まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
ちょこっと前ぶりの注意点。
この話、剣心と巴の過去が原作&アニメと異なっていますv
あしからずvまあ、結婚していたりするのはいっしょですけど。
巴の婚約者は剣心に殺されてないし、(間接的に殺されたともいえるかもしんないけど)
また、剣心は巴を殺していません。
(でも剣心に関わったがゆえに死んだのは事実)
そのあたりを何とどご了解くださいv
何はともあれ、いくのですv
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「………どうして……」
浴びた返り血をそのままに、その場で呆然と立ちすくむ。
何か嫌な予感がした。
彼女の弟が手紙をもってきたそのときに。
それゆえに、桂にとことわって、彼女の実家にと出向いていったところ……
そこにまっていたのは、冷たくなっている最愛の人の姿。
話をきき、いてもたってもいられずに。
そしてまた、その人物が暗殺対象になっていることを聞かされていた矢先ゆえ、
自分の後継者となっていた彼にはわるいが、そのまま切り込んだ。
自分の側にいたら彼女も危険なので実家に帰したのに……
そしてまた、彼女の婚約者もまた、かつて暗殺対象の要人を警護していたが、
それがわかっていたからこそ、生かしおいたというのに。
夢の中で自分のせいで不幸にしてしまった最愛の人。
それゆえにこそ、現実では間違わないようにと心がけた。
それなのに……ありえるはずの歴史といわれていた夢と現実を摩り替えても、
大切な人はこの世を去った。
彼女の魂が自分の常に側にいて見守ってくれている。
そうきかされても…自分には彼女の姿を視ることは不可能。
いや、視ようとおもえば、いくらでも手段はあったのであろうが。
その勇気がなかった。
というのも事実。
権力をかさにきて、すき放題していた彼女の父親が所属していたとある藩の下屋敷。
その下屋敷の最重要人物が今、目の前に切刻まれて横たわっている。
いや、横たわっている。
という表現は的確ではないのかもしれないが。
何しろ彼は切刻まれているのだからして。
ただ闇雲に斬りつけただけで、いともあっさりとその肉体は細切れのようにと分断された。
自分に降りかかった血をぬぐうことすらせずに、血に濡れた刀を手にもち呆然と立ちすくむ。
本来、この刀は対象人物以外には無害な代物。
そのために…逆刃刀を用いていたのだから。
だけど……
「……巴……」
彼女のような身の上のひとを再び作り出してはいけない。
その思いゆえに…逆刃刀ではなく…本来の刀に持ち替えたのは……そのすぐ後のこと……
剣客放浪記 ~それぞれの懺悔~
「あのやろうっ!わざと外して俺たちをなぶりころす気だな!?」
薫を小脇に抱きかかえたままで連続して打ち出されてくる回転式機関砲。
それをみつつも思わず叫ぶ左之助。
左右に銃口を向けながらも連続して打ち出すそれに伴い、
それぞれに部屋中を逃げ回っている剣心たちとお庭番衆たち。
「観柳!どうしてそんなものを!」
逃げ回りながらも、そんな観柳に対して思わず叫ぶ般若に対し、
「観柳様といわんかっ!無礼者めっ!」
どいつもこいつもこの俺様を馬鹿にしやがって!
などと思いながらもその標準を般若一人にと定めて連続してハンドルを回す。
「!?」
自分にむかってくる無数の弾丸。
よけることすらできずに立ちすくむ。
と。
どっん!
立ちすくんでいる般若をそのまま体当たりでその場から逃し、
バシュ!
般若の身代わりとなりその弾丸を足にとうけてその場にと崩れ落ちる蒼紫の姿。
どさっ。
「蒼紫っ!」
足を撃ちぬかれた蒼紫をみて思わず叫ぶ剣心に、
「お頭!」
自分をかばって撃たれた蒼紫に対し反射てきに叫ぶ般若。
そしてまた。
『お頭!』
残りの、ひょっとこや式尉、癋見も同時に叫ぶ。
「……大丈夫だ」
そんな部下たちに対して心配しないようにと痛みをこらえながらも気丈に答える蒼紫。
「…ふっん。ま、一服ついでに教えてあげましょう。
私はねぇ。もともと阿片の密売人なんかで終わる気は初めから毛頭ないんですよ。
新型阿片で資金をつくり、最新型のガトリングガンなどの武器を売りさばけば莫大な金になる」
蒼紫のもとにかけよるお庭番衆の姿をみつつも、懐からハマキを取り出し口にとくわえ、
ふぅっと煙りを吐き捨てながら言い放つ観柳の姿。
「死の商人ってわけね」
そんな観柳の台詞に、薫が的確なことを言っているが。
「きさま。人の人生と命を食い物にしてまで金を手にしたいでござるか!?」
剣心もまた、そんな観柳の台詞に怒りを覚え思わず叫ぶ。
「いいか?抜刀斎。金さえあれば剣術など足元に及ばぬ力すら簡単に手にはいる。
このガトリングガンのようにな。金。まさにこれこそ最強。真の最強はこの私。
緋村抜刀斎。おまえがその超人的な強さを得るまでにどれほどの代償と年月をはらったか……
それは並大抵なものではなかったでしょう?
だがしかし!金さえあればそれ以上の力すら一瞬で手にはいるっ!
金!まさにそれは最強!力の証!」
ヒステリックに笑いながら、そして再びガトリングガンの取っ手に手をかけて、
「さっきはよくも侮辱してくれたな。まずはお前から始末してやるっ!死ね!蒼紫!」
動けない蒼紫に標準を定めてハンドルを握る。
ばっ!
「…ちっ!左之!弥彦をたのむっ!」
「?お…おいっ!剣心!」
式尉と剣心が動くのはほぼ同時。
蒼紫の前に立ちふさがるようにして盾になろうとする式尉の前に、
言い捨て、弥彦を左之助に託してだっと走りこみ彼等の目前にと回りこむ。
そして。
カンキンキンッ!
