まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちら

さてさて。2009年。三月。
まさか、まさかの児童書版スレイヤーズの発売です!!
いや、この情報をしったときにはかなりびっくり。
というか何で今さら児童書版?
つまり、パラレル的なスレイヤーズ、というわけですよねぇ?
スレイヤーズ本編にナーガが絡む、ということらしいし。
というわけで(何が?)その児童書版発売を記念して突発的に思いついたスレイヤーズもどきですv
何はともあれいっきます♪

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火炎球ファイアーボール!!!
ちゅどぉぉぉぉぉんっ!!
夜の闇の中。
こぎみよい音が山の中を木霊してゆく。
「「うわぁぁ!?」」
なぜだか悲鳴がきこえているような気もするけど、ま、きのせいでしょう♪

迷・ネオスレイヤーズ

「リナ!どういうことよっ!!」
あ~…うるさい。
たかが、面倒なので一緒に吹き飛ばしただけでコマカイことをぐちぐちと……
「それより。ナーガ。今回の宝石類。あまりいいのなかったから。精製しないといけないけど。
  いつものようにそれぞれがつくったのがそれぞれの取り分、でいいかしらね?」
しつこくなにやらいっくてる連れの言葉にはひとまず無視。
ここが山の中でなければまちがいなくあたしたちは注目の的となる。
というか、注目されるのはあたしではなくて連れのほう。
というか、この格好…どうにかしてほしい。
とおもうのだが、こいつに何をいってもきくはずもなく。
延々とぐちを聞かされるのもまた面倒。
なのでさくっと話題転換。
「お~ほっほっほっ!リナ。あなた、それはこの私。白蛇サーペントのナーガ様に負けをみとめたことと同意義ね!
  お~ほっほっほっ!!」
「あ~。はいはい。どうでもいいけど。んじゃとりあえず、どっかに小屋か何かないか探しましょ」
宝石を精製する。
というのはあまり聞きなれない言葉ではあろうが、あたしたち…つまり、魔導師にとってはそうでもない。
というか傷物とかになっている宝石類は安く買いたたかれる。
が。
少し手を加えるだけでかなりの高額で取引がなされる。
こんなかわいいい美少女が旅の魔道士やってるなんて誰もおもわないだろうけど。
これでも一応は世間にも名前を知られている結構有名な魔導師だったりするこのあたし。
あたしのつれ…というかかってについてきて、しかもひとにたかりまくるこいつの名前はナーガ。
当人いわく、【白蛇のナーガ】となのっているが。
こいつはこれでもあたしですら信じられないほどの魔道の知識があるのも事実。
出会いは…あまり気にしたくない。
味方にすれば仲間ごとひっかきまわし、敵に回せば敵味方問わずひっかきまわす。
というかぁぁぁぁなり厄介な人間?…もどき。
ナーガを黙らすには、小銭でつるか、品物でつるのが一番である。
たわいのないそんな会話をしつつも、あたしたちは静まり返った山道をしばしあるいてゆくことに。

さくっ。
ひた……
「ねぇ。リナ……」
いいたいことはわかるけど、ひとまず無視。
あえて人気のない道を歩いているのにはわけがある。
というか、こうもあっさりとひっかかるとは……
「どうやら昨日のやつらの残党みたいね」
どうりであまり盗賊たちの人数が少なかったような気がしたはずである。
近くの村で仕入れた情報によればもう少し人数もいてもっと実入りがいいかとおもったのに。
人々に害をなす盗賊を退治して人々から感謝され、
さらには彼らが二度と悪い考えをもたないように、すべての品物を物色…もとい没収し。
そうこうして旅をつづけていたあたしについたあだ名は、なぜか盗賊殺しロバーズ・キラーというあまりいい響きではない言葉。
「ちょっと。わかってるんだったら何でこんな人気のない道をえらんだのよ!?」
「そりゃ。もしかしたらあそこにはなかったけど。あいつら財宝の隠し場所とかしってるかもしれないじゃない」
「お~ほっほっほっ!そういうことね!」
村人たちの話ではかなりためこんでいる。
というはずだったのに、はっきりいってほとんどいいものがなかったのも事実である。
盗賊たちのアジトにいた奴等に問い詰めたけど誰も口を割らなかったし。
ならば、今おいかけてきているとおもわれるやつらにきくのが一番。
「ファイア……」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
すぱこぉんっ!!
