まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

謎といえば謎……
打ち込みするとき、幾度も幾度も見直して。さらにはアップする前にも見直して…
とやってるのに!どうして毎回、毎回誤字脱字発見するの!?
……昨日もアップしたのみなおしてて誤字脱字またまた発見……
今、するっとアップができないから面倒なのになぁ…あうあうあぅ……
まあ、自業自得?のぼやきはおいといて。
いっきますv今回は、弥彦の戦いですv

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「へえ?でも……」
「ダメですか?」
こんな小さな子供に懇願されて、だからといってはいそうですか。
というのも人道的にどういったものか。
「私も剣心お兄ちゃんも、薫さんのところにタダでお世話になっているのが悪くて……
  あ。厨房だけでもいいですから」
その健気さには心打たれるものがある。
しばらく厄介になることになる。
しかも、薫にあまり資金的な迷惑をかけたくないから。
と、日雇いでもいいから、幾日か雇ってくれないか。
というその懇願。
戸惑う赤べこの主人、妙に対し。
「え~と。残飯とかの整理もいいものがあるし♪」
「…いいのも?」
「うん。私、発明もちょこっと遊びでいろいろと…ね。
  自然界にいる小さな虫を使って乾燥させる入れ物もつくってるんだけど。
  あれつかったら、残りものとかの処理が匂わないし簡単になるとおもうんだけど……」
さらっ。
といってくるその言葉に思わず。
「…それ、どういうものですのん?」
毎日でる残飯の処理はたしかに頭を悩ますところ。
一人で店を訪ねてきた菫に、しばし問いかけている妙の姿が。
とあるうららかな日、見受けられてゆく……

剣客放浪記  ~弥彦、始めての戦い~

「えいっ!…やあっ!」
……くっ。
毎日の薫との稽古だけじゃあ実力が伴っているのかどうかすらもわからない。
「薫や剣心はああいうけど、…やっぱり」
すざましいまでの剣心の剣の腕。
剣術を習うものとしてあこがれるのは道理。
「でやぁっ!」
川べりにとある大木にいくつもの木片を吊るして竹刀にて斬りかかる。
先日目の当たりにした剣心の剣の業。
はっきりいって伝説になったその意味合いがよくわかったが。
戦いぶりをみたのは、黒笠の一件のときと、蒼紫の一件のとき。
しかも、寸分たがわずに街灯を屋敷の壁にとつきたてた。
というのもその目でみている。
それゆえに、あこがれずにはいられない。
たった一人で、あのような化け物ともいえる銃弾から自分達をまもって、
しかも、銃弾飛び交う最中、そのまま剣の回転のみでそれらをはじきとばし、
さらにはあいてを一撃のもとにと瀕死状態にとおいやった。
もし、剣心がもっている刀が逆刃刀でなければ即座に死亡しているであろう剣技。
あの強さを目の当たりにして、より日々訓練に訓練を重ねている。
恵を助けてより三日。
恵は源才の元で医学を学びつつ、患者の面倒をもみはじめている。
先日の騒動が嘘のような平和さであるが。
剣心のようにと強くなる。
それが何よりの目標。
剣の腕一つで様々な人々を守れる強さ。
だからこそ、人知れずこの場で修行をしているのだから。
たかが、木の枝に吊るしている木片にすらてこずっているようでは話にならない。
これを一撃で木から竹刀で斬りおとすほどの力量が身につかねば。
「さすがに。一隻一丁では身につくわきゃないか。だけど…っ!」
いいつつも、ぐっと竹刀を握り締め、さらに切り込む弥彦の姿。
そのまま、駆け込むとどうじに、おもいっきり的を外してその場にと転げていたりする。
そのはずみに、はいていた草履が反動で土手道のほうにと飛んでゆくが。

ここ数日、この河原でいつもみかけるあの男の子。
また一人で頑張ってる。
最近この河原でよくみかける男の子。
どうやら剣術の稽古をしているらしい。
というのは明白。
自分で稽古をするなんて、その勇気がうらやましくもあり目についていた。
そんなことを思っていると。
トスッ……
「…あ。…あれ……」
何やら土手道の河原につづく斜面の途中に飛んでくる草履が一足。
そのまま、斜面にと足をむけ、そこに転がっている草履をつかみ、
今まさに立ち上がろうとしている少年のほうにと向かってゆく女の子の姿がその場にて見受けられてゆく。

「あ…あの。これ……」
「あ。俺のっ!」
ふと気づけば、土手道のほうから歩いてきたのか女の子が目の前にと立っている。
照れくささもあり、そう言い放ち、女の子の手から草履を奪い取るようにして手にとる弥彦。
そして、片方の脱げたほうの足にその草履を履こうとするものの。
「…あれ?」
「…あ。はなお……とれてる」
違和感を感じて手を止める弥彦に続いて、かがみこんで話しかけてきているその女の子。
その肩の辺りまでかかる髪に、優しそうな少し戸惑いを浮かべたような表情。
どこか寂しそうな、それでいて戸惑ったようなその影のある表情に思わずどきりとしてしまう。
「え?」
指摘されて、ようやく草履のはなおが切れていることに気づいて思わず声をあげる弥彦にと、
「かして」
いいながらも、そのまましゃがみこみ、弥彦の手から草履を受け取り、
そのまま、懐から取り出した布を小さくやぶりながらもはなおを付け直すその少女。
そのまま無言ではなおを付け直し、
「はい。ごめんなさい。上手にできなくて」
「え…あ。そんなことねえよ」
そんな少女を半ば呆然としつつも言う弥彦にとはなおを付け直した草履を手渡し、
「剣術のお稽古。がんばってね」
いって立ち上がり、そのまま土手道のほうにと歩いていきその場を後にしてゆく。
しばしそんな少女の後姿を見送りつつも、はっと我にと戻り、
「…あ。いけねえ。礼いうのわすれた」
ようやくお礼をいうのを忘れてきたことに気づき、追いかけようとするものの。
だがしかし、すでに少女の姿はみえなくなっている。
「……かえるか」
何かこのまま特訓を続ける気にもならずに、ひとまず道場にと戻ってゆく弥彦の姿。




「あ。やっともどってきた。どこいってたの?」
「…べ。別に」
少し影があるような、どこか守ってあげたくなるような女の子だったな。
いつも見慣れている、薫や菫ちゃんとはまったく別の雰囲気の持ち主。
そんなことを思いながらも、薫の問いかけにぶっきらぼうにと答える弥彦。
「というか。もうすこし遅くなってもよかったのに」
いいつつも、そんな弥彦にと話しかけているのは……
「左之~。それはどうかと思うでござるよ。今日のお昼は、
  赤べこに繰り出すことにきまったので、弥彦が出かける前に戻ってきてよかったでござるよ」
少しばかり意地悪なようなことをいっている左之助をたしなめるように、
まくっていた裾を正しながらも弥彦に話しかけている剣心。
そんな剣心の言葉をきき、
「よくお金があったな」
素直な感想をもらす弥彦。
「今日はね。妙さんが招待してくれたのよ。
  何でも、菫ちゃんが最近赤べこの手伝いしているらしくて、助かってるとかっていって」
「…どうりで。ここ数日昼間とか姿がみえないとおもったでござるがな」
薫に続いて、ため息まじりにいっている剣心に対し、
「そうなのか?」
というか、いつの間にそんなことをしていたんだろう?
そんなことを思いつつ、思わずつぶやく弥彦。
「らしいぜ。もっとも。あの子ならどこでも料理担当とかしても通用するだろうけどな」
ちょっとした材料などでかなりおいしく、しかも豪勢にと食事を作ることができる。
あの才能はどこでも通じるものがあるであろう。
ましてや、菫が炊いたご飯などは他のものが炊いたものと違い、格段にその美味さが異なっている。
それらがあるがゆえに、しみじみといっている左之助であるが。
「拙者としては。菫ちゃんが、何かしでかしてないかが心配でござるけどな……
  ここ神谷道場だけならまだしも…でござる」
いいながら、ため息一つ。
すでに、ここ道場の台所においても、菫が作り出したとある残飯処理の箱が置いてある。
それはその中に残飯をいれると、乾燥し肥料になる。
という代物なのであるが。
はっきりいってこんな品物は世間には広まっていない。
というのは剣心は十二分に承知している。
さらには、ちょっとした小さな冷蔵庫までも菫は作り出しておいているのである。
仕組み的には以前聞いたことがあるがゆえに、何となくはわかるが。
そもそも、保温製や、保冷製。
つまりは温度を逃がしにくいように箱を作り、その上部に一つ、氷をいれたり、
もしくはお湯などをいれることによって、冷たく保ったり、または暖かく保ったりすることができる。
仕組み的には、鉄と、そして木々と、おかくずなどを組み合わせた簡易的なつくりらしいが。
そもそも、それを一瞬でつくりだせる…というのが普通ではない。
彼女が普通の人間ではない。
と知られれば、どれほどの混乱が起こるのかはっきりいって想像したくない。
それゆえに、剣心は気をもんでいるのであるが。
そんな剣心の思いを知るはずもなく。
「とにかく。早くあんたも用意しなさいよね」
「あ。うん」
薫に促され、用意が済み次第、薫、剣心、左之助、弥彦の四人にて、彼らは赤べこにと向かってゆく。