「……何っ!?」
観柳が手をかけて銃を乱射し、それが弾丸がたどり着く前にと彼等の前にと躍り出て、
そのまま剣を抜き放ち、剣を回転することによって今打ち込んだ銃弾をことごとく弾き飛ばす。
そんな剣心の姿をみて思わず驚愕の声をあげている観柳。
そんな彼の背後では、盾になっている剣心をしばし呆然と眺めているお庭番衆たち四人と、
そして足を打ち抜かれている蒼紫。
そしてさらにその後ろには、弥彦と薫と左之助の姿が。
「…観柳。つくづく救えぬやつっ!」
ぞくっ。
剣心の雰囲気があからさまに変化したのはその場にいる誰でもわかる。
そのまま片手で剣を回転させて打ち込まれてくる全ての銃弾を弾き飛ばしながらも、
「左之助。蒼紫たちからはなれないでいてほしいでござる。お庭番衆の皆もな」
ざわっ。
そう言い放ち、きっと観柳を見据えるその様はまさに鬼気迫る雰囲気をかもし出している。
人の命を自分の利益のためだけにしか捉えていない。
そんな彼の台詞が剣心の感情をさかなでしたがゆえに激昂しているのだが。
「ふ。そんな剣一つでこのガトリングガンの攻撃を防ぎきれるとでも!?」
こちらは別に疲れることもなく弾丸を連続発射することができる。
焼け石に水とはこのことですね。
そんなことを思いながらも馬鹿にしたように言い放つ観柳の姿。
「わかっていないのはきさまのほうでござるよ」
いいながらも、すっとあいている片方の手を剣を持っている手首にと移動させる剣心。
ドスッ…
ドサッ……
『?』
すばやく剣を逆の手にもちかえて何やら再び手首にあいている手をもってゆく。
そんな行動を剣心がしたかとおもうと、何かが床に落ちてめり込むような音が聞こえてくる。
みれば、何やら床にちょっとした穴らしきものがあき、
そこにめり込むように落ちている青い布らしきものが二つ。
そのまま、再び利き手に剣を持ち替えて、剣を回転させながらも、観柳にむかって走ってゆく。
「…馬鹿が!まずはならばきさまから殺してやる!抜刀斎!」
剣一つでこのガトリングガンにかなうはずがない。
そう思っているからこそ向かってくる剣心にむけて標的を絞り連続して銃弾を打ち出してゆく。
が。
キッン……
バラバラバラ……
剣を回転させているのは理解はできるが、その動きはまったくみえない。
しいていうならば、何やら空気の盾のようなものがせまってくるような感覚。
そんな感覚に捕らわれる。
「…ば…馬鹿な!馬鹿なこんなことがっ!」
躍起になりながらも、さらに銃のとってに力を込めるが。
確かに、連続して銃を打ち込んでいるというのに、ことごとくあたる気配すらなく、
さらにいうならば、抜刀斎が回転させている剣の動き。
それだけでことごとく銃弾は床にとこぼれ落ちていっている。
「う…うぉぉっ!!!!!」
「…ひっいっ!」
背後にいる蒼紫たちにすらも銃弾を当てることなく防ぎきりながら、自分にむかって突き進んでくる抜刀斎。
その姿をみておもわずえもいわれぬ恐怖の声を発してしまう。
通常では考えられない。
こんな…こんなことが…可能なはずのわけがないっ!
カッキィン!
半ば狂乱しながらも連続して銃を乱射していたものの、まったく動じることなく突っ込んでくる。
近づくにつれ恐怖が自らを襲いくる。
ちゃっ!
そのまま、真正面に突っ込むと同時に叫ぶ剣心の台詞に、思わず恐怖心に負けてその場を退く。
そんな観柳の反応とは別に、手にしていた刀の向きをすばやく返し、目の前にあるそれにと斬りつける。
キィィッン……
固い金属音のようなものと、そして……
「……ひっ!ば…馬鹿なっ!」
すうっと回転式機関砲に光の線がはしったかとおもうと、綺麗にそれは二つにと断ち斬られる。
あまりといえばあまりのこと。
それゆえに、そのまま半狂乱になりつつも後ろに退きながら、
「た…う…うああ…た、たすけ……」
目の前にとせまった剣心に対し震える声で懇願する。
「命乞いならきさまの好きなお金様にたのんでみろっ!!!!!!!」
「
どががががっ!
がぎゃっ!!
