼。
前金で一人あたり金貨百枚。
しかもそれにかかる費用はすべてフィルさんたちもち。
まあ、とっとと依頼を遂行してナーガをフィルさんにおしつけ…もとい返せばあたしとしてもかなり利益はある。
そんなこんなで、その問題の人物らしき人がいる場所を聞けば場所は国境近くのとある山の中らしい。
そこにむけてフィルさんとランディさんを伴い出発したあたしたち。
アトラスとは逆方向だけどそんなことを今はいっているときではない。
何しろあの厄介者のナーガをどうにかできるかできないか、という大問題もかかっているのだ。
さずかのナーガも父親と一緒に帰るとなれば問題ないだろうし。
それであたしは二度とセイルーンに近づかなければ腐れ縁から解放されるわけで……
「そういえば。あの包帯男は何だったんだ?」
ふと思い出したようにガウリイが聞いてくる。
結局、この兄ちゃんはいまだにあたしたちについてきている状況ではあるが。
まあ、依頼料の関係からしても無碍にはできない。
「あたしが知るはずないでしょ?」
あれからまったくあのミイラ男の動向はわからない。
まあ、あきらめたならそれでよし。
ま、万が一フィルさんのことを知ったとすれば、下手に手をだせばセイルーン国家を相手にする。
そう思い手をだしてこない可能性もなきにはあらず。
だけどそれはあたしには関係のないこと。
多少、自己紹介のときにあたしがおちゃめにも呪文をぶっぱなしもしたりもしたが。
それはそれ。
根も葉もない噂をいわれてだまっているほうがどうかしている。
いわく、あたしに全財産を奪われて解散を余儀なくされた盗賊団の数が数千にも及ぶとか。
挙句はあたしを恐れてドラゴンすらまたいでとおる…とか。
まったく、誰がそんな根も葉もない噂をながしていることやら。
みつけたらとっちめちゃる……
思わず脱力したのが、あたしがゆく先々で魔法少女、となのっている。といった噂。
美少女魔道士、とはなのってるけど一度も魔法少女、と名乗ったことはない。
「しかし。リナ殿にあえてたすかったわい。娘にも会えたことじゃしの。
  とりあえず、リナどのは基本的に護衛をしてくださればよい。なぁに。話し合えば心は通じるはずじゃ」
話しに応じない輩は多々といるし。
しかも話しを聞かない輩も多々といるのをこのおっちゃんわかってるのか?
思わずつっこみたいが、それで依頼料を減らされても困るのであえて何もいわずにおく。
「それはそうと。ここでいいんですか?」
人里離れた山の中。
そんな大層なことをたくらんでいるヤツが潜んでいるにはちと地理的に問題がありそうだけど。
というかこの付近には村とかもないし。
殺伐とした風景の先にあるぽっかりと山の中腹に開いた横穴。
どうやら問題の人物はこの中にいる、とのことらしい。
「うむ。情報によればそのはずじゃ。そうじゃったの?ランディ」
「はい。間違いありません」
ふむ。
「何だか殺伐としたところねぇ」
あたしが一人うなづいていると横でナーガがそんなことをいってるし。
珍しいことに父親がいるせいかいつもむちゃくちゃしてくるナーガがかなりおとなしい。
あのナーガにも苦手な人っていたんだ。
とあるいみ新鮮な驚きではあるが。
まあ、あたしに迷惑をかけないのであればこれはこれでよしである。
明かりライティング
ぽうっ。
ひとまず短剣の鞘をそのままにその先に小さな明かりライティングの球を灯して洞窟の中を進んでゆくことに。
ピチャン……
天井から滴ってくる水滴の音が静かに響き渡る。
どうやら人の手がはいっているのは確からしいが掘り方がかなり雑。
天井や壁はかなりごつごつしており歩きにくいことこのうえなし。
「くるぞ?」
洞窟の中にはいってしばらくするとガウリイが何やらいってくる。
確かに、洞窟の奥のほうから気配がこちらにと近づいてくる。
ふとみれば奥のほうからでてくるオーク達が数十匹。
「お~ほっほっほっ!まかせなさいっ!凍れる大地に…」
「まてぃっ!グレイシア!それにリナ殿達も手だし無用!相手が魔物とて話しあえばわかりあえるっ!」
いいつつも、いきなりずいっと前にとでるフィルさんの姿。
そして。
「我らは急がねばならぬ。どうしても邪魔をするというのであれば温厚な儂とて容赦はせぬ。
  じゃが、儂は争いをこのまぬ。お主らとて無意味な争いはしたくはなかろう?
