エターナル・スレイヤーズ     ~第2話~




ぐらり。
一瞬、めまいがしたかのような感覚。
「・・・・・・・・・・・まさ・・・か。」
ずっと感じていた気配が、今まさに、ぷっつりと途絶えた。
そして、それはどうやら横にいるガウリイも同じらしく。
「・・・・・・・リナ?これは・・・・」
難しい顔をしているガウリイ。
別れても、だけどもずっとそばにいる感覚はあった。
それなのに・・・・
ガウリイも何かその天性の野生の勘にて、あっちが無事なのを確認していたようだけど。
だけど、それがぷっつりと途絶えたのだ。
だけども、わかる。
失っては・・・いない。
だけど、これは・・・・
「リナ!?これは!?」
ガウリイの表情が険しい。
くっ。
こんなときに・・・・
あたしたちは、今。
ヴェゼンディを後にして、ガイリア・シティにと向かっているそんな中。
何か魔族たちがあたしをダシに何か考えているのはわかってはいるけど。
それでなくても、今はどうしようもなかったとはいえ。
力がほとんどというか、大半失われているそんな状況。
そんな状況でも、あちらも一人でがんばっている、それがわかっているからこそ。
自分でどうにかしよう、と思っていたその矢先。
どうもあたしをテストしているらしい黒いゴキブリ神官はそのことには気づいてはいないらしいけど。
「・・・・・ガウリイも感じた?」
常に言葉には出さないものの。
だけども、ガウリイもまた、あのときのことを気にしていたらしく。
常に気を配っていたのをあたしは知っている。
「・・・・・まさか、リナ、あそこに戻って・・・・」
顔色を変え、何やらいってくるガウリイにふるふると頭を横にふる。
ガウリイと今後の話を宿屋の中でしていたそんな中。
ふと感じた喪失感。
「・・・・だめよ。あっちの『あたし』の気配は・・・・途絶えたわ・・・・」
そう、ここには感じない。
だけども、失っていない、というのはわかる。
自分の精神の一部である。
失えば私にはすぐにわかる。
だけども、確かに、あちらの『あたし』すなわち精神の一部は。
確かに今現在、ここには『存在』していない。
強大な力の渦に飲み込まれたかのような。
それでいて、自力で何かから逃げようとした結果。
別の時空にと迷い込んだのは・・・・何となくだけどあたしにはわかること。
「リナ・・・・」
顔色をかえ、そして、あたしをふわり、と包み込むようにして抱きしめてきているガウリイ。
そんなガウリイの腕をきゅっとつかむ。
こいつはこういうとき、あたしが不安になっているとき。
何もいわなくても、ぬくもりをくれる。
それがあたしにはとてもうれしく、そして・・・・なぜだか彼に頼ってしまう自分に戸惑いつつも。
「大丈夫よ。あっちの『あたし』は死んではいないから。」
そう、消失・・・・否、死んではいない。
それがわかるから。
「とりあえず、今何でかガーヴとかに狙われているこの現状をどうにかして。それからあっちの『あたし』の消息、探しにいくわ。」
あたしのその言葉に。
「ああ、そうだな。なるべく早くリナがリナに戻れるように、今度こそ何があっても、リナ、守ってみせるからな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・馬鹿。」
こいつは、あのとき。
あたしをとある意味で助けられなかった。
というのを今までずっと後悔している。
別に何の係りも、ただの旅の連れ、となったあたしのことに関して、ここまで気に病む必要もないのに。
だけども、その心が・・・なぜかうれしい。
そんな会話をしていると、ふと気がつくと、すでに夜は更けている。
「ガウリイ、とりあえず、今日はもう寝ましょ。お休み。また明日。」
「ああ、またな。」
ガウリイの部屋にて話をしていたあたしは、そのまま。
ガウリイの部屋を後にしてゆく。
何だか先ほどガウリイに抱きしめられたぬくもりをくすぐったく感じつつ・・・・






