「んっ・・と?」
リナが首をかしげる。
リナの目の前には、なぜか、倒れている物体一つ。
「生き物??」
つんつんつん。
リナはつつくが反応なし。
追いかけていた、ウサギは、なぜか、遠巻きにリナの方を見ている。
リナは、野うさぎを追いかけて、かなりの森の奥深くにまで、入り込んでいた。
「何でねんねしてるの?」
きょん?
「・・そだ♡」
んしょんしょんしょ・・・。
何を考えたのか、近くの泉にそれを運んでゆく。
ずぅる、ずぅる、ずぅる。
力を使って、浮かせて、運べばいいのに、ひこずりながら。
それでも、まだ、起きない、その物体。
身体があちこち傷だらけになろうとも。
近くの泉まで、それを運んで、 
リナは、みようみまねで、布を作成する。
「・・・あれ?なんか、大きいけど・・いっか。」
たしか、こうするんだったよなぁ・・・。
気絶したときの、介抱の仕方。
ルナから、この前、教えてもらったし。
リナは、そんなことを思いつつ。
びしゃ。
その、顔よりも大きな布・・布というよりは、
ふかふかのタオルに近いが。
それを泉にひたし。 
・・・・ぺしゃっ!!・・・・・。
そのまま、動かない物体の顔の上にと、のせている。 
・・普通の存在・・つまり、肺呼吸の存在とかだったら、まず間違いなく、窒息死である。
「んと・・母様がこうもいってたなぁ・・。」
―目覚めないときは、何かぶつけなさいなvv―
って・・・。
ぶつけるって・・。
何だろ?
母様がよくやってるのでいいのかなぁ?
リナはそんなことを思いつつ。
思いつきで、その自分の小さな手に、黒い塊を出現させている。
まだ、不安定なのか、大きくなったり、小さくなったりしているが。
「せの・・・」
リナが、それを投げると同時に。 
嫌な予感がしてか、それは、いきなり飛び起きた。
・・・・ポビュ・・・。
飛びのいたあとが、見事に、虚無の空間と化している。
「・・・・(汗)いきなり何するんだぁぁ!!!」
あ・・危なかった・・・。 
もし、もう少し、目が覚めるのが遅かったら・・(汗)
それは、冷や汗をながしつつ、いきなり、叫ぶ。
攻撃を仕掛けられたのは、なんとなく想像はついたが。
その、攻撃があたった場所をみて。
思わず、絶句する。
そこは・・・。
まぎれもなく、一部だけだが、間違いなく、そこは虚無の空間と化していた。
・・・・こんなことが出来るのは?
「あ!!おきた!!おきた!!」
ぱちぱちぱち。
リナが手を叩いている。
・・・・怖いものしらずとは、このこと。
「・・・・・え?」
子供のような声がする。
ふと、横を見れば、まず、始めに、飛び込んできたのは、見覚えのある姿。
当然だが。
彼は、この姿になって、遊んでいた、エルと、もう一人から、さんざん遊ばれた経験を持っているがゆえに。
だから、彼は、反逆した。
・・・・無謀にも。
かなうはずもないのに。
全ての世界から。
金色の王から。
彼は、世界の歪みや、意識の強い念が、作り出した反逆者でなく。
元は、世界をまかされていた・・・魔王。
「・・え・・・・え・・・・エル・・・さ・・・ま?」
一瞬、様付けで呼んでしまう。 
普段は、呼び捨てに無謀にもしているというのに。
「??母様、知ってるの?・・だぁれ?」
きょんとするリナ。
「母・・・って・・・・・・・?!」
よく見れば、リナの雰囲気は、同じようで、全然違う。 
金色の王とは。
 警戒心も、何もなく、ただ、自分をじっとみつめているリナ。 
「ねえねえ?何で、あそこでねんねしてたの?」 
まったく、警戒などしてないリナ。 
恐ろしいとか、未だに何も知らないのだ。
これは・・・ひょっと・・して?
自分の創り主である金色の王の性格は、彼は、よく身に染みて分かっていた。
だからこそ。 
さかとは思うが、何となく想像がついた。
この金色の王にそっくりの子供が何なのか・・に。
天は、我の味方なり!
彼は、心の中で叫ぶ。
この子供を人質に、金色の王を脅す。
というのもできるかも!!
無謀なまでの作戦が、彼の中で、進んでゆく。