  さあ、どうする?さあ、さあ、さあっ!!」
何やらオークたちにむかって話しかけ始める。
……人間の言葉で。
「…フィルさんってオークの言葉。話せるの?」
「いいえ。まったく話せません」
あたしのつぶやきにランディさんが説明してくる。
が。
「ふっ。愚問ね!リナ!お父様が話せるはずないじゃないのよっ!人徳で通じるにきまってるじゃないっ!!」
きっぱりはっきり言い切るナーガ。
じ…人徳って…お~い……
ずいずいと近寄りながらも言いつのるフィルに恐れを抱いてか、
『ぷひっ!?』
いきなり訳のわからない言葉で何やら人間のような生き物が叫びずいっとせまってくる。
はっきりいってそれはオーク達にとっても絶対に脅迫以外の何ものでもないはずである。
ゆえに身の危険を感じ取ってかそれぞれ顔を見合わせ、だらだらと汗をながしつつ、
『プビィィッ!!』
何やら同時に叫びその場からわらわらと蜘蛛の子を散らすようにと逃げてゆくオークたち。
「だっははっ!みたかっ!精神誠意話せば、たとえ種族が違えども分かってくれるのじゃ!がっははは!」
腰に手をあてたからかにそんなことをいいつつも笑っているフィルさんの姿。
「…いや。説得というか……今のど~みても脅迫……」
思わず呆然として思わずつぶやくあたしは間違っていない。
うん。
「とにかく進むんだろ?」
場の空気を読んでいないのかガウリイがそんなことをいってくる。
とっとと依頼を終わらしたい一心でとにかくひたすらに洞窟の奥にと進んでゆくことしばし。
結構かなり進んだような気もしなくもない。
その間、オーガやミノタウルスといった魔物がでたりもしたがあたしの敵ではない。
ナーガがこんな狭い中で火炎球ファイアーボールを放とうとしたりするのを止めたりするのが面倒といえば面倒。
こんな狭い場所で使われでもしたらこちらのほうが焼きあがってしまうこと請け負い。
ほんっとナーガはあと先考えないからなぁ~……
そんなこんなで進むことしばらく。
どれくらい歩いただろうか。
「お。何か先に扉のようなものがあるぞ?」
「へ?」
ガウリイがそんなことをいってくる。
そういやこの兄ちゃんもいたのすっかりわすれてた。
あまりにフィルさんの人物?像が濃すぎて……
しかし、そういわれても……というか何もみえないんですけど?
はて?