あたしが、『あたし』と出会うのは・・・・
それからさらに先のことなるのなどとは。
いったいこのときのあたしにどうして想像ができたであろう・・・・
そして・・・・・・『あたし』としても・・・・・







くっ!
どうにか逃げ切ったのはいいものの。
だけども、出た空間は知らない空間。
何らかの力の渦が、波がうなっているそんな空間。
巨大なる力の流れ。
これは・・・・
この感じは覚えがある。
確かまだあたしが一歳に満たないころ。
姉ちゃんが、精神を鍛えるため、とか何とかいって。
何やら似通った空間にあたしを叩き込んだことがあった。
それに似ている・・・・のだ。
ここは。
あのとき。
確か、姉ちゃんは何といってた?
確か・・・・
「・・・・・・時空流・・・・・・」
時間とは、川の流れのごとく。
過去があれば未来があり、そして現在がある。
あまり知られていないようではあるが。
それら時間は、とある空間では、まるで川の流れのようにして存在している。
それは、精神世界というか、まったく異なる次元にと位置しており。
といっても、物質世界・・・つまりは、あたしたちが暮らしている世界とは、表裏一体。
つまりは、どこにでもあるようで、どこにでもない。
そんな場所にとある、その空間。
そんなまるで川の流れのひとつの本流に。
あたしの意識はひっばられてゆく。
抗おうにも、力がはいらない。
よく、神隠し、とかいろいろと騒がれたりするのは、ふとした弾みでこの流れにつかまり。
過去に・・・・そして、未来に。
またはまったく異なる場所にと流されてしまうがゆえ。
それらは姉ちゃんの訓練というか学習にてあたしは知っている。
「・・・ちょっ!?」
どうにかして、この流れから抜け出さないと。
というか、どこに流れていくのか、わかんないじゃない!?
あたしは・・・・・・あたしはまだ、遣り残したことは、たくさんあるのよ!?
それに、まったく気づいてないらしい、もう一人のあたしに、自分の気持ちを知らしめることすらも!?
主に深層意識を振り分けたあたし。
ゆえに、自分があいつのことをどう思っているのかは。
どうやらあっちは気づいてないようだけどあたしはわかっている。
だからこそ!
あたしは、ほしいものは絶対に!何が何でもあきらめるなんてことはしたくないのよ!
だけども。
「うっきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
あたしの思いは何のその。
あたしはまるで、その時間の流れの渦にとそのまま飲み込まれてゆく。
冗談!
つうか、ここであたしがまったく違う場所にいったら、元の力とりもどせないじゃないのよぉぉぉぉぉお!?

精神体の中にまで入ってくる、力のうねり。
それに抗っていることしばし・・・・
あたしは、やがてそのまま意識をうしなってゆくのを自分でとらえつつ。
そのまま、意識は・・・・闇に沈んだ。





うっ・・・・・
まぶしい。
チチチ。
小鳥のさえずりがどこかから聞こえる。
ぼんやりとする意識の中で見えたものは。
そこにあるはずのない地面・・・
あたしは・・・・いったい?
「・・・・・・ヴァル・・・・ガー・・・・・ヴ・・・・・」
確か、あたしは、そういうやつに狙われ・・そして・・・・
ずきん。
頭が・・・いたむ。
そのまま、詳しく思い出そうとするのに、何か頭にもやがかかったかのよう。
しかも、今思い出した名前すら、何か頭の中にもやがかかったかのように・・・・
「・・・・うっ・・・・・」
肌に触れる風。
あたし・・・・・・・・外にでてるの?
そんなことを漠然と思いつつ、そのままあたしの意識は再び闇にと沈んでゆく・・・・