「あのねぇぇ!こんな森の中で炎の術なんてはなったら火事になるでしょうがっ!!」
いきなり後を振り向き火炎球ファイアーボールをぶっぱなそうとしたナーガをひとまずはたく。
ちなみに、常に懐にスリッパを携帯しているのは乙女のたしなみの一つである。
「いったぁ!ちょっと!リナ!何てことするのよっ!」
「どやかましいわっ!!」
自覚のないやつはこれだから……
「やぁぁっとおいついたぜ。おじょうちゃん達」
にらみ合っていると、聞こえてくる第三者の声。
にらみ合っている最中、ふとそちらにと視線をむける。
あたしたちの視線の先にいるのは一人の男性。
というか、あからさまに『私は悪人です』というような格好の男である。
頭から髪の毛が全滅しており、お決まりにも上半身裸。
しかもその体は全身にラード油をぬりたくったような油きったぎとぎととしている肌をさらけ出している。
さらには定番にもほどがある、べたべたすぎる手にした円月刀。
いかにも自分は盗賊のお頭です。
ときょうび小さな子供でもわかるような格好をしている男の姿がそこにはある。
「よくも俺達をこけにしてくれたな」
「「・・・・・・・・・は~……」」
思わず定番といえば定番すぎるそんな男のセリフに思わず盛大にため息がもれだすあたしたち。
「きっちりとおとしまえはつけさせてもらうぜ」
などとそんなことを男がいいかけたその矢先。
「お~ほっほっほっ!!愚問ね!!この白蛇のナーガ様とその僕に喧嘩をうるなんて!」
「ちょっ!!誰がしもべよ!この金魚のふんっ!!そんなこというなら今まで建て替えた金。かえしなさいよっ!」
いきなり朗々といいきるナーガに思わずつっこみをいれる。
「リナちゃん。つめたい……」
そんなあたしの言葉にナーガがそんなこといってるけど。
そもそもこいつに立て替えている金額はすでにかなりの額にとなっている。
「・・・・・・それ。人間なのか?」
あ~…気持ちはわかる。
どうやらナーガの格好をみてかなりとまどっているようである。
ま、この寒い中。
下着ですらここまでひどくない、布の少ない格好をしている水着のほうがまだまし。
というような格好をしている人物をみて、普通の人間、とおもうほうがどうかしている。
男がかなり戸惑いの声をあげてあたしに視線をむけてくるけど。
「ちょっと!どういう意味よっ!それ!!」
「ま。どうでもいいか。とりあえず見た目の体だけはかなりいいしな。どうだ?ものは相談なんだが……」
抗議の声をあげるナーガをさらっと無視し、男がねちりとした笑みを浮かべて何やらいってくる。
「正直いってあんたらとはやりたくねぇ。さらに仲間ごと俺達を吹き飛ばしたあんたのことだ。
  俺達なんかがたばになってもかないっこねぇ。
  まともにやったらこっちのほうが痛い目をみるのは目にみえている。
  あの手口。まるきし玄人だ。いきなり派手な魔法であちこちふっとばしてくれて。
  見境なしに火の手はあがるは、おかしらも火にまかれておっちんじまうわ。
  そっちの姉ちゃんが放った術のゴーレムのおかげでアジトは壊滅。
  ふと気付けばめぼしい宝どころかごっそりとすべての品物がもっていかれちまってる。
  俺達でもあそこまではやらねぇぜ」
というか、ナーガがゴーレムを作り出したはいいものの、いつものごとくに暴走しただけなんだけど…
別にそれは説明することでもないのでひとまず口はださないでおく。
「ふっ。悪人に人権はないからいいのよ」
「お~ほっほっほっ!ほめているのならあなたたちがしっている隠し財宝のありかをいうことね!!」
どこをどうしたらそのように話しを無理やりにこじつけていえるのやら……
ま、ナーガだし。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あ、さすがの盗賊も何といっていいのかわからないらしい。
「あ~。こ、こほん。とにかく。本来ならばお頭の仇。ってなもんでおまえさんたちを殺すか。
  さもなきゃ、俺達がみんな死んじまうかするまでおっかけまわすのが筋ってもんなんだろうが。
  そいつあどうかんがえてもお互いにとって面白いことにはならねぇ。
  そこで、どうだ?あんたら。俺達とくんでみる気はねぇか?」
ねちりとした笑みを浮かべてそんなことをいってくるけど。
ふ。
冗談ぽい。
である。
そんなことは冗談でもいってほしくないものである。
そんなことが郷里の姉ちゃんの耳にでもはいったら…ブルッ…か、考えまい……
「お~ほっほっほっ!愚問ね!あなたたちにこのナーガ様が倒せるとでも……」
いや、あんたの場合はあるいみ倒せる。
小銭でつればあっさりとなびくだろうし。
そんなナーガの言葉をあっさりと無視し。
「お宝を返してくれて俺達の仲間になるっていうのなら、
  死んじまったお頭や仲間のことは水に流してやってもいいんだぜ?
