まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

今回。何やらまたまた菫ちゃんが、一般からしてみれば。
何やらとんでもないようなことをしているような気が……
菫ちゃんからしたら、何でもないようなことらしいでしょうけど……
巻き込まれたりした人は…たまったものじゃないでしょう(切実……
…そろそろ。この回から前、後編にわけよーかなぁ……
前回みたいに、100Kこえたら読みづらいかも(汗……

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ガラガラ。
ビッシャアン!
ごろごろ……
今の現状を指し示すかのような雷雨。
もし声がだせてもこの雷の音にすべてはかき消されてしまうであろう。
ガクガク……
あれほどいた警官も、そしてまた護衛のものたちも。
動くことすらできずに今はすでに床にと累々横たわっている。
「た…たすけて…くれ。たのむ…金ならいくらでもだす。い…命ばかりは……」
ピシャアン!
雷と同時に目の前にいる男の姿が浮かび上がってくる。
笠を目深にかぶった少し細身の男性がひとり。
その手にはまぎれもなく刀がしっかりと握られていたりする。
「うふふふふ。維新志士様も金の湯水をあびてぼけちまったかい?」
「ひいっ!」
ドク…ン。
命乞いなどは聞かない。
というのは理解はしているが人の心理としてどうしようもない。
次にできるのは逃げることだけ。
逃げ切れるとはおもっていないが最後のあがき。
だがしかし。
にげようとしたその刹那。
体がすくんだように動かなくなる。
か…体が…うごかない……
あせってもあせっても体はいうことをきかない。
「うふふ。うふふふふ~。しぃい~ね♡」
逃げたいのに逃げられない。
男の刀が自分にと向けられてくる。
「ギ…ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ザァァァ……
雷雨降りしきるとある屋敷の一室にて、断末魔の叫びが響き渡ってゆく……
 

剣客放浪記  ~黒笠……そして……~

ぐつぐつぐつ。
あたりにちょっとした匂いが充満する。
庭先にと簡単に作られたかまど。
そのかまどに鍋をかけて外でご飯を食べている彼等たち。
…はむっ。
……ぐっ!
一口、口にと運び思わず硬直してしまう。
もくもくと、横で顔をしかめている左之助とは対照的に、
茶碗によそったおでんの具を口にと入れている剣心。
「ねえ?どお?みんな?」
にこにこしつつも、鍋をつついてよそってみんなに問いかけている薫。
「ねえ。どお?腕まくりしてつくったのよ?何とかいってよ。
  あ、左之助ったらおいしくって顔中よだれだらけ。なぁぁんて♡」
薫の問いかけにも全員無言のまま、顔をしかめながらも口をもぐもぐさせている。
「……まず…」
いったい全体どうやったらここまで不味くできるのか疑問に思ってしまう。
ましてや簡単な鍋のはず。
これだと生で野菜をたべたほうがかなりのまし。
「苦いよ」
「辛いよ~」
「泣くな。人間いきていくためには何か一つくらい我慢しないといけないんだぞ」
一方では、往診の合間にいつも預かっている雀と菖蒲が泣きそうな声を出しているが。
そんな二人にもくもくとむごんで料理を食べながらも、生きるための心得を言っている弥彦の姿。
「……剣心。毎日これじゃあお前もつらいだろうな」
ぽそっと横に座っている剣心にと問いかける。
「いや。薫殿の料理は食べれば食べるほど味がますいい料理でござるよ」
ものが食べられるだけまし。
というのは経験上よくわかっている。
「ふぅん。一種の珍味みたいなもんか。近いところでクサヤか?」
そんな剣心の台詞にある意味、感心したこえをだしつつも、手にしている茶碗の中を眺める左之助。
ぶちっ。
そんなやり取りをきいている最中、額に青筋をうかべ、すくっと立ち上がり。
「嫌ならたべるなぁ!何よう!毎日、毎日、ただ飯食べにやってくる身のくせっ!」
左之助が剣心に喧嘩を吹っかけてきてからはや三日。
あれ以後毎日のように、ここ道場にきてはご飯をたべていっている左之助。
そんな左之助に食材をそのまま投げつけている薫であるが。
「喧嘩屋やめて、金がなえんだよ。そんなにカリカリするなって」
すかさず横にいる剣心を投げつけられてくる野菜などを防ぐためにと盾にする。
「…おろ?」
おろおろしながらも、薫が投げてくる野菜のことごとくを受けとめていっている剣心の姿。
「もう。何よぉぉ!」
「つうか、料理の修業もしないといけねえだろうが。あの子に教わったほうがいいんじゃねえのか?」
この二日。
菫が作った料理は食べたことがないくらいにおいしかったのを思い出し、
剣心を盾にしたままそんなことをいっている左之助。
「そういえば。菫ちゃんは?」
確かに準備をしているときにはいたはずなのに。
ふとご飯が始まったと同時に姿がみえなくなっているのに気づきつぶやく雀。
「さっき。菫ちゃんなら門から外にでていってたけど」
そんな妹の質問に答えている姉でもある菖蒲の姿。
そんな会話をしてる最中。
「ただいま~。剣心お兄ちゃ~ん。お客さんよ~」
噂をすれば何とやら。
ということわざのとおり、門のほうから軽やかな声が聞こえてくる。
「客?」
その台詞にそちらを振り向く弥彦。
みれば、
「さ。どうぞ。」
何やら菫が一人の男性を案内して今まさに門をくぐっているところではある。
「お取り込みちゅう、すいません。緋村殿はご在宅でしょうか?」
その彼がぴしりと直立不動で敬礼して、薫達のほうに向き直り問いかけていたりする。
一般人はまだあまり見慣れていない上下の紺色の官服。
「あ。おまえ……」
「あれ?警察署長さん」
その人物をみて弥彦と薫が交互に声をだす。
「?警察…署長?」
そんな二人と入ってきたひょろりと背の高い男性を見比べて声をだしている左之助。
「先日はご迷惑をおかけしました」
いって頭を下げてくるそんな彼に、
「で。今日は何のようでござるか?」
にこやかに問いかけている剣心。
「実は…今日は緋村殿におりいってお願いがあってまいりました」
もはやたよるものは彼しかいない。
自分達の力ではどうにもならない。
それゆえの決断。
今、この地に彼がいるということは天の助けともいえる。
何やら切羽つまったようなそんな彼の台詞をきき、
思わず顔を見合わせている薫と弥彦と左之助の三人。
「菖蒲ちゃんたちは私がみてるから。剣心お兄ちゃんたちは、署長さんのお話きいてあげてね♪」
そんな彼等ににこやかに話しかける菫の台詞に、
「どうやら何かただごとじゃないみてえだな。」
……やはりきたでござるか。
ここまでかつて夢でみた出来事と同じ事が起こるなど。
まあ、それは自分が選んだ道といえばそれまでのこと。
「わかったでござる。ひとまず所長殿。奥の座敷にどうぞでござる。
  薫どの。一部屋お借りしてよろしいかな?」
「え?あ。うん。あ。どうぞ。…えっと、菖蒲ちゃん、雀ちゃん。ちょっとまっててね」
剣心の言葉にうなづきながらも、菖蒲と雀にと話しかける。
そんな薫の言葉に、
「うん!あ。菫ちゃん。薫お姉のこれ、もっとおいしくして~」
「て~」
がくっ……
菫にと何やら懇願している二人の姿をみて脱力している薫であるが。
「はいはい。それじゃ、味付けかえましょっか♡」
「「わ~い。」」
「……う、腕まくりして頑張ってつくったのにぃ……」
「あきらめろ。薫。得意不得意は誰にでもある」
ぽかっ。
「人がおちこんでるのにさらにとどめをささないのっ!」
弥彦に図星をいわれ、そのまま軽く弥彦の頭を殴る。
そんなほのぼのとしたやり取りをしながらも。
その場に菫と菖蒲と雀の三人を残し。
残りの剣心、薫、弥彦、左之助、そして警察署長の五人は、建物の中にと入ってゆく。


「先日の剣客警官隊の件はまことにすいませんでした。あの一件をきに、剣客警官隊は解散。