「リナ様ぁぁぁぁ!!!!」

森の方から、リナを呼ぶ声。
・・あれは・・・。
その声の主も、彼は知っていた。
「あ!!スティルバイト!!ここ!!!」 
ぶんぶん手を振っているリナ。
「・・・・スティルバイト!?」 
がさり。 
現れた、スティルバイトに、驚愕している彼。
「あれ?何だ・・・。ウクレック・・・?・・って!?何で、お前がここに!?」
「それは、こっちの台詞だ!!何で、スティルバイト、貴様がここにいる!?」
二人は、互いに顔を見合す。 
「?二人とも、知り合い?」
リナがきょんとしている。
「リナ様!!こっちへ!!」
ぐいっ。
リナを自分の方に引っ張り寄せるスティルバイト。 
「・・・何で、リナ様と、お前が一緒にいるんだ!?」 
スティルバイトがいうと。
くいくい。
リナが、スティルバイトの髪の毛を引っ張る。
「あのね。あのね、リナがね、ねんねしてたのをね、みつけてね、
  水で、ばしゃってやって、だめだったから、ちからでどんってやったらおっきしたの!」
・・・これで、意味がわかれば、すごいものである。 
しばし、考え込むスティルバイト。
「つまり、こいつが、またどこかの道端ででも寝てて。それをリナ様がみつけて。
  介抱しようとして、水をかけても、駄目だったから。力を叩きこもうとした・・と。」
ウクレックの横の方に出来ている、小さな虚無の漆黒の空間をみつつ、スティルバイトは、ため息一つ。 
よくまあ、リナのあの説明で、理解できたものである。
「いきなりだぞ!・・で?その子・・ひょっとして・・。あれの、子供じゃないだろうな!!あれならやりかねん!!」
「おいおい!!エル様をそんな呼び方するなよ!!
   いくら、お前が、気が触れて、反逆者の一味に加わったから・・とかっても。」
そう。
こいつは、エル様のお仕置きに耐えかねて、無謀にも、
そのまま、反逆者の一味の中に、駆け込み入信したという存在であったりする。

スティルバイトは、当然、一応、仕事仲間(?)でもあったので、彼のことは、知っていた。
スティルバイトのことにすれば、はっきりいって。
神々や、魔王達の間からは。

本人は、知らないが、カリスマ的な存在へと勝手に偶像化されていたりするのだが。
それは、スティルバイトは、まったくの預かりしらないこと・・・。


「??ウクレック?ウクレック?って、あの?
  母様が知識でくれた、あの、ユニット姉様と一緒に、ちょっと、遊んだら、ぐれたっていうあの?」
リナはいうが。
実は、リナは、ぐれた。
その言葉の意味を理解してなかったりするのだ・・これがまた。
まだまだ、これから、リナは、成長さかりである。
まだ、自我は・・真っ白な状態。
何色に染まるも。
全ては、本人と、その環境で決まってくる。
「あれがちよっとかぁぁぁあ!!!!って・・やはりか!!金色の王が、娘としてでも作り出したな!その子供を!!」
さすがに、よくお仕置き受けていただけに、エルの性格は、熟知しているようである。
エル達曰く。
ちょっと、遊んだ。 
まあ、彼が治めていた世界の百聞の一だけを覗いて。
そのまま、虚無へと還り行いた。
というだけのことなのだが。
しかも、その波動で。
彼の世界は、消滅してしまった。
些細なことだが。
しかし、叫んでいるウクレックを完全に無視して。
「いいですか?リナ様。知らない人に、ついていったりしちゃ、駄目なんですよ?
  エル様に、無謀にも、さからう人達がいますからねぇ。それとか、リナ様の容姿に引かれて、危ない存在も絶対いますからね?
  一人では、うろうろしない。これ鉄則。守ってくださいね?」
リナにいいきかせているスティルバイト。
「リナ、誰でもしってるよ?」
・・・・ぽん。
思わず、脱力するスティルバイト。
「いえ・・それは、そうなんですけど!つまり・・何といっていいのか・・ともかく、危ないんです!!!危険なんです!!!
  こいつなんか、これでも、末端でも、エル様に刃向かう組織の一任と、なってたりするんですか・・・・。」
「??母様に対する反逆存在??」
「そうです・・。」
「それって、何?」
どでっ!!
リナの台詞に。
おもいきり、無視されていた、ウクレックと。
ずべしゃ!!
リナの肩に手を置いて、説得していたスティルバイトは。
そのまま、土に、キスをしてしまった。
つまり、こけたのである。
「り・・リナ様ぁぁぁ!!!!!!(涙)」
これは・・。
エル様やルナ達・・・。
一番、面倒なところは・・教えてないな・・・。
はぁ・・。 
内心、ため息をつく。
つまりは、面倒なところは、全て教えろ。
ということか・・。
スティルバイトは、そう確信し、盛大なため息をつく。