そんな観柳の台詞にさらに激怒し、怒りをあらわにし。
腕の重しがなくなったがゆえにすばやさがましているその速さで連続した技を繰り出す剣心。
そして、それだけですまさず。
そのままたっんと飛び上がり、頭上より一撃をくわえてゆく。
ドッ…サ……
複数の連打を加えられ、さらに頭上からの一撃。
完全にこん睡状態にとなりはててその場に倒れる観柳の姿。
しばし、剣心のそんな行動を驚愕しながらもみつつ、観柳が倒れたことによりはっと我にと戻り、
「お頭。大丈夫ですか?」
自分をかばって撃たれた蒼紫にと声をかけている般若。
「ああ。大丈夫だ。それより……」
いいながら痛む足をそのままに立ち上がり、床にとあいている穴のほうにと視線をむけ、
そこにかがみこんでそこに落ちている布を拾い上げようとする蒼紫。
ズッシ……
「……ぐっ…こ…これは……」
片手で持ち上げようとすれどもそのあまりの重さに逆に足をとられそうになってしまう。
「……な、何か今の剣心の動き…すごすぎるぜ……」
まさか銃の雨を剣一つで全て防ぎきり、さらには相手を気絶させるなど。
いや、気絶だけですんでいるかどうかは遠目にはよくわからない。
「いつもより動きが何というか……」
剣のキレにしても左之助が知っている剣心とは異なっていた。
そんなことを思いながらも、蒼紫がかがみこんでいるままなのを疑問に思い、
「?これ、もしかして剣心がいつも手首につけてる布か?」
同じくもう一つ床にとのめりこんでいる布を拾おうとかが見込む左之助。
そんな左之助と蒼紫に対し。
「あ。下手に手だしたら…ぎっくり腰とかになるわよ♪」
『うどわっ!?』
何やら場違いな女の子の声が彼等の耳にと届いてきて思わず驚愕した声をだすその場の全員。
そんな中、たったひとり、まったく動じることもなく。
「菫ちゃんもきたでござるか。それで?」
チンっと剣を鞘にと収めながらも背後を振りむきながら、声のしたほうにと話しかける。
そんな剣心の言葉ににこやかに微笑み、
「あ。今署長さんたちが外の人たち捕らえてってるわよ♡それと。
地下室のこと教えたから先にそっちにいくんじゃないのかな~?」
何とも場違いなほどににこやかに剣心に対していっているのは……
「……気配も何もかんじなかったが……」
自分ですらまったく気配をつかめなかった。
そのことに驚きながらもそちらのほうにと視線をむけ、一瞬その姿をみて惚けるものの、
すぐさまに我を取り戻して呆然としたようにとつぶやいている蒼紫。
そしてまた、その思いはその場にいるほかのお庭番衆たちにとっても同じ事。
彼等は隠密という立場上。
人の気配などにはかなり敏感。
それなのに誰一人としてその気配をつかむことはできてはいなかった。
なのに、確かにその十歳にもみたない小さなかわいらしい女の子はこの場にいる。
先ほどまで確かにいなかったはずだというのに。
「なるほど。では急いだほうがいいでござるな。蒼紫。大丈夫でござるか?」
「……それより、抜刀斎。これは何なんだ?!」
そんな会話をしながらも、自分達のほうにと歩いてくる剣心にと思わず問いかける。
自分ですら片手で持ち上げられない不可解な青い布らしきもの。
「何って……みてのとおり。手首につける布でござるよ。
両手首と両足首らに重しをかすことによって常に筋肉を鍛える。…でござるよな?菫ちゃん?」
きょとんとしながらも、
その重さを意に介することなくひょいっと蒼紫が手にしようとしていたその布を片手で持ち上げ、
そのまま左手首にそれを巻きつける。
「おい!つうか!これ!材質何でできてるんだ!?剣心!?」
斬馬刀の重さになれているがゆえに、多少の重さを持ち上げる自信がある。
それなのに、あの斬馬刀と同等、いやそれ以上に思いとおもわれるその小さな布。
いったい全体こんな布の存在など聞いたことも見たこともない。
ふらふらとしながらも両手で布をもちながらも剣心にと問いかけてくる左之助であるが。
「拙者に聞かれても……それ、菫ちゃんが拙者たちに渡しているやつでござるしな。
師匠の場合はたしか、これよりも重い布に、さらにはマントにすらも重しがかかっていたでござるけど」
『……これよりも重い…って……』
さらっと困ったようにと説明する剣心に、思わず同時につぶやく蒼紫と左之助。
「?別に材質とか関係ないけど。普通の布でもそのくらいできるけど?」
「いや。絶対にできぬでござるよ。菫ちゃん」
そんな二人にきょとんと言い放つ菫に対し、すかさず突っ込みをいれている剣心。
「そうかなぁ?重力とかいじったらそれこそ簡単……」
はぁ……
「だから。菫ちゃんの基準でものごとをいったら、他のものは混乱するでござるよ。
と。とにかく。蒼紫。おぬしたちはこれからどうするつもりでござるか?」
ため息とともにつぶやきながらも、どうにか話題を変えるためにと問いかける。
「?おい?左之助?」
意味がわからずに、戸惑いの声をあげている弥彦に左之助もどう答えていいのかわからない。
そんな戸惑いの表情を浮かべている左之助の手から布を片手で受け取り、逆の手首にと取り付ける。
「……材質はともかく。剣心のばけものみたいな強さの秘密…わかったような気がするぜ……」
あの青い布の一つですら、ようやくかろうじて立てる程度の重さであった。
それが計四つ。
剣心が身につけているのを左之助は知っている。
そんなものを身につけていれば…普通、通常に考えれば動くことすらままならない。
剣心と菫のやり取りを意味がわからず、それでいてしばし呆然と眺めていた蒼紫であるが、
「あ。もし。蒼紫さんたち、これから何するのか考えていないんだったら。
私の元で少しばかりやってみない?世界各国の諜報活動とかするのも楽しいとおもうけど♪」
「す~み~れ~ちゃぁん。蒼紫たちに何をさせる気でござるかぁ~……」
なにげに、さらっと勧誘している菫に、じと目でにらみながらも思わず叫んでいる剣心の姿。
「え?ただ。世界各国の諜報活動とか。言葉の違いは翻訳機でもわたせば問題ないし」
「そういう問題ではござらんよ……
……というか、まさかいきなり蒼紫たちを外国に移動させたりする気でござろう?」
「いけない?」
「あたりまえでござる。」
何やら理解不能な会話をしている菫と剣心。
この場でその意味を完全に理解でききるものは一人とていない。
もしいればある意味すごいの一言につきるのであるが。
そんな二人のやり取りをしばし眺めつつ、ふっと息をつき、
「なるほど。どうやら抜刀斎。きさまの連れらしき……その子はもしや……」
噂では聞いたことがある。
飛天御剣流に関する眉唾ともいえる噂。
開祖当時より、飛天御剣流には【巫女姫】がついている…という噂。
それは神のごとくの力をもちえており、自然すらをも操ることすらもできる。
という何とも信じられない噂なのであるが。
まことしやかに、飛天御剣流を語る上で語り継がれている噂の一つ。
くすっ。
「あら?私は私よ?蒼紫さん。まあ、すぐには返事はいいとして。
とりあえず。このままここにいたら警察隊が突入してくるけど。どうします?」
まるで考えを見越したかのような菫の台詞に思わず目を見開きながら、
それでいて、これ以上問いかけても無駄。
そう判断し。
「……また会おう。抜刀斎。…高荷恵はこの上の展望室にいる。好きにしろ……ゆくぞ!」
すくっと体制を整えて立ち上がり、周りにいる四人にと声をかける。
そして無言のままに振り向きざまに恵の位置を伝えて部屋からでてゆく蒼紫たち五人であるが。
そんな彼等を追いかけることをせず。
「と。とにかく。恵殿のところにいくでござる」
「あ。私ここで署長さんたちまってるね~」
騒ぎが収まったのはおそらく恵にも音で伝わっているはず。
万が一間に合わなかったら意味がない。
そんなことを思いながらも、蒼紫からきいた上の階にと続く階段にと向かってゆく剣心に対し、
にこやかに未だに気絶しているままの観柳の横にいき、ちょこんと腰を下ろしている菫が声をかける。
「なあ?剣心?今の会話の意味って何だったんだ?」
「気にしたらだめでござる。弥彦」
「…菫ちゃん、いつのまにやってきてたのかしら?」
弥彦の素朴な問いかけに、即座に答えている剣心。
それこそ詳しく知りえてもしたら発狂してもおかしくないと思うがゆえの判断。
それはある意味正しいことなのであろうが。
そしてまた、よく意味がわかっておらずに、ただ。
いつのまに菫が一人でやってきていたのかに関してのみ気にしている薫。
子供一人で夜にここまで来たのかしら?