明かりの術でほのかにてらしだされている洞窟内部はあまり先までは見渡せない。
ゆえにこの先に何かがある、といわれてもあたしの目にはただ暗闇が続くのみ。
「扉?」
「ああ。こっちの方向に」
道がいくつかわかれている一方を指しながらそんなことをいってくる。
確かにほのかに照らし出された場所はいくつか道がわかれており、
あからさまにひとの手が丁寧に入っているとおもわれる道がひとつ。
「お~ほっほっほっ。とにかくいってみればわかるわよ」
いいつつも、すたすたとそちらの方向にとあるいてゆくナーガ。
仕方ないのであたしたちもまたガウリイが示した方向へと進んでゆくことに。

「…扉だし」
「扉ね」
不自然なほどにそこにあからさまな扉がひとつ。
しかも完全に洞窟すべてをふさいでいる格好であからさまにひとの手がはいっていることを物語っている。
というか普通の洞窟にこんなものが存在するはずないし。
もしかしたら何かめぼしいお宝とかもあるかもv
まあ、期待薄ではあるが……
「お~ほっほっほっ!こんなの吹き飛ばして…」
扉を前にいきなりナーガが混沌の言葉カオスワーズを唱え始める。
が、はっと扉の文様にと目がとまる。
「ちょっとまった!ナーガ。これみてよ」
いいつつも、ナーガを制して扉を指し示す。
扉に描かれているとある文様。
魔方陣を駆使した魔法に対する防御がこの扉にはなされているのが見て取れる。
簡単な防御をほどこす魔方陣が刻まれたこの扉に万が一呪文を放てば、
その呪文は術をかけたほうにと跳ね返ってくる。
いわば、反射式のわなともいえる。
よくあるパターンの罠である。
ゆえに下手に呪文を唱えればかなりの痛手をうけることは明白。
鍵とかがかかっていたらやっかいだし。
さて、どうしたことか……
「この中に問題の人物がおるのじゃな?」
「って、ちょっとま…っ!」
ギギィ……
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
どう対応するか考えている最中、いきなり扉に手をかけて一気に押し出すフィルさん。
何か他の罠とかあるかもしれない、と思っていただけにいともあっさりと開いたことに思わず絶句。
鈍い音とともに、重苦しい扉が内側にと開く。
その先にあるのはがらんとした空洞。
ほとんどなにもない空間の先には一つの台座が置かれておりそこに座っている人物が一人。
茶色いひげと髪の毛をのばして何やら黒いマントをはおってはいるが。
何で悪人とかってけっこう黒とか好きなんだろうか?
闇に溶け込む色なのでたしかに便利といえば便利だろうけど。
腕に自信があれば色なんて関係ないんだけど……
その人物はあたしたちの姿をみとめ、ゆっくりと立ちあがる。
そして。
「ふ…ふふふ…まってましたよ。フィリオネル王子」
…い…
「いやぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
というか忘れてたのにっ!!
「こ、この人を王子だなんてよばないでぇっ!」
思わずそんなことを言ってきた相手に向かって叫んでしまうのは仕方がない。
何とも【王子】のイメージからはかけはなれているのだ。
このフィルさんは。
ナーガの父親、という視点でみてたからあまり違和感なかったが、そう呼ばれれば話しは別。
ふとみれば横のほうでランディさんや、何やらいってきた魔道士らしき人物がこけかけているけどひとまず無視。
「お…お前なぁ……」
横のほうではガウリイが何かいってきているようだけど。
これは乙女の心の問題なのよっ!!
「お主が問題の人物か!?何ゆえに悪事をたくらむ!?」
そんなあたしの思いを知ってかしらずか、横のほうではフィルさんがずいっと一歩前に歩み出て何やらいっている。
「ふふふふ…」
そんなフィルさんの横で起き上がりつつも、薄く笑いつつ魔道士の方にと歩みを進めているランディさん。
どうやらランディさんはこけていたようである。
しかし…何だかお約束というかありきたりのパターンのような気が……
そして予想通りというか何というか、
「私が頼んだからですよ」
いって魔道士の横にと立つ。
「ランディ!?お主!?」
フィルさんがそんなランディさんにと問いかけてるけど。
「私は第三王位継承者であるにも関らず。貴様の強烈な個性によって、目立つことがなかった」
魔道士らしき男の横でそんなことをいってくるランディさん。
…へ?
え~と。
今、第三王位継承者とかいわなかったか?この人?
「私は王族に生まれたにもかかわらず!兄上やその兄上の家族の影に埋もれて影が薄いとまでいわれっ!
  国民達からすらもその存在を軽んじられる始末!