ぐつぐつぐつ。
「何か人…多いわね」
それが本音。
「それがですの。菫ちゃんのおかげですのよ。
  あの子何か人をひきつける雰囲気というか、しかもお客の扱いかたもなれているらしいどすなぁ。
  人を裁くのが上手ですわ。それに、あの子が持ってきてくれた簡易冷蔵が重宝しておりましてな。
  今までうちは生ものを扱うので肉などが痛んだりするのが問題だったんどすけど。
  それをつかえばその問題も解決しましたし」
自分達を案内し、注文を聞きにきたこの店の店主である妙の台詞に思わず頭を抱える剣心。
そんな剣心の態度に多少疑問を抱きつつも、
「え?ああ。あれですか。うちにもあるんですよ。あれ確かに便利ですよね~」
などとそんなことをいっている薫であるが。
「つうか。俺としては、どうやってさくさくとあんなもんつくってるのか。というのが問題とおもうんだが?」
至極まともな疑問を投げかけている左之助。
そんな左之助の台詞をきき、
「と。とりあえず。今日はおまねきありがとうでござる」
これ以上、あまり詳しく突っ込まれたくない。
その思いからあわてて話題を転換させる剣心。
「いえいえ。おきになさらずに。こちらこそ随分たすかってますしな」
いいながら、
「あ、燕ちゃん。この人たちお願いね」
ふと、他の客が入ってきたのに気づき、そちらの接待をするためにと従業員の一人にと声をかける。
「……あ……」
店にはいってもしばしぼ~としてした弥彦がその姿をみて思わず目を丸くする。
弥彦の懐には先刻の鼻緒をつけかえてもらった草履が使うことなく入れられていたりするのだが。
おかっぱ頭の少女。
「あら。燕ちゃん。もう慣れた?」
そんな少女にむかって薫が声をかけ、そして、ふと気づいたように、
「そういえば。弥彦は始めてだったわよね。燕ちゃんよ」
薫の言葉をうけて、ぺこりと頭を下げる、燕と呼ばれた少女。
しばし、ぼ~とする弥彦ににこやかに微笑みかける燕と紹介された少女に対し、
「それじゃ、あとはお願いね。あ。いらっしゃいませ~」
いって、新たに入ってきたほかの客のほうにと移動してゆく妙の姿。
「ご注文は、いつものでよろしいですか?」
何を言っていいのか、すぐに言葉がでてこない弥彦とは裏腹に、
テキパキと注文を問いかける燕であるが。
「あ。おねがいね。えっと四人分ほど」
「かしこまりました」
薫の注文をうけて、再びぺこりと頭をさげてそのまま奥にと引っ込んでゆく燕。
「ん?お~い?」
ぼけっとしている弥彦にきづき、そんな弥彦の目の前に手をかざしてひらひらさせている左之助。
そんな左之助の言葉に、はっと我にと戻り。
「あ…俺、お礼いうの忘れてた」
いいながらも、そのまま座敷を出て燕のむかったほうこうにと走ってゆく弥彦。
そんな弥彦の行動をみて、
「?どうかしたのかしら?あのこ?」
「何かたのしそうだな。よしゃっ!ここはいっちょ……」
「左之~。何をする気でござるか?」
いって立ち上がる左之助にむかって苦笑しながらも問いかける剣心に対し、
「何って。気になるからみにいくんだよ。ほら、嬢ちゃん。いくぜ」
「あ、ちょっと。左之助。まちなさいよっ!」
「やれやれ……」
二人して野次馬根性をだしてそんな弥彦の後ろをついてゆく二人をみながら。
いって軽くため息をつく剣心。
そして、自分も立ち上がり、
「…左之達が何かしでかさないように、いくとするどござるか」
あの女の子までもがでてきた。
ということは、かつて夢で経験した出来事がこれから起こるのであろう。
それが確信できるからこそ、大事にならないようにとどめるもの自分の役目。
そんなことを思いつつ、剣心もまた、薫達の後を追ってゆく……


んしょ…んしょ……
ひょい。
「……あ」
おぼつかない足取りで手桶を運んでいたそんな中。
ひょいっとその手桶を抱えあげる。
「貸せよ」
多くを語らずにそのまま一言だけいって、井戸から水をくみ上げる。
ザァァ……
井戸から水をくみ上げ、手桶に移す。
そのまま無言で炊事場のほうにと運ぼうとする弥彦に対し、
「あ…私が……」
いって手桶を受け取ろうとするものの、すっと手と手が触れて思わず手を引っ込める。

「……何やってんだ…あいつは……」
そんな弥彦の様子を隠れて見守りつつ、思わずそんなつぶやきをもらしている左之助。
「なるほど。弥彦の様子がおかしかったのは、あれが原因ね」
そんな様子をみながらそんなことをつぶやいている薫。
「二人とも~。それより早く席に戻ろうでござるよ」
そんな覗き見をしている三人に対し、
「何してるの?剣心お兄ちゃんたち?」
ぴしっ……
背後から気配も何もさせずに聞こえてくる軽やかな子供の声が一つ。
ギギギィ……
固まりながらもゆっくりと背後をふりむく。
「ん?あ。菫ちゃん。…というか、気配してなかったが?」
毎回おもうけど、このこ…まったく気配も何も感じさせないよな。
などと思いながらも問いかけている左之助に対し、
「それより。そろそろ配膳されるんだけど?」
にこやかにそんな彼等にと微笑みかける。
そんな彼等が隠れているその先では、何やらほほえましくも譲り合いながら、
二人して炊事場のほうにと戻っていっている弥彦と燕の姿が見受けられていたりする。
「だ。そうでござるよ。席にもどるでござる」
どこか声がかすれたように感じるのはおそらく誰の気のせいでもないであろうが。
そんな剣心の言葉をきき、少し首をかしげ、
「?剣心?どうしたの?今日はお金の心配はいらないわよ?」
どこか違うところで剣心が心配していると勘違いして見当違いなことをいっている薫であるが。
「ほらほら。急いで」
有無を言わさずにそんな三人をせきたてる。
そんな菫にせきたてられて、弥彦を追求する間もなく。
そのまま彼等は自分達の席にと戻ってゆくことに。

グッグッグッ……
お肉の煮える匂いが香ばしく充満する。
鍋の中に様々な具をいれて食べるこの肉鍋。
それはとても贅沢な品…ともいわれている。
「それで?あの子とはどこまでいったんだ?」
座敷にもどってきた弥彦に対し、にやにやしながらも問いかける左之助。
「そ…そんなんじゃねえよっ!ただ、さっき鼻緒つけかえてくれたから、それで……」
「それで、大切に、大切に懐にいれてるってか?」
「こ…の、左之助ぇぇ~~!!」
完全にからかってきている口調の左之助に対し思わず掴みかかろうとする。
と。
「お~い!こっちも頼むっ!」
「あ。は~い」
何やら斜め向かい側のほうから従業員を呼ぶらしき声。
その声をうけ、ぱたぱたと燕がそちらに移動してゆくものの。
カッラ……ン……
その席にいた男たちの姿をみて思わず手にしていたお盆を床にと落とす。
「……あ……」
そのままその場に固まるそんな燕に対し、
「あん?何だ?そのつらは。主家に対してする面か?」
などといっているいかにもどこかのどうらく息子。
といったような感じの雰囲気の悪い男性。
そんな彼を中心に、何やら同じような仲間を引き連れて座敷に座っていたりするが。
その数、およそ数名。
固まり震える燕をよそに、
「短期間でどうやら信用を勝ち得たようだな。ひとまず、後から機会をみてぬけでてこいや」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
いいながらも勘定を払わずにそのまま外にと出てゆく男たち。
しばし、そんな男たちを硬直して見送りつつも、
彼等の代金は無言でもらったように自分で立て替えている燕の姿が。

「・・・・・・・・・・・・・」
おそらく、薫達は今の会話は聞こえていないであろう。
常日頃、菫の特訓を受けているがゆえに注意すれば多少離れていても会話はわかる。
それが良いのか悪いのかはともかくとして。
しばし、かたかたと震えながらも涙をぬぐい、そして。
そのまま奥にと走ってゆく燕の姿をみながら、
……明治の世の中になってもまだ昔のしがらみに捉えられている人たちは…多いでござるな……
そんなことを思いながらも多少気がめいってしまう剣心。
長年の慣習というか風習はたかが十年やそこらでないがしろにできるものではない。
それが悪しき習慣にしろ、良き習慣にしろなおさらに。
だが…悪しき習慣は…改めていかねばならないのだ。
一人ひとりが心を強くもって。
まあ、これは薫殿たちには話せないでござるな……余計に話しがこじれるでござるし。
そう思い、ひとまずどうにかその場はそのことには触れず、そのまま食事にと専念し、
常に燕の同行に気をつなけがら、彼女が外にでてゆくと同時に自分もまた少し席を立つことを決める。
やがて、燕が外に連れ出されたのを見計らい、
「少し、花畑にいってくるでござる」
そういい、すっと席をたつ。
そんな剣心の台詞に
「花畑?何だ?そりゃ?」
「剣心は誰かさんとちがって、風情があるからね」
もくもくと肉を口にとほうばりながらも首をかしげる左之助に対し、多少いやみを込めていっている薫。
同じ、厠にいく、というのでも、花畑とか言葉を濁したり、または綺麗にいったほうが。
得に食事中の場合は回りにおける印象はぐっと異なる。
「厠のことだよ」
「あ。なんだ。く…」
ぼごっ!
「それいじょぅいったら、左之助っ!殴るかんねっ!」
「…も、薫…なぐってるじゃんか……オレもいってこよ」
薫の右ストレートパンチを食らってまともに倒れている左之助を横目に見ながらも、
弥彦もまた立ち上がり外にとでてゆく。


