管理人より:
さてさて。閑話でもある。ガウリイサイド、リナサイドはこちらからv
一息にもらっているのはうれしい限りなのですが。
管理人の編集スピードの遅さがまじまじとわかってしまう今日この頃(自覚あり・・・

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   アメリアの恋心    第2話




 
天は高く、雲は流れ、暖かい風は朝食時の家々から、芳しい匂いを運んでいる。 
内陸とはいえ大きな町なので、それなりに材料も新鮮で、
大通りの一角にある宿屋件食堂も例外ではなく、肉や卵の焼ける匂いを辺り漂わせていた。
「・・・で?いい加減食い終わったのか?」
間違いなく他の客に引かれているだろう食べっぷりを疲労したリナとガウリイに、ゼルガディスは店員を促しながら訊ねた。
天晴れプロ根性とも言うべき力技で、
うず高く積まれた皿を片付けていく店員を、アメリアは感心して眺めている。
昨日までの落ち込みぶりが嘘のように、アメリアは今朝はよく食べていた。
ゼルガディスが喜んでくれるなら、たくさん食べて元気な赤ちゃんを産まなくては!
そういうアメリアの誓いを知ってか知らずか、たぁまにリナ達のテーブルから、
お皿に料理を取り分けてくれるゼルガディスが嬉しくて、アメリアはご機嫌だった。
いつものリナだったら、それこそ蹴りの一つや二つ飛んでくるところだが、
今日に限ってはそんなことはなかったので
(リナさん、何かいいことあったのかしら)
と思い違っているアメリアだった。 
実のところリナは、ついついよからぬ想像が頭を過ぎり、
アメリアとゼルガディスを直視できないだけだったのだが。
「ったく、せかさないでよ。なぁに、話しって?」
努めて平然を装うリナだが、心なしか顔が赤い。
そんなリナを、可愛いなぁ、と見ているガウリイ。
(話しって昨日のことよね・・・?ゼルってばやるじゃない。みんなの前で報告なんて(はーと))
「俺は、2、3日別に動く。」
「・・・はあ?」