「・・・・って、まてぃぃぃ!」
思わず叫ぶ。
何なのよ!?これは!?
ゼフィーリアにと向かう途中。
なぜか立ち寄った村にて、あたしが知った事実。
それは、何でもあたしの偽者が、このあたりを荒らしまくっているらしい。
ということ。
おにょれ!?
誰だ!?このリナ=インバースの名前をかたるのは!?
村人たちの冷たい視線をどうにか説得、という方法で何とかかわし。
・・・・・・まあ、何でか【胸の大きさが違うから】という理由で、人違い、というのはわかってくれたようだけど。
ガウリイとそーいう関係になったのは、サイラーグを後にして少し。
まあ、その、何というか・・・・・・・
それ以後、あたしは夜、という夜は盗賊いじめができないままに。
しかたないので、夕方とかに盗賊いじめをして。
毎日のストレス発散をしている状態なんだけど。
そんな中。
ふとしたことで立ち寄ったとある村にて。
何でもあたしがこのあたりの村々から金品などを巻き上げている、祠の魔女、とかいうやつとそっくり。
というのが判明し。
思わず叫び、村人たちから聞き出して。
その祠にとやってきている今現在。
そして・・・・あたしの目の前にいるのは。
あからさまに、『あたし』そのもの。
あたしが叫ぶのも無理ない・・・と思う。
「つうか、誰よぉぉぉ!?あたしのコピー・・・ホムルンクスを勝手に作ったのはぁぁぁ!?」
あたしの叫びが洞窟の中にと響き渡る。
「何をいってるのよ。私が本物よ。」
いけしゃあしゃあとそんなことをいっているソレ。
ぷっちぃぃぃぃん!
「ドラグ・スレイブ!!!!」
あたしの目の前にいる、それ、すなわち、あたしの偽者に対して。
有無を言わさずにドラグスレイブを叩き込んだのは・・・・しかたないとおもう。
絶対に。
ちゅどごぉぉぉん!
ちょっとした街道から離れた森の中。
あたしの呪文が炸裂する音が鳴り響いてゆく。
まったくもって、何だっていうのよ!?
「おーい、リナ、少しは手加減してやれよ?」
あたしの横でにこやかに、何やらいってきているガウリイ。
「あのねぇ!あんなもん、ほっといたら、あたしが殺されるじゃないのよ!」
つうか、誰だ!?あたしのンナものを作ったのは!?
きっちりと見つめだして制裁くわえてやる!
あたしはそう、心に固く決心し。
クレーターと貸した元洞窟があった場所を眺めつつ。
一人、決意を新たに空を仰いでゆく。
まったく。
それでなくても、ようやく、行方不明になってた、あの気配を捉えたから。
そっちに向かっている、というのに。
迷惑なもんをつくらないでよね!
とりあえず、村に迷惑をかけていた、というあたしの偽者を倒してのち。
あたしとガウリイは、ゼフィーリアに向かうその前に。
やらなければいけないこと、というか確かめければいけないことがある。
というのでそちらにむかっているそんな状況。
まちがいなく『あたし』の気配が。
ラルティーグ王国の方からしているのはまちがいないし。
うん。
とりあえず、あちらのあたしが押さえ込んでるであろうアレを先に駆除するのが先決だしね。
また魔とかがかかわってくるまえに・・・・


                                -第3話へー

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まえがき:
 こんにちわ。
  ちなみに、時間率。
  『リナ』ちゃんがヴァルガーヴに襲われたのは。
  ゼロスがテストしているさなか。
  つまりは、リナちゃんたちがウェゼンディにてラルタークと戦った後です。
  あしからずv
  なので、ちょぴっと時間がもどったりv(かなりまて!)

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  あとがきもどき:
     薫:わかりにくいかな?とりあえず、リナの一人称ではありますけど。
       リナが二人(笑)いるんですよね。
       さってと、次回からは、記憶失ってるリナちゃんサイドが主かな?
       リナサイドと交互に時間率を明確にしつつ、ついでにゼロスもだしてやってくのです。
       それでは、皆様、また次回にてv


     2004年6月6日某日


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