「?剣心のやつ…どこいったんだ?」
厠にいく。
といったのに剣心の姿がみえない。
多少疑問におもいつつも、とりあえずすることをすませる。
そして、きょろきょろと周囲をみていると、何やら裏口のほうに人が歩いてゆく気配が。
そちらのほうにと視線をむければ、みればあの燕という少女と、
そしていかにも何やら目つきのわるい、どうみてもごろつきらしき男たちが数名。
彼女を取り囲むようにしてどこかに連れ去ろうとしている。
遠目からみてもわかる。
彼女…燕がおびえている。
というのが。
あまりに気になりいけないことだとはわかってはいても、
おもわずそんな彼等の後をつけてしまう。
やがて、彼等は燕を交え、女一人、男八人。
という何ともかなり卑怯な人数で燕を取り囲みながらも、袋小路になっている場所にと移動する。

「で?どうだった?」
その八人の中で一番何やら目がいっているような男。
見た限り、その中で番を張っているのはおそらくその男であろう。
どこかしら、道楽息子が好き勝手し放題をしている無法者。
とよくよく見れば判る人にはわかるであろうが。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「どうだった?ってきいているんだよ?え?燕?」
「……あ、赤べこには…大金はおいていません。
  店主が毎日自宅に持ち運んでいますから……」
「ふっん。予想どおり…だな。よし。出せ」
がたがたぶるぶる震えながら答える燕に対してにっと笑い、
「ちゃんといいつけどおり、とってあるんだろ?店主の家と倉庫の鍵の粘土の鍵型」
などと震える燕に言い放つ。
燕は逃げ出そうにも逃げられない。
背後に自分をがっちりと取り囲むようにいる男たち。
そしてまた……この、目の前の無法なことをいっているのは……
だけど。
「や…やっぱりいけませんっ!こんなことっ!幹雄様っ!
  元旗本長岡家の名前に傷がつきますっ!盗賊なんて考えは改めてくださいっ!」
「てめぇ……いつからこの俺に意見できるほど偉くなったぁ!?」
どごっ!
無抵抗なまでの燕を思いっきり叫ぶと同時に殴り倒す。
「江戸三百年の間、長岡家に仕えることで生きながらえた貧乏武家の存在でっ!
  てめえだって自分のオヤジがうちに仕えていきてきたのを見て育っているだろうがっ!」
どこの世界にも、自分の家がもっている格式や権力といったものを自分の手柄というかもの。
ととらえるものは後をたたない。
この男はまさに、その典型ともいえるであろう。
自分が偉いわけでもないのに、家の威光の名前を盾に悪事を強要しているのである。
「それが、維新で武士が士族になったとたん。長岡家と三条家はもう他人です。ってか!?」
よくよく考えれば相手のいっていることが間違っている。
とわかるであろうが、それでも。
自分の父親が彼の実家に対して恩義を持っているのもまた事実。
それゆえに…いくら長岡の息子とはいえ、無理難題をいっている。
というのもわかってはいても…断れない。
本来ならば、ここできちんといさめるのもまた、役目なのであろうが。
それで聞くような人物でもないのもよくわかっている。
だけども……
「明治っていうのは嫌な世の中だぜ。忠義も何もあったもんじゃねえ。
  四民平等を唱えれば三百年のご恩も踏み倒し放題かよっ!」
などといってくる幹雄と呼ばれた男性。
「でも…やっぱり強盗なんて…間違ってます。ご恩は感じています。
  ですから、長岡家の名誉に傷がつくようなことだけは、どうかっ…っ!」
唇を切り、血を多少ながしながらもそれをぬぐうこともせずにどうにか考え直すようにと懇願する。
長岡の家を継ぐのはもはや、目の前の彼しかいないのだ。
だからこそ…お家のためにこそ、間違ったことはしてほしくない。
それこそがまことの忠義、といえるのだが。
目の前の長岡幹雄という人物はそんなことにすら頭がまわらない。
それは、ぬくぬくと甘やかされ放題、悪戯や悪さなどもし放題で育った証。
何をやっても許される。
という究極の勘違い。
たしなめようとした人物などはことごとく見下し…そして、切り捨ててきた。
どうにかして改心してほしい。
という燕の心からの願いは、彼には届かない。
そればかりか、
「ああ。わかったよ。もう赤の他人様にはたのまねえよ。だがな。こっちは好きにやらせてもらうぜ。
  鍵がなければ、一家全員皆殺しにするしか他に手はねえが。
  何しろ仕方ねえよな。目撃者を残すわけにはいかねえ。それこそ大事な長岡の名前に傷がつくしな」
ぐいっと燕の髪を持ち上げてそんな無体なことを言い放つ。
「あの、妙とかいう店主の娘も含めて。全員皆殺ししかねぇな」
にやにやとわらいながら、それでいてそれが本気だ。
と言い放つように下卑た笑いを含めながらも言い放つ。
その言葉にぴくりと反応し、涙を流すしかない燕。
この幹雄様には…何をいってもつうじないの?
そんなむなしい思いが脳裏をよぎる。
だけど…このままでは、まちがいなく。
彼は人殺しを実行するだろう。
……それこそ、まるで人を人ともおもわずに斬捨てるようにして。
彼は前から人を斬る、ということに非常なまでに興味を示していたのだから。
猫や犬、といった小動物などを惨殺していたのを…燕は知っている。
それをたしなめようとした奉公人などは、そのまま腕や肋骨といったものを折られ重傷を負い、
治療もろくにうけることさえ許されずに命を落としたものも幾人か。
それをそれらの家族が訴えることがなかったのは、ひとえに。
昔からの主従関係に捕らわれていたからこそ。
間違っていることは間違っている。
ともっとはやくにきちんと彼に何かしらの実力をもって判らせなければ、こういった人物は、
まちがいなくそのまま間違った方向を突き進んで取り返しがつかなくなる。
それでも…彼を止められる家族のものはもはやいない。
数年に渡った伏見戦争において彼の両親はすでに他界しているのだからして。
涙を流しつつも、それでも。
最後の彼の良心にかけたい。
と思うのはまた、彼の子供のころの話を父などから聞いているからこそ。
そのままなきながらも懐にと手をいれる。
「……そう。それでいいんだよ。なあに。捕まったりするようなヘマはしないって」
今まで失敗したことはないしな。
などと彼は思っているが。
それは彼が知らないだけのこと。
今までの出来事は…どうにか回りのものがフォーローをいれるだけでどうにか収まっていた。
だが、今回の押し込み強盗…は…それではすまされない。
そのことを根本的にこの男は理解していない。

いらいら……
隠れて聞いていてもだんだんといらだってくる。
何やら理不尽なことを強制している男の台詞も。
そしてまた……その彼を説得しようとするもののあっさりと負けている燕の姿にも。
いや、それ以前に許せないのは……
「馬鹿か!おめえっ!
  明治も十年すぎるっていうのに、まだそんな昔の主従関係にとらわれているのかよっ!
  それに、そこのもみあげやろうっ!てめえのようなやつは、同じ士族として。
  この東京府明神弥彦、だまって見過ごすわけにはいかねぇっ!!」
そう。
一番許せないのは、自分の実力でもなく、ましてや人柄でもなく。
家柄を持ち出して他人を悪事に強制的に協力させようとする。
ということ。
士族としての誇りをこの男は完全に忘れている。
というか、誇りそのものをもっていない。
いうなれば自分勝手。
びしっと竹刀をつきつけて、少しはなれた場所から言い放つそんな弥彦に対し、
「や…弥彦ちゃんっ!?」
がくっ……
驚愕の声をあげている燕。
そんな燕の言葉に思わずがくっと頭をたれる弥彦であるが。
「ちゃんはやめろっ!」
まったく、菫ちゃんといい…どうして、俺のことをちゃん呼ばわりするんだよ……
そんなことを思いながらも即座に叫び返し、そして。
「強盗なんて馬鹿な考えは捨てろっ!さもなくば、この東京府士族、明神弥彦があいてだっ!」
いって、燕と男たちの間にと割って入り、竹刀を男たちに向けながらも言い放つ。
ぎりっ……
そんな弥彦の台詞をきき、歯軋りをしつつ、
「こっの!」
「子供がっ!」
口々に何やらいっている男たち。
「弥彦ちゃんっ!」
「ちゃんはやめろっていってるだろっ!」
そんな弥彦にたいし、驚愕した声をあげる燕に対し、すかさず突っ込みをいれている弥彦。
そんな二人のやり取りを傍目にみつつも、
「こ…の、しゃくらせえっ!がきがっ!」
いって手にしている木刀。
ちなみに、それは仕込み刃となっており、引き抜くことにより刀にと変化する代物。
それを手にして弥彦に対してつっかかる。
がしっ!
だがしかし、相手の一撃を視界にとらえ、竹刀でそれをうけとめ、
「面っ!」
「…どうっ!」
すかさず続けざまに二撃を喰らわせる。
弥彦の攻撃をうけ、そのままおもいっきりみぞおちにと一撃があたりその場に倒れる一人の男。
…いけるっ!
俺の剣術は十分に通じるっ!
そう弥彦は確信するが、肝心なことが彼の脳裏からは失念されている。
ということにこの時点では気づいていない。
「こっの…」
「こいっ!」
仲間の一人がのされたのをうけ身構える男に対し竹刀を構えなおすが。
「この…がきっ!図にのるんじゃねえっ!」
ばぎゃっ!
そんな弥彦の背後から別の男が弥彦に対して一撃を加える。
弥彦が失念していたこと。
それは…一対一の勝負ではなく、一対複数である。
ということ。
「なっ!?」
「いまだっ!囲んでたたんじまえっ!」
「…や…やめてぇっ!」
弥彦を取り囲み、同時に子供一人を殴り倒す男たち。
それがいかに恥ずかしい行為である。
ということすらこの男たちはわかっていない。
それをみて燕が悲鳴に近い叫びをあげているが。
「ふっん。この俺が手をだすまではないか」
いいながらも、抜きかけていた仕込み刃を再び収めている幹雄と呼ばれた男性。