  署内の風紀を正すように私も勤めてまいりますので、どうかご勘弁を……」
恐縮しまくりながらも、勧められるまま座っていってくるそんな警察署長の台詞に、
「それは結構なことでござる。」
その言葉に笑みを浮かべる。
「で?お願いとは何でござるか?」
そういって話を促す剣心に、
「実は、これは政府の威信に関わる問題。十年ものあいだ。隠してきたことなのです。
  新聞各社にも緘口令をしいている事件なので、皆さん、くれぐれもご内密に……」
深刻な表情をしてその場にいる剣心たち四人を見渡す。
そして。
「お願いとは他でもない。緋村殿にある凶族を倒していただきたいのです」
もはや彼に頼るしか方法はない。
「凶賊?」
そんな警察署長、と呼ばれた男性の台詞に思わず鸚鵡返しで問いかける左之助。
「ええ。通称。黒笠。現在、政・財・官界で活躍する元維新志士ばかりを狙う殺人鬼です。
  この十年。日本各地に出没して凶行を繰り返すこと数十回以上。
  一度も仕損じたことのない凄腕の剣客です」
いってぬぐい出る汗を拭きながら説明する。
「維新志士ばかり…それって、恨み、もしくは世直しのつもりかしら?」
そんな彼の説明に、薫が戸惑いの声をあげるが、
「それもあるかとおもいます。が。彼はそれいじょうに人斬りを楽しんでいるのです。
  やつは予告状を送りつけてのりこんできます。
  犠牲者の中には無関係な女性や子供も多く含まれます。
  狙われた栄職についている人々は、権力財力を駆使して護衛の力をいれます。
  また、我々警察もまた、本腰をいれて警備にあたっています。
  が。やつはそうして敷かれた鉄壁の守りをつき崩し、どれだけ人を斬れるか。
  といったようなことを楽しんでいるようなのです」
まるで自分達の力なさをあざ笑うかのように。
「…二ヶ月まえ。やつが静岡に現れたときには、狙われた当人。警官。護衛。
  あわせて三十四人が殺され、五十六人が殺されました。」
汗を流しながら説明してくるそんな彼の台詞にたいし、
「ちょっとまてよ。何で拳銃でうっちまわねえんだよ」
「むろん。拳銃警官も毎回配備されます。ですがいつも銃を抜かないまま。
  彼等は黒笠に真っ先に倒されているのです」
そこまでいって息をつき、
「……かろうじてどうにか命を取り留めたものの話をききますと。
  まるで金縛りのように体がうごかなくなり、その隙に斬られてしまった…と……」
そんなことがありえるのかどうかは知らないが。
だがしかし、かろうじて生き残った全てのものの証言はこの十年みな一致している。
「…なるほど。二階堂平法。心の一方…か」
そんな彼の説明をきき、空を眺めながらもつぶやく剣心。
「ん?」
「え?」
今まで黙っていた剣心が聞きなれない言葉をいったのをうけ、小さくつぶやく左之助と薫。
そして。
そのまま剣を肩にともたれさせかけ、空を見上げ、
「……その黒笠という男。おそらく拙者と同じように幕末の人斬りであろう。
  おおかた人を斬り続けるあまり、本来の目的も意志も失ってしまい。
  血の色と匂いだけに捕らわれてしまったのであろうな。
  明治も十年過ぎたというのに、人斬りが止められない…不幸な男でござる……」
ある意味、あの匂いはたしかに麻薬のように神経を酔わせる効果があるかもしれない。
それでも自分が狂わなかったのは…一重に……
「…剣心……」
人斬りであったころの剣心など、薫は知らない。
だが、空を見上げている剣心に声をかけづらい。
噂にすらなるほどの伝説の人斬り。
いったいどれほどの人を斬ればそんな伝説がのこるのかも皆目判らない。
彼女が知っているのは、今の彼。
流浪人としての、緋村剣心。
幕末のころに存在していた、緋村抜刀斎ではない。
「……それで?こんかい狙われている人は誰でござるか?」
「そ…それでは!ひきうけてくださるのですか!?」
ダメモトで、藁にもすがるおもいでやってきた。
剣心の台詞をきき、驚いたような声をだす署長に対し、
「ほうってはおけぬでござろう。」
「……感謝いたします。
  今回、再び予告状をつきつけられたのは、陸軍省に所属している谷十三朗殿です。予告は今晩一時」
「……谷?もしかしてあの谷殿でござるか?」
「ご存知なのですか?」
「昔。幕末のころよく彼を警護していたでござるよ。
  もっとも、戦場の中においてはいつも混乱し行動を乱しまくっていたでござるけどな」
おたおたおろおろとしていた彼の姿は今でも思い出せる。
あるいみ、斬りあいの最中その場にへたり込んで腰を抜かすのは、
はっきりいって殺してくれ、といっているようなものだというのに。
そんなことも数しれず。
「とりあえず。谷殿のところに案内してもらえるでござるか?」
「あ。はい」
いって剣心が立ち上がるのをうけて、こちらも立ち上がる。
「薫殿。聞いたとおりでござる。少し出かけてくるでござるよ」
「……剣心……」
そんな危険なところにいってほしくはない。
だが…彼がそんな凶行が行われるとしって放っておけるほど冷酷な人ではない。
というのは短い間ではあるが理解しているつもりだ。
止めようとするものの、それを理性で何とかおしとどめ、
「わかったわ。気つけてね。明日は早く起きてお風呂を炊いてまっているから」
ぎゅっと自らの拳を握り締めながらも笑って送り出そうとする薫。
「すまぬでござる」
「俺もいくぜっ!」
「弥彦は薫殿とまっていてほしいでござる」
立ち上がろうとする弥彦をやんわりとたしなめる。
「なら。いくか。」
「左之。おぬしもいくでござるか?」
「あたぼ~よ!さ。署長さんとやらよ。案内してくれよなっ!」
いって、戸惑いの表情を浮かべている警察署長にと話しかける左之助の姿が。

やがて、剣心と左之助が署長とともに出かけてゆくが。
「…あれ?菫ちゃんは?」
外で雀たちと共に食事をしているはずの菫の姿が見当たらない。
剣心たちを見送りとどけ、その場に菫がいないのに気づいて問いかける。
「あ。薫お姉~。菫ちゃん。剣兄といっしょにでかけたよ?」
「…え…えええ~!?」
「な…何ぃぃ~!?」
しばし、神谷道場に薫と弥彦の叫びがこだましてゆく……


「護衛の助っ人?」
思わずあきれたというか馬鹿にしたような声をだす。
「いらんいらん。相手はたかが凶賊一匹。助っ人どころか警察の護衛もいらんわ」
警察などにうろうろされては気持ちが落ち着かない。
自分が悪いことをしているがゆえに、それは人間であるがゆえの心理。
多少太り気味な髪の短い男性。
健康面にあまり頓着していないと傍目にもわかるそんな人物であるが。
「甘すぎますよ。谷殿。相手はあの黒笠ですぞ?」
そんな彼にとたしなめた声をだすのは、先日神谷活心流の道場にとやってきた警察署長。
そんな彼の言葉に、多少むっとしつつ、
「口をつつしめ。剣林弾雨を駆け抜け維新まで生き抜いたこの俺に。一介の署長ごときが意見する気か?」
そんな彼の言葉に多少、額に一筋汗を流しつつも、
「ならばこそお分かりでしょう。達人の振るう殺人剣がいかに恐ろしいかを」
何やら甘くみているような彼にと意見する。
「ふっん。わかっておるからこうして。選りすぐりの最強護衛団を組んでおるのよ。
  陸軍省にその人あり、といわれた谷十三朗に心酔している猛者ばかり」
どこをどうみても見た目が強そうとみえるだけで達人にはみえないが。
それすらもどうやらこの人物はわからないらしい。
そんな相手であの黒笠が止められるとは到底おもえない。
谷と名乗った男性の背後につったっている数十名の男たち。
そんな彼等はにやにやしつつ、
「そうだぜ。谷さんには俺たちがついているからよお。警察の旦那は家に戻ってゆっくりと昼寝でもしてな」
そんなことをいっている男たち。
彼等は判っていない。
本当の人斬りとはどういうものなのか。
それもしかも暗殺を請け負う人斬りの実体を。
「そもそも。外部のどこぞの馬の骨を助っ人に頼もうとするなど何と誇りのないっ!