それとも、警官隊つれてきたとかいってたから、警官たちといっしょにきたのかしら?
などと思っていたりする。
「おい。剣心……」
何やらいいたそうな左之助の台詞をさえぎり、
「とにかく!恵殿が心配でござる!いそくでござるよっ!」
あまり今深く突っ込まれたくないがゆえに、そのまま階段を駆け上ってゆく剣心。
まあ…気持ちは…剣心たちのことをしっているものからみれば…わからなくもないであろう……
「銃声がやんだ……」
いったい全体何がどうなったのか。
判らない。
判らないが……
「剣さん……薫さん。皆……あなたたちのような人たちにあえてとてもよかった。ありがとう……」
銃声がやんだということは、自分を助けにきてくれた彼等もまた殺された。
ということに他ならないはず。
殺されるまではいかなくても大怪我をおったのは明らか。
しばし、蒼紫にと返された懐刀を見つめ、そのまま大きく自分の心臓にむけて振りかぶる。
ざしゅっ!
『!?』
それとともに、周囲に鮮血がとびちるが。
「あ」
「あ」
「何やってんだよっ!てめえはっ!」
カッン!
恵が手にしている短刀をそのままたたいて床にと落とす。
しばし短刀が手から奪われ固まる恵であるが、そのまま涙をうかべ、
「……知らなかったとはいえ。阿片をつくり、人々を苦しめ、死に至らしめた罪は……
もう、死んでお詫びするしか……」
「この馬鹿!剣心も、弥彦も嬢ちゃんも、命をはっててめえを助けにきたってのにっ!
てめえは全てを台無しにする気かよっ!このわからずやっ!」
「てめえ!まだいうかっ!」
人々を死に至らしめてしまった。
という恵の気持ちはいたいほどわかる。
ましてやそれが自らが選択した結果ではないのだからなおさらに。
「でもっ!」
恵に手を振り上げようとする左之助をみて、思わずわって入ろうとする薫をそのまま制し、
唯一の出入り口である扉の横にと手をかけて、
「……人殺しの罪は死をもって。それも一つの償い方でござるが……
……おのれが死んだところで。殺した人たちが生き返ってくるわけではござらん。
それよりも、より一人でも多くの人々を救うために剣を振るうことが本当の償いとなるはず。
……人斬り抜刀斎はそうやって明治の世を生きているでござるよ」
うつむきながらも、最後のほうは恵に視線をむけて話しかける剣心。
「……人斬り……って、あの伝説…の?まさか…剣さん…が?」
鬼人のごとくに人をきり、非情の人斬りといわれている伝説の人斬り抜刀斎。
戸惑いの声をだす恵の問いかけには答えることなく、優しく微笑み、
「高荷の優れた医学は、抜刀斎の剣よりより多くの人々を助けることができるはず。
医者になるでござるよ。恵殿。そして阿片や怪我のみならず、病に苦しむ人達の力になるでござる」
静かに恵にと話しかける。
「まあ、お前のおかげで俺も弥彦も助かった。というのもあるしな。
ダチが阿片によって間に合わずに命を落としたが…
……だけども、そんな人々もあんたは救う義務があるはずだ」
そう。
助けられなかった友人とは別に、いまだに阿片などで苦しんでいる人々は多いはず。
ましてや、彼女は薬草などにかなり通じているらしく、自分達がうけた毒もすばやく対応できた。
「そうよ。恵さん。恵さんの家族もどこかできっとまってるはずよ。死んだらだめよ」
「そういうこった。てめえの医学の力はこの俺が身をもって知ってるしな」
そんな左之助や、薫、そして弥彦の言葉をきき。
その場に崩れ落ちるように泣き崩れる恵。
「さ。いきましょ。恵さん」
薫がそんな恵に手を差し出すと同時。
ぴ~!!