  今ここで兄上やグレイシアを始末すればやがてはわたしが王位につけるっ!」
高々とそんなことをいってるし。
え~と……
「…あにうえ?」
認めたくないけどひとまず聞き返す。
「いってなかったかしら?おじ様はお父様の二番目の弟君よ」
フィルさんに問いかけたのに代わりに答えてくるナーガだし。
いや、きいてない。
というか、まったくもって似ていない。
「にてないしっ!」
思わず突っ込みをいれるあたしは間違っていない。
絶対に。
まあ、ナーガとこのフィルさんが父娘、というのも信じがたいものがあるけど。
しかしどうも性格からみて実の父娘のようではあるし…
にてないようで変なところがにかよってるしなぁ~…この二人……
と、とにかく気をとりなおして…と。
「で?王位について何がしたいわけ?」
何となく予測はつくが念のためにと問いかけてみる。
…予測は本気でつくけど…このパターンだと……
「え?いや。ただ王様になりたいなぁ~…と……」
そんなあたしの質問に面喰ってか困ったようにしどろもどろになりながらも答えてくる。
よくいるのである。
こういうやつは。
とにかくえらくなりたいからなりふり構わない行動をとるやつが。
やるなら周りをまきこまずに一人で勝手にやってくれ。
といった感じなのだが……
「は~。いるのよねぇ。あと先かんがえずに人に迷惑かけまくる輩って。
  そういう輩にかぎって権力をもっても何がしたい。とかきまってなくて」
というか、他人のお家騒動にまきこんでほしくないものである。
「う…うるさぁいっ!やれぃっ!」
図星をさされて何やら背後にむかって叫んでくるランディさ…敵とわかれば別に呼び捨てでもいっか。
その背後からでてくるのはトロルやオーガといった魔物たちの姿。
まったく。
あんまりこの技はつかいたくないんだけどなぁ~…
しかしここは洞窟の中。
やはり技からすれば治癒リカバリイの術を反転させたあの技が一番問題がおこらないであろう。
そうおもいつつも、術を唱えようとしたその刹那。
「お、おのれっ!さすがの平和主義者の儂でも地位がほしいがために周囲を巻き込み、
  あまつさえ民を苦しめるとは許してはおけんっ!」
いってずいっと一歩前にでていきなり駆けだすフィルさんの姿が。
というか、どこが平和主義者なんだ?
どこが?
「平和主義者クラァシュッ!!」
ドゴっ!
「うそっ!?」
思わず唖然とするあたしの横であっさりとオーガたちを拳……
……しかも素手で倒していっているフィルさんの姿が目にとまる。
え…えっとぉ……
この現象は何なんでしょうか?
素手でオーガたちをなぎ倒すって……
唖然としているあたしの目の前においては、
「くっ。お、おのれぃっ!さすがは兄上!だがっ!これならどうだ!いでよ!わが盟友ガルンディアよっ!!」
ランディと魔導師が何やらポーズのようなものをとり叫んでくる。
それと同時に出現する逆五紡星。
ま、まさか?!
「「ブラスデーモン!?」」
あたしとナーガの声がほぼ同時に重なる。
彼らの言葉をうけて光とともにこの場にとある物体が出現してきたのである。
これはあたしにとっては脅威でも何でもないが、一般的には脅威の対象。
亜魔族といわれるれっきとした一応魔族。
姉ちゃんいわく、彼らは自力で具現化できない精神生命体である魔族が、
この世界にいる動物などを寄代にして具現化した姿らしい。
ちなみに、自力で具現化できる魔族はかなり上位にあたり生半可な魔導師では太刀打ちはできない。
普通の人間であればなおさらに太刀打ちできるはずがない。
……はずなんだけど……
「…悲しいやつ。魔族にしかともだちいないの?」
「ふっ。お~ほっほっほ!そんな雑魚をいくらだしてきてもこの私の敵ではないわっ!お~ほっほっほっ!」
おもわずぽつりとつぶやくあたしに、何やら意味不明なまでに高笑いしつついっているナーガ。
そんなあたしたちとは対照的に、
「おのれ!あまつさえ温厚な儂をねらい無関係な人々を苦しめたばかりかっ!
