まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

何だかこれみてるひと、理解してる、というのを前提にしてるっぽいような(こらこら
頭の中ではきちんとストーリーすすんでても、なかなかに文章として光景を出すのはむずかしい・・
いや、一人称とかにすればものすっごくラクなのはわかるんですけどね。
あえて客観的視点さんに挑戦中~
何はともあれ、今回で闇バクラさんの一回目さんは完了ですv
先に出したのは、やはり海馬ランドにリョウを参加させたいがゆえv(まて
何はともあれゆくのですv

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~第26話~

「あ、誰かたおれてる」
すすんでゆくことしばし。
フィールド上にと倒れている人形がひとつ。
「かわいそうだから助けてあげましょうよ」
「罠の可能性がたかいよ?」
「確かにアヤシイな」
あからさまに怪しすぎるその配置。
それゆえに注意を促すべくいっている遊戯にそんな遊戯に同意している本田。
「助けましょ」
遊戯や本田の意見は何のその、そのままことん、と人形を起こしている美穂。
と。
【みなさん助けてください。森でモンスターに襲われて大切な宝物を盗まれてしまったのです】
倒れていたのはどうやら村の青年っぽい人形。
その人形から固い声が発せられる。
「お宝ですって!何かゲームらしくなってきたっ!」
やはりゲーム、といえば宝探し。
ゆえにはしゃぐ美穂。
【私はその宝物を村の勇者に渡しにいくところだったのです。その宝こそ唯一ゾークを倒せる聖剣なのです】
これがかつて聞いた【ゾーク】のことを模しているのならばそんなものはあり得ない。
そもそもアレは生き物の負の心が実体化して意思をもったもの。
「?ゾークを倒せる聖剣?」
おもわずそんな人形の台詞に顔を曇らせている本田。
そう都合よくあるものだろうか。
そんな疑問があるものの、
【お願いです。あの剣を取り戻してください】
「どうする?」
「何いってやがる!お宝は絶対に魅力だぜ!」
「そうよ。うふふ。お宝、お宝~」
「いきましょう!」
美穂の意見で即座に疑念を否定し美穂の意見に賛同する。
「OK。なら君たちは若者の意見を聞き入れ森へと進む」
カチャカチャとデータをパソコンにと入力するバクラ。
このゲームは付属のパソコンとリンクしており、パソコン上の画面でフィールド上の様子がアニメのようにと再現される。
「森でのモンスター出現率は草原フィールドとは違い八十%。判定ロール。…05。モンスターが五体現れた」
先制の判定はプレイヤー側にある。
「よぉし!俺からいくぜ!おりゃぁ!」
いいつつもダイスをふる。
が。
「八十二。最悪。ジョーは転んでしまった」
こけっ。
少しばかりフィールドが操作されたのか人形はその場にこてっところがる。
「…ださ」
そんな城之内の駒をみてぽそっと本田が突っ込みをいれていたりするのだが。
「よぉし。次は俺だ!この美化委員にまかせろ!」
いって自分のターンにとダイスを振る。
「二十一。命中だ」
「きゃぁあ!本田君、すご~いっ!」
「いやぁ。それほどでも」
美穂に抱きつかれてまんざらでもなくでれでれしている本田。
「次は僕の番だね。…二十五。ということは魔獣使いの特殊能力でモンスターを仲間にすることができるんだ」
五体でてきているモンスターの中から一体ほど仲間にすることが可能。
この中でこのゲームというかモンスターワールドの仕組みやルールをきちんと理解しているのは『遊戯』のみ。
杏や美穂、そして本田や城之内はルールそのものをよくわかっていない。
『お兄ちゃん、完全に闇の力を消し去れる?』
『いくらヤツでもルールに違反すれば闇のゲームはそれに伴いリスクが伴う。そんなことはしないだろう』
つまりは一時とはいえ闇の支配からモンスターを解き放つはずである。
心の中での問いかけにユウギが返事を返してくる。
遊戯にも何となくわかる。
このフィールドに表れているのは実在する闇の魔物達である、ということくらいは。
それゆえの問いかけ。
「ならその子」
一体の魔物を選びその魔物から邪悪な力を消し去り仲間にと引き入れる。
遊戯の駒の【手玉ハンド】が成功し、遊戯の選んだ魔物は姿を変化させ邪悪さがかき消える。
遊戯の選んだモンスターから闇の力が消えて遊戯達の仲間にと入ってきて遊戯達のパーティの数が増える。
遊戯の駒の職業は魔獣使い。
つまりは魔物を仲間にすることが可能の職業。
「ご主人さま達がたくさんいる?」
見上げればそこにも遊戯達、ここにも遊戯達。
しかしこちらの遊戯達には心が入っていない。
ゆえに彼らが駒として使っている、というのは何となくわかる。
きょろきょろとしつつも駒の遊戯とそしてまたプレイしている遊戯達をみつつもきょとん、と声をだしている仲間モンスター。
「名前は何にしよう?」
「何何?新しい仲間?かわいい~。泣き声がポギって聞こえるからポっちゃんてどう?」
「あ、その響きかわい~!よろしくね。ぽっちゃん」
何やら女性陣のほうは新しく仲間にはいったモンスターをみて盛り上がっているようであるが。
バクラからしてみれば名前などはどうでもいいこと。