  なぁに。難しい商売じゃねぇ。俺達のいうことを何でもきいていりゃあ、それですべてよし。さ。
  不自由はさせないし、たぁんといい目もみせてやるよ。どうだ?悪い話じゃねぇだろう?」
自分たちのいいたいことだけをいいつつも、ナーガとあたしの体を嘗めまわすようにみつめ。
「…まあ、胸がなくても女は女……」
ぶちっ。
ひ…人が気にしてることぉぉっ!
「ふっふっふっ…黄昏よりも暗きもの…血の流れよりも紅きもの……」
「ちょっ!ちょっとリナ!!」
「?何をぶつぶつと…」
「時の流れに埋もれし、偉大な汝の名において……」
何やらナーガが騒いでいるけどさくっと無視。
男のほうはあたしが何をしようとしているのかまったくもってわかってなさそうである。
竜破斬ドラグスレイブ!!!!」
ちゅどぉぉぉぉぉぉぉっん!!!!!
山間に、不釣り合いなまでの爆音が響き渡ってゆく……

竜破斬ドラグ・スレイブ
黒魔法最高峰、とされている攻撃魔法の一つ。
その一撃は生物の中で最強といわれている竜をも一撃で倒すことからこの名前がついたとか。
ちなみに、この術をつかえる魔道士はそうはいない。
あたしの得意な術の一つがこれである。
まあ、力加減ひとつで国ひとつ、あるいは山ひとつはかるがると消滅させれる技ではあるが。
ふっ。
人が気にしている胸の大きさに触れた悪人がわるいのよっ!!

ガラガラ…
「ちょっと!リナ!!いきなり何するのよっ!!」
「ふ~。すっきり」
も、毎回のことだから慣れたけど。
というか、こいつは何でドラスレの直撃をうけたはずなのに無傷なのやら。
まあナーガだしなぁ~……
いつものこと、とはいえ、多少ぽっかりと空いてしまったクレーターの底からはい出してきたナーガが何やらいってくる。
そういえば、お宝がちょっともったいなかったかな?
というような気もしなくもないけれど。
なぜか他にもいたはずの盗賊の残党たちは腰をぬかして逃げ出したようだし。
かなり手加減したのでクレーターの大きさはそれほどではない。
額をゆっくりと片手でこするあたしにナーガが何やらいってきてるけどあたしには関係ないし。
「あたしごと吹き飛ばすなんて、さてはリナ!あなた、このあたしをさしおして取り分独り占めする気ね!!」
「あのねぇ!!」
「ふっ。そうわいかないわよ!あなたがその気なら…!!」
「ひとの話をきけぇぇ!!」
ナーガが呪文を唱えかけたその刹那。
「お~。いったい何があったんだ?お~い。あんたたち、大丈夫かぁ?」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「「・・・・・・・・・は?」」
何やら聞きなれない声がクレーターの向こうのほうからきこえてくる。
もくもくと立ち上る煙の向こうにみえる人影一つ。
「よいしょっ…と」
すたっ。
クレーターをいともあっさりと飛び越えて、こちらにやってくる一人の人物。
金髪碧眼のぱっとみためかなりの美青年、といっても過言ではない。
アイアン・ペントの鱗で作られている黒光りするブレスト・プレートに腰にさしている長剣がひとつ。
…格好からしておそらくは旅の傭兵か何かであろう。
どうやら敵意はなさそうだけど、いったい?