下の階より何やら笛の音が聞こえてくる。
そして、ざわざわと人がざわめく音もまた聞こえてくる。
「ほんとにあの子、警官隊つれてきたのか。つ~か、よくあっさりとつれてこられたなぁ。」
「剣心のやつが警察署長に信頼があついからじゃねえのか?あの菫ちゃん、剣心の連れだし。一応」
展望台の窓から外をみれば、庭先にわらわらと警官隊の姿が目に入る。
「とにかく。かえるでござるよ」
「さ。恵さん」
「…で、でも……」
観柳の仲間でもあった自分と一緒では彼等にもまた迷惑がかかるのでは。
そんな不安が恵の脳裏をよぎるが。
「あ。その心配はないわよ。恵さん。署長さんには。
武田観柳が、医学を学んでいるとある女性を誘拐して監禁し、
その逃げ出してきた彼女をかくまっていた剣心お兄ちゃんたちが、
再び捉えられた女性を助けにいってる。と説明してあるから♪」
そんな恵の心配を見越したかのように、少し遅れてやってきた菫がにこやかにと説明してくる。
「?菫ちゃん?残っているのではなかったのでござるか?」
「用事はすんだし♪」
……何かしたでござるな。
あの観柳に……
そんな菫の台詞に確信をもつが、それは口にはださずに黙り込み、
「だそうでござるよ。さ。もどるでござるよ」
「おっしゃぁ!剣心組み、勝利の凱旋だぜっ!」
戸惑う恵とは対照的に、弥彦が高々と竹刀を掲げて言い放つ。
「署長!ありました!地下の隠し倉庫ですっ!」
「よしっ!押収しろっ!」
わ~わ~わ~
ほとんどのものが、完全に気を失い意識すらままらないそんな中。
かろうじて幾人かは意識を取り戻した男たちが数名。
そんな男たちはいきなり突入してきた警官隊にただただおろおろするばかり。
「まったく。内偵を進めていたところに、あの緋村殿の連れから連絡があり。
それゆえに乗り込んできたはいいが…まさか、ガドリングガンまで隠し持ってるとは……」
綺麗さっぱりと真っ二つに斬リ裂かれてはいるが、まぎれもない回転式機関砲。
こんなまねができるのは、世界広しといえどもそうは人数はいない。
「しかし。これで生きているのが不思議ですけど……」
未だに完全に意識不明の重体となりはて、床にころがっている武田観柳をみて、
警官の一人が声をだす。
軽くみても、全身打撲にとどまらず、多少の内臓破裂などもおこしているかもしれない。
肩などは完全に脱臼しており、もしかしたら骨や筋などが完全に絶たれている可能性も否定できない。
「さすがというか。何というか……」
かろうじての一線で、命を保った攻撃。
そんな神業のようなことができるのは、他ならず……
トントントン。
警官たちが彼等の上司である署長にと説明しているそんな中。
上の階より、階段を降りて来る足音が彼等の耳にと聞こえてくる。
「――あ。緋村さん」
ふとそちらにと目をやり、そこに剣心の姿をみとめ声をかける。
そんな彼の声をきき、
「お世話になるでござるな。署長殿」
「いえいえ。こちらこそ。またお手数をおかけいたしまして申し訳ありません。
この武田観柳は前々から内偵はしていたのですが。なかなか尻尾をつかませませんで。
あ、そちらの娘さんが誘拐、監禁されていた方ですね。ご無事のようで何よりです」
「え?あ…あの、私は……」
剣心がその男性を署長、と呼んでいることから、警察のしかも上層部の人であろう。
というのは明白。
それゆえに、戸惑いの声をあげる恵であるが、
「そういえば。あのお頭って人たちはどうなったの?」
彼等が部屋から出て行ったときはすでに警官隊が来ていたはずである。
それゆえにふと疑問におもい問いかけている薫。
「そういや。蒼紫たちが出でいったとき、この菫ちゃんが警官隊をつれてきてる。
とかいってたしな。まああいつ等のことだ。そのまま見つからずにどこかにいったんだろうけど。」
そんな薫に続き、思わずつぶやく左之助の台詞に、
「?他にも誰かいたのですか?」
「あ。たいしたことじゃないですよ。浦村署長さん。ただ、元お庭番衆の一員がちょっといただけですし」
首をかしげてといかける、そんな彼の台詞ににこやかに答えている菫。
「お庭番衆…って……」
「それより。彼の裏にいた人たちのこともよろしくたのむでござるよ」
一人では武器密輸販売など到底できるものではない。
阿片密造販売にしてもまた然り。
「へ~。このヒゲめがね。浦村って名前だったのか」
「そういえば。署長さんの名前、今まできいたことがなかったわね。」
「ひ…ヒゲめがねって……」
口々にいう左之助と薫の台詞に、多少いじけた声をだしている浦村署長。
「後は任せてもいいでござるか?署長殿」
そんな署長にとにこやかに笑みを浮かべたままで問いかける。
「あ。はい。緋村さんたちもお疲れでしょう。
前回の黒笠の一件といい、いつもご迷惑をおかけいたします。誰か護衛につけましょうか?」
剣心の台詞に、ぴしっと敬礼し、誰かを護衛につけようかと提案してくるが。
「何。好きでやってることでござるよ。護衛は必要ないでござるし。さ。かえるとするでござるよ。皆」