まだ薄明るい早朝。 
ゼルガディスは、隠すつもりがないのか高く響く足音で目が覚めた。
腕の中で眠るアメリアを軽くゆすって起こすと、まるで見計らっているかのように扉がノックされた。
「誰だ?」
「・・・ルナ=インバースと申します。」
どこか知った響きのある、若い女性の声だった。
「・・・?インバース!!?」
インバースといえば、言わずと知れたリナの姓である。
眠い目を擦っていたアメリアの瞳が見開かれる。
思わず二人は顔を見合わせた。
「はい。あなた方もよくご存知の、リナ=インバースの姉です。」
「んなっ!?」 
思わず大声を出しそうになったアメリアの口に、ゼルガディスは慌てて手で蓋をする・・・が間に合わず、
アメリアはベッドの上に立ち上がり、扉を指で指した。
「こんな時間に、そんなわけのわからないことを言って、
  わたしとゼルガディスさんの愛vの時間を台無しにするとは、すなわちそれは悪!!
    大人しく帰っていただけないのなら、このアメリアが・・・むぐぐっ!」
まったく、こいつは、どうしていつも話をややこしい方へややこしい方へそらしまくるんだ?
ヒートアップするアメリアの口をとりあえず塞ぐと、視線を扉の方へ向けて頷く。
扉に向かって目で合図するゼルガディスを見て、アメリアは、ゼルガディスの服を掴んだまま目を閉じ、気配を探った。
アメリアは巫女というだけあって、そういう気配を見ることが出来る。
つまり、わかるはずのないことでもわかってしまうことがあるのだ。
(え・・・?この感じって?)
アメリアは一瞬自分を疑った。
―・・・ゼルガディスさん
―何かわかったか?
―いえ・・・あの、神気が 
―神気?神の属性って事か?竜族とかエルフとか?
―いえ・・・そうではなくて、もっと神の本質に近いと思います。あの・・・  よくわからないんですけど
「『赤い竜神の騎士 スィーフィード・ナイト』と呼ばれることの方が多いですが。」
二人にしか聞こえないような小声で話していたゼルガディスとアメリアの会話に入る様に、柔らかい声が響く。
「あまり時間がございませんので、出来ればお部屋に入れていただきたいのですが。
   セイルーンの巫女頭たるアメリア様でしたら、一目見ていただければお分かりになっていただけると思います。」 
ふと、ゼルガディスは、その声が耳に聞こえているのか疑問に思った。
よくよく耳を澄ませば、鳥や虫の鳴き声一つ聞こえない。
アメリアもそれに気が付いたようで、身体を緊張させている。
結界か。
もしくは、空間が切り離されているのかもしれない。
「ゼルガディスさん・・・」
「わかってるさ。」
試しに召還魔術で歪を破ろうと試みるが、魔術自体が発動しない。
「どちらにしても、話を聞くまでは外に出さないって腹か?」
「申し訳ございません。」
「・・・入れ。」 
ゼルガディスは声を低くして言った。
鍵を掛けていたはずの扉は、留め金の軋む音だけさせて開いた。
中に入ってきたのは、年の頃なら25歳前後。
紫がかった黒い髪に、リナと同じ赤い瞳をした女性だった。
確かに顔立ちが、リナとどことなく似ている。
リナ云々はまったく信用していなかったゼルがディスは驚いた。 
アメリアも同様のようである。
「あの・・・リナさんのお姉さん?」
「ええ。お初におめもじ仕ります。
  ゼルガディス=グレイワーズ様、アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン様。
  私はルナ=インバース、スィーフィード・ナイトとも申します。」
確かに、何か危害を加えるようには見えないが、
優雅に膝をつき一礼する姿は、リナととても似ても似つかなかったので、警戒を解くことは出来なかった。
ゼルガディスは背後にアメリアを庇う。
「まずは、アメリア様。ご懐妊、心よりお喜び申し上げます。」
「!!!」 
アメリアの顔が、首まで真っ赤に染まる。
「ありがとう・・・と言いたいところだが、何故知っている?」
「それは、説明させていただくよりも先に思い出して頂いた方がよろしいかと存じます。」
「思い出す?」
ゼルガディスの言葉が言い終わる前に、その女性の口が小さく動いたかと思うと、
ゼルガディスとアメリアの身体は見たこともない魔方陣に包まれた。
赤い光は、決して禍々しい物ではなく、春の風に色をつけたらこんな感じになるのではないか、
というような色で淡く光っていた。
ゼルガディスもアメリアも、まるで金縛りにあったように動けない。 
凄まじい量の知識の本流が、身体を駆け巡っていく。
やがて身体が被り物を脱いだかのように身体が軽くなると、
パシュッと小さな音共に魔方陣が消え失せ、
ベッドの上で足場を失って倒れそうになったアメリアに、ゼルガディスは慌てて手を伸ばした。