警戒するあたしの気持ちとは裏腹に、
「何だか歩いてたらいきなり大きな音がしてきて。
  しかも男たちがいきなり襲ってきたんだが。あいつら、あんたらの知り合いか?」
…どうやら想像するに、逃げだした盗賊の一味とぱったりとこの兄ちゃんは出くわしたらしい。
「い、いえ。私たちもいきなり襲われて…」
いってとりあえず言葉を濁す。
「そうか。じゃぁ、これあんたたちの荷物か?あいつらそっちの姉ちゃんの服はもってなかったなぁ」
どうやらナーガの格好をみてナーガが身ぐるみはがされた、とでも勘違いしたようである。
あ~…そういうとらえ方もあるのか。
あるいみ感心。
金髪兄ちゃんが手にしているのは少し大きめの皮袋。
中身はしっかりといろいろとはいってそうである。
ラッキ~!!
「え。ええ。そうです。助かりました。こまっていたところなんです」
てっきりお宝ごとふっとばして収益がない、とおもってたのは事実だし。
そもそも、あいつらを倒したあとはあたしの物になるはずだったのだから嘘はいってない。
うん。
「それはよかった。しかし、あんたたち二人で旅をしているのか?女の子だけなんて危ないぞ?
  それとも近くにお父さんか誰か連れでもいるのかな?姉妹で旅でもしてるのか?」
「誰が!!こんなやつと姉妹っ!!」
「ちょっと!このあたしがこんなリナと姉妹にみえるの!私の妹はもっとかわいいよっ!」
「ほぉぉう。ナーガ。今のセリフ、何か含みなかったかしら?」
「あら?事実をいったまでよ?私の妹はリナみたいにすれていないもの」
「んっふっふっ。ナーガ。覚悟はいいでしょうねぇ~……」
すちゃっ。
だっと間合いをとりナーガとしばしにらみ合い。
「あ~。よっぽどこわかったんだなぁ。よし。わかった!
  あんたたちの目的地までこのオレが保護者兼ボディーガードをしてやろうっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
「「・・・・・・・・はぁぁぁぁぁぁ!?」」
いきなりといえばいきなりな兄ちゃんのセリフに思わずあたしもナーガもしばし硬直。
「うんうん。気持ちはわかる。お姉さんが妹をかばってみぐるみはがされてこわかったんだなぁ。うんうん」
何やら一人で納得してそんなことをつぶやいているこの兄ちゃん。
「つうか、まてぃっ!!どこをどうみたらこんなやつと姉妹にみえるのよっ!」
思わずその兄ちゃんに突っ込みをいれる。
「よほどこわかったんだなぁ。もう大丈夫だからな」
「ひ…人の話をきけぇえええええええええっっっ!!」
「はい。お姉さんのほう。荷物の中、確認したほうがいいですよ?」
ぽんぽんとあたしの頭をたたきつつ、ナーガに皮袋を渡してそんなことをいっくてるこの兄ちゃん。
「あ、オレはガウリイっていうんだ。あんたらの名前は?」
こ…この兄ちゃん…ひ、ひとの話…まったくきいてないよ……
だ……誰か助けて…プリーズ……
「お~ほっほっほっ!この袋の中身はすべて私のものよ!お~ほっほっほっほっ!!」
ナーガはナーガで自分に皮袋が手渡されたのをうけて、延々と高笑をあげてるし……
と、とにかく。
親切心、というのはわかるけど。
ナーガと姉妹にみられたまま、というのは心臓によくない。
ナーガがあたしの姉になるのなら、あたしの姉ちゃんが二人以上いたほうがましである。
「え。えっと。私達はそれぞれに旅をしている身で。たまたま偶然に一緒に旅をしていただけで。
  とりあえず次はあたしはアトラス・シティにでもよってみようかな?なんておもってるんですけど。
  なのですぐ近くなので親切心はありがたいのですが。御迷惑をかけてもいけませんし。
  つつしんで辞退させていただきます」
とにかくひたすらにぼろを出さないように相手を言い含める。
アトラス・シティはここから数日もかからない場所にある。
別に本当は目的地なんてきまってはいないけど。
「そうか。そうか。うんうん。よほど苦労したんだね。気持ちはわかるよ。ひとを信じられないのもね。
  いろいろとあったんだろう。いろいろと……」
あ~…いらいらするぅぅ!
この兄ちゃん、かんぜっんに勘違いしまくってるよっ!
「い、いえ、そうでなくて……」
「何もいわなくていいよ。わかってるから」
わ、わかってなぃぃっ!!