  よもや魔族の手をかりるとは!断じて許してはおけんっ!人類みな兄弟!平和主義者アタックッ!!」
ドゴメギャッ!
「うそっ!?」
バシュ。
フィルさんの放った一撃でいともあっさりと霧散してゆくデーモンの姿。
え…え~とぉ……
素手で魔族を撃退って…うちの姉ちゃんじゃあるまいし……
あまりのことに呆然としていると、
「ふっ。おじ様。だけど語るにおちたわねっ!この私にそんなものが通用するとでも!?
  お~ほっほっほっ!笑わせてくれるわねっ!ならばこれならどうかしら!?」
や…やばいっ!
「ナーガ、まっ…っ!!」
あたしの制止の声は何のその。
霊呪法ヴ・ヴライマ!!」
ナーガのゴーレム作成の術により数体のゴーレムが周囲の壁や足元から出現する。
ってまていっ!
こんな洞窟の中でそんな呪文を使ったら!
それでなくてもナーガの術は暴走するのが前提というか当たり前なのにっ!
そんなあたしの危惧は何のその。
「やっておしまいっ!!」
ナーガの作り出したいびつな形の石人形たちにナーガが命令を繰り出していたりする。
かなりまていっ!
対象を指定しなければどうなるか。
答えは簡単。
命令をうけた石人形達は問答無用で攻撃を繰り出し始める。
…予測通り、洞窟の四面の壁をも含んで……
びしっ。
ガラ…ガラガラ……
「うきゃぁぁ!?」
「うぉうっ!?」
…やっぱし……
「こ、こんな狭い場所でんな呪文つかうなぁぁ!!!」
相変わらず考えがない……
ランディさんたちが出してきたレッサーデーモンたちはいともあっさりと駆逐されたはいいものの。
まあ、その駆逐されたのがほとんどフィルさんがすでで倒した…というのはみなかったことにする。
ランディさんと魔導師…名前しんない魔道士その一。
とにかく、その二人に対し放ったナーガの呪文。
ここは、山の中腹に掘られた洞窟の中。
さらにいえばかなり最深部。
そんな中で岩を主体とする石人形ゴーレムを作成すればどうなるか。
しかも対象をきちんと指定しなかったがゆえにところかしこに攻撃をしかけるゴーレムたち。
文句をさらにいいたいが、今はとにかく脱出が先。
「うわぁっ!?」
ガラガラ…
が、しかし。
どうやら周囲の岩盤はかなりもろかったらしい……
ゴーレムが作成された時点でかなりもろくなっていたらしく、もののみごとに天井ごと崩れ落ちてくる。
「ベ…地精道ベフィスブリング!!」
ぼごっ!!
出口までいくのは絶対に間に合わない。
一人ならいざしらず、フィルさんたちを抱えては絶対無理。
「はやくっ!こっちにっ!!」
とにかく壁にと術で穴をあけ大声で叫びその中に飛び込むとほぼ同時。
ガラガラガラ…ドシャァッン!!
天井が完全に崩れ、そのまま洞窟はきれいさっぱりと埋まってゆく……

「かなり派手に壊れたなぁ~」
ガラガラと崩れた岩々を押しのけ外にとでてみると、ものの見事に崩れた元山がひとつ。
形がいびつになっていることから崩壊具合が見て取れる。
どうにか穴に飛び込んだのはあたしとガウリイのみだったらしいが。
崩れた岩岩の中から無傷でフィルさんが出てきたときにはびっくらこいた。
「ランディ…愚かなやつめ……」
フィルさんがどこか遠くをみながらそんなことをつぶやいているけど、何と声をかけていいものか。
というか、この人、本当に人間ですか?
「お~ほっほっほっ!お~ほっほっほっ!!」
そんなフィルさんの横では同じように無傷で岩の中からでてきたナーガが高笑いをあげていたりするけども。
…も、いや…
この娘にしてこの父親ありってことなのか?