    未来への希望 ACT-14  ~真実は・・・~





「リナ、本当に大丈夫なのか?」
やっと、部屋から出てきたあたしを心配そうにガウリイがいう。
丸一日。
あたしは、部屋に閉じこもっていた。 
どうにか、泣きはらした目も、呪文で解決してるし。
まあ、リカバディ程度なら、暴走する可能性もないし。
・・そう。
あたしは、今だに、ちょっと、あの日の期間中であるがゆえに。
「・・・大丈夫よ。」
まともに、ガウリイの顔が・・みれない。
・・・・聞きたい。
でも・・聞けない・・。
真実は・・・。
「そっか・・。」
ぽんぽん。
ぐしゃぐしゃ。
「だ・・だぁぁ!!髪をぐしゃぐしゃするのはやめい!!」 
「いいじゃないか♪」
まったく・・・・。
知ってるの?
あんたがあたしに触れるたび・・あたしがどぎときしてるの?
ずるいよ。
なんであたしばっかり、こんな想いをしないといけないの?
いい人がいるんなら、優しくしないで。
惨めになるだけだから・・・。
「じゃあ、リナ、少し早いけど、夕飯でも食べに行くか?」
今は、ちょうど、黄昏時。
「・・・そーね。」
そういや、あたし・・昨日の夜から何も食べてないし・・。

そのまま、無言の時間が過ぎながら、あたしとガウリイは、
酒場へと出向く。
何か・・気まずい。
ふと、ガウリイの視線が後ろを向く。
「・・・?ガウリイ?」
冷たい眼差し。
「・・あ??ああ、なんでもない。心配するな。」
ぽんぽん。
子供をあやす動作。 
だから・・子ども扱い・・しないで・・・。
あたしは・・・あたしは・・・これでも・・・。
一人の・・女なのよ?
だってもう、18だし・・・。
そう・・もう・・・。
・・・・馬鹿・・・。


ざわざわざわ。
あいかわらず、この酒場は、いろんな種類のやつでごったがえしている。
この前きたときのような連中もいるけど、それと同時に、まっとうな人々も入り浸っているんだから。
ほんとうにここの町は、面白い。
光と闇が、うまくバランスを取っているような、そんな錯覚に陥る空間と化している。



―かたん。
あたしと、ガウリイは、席につく。
ふと・・視線を感じた。
すぐさま、顔色が変わるガウリイ。
・・・?
「・・・ガウリイ?」
「すまん!リナ、ちょっと、用事ができた!!いいな!!絶対にここでまってろよ!!うごくなよ!!
   用事がすんだら、すぐに戻ってくるからな!!」
がた。
なぜか、剣をもち、ガウリイがとても真剣な瞳であたしを見つめる。
「う・・・うん。」
ガウリイの迫力にまけ、おもわずあたしは、うなづいてしまう。
「じゃ、ガウリイの分も、食べてもいいのね♪」
いつもなら、ずるいぞ!!
とかいうはずなのに・・。
「あ・・ああ。いいな!!絶対にここからうごくなよ!!」
そう釘をさして、店の外に出てゆくガウリイ。
・・一体?