「こうみえても、少しは腕がたつんだぜ?別に護衛料をあとでふんだくるとかはしないから。
  女の子だけの旅は危険だしね。このあたりには盗賊だけでなくさまざまな危険な動物もいるしね」
「いや、ですから……」
「お~ほっほっほっほっ!私の、私のものよぉぉ~!!お~ほっほっほっ!!」
傍らで押し問答をするあたしとガウリイ、と名乗った兄ちゃんの傍らで、一人ずっと高笑いしているナーガの姿。

結局のところ、どうやらいっても無駄。
というのをさとり、しかたなくしぶしぶこの兄ちゃんの申し出を承諾するハメに。
・・・・・・・・・・・・・何であたしの周りにはまともな人がよってこないんだろうか?
・・・・・なぞである。


「そういえば。自己紹介がまだだったな」
とりあえずラチもあかないので近くのふもとの村にて少し遅めの昼食タイム。
村に唯一ある食堂では、何やら村人たちがにぎわいをみせている。
よくよく話しをきけば、村ひとの一人がこのあたりを荒らしまわっていた盗賊のアジト付近にいったところ、
盗賊たちはことごとく壊滅したのか無人だったらしい。
そんな会話がなされているのが見て取れる。
結構はぶりがよさそうな盗賊一味、とみたから盗賊いじめ…もとい退治にいったのに……
まあ、それはそれとして。
とりあえず、ガウリイ、となのった兄ちゃんのおごり。
というのもあり、あたしもナーガも遠慮などせずにメニューのすべてを注文しているこの現状。
この兄ちゃんもみためによらずけっこう食べるらしい。
ナーガ以外で結構たべる人、というのはめったとみたことがなかっただけに新鮮な驚きである。
いわれてみれば、きちんと自己紹介のようなものはしていない。
「オレはガウリイ。ガウリイ=ガブリエフ。みての通りの旅の傭兵だ。君たちは?」
「ガブリエフ?まさかあのガブリエフ一族の?」
その名前にナーガが珍しく口を挟んでくる。
こいつが食事中に口を挟んでくるなどかなり珍しい。
「?ナーガ?知ってるの?」
「リナ、知らないの!?ガブリエフ一族。といったらあのガブリエフ一族にきまってるじゃない!」
いや、あの、といわれてもわかんないものはわかんないんですけど……
「それに。ガウリイ。といったわね。たしか。噂では一族の家宝をもって旅をしてる人物の名前がたしかそう。よね。
  ついでに傭兵の中ではかなり名前がしられてるけど、別の意味でも有名とか」
「?別の意味?」
「モノ覚えがものすごくわるいんですって」
「・・・・・・・・・・あ~……」
あるいみ、ナーガと同類かも?
「いやぁ、ほめられても何もでないけど」
「ほめてない。ほめてない」
思わずにこやかにいってくるガウリイにとつっこみをいれてしまう。
というか、一族の家宝…かなり気になるんですけど?
しかし、ナーガのこのわけのわからん情報網は侮りがたし。
ほんっと、こいつ変なところで博識だからなぁ~……
と。
カララッン…
「いらっしゃいませぇ……」
ふと、扉につけてある鈴の音。
食堂の従業員が声をかけると同時にほぼ固まる。
ふと視線をそちらにむければ何やらそこには男性が二人。
一人は何やら魔導師風というか神官風にみてとれなくもないが、もう一人はどうみてもごっつい体格にごっつい顔。
どこぞの山賊の親分とそのおとも、とみた。
まさか、この前の盗賊たちの残党!?
おもわずこっそりと口の中でと呪文を唱え先制攻撃に備え……
「うん!?グレイシア!グレイシアではないかっ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はひ?
ごっつい山賊おやぶんがあたしたちのほうをみて声をかけてくる。
というか、ひと違いです。
ざっとその場にいた村人たちが一斉にあたしたちにと恐怖にかられた視線をなげかけてくる。
「人違……」
人違いですよ。
とやんわりとこの場を収めようとしたあたしの声をさえぎり、
「お父様!?」
・・・・・・・・・ぶっ!!
どべしゃっ!!
ずでっんっ!!
