管理人より:
今回は、リナサイドとゼルサイドv
しっかし、ガウリイ、むくわれませんなぁ(笑

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  アメリアの恋心    第3話



一応話がまとまると、ゼルガディスはアメリアをうながし部屋に戻り、後にはリナとガウリイが残った。
食後のお茶を改めて注文しなおし、ついでにケーキでもと、メニューを一瞥する。
どうせ何も考えていないだろうガウリイにメニューを渡し、
お茶を運んできた少女に、3種類のケーキと2種類のジュースも追加で注文した。
ガウリイも似たようなものを頼んだので、白い湯気の立つ琥珀色のお茶に口を付けしばし待つ。 
まったくこの男は。 
ガウリイのことだから、アメリアの身体の事とか気が付いていたんだろうなあ。
勘だけはいいしねえ。
改めてガウリイの顔を見ると、にっこりと笑った。
なんで?
まあいっか。
「ゼルガディスのヤツさあ、身体元に戻す方法知ってたんだなぁ。」
こういう時なのだから、話題になるのはアメリアの事だろうに、何故かゼルの話題を振ってくる。
まあ、こっちもめでたい事だけど。
「そうねえ。それほど焦ってる感じじゃなかったわよねえ。」 
こちらの世界へ来る前、港で久々に再会したとき、ゼルガディスは、確かに身体を元に戻す方法を探すべく、
外の世界に行くというようなことを言っていた。
実際、ちょこっとばかしこっちの遺跡を荒らしたり、竜族の交通に使う遺跡を暴走させたりもしていた。
だが、前ほど切実に、というか、今回はその事については後回しにしていたような感じだった。
アメリアの事もあるのだから、焦っていないはずはないのに。 
まあ、それどころじゃなかったって言えばそれまでだけど。
異界の魔王とかいう大物も出てきたわけだし、
自分も関わっている以上、ゼルの性格上こっちの件を片付けてからとか思うだろうし。
何気に正義感の強いヤツだから。
「それなりに何か糸口は掴んでたんじゃない?
  まがりなりにも結構な魔族とこれまで関わってきたんだし?ゼロスだって・・・」
そう。
昨日のゼロスの言葉。
アメリアとゼルガディスには手出しできない、というのは・・・。
ゼロスがそういう以上、それは事実だろう。
つまり、それを命令してるのは、ゼロスの上司、もしくはそれ以上と言う事だ。
そういう事実があっても、別に不思議はない。
はっきり言って、今回の一件も前回の一件も、
ガウリイはともかくゼルとアメリアは、なし崩しにあたしに巻き込まれたみたいな感じだったし。
ヴァルガーブを含めて、魔竜王ガーブの配下で動いていたヤツは別にしても、例え手は出しても殺さず、を貫いている。 
ゼロス以上の存在? 
獣王、海王、覇王・・・もしくは魔王シャブラニグドゥか。
だが、理由がわからないのだ。
やはり、最後にはそこに戻ってくる。
まさか、カタートに氷漬けにされている魔王シャブラニグドゥの本体レイ=マグナスが、
実は自分の子孫の幸せを願ってて、 ゼルが惚れてるアメリアにまで手が出せん、などという事はないだろうし。 
仮にゼルを魔族に勧誘したいのだとしても、だとしたら、アメリアに手を出さないと言うのはおかしい。
むしろアメリアは、ゼルが人間であろうとする願いそのものなのだから。
「ゼロスのヤツ、何だかんだ言ったってけっこうゼルの事気に入ってるじゃない?
    結構レアな情報だって握ってんでしょうし。何か、情報漏らしてたのかもね。」 
あたしの言葉に、ガウリイはあっさり頷く。 
うーむ。 
さすがガウリイ。 
何の疑問も感じないところが、ある意味尊敬に値するぞ、あたしは。
「でも、ゼルとアメリアの子供かぁ。俺はだったら女の子がほしいなぁ。」
「はあ?何言ってんの?ああ、あんた子供好きだもんね。」
だから、あたしの『保護者』やっててくれるんでしょ。 
あたしはそんな言葉を飲み込んだ。
「・・・・・・」
何故かガウリイが肩を落としているようにも見えるが、ガックリくるのはこっちである。
「そんなことよりね、とりあえずアメリアはしばらく魔法使えないし、無理も出来ないわ。
   一応、これからの事も考えると、間に合わせでもあんたの剣が必要だだから、後で買いに行くわよ。」 
そうなのだ。
ガウリイは光の剣を異界に返してしまったので、はっきり言っていまのガウリイは丸腰である。
そもそも魔術がほとんど発達していないこっちの世界で、まがりなりにも魔法剣なんぞ、あるわけがない。
魔法剣を作るのは、それなりに高い魔道技術が必要なのだ。
マジックショップすらろくにないのである。
フィリアに頼めば何とかなるかもしれないが、あいにくここからフィリアの所までは、元の世界から反対方向な上に遠い。 
ちょこちょこ盗賊をぶちのめした時に、それなりの剣を没収してガウリイに渡してはいるのだが、
その使えない事使えない事・・・。
それはもう面白いようにポキポキ折れる。
まあ、光の剣ぶん回してたガウリイが、いつものように使ってるんだから、仕方がないけど。
しかし、ゴースト程度にも相手にならないときている。 
これまでの道じゃあ、あんまり必要ないし、
どうせ間に合わせででも一度買う羽目になるのなら、元の世界に戻ってからにしようと思っていたのだが・・・。 
ゼルガディスがいないとなると、彼の剣をガウリイに使わせるわけにもいかないし、
アメリアは戦力的にあてにできない。
かくいうあたしも、もうそろそろ魔法の使えなくなる日が来る気配である。
まあ、2、3日中にってことはないだろうが。 
別に、こっちの世界で今さら何か起こるとは思わないが、得てしてこーゆータイミングの悪いときにかぎって、
厄介事は舞い込んでくるというものだ。
用心にするのに超した事はない。 
ゼルのためにもアメリアのためにも・・・。
「んん?ああ、だからお前さっきゼルから金巻き上げてたのかぁ!」
ガウリイが、ぽんと手を叩く。
ぎく。
「ちょぉっと、何言ってるのよあんた!?
  あれはアメリアちゃんの面倒を見る、正当な報酬よぉん?そんなことあるわけないじゃない?」
そんなわけあるが、それは言わぬが花、というものである。
「いいからガウリイ!さっさと剣買いに行くわよ!」
あたしは残りのケーキを口に入れ、ジュースで流し込むと席を立った。
人生短いのだ。 
のんびりなどしてはいれない。
だから、決して話が都合の悪いほうに転びそうだったからではない。ホントに。