「・・・・・・・・・・・・・」
ふむ。
どうやら弥彦は自分でどうにかする気のようでござるな。
複数から一方的にやられていても、弥彦の瞳からは光は消えていない。
ならば、今ここで自分がでていくのは…彼の為にならない。
そう判断し、しばし成り行きを見守ろうと思いそのまま様子を隠れてみることにと決める剣心。
が。
めしっ。
「『・・・・』じゃ、ねえって。何のんきに見物をきめこんでるんだ?あん?」
そんな剣心にためらいもまったくみせず足蹴りをかましている左之助。
あまりに二人の戻りが遅いので様子をみにきて、何やら騒がしいので近くまできてみたのである。
「そうよっ!弥彦の危機じゃないのよっ!何のんびりと見物を決め込んでいるのよっ!」
がくがくがく。
足蹴りにされてよろめいた剣心の襟首をつかみ、がくがくと剣心をゆさぶりながらも、
弥彦が一方的にとやられているのを目にして思わず叫んでいる薫。
薫もまた左之助とともに、様子をみにきたのであるが。
「か…薫殿…おちつくでござるよ」
「これがおちついていられますかっ!あれでもあの子は私の大事な一番門下生なのよっ!」
いってそのまま弥彦のほうにと走ってゆこうとするが。
ピッン。
「あいまった」
はしってゆこうとする、薫のポニーテールにしている髪を掴んで引き止める。
「弥彦はそのようなことは望んではおらぬでござるよ。弥彦の瞳からは光はきえていない。
  拙者たちが手助けすることは、それ即ち、弥彦の誇りを傷つけることになるでござる」
「でもっ!」
剣心のいいたいことはわかるが、弥彦はまだ子供。
しかも、相手は大人の男が複数である。
そんな薫の心配もわかるが、だがしかし。
「それに。助けられてばかりでは弥彦も本当の意味では強くなれぬでござるよ。
  これは弥彦の戦い。弥彦自身から助けをもとられれば話は別でござるが。
  そうでない限り、拙者たちが手を出すのはお門違いでござるよ」
「獅子は、わが子を千尋の谷に突き落とすってやつか。しかし……」
剣心の言葉をきき、左之助が言いかけるとほぼ同時。

「や…やめてくださいっ!幹雄様っ!その子は何の関係もないんですっ!
  鍵型は渡しますから、どうかっ!」
これ以上、自分のせいで赤の他人が傷つけられるのをみたくない。
それゆえの行為。
その行為が決して許される行為ではない。
とはわかっていても、今起こっている理不尽な襲撃を止めさすのはそれしかない。
そう判断し、涙ながらに懐にいれていた鍵型を取り出す燕。
ばしっ。
燕が懐から取り出した鍵型を奪うようにと取り去り、そして。
「ふっん。…とっとと早くわたさねえかっ!」
ばしっ!
「きゃっ…っ!」
再びそのまま燕の顔をおもいっきり張り倒す。
そして、
「おい。おめえら。大事の前の小事だ。そんくらいにしとけ」
未だに弥彦に数人がかりで攻撃を加えている仲間のほうにと声をかける。
『はい』
そんな長岡幹雄の台詞に、攻撃を加えていた男たちが素直に引き下がる。
だがしかし、そのまま弥彦を最後とばかりに蹴り飛ばす。
「…ぐっ……」
蹴り飛ばされて唇をきりながも呻くしかできない弥彦。
「や…弥彦ちゃん…」
そんな弥彦のほうをむいて涙声で思わず声をかける燕に対し、
ぞろぞろと仲間を引き連れながらもその場を立ち去り間際、
「燕。これからも俺につくせよ?」
にやりと下卑た笑みを浮かべてその場をたちさる。
「またな。弥彦ちゃん」
「ぎゃははははっ」
複数だから勝てた。
というのに相手が弱い、と勝てたのを自分達の実力だと思い込み、そんな言葉を投げかけている男たち。
「…ち、ちくしょう…一対一なら、あんなやつら……」
たしかに、相手が複数いて、しかも同時に襲ってくる。
というのを失念していた自分の未熟さはあるものの。
それでも悔しくてしかたがない。
それゆえに自分の未熟さにくやしくて思わず涙する弥彦。
「ごめ…ごめんなさ…こんなことにまきこんでしまって…ごめんなさい……」
自分も怪我を負っている、というのに弥彦の側にいってなきながらも謝る燕。
そんな燕に対し、
「鍵型から鍵を正確につくるのは、最低丸一日はかかる。奴等の結構はおそらく明晩以降だ」
自分が未熟であるがゆえに、たった一人の女の子すら守れなかった。
それがはがゆくてしかたがない。
その歯がゆさを何とか表にはださないようにして、よろけながらも立ち上がり言い放つ。
「弥彦ちゃん!?…あ……」
ついつい、ちゃんとまた呼んでしまい、思わず口元を押さえる燕。
燕としては、自分より年下というのもあるし、また菫がよくそう話していたこともあり、
弥彦はちゃんで定着しているのもまた事実なのだが。
ちゃんと呼ばれて年頃の男の子がどのように思うのか。
などはそこまでは彼女は気がついていない。
最も、菫の場合はすべてをみこしてそれでもそう呼んでいるのだが……
「…構わねえよ。あんなチンピラ士族すら阻止できないようじゃ。
  俺はまだまだ『ちゃん』だ。……それより、俺は自分から首をつっこんだんだ。
  だからお前が気にすることはねえよ」
いいながも、よろける足取りを何とか保たせなきそうになる顔をみせまいとしその場を立ち去る。
「…弥彦ちゃん……」
そんな弥彦にどう謝っていいのか、声をかけそびれてつぶやく燕であるが。
そしてまた。
『・・・・・・・・・・・・・・・・』
そんな弥彦を少し離れた場所で隠れてみつつも、三人が三人とも無言になっている剣心たち。

とりあえず、ずたぼろになった自分の姿をみせたくなくて。
また、剣心達に心配をかけさせたくなくて。
たまたま店の外にとでていた菫にと先に戻ると伝言を言付ける弥彦。
「がんばってねv」
何もきかずに、ただ立ち去る自分ににこやかに菫がいってきた台詞が気にはかかるが。
どうも…あの菫ちゃんには全てを見透かされてるようなきがする……
警察にははなせねえ。
話せばあのこも共犯になっちまう。
剣心に頼るわけにもいかねえ。
何よりあんなろくでもないやつらのことで剣心達の手を煩わせたくはねえ。
これは…これは、俺の戦いだっ!
そんなことをおもいつつも、気持ちあらたに、いつもの河原にと向かってゆく弥彦。


「でも、弥彦。大丈夫かしら……」
「薫さんも心配しょうね。大丈夫よ。男の子は少しは無茶しつつ大きくならないと」
とりあえず、席にともどり、心配そうにつぶやく薫に対してにこやかに伝言を伝えながらもいっている菫。
「…菫ちゃん。まさかとはおもうけど…弥彦に特訓を課す…とかまではしないでござるよな?
  おねがいだから、今の弥彦にあれっ!だけはやめてほしいでござるよ…
  後から拙者が様子を見に行くでござるから……」
今、ほぼ打ちのめされている状態の弥彦に。
もし万が一…菫がよく自分に行っていた特訓を強いたとすれば。
それこそ弥彦の精神が崩壊しかねないかもしれない。
それが心配であるがゆえにかなり念入りにと何やらいっている剣心。
「…剣心…おまえ、いったいこの菫ちゃんにどういう特訓うけてるんだ?」
剣心の心の悲鳴を何となく感じ取りながらも額に汗を流しつつもといかける左之助。
「剣の訓練だけなら。何か過去のそれぞれの流派の達人とかいう人物でござるか?
  それらの式神なのか当人なのかともかく、いきなりけしかけてきて…それも同時に…とか。
  あとは……」
「いや。いい。俺がわるかった。それ以上はいうな」
先日、剣心が菫に特訓をうけていた様を一度目の当たりにしているだけに、
思わず剣心の説明をさえぎってしまう左之助。
「そういえば。菫ちゃんって陰陽道に通じているらしいわね。すごいわね。そんなまだ小さいのに」
菫が式神というものを取り扱う。
というのは話の中で聞いている。
しかも、道場の掃除のときにそれを利用してくれたのだからかなりたすかっていたりする。
それゆえに、菫がそういうのを取り扱える。
というのを一応は知っている薫であるが、それの応用についてはよくわかっていないのが現状。
まあ、知らないほうが幸せ。
ということもあるのだが。
この場合は……
菫ちゃんは小さくも何とも……
そう思う剣心であるが、怖くて言葉には出せられない。
「なら。剣の特訓以外は課しておくわね♡」
「「……剣の特訓以外って……」」
にこやかに言い切る菫の台詞に思わず異口同音でつぶやく左之助と薫。
そんな二人ににこやかに微笑みながらも、
「さ。とりあえず。弥彦ちゃんの分は持ち帰りにするとして。ゆっくり食べてってねv
  私はまだお仕事があるから♡」
そういって店の奥にと引っ込んでゆく菫であるが。
そんな菫を見送りつつ、
「……弥彦にいちおう、菫ちゃんにきをつけるようにいっておいたほうがよさそうでござるな……」
どこか遠くを見ながらつぶやく剣心の姿が、しばし。
赤べこの座敷の一角において見受けられてゆく―――