ユレイア。
ユーシア。
ユニット。
スミレ。 
幻影宮。
エル。
赤の世界。 

映像が。

声が。




「ゼ・・・ゼルガディスさん・・・わたし、何かとんでもないことを思い出してしまったんですけど・・・。」
アメリアが、ギギッと音がしそうなほど固くなりながら、ゼルガディスの顔を見た。
呆然としているのはゼルガディスも同じである。
「安心しろ・・・俺もだ。」
何を安心しろというのか、呟いた声がうわずっている。 
日常で聞いているように響く、奏でられる管楽器のような声と、鈴を鳴らすような声。
言葉。
まるで昨日のことのように思い出される、会話や映像。
それが、当然のように、記憶の棚に整理されていく。
「そうか・・・ルナ=スィーフィードはスィーフィード・ナイトとして転生を繰り返している最中だったな。」
「左様でございます。」
もう一度深く頭を下げた女性の顔は、確かに見知っていた。
ルナ=スィーフィード。
赤の竜神の本来の名である。
かつて赤の魔王シャブラニグドゥと戦い、力の大半を失った。
今はスィーフィード・ナイトとして人間の身に転生を繰り返しながら、失った力を取り戻している最中なのだ。
かつて、ゼルガディス=グレイワーズとして転生する以前に、
エル、つまり『金色の魔王 ロード・オブ・ナイトメア』に紹介されたことがあるのだ。
俺はユニット『宇宙の姫 ユニバーサル・オブ・プリンセス』の腹心、もとい子守り役。
ユニットの全ての世界を統括していた。
ここ、赤の世界はロード・オブ・ナイトメアの作り出した世界。
ユニットは、彼女と同じ混沌そのもので、つまりこの世界とは別の世界の創造主、というわけだ。 
俺とアメリア、2000年ほど前からこちらの世界に来ていて、
今回全ての記憶と力を封じられて赤の世界の人間として生まれた。
確か、エルの世界の見学ついでに、ちょっとお休みしてきなよ、
とかユニットが言い出して、エルも面白がって、
気が付いた時にはエルの世界の輪廻の輪に無理やり捻じ込まれていたのだ。
「何故だ?ここでの生に関しては、スミレもエルも干渉しないんじゃなかったか?」
スミレとはユニットの愛称である。
まあ、そう呼ぶのはゼルガディスとアメリアくらいなもんだが。
アメリアも同じくスミレの眷属。
ゼルガディスとは違うベクトルで作られた、いわば対になる存在なのだ。
スミレの世界には、エルの世界で言うような『神』と『魔』というような存在はいない。
アメリアとゼルガディスとその彼ら二人の眷属が、その時々によって、神となり魔となる。
つまり、ゼルガディスとアメリアはこのエルの世界から見れば異質の存在である。 
 彼らが相当の力を持った存在で、確固たる魂を持っているからこそ、存在できるようなものなのだ。
ただ、いくら人身に封じられているとはいえ、そんな存在がいれば当然世界に歪みが生じる。
そのため彼らには数々の封印が施されていた。
アメリアにはセイルーンの結界。
もともとこれは、アメリアが転生するときのために、エルとスミレが手をかして作ったものだった。
ゼルガディスにいたっては、記憶が結界が綻びそうになった結果、
魔王シャブラニグドゥの力で合成獣にすることで、覚醒を防いでいた。
本来ならば、一世界の神魔の力で、彼らの力を封じることは出来ない。
だから、エルフでも竜族でもなく、人間という小さな枠にはめ込んだのだ。
今回、スミレもエルも無干渉、傍観を決めこむ筈だった。 
覚醒しようがしまいが、どちらにしても、人間の身である以上、
ゼルガディスもアメリアも本来の力のほとんどを使うことが出来ないからだ。
「全てを思い出したわけではないが、それは間違いない。」
「私も、詳しいことは存じません。」 
考え込むゼルガディス言葉に、スィーフィードは頭を下げたまま答える。
はっと、ゼルガディスがアメリアを見る。
「アメリア、お前・・・ここの所身体の調子がおかしいとかないか!?」
「ええっ?それは・・・赤ちゃんがいるんですから多少は。でも、普通なんじゃないですか?」
「・・・・・。」
「ただ、不思議なんです。その・・・妊娠している時って魔力が落ちるはずなんですけど・・・
  むしろ上がっているような気がするんですよね。
  だからわたしも、このことにはお医者さんに行くまで気が付いていなかったんです。」
ゼルガディスが絶句する。
そして、二人の顔が頭に浮かぶ。
「まさかとは思うが・・・この子供は、ユレイアとユーシアだな?」
スィーフィードは無言で頷く。
ユレイアとユーシアは、アメリアとゼルガディスの最初の子供だった。 
ユレイアは長男でアメリアの補佐をしており、ユーシアが長女でゼルガディスの補佐をしていた。 
今は彼らの居城である幻影宮で、ゼルガディスとアメリアの代理をしているはずだった。
だが、アメリアの胎内にいるとしたら・・・。
アメリアの魔力が上がったことも頷ける。
しかし、とりあえずはただの人間の身で、ゼルガディスとアメリアと同じ全く異質の魂を胎内に宿しているとしたら、
それはとても危険なことである。
少なくともアメリアの身体はもたない。
「だから、今日になって見計らったようにやってきた・・・というわけか。」
昨日までは、アメリアが子供を生まない可能性があった。
その時は、今までどおり放って置くつもりだったのだろうが、そうではなくなった。
この状態でアメリアが傷つけば、アメリアだけでなくユレイアとユーシアの魂も相当に傷つく。 
スミレもそれでは困るだろう。 
ただでさえ荒くれ者や向こう見ずの多い幻影宮。
自分が遊びまわった世界の片付けをできる者が少なくなれば、
スミレとてやりたい方題するわけにもいかず、面白くないのだ。
「あの・・・ゼルガディスさん?わたし、全然話が見えないんですけど。」 
アメリアがゼルガディスの服を引っ張る。
「うん?・・・あ、ああ。いや、人間の身体に戻る方法がわかったんだ。」
正確には、それしかない事が確認できたと言うべきだったが、それは口にしなかった。 
ゼルガディスは不思議だった。
合成獣にされたものは、ほぼ例外なく自分のようにかろうじてでも人形を取ることなどありえない。
そもそも人間のゼルガディスよりもキャパシティも能力も高い邪妖精などを、
ゼルガディスをベースにして合成など出来るのだろうか?
レゾがそれだけ凄かったと言えばそれまでだが・・・。
まあ、魔族との合生体などという物もいるにはいるが、
みな、知らず知らずのうちに乗っ取られているものである。
だが、魔王の力でそれをしたのなら話は別である。 
と考えると、この身体は魔王でなければ元に戻せないのではないか?
となれば、カタートで氷漬けにされているゼルガディスの先祖、
魔王の本体であるレイ=シャブラニグドゥに話をつけに行くしかない。
そしてそれが可能であることもわかっていた。
何故わかったのか・・・それは何となくと言うしかないが。
かつて、リナに降臨した金色の魔王を見たときに、それがわかったのだ。
とは言え、いくらなんでも魔王に治して貰うというのは御免被りたかったので、
自分の力で何とかしたかったのだが。
アメリアが身篭ったとなれば、おちおちしているわけにはいかなかった。 
フィルさんはともかく、他の連中はそんなことを許すまい。
「本当ですか、ゼルガディスさん!!?」
アメリアが顔を輝かせ、ゼルガディスの服を掴みなおすと、
そのまま彼の身体をガックンガックンと揺らした。
「ああ。」
アメリアの手を抑え、大人しくさせると、ゼルガディスは頷く。
今までの話で、どうしてそれがわかったのか、という疑問はアメリアの中にはなかった。
ただただ嬉しかった。 
(すごいですぅ!ゼルガディスさんあんなに元の身体に戻りたがってたんですから!
   これも、正義を愛する心が通じたのですね!!素晴らしいです!
   ああ、でもでも、今のゼルガディスさんも素敵ですし☆
   あ、でもでも、元に戻ったゼルガディスさんもとっても素敵なはずですv早く見たいですぅ~)
「ゼルガディス様には、それはもう幾重にも封印の輪がかけられております。
私が解いたのはその半分。
後の半分はシャブラニグドゥが赤法師レゾを介してかけた物ですので、私には解けません。」
「わかっているさ。」
アメリアが、人間版ゼルガディスの妄想を膨らましていて話を全く聞いていないので、
ゼルガディスとスィーフィードはさくさくと話を進めていた。
とりあえず、今のままではアメリアの身体がもたないこと。
何とかするためには、アメリアの封印を解くのが一番だが、
いくらなんでもセイルーンの六紡星をプチ壊すわけにはいかないので、ゼルガディスの封印を解いて、
せめてアメリアの身体を支えるだけの力を使えるようにならなくてはいけない事。
その為には、とりあえず魔王に封印を解いてもらわなくてはならないが、それはルナ=スィーフィードが手筈を整えるという事。
今日の夜、スィーフィードがもう一度来て、その足でゼルガディスとスィーフィードはカタートに行くという事。 
その他、もろもろの事を取り決め、スィーフィードは姿を消した。
薄明るかった空は、まだ早朝ではあったが、もう新しい一日に相応しく晴れ上がっていた。