リナと並んで歩いていると・・視線を感じた。
それも・・今度は・・かなり複数・・。
ちっ!!
その中には・・魔族の気配もある。
リナを不安がらせないように、とりあえず、酒場へと入って、料理を注文する。
・・・だが。
精神世界面からも、そして、この店の周りにも、そして・・このあたり、一体に、どんどん増えている暗殺者達の気配。
・・・・・・・ちっ!!
がたん!!
「すまん!リナ、ちょっと、用事ができた!!いいな!!絶対にここでまってろよ!!うごくなよ!!
   用事がすんだら、すぐに戻ってくるからな!!」
がた。
リナにまで殺気をむけるな!!
ガウリイは、剣のツカに手をかけて、リナに釘をさす。
真剣な表情で。
「う・・・うん。」
ガウリイの迫力にまけ、うなづくリナ。
こんなに真剣なガウリイは・・リナは見たことがなかった。
「じゃ、ガウリイの分も、食べてもいいのね♪」
・・・くす♡
やっぱりリナだよな♡
リナ・・お前は何もしらなくていい。
お前は・・俺が絶対に守ってやる!!
「あ・・ああ。いいな!!絶対にここからうごくなよ!!」
外には、キルの気配もある。


・・ガウリイは気づかなかった。
外のキルの気配は。
おとりだということに・・。
リナを酒場にのこし、ガウリイは、店の外にでる。


「・・・・・・・ルティッシュ!!」
ガウリイの言葉と同時に。
丁寧にも、暗殺者達のみ、ガウリイの張った、結界中に閉じ込められる。
無意識に、自らの本質の力を使いこなしているガウリイ。
人の身体だというのに。
それは、リナにもいえることなのだが・・。
リナの方は、人から生まれ出たのではない。
そういうふうに設定されているのだから。
ガウリイの方は・・期間限定のため。
・・・人の子として・・今。
ここに誕生しているのだが。
それは、リナもガウリイも、あずかり知らないこと・・。
「さて・・・覚悟は・・いいよな?」
リナをあまり、一人にさせるわけにはいかない。
ガウリイが剣を構える。
ブラストソードではなく、自らの力を刃としているその剣を。


ガウリイの張った、結界の中で。
声にならない、悲鳴と・・むせ返るような血の臭いが、充満してゆく。
手加減などはいらない。
「・・・さて・・と。依頼主の名前・・聞かせてもらおうか?」
冷たい瞳で、皮をはぎながらいうガウリイ。
「ひっ・・・。ひ・・ヒュールだ!!ガブリエフ家、長老の一人・・フェール=リペ=ガブリエフ!!た・・たすけて・・・く・・」
「そうか。」
ぼしゅ!!
頭が吹っ飛ぶ。
「あの・・長老か・・。」
ガウリイの瞳に殺意がこもる。
リナを巻き込んだ。
それだけでも・・。
十分すぎる理由である。
ゆら・・。
ガウリイの姿は、並いる暗殺者や、魔族をあっさりと、うち滅ぼして、そのまま、闇へと解け消えていった・・・・。