いいながらも、未だに警官隊がうろうろしてざわめいている武田邸を後にしてゆく剣心たち。
恵はといえば、どうしてすんなりと自分のことを聞かれずに、
警官たちの中を勧めるのかがよくわからない。
先ほどの剣心の言葉の真意も気にかかる。
「しかし、この中で一番怪我おってるのって左之助お兄ちゃんよね~。
薫さんも弥彦ちゃんも怪我してないのに」
「まあ、仕方ないでござるよ。左之もまだ毒から回復したばかりでござるしな。」
累々と庭先にも横たわっている男たちは、それぞれ警官隊たちが運んでいっている。
彼等もまた気がつけば事情聴取をうけるのであろうが。
そんな彼等から恵のことが詳しく語られることはまずはありえない。
恵の存在を知っていたのはほんの一部。
さらにいうならば……
そのまま、何ごともなく警官隊が右往左往している武田邸の正面玄関から外にでて、
そのまま正面の門より外にでて神谷道場にむかって歩き出す。
月夜が彼等の行く道を照らし出し、夜だというのにそれほど暗くはない。
「……あ、あの剣さん……」
「?どうかしたでござるか?」
歩きながらも、それでも戸惑いの声をあげる恵に首をかしげて問いかける。
今の会話からも判るように、確かに怪我を負っているのは左之助のみ。
それも自分の目の前で怪我をしたのだから、恵としては心苦しい。
まさか、たったの四人であの観柳の私兵団を壊滅させるなど。
それがとても信じられない。
信じられないけどそれは事実であり……
「あ。剣心お兄ちゃんの歳なら、恵さん。今二十八歳よ。
恵さんは、剣心お兄ちゃん、十代後半で自分より年下とおもってたようですけど」
「・・・・・・・・・・・・・・・・え…えええっ!?」
自分が思っていた疑問をさらっと菫に指摘されたことよりも。
剣心の年齢が二十八である。
というそんな菫の言葉に思わず驚きの声をだす。
「…そんなに驚くことでござるかなぁ?」
ぼりぼりと頬をかきながらつぶやく剣心に。
「普通おどろくとおもうぞ」
「常にみてても、剣心の年齢って忘れがちになるし」
即座に突っ込みをいれている弥彦と薫。
「というか。年齢的からすれば、その菫ちゃんも、剣心の子供でもありえるからなぁ」
そしてまた、左之助がしみじみとそんなことをいっていたりするが。
「え~?でも、剣心お兄ちゃん、十五のときに確かに結婚はしたけど。
巴お姉ちゃんの肌には一つもふれずに、いまだに女の人とそ~いう関係になったことって……」
「す…菫ちゃんっ!!」
さらっと何やら爆弾発言をしてる菫の台詞に対し、あわてて叫ぶ剣心。
『…えええ!?剣心って結婚してたの(か)!?』
そんなさらっといった菫の台詞に、弥彦、左之助、薫の三人の台詞が同時に重なるが。
「すでに巴お姉ちゃんはこの世にいないけどね。一緒に生活したのって、一年にも満たない間だったし。
池田屋事件の後に、時が満ちるまで一緒に生活してたけど。
再び、桂さんの元にもどることになってから、巴お姉ちゃん、剣心お兄ちゃん、家元にもどしてたし。
もっとも、そのために巴お姉ちゃんの父上の馬鹿な色ボケ上司の策略によって、
巴お姉ちゃん、命おとしちゃったんだけど……」
「……菫ちゃん。今ここで何もそのような話を……」
妻でもあった巴を守りきれなかった事実はいまだに剣心の心を苦しめている。
あのとき。
もし自分がもっとはやくにあの男を粛清していれば。
もし暗殺していれば…という思いはぬぐいきれない。
あの男はたしかに、維新側にとっては周囲の内偵をしていた人物であったがゆえに。
彼女の婚約者であった…あの彼をだからこそ。
かつて見せられていた夢のようにならないためにと生かしておいた。
それなのに、その男のせいで彼女の婚約者は死亡。
そしてまた……彼女すらも……
「つうか。結婚をしてた。というのには驚いたな。…本当なのか?」
「というか。十五で結婚…って……」
「当時としては珍しくはないとおもうけど。昔は男の子は十五で成人。とみなされてたんだし。
武士社会においては得にね。元服っていうのよ。弥彦ちゃん。
それは覚えておいたほうがいいわよ。女の子なんか生まれてすぐに嫁ぎ先決まることもあったしね」
疑問を投げかける左之助の台詞にはうつむくばかりで答えない剣心。
そんな剣心にとかわり、にこやかに変わりに弥彦の疑問に答えている菫。
「……巴を守りきれなかったのは拙者のせいでござるよ……」
ぽつり、と空を見上げながらも小さくつぶやく。
そんな剣心の小さな台詞を聞き、
「……剣心……」
ずきんと心が痛むがどう声をかけていいのかわからずに、
ただただ無言で剣心を見つめることしかできない薫。
彼の…剣心の心には、そのすでに亡くなっている巴さん。
という人が今も生きているのだ。
とそんな剣心の小さなつぶやきで理解ができる。
そしてまた、そのために剣心が心をずっと痛めている…というとも。
桂…って、あの桂?
やはり、剣さんって…あの伝説の人斬り抜刀斎当人なの?