「・・・というわけなんだが・・・聞いとんのかお前は!?」
まだ半分妄想の世界から帰ってきていないアメリアの頭に、ゼルガディスの拳骨が降った。
「いったぁい・・・ひどい、ゼルガディスさん。ちゃんと聞いてるじゃないですか。
   身体を治す為に出かけるんですよね?ちゃんと準備しますってば!」
「聞いてないじゃないか。」
ゼルガディスが溜息をつく。 
まあ、期待はしていなかったが。
ゼルガディスとしては、当然身重のアメリアを、カタートなんぞに連れて行く気はない。
とは言えアメリアがそれに頷くはずはなく、
大人しく留守番をして貰うために説得を繰り広げていたのだが、案の定アメリアは聞いていなかった。 
怒って膨れたり、瞳をウルウルさせるアメリアを宥めながら、
何とか説得を繰り返し、ようやく納得して貰った時には、もう下の食堂から朝食の音が聞こえてくる時間だった。
「わかりました。ゼルガディスさん。愛と正義の名のもとに、アメリアは立派に留守を守って見せます!」
「・・・頼んだぞ。」 
『愛と正義』の辺りに、ゼルガディスの苦労がうかがえる。 
とにもかくにもアメリアを説得することに成功し、ゼルガディスは胸をなでおろした。
何でこんな見も蓋もない女に惚れちまったんだ、俺は・・・今も昔も。
ゼルガディスの心の呟きを聞く者は誰もいない。
「それはそうと、スィーフィードの事はリナ達には黙ってろよ?」
ルナ=インバースがスィーフィード本人だという事実は、今はまだ知られるわけにいかない。
当然、ルナがここにきた事も、今リナにばれると、厄介な事になる事うけあいである。
「はい!もちろんです!!正義に誓って言いません!!」
「・・・・・そうか。」 
ガッツポーズをするアメリアを、本日何回目かの溜息をつきながら、ゼルガディスは着替えのために部屋に返した。
とんでもない事になっちまったな。
昨夜アメリアの爆弾発言を聞いて・・・ 
少なくとも良い方に話は進んでいるはずなのだが・・・ 
あまりに速い展開に、一抹の不安を覚える。
何か、途方もない事の前触れなのではないだろうか、と。
まあ、なるようにしかならないか。
そういえば、ルナ=インバースは、
あのボウギャクブジンを絵に描いたようなリナとは、似ても似つかなかったな。
少なくても、あのリナがあそこまで怯えるほどには見えない。 
そんな事を考えているうちに、アメリアの元気のいい足音が響いてきた。
「ゼルガディスさん!朝ごはんですよ!早く行きましょう!!」 
アメリアの笑顔があれば、どんな事でも乗り切れる。
口には出さずにそう思いながら、ゼルガディスは立ち上がった。
幸い、食堂にまだリナとガウリイの姿はなく、
アメリアと一緒に行くところを彼らに見られる事をちょっと心配していたゼルガディスは、安心した。