彼が情報をつかんだのは、ほんの偶然だった。
「・・・・ガウリイの旦那に・・知らせないと・・・。」
偶然につかんだ情報。
それは、あまりよくなかった。
彼の実家でもある一族の長老が懸賞を賭けていたこと。
そして・・・。
そいつは、ガウリイと・・リナまでもを暗殺の対象にしているということ。
・・・・そして。
こともあろうに、闇の世界では、有名な、一人の暗殺者に、それを依頼したこと・・・・。
早く・・早く・早く!
気があせる。
おそらく、あいつは、すんなりとリナとガウリイの弱点を見出すだろう。
しかも、あいつは、今、この町にいるらしいのだ。
あいつは、人の心の隙間につけいるのがうまい。
隙間を作りだすのを得てとしている。
さすがのリナも、ガウリイがらみだと・・。
どうなるか・・・。
かつて、ガウリイが、冥王にさらわれたときの、リナの悲鳴が、頭に残っている。
あのとき。
実感した。
何よりも。
いくら、つよがってても、リナは、単なる一人の女なんだって。
大切な人がいなくなると・・弱くなる・・と。
世界の消滅よりも、自分よりも。
自分の全てを投げ出し、引き換えてでも、ガウリイを助けようとしたリナ。
そして、自らの危険も省みず、リナを取り戻そうとしたガウリイ。
二人とも・・彼にとっては、とても大事な仲間であるがゆえに。
二人が悲しむ姿は・・みたくなかった。
以前の自分なら、こんなことは思わなかっただろう。
だが。
二人に出会って・・たしかに変わった。
いや、普通に戻れた・・というのかもしれない。
ただ、命じられるままに、悪行を重ねていた自分。
そして、この忌々しい身体。 
だが、彼らは、そんなことは、一つも気にしなかった。
心から、大切に思える仲間。
そして・・信頼できる仲間。
それが、彼らであるがゆえに。
かつてのつてを駆使して、ガウリイの家の状況を、さぐりまくって、ようやく、真実をつかんだ。
一刻も早く・・ガウリイの旦那に知らせなければ・・・。
取り返しのつかない事態・・にまではならない・・・と言い切れない。
・・・・何しろ、あのリナ。
そういうことには・・とことん・・疎いから・・・・。
簡単に、あいつの手に引っかかるだろう。
つまり、リナは気づかぬうちに、あいつの手の中に入る可能性が、なきにしもあらずなのだから・・・・。
全身を白いマントと、フードで覆い隠し、白尽くめの男性は、とりあえず、酒場へと出向いていった。 
宿できくと、酒場に出かけた・・といっていたがゆえに。


「はいよ!!おまたせ!!」
どん!!
ガウリイが席をたつのと、同時に、あたし達のテーブルに、食事が運ばれてくる。
ガウリイのことも気になるけど・・。
・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
料理優先♪
まあ、すぐにもどってくるって言ってたし♪
料理は冷めたら、おいしくないもんね♪
あたしに秘密にしてるガウリイなんて・・知らないんだから!!!
がつがつがつ!!
やつあたりのように、あたしは、運ばれてきた食事を食べ始める。
でも、やっぱり・・・。
一緒に食べるあいつがいないと・・どこかさみしい。
少し離れただけで、この胸の隙間・・。
「あれ♪またあったな♪リナちゃん♪」
またこいつか・・・。
あんたも・・しつこいわね・・。何よ・・。」
なぜか、ガウリイがいないときに限ってこいつ・・現れるのよね・・。
なんか、そのタイミングを見計らうように。
でも、あたしは・・こいつの目が好きになれない。
何か・・たくらんでいそうで。
・・・ガウリイも、こんなに積極的だったら・・どんなにうれしいか・・・。
まあ、あいつは、あたしを子供としてしか見てないから、無理な相談だけど。
黒い髪の男性―キルは、あたしの席の隣に座ろうとする。


そのとき、また、誰かが、この酒場の中に入ってきた。
何か、あれ??知ってる気配?
まあ、とりあえず、あたしは、食事優先っ・・と♪
「あれ?リナじゃないか?」
「・・・・ちっ・・。」
声とともに、舌うちするキルの声があたしの耳に届く。
あれ?この声?
ふと、みると。
そこに入ってきたのは、全身を白いフードとマントで覆っている男性。
「じゃあ、リナちゃん、俺はこれでな♡」
なぜか、そそくさと店をでてゆくキル。 
・・・・何だったんだ?こいつは??



もう一押し♪
今、リナ=インバースは、かなり不安になってるはずだ!
今回で決めてやる!
一度、デートの約束さえとりつければ、あとは・・この薬で・・ふふふふふ・・。
胸に収めた、二つの薬。
いくらリナ=インバースといえども、この強力な、媚薬にはかなうまい。
つまり、これは・・女の性を刺激する代物。
そして・・・身体の自由を奪うもの。
まあ、自由を奪うほうの薬は、原液だと、触れただけで、即死する強さだが。
強い毒は、薄めると、いろいろとアレンジが効く。
薬にもなれば・・こんなふうに。
ふ・・・・ふふふ・・・。
ぺろり。
リナの全身を嘗め回すように、見つめるキル。
リナは、食事で気づいてないが。
「り・・」
いいかけたとき。
「あれ?リナじゃないか?」
・・・・・ちっ!!
リナの知り合いが入ってくる。
せっかく!
ちらりとみると。
・・・まずい!
自分を知っているその姿。
全身白尽くめのその姿は・・・。
ここ、最近、全然活動してないが・・・。
「じゃあ、リナちゃん、俺はこれでな♪」
さりげなく、そいつに気づかれないように、店から出てゆく。