  その助っ人がおまえの配下全員合わせたよりも強いとでもいうのか?この恥しらずめがっ!」
外部の助っ人を頼んだのでそれを許可してほしい。
そういってきたのが気に触る。
自分は自分できちんと護衛を雇っている。
というのに。
そんな彼の挑発ともいえる言葉に、あっさりと。
「……面目もありませんが。そのとおりです」
見も蓋もなくあっさりと認める警察署長。
「……な?」
たかが一介の警察署長とはいえ、自分の配下全てを合わせたものより強い助っ人など……
そんな彼の言葉に思わず始めて戸惑いの声をあげる。
「どうぞ」
そんな谷の反応をうけ、扉のほうをむいて声をかける。
ぎぃ……
ゆっくりと開かれた扉から入ってくる優男が一人。
その赤い髪が印象深いが。
はて……
どこかでみたような……
谷がそう思うとほぼ同時、
「ふう。まったく。聞いていれば谷さんも随分いろんな意味で偉そうになりましたね。
  背中を貸して剣林弾雨からしょっちゅう守っていた幕末のころとはまるで別人のようですよ。
  あのころの谷さんは自分の信念をもっていたでござるしな」
いいながらも苦笑する。
「……げっ!?」
雰囲気と目つきは違えども、その右頬の十字の傷に…それに赤い髪。
ましてや、幕末のことを知っている人物などと……
思わず信じられずに目を見開き、口をぱくぱくさせるしかない谷。
そんな彼の背後より続きざまに、ひょっこりと。
「おいおい。どこが選りすぐりの最強だよ。どいつもこいつも一度はぶっとばしたことがある顔だぜ?」
谷の後ろに控えている男たちにとっては見覚えのある男性が入ってくる。
『……げげっ!?』
その姿をみて、谷と同じく驚愕の声をあげて固まる男たち。
「馬の骨が護衛ではさぞ心外でしょうけど。今夜一晩は大目にみてやってはくださらぬか?」
にこやかに、未だに固まっている谷にと話しかけるそんな剣心の台詞に、
「……と。とんでもないです。身に余る光栄です」
かちこちに固まりつつも何とか声をだす谷。
目の前にいるのは紛れもなく、維新志士の中でも最強を誇る…あの緋村抜刀斎当人。
鳥羽伏見戦争より後、消息が知れない。
とは聞いてはいたが…どうして彼がこんなところに……
谷がそんなことを思っているのを見越したように、
「この署長さんにお聞きしたでござるよ。
  あ。署長さんとは山県さんが拙者を訪ねてきたときに知り合ったでござるけどな」
「…や、山県卿ですか!?」
その言葉にさらに固まってしまう。
「それはそうと。谷さん?気が雲ってますよ?いったい何をしたでござるか?」
かつての谷はもっと気が澄んでいた。
そんな剣心の台詞に、
「えっと。官職間の横領に汚職に、さらには他人をつかっての地上げに…っと。他にも色々あるけど♪」
「……うげっ!?」
ひょっこり。
剣心の背後よりひょっこりと顔をのぞかせた十にも満たない女の子の姿をみて。
面白いまでの驚愕の声をだしている谷の姿。
「ななななななななな?!」
何やら『な』の字を連発して声にならないようであるが。
「でも。私達を馬の骨なんて。谷さんも面白いことをいいますね♡あ。でも。ってことは。
  そんのな私達が谷さんのこれとかこれとか山県さんとかに渡しても何の問題もないってことよね♪」
何やらその両手に書物のようなものや、書類のようなものが多少持たれているのが気になるが。
「…菫ちゃん。何でござるか?それ?」
「え?ああ。そこの谷さんの資料♪でも谷さん。いくら地代があがりそうだからって。
  某組員とかをつかって脅すようにまでして地上げして、さらには住人追い出して。
  しかも暗黙の了解で人殺しとかまで許可するっていうのはやりすぎじゃあ♡」
さらっと何でもないようにいう菫の台詞に、
「…谷さん。ほんっとおおに変わりましたね……なるほど。それででござるか。
  谷さんが狙われている理由の一つは」
ため息とともに、かつての信念に燃えていたころの谷の姿とだぶらせ。
その堕落振りに多少落胆しつつもつぶやく剣心。
そして。
「まあ。谷さんの処罰は山県さんに任せるとして。とりあえずは黒笠の凶行は止めねばならんでござるしな」
そんな会話をしている二人にわってはいり、
「…ちょっとまて。菫ちゃん?いつそんなもんあつめてきたんだ?」
「さっき♡」
一緒に屋敷にきたまでは知っているが。
いつのまに手にもっている資料を集めたのかが気にかかり問いかけている左之助。
そんな左之助に、にこやかにさらっと答えているのはいうまでもなく菫なのだが。
そんな菫の姿に、左之助の姿に固まっていた男たちが一瞬惚け、ぼ~と立ちすくんでいたりする。
「いやあのっ!緋村抜刀斎殿っ!というか!何でそちらの子があのときのまま!?」
そんなやり取りの最中、ようやく少し我にと戻った谷が思わず叫ぶ。
びくううっっっっっっっ!!