リナ達が店を出た頃、アメリアとゼルガディスは、部屋でのんびりとくつろいでいた。 
とりあえず滞在が延び、急いでするべきこともない。
ゼルガディスは今夜発つと言ってもほんの2、3日だし、もともと旅の途中なので準備と言うほどの事もない。 
夜までの時間潰しという所か。
一応寝ておくにしても、まだとても寝れない。 
観光案内を握り締め、あそこに行きたい、ここに行ってみたいと言うアメリアの声を聞きながら、
ゼルガディスは記憶の棚を整理しなおしていた。
抜け落ちている事が、あまりにも多い。
知っているはずなのに知らない事、途中まではわかるのに、あるところからピタッと途切れる内容。
例えば、自分はゼルガディスと呼ばれてはいたが、別に名前があったはずで、それが何なのかは思い出せなかった。
それはアメリアも同じで、ゼルガディスは彼女をアメリアと呼んではいたが、それが彼女の本当の名ではなかったはずだ。
何もかもが中途半端。
それが、不安の原因かもしれない。
だが、違うかもしれない。せめて今はアメリアの傍にいたいと、ゼルガディスは思う。
だが、一刻も早く、
アメリアの身体を支える事が出来るだけの力を取り戻さなくてはならない事も、また事実だった。
妊娠してから二ヶ月ということは、お腹の中の子供も育ってきている。
いつ、アメリアの身体に限界がくるかわからない以上、なるべく急がなくてはならなかった。
本当なら、今すぐにでも発ちたい。 
だが、今のゼルガディスでは、カタートにすぐに、というわけにもいかないし、
スィーフィードが迎えに来るのを待つしかないのだ。
それがどうにももどかしい。
ゼルガディスが、チョイチョイっと指で手招きをすると、
アメリアは音が鳴るほどにぱあっと顔を輝かせ、ベッドに腰掛けるゼルガディスの膝の間に座った。 
(そうじゃなくて・・・まあ、いいか。)
深く座りなおし、アメリアを背後から抱えると、やはり小さい。 
この小さな身体に、別の命が宿っているというのが驚異である。
ふと、出会った頃の事を思い出す。
最初は、珍妙な小娘だと思った。
第一声で怪しい、と言われ、その後も冷たいだの何だのといろいろ言われた。
ガウリイがリナを傍から離さないので、なし崩しに一緒にいる事が多かったが、面倒以外の何物でもなかった。
特に正義の口上は聞くに堪えなかったし、その志向回路の明瞭さは、ある意味奇異だった。
だが、アメリアは、最初から俺の事をただの人間としてしか見ていなかったように思う。 
ほんの短い間過ごしただけの俺の、
コピーレゾの一件を別にしてもけっこう大々的にかけられていた指名手配を、強権発動とやらであっさり解いてみせた。
「ゼルガディスさんは改心して真人間になったのだから、もう必要ないです。」
と笑っていた。 
リナやガウリイは、裏の世界の事も、嫌と言うほど身を持って知っている。
だから、生きていくには仕方なかったと納得している。
だが、アメリアは根本的に違うのだ。
俺個人を見て、信用できると判断したらしい。
あれほど奇抜な女に出会ったからか、
不思議と、いつの間にか馴染みの女とも縁を切っていた。普通の女ではつまらなくなっていた。

