蒼き水晶の歌姫  第22話


ぽかぽかぽか。
「うーん、気持ちがいいわね。」
いいつつ、空を見上げる。
見上げる空には雲がまだらにはあるものの。
言い換えれば、少しばかりの雲が浮かぶ、はっきりいってかなりの晴天。
「まあ、ここ、雨が降るのが珍しい場所だし。」
見渡せば、あたりはもはや、地平線のかなたまで広がる砂漠。
その広大な景色に思わず、周りでは、写真を撮るためにシャッターを切るものたちの姿も多々と見える。
そんな会話をしつつ。
ざわめく観光客にと混じり。
彼女たち、三人もまた、普通の観光客として。
この地にある、ピラミッドの観光にと来ている、姫野洋子。木野悦子。岡村由香子。
この三人。
先日、無事に、由香子のもうひとつの姿。
アイドル歌手、星空百合香の映画撮影が無事にと終了し。
残った期間でこうして、予定通りに観光にいそしんでいる彼女たち。

この地はめったと雨は降らず。
それゆえに、こうした大地がひろがっている。
古の人々がどうしてこんなものを建造したのかはいまだに、世論はささやかれてはいるが。
一般には、かつてのこの地を収めていた王族のお墓。
それが定説となっている。
事実、この中から、かつての王族のミイラなどが出てきたりしたゆえに。
それが今のところ事実、ということになっていたりする。
だがしかし。
その目的のためではないこの建造物も多々と存在するのもまた事実。

かなり雄大な光景ではある。
広がる、砂漠地帯にぽっかりとある、天にそびえる巨大な三角錐の建造物。
それゆえに。
世界遺産にも登録されていたりする。
今だに、これらの建造物に関しては、学者たちが研究を重ねているのであるが。
そんな悦子の言葉をききつつも。
額に手をかざして空を見上げる。
-本当に久しぶり。
この地に来るのはいったい何千年ぶりだろうか。
そんなことを由香子はおもいつつ。

かつて、この地は緑豊かな土地ではあった。
だがしかし。
この地に誕生した人類は、目先の欲にととらわれて、木々をなぎ倒し、そしてそれらを燃料とし発展を極めた。
普通、木々が生長するのは少なくとも十数年以上の年月を要するが。
彼らは当時、気づいてなかったのである。
使えば…なくなる、というその事実に。
それは、今の人類にも言えることかもしれないが。
つかっている燃料が、材木、とかいう材料ではなく、
星の地下に眠っている、石油など、といったものを利用している、という違いだけ。
今では太陽エネルギーや、自然の力をエネルギーとする科学力もまた発展し。
自然を汚さない、クリーンなエネルギーが求められている今の状況。
それゆえに。
蓬莱町に主に存在する、様々な企業もまた。
それらはすべて、自然にやさしいエネルギーや物資などを開発、提供していたがゆえに。
近年、どんどんと注目を浴び。
かなりの大手の企業にとなっている今現在。

過去から未来へ、文明や知識などは受け継がれる。
それは、星の記憶そのものでもある。
どれだけの文明が滅んでいった姿を見てきたであろう。
そんなひとつが、目の前にあるこの遺跡。
そんなことをおもいつつ、空を見上げる由香子の心情は。
当然、由香子が、いったい『何』なのか、知らない、洋子と悦子の二人にとって知るはずもなく。
「あ、そろそろ、順番みたいよ。いこっ!」
順番、というか。
ほかの観光客、しかもツアー客があまりに多く。
入っても、混雑するのが目に見えているがゆえに。
少しばかり人が空くのを、ビラミッドの側にて待っていた彼女たち三人。
「あ、まってよ。洋子!」
駆け出す、そんな洋子の後をあわててついてゆく由香子と悦子。