「・・まさか、白のゼルガディスと知り合いだったとはな・・。」
まあいい。
ガウリイは、当分、戻ってこれないだろうし。
まだ・・時間はあるさ・・。
ふふふふ・・・。
リナのいる酒場を眺めて、一人ほくそえむキル。
・・・リナ=インバースが出てきたときが・・。 
一度目のチャンス。
そろそろ・・さそうころあいだしな♡
キルは、にやりと、男の瞳で、あやしく笑っていた・・・・。


「・・リナ?あいつは?」
ゼルが、酒場から出てゆく、キルとかいうやつをにらみながらいう。
「あら?ゼルじゃない。ひさしぶりね!!・・・・何よ?あいつの知り合い?」
そう。
声をかけてきたのは、あたしの仲間。
ゼルガディス=グレイワーズ。
なんとも、偶然って、あるのよね♪
「知り合いって・・・リナ・・・あいつ知らないのか!?」
??
なぜか、瞳を見開くゼル。
「・・・・何よ?」
「・・・何も旦那から・・ガウリイから・・聞いてない・・のか?」
・・ずきん。
何で、そこにガウリイの名前がでてくるの?
動揺を押し殺し、さらに、ゼルを畳み掛けるあたし。
「・・・だから・・何?」
何をゼルはいいたいんだろ?
「あいつ、よっぽど、リナを巻き込みたくないんだな。でも、知っておいたほうがいい。リナ、お前は。
  ・・・実はな。疾風の豹ガブリエルに闇世界で懸賞がかけられている。というのは、リナ、知ってるか?」
「疾風の豹?・・・たしか、かなり有名な傭兵らしいわよね・・。」
かなり有名。
ゼフィーリアにまで、その名前は伝わってきていたから。
そういえば、ここ数年、その関係の話しを一度たりとても聞かないけど。
「それなんだがな・・・・。その疾風の豹の実家が・・。・・・・ガブリエフ家。そして・・・その人物のファーストネームが、ガウリイ。」
「・・・・ま・・・・ま・・・さ・・・・か・・・。」
声が震える。
まさか、ガウリイが!?
あの、凄腕といわれている疾風の豹、金色の獅子・・?
確かに。
ガウリイの腕は・・半端じゃないけど・・(汗)
「そう。ガウリイの旦那が、あの疾風の豹だ。
  つまり・・ガウリイは、今、あいつの実家から、一億という大金で、懸賞が賭けられている。・・・あいつの・・暗殺を・・な。」
「・・・・・・・・・・・な゛!!!!」
がたん!!!
あたしは、思わず、立ち上がる。
机の皿が一斉に、床にばらまかれる。
ガシャガシャガシャァぁぁぁぁぁんんん・・・・。
かなり派手な音がしているが。
あたしの耳には、何も届いてない。
・・・何・・何・・なに!?
ガウリイの実家が・・ガウリイの暗殺を・・懸賞を賭けている!?
・・・・じゃ・・じゃ・・じゃぁ・・。
ときどき感じていた殺気って・・・。
いわれてみれば、あたしとガウリイが歩いていると。
ときどき、殺気があたりからしてたりしたこともあったし。
ゼフィーリアでも・・・。
よろ・・・。
あたしは、どうにか、よろける自分をおさえて。
すとん・・。
力が抜けたように、椅子にもたれかかる。
あいつ・・そんな・・そぶり・・一つも・・・・。
あたしが、あいつが闇に通じている。
というのは、出会ったときに分かってたし。
でも・・それでも、あいつと共にいたい。
と思ったのも、あたし。
あたしの前では、全然そんなそぶりを見せなかったけど。
・・・もしかして?
気のせい・・と思ってた、ここ最近の多い視線って・・・。
・・・ガウリイを・・狙って・・・?
ずきっ!!
何で、ガウリイ・・そんな・・そんな重要なこと・・話してくれなかったのよ!!
心が・・痛い・・・・
「あ・・あいつ・・そんなこと・・ひとこと・・・・も・・・。」
声が震えるのが自分でもわかる。
じゃあ・・今まで・・あいつが・・・。
あたしに隠れて・・何か出かけていたりしたのは・・・・