ゾアナで再会した時も、外見こそ大人びてきていたものだが、アメリアは変わっていなかった。


敵側に回った俺に、何て燃えるシチュエーション、ときたもんだ。
だが、その前向きさと明るさに、何度救われただろうと思ったりもした。
セイルーンでお家騒動があった時、主犯であった従兄弟の墓に、
毅然と花を手向けるアメリアを見て、こんな小さな手で、どれだけ大切なものを守ろうとしていたのか、と思った。
傷だらけになりながらも、大切な物を守ろうとした腕は、どんなに痛かっただろうと。
母を失い、姉は行方不明になり、信用していた従兄弟に裏切られ失った。 
本当に望んだ事は叶わず、信じた人には裏切られる。
それでも、アメリアは信じる事をやめなかった。
普段のアメリアはまだまだ子供だったが、実は、まだ大人になりたくなかった子供、なのだと知った。
そして、悲しませたくないと思った。
守りたいと。
俺を見ると笑って名前を呼ぶアメリアを見て、愛しいと思うようになった。
戦いのさなか、命を失いそうになるアメリアを目の当たりにした時、失いたくないと思った。
おもわずアメリアを庇って死にかけた俺に、必死に呼びかけるアメリアを見て、朦朧とする意識の中、
彼女の守りたいものの中に俺も含まれている事を知った。
こんな安い命なのに。
もしもまた、同じ場面に出くわしたら、俺はまたアメリアを優先するだろう。
アメリアが、また傷つくことがわかっていても。
アメリアが、俺にとって失っては生きていけないほどの存在になっている事に、あの時ようやく気がついた。
口にするつもりはなかった。
だが、アメリアにとっても俺がそういう存在になっている事を知るまでに、時間はかからなかった。
いつ死ぬかわからない、そういう状況だったからか、アメリアは躊躇しなかった。
まずいと思った。
気が付かないうちにそんな所まで来てしまった事に、後悔した。
腹を括らなければ後悔する事もわかっていた。
究極の選択だったと思う。
アメリアの傍にいるか離れるか。
結局、俺はアメリアの怒涛のような強引さに口をはさむ余地もなく、傍にいる事を選んでしまった。 
自分のあまりの情けなさに腹が立ったものだが、
そうしなければ俺が離れていくと思ったからこそ、アメリアはああしたのだ。
俺は、見透かされている。


                        -第話へー



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    おまけv



「?ガウリイ?どうかしたの?さっきから?」
先ほどから元気のないガウリイをみてリナが問いかける。
「い、いや…」
「でも本当、ガウリイって子供好きよねぇ。」
だから、こんなあたしなんかと一緒に面倒ごとなんかにかかわっても、一緒にいてくれるんだし。
そんなことを思いつつ、リナの中でちくりと何かがいたむ。
「…オレがほしいのは…の子供なんだが…」
「?あ!ガウリイ!お店発見!」
つい、ぽろりと口にでた、ガウリイの。
- オレがほしいのは、リナとオレとの子供なんだが… ―
というその言葉は。
リナが目ざとく、というか、運悪く見つけた道具やの出現によって。
いともたやすく風に流されてゆく。
駆け出してゆくリナを呆然と眺めつつ。
「…いいなぁ…ゼルのやつ…」
ぽそりとつぶやくガウリイの姿が。
町の一角にて見受けられていたのは。
それは、知る日とぞしる事実。

ガウリイ=ガブリエフ。
まだまだ先は長そうよね。
さすが、リナというべきか♡ふふ♡

 


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管理人よりのあとがき:
薫:うっし!ようやく3話まで編集完了!次は4話。
   しっかし、リナちゃん。相変わらず鈍いです(笑
  ま、リナだしねぇ(爆!
  ガウリイ、ファイトだv あ、おまけのは、スミレちゃんの一人称ですよー。あしからず(こらまてや!
  今後のネタバレみたいなせりふ、入れてもいっかなぁ?
  ま、ぼかしていれるか。うん(かなりまて!
  ではでは。また次回を楽しみに!
   あ、直美さんへの感想はメールからでもできますのでvあしからずvv