あまりといえばあまりのナーガのセリフに思わずその場につっぷしてしまい、
その姿勢のまま椅子から転げ落ちてしまう。
「やはり、グレイシア!お主、こんなところで何をしておる?」
「そういうお父様こそ?」
「グレイシア様。お久ぶりです。あいかわらずお綺麗でいらっしゃる」
「お~ほっほっほっ!おじ様。本当のことをいっても何もでなくてよっ!」
・・・・・・え~と…他人のふり、は無理ですか?
ねえ?
どうやらどうみても一見大柄なドワーフもどき、としかみえない山賊おやぶんは何とナーガの父親らしい。
「にてない父娘だなぁ。あんたの父親か?」
ぶんぶんっ!!
とぼけたガウリイのセリフに全力で首を横に振り否定する。
この兄ちゃん、まだあたしとナーガが姉妹とおもってたんかいっ!!
そうつっこみたいがショックのほうがかなりでかい。
たしかにむちゃくちゃににてない父娘。
そんな会話をしつつも、
づかづかとそのドワーフもどきのナーガの父親?らしき人物ともう一人はあたしたちのほうにと歩いてくる。
いや、その前に、ナーガのこと、グレイシア…って……
グレイシア、といえば…え~と……まさか…ねぇ?
うん。
似たような名前はいくつもあるわけだし、アレとは関係ない。
絶対に。
「グレイシア様。こちらの方々は?」
「お~ほっほっほっ!この私の僕達よ!」
「って誰があんたのしもべよっ!!あんたのほうこそ、ひとにたかりまくって勝手についてきて!金魚の糞じゃないのよっ!」
神官風の格好をしている男性の台詞にナーガがそんな説明をしてるけど。
そもそも、ナーガにたかられたことはあれども僕、とよばれる筋合いはなしっ!
どちらかといえばあたしのほうがそういいたいくらいである。
「そんなこというなら今まで建て替えた金額。一気にかえしなさいよね」
「何じゃ。グレイシア。またお金でもおとしたのか?お前は母さんににておっちょこちょいだからのぉ。
  母さんもまた極度のおっちょこちょいで、また方向音痴じゃった……」
ほろり。
いってドワーフさんが目にきらりと涙を浮かべる。
おっちょこちょいですませられるレベルか?あれが?
「どうやらグレイシア様がご迷惑をお掛けしていたようですね。どうぞ。こちらを……」
じゃらり。
・・・・・・え?
いいつつも、あたしの目の前に小さな皮袋がひとついきなりおかれる。
こ、この音は、もしかして!?
いやでも、山賊からお金をもらうと、あたしまで仲間にみられ……
ど、どうしよ?
あたしがしぶっていると。
「しかし。こんなところでグレイシアにあえるとは何かの縁じゃのぉ。
  それにお前の連れはみたところ、剣士殿と魔導師どの、とお見受けした。
  どうかの?娘の顔をたてて依頼をうけてもらえんかの?報酬はそれなりにきちんとだすが」
いや、ナーガの顔をたてて、といわれても。
ナーガの顔はそもそもたてるようなものではない、というかさらに混乱を招くこと請け負い。
「おお。いきなり依頼、といわれても戸惑うかの。まずは儂の身の証をタテテおこう」
いや、山賊のおやぶんの身の証…って……
どがっ。
いいつつも、いきなりテーブルの中心に短剣がつきつけられてくる。
『うわぁっ!?』
店の中にいた幾人かは、それをみてあわてて外にかけだしていってるけど。
あるいみ正解かもしんない。
というかあたしも逃げだしたい。
テーブルにつきつけられた短剣の威力でテーブルに罅がはいってるし……
「…身の証…って……え?」
短剣をちらりとみて一瞬目がテン。
短剣のつかに掘られているその紋章。
いや、まさか。
偶然。
うん、偶然にきまってる。
というか偽物。
よし。
見間違い。
そういうことにしておこう。
そんなあたしの想いとは裏腹に、
「実は大きな声ではいえませんが。こちらのお方こそ、セイルーン王国第一王位継承者。
  フィリオネル=エル=ディ=セイルーン王子であらせられます!!」
どんがらがっしゃぁっん!!!!!!!
神官風の男性の言葉にさらに盛大に椅子をひっくりこけてしまう。
というか、う…嘘でしょうっ!?