どうやら新たな仲間の名前はぽっちゃん、で決まりのようである。
「モンスターは残り三体。つぎは私、ね」
いいつつも今度は杏がダイスを振る。
コロッン。
ダイズの目は00。
「すご~い!杏!クリティカルヒットだよ!杏は魔法使いなので見習い魔法使いの最終クラスの最終奥儀発動!」
遊戯の言葉通り、杏の操る魔法使いのキャラの技が炸裂し、フィールド上にといたモンスター三体は一撃のうちにと吹き飛ぶ。
杏達は気付いていない。
このゲームの不思議さに。
普通、視覚的にも吹き飛んだように視える、などありえない、というのに。
「杏もすご~い!」
「すご~い。これがクリティカルの威力!」
何だかはしゃいでいる美穂と杏。
「とにかく先にすすもうぜ。お宝、お宝~」
とりあえず出てきたモンスターはすべて一層した。
それゆえに先にと進むべくそういう城之内の言葉をさえぎるかのごとく、
【ふふふふ。やはりお前らが我に逆らう冒険者たち。か。だがこの森に入ったのが運のつき。今ここで葬ってやろう】
先ほど美穂が助けた青年の駒から何やら声が発せられてくる。
「何だと!?お前は何ものだ!?」
この青年人形はゲームマスターが用意していたキャラクター。
ゆえにこそ問いかけている城之内。
どうでもいいがご丁寧に人形に対して本気で問いかけている姿はあるいみ滑稽、といえば滑稽にみえなくもない。
城之内の言葉にこたえるかのように、人形の姿が変化してゆき、巨大な何か、に変化する。
【我が名はゾーク!】
やがてそこにはどうみても異形ともいえるちょっとした大きさの魔物が出現する。
『本物のゾークを模してはいるようだがやはり違うな』
どこか冷静にその姿をみて突っ込みをいれているユウギの姿もあったりするのだが。
「ってこれって相手の先制攻撃のパターン!?」
ハッとわれに戻り思わず叫んでいる遊戯。
まずい。
非情にマズイ。
もしも相手のダイスでクリティカルがでれば、それは……
虚を突かれた状態でプレイヤーは無防備状態。
ゆえにこそ先制攻撃はゾーク側にとある。
バクラの繰り出すダイスの目。
遊戯の願いもむなしく00、クリティカルヒットを導き出す。
「ゾークの闇の力がプレイヤーを襲う。標的となったのは…君だ!マインドール心のうつしみ!」
カッ!
ドサッ……
バクラがそういうとどうじに指を遊戯達のほうにと突きつける。
それと同時にどさり、と机に突っ伏す美穂。
その表情は凍りついたようにまったくもって人形のよう。
まず一人。
人形に心を移した。
さあ遊戯、このゲームに勝てるかな?
三千年の時をこえて王の器と選ばれた人間。
少しは楽しませてくれなければ面白くない。
バクラがそうほくそ笑んでいるそんな中、
「美穂ちゃん!?」
「どうしたんだ!美穂!」
バクラに指をさされると同時、ことん、と意識を失ったようにと机の上につっぷす美穂。
そんな美穂に驚いて本田と城之内が同時に叫ぶ。
と。
「私、どうしちゃったの?…え?何でみんなそんなにおおきくなっちゃったの?」
はっと気付いて見上げればそこに杏達の姿がみてとれる。
何だか見慣れた景色が目の前に広がっている。
しかも何だか自分の体にも違和感がある。
「ちょっと美穂!どうしたのよ!美穂に何をしたの!?」
様子がただ事ではない。
ゆえにこそバクラにと問いかけている杏。
しかも美穂の声がフィールド上においてある美穂の駒から聞こえればなおさらにただ事ではない、と理解ができる。
「何をって。僕はルールにのっとってゲームを進行しているだけさ。
  ただひとつ断っておきたいのは、君たちが参加しているのは究極のロールプレイングだということさ」
「…まさか…これって……」
目の前で直接視たことはない。
ないが…予測はつく。
それゆえにちらり、と横にいる遊戯にと視線をむける。
そんな杏の視線にこくり、とうなづく遊戯。
その表情で理解する。
これはよく【ユウギ】が執り行う闇のゲームである、ということを。
「嘘…私…私人形になってる!?えええええぇ~!?」
自分の体がそこに倒れているのもみえる。
ぱたぱたと自分の体…どうみても人形のそれを触り感覚を確かめる。
…どうみてもそれは人形以外の何ものでもない。
それゆえに、しばし美穂の叫びがフィールド上にとコダマしてゆく。
「心を取り戻す方法はただ一つ。ダークマスターを倒せばそれでいい」
淡々というバクラには感情はこもっていない。
「美穂ちゃん!いま俺が助けてやる!」
「ダメだ!本田君!」
遊戯がとめるが時すでに遅し。
そのまま本田のターンでないのにダイスを転がす。
「本田君。今は君の攻撃ターンではない。ゲームのマナーが最悪、だな。
  ゲームのルールに違反したものには当然罰がまっている!」
それと同時に本田の心もまた人形にと移し替えられる。
「え~ん!本田く~ん!何がどうなってるの~!?」
「美穂ちゃん!」
人形になっている、とはいえ抱きつかれて悪い気はしない。
一人でパニックになっていた美穂にとってはやってきた本田はまさに救世主のようなもの。
ゆえに本田にだきついて不安を紛らわそうとしていたりする。
「さあ。ゲームを続けよう。次のターンは城之内君、君だよ」
そんな彼らをちらり、とみやり淡々と遊戯達にと声をかけてくるバクラの姿。
これ、本当にあの獏良了、か?