「…こんなもんかな。よっしゃっ!」
とりあえず即席ではあるが。
今一番重要なのは一対複数にて戦う方法。
先ほどのように一方的にやられるだけでは…あのチンピラ士族たちを止めることは不可能。
それゆえに、いつも特訓をしていた木の枝にいくつもの木の板を吊るしてきりかかる。
これでこつがつかめるとはおもってはいない。
だが…今の自分で考えられるのはこれしかない。
「でやあっ!」
掛け声とともにいくら反動によって板で自分がたたかれてもくじけることなく挑んでゆく。
弥彦がしばし複数の板と奮闘することしばらく。
やがて日がいつのまにやら翳ってくる。
今晩はいくら何でも奴等はまだ行動はおこさないはずだ。
たかが数刻で合鍵がつくれるはずもない。
それが判っているからこそ。
「…ちっ。まさかあの集英組で得た知識が役にたつなんて…な」
そういった知識は大人たちが話していたので嫌でも身に入っている。
どこの鍵だかしらないが、鍵型から合鍵を作っていたのも幾度かめにしたことがある。
まだ子供である自分には詳しくは聞かされなかったが……
だからこそ、確信がもてる。
一応、ブロだと数刻もあればきちんとした鍵型があれば合鍵はできあがる。
だがしかし、あの燕という少女はプロではない。
それゆえに、鍵型もまた完全に取れていないのは明白。
そしてまた、合鍵をつくるとかいっていたあのチンピラ士族の男もまた……
だからこそ、今日と、明日が勝負。
全ての決着は明日の夜にかかっているのだから。
時間は…あまりない。

「こ…こほん」
幾度、自分が掲げた板に反撃をうけて倒れただろうか。
なかなか勝機が見出せない。
そんなことを思いつつ、少し横になり冷静に分析しようと空を見上げていた弥彦の耳に、
何やら聞きなれた声が聞こえてくる。
みれば、土手道に豆腐桶をもった剣心の姿が垣間見える。
…夕飯の買出しか?
弥彦がそんなことを思うが、
「少し、いいでござるか?」
自分が何かをしている。
というのはこれを見られたからにはおそらく検索されるだろう。
ごまかしはきかない。
ならば。
「あ。うん」
いいつつも、自分の横にと座ってくる剣心を断るすべは弥彦はもっていない。
「風が気持ちいいでござるな」
「…新しい…訓練の方法を考えていたんだ。一人で複数の敵と戦うためのさ……
  あのさ。剣心。何かしらないか?一人で複数の敵と戦う方法」
「何か、そういう事態になったでござるか?」
「そんなんじゃねえよ。…ただ、知っといたほうがいいとおもって……」
「そうか」
やはり、弥彦は自分の手で解決するつもりでござるな。
その心意気を頼もしくもおもう。
だから、こちらが弥彦がどうしてそのようなことを言い出したのか知っている。
ということを表情に出しては弥彦を傷つける。
それゆえに、
「だけど。あの複数の板切れではその複数相手の特訓にはならぬでござるよ?弥彦。
  複数の人数で向かってこられる、ということは。それら全てが独自の動きを持っているでござるしな。
  連携や、波状、その他、囲い込みなど。様々な手を相手は使ってくるのが常でござる。
  まあ、あの複数の板の訓練は、反射神経を鍛える訓練にはなるでござるけどな。
  拙者がうけていた訓練は似たようなのでいきなり熊とかをけしかけられたり、
  またはスズメバチをけしかけられたり……
  あとは、おなかをすかせた複数の狼とかをけしかけられたりしたことがあったでござるな~。
  反射神経を鍛えるのと足腰を鍛える訓練とかいわれて……」
「……おめ~。むちゃくちゃな訓練うけてたんだな…よくいきてたな~…剣心……」
ふと昔を思い出してしみじみという剣心のさらりという爆弾発言に、
思わず額から冷や汗を流しながらもづふやく弥彦。
つうか…剣心の師匠って…むちゃくちゃするな。
それって……
などと弥彦は思うが、よもやそれら全て菫がやったことだ。
とは弥彦は夢にも思わない。
そんな弥彦の台詞に苦笑しながらも、くしゃりと弥彦の髪をなで、
「ま。それはそれでござるよ。まあ、弥彦のいうように。そうでござるな?
  簡単な方法ならば一つだけなら心当たりがあるでござる」
「本当か!?」
「幕末のころ、数では圧倒的に劣る維新志士たちが使っていた手段でござる。
  まずは走って逃げるでござるよ」
「…に、逃げる!?」
そのあまりといえばあまりの台詞に思わず聞き返す。
敵に後ろをせて敵前逃亡など。
それこそ武士の誇りはどこに?
などと思うが、そんな弥彦の思いを見越してか、
「正確にいえば、逃げるふりをするでござるよ。
  敵は当然おってくるでござるが、個人差でばらつきがしょうじるでござる。
  自然、早いものから順番においついてくることになるでござるから、
  そこを狙って一人ひとり確実に始末し、さらにまた逃げるでござるよ。
  それを繰り返せば一人でも複数を確実にしとめられたでござるし、
  また、敵を確実に葬り去ることもできたし、ふりきって完全に逃げ切ることも可能でござる」
ぽっん。
「なるほど」
剣心の説明に思わず納得して無意識のうちにと手をたたく弥彦。
「ただし、これには鍛え抜かれた超人的な筋力が絶対不可欠でござるが……」
続けて言ってくる剣心の台詞に、
ぐっ。
せっかくいいことを聞いたとおもったのに。
自分ではその筋力の自信がない。
それゆえに、思わず声を詰まらせる。
「まあ。用は自分がいかにして相手が何人いようが一対一で戦える状況を作り出せるか。
  それに全てはかかっているでござるよ。そういう状況に持ち込むのが一番大切でござる。
  そこを考えるべきでござるよ」
最も、飛天御剣流にいたってはそれらは当てはまらないが。
飛天御剣流自体が一対複数との戦いを主とした戦いの流派。
それゆえに、何よりも速さが重要視されるのだから。
一撃で確実に相手を普通に剣を振るえば確実に惨殺する…殺人剣。
もっとも、それは手加減具合と技の出し具合の微妙な力具合で何とでも訂正は可能だが。
それはかなりの力量を要する技術。
まあ、剣心はそれらの技術も全て会得してはいるのだが。
「なるほど。一対一で戦える状況…か……」
今までそこまで考えはいたらなかった。
ただ、複数と相手をしてどうやって全員に勝てるか。
ということにしか。
そういう状況に持ち込むという考えすらも思いつかなかった。
「それと弥彦」
「ん?」
しばし考え込む弥彦に真剣な表情をして見つめていってくる剣心に思わず首をかしげる。
「神谷活心流は活人剣。人の為に振る剣であり、人を守るための剣でござる。
  一本の剣に、自分と、自分が守ろうとするものの二つの命をかける。
  それが活人剣の戦いであり、負ければ自分も、そして自分が守ろうとしたものの命運もつきる。
  活人剣を振るうものは、いかなる敗北も許されない。それだけは肝に命じておくでござるよ」
真剣な表情でいってくる剣心の台詞に思わず弥彦もまた真剣な顔をしてこくりとうなづく。
そして、弥彦がうなづいたのを見届け、
「さってと。拙者は買出しにいくでござるが。弥彦はどうするでござるか?」
「あ?俺?俺はもうちょっと……」
「あまり無理をするでないでござるよ?」
「わかってる」
そんなやり取りを交わして街のほうにと歩いてゆく剣心を見送りつつ、
「よっしゃっ!」
とりあえず気合を入れなおすためにとかるく自分の両頬を軽くたたく弥彦。
そして。
「反射神経…はあるにこしたことはないしな。…でやあっ!」
一対一で戦える状況にどうやって持ち込むか。
それは夜になってからでも考えるのは遅くない。
そんなことをおもいつつ、今一度複数の板を相手に稽古にいそしむ弥彦の姿が、
しばし、河原の一角にて見受けられてゆく。

「弥彦ちゃん♡」
「?何?菫ちゃん?…だから、そのちゃんはやめてほしいんだけど……」
夕食が終わり、とりあえず風呂に入り、あとは寝るだけ。
とりあえず夕食時も風呂にはいっているときもどうやって複数いるであろうあの男たちを、
一人ひとりにばらけさせるかずっと考えていた。
布団に入りかけた弥彦にと、なぜかにこやかに部屋にきて放しかけてきている菫に対し、
思わずため息とともにつぶやく弥彦。
いくらいっても、この菫ちゃん…俺のことを、ちゃん呼ばわりするんだよなぁ~……
そんなことを弥彦は思うが。
「何か、面白い悩みもってるようだけど。いい方法があるわよ♡」
「……え?」
「イメージトレーニングvっていうことで、精神のみ。つまり夢の中で頑張ってね♡」
「…って、菫ちゃっ!?」
ぐらっ……
何もいっていないのに。
どうして自分が何かを考えている。
というのを見抜いたのか。
それも気にかかるが…その、いめーじとれーにんぐ…って何だよぉぉ!?
……弥彦の叫びは…そのまま、遠のく意識の向こうにと掻き消されてゆく。

「……ここ…は……」
夢の中v
夢だけど現実と平行してるから、町並みとかはそのままだし。
というわけで、頑張ってね♡
弥彦ちゃん、いくらでもやり直しはきくから♡
ちなみに、夢だから死んだとしてもすぐまた初めからやり直しになるからね♡
「って!?菫ちゃん!?いったいっ!!!」
菫の声は頭に響いてくるが、姿はみえない。
そしてまた……
「…ここって……」
目の前には…ちょっとした大きな家。
そして。
ざっ……
………嘘だろ?
……なぜかそこには。
抜き身の剣を構えている…昼間の男たちの姿が……
「何がいったいどうなっているんだよぉぉ~~!!!」
弥彦の叫びは…当然、誰にも届くことは…ない……