何だか周囲でもものすごい音がしてるようだけど…たぶん、興味本位できいてた人たちもひっくりかえったな……
【セイルーンの王子】の噂はきいたことがあるにはある。
病弱な国王にかわり国政をしきり、その第一皇女が何でも行方不明中、とかいう噂も…
王子様。
というと誰もが絶対に想い浮かべるイメージ、というものがある。
中には独身のセイルーン王子のお目にとまりたまのこし、を狙う人々もいる、ときく。
しかし、その現実は……
「お~い。大丈夫か?嬢ちゃん?」
そんなあたしにガウリイが何やらいっててをさしのべてくる。
「あ…あはは……」
もはや涙目。
っと、まてよ?
ナーガが娘…って…つ~ことは……
「ナ、ナーガ?あんた、ナーガって名前でしょうが?」
ききたくないけどひとまず聞かねばどうにもならないものがある。
「グレイシア=ウル=ナーガ=セイルーンが私の名前よ?いってなかったかしら?」
「きいてないわよっ!!」
「お~ほっほっほっ!リナ!まだまだね!フルネームを聞かないとわからないなんて!」
そんな問題じゃないっ!!
何だか気が遠くなりそうなんですけど……
つまり、何ですか?
あの問題ありまくりのナーガがあの巨大大国セイルーンの王位継承者の一人、というわけですか?
…セイルーン王家……おわったな……
セイルーン。
聖王都セイルーン。
といわれている国は名前のとおり、白魔法を主体とした巨大な国家でありその影響力は多大なもの。
首都全体が魔方陣により覆われていることからも、聖王都、と呼ばれている。
その反面、王家のお家騒動は何かと昔からいわくつき…とも聞いている。
「まあ、固くならないでください。今はお忍びのみですから」
いや、固くなってるんじゃありません。
現実逃避してるだけです。
「申し遅れました。わたくしは司祭のランディと申します。
  グレイシア様が何やらお世話になってるようですが。あの、あなたのお名前は?」
とりあえず、どうにかこの場をさくっと逃げ出すのが先かもしんない……
「い、いえ。名乗るものでは…あ、私は先を急ぎますので、これで……」
カタン。
椅子を立ちあがるとほぼ同時。
「なぁ。リナ?今外にでないほうがいいとおもうぞ?」
のほほんとしたガウリイの言葉とほぼ同時。
「いたぞ!!あの女たちだ!!」
ガラッン!!
先ほど逃げ出した村人とほぼ入れ替わり、またまた何ものかが店の中にとはいってくる。
店の中にとはいってきたのは包帯をぐるぐるまきにしているミイラ男。
そしてその背後から唐突にはいってくるトロルの群れ。
「このアマ!先日、盗賊アジトを襲って根こそぎお宝をうばっていったやつらだ!」
ミイラ男があたしとナーガを指さしてそんなことをいってくる。
「?そうなのか?」
ガウリイがあたしとナーガをみながらそんなことをいっくてるけど。
「人違いじゃありません?」
そんなあたしの言葉とほぼ同時。
「お~ほっほっほっ!そのことを知っているあなたもつまり盗賊の一味ってことよねっ!」
ナーガがそんなことを高らかにいいきるし。
「って、あほぉ!肯定すなっ!と、とにかく!悪人に人権はないからいいのよっ!
  それに!お宝はきちんと恵まれない人にかえしたから文句をいわれる筋合いはないわっ!」
その恵まれない人、というのはいうまでもなくあたしのことだけど。
「そうか。グレイシアは世のため、ひとのために人知れずがんばってるなだな。
  父さんはうれしいぞっ!!それでこそ正義を愛するわが娘じゃっ!」
「お~ほっほっほっ!当然よっ!お父様!お~ほっほっほっ!!」
・・・・・・誰か、この父娘、どうにかしてください…本気で……
つうか、こんな育て方してこんな娘にそだったわけか…
……どんな教育してるんだろ?セイルーン王家……
「…娘?」
あ、ミイラ男がとまどってる。
ま、どうみても父娘にはみえないよな。
このナーガたち……
「とにかく。我が娘に非があったとはおもえぬ。話ならわしがきこう。
  話し合えば平和的に解決できるはずじゃ。さあ、さあさぁさぁっ!!」
ガタン。
と席を立ちあがり、そんな男たちに詰め寄ってゆくフィリオネルお…面倒だからフィルさんでいいか。
というか王子、とは間違ってもよびたくない。
フィリオネルっていうのも呼びにくいし……
あのナーガを王女、といいたくないのと同様に……
はっきりいってかなり怖い。
あのどうみてもひげもぐれのどうみても山賊のおやぶん、という容貌の持ち主にすごまれたときの心情はいかばかりか。
いや、それは平和的、というよりは脅しとおもいます。
どうやらトロルたちもどうしたらいいものかわからずにかなり戸惑っているらしい。
「でぇぇい!とにかく、やれぃっ!!」
そんなフィルさんに対抗してか、ミイラ男の合図に伴いトロルたちが一斉に咆哮をあげる。
「おのれ!この儂が話し合いで穏便に。といっているのに!いきなり襲いかかろうとするとはなにごとかっ!!」
目の前にいるフィルさんにまずはトロルたちが襲いかかろうとする…が。
「儂は本来、争いはこのまぬ!が!人々を害する、というのならばだまってはおれんっ!!」
・・・・・・・・・・何だかかなり面倒なことになりそうなんですが……
つうか、こんなところで王族が暴れでもしたらそれこそ国際問題とおもうのはあたしだけ?