その谷の台詞に、谷に雇われていた男たち全員がその場に石のように固まってしまう。
さもあらん。
幕末のころとまったく変わらない容姿の子供が目の前にいれば…普通驚くであろう。
緋村抜刀斎。
最強の維新志士といわれた…伝説の人斬り。
その名前は彼等全てが知っている。
「まあ。菫ちゃんに関しては気にしたら負けでござるよ。それは確か以前にもいったとおもうでござるが?」
そんな谷に向かってにこやかに言い放つ剣心。
「?」
そんな二人のやり取りをみて思わず首をかしげる左之助。
菫の年齢は見た目どうみても十よりは下。
まあ、世の中。
見た目と年齢が伴わない人は数多くいれども。
そのいい例が、目の前の剣心であることも承知はしている。
してはいるが……よくてもそれほど菫ちゃんはそんな年ではないはずだけどな?
そんな左之助に対してにっこりと微笑み、
「あら。年齢とか見た目ってどうにでもなるものなんですよv左之助お兄ちゃん♪
  さってと。とりあえず私これ、山県さんに渡してくるね~」
「い…いやあのっ!」
にこやかに、さらっと何やら自分にとっては死刑宣告とも言えることを言っている菫の台詞に、
思わずまったの声をかけている谷ではあるが。
そもそも。
どうしてあれらが彼女の手にあるのか。
それすらが信じられない。
隠し部屋や、それに…いって思わず懐をあさり確かめる。
…が。
たらり。
ただ、そこにあったはずの密書がなくなっているのに気づいて冷や汗を流すしかない。
つまりは…彼女がもっているのは紛れもない本物。
ということである。
「?いやあの…汚職とかって……」
「今いろいろと問題になってる一部の資料ですよ。これは♪
  あ。そういえば。署長さんは剣心お兄ちゃんたちのほかに。
  一応自分の配下の人たちを数名、外に配置するつもりみたいだけど」
菫の台詞がかなり気になるものの、問いかけられて、
「え?ええ。そのつもりですけど……」
口調からして知り合いのようであるのがかなり気にかかる。
いったいこの女の子はいくつなんだろう?
という疑問が頭を掠めるものの、ひとまず菫の問いかけに答える。
「ん~。それってわざわざ斬られるために配置します。っていってるようなものよね?」
びくっ。
「…い…いや…それは…ですが……」
今までの経緯からしても、いいたいことはわかる。
わかるが…警備のものを配置しないわけにもいかない。
「それ。私にまかせて♪」
いいながらも、懐から幾枚かの紙を取り出しそれをかるくなぞり、
「でっきた♪」
いいながらも、何やら人型に切り取られた紙を数枚、ぽいっとその場に放り投げる。
そして。
「えい♪」
パチン♪
微笑みながらも軽く指を鳴らすと同時。
ゆら……
その人型の紙が一瞬ゆらめき、そして紙であったそれは瞬く間に人間の形に変化する。
『……なっ!?』
それをみてその場にいた剣心以外のものたちが驚愕の声をあげてくる。
「なるほど。式神でござるか。それなら被害はでぬでござるな」
それをみつつ感心した声をあげ、そして。
「……おろ?もしかして佐之もみたことがなかったでござるか?式神?」
佐之助まで驚愕しているのをみてきょとんとして問いかける。
「い…今のは何だ!?」
そんな彼の台詞ににこやかに、
「え?ただのだから。式神。陰陽道とかではよく使われてるけど?
  紙などをそれぞれの型に切り取り、それを形となす術。簡単よ?
  それに便利だし♪いろんな特性もたせられるしねv」
『いや…ただの式神…って……』
その場にいた一部のものを除くすべての声が一致し、
「……この子供、陰陽道に通じているのですか?」
はるかな過去から今まで脈々とそういう人たちがいるのもまた事実。
警察署長であるがゆえ、いちおうそういった知識のみは知りえている。
「菫ちゃんはすべてのものに通じているでござるからな。」
さらっという剣心の台詞に思わず目を見開く佐之助。
この剣心にここまでいわせるこの子供っていったい……
そういえば、関係もまだきいていない。
「とりあえず。これもってってくるね~。剣心お兄ちゃん」
「山県さんによろしくいっといてほしいでござる」
「は~い♡」
いまだに唖然としている人々をそのままに。
一度部屋をでてゆく菫の姿が。
しばし、唖然としつつもはっとして。
「ま…まって!」
その事実に気づいてあわててとめようとする谷であるが、間に合うはずもなく。
その場に力なくすとん…と椅子にもたれかかるように座り込んでしまう。
願わくば、彼女がもっていったあの何かが、本当に自分の不正の証ではない。
という一縷の望みを捨てがたいが…まずそれは無理であろう。
「まあ。よくわからんが。とりあえず。つ~訳だからよ。昔のことは忘れて仲良くしようぜ。今日だけな」
今の菫のした行動に驚きつつも、だがしかし。
まあ、陰陽道とかいってたし、そういうこともあるという噂話くらいはきいたことがあるがゆえ、
あまり深く考えずに、そこにいる男たちにと話しかけている佐之助。
まあ彼はもともと、あまり深く追求して考える性格ではないのであまり気にしていないのだが。

パチ……
一応、予告時間は夜中の一時。
まだまだ時間はあるものの、いちおう屋敷の間取りなどを確かめておく必要がある。
かつて人斬りとして、また暗殺者として動いていた剣心だからわかることもある。
人斬りの気持ちは人斬りにしかわからない。
と誰かが昔いっていたという話を聞かなくもない。
「しかし。剣心。よくこの一件を引き受けたな」
とりあえずは谷のいる部屋で時間つぶしをかねて将棋をしている剣心と佐之助。
ほかの谷に雇われている男たちはといえば、目の前の赤い髪の男性が。
あの伝説の人斬り抜刀斎だと知り、いまだにかなり緊張していたりするのだが。
すでに屋敷の間取りは確認している。
人斬りの行動としてはまず、堂々と正面からはいってくるものと。
もしくは関係者以外を巻き込まずに迅速に済ませるタイプのものと。
大まかその二つに絞られる。
とりあえず予告のあった夜は屋敷のほかの従業員たちは早めに帰宅させ、
予告時間には谷を守る人々のみで構成する。
というので話はまとまっている。
警察所長は所長でほかにも仕事がある。
というのと、先ほど何やら伝言をうけ一時官舎のほうにと出向いている。
部屋の一隅において将棋をしながらも、相手をしている剣心にと問いかける佐之助。
「うろ?」
そんな佐之助の台詞にきょとんとした声をだす。
「何つ~か。こういう【抜刀斎】としての頼まれごとは好かねえとおもってたぜ」
説明してもいないのに図星なことをいう佐之助の台詞に思わず苦笑しつつ、
「もちろん。好かぬよ。けどほうっておくわけにはいかぬでござろう。
  黒笠の凶行をとめねば、不幸な人が増える一方。……黒笠自身を含めてな」
自分があまたの人を斬ってもどうにか平常でいられたのは。
背後にみえぬ彼女の気配を感じていたから。
そしてまた、どんな状況においてもまったく妥協することなく接してきた菫がいたから。
それでも、人を斬るときには感情を捨てて接しないと壊れそうになる。
それは剣心自身がよくわかっている。