そんな戸惑いを隠しきれない恵の様子とは裏腹に、
「とにかく。夜も更けてきたでござるしな。早くもどるでござる」
いって足早にそのまま歩く速さを早めて道場にと向かってゆく剣心の姿。
そんな剣心の姿をしばし無言で眺めつつ、
「……人に歴史あり…だな」
まさか剣心が結婚していたとはしらなかった。
ましてや死に分かれていたなどとは。
ぽつりとつぶやく左之助に、
「何か…あいつが結婚してたなんて…信じられないぜ」
「でも、接吻、しかも巴お姉ちゃん側からのみ。とあとは手をつないだり。
という関係しかなかったからねぇ。あの二人って……子供でもいたら、ほんと。
剣心お兄ちゃんも心のよりどころ少しはあったかもしれないけどね」
さらりと弥彦に続いていう菫の台詞に、
「というか。菫ちゃん。何だってそんなに詳しいの?」
ふと疑問に思い問いかけている薫。
まるで菫がそこにいてみてきているような言いようをしているのが気にかかる。
「そりゃ。剣心お兄ちゃんのことだし。もっと昔のことをいえば。
剣心お兄ちゃんが十歳のときに、あまりの空腹に笑いだけをたべて死にかけたこととか……」
『……ぶっ!!』
さらっという菫の台詞に、思わず噴出す左之助と弥彦。
恵と薫にいたってはそんな説明をきいておもわずあんぐりと口をあけていたりする。
よもや菫がそんな過去のことを暴露しているとは夢にも思わず。
「?皆、どうかしたでござるか~?急がないと夜があけるでござるよ~?」
少し離れた場所から、そんな彼等にと叫んできている剣心の姿が。
しばしそんなほのぼのとした光景が夜道の一角において見受けられてゆくのであった。
チチチチチ……
まるで、昨夜までの騒動が嘘のような青空。
結局のところ、彼等が道場にもどったのはすでに明け方近くの真夜中。
それぞれに疲れてはいたものの。
すでに菫が沸かしてあったお風呂にと浸かり、体の疲れを十分に取り、
そのままそれぞれ倒れるようにして眠りに入った。
薫たちが目覚めたのは昼近く。
最も、剣心にいたっては、しばらくおきて菫と何やら話し込んでいたりしたのであるが。
それは薫たちは知らないこと。
本来ならば、いろいろと警察に聞かれて面倒であろうが。
そういったこまごまとした事務処理は全てどうやら警察署長が気を使ってくれたらしく、
剣心たちにはそういった面倒なことには参加していない。
「あ。おはよう。恵さん」
「おはよう。ってもう昼ちかいけど。…その…ありがとね。
それで、その。薫さんと剣さんっどういう関係なの?」
彼があの伝説の人斬り抜刀斎であることは昨夜の会話からも明白。
そんな最強の維新志士といわれていた彼がどうしてこんな言っては何だが、
どうしてこんな寂れた道場に居候しているのかがわからない。
「どうって……その、剣心はうちに今居候している食客で……」
戸惑いの言葉を発する薫に対し、
「まあ。しばらくは剣心お兄ちゃんはこの道場にいることになるとおもうけど。
何しろ、不可抗力とはいえ、剣心お兄ちゃんの昔の志士名。
抜刀斎の名前を悪用されて、この道場の門下生、きれいさっぱりいなくなっちゃったしね。
今は弥彦ちゃんが一人ほどいるだけだし」
いつのまにおきてきていたのか、ちょこんと、裏庭のほうから歩いてきつつも、
そんな二人にと何やらいってきている菫の姿が。
「?」
恵は、そのとき。
ちょうど観柳にほぼ監禁状態、といっても過言ではなく。
ゆえに世の中の動きなどは耳にははいっておらず。
世間を騒がしていた辻斬りの話はまったく知らされていない。
「う~ん。恵さんはおそらく、あの武田観柳さんに監禁されてた状態だから、
たぶん世の中の状況とか耳にはいってこなかったんだろうけど。
二ヶ月ほど前。そのころからここ、神谷活心流の流派を名乗る、辻斬りが横行しだしたのよ。
しかも、人斬り抜刀斎と自らを名乗って。最も、おもいっきりの語りで。
しかも昔、禁を破ってここの道場を波紋になった人が、逆恨みからそんなことをしてたんだけど。
そのために、ここにいた門下生たちってことごとくやめていったのよ。
もっとも、その語りの辻斬りさんたちはこの前、剣心お兄ちゃんがあっさりとやっつけたけど」
きょんと首をかしげる恵にとにこやかに簡単に説明している菫の姿。
そして。
「ま。それもあって。自分の名前が悪用されて、しかもこの道場に迷惑かけちゃったしね。
道場の復活の手伝いをかねて、ここに居候してるのよ。
薫さんもいてもいい。っていってくれたことだしね」
追加説明とばかりににこやかに微笑みかける。
「まあ。今菫ちゃんがいったとおりみたいなものね。それより。恵さん。
源才先生が、もし恵さんさえよかったら。先生のもとで働いてみないか。
っていってたんだけど。恵さんはどうしたい?」
「……え?」
源才先生。
というのは昨夜のあのこの道場のかかりつけの医者のはず。
たしか、早くに両親をなくした孫二人を面倒みているとかという……
「…でも、迷惑なんじゃぁ……」
「そんなことないってば。源才先生も喜ぶとおもうけど」
これ以上、彼女たちの好意に甘えてもいいものかどうかかなり迷う。
だけども……
「養生所にも恵さんほど医学に詳しい人って少ないから、助かるとおもうけどな。私は。
それに。源才先生一人じゃ、菖蒲ちゃんと雀ちゃんの面倒って大変そうだしね。
菖蒲ちゃんたちも喜ぶとおもうな♡」
迷う恵ににこやかに語りかけている菫。
「いいじゃない。恵さん。それに恵さんが近くにいてくれたら。
何かあったときとても心強いし。…その、同じ女同士でもあるしね」
「そうね…。ならしばらくご厄介になりましょうか?」
自分もまた一から勉強のやり直しをしたかったところでもあり、
そしてまた、観柳が売りさばいていた薬の行方も気にかかっている。
今のこのご時勢。
未だに女の医者というものはあまりおおっぴらには認められていないのが現状。
それは江戸時代も、この明治の時代にっなてもあまりかわってはいない。
だけども、力をつけたい。
人々を助けるために、人々を守るために。
その思いは男女共通であり、恵はその思いは一弾と強い。
「じゃ。決まりね!私。源才先生にといってくるっ!」
ぽんっと手をたたき、そのまま駆け出してゆく薫であるが。
そんな薫を見送りつつも、
「なるほど。あのじいさんのところなら、たしかに安心だな」
「…って、あんた。いつのまに?」