しかもそこにあたしがいて、とめなかったと姉ちゃんの耳にでもはいったらっ!!
そ、それだれは何としても阻止しなければっ!!
パッン。
無言のまま手を軽く合わせてゆっくりと開く。
開いた手の中に生まれる小さな光の球が一つ。
青白く光るそれは広げる両手につれてだんだんと大きさを増してゆく。
「げっ!?火炎球ファイアーボール!?」
ミイラ男があたしのほうをみて何やら叫び、
「ひ…ひけ、ひけぇぇっ!!」
悲鳴に近い声を合図をだしてそのままトロルたちとともに店の外にと逃げ出してゆく。
「ふぅっ」
「ふぅ。じゃありませんよ!どうするんですか!?その火炎球ファイアーボール!?」
司祭ランディさんがあたしの手をみて何やらさけんでくるけど。
「おじ様。かりにも司祭ならばこれが何かわかるでしょうに。おじ様もまだまだね。お~ほっほっほっ!!」
おお!
ナーガにしては至極まともな意見。
なぜか店の従業員と残っていた村人というか客たちはあたしを遠巻きにしてそれぞれテーブルなどの下にと隠れている。
火炎球ファイアーボールは結構一般的にも知られている攻撃呪文の一つで、誰にでも使用は可能。
まあ、それにはきちんと基礎というか混沌の言葉の暗唱が必要ではあるにしろ。
仕組みを理解していれば混沌の言葉ははぶいて力ある言葉のみで術は発動する。
このファイアーボールの特徴は混沌の言葉を暗記するだけで誰にでも使用が可能、という点がある。
その仕組みをまったく理解していない人でも、よくいえば子供がたどたどしくいっただけでも発動する。
という何ともポビュラーな術の一つ。
が、しかし、その威力は術者が生み出した光の球を投げつけると着弾と同時に炸裂する。
そしてあたりに周囲かまわず炎をまき散らす。
ちょっとした広範囲用の攻撃魔法である。
使い手の魔力の強弱によってその破壊力にはかなりの差があるにしろ、
人間相手に直撃すれば一般的に一瞬にしてレア程度には焼きあがる。
「ナーガのいうとおり。火炎球ファイアーボールでなく、ただの明かりライティング。よ」
ふいっと投げた光の球は、煌々と店の中を照らし出す。
しかし、明かりと火炎球との区別がつかない司祭って……
「おお。やはり話せばわかりあえるのじゃ。が~はっはっはっはっ!」
「お~ほっほっほっほっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・他人のふり、他人のふり・・・・
しばし、ナーガとフィルさんの笑い声が店の中、響き渡ってゆく……


                   -続くー

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あとがきもどき:
薫:さてさて、突発的に思いついたこの話!
  ナーガが本編に乱入!となれば、ナーガの正体が露呈か!?
  というのりさんです(まて
  コンセプトは、セイルーンの王子とスレイヤーズの一話。それらの合作~といったところ?
  とりあえず、魔王編まではやりますが、そののちは不明(かなりまて
  何はともあれ、次回につづくのですv
  次回のネタはおもにセイルーンの王子ネタ?ゼルガディスの登場はもう少し先にて…
  何はともあれ、ではまた次回にて♪


2009年2月1日(日)某日

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