「しっかし、まじかで見ても本当に大きいわよねぇ。」
したから見上げればその巨大さがよくわかる。
「でも、ここ、お墓ではない、というのが科学者たちの研究から、証明されてる場所なんでしょ?」
しみじみ、みあげつついう悦子の言葉に。
さらりと眼鏡を上げつつもいっている洋子。
その手にはこのあたりのガイドブックなる本をもっていたりするが。
まあ、三人とも。
というか。
由香子からもらった、自動翻訳ブローチのおかげで言葉には不自由はしていないこの二人。
ちなみに、このブローチ。
とある企業でただいま特許申請中。
まあ、そんな細かいどうでもいいことはともかくとして。
いつもはコンタクトとかなのではあるが。
このあたりは砂漠地帯。
それゆえに、砂嵐とかもよく起こる。
コンタクトをしたままで砂が目に入ったりしたりすれば。
角膜が傷つく恐れもあるがゆえに。
普通に眼鏡をしている洋子なのであるが。
洋子の言葉に。
そっとそこにある、空に高々とそびえるようにとたっているピラミッド。
と呼ばれている物体にと手をあて。
「…ま、いまだにこの物質が何なのか。科学者たちも理解できてないからね。」
そういいつつ、かるくその石をなでる由香子。
石。
そう見た目にはそう見える。
いや、どうみても、石以外の何ものでもない。
これらピラミッド、と呼ばれているのもは。
巨大な岩を切り開き、それらを積み上げて作ったもの。
それが昔からの定説であった。
だがしかし。
近年…この石が普通の石でないことが、科学的に証明され、いまだに世界に波紋を広げていたりする。
そんな由香子の言葉に。
「…そうなのよね。どうみても、これ…普通の石にしかみえないのに…」
まさか、普通の石にしかみえないそれが。
放射能などを遮断する働きなどをも兼ね備えている物質などとは。
いったい誰が想像できようか。
しかも、高度もはっきりいって、
今この世界で知られている一番硬度の高い、鉱物、ダイヤモンドに匹敵するくらいの硬度を持っているなどとは。
そんなことをつぶやく悦子。
「ま、この物質が何なのかはともかくとして。とにかく、中に入りましょ。…太陽がのぼりきったら…灼熱地獄よ?」
すでに太陽は上空にと差し掛かっている。
まだ、太陽が昇りきった直後の時間帯ならば。
砂漠地帯といえどもそんなに気温は高くはない。
だがしかし。
太陽が完全に昇りきるとなると、話は別。
大地に広がる砂漠は熱を帯び。
はっきりいって自然のサウナ状態が出来上がる。
見回せば。
何か歩きつつ、日傘を売っている売り子などの姿も目についたりするが。
「それもそうね。ともかく、何に入りましょ。」
この場にあるビラミッドの周りには。
簡易的な屋台などが立ち並んでいるものの。
基本的には発見されたままの当時の姿で保存されており。
そしてまた。
罠などのない、安全な道筋が一般にと公開されていたりする。
もし、公開されてない道などに足を踏み入れると。
それは未知なるいまだに起動している過去の罠が発動し。
下手をすれば命を落とすかよくて大怪我、もしくは軽傷。
事実。
今までにも怪我をした人間は星の数ほど多くいたりする。
…死人に関しては聞いたことがないが。
まあ、万が一、出たとしても、観光名所の傷になる。
という理由で公開しないであろうが。
そんな由香子の言葉に。
「そうね。熱いのいやだし。」
「賛成。」
そのまま。
先に入っていた観光客が退き、
ある程度すいたビラミッドの公開されている、道に向かって歩き出し。ビラミッドの中にと入ってゆく三人の姿。



納得がいかない。
「あの地は神聖なるもの。よそものに足を踏み入れさすなど!」
そんな一人の言葉に。
「「おおおお!」」
あたりにこだまする同意の声。
だがしかし。
特質すべきは集まった人々すべてがその顔をすっぽりと。
何か白いような布で覆い隠している、という事実がかなり奇抜に飛んでいる。
そして。
「よいか。われらはわれらの神聖な場所をあがめ、守るために。
  今から実力行使にでる!頭の固い国の上層部の連中にと思い知らせるのだ!」
その言葉に。
『おおおおおおおおおおおお!!!!』
彼らが集まっている広場を埋め尽くさんばかりの叫びが響き渡る。
彼らが古よりも神聖地としてあがめていた場所。
そのひとつが、今、この国ではもっとも有名な観光名所のひとつである、とあるピラミッドなど。
ほかにも様々にありはするが。
「ともかく、われらの決意と、そして、神に対する忠誠心は。汝達の行動にて指し示される!
  われらが神の祝福はわれらにあり!異教徒どもは排除すべし!」
高々と言い放つ。
どうやら、この集会をしきっているリーダーらしき人物。
そんな彼の言葉に。
『すべてはわれらが神のために!』
などと集まった人々の詠唱が唱和する。
いったい、どこの世界に。
暴力を推奨する、神がいる、というのであろう。
まあ、その神の種類にもよるのかもしれないが…