ふとみれば、こちらもまた起きてきたらしく、左之助がそんな彼女たちにと話しかけてくる。
昨夜はかなり遅かったので、またまたここ道場で一夜を明かしたのである。
もっとも、一昨日においては、毒をうけていたのでしょうがない、といえばそれまでなのだが。
「いや。何か話しにはいりそびれてな。でも。ま。がんばんな。
あの先生のもとだと、きっとあんたいい医者になるぜ」
「あら。お世辞でもありがと。
あんたが剣さんみたいにもっといい男になったら相手も考えてあげてもいいんだけどね」
「って、何のあいてだよ。おい。…あんた、その性格…どうにかなんねえのか?」
少ししおらしくなったかとおもうと、さらっと何やらぐさりとするようなことをいってくる。
そんな恵にと思わずあきれてつぶやく左之助に対し、
「あら?もう齢、二十二になれば性格の矯正はきかないわよ」
いってくすりと微笑む恵。
「さってと。とりあえず。全員がおきてきたところで。朝ごはんにしましょ♪朝ご飯は私がつくったから♪」
「やりいっ!あの嬢ちゃんじゃねえのか!あれははっきりいってたべものじゃねえからな。」
「……食べ物じゃない。って……」
「一度たべたらぜったいにわかるぜ。あんたも」
弾んだ声をだす左之助の台詞に首をかしげる恵であるが。
そんな恵に生真面目な顔をして答えている左之助。
「左之~。いくら何でもそれはいいすぎでござるよ。薫殿の料理は食べるほどに味が増すでござるよ」
そんな左之助に対し、こちらもまたいつ起きてきたのかわからないが、
剣心がにこやかに渡り廊下の先から話しかけてきていたりするのだが。
「…鍋ですら、ものすごくまじいぞ。あの嬢ちゃんの料理は」
「おにぎりすらもなぜ。というほどにくそまずいからな。薫のは」
そんな左之助に続き、がらりと襖戸を開けながら、同意していってきている弥彦。
そんなそれぞれの台詞を聞きながら、
「……か、薫さんの料理って…いったい……」
思わずつぶやく恵の姿が。
しばし、神谷道場の一角において見受けられてゆく。
その日の夕刻。
恵は源才のところに、見習い医師として住み込みとして働きに行くことになるのであった。
さってと。
恵さんも源才先生のところに落ち着くようになったし。
あとは……
恵が源才のところにいったその日の夕刻。
何やらうっそうとした森の中を一人でちょこんと切り株に腰をかけている菫。
彼女はじっと一点を見据えて何かを待っているのであるが。
そんなことを思いながらも、しばし切り株の上にちょこんと腰をかけて待っていると。
かさっ……
茂みをかきわける音とともに、現れる五つの人影が。
「あ。」
「……って?!」
「……な!?」
「……げっ!?」
「……あ゛!?」
何やら菫の姿を見てとり、間の抜けた声をまったく同時に発している四人の男たち。
そしてまた。
「……ここにいる。ということは。やはり。……おまえがあの『巫女姫』…か。
普通、こんなところに幼女が一人、来られるはずもないからな」
その中でも一人、他の四人とは格段に異なる容姿をしているまだ若い男性がため息とともに声をかけてくる。
くすっ。
そんな彼の台詞ににこやかに微笑み、
「まあ。一部の人はそう呼んでるひともいるみたいだけどね~。
とりあえず。足にうけた銃弾は取り出したみたいね。蒼紫さん♪」
そんな若い男性にむかってにこやかに微笑みかけている菫。
そう。
彼女がまっていたのは彼等…お庭番衆たちそのもの。
思わず身構える部下たち四人を片手で制し、
「よせ。……あの噂が本当ならば、到底かなうはずもない」
そう言い放ち、菫のほうにと向き直り、
「それで?わざわざ俺たちを追いかけてここに来ている。ということは。何の用件だ?巫女姫よ?」
あるいみ、かまかけともいえるその台詞を肯定するでも、否定するでもなく。
「ん~。まだ、剣心お兄ちゃん倒して最強の名前を欲するつもりなのかなぁ?と思って。
ちょっと確認にきたのよ。どうせなら、幕末の最強。という称号でなく。
これからのこの国の最強はお庭番衆である。みたいなことやってみないかな?
とおもってね。私としてはこの世界、軍事主義にもっていきたくないからね~。
どうせなら、先が見えなくなるような歴史にしたほうがたのしいし」
にこにこと、まったくあいての戸惑いを無視して淡々と語りかけている菫。
そして。
にっこりと。
「蒼紫さんだって。あの操ちゃんたちが、一発の弾丸によって命を落とすような世界になるのは嫌でしょ?
まあ、今の政治にはびこってる汚職などといった悪意はそろそろ払拭するにしても。
世界情勢が情勢だからね。まずは国力と、そしてまた自然との共存。それがこの国は先決だけど。
情報を制するものは、世界をも制する。とどこかのことわざでもあるからね♪」
到底子供とも思えないような台詞が、にこやかに菫の口から発せられる。
「……どういう…ことだ?」
ざわっ……
問いかける、蒼紫の台詞をさえぎるかのように風が強く吹きぬける。
ざわざわと、その場に木々が風にかすれる音がしばし響き渡ってゆくのであった……
剣心も知らない。
菫が…彼たちに再び会いに行った…ということを……
運命は、人の手によって紡ぎだすもの。
その紡ぎ手の交わりをそのまま変えるのも、また変化させるのもまた人次第―――
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あとがきもどき:
薫:う~ん。蒼紫&恵編。何かラストが一番短い?(汗
しょっぱながおおすぎたのかな?・・・・・ま、いっか。
あ。ちなみに、まえぶりと、ラストの菫と蒼紫たちとのやり取り。
今後の展開の付随ですvあしからずv
次回でようやく、弥彦の戦いですvながかったな~。
あれでようやく菫ちゃんがいろいろと細かな介入してるのが他にも影響してくるぞ(まてこら
その次は、やっぱりアニメお約束の神風隊だ~v
しかし、今回は60K以内におさまったな。よかったよかった。うんうん。
……戦闘シーンが面倒(まてこら)なのでかなり省いたからかな~
いや、完結にかいとけばあとは読み手さんの想像力にまかそうかとv
(かなり他力本願)
何はともあれ、それではまた次回にてv
んではではv
2007年2月5日(月)某日
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