パチ……
「うおっ!?」
自分の手を先に、先にと読まれているらしく容赦のない剣心の攻撃。
思わず短く叫んでいる佐之助。
「それより。左之のほうこそ。よく手を貸す気になったな」
維新志士が嫌い。
というのは過去のしがらみからいまだに取り除かれていないというのに。
得に、このたびの一件は佐之助には関係のないこと。
おそらくは……政府内部の権力争いが事の発端。
というのはすでに剣心は理解している。
殺された人たちのことをきけば、誰が黒幕かはおのずと見えてくる。
だからこそ、彼を捉え糾弾しなければならない。
明治の世になってもこのような闇から闇…といった手段を二度と持ちいらせないためにも。
「てやんでえ。こんな面白い喧嘩。参加しないわけにはいかねえだろうが。
  てめえ一人に楽しい思いをさせてたまるかっていうんだよ」
はっきりいって警察ですら手がでないというその噂の凶族。
それと合間見えられるというのは、力試しとしてもまた暇つぶしとしても申し分がない。
「喧嘩ではないとおもうのでござるが……」
そんな佐之助に対して、多少あきれた笑みを浮かべつつも言いかける剣心の台詞をさえぎり、
「よし。ならもうひとつこたえろ。もしかしてお前、黒笠っていうやつに心当たりがあるんじゃねえのか?」
昼間、道場で話をきいたときにぽつりと剣心がいった言葉。
二階堂平法、心の一方。
それがいまだに気になっている。
「質問が二つになってるでござる……」
めきっ。
「人の揚げ足とりはいいからとっとと答えな」
質問に突っ込みをいれてこようとする剣心の顔面をそのまま手を突き出して直撃する。
「……いたいでござるよ。まあ、心当たりといえばあるにはあるでござるが……」
どこまで説明していいものか。
たしかに。
彼のことは知っている。
いや、彼のほうは噂でしか自分のことを知らないであろう。
そしてまた、自分ですら本来は噂のみでしか知らない相手。
だがしかし……伊達に昔、【もうひとつのありえた人生】を菫にみせられていたわけではない。
そういって、どう説明しようか迷う剣心の反応は何のその。
「噂はかなり当時も広まってたしね」
何やら場違いな声が聞こえてくる。
その声に別に動じることもなく、
「もどったでござるか。菫ちゃん」
「ただいま~。とりあえず山県さんにアレ渡してきたら大変興味もってくれてたし♪」
にこやかにいいながら、剣心と佐之助の横にまで移動する菫の姿。
戻ってきた気配も何も感じさせなかったんだが……
佐之助がそんなことをおもうが、彼が聞くよりも早く。
「二階堂平法。心の一方。今のところの使い手は、もと新撰組、鵜堂刃衛さん。
  ほかの使い手は彼がみんな殺したって噂だしね~」
噂というか事実なのだが。
それは知ってはいるがあくまで噂として聞いたことにして、
「でも。人を斬り殺す快感から抜けられなくなって。新撰組を一個隊全滅させてから離脱。
  それから単独でどの藩閥にも属さずにお金で人斬りを担っていたとかいう人。
  でもって、彼は二階堂平法を極めた達人だ。っていう噂♡」
ちょこんと、二人が取り囲んでいる将棋版のよこにと座って説明する菫の台詞に、
「?何だ?その二階堂平法…とかいうのは。きいたことがないが?」
首をかしげて手をとめて問いかける。
「左之。二階堂平法という剣術は。一文字、八文字、十文字の三段の型で構成される剣術でござるよ。
  一、八、十の一角で【平】となし、ゆえに平法とよばれているでござる。
  だが、もっともこの剣術で知られているのは、その奥義でござるかな」
「飛天御剣流の奥義とはまったく異なるけどね~。似たようなのはあるけど。
  こっちの平法のはかなりかわいいものだし♡」
「……かわいいって……」
にこやかなまでにいう菫の台詞に思わず突っ込みをいれる佐之助ではあるが。
「心の一方。それは術者の目から発した気を相手に叩き込むことで、
  相手を不動金縛りにするという二階堂平法の中でも秘儀中の秘儀でござるよ。
  おそらくは、今までの警官たちが銃もぬけずにやられたというのはそれにかかったからでござろう。
  まあ、いわゆる気合と気合の勝負でござるしな。あいての気と等しい、またはそれ以上をもてば。
  簡単にとける代物ではござるが」
雷竜閃らいりゅうせんの場合は、剣に気をこめて、任意の人にのみその気を検圧として叩き込むことが可能だしね~」
そんな二人の会話に、
「?雷竜…?」
「ああ。飛天御剣流の中にある技のひとつでござるよ。使い方によってはかなり便利でござるよ?」
「剣心お兄ちゃんの場合は。普通に暗殺者としての人斬りやってた時代。
  あれつかって暗殺を請け負った人意外の目にそれを離れた場所から叩き込んで。
  一時気絶させたり、もしくは視力をうばったりして当人以外は傷つけなかったからねぇ」
「昔のことでござるよ」
いや…何かいま、この二人はものすごいことをいってないか?
そんな思いが、この場にいるほかの人の脳裏によぎるが。
「つまり…よくわかんねえが。気力でとくってことか?それかけられた場合」
そんな技など聞いたことも、うけたこともない。
それゆえに戸惑いながらも問いかける佐之助。
「気を集中すれば解けるでござるよ」
「無理だとおもうな~。最近の生きてる存在って何か軟弱だし」
「…菫ちゃんからすればそういう基準でござろうけどな……」
さらっという菫の台詞に思わずため息まじりに答える剣心。
「ちょっとまて。聞き捨てならねえぞ。その軟弱っていうのは!」
こんな小さな子供に軟弱呼ばわれされる覚えはない。
そんな抗議の声をあげてくる佐之助に対し、
「そうかなぁ?」
それだけいって。
そして。
きょろきょろと周囲を見渡し……
「…って!ちょっとまつでござるっ!菫ちゃんっ!」
剣心がその意図に気づいてあわてて声かけるが。
にこっ。
全員の顔を見渡してにこやかに微笑みかける菫の姿が見て取れる。
「……あた~……」
それをみて、顔に手をやりしまったというような声をあげる剣心に。
「……な……なんだ…こりゃぁ……」
その笑顔に全員が全員。
完全に一瞬我を忘れて見ほれてしまった。
まあ、それはわかる。
わかるが……どうしてそれから体がひとつもうごかせなくなっているのか。
かろうじて目玉とそして声はだせるようではあるが。
体がまるで金縛りにあったかのように動けない。
「それ。独自で解けたら少しは軟弱じゃないって認めてもいいけど。
  あ。ちなみに。みなさ~ん。今私がやったのはただの微笑み返しであって。
  今、谷さんに予告上つきつけてる黒笠さんとかが使うやつよりはかなり弱いものだし♪
  これすら自力でとけないと、相手をするにもできないわよ?」
にこやかに、無邪気な微笑みで全員を見渡し説明している菫の姿。
「……制限時間は今回はいくらでござるか……
  で?このたびのは何の付属を加えたでござるか……菫ちゃん……」
幾度も修行の一環としてうけたことがあるがゆえ、ため息まじりに問いかける。
「え?ああ。たいしたことじゃないし。一時間ほどが制限時間かな?