そんな会合が、ひそやかにでもなく。
大規模的に。
とある場所にて開かれている、そんな光景が。
しばし見受けられているある夜のひと時の風景 -。





ふと。
空気がざわめくのを感じる。
あきらかに、あたりの空気の気配がかわった。
ある程度道を進みつつ。
その中央付近より。
ピラミッドの中より外にでて。
風景を眺めていた、そんなとき。


眼下に見えるのは。
見慣れない車の数。
そして…
「いけない!みんな、ともかく、早くここから出て!」
思わず、きびすを返し。
ピラミッドの中にと叫ぶ由香子。
そして。
外にむかっても。
「みんな、逃げて!」
思わず叫ぶ。

それとほぼ同時に。

ドッガァァァァアン!!!!!!

間違えるはずもない、大音響と、そして爆発の音が。
ビラミッドのふもとにて…巻き起こってゆく。

空にもくもくと立ち上る、黒い煙。
そして。
そんな爆発炎上した車の陰から。
ぞろぞろと出てくる、武装らしきものをしている人影が数十名。

どこかで、誰かが。
「テロだぁぁぁあ!」
などと叫ぶ声とともに。
「天誅!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ!」
パンパンパン!
激しい、何かが炸裂する音が、あたり一帯にと鳴り響く。

次々と、炎上してゆく、あたりにあった屋台の数々と。
そして。
観光客などが乗ってきていた大型バスなど。

それは、突然のこと。
「何!?何があったの!?」
混乱しつつも、そのまま、中間地点の出入り口から、外を見つめる洋子たち。
みれば。
足元から立ち上る煙と。
そして。
「異教徒どもは神聖なるこの中にまだいるぞ!すべてを排除せよ!」
などといいつつ。
入り口にと群がる、真っ白い、としかいいようがない。
その全身を白で統一している武装している男たち。
それが、外の階段をつかい。
どんどんと上ってきていたりする。
「って、どうしてこんな場所にテロリストが!?」
誰かが悲鳴に近い声などを上げているが。
「と…ともかく!ここは危険よ!皆さん、ピラミッドの中の中広場に!」
叫ぶ由香子の言葉に。
「って、由香!?その中広場って…何!?」
そんな言葉は聞いたこともない。
思わず叫ぶ洋子のせりふに。
「このピラミッドの中にある、かつての祭典の場よ!まだ発見されてないけど、とにかく、急いで!皆さん、こっちへ!」
そういいつつ。
壁にぴっしりと書かれている文様のひとつを。
かるくなぞる由香子。
それと同時に。

ガコンっ。

小さな音とともに。
ただ、絵が連なっているだけと思われていた壁の一部が、ぽっかりと穴をあける。
「ともかく急いで避難してください!あせらずあわてずおちついて!」
人間、パニックになったときに。
指導してくれる人間ほどありがたく感じるものはない。
いや、それがどうしてそんなことを知っているのか?
という平常時ならば絶対に疑問に思うことであっても。
外から聞こえる絶え間ない悲鳴と、何かが発砲されている音に爆発の音。
そんな状況のなか。
安全な場所に避難を。
という、たかが、観光客、みたところ、学生のようであるが。
そんな小娘のいうことですら。
そのまま素直にその場にいた観光客すべては受け入れる。
「急いで!」
由香子の言葉に。
由香子たちのいた階にいた他の観光客などは。
あわてて、先ほどまで確かに壁であったはずの場所にと突如としてできた、その道の中にと足を踏み入れてゆく。

「って、由香?!何してるの!?」
とりあえず。
率先して、人々の誘導をすることになっている洋子と悦子。
まあ、バニックになっている人々を誘導する役目の人物がいるのは一目瞭然。
ふと気づけば、人々を誘導しつつ、視線を向ければ。
いまだに外への出入り口にとたたずんでいる由香子の姿。
思わず悲鳴に近い声をあげている洋子たち。
無理もない。