こ、これ以上精神的にダメージをうけるまえに……
「あ、あのぉ?フィルさん?あたし達はそろそろ依頼料をもらってお暇したいんですけど……」
これ以上かかわっていたら、絶対にこの父娘に精神崩壊させられてしまう。
ここはやはり、とっととナーガをフィルさんにおしつけて、依頼料をもらって逃げだすのが最も正しいあり方。
「あ、ああ。それがだな……」

あたしの言葉になぜかフィルさんは視線を泳がせ……
ものすごぉぉぉぉぉぉぉく嫌な予感……
「実はお金はすべてランディに預けてあったからな。儂は一銭ももってないんじゃよ。がはははは!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
「……へ?」
一瞬、何をいわれたのか理解不能。
「じゃが。安心せい。セイルーンにもどったら倍にしてはらってやるわいっ」
「って、セイルーンってここからだいぶはなれてるじゃないのよぉぉっ!!」
・・・・・・・あたしの叫びはむなしく大気に解け消えてゆく……
…何でこうなるわけ?
あうっ……
結局のところ、依頼料をもらわないまま、というのも癪ではあるし。
何よりそのままナーガやフィルさんに付きまとわれまくる。
というのもかなりこまるので仕方なくフィルさんとナーガをセイルーンにまで送り届けることにするしかない…か。
……道中がこれから先、おもいやられるわ…くすん……
「じゃあセイルーンにむかうのか?」
「って、あんたはまだついてくるんかいっ!?」
思わず地がでて叫んでしまう。
よくわからん兄ちゃんに、ドワーフもどきのフィルさんにトラブルメーカーのナーガ。
この四人で無事にセイルーンにまでたどり着けるのか?
「セイルーンについたらしっかりとそれまでにかかった費用とかは請求しますからねっ!」
あとついでにナーガにかかった費用も請求してやれ。
そして二度とセイルーン国内には近づかないようにすればあたしは平和を手にすることができるはずっ!
「おう。これからよろしくな。リナどの。ガウリイどの。がっはっはっ」
「お~ほっほっほっ!お~ほっほっほっ!」
……どうでもいいが、この二人といっしょにいたらかなり目立ちまくるな…
何やらどことなく似通った笑い声をあげる父娘をみながら盛大にため息。
は~……
と、とにかく。
気を取り直して。
「まずは、セイルーンにむけて出発よっ!」
「?アトラスはいいのか?」
「そんなのはどうでもいいのっ!」
もはやもうぶりっこする気力もない。
ガウリイの言葉を一言のうちにと却下して、あたしが目指すのはセイルーン。
これ以上厄介事がはいってきませんように……心の中でものすっごく念じつつ……

聖王都、セイルーン。
あたしの故郷、ゼフィーリアとは隣接している超巨大国家。
この世界というか、何でも千年前の降魔戦争、という大規模な戦いののち。
あたしたちがすんでいるこの世界は魔族による結界の中にと閉ざされた。
世界は広いはずなのだが、魔族の結界があるがためにあたしたちがすまうこの土地は孤立したらしい。
そんな孤立した土地の中で国家といえばまず思い浮かぶのが、
永遠の女王エターナルクイーンが収めるゼフィーリア、軍事国家と名高いディルス。
そして白魔法が盛んで聖王都、といわれているセイルーン。
この三大王国をまずだれもがおもいつくであろう。
エルメキア帝国、という国もあるものの、あの国はほとんどが砂漠でありあまり諸外国と国交をもっていない。
まあ、滅びの砂漠に直接面している国に好き好んでいこうとすする冒険者や旅行者もいないのも事実である。
事実、エルメキアはほとんど砂漠の国、というのが一般的な知識だし。
今、あたしたちがいるこの場所はディルス王国の領土内。
といっても沿岸諸国連合の国境付近に近いといえば近い場所。
北に進めばアトラス・シティ。
南にしばらく進んでゆくと、いくつかの町がある。
その途中にはシードラゴンで有名なマレン湖があり、そこからサイラーグ方面などにむかった街道が突き抜けている。
マレン湖からタイレルシティ方面と、サイラーグシティ方面とに街道がのびているのだが。