  制限時間すぎたら筋肉が硬直してそのまま石のように二度とうごけなくなるってだけだし」
「…ってまていっ!十分おおごとじゃいのか!?…ってまじか!?」
そんな、さらっと何でもないように言い放つ菫の台詞に思わず叫ぶ佐之助。
「どうってことないでしょう?ってことで。みなさん自力でそれといてみてね~」
「……無理だとおものうでござるが……」
「あら?でもこれくらいとけないと。はっきりいって足手まとい以外の何ものでもないし。
  それに、今晩やってくる彼に殺してください。っていってるようなものだし」
至極もっともな意見だとはわかってはいる。
わかってはいるが……
「か…体がうごかねえ!」
「…な、何だっていうんだ!?」
この部屋の中にいたほとんどの男たちから戸惑いと、そして何やら驚愕の声が発せられている。
「せいぜい。長くても二、三分以内に自力でそれとけなければ。確実に殺されるわよ?」
小さな子供ににこやかにいわれ、さらに戸惑いを隠しきれない男たち。
「くっ……うぉおりゃぁっ!」
パァッン。
こんな小さな子がかけた技が解けないのは、はっきりいって男がすたる。
その思いもあり、気合でどうにか自力で呪縛を解き放つ。
「あ。左之助お兄ちゃんが一番め~。次は誰かな~?」
完全に楽しんでいるそんな菫に対し、
「…菫ちゃん。せめて制限時間以内に皆のこれ、解いて欲しいでござるよ……」
懇願するようにと話しかけている剣心であるが。
「自力で彼等がとけば問題ないでしょ?」
「……無理だとおもうでござるよ……左之ですら、ものすごく息が上がっているでござるしな」
ふとみれば、左之助はといえばどうにか硬直がとけたものの。
ものすごく息を荒くついて、思わず両手を床についてぜいぜいといっていたりする。
「…つ…つ~か。さすが剣心の連れというか何というか……」
彼女が薫の妹ではなく、剣心の連れだったというのは薫たちから聞いて知っている。
関係は薫もいまだにきちんときいていないらしいが。
ぜいぜいと息をつきながらいう左之助の台詞に、
「別にどうってことないとおもうけどな~」
きょとんとした声をだす菫に、
「ありありでござる」
「どうってことありまくりだろ!?」
同時に、剣心と左之助の声が重なっていたりする。
みれば、未だに他の固まっている人たちは動く気配すらまったくない。
「ん~。なら三十分かかってもとけなかったら解くわね」
「ながっ!」
時計をみてにこやかにいう菫に思わず突っ込みをいれる。
そんな左之助に対し、
「それはそうと。将棋、途中だったんじゃないの?続きしないの?」
まったく動じることなくそんな左之助にと話しかける菫であるが。
ふう……
そんな菫の台詞にため息ひとつ。
「…仕方ないでござるな。左之。これで時間つぶしでもするでござる」
彼等をほおって別の場所にいくわけにもいかず。
結局、そのまま未だになぜか動かなくなっている男たちとは裏腹に、
しばらく、剣心と左之助の二人は将棋に没頭してゆくのであった……

「……しかし……」
いったい自分が出かけている間に何があったのか。
夜になり、谷の屋敷にと警備のためにと戻ってきた。
だがしかし。
あれほどいたはずの谷の自前の護衛団の姿はどこにも見えない。
いや、見えても二、三人程度。
すでに、屋敷の従業員たちは帰宅しており、屋敷の中はがらんとしている。
配置していた警官たちもまた何やら雰囲気ががらりと変わっている。
「あら?無駄な犠牲者をだすよりいいとおもうけど?」
この場所の警備にあたるはずの人たちは別の場所にそれぞれ配置した。
との台詞をうけて戸惑いを隠しきれない。
何よりも、なぜ狙われている谷が椅子にまるで廃人のように腰掛けているのか。
それすらもがわからない。
まあ、その理由は何となく理解はできるが。
「…まあ。何だな。あれをうけて。
  この場にとどまろう。という根性あるやつはあまりいなかった。……ということだな」
昼間。
菫が仕掛けたとある技。
技といえるものなのかどうかは判らないが。
当人曰く、別にどうってないこと。
小さな子供にあっさりと打ち負かされ、ましてやそれを解くこともままらなかった男としての意地。
さらにいえば、夜くるという暗殺者はそれよりも強い業をつかってくる。
との話である。
お金や仕官といったものはたしかに魅力。
だがしかし、それらは全て命あってのもの。
それゆえに、菫が彼等を動けるようにしたともに。
方々に、腰が抜けたようになって逃げ出していった男たち。
「ま。式神つかえば問題ないし」
「無関係な人は巻き込みたくないでござるしな」
やり方はともかくとしてこれで、無関係な犠牲者をだすことは避けられる。
あとは襲ってくる彼の目を自分にと向けさせるのみ。
そんな剣心の言葉に、
「あ。剣心お兄ちゃん。すこしまた重さふやしとくね♪」
「ま、またでござるか!?」
ずしっ。
菫の台詞と同時に体に感じる負担が増したのが確実にわかる。
「…いや、重さ……って……」
そんな会話をしている最中。
「?何があったのかはよくわかりませんが……とりあえず。もうすぐ予告の時間です」
昼間、何があったのか所長にはわからない。
それゆえに、時計を眺めつつも冷静にと説明する。
みれば、時刻はあと五分を切っている。
と。
ジリリリッ!
「あ。時間♪」
何とも場違いな菫の声と、菫の懐から何やらにぎやかなベルのような音が鳴り響く。
それと同時。
びくっ。
外の気配に気づいて身構える剣心に、
「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
外に配置していた式神たちの叫びが聞こえてくる。
一応、相手の目をくらます目的もありきられたときに声がでるように仕向けていたのだが。
「来るぞ!奴はまどから入ってるはずだ!左之たちは谷殿を!」
相手がどこからどうはいってくるか。
という予測は簡単につく。
先の読みの能力もまた飛天御剣流の使い手としては必須科目。
ましてや、相手の波ぎっている殺気はごましようがない。
「…え…あ…」
すでに頼りであった護衛団は三人しか残っていない。
この場にあの緋村抜刀斎がいるとはいえ、自分の命が狙われている。
というので動揺を隠し切れない。
もはや自分は死んだも同然ではあろうが、やはり命はおしい。
「でえいっ!動揺するなっ!ぶた饅頭!王将役は真ん中ってきまってるんだよっ!」
どげしっ!
そんな谷を足蹴りにして椅子にと座らせている左之助の姿。
シュっ!