俺の剣に、守るものの運命がかかっている。
敗北は絶対に許されない……
かっ!
ゆっくりと目を見開き気合を入れる。
大丈夫。
それでなくても昨日の夜ですら、あの菫ちゃんがいめーじとれーにんぐとかいって、
どうやったのかはしらないが。
自分の精神に戦いの訓練と称して特訓してくれたのは無駄ではない。
赤べこの店主の家の周りの地形。
そしてまた、おそらく向かってくるであろう、あの自分をぼこぼこにしたチンピラ士族たち。
それらをどの路地に誘い込めばちょうど一対一で戦えるか。
それも頭にしっかりと叩き込まれた。
まあ、まさか精神のみの訓練…だとはいってはいたが、痛みも全て肉体に宿るなどとは夢にも思わなかったが。
だがしかし、それでいくつか合点がいったこともまた事実。
おそらくは、自分がうけたような何か。
あのとき…あの、剣客警官隊との戦いのときにもおそらく菫ちゃんは何か似たことをしたんだろう。
という得心がいった。
おそらく、彼らの決行は…今晩。
ゆえに。
「神谷活心流、明神弥彦!いざ尋常に勝負っ!」
薫達に気づかれないように道場を出た。
実際はおもいっきり気づかれている。
というのを弥彦は気づいていないだけなのだが。
そのまま、目的の場所。
すなわち、赤べこの店主、妙の家族が住んでいる家のほうにと夜の道をかけてゆく。

「よし。いくぜ」
自分の取り巻きを幾人も従えて、一応目深に頭巾を口元などに覆って顔は隠してあるものの、
だがしかし、体型や声からすぐに自分達である。
というのがばれる。
ということすら完全に失念というかわかっていない男たち。
彼等を指示する男の台詞に、
「……ほ、ほんとうにやるんですか?」
そりゃ、たしかにお金はほしいけど。
それにここ最近、あの店のはぶりがいいのはしってはいるが。
だがしかし、もし押し込み強盗がばれれば自分達にまっている運命は…下手すると死罪。
それが判っているからこそ思わずしり込みした声を漏らす。
まあ、その考えが一番正解なのであるから、そのまま別にいうことをきかなくてもいいから、
逃げ出せばいいのに…とおもうのは、何も第三者でなくても思うことであろう。
「幹雄さん…大丈夫なんですか?」
びくびくおどおどしながらも聞いてくる自分の子分たちの台詞に、
「あん?何をびびってんだよ。いっただろ?商人の金なんてもともと士族あっての金なんだ。
  ごっそりいただいても一向にかまわねえよ」
いいながらも、顔を覆っていた頭巾をさげてにやっと笑う。
どこをどう教育をうけたらそのような考えになるものか。
士族あってのものだね。
ではなく、汗を流して働く人々あってのものだね。
だというのに。
「大丈夫。失敗なんてしねえよ。それにこうしてわざわざ馬鹿娘つかって合鍵まで……」
ちゃりっ。
いって鍵型から作り出した合鍵を取り出して手の平の上でかるく投げる。
これさえあれば何の問題もない。
そう思い込んでいるのだから余計にたちがわるい。
鍵さえあれば誰にも見つかることなく忍び込める。
とそう思っているのもまた世間知らずもいいところ。
普通、ある程度のお金などを管理している場所ではきちんと見張り番。
というのを立てている…というのを完全にこの男は失念している。
また、それを指摘する仲間もいない、というのもあきれる以外に他はない。
幹雄、と呼ばれた男が鍵を軽く空中に投げるとほぼ同時。
しゅっ。
軽く投げたはずの鍵が一瞬、目の前から掻き消える。
「?」
いきなり目の前にあったはずの鍵がかききえて疑問の表情を浮かべる男の視界と耳に、
ざっ。
何やら誰かが立ち止まる足音が。
ふと視線を移してみれば、その手に先ほどまで自分が手にしていた合鍵をもち、
そして体制を整えなおしている弥彦の姿が。
「て…てめえっ!昨日のっ!」
その姿には見覚えがあり、思わずさけぶ。
ちゃりっ。
「まったく。俺の掏りの技術は結構役に立ちやがる。喜んでいいのか悪いのか……」
ちゃりちゃり、くるくる……
今、長岡幹雄、と呼ばれた男の手から掏り取った合鍵をくるくると片手で回しながら自嘲気味につぶやく弥彦。
そして。
はっと我にと戻り、
「こ…このがきっ!かえしやがれっ!」
などといって弥彦にむかってゆこうとする幹雄たち。
だがしかし。
そんな男たちに対してにっと笑い、
「ほしけりゃ、力づくできなっ!得意だろっ!」
「まてこらっ!」
だだっ!
鍵をもったまま走ってゆく弥彦をあわてて追いかけてゆく男たち。
その光景を少し離れた場所で思わず目を見開いてみている燕がいることには、
弥彦も、そして男たちも誰も気づいていない。
大丈夫。
このあたりの地形は嫌というほどに覚えこんだ。
というか覚えこまされた。
というのが正確であるが。
それに、何というか…精神のみの修行で行った敵対する相手。
それと比べれば今自分を追いかけてきているチンピラたちははっきりいって格が違う。
というのもまた事実。
……何しろ、精神修行の最中では、いきなり抜き身の剣を構えた男たちが追いかけてきたのだから……

だだだ……
よし。
思惑通りついてきている。
これこそが自分が考えていた作戦。
男たちが自分を追いかけてきているのを確認しなから、追い詰められたような様子を取りながらも、
とある行き止まりの路地の中にと入り込む。
行き止まりであるがゆえに、背後には移動できない。
また狭い路地であり左右も両方壁に囲まれていることから左右にも逃げ場はない。
大人一人がかろうじて通れるかどうか、といった狭さの路地。
子供の弥彦は別に行動するのに何の問題はないにしろ。
だだっ!
「おいつめたぞ!」
「観念するんだなっ!」
「もう逃げ場はないぞっ!このがきっ!」
口々に言いながらも、手に手に木刀を手にとりながら叫ぶ男たち。
少しでも理性があれば小さな子供に大人が数名がかりで暴力を振るう。
というのがいかに情けない行動なのか。
というのがわかるであろうに。
よしっ!
ぴたりと足をとめて自分自身に活をいれ、
そして。
「こいっ!今度は絶対にまけねえっ!」
いって正眼の構えで手にしている竹刀を男たちにと突きつける。
「何を!」
「袋のねずみがほざ…」
だっ!
ぎしっ。
「…け…!?」
二人して同時に殴りかかろうとするものの、だがこの路地は大人二人には狭すぎる。
ゆえにもののみごとにつっかえていたりする。
もらった!
「てやっ!たあっ!」
そんな男たちにと間髪いれずに一撃をそれぞれ加えて気絶させる弥彦。
「こっの……」
続けざまに同じようにして襲い掛かってこようとし、そのままつっかえる男たちをさらにまたまた気絶させる。
ちっ。
そんな仲間たちの様子をみて舌打ちし、
「てめえらっ!何つっかえてんだよっ!この馬鹿タレがっ!一人ずつかかれっ!」
コメカミに青筋を浮かべて叫んでいる幹雄。
彼は気づいていない。
弥彦がそれを目的にしている。
ということに。
一対一。
しかも、体が小さな弥彦にとってはこの狭い路地で動くのはかなり有利。
それゆえに、向かってきた男たちをことごとく一撃のもとにと倒してゆく。
やがて、五・六人以上倒されてゆくのをみて、ようやく。
「…!なるほど…そうか。そういうことか。追い詰められたふりをして、
  実は一対一で戦える狭い場所へ誘い込む作戦か…ふ~ん。ガキのくせに考えやがったな」
ようやく今更ながらに弥彦の作戦に気づいてそんなことを言い放つ。
そして、にやりと笑い、
「だがっ!それが命取りだっ!ここにお前の逃げ場はねえっ!おまえらっ!一斉に木刀をなげつけろっ!」
残っている男たちにと指示をだす。
その台詞に、思わずぴくりと反応し、
「し…しかし、幹雄さん。それじゃあ、あのガキ、ひとたまりも……」
さすがに人殺しなどをすれば死刑は免れない。
それがわかっているからこそ思わず抗議する。
だがしかし。
「かまわねえよっ!何びびってんだっ!このタコどもっ!
  人の一人や二人、殺ったって、埋めちまえばばれやしねえってっ!」
世間知らずもここまでくればかり立派…といえるのかもしれない……
そう叫ぶ幹雄の台詞に、おもわずぞくりとする男たち。
…これ以上、この幹雄にはついていけない。
という思いが今更おくればしながらもようやく男たちの中に芽生え始める。
だが、その台詞は裏をかえせばいうことをきかなければ自分達が殺されて埋められる。
というのを暗にものがたっている。
それゆえに、そのまま各自木刀を構えて弥彦に投げようとする。
数は残りあと三つ…か、叩き落せない数じゃないな。
それをみて冷静に判断している弥彦。
伊達に一晩中。
夢…というか、自身の精神のみの中で訓練をうけたあれにくらべれば。
夢の中の訓練では三人どころではなかったのだから。
こりゃ、どうやったかはしらないけど、菫ちゃんに感謝だな。
怯えることなく冷静に判断できる自分に多少驚きながらもひとまず菫にと感謝する弥彦。
まあ、夢の中で幾度かたしかに男たちに殺されたりしたのもあったりしたのだが……
それはそれ。
そのままきっと動じることなく竹刀を構え、投げられてくるであろうそれに備える。
と。
びしっ。
手にしていたそれぞれの木刀をなげようとしていた男たちの動きがぴしりと止まる。
彼等の目に映ったもの。
それは、弥彦の頭上。
すなわち、弥彦の背後にとある行き止まりの壁。
その向こうにある民家の屋根の上にたたずむ人影が二つ。
その人物たちは冷たい瞳で自分達を見据えている。
ひいいっっ!!
その姿をみてまともに狼狽し
「あっあっあっ~~!!??」
意味不明な叫びをあげそして、くるりと向きをかえ、
「あ…あの十字傷!たしか滅法強いって評判のっ!」
「喧嘩屋の斬左までいやがるっ!逃げろっ!こっちがころされちまうっ!」
「もうこれいじょうはついていけねえっ!命あってのものだねだっ!」
何やら交互に叫びながらもいきなりその場を逃げ出す残り三人の男たち。
「?お。おい、てめえらっ!?」
幹雄は弥彦のほうにばかり気をとられていて弥彦の頭上。
すなわち少し先の屋根の上にいる人物にはまったくもって気づいていない。
「おいこらっ!何びびってんだ!?おいっ!」
逃げてゆく男たちに声をかけるものの、逃げる男たちもまた必死。
何しろ、あの武田観柳すらをも倒した。
と評判の二人である。
…相手をして自分達が生き残る自身などは…ない。
まあ、彼等はそのうちの一人がよもや伝説の人斬り抜刀斎当人だ、とは知らないにしろ。
知っていればまず、弥彦にちょっかいをかけよう…という気にはならなかったであろうが……
ん?
男たちが自分の背後をみて逃げ出したのに気づき、くるりとむきをかえて背後を確認する弥彦。
ひゅ。
そんな弥彦に気づかれないようにあわてて隠れている二人の姿。
弥彦にはその姿は目にははいらなかったが……
「・・・・・・・・・・・・・・・」
誰がいるのかは一目瞭然。