「何言ってんのよ、ゼル!?アメリアはどうするのよ?」
ドンッ!
リナがテーブルと叩いた勢いで、水の入ったグラスが倒れた。
ああ、そうか。こいつは昨日立ち聞きしてたからな。
そんな事を知らないアメリアが、キョトンとした顔で訊ねる。
「どういう意味ですか、リナさん?」
「どういうも何も!アメリア、あんたそれでもいいの!?」
「別に、いつもの事じゃないですか。」
「いつもの事って!?」
まあ、確かにゼルガディスは度々別行動をとっていた。
大概、アメリアは無理矢理くっついていくのだが、いろいろな理由でそうでもない時もたまにある。
確かに、今はアメリアの身体を考えればゼルについてくのはどーかと思うが、
そもそもゼルが別行動なんてしなければすむ話だ。 
どうせ身体のことだろうから、焦る気持ちもわからないではないが、とりあえず今はアメリア第一である。
「進んでもこの街に留まっても構わん。今夜出て、遅くても明々後日の朝までには合流する。」
「どこに行くんだ、ゼル?」 
のんびりとガウリイが訊ねる。
「そうよ、どこにいくのよ!?」
「言えん。」
「じゃあ、何しに行くの!?」 
そろそろ火炎球一歩手前のリナをガウリイが羽交い絞めにして、アメリアはゼルガディスの顔を見る。
「・・・身体を元に戻す方法が見つかった。」
「!!」
ポシュッ。
リナの手の中の光の玉が消えた。
「アメリアを一人で置いていく訳にはいかない。かと言って、今回は連れて行くわけにもいかん。だから一人で行く、わかったか?」
アメリアを・・・とゼルガディスがはっきりと言ったので、アメリアの顔が真っ赤になった。
口振りからすると、アメリアはちゃんと知ってるんだろう。 
まあいっか。
後で、アメリアを問い詰めればいいんだから。
「・・・この街にいるわ。とりあえず、可愛いアメリアちゃんの護衛代って事で金貨200枚で手を打つけどどう。」 
やれやれと肩を竦めて、リナはゼルガディスに手を伸ばす。
「・・・リナさん。わたし別にそんなことしてもらう必要ないんですけど。」
「貸しって事よ?ちゃんと後で詳しい話を聞かせてもらうから。そのかわり今は聞かないわ。いいわね?」
「わかった。手を打とう。」
ゼルのヤツ。
アメリアの事話さない気か? 
すでにいつもの調子じゃないことに気がついてないんかい、このオトコは?
う~む。 
ガウリイは気づいてそうだしなぁ。
まあ、ちょおっと立ち聞きした事くらい、大した事じゃないわ。
「それから!アメリア、おめでとうvゼルも、あんたにも甲斐性あったのねぇv」
「おめでとな、ゼル、アメリア。」
リナとガウリイの言葉に、アメリアは真っ赤になったし、ゼルガディスは紫になった。