外からは、武装した、テロリスト、と思われる、男たちが、こちらに向かって上ってきているのであるからして。


すっと。
空を見上げる。
そして、主室にと手を振り上げる。
「-我が身 我が力 我が意思のもと この地に潤いを…」
手を振り上げ、小さくつぶやく。
それとともに。

今まで、完全にと晴れ渡り、青空に黒くどす黒い煙が立ち昇る中。
一帯どこから沸いてでたのか。
どす黒い煙で青空が覆われそうになりかけていたその空を、灰色の雲が覆い尽くす。
そして。
次の瞬間には。

ゴロゴロゴロゴロ。

ドザァァァァ!!!!


季節に合わない、大雨。
この時期、この地には雨など降るはずもないのにもかかわらずに。
空から落ちてくる大量の水。

それらの雨によって。
大地で炎を上げていた様々な物質は。
この雨によってその炎を鎮火させてゆく。

『-な゛!?』
思わずの大雨に思わず目を見開く、武装している数名の男性たち。
ありえるはずがないのである。
この地に雨が降るのは…まだあと一ヶ月以上も先のことのはず。

『…天竜が眠りしかの地、聖地において、穢れをもたらすものに…裁きを…』
「ラルトエクセトラドサイレス ナプカナ ドナーシャ……」
誰もが知らない言葉を小さく、小さくつむぎだす。
意味としては、当人が思っているとおりの意味なのではあるが。
使っている言葉そのものが。
人間では知りえるはずもない言語。
だが、その言葉は誰の耳に届く間もなく。

ビシャァァァン!!

やがて。
空から、雷光とともに。
光が一筋降り立ち。
そして。
それは…武装している男性たちを貫いてゆく。

しばし、何が起こっているのか全員、理解不能。

雷に貫かれ、そのまま黒こげになってゆく仲間たち。

まずはじめにわれに戻ったのは誰であったのか。

『うわぁぁぁぁあ!?神がお怒りになられたぁぁぁぁあ!?』
などと、彼らの言葉で叫びつつ。
突如として攻撃を仕掛けてきたそんな彼らはてんでばらばらにと逃げてゆく、
そんな彼らをまるで追いかけるようにと。
天より降り注ぐ、光の矢。


やがて。
一時もしないうちに。
気づけばいきなり降り始めた雨は完全にと止み。
爆発、炎上した建物、または乗り物なども。
さしたる被害はでないままに-…

気づけば。
空はいつのまにか晴れ渡り。
太陽が変わらずに顔をのぞかせてゆく……



「…ここ…は。」
思わず、絶句する。
まるで、水晶の部屋。
そういっても過言でないのかもしれない。
だがしかし。
どうやら、その先に、普通に外に続く道らしきものが、透けてみえるのにも驚くが。
そんな薄紫色にと輝く、そんな水晶の一面に。
びっしりと書かれている不思議な文字と、そして…絵の数々。
そしてまた。
人々が絶句したのはそれだけではなく。
外の光景が、そんな薄紫にと輝く水晶にと写し出されていた。
その事実が人々にさらなる絶句を生み出している。

― 古の人々が使っていた、祭典の間。

そこは。
今、この時代の人々の科学力をもってしても、追いつけない。
技術が結集している部屋でもある……


それを…今、この場にいる人々の誰もは…知る由もない。


                                         -続くー

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あとがきもどき:
薫:と・・・・とりあえず。
  やっぱり話をしつつの打ち込み・・・時間かかりますねぇ・・・・。
  あはははは(こらこらこら)
  しっかし・・・・最近、本気でお疲れモード・・・・。
  朝、まじで起きれません・・・・。
  十二時過ぎたら打ち込みしぶしぶながらもやめて寝てるのに(くすん・・・
  とりあえず。
  どこの世界にも、馬鹿たれちゃんはいる。ということで。
  次回は、祭典の間、ですかね?
  由香子がどうしてこの場所を知っていたのか。
  それはおいおいと・・・・(多分)語られます。あしからず・・・。
  んでは、まあ、そういうことで(どういうことだ?)
  ではでは、またvいつかv
 2003年12月4&5日某日

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