「あいつのことだ・・・。お前を巻き込みたくなかったんだろ。」
ゼルがやっぱりな、という表情でいっている。
そんな・・あたし・・あたしは!!
「そんな!!あたしは・・・あたしはガウリイとだったら!!!」
あたしは、あいつとだったら、たとえ・・地獄まででもついていくのに・・っ!!
たとえ、誰が許さなくても。
あたしは・・あいつを愛しているんだから・・。
あいつとだったら、どんなことでも耐えられるから。
一人で何も知らずに、守られるより、あたしも、あいつを守りたいから。
あたしがそんなことを思っていると。
外にでていった、キルとかいうやつをみつつ、ゼルがいう。
「それとだな・・。あいつ・・どうやら、ガウリイの暗殺・・受けてるぞ?」
・・・・何ですって!!!?
あたしは、思わず、ゼルの口からでた言葉に耳を疑う。
「あいつのやり口は・・・闇の世界では有名だ・・・。」
有名って・・・。
やっぱり・・闇の世界の住人なわけね。あいつは。
あたし、なんとなくだけど、それ分かるから。
でも、だからといって、差別とかはしないけど。
人それぞれ。
理由もいろいろとあるから。
まあ、ゼフィーリアであたし・・育ってるからねぇ・・・。
「・・・・有名??」 
ゼルのことばに、思わず聞き返すあたし。
「あいつは、ターゲットの最も大事なものをまず奪う。
  それが女なら、構わずに奪い姦り、そして・・ターゲットを殺す。・・・無論、女の前で。」
「・・・な゛!!!!?」
思わず、あたしは、絶句する。
・・・なんてやつ!!女の敵じゃないのよ!!!
「ふっ・・・。どうやら、・・ガウリイに対して・・リナ。お前をそれにする気のようだな・・・・。
   ・・・・モーションかけてるだろ?あいつ?リナ、お前に。」
モーション?
それは分からないけど・・・。
「・・・多分。」
でも、分からないけど、あいつの言葉で、不安になっていたのは・・事実。
「・・・・鈍いなぁ・・・。相変わらず。ガウリイが苦労するわけだ。」
ガウリイが苦労するって?
あいつにとって、あたしは、単なる保護対象でしょ?
「??何いってるの?ゼル?ガウリイは・・あたしのこと・・・。」
子ども扱いしてるし・・。
そういいかけてやめる。
「はぁ・・・。」
なぜか、そんなあたしをみて、盛大にため息ついてるゼル。
「・・・リナ、お前・・とことん鈍感なんだな・・。」
「ちょいまて!何よ!!その鈍感って!!」 
「鈍感だから、鈍感なんだ!旦那の気持ち・・分かってないだろ!?」
??
「何いってるのよ!ガウリイは、あたしのこと、子供にしかみてないわよ!」
「・・そーよ・・・・いくら・・いくら・・あたしが・・あいつを・・好きでも・・。」
最後の方は、泣きそうになってしまう。
「・・・・・・・・・・鈍感。」
なぜか、頭を抱えているゼル。
何よ?その鈍感って・・・・。
あいつが・・あたしを・・思ってるわけ・・ないじゃない・・。
でも・・すると・・・何!?あたし・・あたしは・・・・・。
ガウリイを殺そうとしているやつに・・心が揺れたの!?
一瞬でも!?
そんなたわごとに心が揺れてたの!?
あたしが・・ガウリイの足手まといに・・!?
・・いや!
そんな・・・そんなの・・いや!!!自分が許せない!!!
かたん。
あたしは、無造作に立ち上がる。
・・・決着は・・自分でつける。
あいつの手は・・わずらわせない。
「リナ?」
立ち上がった、あたしにゼルが声をかけてくる。
「サンキュー。ゼル・・・。決着は・・・自分でつける。」
そのまま、あたしは、酒場を出てゆく。
「お・・・おい!!!!リナ!!!!!?」
・・・あたしだって・・・・・。
ガウリイの役に立ちたいの・・・・。ガウリイ・・・・。
 