ちなみに、海にむかうにはタイレルシティ方面側にと向かう街道を進むのが正解。
ちなみに、その街道には盗賊やおいはぎなどがよくでることでも有名。
結局、ナーガもフィルさんも一銭ももっておらず、たよりになるのは自身の懐。
ガウリイもみたところあまりもってるようにはみえないし……
ここはやはり、そういった類がでる道を率先して進んで懐をあっためる必要性があるわよね♪
うん。
そんなこんなで選んでいるとあるひとけのない街道沿い。
何しろフィルさんの容姿が容姿である。
大きな町などに泊まって下手に騒ぎになるのはなるべくさけたい。
かといって、それなりの宿にとまる、というのであればお風呂などがあまりよくなかったりするのだからしかたがない。
街道沿いにひたすらすすみ、その途中にある宿に泊まることで同意をうけて進んでゆくあたしたち四人。
「そういえば、ガウリイ殿はリナ殿や娘とはどういう関係ですかの?」
道すがらそんなことをガウリイにと聞いているフィルさん。
「関係?」
どうやら問われている意味がよくわかっていないらしい。
「いつごろから娘やリナどのと一緒にいるのかの?」
「この人は、フィルさんがやってきたのとほとんど時間的にはかわらないけど。
  たまたま盗賊に襲われているところを女二人だと危ないからって、護衛を問答無用でかってきたんですよ」
とりあえず無難な真実を話しておく。
まあ、嘘ではないし。
襲われていた云々…というのに注釈はつくが。
「そういえば。そっちの姉ちゃん。あ、フィルさんの娘さんのあの格好。あれ、服きなくていいんですか?」
……どうやらガウリイはまだナーガの服が盗賊に盗まれた、と思い込んでいるらしい……
「うん?娘はきちんと服をきているが?しかしあの服を着こなすとは。さすがはわが娘。
  しんだ母さんもきっとよろこんでいることじゃろうて。
  母さんは娘たちにその服を着せるのをとても楽しみにしていたからのぉ~」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
何なら聞きたくないようなセリフをきいたような気がするんですけど……
「王族に連なるものはあのような服を着こなさねばならない。という決まりがあることじゃしの」
・・・・・・・・・・・・き、きかなかったことにしよっと……
「へ~。かわってるんですねぇ」
「そうかのぉ?普通じゃとおもうが?」
普通でない普通でない。
ガウリイとフィルさんの会話に突っ込みをいれそうになるがもっと怖いことを聞きそうなのであえて口を挟まないでおく。
セイルーン…ま、まさか首都に住んでいる女性はみんなナーガみたいな格好してるんじゃぁ…
こ、怖い。
怖すぎる……
「しかし。ほんと、グレイシアをみているとしんだ母さんを思い出すわい。
  ほんと、よく似てきておる。アメリアも母さんに似てきておるが。さすがわが娘達じゃわい」
……そ~いえば、セイルーンには二人の王女がいるっていう話はきいたことはあったが…
その妹もナーガみたいなのか?
うわぁ。
いきたくない……
というか、とっとと礼金というか謝礼もらってとんずらしよう……
そんな会話をききつつ心に固く決意し、あたしは無言でひたすらにと街道をあるいてゆく。
…何ごともなくセイルーンにたどり着けますように…
そう、心の中で願いつつ……


                   -続くー

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あとがきもどき:
薫:さてさて、今回はほとんど「セイルーンの王子」編でしたv(まて
  次回でようやくゼルガディスの登場ですv
  つまり、一巻にナーガ&フィルがかかわってくる、ということなんですけどねぇ(こらこら
  ではまた、次回にてあいましょうv
  それでは、また♪

2009年2月2日(月)某日

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