ぼ~ん。
鳴り響く時計の時刻を告げる音。
そしてまた。
何やら風を切る音とがほぼ同時。
剣心が黒笠が入ってくるはず。
と指摘したまどの横にと控えていた式神でつくられた人型の一人が、
そのまま赤い液体をあたりに散らせつつ、そのままその場に倒れ伏す。
「ほおう。やっぱり血まで流れるようにつくっていたでござるか」
どこか違うところで感心した声をだしている剣心に、
「……んなことまでできるのか?あれって?」
にこにこと笑っているまったくどうじていない菫にと問いかけている左之助。
谷の横に菫は位置しており、そしてそんな谷と菫を取り囲むかのように、
左之助と、そして残りの三人が取り囲むように一応配置していたりする。
その他にいる人々は、警察署長をのぞき、この場にいるのはすべて菫が作り出した人型の式神達。

……もぞ。
何だか寝付けない。
結局やっぱり菫ちゃんも剣心たちと一緒に出かけたままだし……
時刻的にはそろそろ剣心たちがあの話にでた凶族と出くわしているはずの時刻。
「…何だろう?この妙な胸騒ぎは……」
胸騒ぎがとまらない。
あの剣心のことだから大丈夫だとはおもうが。
あの左之助もついていることでもあるし。
菫ちゃんが足手まといにならなければいいけど……
などともおもうが、剣心と共に旅をしていたのは紛れもなく菫当人。
それゆえに彼女もそのあたりのことはわかっているはずである。
「……大丈夫よね。剣心……」
布団から起き上がり、雨どいをあけて空を見上げる。
見上げた空には綺麗な満月が出ており、心の不安をまるでさらに映し出してくれる。
そんなことを思いながら、そのまま。
上にハンテンを羽織り、縁側にてしばし空を見上げてゆく薫の姿が。
神谷道場においては見受けられていたりする。

満月を背後にし、窓枠にたたずんでいる一人の男。
その白装束の服に黒い帯。
腰にさしている二本の刀のうち一本はすでに抜き放っており、その手に握られている。
「ひい、ふう…みぃ……」
部屋の中にいる人々をざっと見渡し、にっと笑い。
ゆっくりと人数を数え始める。
そして。
「十四、五匹か。おもったより少ないな」
もっと斬れるかとおもったのに。
多少残念そうな声をだすその男をみて、
「…あれが凶賊。黒笠か。たしかに。なる度。あの目は危険すぎるぜ」
思わずつぶやく左之助。
完全に狂ったものがもつ視線というのは嫌が応にもわかる。
「どうってことないとおもうけどなぁ?」
「……菫ちゃん、怖くないのか?」
こんな状況だというのにまったく怖がっていない菫にある意味驚きを隠せない。
「何で?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
きょとんとした顔で逆に問いかけられては言葉に詰まる以外にはない。
「ひ…ひぃいっ……」
明らかに獲物を狙っているその視線の意味は理解できる。
どうにか意地でここに残っていたものの。
やはり、他のものたちと同様に逃げていたほうがよかった。
と今さらながらに後悔してしまう。
「…な、何をしている!高い給金を払ってやとっているんだっ!きちっと働けっ!
  奴を倒したものには五倍はらってやるっ!」
自分がやとっていた男たちで残っているのはたったの三人。
五倍くらい安いもの。
だがしかし…向かってゆく勇気はない。
「…ひ…っ!」
人殺しを楽しむ独特の目。
その視線がはらむ殺気と危険性に耐えられなくなってその場を逃げようとする男が一人。
が。
「逃さんよっ!」
出入り口の扉のほうにと逃げ出そうとする男の姿をみとめ、
にやっと笑みを浮かべていいはなち、かっと目を見開く。
ドクッ…ン。
それと同時に、昼間のものとは比べ物にならない束縛が体を襲ってくる。
「…か…体が……」
声すらもままならない。
体も動かせない。
昼間、あの子供がかけたあれは声はだせたというのに。
まばたきすらもできない…完全な硬直。
「逃げたらだめだなぁ。
  一度抜き合わせたらどちらかが死ぬまで斬りあう。そうじゃないと楽しくないだろう?」
いいながらもゆっくりと窓枠からおりて部屋の中にと入ってくる。
それとほぼ同時。
「うっらあっ!」
パアッン!
一度、昼間、菫にかけられていたのが幸いしているのかもしれない。
この硬直を解くこつは、昼間でわかった。
それゆえに気合をこめて今、自分にかけられていた術を自力で解除する。
そんな左之助にと気づき、
「ほおう。心の一方を自力で解けるやつがいたか。どうやらだたの虫けらとは違うようだな」
いって左之助のほうにと狙いを定める。
それと同時。
「二階堂平法、心の一方。またの名を居竦みの術」
もう一つ、気配すら感じなかったが自身の真横のほうから声が聞こえてくる。
そちらのほうを振り向くよりも早く、
キッ…ン。
パサ……
今までかぶっていたはずの笠が綺麗に二つに斬り落とされる。
「…やはり、おぬしであったか。まさかとおもってはいたが。おぬしが黒笠でござったか」
剣閃すら見えなかった。
ましてや気配などまったく気づかなかった。
声のしたほうを振り向けば、そこにたたずむ赤い髪の男性が一人。
「幕末。京都にいたころおぬしの噂を聞いたことがある。
  どの藩閥にも属さず、金で人斬りを請け負った男。
  目から発した気を人の目に叩き込んで相手を金縛りにする心の一方の使い手。
  はぐれ人斬り、鵜堂刃衛。心の一方。攻めてにかけて使うのかとおもっていたが、
  戦意をなくし、逃げようとする者にまでかけて斬ろうとするのは随分外道なやり方でござらぬか?」
笠がなくなったのをうけ、相手の顔が全員の目のもとにさらされる。
「俺も噂にきいたことがある。飛天御剣流とかいう古流剣術をつかう長州派維新志士。
  左頬に大きな十字の傷をもつ伝説の男。【人斬り、緋村抜刀斎】っ!」
「んふふ。面白い。面白いよ。こんなに面白いのは久しぶりだよ。
  あの懐かしい幕末がかえってきた。抜刀斎にあえるとはな」
それだけいって瞳に気をため解き放つ。
が。
「こざかしいっ!」
パッン!
その気が自分に届く直前に気合でその刃衛から解き放たれた気を霧散させる。
ぞくっ。
その気合にその場にいた菫以外のものが一瞬硬直していたりするのだが。
「心の一方は、妖術にあらず。いわば気合と気合の勝負。
  おとなしく縛につけ。刃衛。でなければ拙者が相手をいたす」
剣を鞘に収めて相手から視線をそらさず言い放つ。
「ふ。抜刀斎が相手か。願ってもない。…だが」
いって、部屋の中心地帯にいる谷にと視線をむけ、
「まずは斬奸状の予告を果たしてからだっ!」
だっ!
そのまま向きをかえて谷のほうにと向かってゆく。
「ひいっ!」
「ちっ!あんた!気合をいれてそれをとけっ!昼間一度かかっただろうがっ!」
微動だすることすらできずに、悲鳴をあげる谷に、思わずいらいらした声をだす左之助。
「無駄だ!そいつにはとけん!腐り肥えたブタには決してとけんっ!
  幕末は大金を払ってまで人斬りを頼んでおきながら、明治の世になったとたん。
  人斬りは犯罪などとぬかす手前勝手な志士共にはなあっ!」
いいながらも、剣を振りかぶる。
が。
キイッン。
「…いい加減にするでござるよ。刃衛」
確かに自分の背後にいたはずなのに。
いつのまにか自分の目の前にと移動して、自らの一撃を受け止めている剣心の姿。
それと同時に、刃衛の刀を大きくなぎ払う。
「…ぐっ!」
キィッン!