何かいっているゼルを酒場に残し。
あたしは、一人で、ガウリイが待ってろ!
といった、酒場を後にする。
空は・・澄み渡るほどに満点の星。
星よ、お願い。
あたしに・・・力を。
あいつの足手まといにならないように。
あいつの手助けに少しでもなるように。
あたしが一人で道を歩いていると思ったとおり。
「リィナちゃん♪何、一人で空みてるのかな♡」
闇からそいつが現れる。
・・・来たわね。
「別に。何のようよ?」
「薄情なガウリイなんて、ほっといて♡俺とデートしない?リナちゃん♡俺は、リナちゃんを悲しませるようなことはしないしな♪」
・・・なるほど。
そういうこと・・か。
あたしを散々不安にさせといてから。
ころあいをみて、あたしを誘う。
この方法なら、普通の女性だったら、この甘い言葉に、載せられてしまうだろう。
キルは、この方法で、今まで、女性を奪ってきたのだろう。
手馴れているのが、よくわかる。
「・・・いーわよ。一度くらいなら。付き合っても。」
あたしから出向こうと思っていたところだ。
決着をつけるために。
「へえ♪じゃ、いこうか♡」
「・・・今から?」
「そう♡」
確かに。
くずくずしていると・・ガウリイが戻ってくるだろうし。
何よりも、ガウリイが一緒だと。
あたしは、こいつに落とし前がつけられない。
「いーわよ。」
後悔させてやる。
あたしを利用しようとしたことも。
ガウリイを暗殺しようとしたことも。
だから・・・・。
「場所は・・あたしの好きな所でいい?」
「もちろん♪リナちゃんがいうのなら、どこにでも(はあと)」
・・・罠にはまったようで、あんたがあたしの罠にはまったのよ。
・・・けり・・は・・。
自分で・・つける。
ねえ?
ガウリイ?
だから・・あたしにも手伝わせて。
彼方の役に立てるように・・・。


                   -続くー

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まえがき:
こんにちわ♪
サーバーに確認したところ(メールにて)なんか、容量のサーバー側の、関係で、アップロードとかができない状態になってたらしいです(汗)
多分、もう、大丈夫・・だと思うんですけど・・・・(涙)
あと、それと、小説更新。
猫が脱走した!?というので、探しまくってて、(でも、実は、家のベットの下にいた)時間がなくなりました(汗)
というわけで、今日の打ち込みは・・しくしくしく・・・。
ではでは。そろそろクライマックスです♪
未来への希望♪今回、リナがゼルガディスと出会います♪
では♪ACT-14です♪
ちなみに、知ってる人は、しってます(爆!!)
二部の展開の最終・・とある人達には、送っているので・・(笑)
そこの回想であったシーンですし・・(爆!)
ではでは♪


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あとがき:
薫:・・・・・・・・・・・・・。
  とうとう・・・画像まで表示されなくなってる・・カウンタ・・(汗)
  昨日は・・ちゃんと作動してたのに・・なぜ!?(涙)
  まあ・・それは・・おいといて・・・・。
  次回・・・・・。キルとリナの・・決着?リナが・・毒牙に!?
  ・・・・・つまりは、プロローグに入ってゆくのです・・・。
  しくしくしく・・・・・。うう・・・・くらいぃぃぃぃ・・・・。暗すぎるぅ・・・・・・・・。
  あと、リナがキルと対峙して、そして、身体の自由を完全に奪われて。
  純潔が怪しくなって、でも、リナが持ち前の精神で、それを撃破(でも、身体は動かないから・・・ラグナブレードを・・涙)
  そして、ほろびゆくキルと、雑魚魔族。ガウリイの駆けつけと、リナの幼児化。←つまり赤ちゃんへ・・(汗)
  そして、ガウリイとルナの会話と。ゼフィーリアでの会話。
  そして・・ガウリイ達がいなくなったあとに、現場にかけつける・・ゼル。それで、終了♪
  そーして・・・二部に♪となってるのだが・・・・(汗)
  多分、あと、ニ三話で終了するはず♪
  では・・・・・・。

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