 -第3話へー




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     おまけv



「…というか、思い出してるし。」
まあ、あいつがすべてと思っていることは全部事実ではないのもまた事実なんだけど。
「というか、ユニット?彼や彼女に教えてないんでしょう?
   あの世界そのものが、ユニットが遊ぶために創り出した、とい事実?」
くすくす笑いつつ、紅茶カップを手にしていってくる、目の前の長い金髪をしている女性-エル。
私と同じ存在であり、親友の一人。
私たちと同じ存在は、数が限られている。
というか、互いの存在を知ったときにはそれはもう、何といっていいのか。
とにかく、うれしかった。
というのが本音だけど。
だけど、それらは互いに誰もが口にだしてはいない。
だけど、同じ存在だからこそ、言葉にしなくても伝わる想い、というものはある。
「あら♡そんな当たり前のこと教えたら面白くないじゃない♡」
何しろ、ひとつの世界、といえどもその広さは通常ではない。
何しろ、それは、すべての時間と、そしてまた、時空率の管理でもあるからして。
そしてまた、各次元の。
さすがに、なぜか。
それらのすべてのそう管理。
あれをすべてあの二人にまかせておいたら、それなりに。
自分たちでいろんな組織とか仕組みを完成させたし。
あたしは、あの世界では、どちらかというとストレス解消。
そのために創った場所だし。
あの『世界』にいる限り。
というか、彼らの本質は、あの世界の空間そのもの。
ゆえに、当然のことながらこの私と同じような力を使うことも可能。
彼としては、私の力、と誤解しているところもあるけど。
まあ、確かに、私の力には違いはないけど。
本質的にはそれらは、彼らの力。
まあ、説明するのも何だから、勘違いさせたままにしているのは事実なんだけど。
だけど。
「しっかし、エルもこうなるまでほうっておく。というのも。暇よねぇ。」
私の言葉に。
「あら♡何事も楽しまないと損でしょ♡」
「ま、確かに♡」


くすくすと。
私たちの笑い声がエルの私室にと響き渡ってゆく。



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管理人よりのあとがき:
薫:人様の話を読んで、新たに設定を考える。というか思いつく私って、これいかに?(笑
   というか、よくまあ、あんな設定を組み入れてこんな壮大なお話を考え付きましたねぇ。
    直美さん(尊敬・・・・
    さてさて・・・・編集・・・・がんばろう・・・・(汗