動きすら捉えられなかったことに驚愕している間に、さらに続けざまに一撃。
剣閃の動きすらみえずにわき腹に一撃、叩き込まれ。
思わず後ろに飛び退き、その場にひざまづく。
「おぬしは幕末。多くの人を斬った。ただ血を求めるために。敵味方の区別なく。
  しかし、今は平和の世の中。殺戮が日常だった幕末は終わったでござる。
  目をさませ。おぬしのためにも」
淡々と、息を一つも切らしている様子もなく言い放つ。
「…く…くははっ!面白い。こんなに面白いのは久しぶりだよ。
  しかし、耳を疑う台詞だな。情交で、非情の人斬りとうたわれた抜刀斎の台詞とは思えん」
そんな刃衛の台詞に、
「てめえっ!剣心をお前と一緒にするんじゃねえ!剣心は、もう二度と人を斬らないときめたんだっ!」
いって剣心のほうに駆け寄ってこようとする左之助であるが。
そんな左之助をすっと片手一本でおしとどめる菫の姿。
「標的はお前に変更だ。元最強の維新志士!近いうちに再びお前の前に再びあらわれよう。
  それまでに昔のお前にもどっておけ!最強非情といわれた人斬りのお前になっ!
  俺が殺したいのはあの幕末の抜刀斎だっ!」
ごふっ。
先ほどの一撃が内臓に衝撃を与えているらしく口から血がこぼれおちる。
そんな自分の血を満足そうにながめながら、
「いいか!必ずもどっておけよっ!」
いいながらも。
先ほど入ってきた窓から再び外にでてゆく刃衛の姿が。
「刃衛!」
深追いは禁物。
だがしかし、手加減したとはいえ内臓にうけたダメージはそう簡単には緩和されない。
それなのにそのまま二階の窓から飛び降りてかけてゆく鵜堂刃衛。
やがて、彼の気配が遠のいてゆくのを確認するのと同時。
「おお。体が動く」
気配が遠のいたのをうけ、その気の束縛から逃れて自由になった体を動かしている谷達の姿。
「ひ…緋村殿……」
今の彼の動きはまったく自分には見えなかった。
それでも息ひとつ切らせていない彼の姿に驚愕を隠しきれない。
これが…これが伝説になった本物の抜刀斎の実力。
おそらく彼は実力の半分も出し切ってはいないだろう。
というのは見てもわかる。
「すまぬでござる。署長どの。逃がしてしまったでござるよ。」
そんな署長ににこやかにいう剣心の台詞に、
「いや。それはかまいませんが…しかし。緋村殿。これで…今度はあなたが狙われるハメに……」
次なる標的に彼が選ばれたのは明白。
それゆえに申し訳なくてたまらない。
「かまわんでござる。むしろそのほうがかえって好都合でござるよ。
  そのほうが他人を巻き込まなくてすむでござる」
その台詞にはっとし、
「おい…剣心。おまえまさか。初めからこうなることを見越してこの依頼をうけたんじゃあ……」
維新志士ばかりを狙う人斬り。
それが伝説といわれている緋村抜刀斎という維新志士を目の前にしてほうっておくはずがない。
自分の身を盾にすることで他から目をそらせる。
その事実に気づき、左之助が剣心に問いかけるが、
そんな左之助に答えることなく。
「確かに。今の拙者はかれのいう昔の拙者とは違うでござろうが。だが、しかし拙者はやつを倒す。
  幕末。人斬りとして存在した同士。これは拙者にとって避けて通れぬ道でござるよ」
そう。
そしてもうひとり……
自分の後継者の暴走を止めるのもまた…自分の役目。
だからこそ、ほうっておけない。
過去に捕らわれ、今も生きるものたちのことを。
「まあ。重さになれる訓練にもなるしね~。
  でもあまり動きかわってなかったってことは。もう少し重し増やしてもい~い?」
「菫ちゃぁぁん。それでなくても、今たしかコレ一つ。千両箱よりも重いはずでござるが?」
にこやかにいってくる菫にたいし、自らの左手にはめている腕宛を指差して情けない声をだす。
『……せっ!?』
そんなさらっという剣心の台詞に、その場にいた剣心と菫以外の驚愕の声が漏れるが。
「なら、服と袴と、あと手足の全部を増やすっていうのは?」
「……増えてるのではござらぬか?それって……」
「気にしない。気にしない♪」
そんな二人に会話に、
「お。おい?剣心?それに…菫ちゃん?」
会話の意味がわからない。
まあ、判ったら判ったですごいであろうが。
「と。とにかく。もうあの刃衛は、谷殿を狙ってはこぬでござろう」
いって、署長のほうにと向き直り、
「あとは拙者にまかせてほしいでござる」
にっと微笑みかける。
詳しく聞きたいが、自分が聞いてはいけないようなことのような気がし、
「……何から何まで申し訳ござりません……。」
自分達では手がでない。
それはわかってはいる。
いるが……だからといって、彼一人に全てを背負わすのも忍びない。
「ま。あとは谷さんのほうは。きちんと法のもと、処罰下るだろうからそれは覚悟しといてね♪」
さらっといった菫の台詞に、やはり…という感じでその場に崩れ落ちる谷。
そう。
おそらく自分の政治生命は……また一からの出直しになる確率は…かなり高い。
いや、政治家としての命はもはやないかもしれない。
……どこまで彼女…菫が自分の行いを報告したのかはわからないが……
陸軍卿、山県有朋はそういうことには容赦はせずに断罪してくる。
それは身にしみてよくわかっている。
「…ま。あとは後始末でござるな」
いって、未だに腰を抜かしてへたり込んでいる谷をそのままに。
そのまま部屋からでてゆく剣心。
いくら何でも、庭先などに人型に切り取られている紙が散乱していれば、
何ごとか。
とおもわれても仕方がない。
菫が配置した、式神を回収すべく、剣心はそのまま屋敷の中や、庭先を検索してゆく……


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あとがきもどき:
薫:さってと。ひとまずまたまた長くなりそうなので、今回から前書きでいったように。
  前、後半にわけることを決定v(まてこら
左:しかし……剣心はともかく、あの菫ちゃんって…何ものなんだ?
薫:・・・・・・・・・え~と……(あさってをみつつ)
   ま、世の中。知らないほうがいいこともあります。
左:おいっ!
薫:……まあ、しいていえることは。菫ちゃんにとって楽しそうなことを提供したら。
   まず。おもちゃ…もとい、遊ばれる…もとい、実験台…もとい。
   修行という名のもとにいろいろとさせられることは明白なのです。
左:……今、何か、おもちゃとか、遊ばれるとか、実験体とかいわなかったか?おい……
薫:気のせいですっ!(きっぱり
   さってと。話もついたところで。
左:まだついてねえっ!
薫:それでは、また。次回で鵜堂刃衛編は終わりですv
   んではでは~♪
左:だからっ!まだ質問にこたえてもらってねえぞっ!

何やら一人騒ぐ左之助をそのままに、薫はどこかいきなり掻き消えてゆく……
後には、なぜか薫がいたその場にちょっとした赤い水溜りが残るのみ……


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