「ま、俺らの出番はこんなとこかな」
「そうでござるな」
屋根の上に腰を下ろしそんな会話をしている左之助と剣心。
そして、横にいる左之助のほうをみて、
「…しかし、どうして拙者がここにくるとわかったでござるか?誰にもいわずに出たのに……」
とりあえず疑問におもっていたことを口にする。
まあ、剣心とすれば弥彦の心配はあまりしてはいないが…だがそれでも。
弥彦が昨夜…菫に何をされていたのか…というのが何となく想像がつくがゆえに放っておけない。
というのもあるのもまた事実。
そして…あの男たちを菫が放っておくはずがない。
というあるいみ核心もあるからこそ、左之助や薫にはだまってでてきているこの状況。
そんな剣心の問いかけに、かるく息をつきながら、
「わかるさ。これは『弥彦の戦い』といっても、まけりゃあ燕って娘や赤べこに迷惑がかかる。
  それを知ってて放っておくお前じゃないし。まして獅子うんたらのことわざを実行するにゃぁ。
  はっきりいってお前は馬鹿なほど人がよすぎるからな」
「……ほめられているんだか、けなされているんだかわからないでござるな……」
さらっといってくる左之助の言葉に思わず苦笑するしかない剣心。
そして。
「ま。何にしても。ここからが真の勝負でござるよ」
「ああ。真の一対一だな」
ひょっこりと弥彦に見つからないように顔のみのぞかせて屋根の上から弥彦の姿を確認する二人。

まったく……
あいつら……
余計な真似を。
とはおもうが、今はそれよりも目の前の男。
一番問題なのはこの男。
長岡幹雄と呼ばれていた男の正面に向き合い身構える弥彦。
自分を目の前にしてもまったくもって怯えた様子もなくきっと見据えてくる弥彦の姿に苛立ちを感じる。
「ったくっ!これだから町人あがりのチンピラはつかえねえっ!いざってときに役にたたねえっ!」
きっん。
いいつつも、木刀の中にと仕込んでいた刃を抜き放つ。
そして、
「まさか。この俺がこんなガキ相手に甲元一刀流目録の腕を振るうことになるたあっなっ!」
いいながら、刃を弥彦のほうにと構えるが。
その構えははっきりいって隙だらけ。

「…おい。あいつ、たしか真剣は始めてじゃなかったか?」
「……まあ、昨夜。菫ちゃんに何か夢の中で特訓うけてたようでござるし……
  たぶん、精神的には弥彦は真剣くらいじゃ動じなくなってるとおもうでござるけど……」
「……あの子は人の夢にまで干渉できるのかよ…おひ……」
「左之助。菫ちゃんに関しては深く考えたらまず負けでござる」
真剣を突きつけられる弥彦をみて思わず心配した声をだす左之助に、
さらりとそんなことをいっている剣心。
そんな剣心の説明に思わず左之助が突っ込みをいれるが。
そんな左之助の突っ込みをさらりと交わす。
…あまり、深く追求されるのを拒むのをかねて。

「いくぞっ!おらあっ!」
いって剣を繰り出すが。
その一撃はもののみごとに弥彦にとかわされる。
見える。
真剣での太刀筋がきちんと見極められる。
それに…この男、動きに何か無駄があるし。
つ~か、夢の中でむかってきた男たちのほうがかなり動きに隙がなかったけど……
夢の中では相手の動きを見極められずに手ひどい手傷を負うこともあった。
だが、目の前のこの男の動きは手にとるようにとわかる。
夢の中でもおもったが、少しづつではあるが毎日の稽古が確実に成果を結んでいる証拠。
くやしいけど、こりゃあ薫に感謝だな。
とおもってしまう。
まず、あんな特訓を菫ちゃんに夢の中ででも毎日やられたら精神的に持たない。
というのが弥彦の本音。
それよりは薫との特訓のほうが遥かにまし。
たったの一晩でそう悟っている弥彦。
「ぬううっ!」
ひゅっ。
ビュッン。
ことごとく繰り出す一撃は弥彦にあっさりとかわされる。
何で…何でこんなガキなんかにっ!
俺の腕は一流のはずだっ!
そうおもい、さらにムキにとなってゆく幹雄であるが。
彼は気づいていない。
彼が自分が一流。
とおもっていたのは自分に稽古をつけていた人物がわざと負けていたりした。
ということに……
それは金持ちなどではよくあること。
子供に自身をつけさすためにわざと一流の腕をもつ相手が稽古をつけている相手にとまけ、
その稽古をつけている人物にと自身を持たせる。
そういった稽古をつける人物は、自称一流、と名乗っているだけでそれほど腕はないのだが。
それでも、金持ちの親はそれで十分に喜び莫大な報奨金を与える。
それゆえに悪しき習慣として根付いていた風習。
「こっの…がきがっ!」
おもいっきり懇親の力をこめて振り下ろす一撃もいともあっさりとかわされる。

「・・・・・・・・・」
そんな様子を路地の先の大通りのほうから眺めている少女が一人。
やっぱりいけないことはいけない。
長岡の家のためにも、どうにかして幹雄様に思いとどまってもらおう。
そう決意を新たに夜更けだというのに一人でやってきている燕の姿。
そして、ようやくみつけた幹雄は、あの弥彦ちゃんと剣を交えている。
私…どうすれば……
声をかけることもできない。
ただただ、だまって見守るしか。
そんなことを燕が思っていると、
ぽっん。
燕の背後から軽く誰かが燕の肩をたたき、
「燕ちゃん。こんな夜更けに女の子の一人歩きは危ないわよ」
聞き覚えるある声にと振り向けば、そこには…
「あ…薫さん……でも…私……」
そこには、幾度かあったことのある神谷薫の姿が。
「やっぱり。よくないとおもってあの男をトメに来たのね」
そんな薫の言葉にこくりとうなづく。
そして、
「………主家に尽くすのが、武家士族のしきたり。と私はずっと今まで教え込まれてきました。
  けれど…やっぱり、他人様にかかる災難は見過ごせません。
  それにお家のためにも…そうおもって、是が非でも幹雄様を止めようと来て見たら弥彦ちゃんが……」
ぎゅっと拳を握り締めて自身の胸を掴んでつぶやくようにいう燕の台詞に、
ふたたびかるく肩にと手をおき、
「残念だけど。燕ちゃんじゃ。あの男はとても止められないわ。ここは弥彦にまかせていいから。
  その変わり、一つたけ約束をして」
「約…束…?」
そういってくる薫の言葉に思わず戸惑いながらも問い返す燕。
「そう。約束。弥彦が勝ったら燕ちゃんはもっと強い心をもつ!」
「!」
涙すらうかべていた燕は薫の言葉に思わず顔をはっとしてあげる。
「くだらない古いしきたりなんかに囚われないで。
  こんどまた同じようなことになったら最初からきっぱりと断ること。
  時代がかわって、四民平等の世の中になったといっても、
  人の心が代わらなければ、何の意味もないのよ」
そう。
一人ひとりが変わらないと意味がない。
燕と薫がそんな会話をしている中。

クソッ…
こ……
「このクソ子供いっ!もう勘弁ならねえっ!甲元一刀流!必殺!『浮き足おとし』っ!」
何やらぷちぶちとコメカミや額に青筋をたてまくりながら叫び、
弥彦の足をめがけて刀を振りかぶる。
おもわず反射的に片足を上げる弥彦であるが。
普通ならばここで一瞬戸惑い、そのままもう片方の足が斬り裂かれる。
これが一応、この技の特徴。
…かなり情けない技ではあるのだが。
けっこうこれが効くのだから人間の心理というものはある意味不可解。
「っ!勝って!お願い!かって!弥彦君っ!」
あの技は…っ!
それをみて思わず弥彦にむけて叫ぶ燕。
燕の声に燕が見ていたことに気づきさらに精神を集中させる。
自分の剣には自分と、そして守るべきものの命がかかっている。
剣心の言葉が脳裏をよぎる。
そのまま。
ばぎゃっ!

「おおv」
「あ、武器を壊したでござる……」
足の下にときた刀をそのまま浮かせた足で踏みつけ地面にたたきつける。
その反動でばきっと刃が折れる音が周囲にと響く。
それをみて口笛を思わず反射的にふき叫ぶ左之助に、
ある意味冷静に観察しつつもつぶやいている剣心。

「なっ!?」
まさかこんな子供に自分の仕込み刀が!?
それにすら驚く。
そしてまた、まさか刀を踏みつけられる。
というこんな行動は今まで経験したことがない。
というか、今まで彼と対峙した輩の全てがわかっていてもしなかっただけのことだけなのだが。
「俺はっ!絶対にかつっ!!」
ばぎゃっ!!
そのまま、竹刀を構えなおしておもいっきり相手のみぞおちに一撃。
「がっ…」
馬鹿なっ!
まさか、この俺が…一流の腕をもつこの俺が子供相手に負ける…だとぉ!?
そんな叫びを心であげながらも、そのままその衝撃に耐えかねてその場に倒れてゆく男の姿。

ズドォオン……

あまりに自分勝手で、そしてまた勘違いもはなはだしかった男の末路。
相手が完全に気をうしなって、反撃してこないのを確認し。
息をはあはあとつきながら。
「……で?薫。どうしてお前がここにいるんだよ?」
「…え?…あ、えっとぉ……」
じと目で問いかけられる弥彦の言葉にあさっての方向をみながらも答えに詰まる薫。
そんな薫に対してため息をひとつつき、そしてきっと後ろの家の屋根の上をにらみ、
「そして!そこの屋根の上の二人もだっ!」
そう言い放つ弥彦。
びくっ。
そんな弥彦の言葉に隠れたままだ、二人して顔を見合わせ、
「つくつくほ~し、つくつくほ~し……」
「み~んミンミンミン……」
セミの鳴き声をしている剣心と左之助であるが。
「この時期セミがいるはずがないだろうがっ!」
そんな二人に対して思わず突っ込みをいれる弥彦。
「…ったく。おせっかいなやつらだぜ……」
そういいつつも、自分を心配してくれていたのがわかるがゆえに強く怒ることもできない弥彦。
くすっ。
そんな彼等のやり取りをみることしばらく。
ふわっ。
空中で一部始終を姿を消してみていた菫がふわりと地面にと降り立ち、
「どわっ!?菫ちゃん!?いったいどこに!?」
「…あれ?菫ちゃんもきてたの?」
どこにいたのかしら?
ふわりと降りてきた菫の姿をみて思わず本気で驚く弥彦に、
きょとんとしながらも問いかけている薫。
そして。
「ダメよ?菫ちゃん。こんな夜に子供一人でであるいたら。
  菫ちゃん、かなりかわいいんだから、何かあってからじゃおそいんだから……」
そんなことを菫に対して言う薫の言葉を耳にと挟み、
ずるっ……
「って!おいこらっ!剣心っ!人をつかむなっ!人をっ!」
おもわず力が抜けて屋根の上からずりおちそうにとなり、
左之助の服を掴んで一緒くたに落ちそうになっている二人の姿が。
くすくすと、離れているがその様子が手にとるようにわかるがゆえにくすくすと笑っている菫をみて、
「?…菫ちゃん?」
疑問に思い首をかしげている燕。

「とりあえず。私は燕ちゃんを送っていくわね。菫ちゃんと弥彦はどうする?」
とりあえずいつまでもこんな夜も夜更けに燕をこの場においてゆくというのは気がひける。
誰かが彼女を家におくっていかないと。
それゆえに、何やら未だに屋根の上のほうで騒いでいる剣心と左之助はあてにはならない。
そう判断し、自分が燕を家にと送ってゆくことをきめて問いかける薫に対し、
「あ。私は剣心お兄ちゃんたちともどるから。とりあえず、弥彦ちゃん、お疲れさま~。
  ね?あれ毎日うけてみる?けっこう実力つくけど?」
「いや。遠慮しとく」
即座に菫の提案を却下して断る弥彦。
あんなもの、毎日うけていたらそれこそ精神崩壊しかねない。
昼間もきいたけど、何で人の夢をこうもあっさりといじることができるのか。
それは皆目不明であるにしろ。
「?そう?」
残念そうにいう菫であるが、続けざまに、
「あ。なら弥彦ちゃんも燕さんと薫さんについていったほうがいいんじゃ?
  どうも剣心お兄ちゃんたち、まだ屋根の上で遊んでるみたいだし。
  女の子二人で夜道歩くのは危険だし」
にこやかに弥彦に対して提案する。
「え…でも……」
そんな菫の台詞に戸惑いを浮かべる燕に対し、
「それもそうね。それじゃ、弥彦。燕ちゃん、おくってくわよ」
「あ…うん」
そんな会話をしつつも、とりあえず。
その場に菫一人を残し、燕を家路にと送るためにと移動してゆく二人であるが。
そんな二人を見送った後。
にっこりと、未だに気絶している男達をみつめ、
「さってと♡」
満面の笑みを浮かべる菫の姿が。
しばしその場において見受けられていたのを…誰も知らない……

「…え…えっと……」
何やら座り込んで口から泡を吹いて意味不明なことをいっている男達。
「……菫ちゃん。何をしたでござるか?」
剣心と左之助がどうにか屋根の上から地面におりて、弥彦が戦っていた路地にとたどり着いたとき、
そこにはなぜかにこにことしている菫とは対照的に、虚ろな目をしている男達の姿が。
それゆえに思わず何といっていいのか言葉を詰まらせている左之助に、
盛大にため息をつきながらも菫に対して問いかけている剣心。
「あら?別に♡さ、それより。もどりましょ♡剣心お兄ちゃん、左之助お兄ちゃん♡
  この人たちはほうっておいても問題ないし♡」
そんな二人に対してにこやかに微笑みかける。
「まあ、こいつらもいい大人なんだし。そのうちに自分で帰るだろうけど……」
だけど、この様子は尋常ではない。
とおもうのは自分の気のせいか?
などと左之助は心でおもいつつもづふやいていたりするが。
「…とりあえず。警察に様子がおかしい人がいる。と届けてから戻るでござるよ……」
このまま放っておく。
というのも気がひける。
ゆえに、ひとまず剣心と左之助は警察にと一応届け出ておいてそのまま菫とともに戻ることに。


「あ。おはよう。燕さん」
「おはよう。菫ちゃん」
昨夜、帰り道すがらに薫と弥彦に約束した。
もう、びくびくおどおどせずに自分の信じた道を進んでゆく。
と。
それゆえにどこか晴れやかな表情でいつものようにと赤べこにやってきた菫にと挨拶する燕。
「さ。今日もがんばろ♡」
「そうね」
そんな会話をしつつも、二人。
赤べこでの仕事を開始してゆく。

そしてまた……
「なあ?剣心?だから。あの菫ちゃんって…何なんだ?」
「それは俺もききてえ」
「…弥彦。左之助…世の中には、知らないほうが幸せ、ということもあるでござる……」
左之助と弥彦から質問攻めにあう剣心の姿がしばらくの間。
神谷道場においてみうけられてゆくのであった。

その後。
あの男達の行方を知るものは…いない……


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あとがきもどき:
薫:…菫ちゃんはいったい何をしたんでしょうか…(汗)あの男達に…(滝汗)
姫:?別に何もvただ、こういったことくらいだけど♡

な……
何がおこったのか。
目の前にいるのもまた自分。
だけど確かに自分はここにいる。
そして…そのまま自分から自分にむけて刀が振り下ろされてくる。
「やめろぉぉ!」
叫ぶが聞き入れられることもなく、そのまま切刻まれ、どこかの河原にと埋められる。
息がくるしい…気がとおくなってゆく…
そして、そんな自分の遠のく意識にと、
「ここにうめとけば誰にも気づかれることはねえさ。ははははは」
などという自分の声がしてきている。
いったい……
そのまま…意識が完全に失われ、視界がすべて真っ暗になると同時…

ざしゅっ…
「ぎゃぁぁっ!」
何やら悲鳴のようなものが。
ふとみれば、回りには累々と横たわっている人の山。
そして、目の前には……
「う…うわぁぁ!」
剣をそれぞれに構えた…武装というか鎧武者たちの姿が……

姫:こんな感じで、ちょこっと自分が自分を殺すシーンとか。
  あとは戦国時代の一番被害が多かったところに送り込んだりとか。
  あとはとある時代の銃球が飛び交う最中にほうりだしてみたりとか……
薫:・・・・・・・・・・きかなかったことにします……
姫:そう?あ、薫さんもやってみる?
薫:え…えんりょしますっ!そもそも!菫ちゃんは人の夢の中に今朝方でてきたじゃないですかっ!
姫:それはそれ、これはこれv
薫:って!どこに飛ばすかにこやかにエル様と相談してきめないでええっ!

――バシュ……

姫:さってと。どこかにいった薫さんはほっといて。
  次回はアニメ版の横綱奮闘気をとばして、恵さんの話にいくみたいよv
  それじゃ、まったねv

(薫はとあるどこかの深海にて巨大生物に食べられ中……)

2007年3月5日(火)某日

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