ここにきてようやく雰囲気が何かが違うことにようやく気付く城之内。
「城之内君。心に恐怖を抱いたらだめだからね」
これは闇のゲーム。
ダイスは心に反応した目をだすはずである。
ダイスを振る場所が闇のフィールドであればなおさらに。
そういわれても、心に巣くう漠然とした恐怖は人間としてぬぐいされるものではない。
その心の恐怖は形となり、ダイスの目にとあらわれる。
遊戯の忠告もむなしく、城之内のふるったダイスの目。
城之内が出したダイスの目は99。
ゆえに城之内もまた人形にとその魂を封じられてしまう。
「う…嘘だ!俺はびびってなんかいなかった!なのにっ!」
しかし心の奥底ではおびえていたのも事実。
何しろ初めて目にすることなのでおびえても不思議ではない。
「城之内。お前まで……」
人形の中に封じられた城之内をむかえて驚愕しつつもそんな彼にと話しかけている本田の姿。
人形となった彼らの目の前には巨大すぎるゾークの姿がみてとれる。
しかしこの姿…この光景、どこかで視たことがあるような気がするのは気のせいであろうか。
ふっと何となくデジャヴ。
親近感というかどこかでみたような光景がぱっと脳裏に浮かぶがそれは瞬く間にとかき消される。
あのとき、あのときよく似た魔物と戦っていたのは…あれは……
「?何だか美穂。前にもこんなように戦ったことがあるような気がするのはきのせいかなぁ?」
心の中にとある漠然とした疑問。
それを真っ先に口にだしている美穂。
それは彼らの魂の記憶。
かつて【王】とともに【ゾーク】と戦ったときの魂の記憶。
「次は遊戯君。君の番、だよ」
そんな彼らの会話に興味を示すことなく、淡々と遊戯に向かって言い放つ。
もし彼がそんな美穂達の会話をきいていればどこか思うところがあったであろうに、バクラはそのことには気付かない。
「美穂ちゃん、城之内君、本田君………」
まさかゾークの攻撃で彼らが人形に移される、などとは。
しかし先にいっておいても信じてもらえなかった、というのもわかっている。
だからこそ……
『お兄ちゃん。僕も皆とフィールドで戦う!』
『遊戯!?…しかし、それは危険だぞ?』
『大丈夫。お兄ちゃんを信じてるから』
残っているのは自分と杏、のみ。
ゆえにこその心の中での会話。
遊戯の気持ちは痛いほどわかる。
それに何よりも彼らは初めてのことであるがゆえに戸惑っているであろう。
『…わかった。しかし俺達には闇の力は通用しない。…あいつの力とともに俺が送り出す』
『お願い』
通用しない。
その意味は遊戯にはよくわからない。
ないがいえるのはただ一つ。
ユウギの言うことに間違いはない、ということ。
「その前に!僕の心も人形に移して!」
「な、何だと!?自ら人形になる、だと!?」
遊戯の言葉に驚愕を隠しきれない。
「遊戯!?」
いきなりといえばいきなりの遊戯の言葉。
それゆえに杏も驚きを隠しきれない。
「「遊戯(君)!?」」
それはフィールド上の駒にと封じられてしまった本田や城之内達においてもいえること。
彼らもまた驚いて思わず叫ぶ。
「僕もフィールドで皆と一緒に戦う!」
「…馬鹿なっ!」
「わ、わたしもっ!」
「杏」
「うん」
遊戯が何をいいたいのか、したいのか瞬時に理解する。
杏もまたユウギを心から信じている。
この場を任せられるのは…おそらく彼、しかいないであろう、ということも。
「いいだろう。望みどおりにしてやろう。しかしダイスを振る人間がいなくなれば貴様らの力は無に等しい。勝てる確率は……」
ダイスを振るものがいなくなればいやでもゲームマスターの圧勝となる。
「まあいい。マスターはプレイヤーの希望を可能な限り実現させる義務があるから」
まさかこんなことで千年パズルが簡単に手にはいるとは。
バクラにとっては好都合。
「さあ、早く!」
「そうよ!」
「馬鹿め!これでゲームオーバーだ!!」
勝利の笑みをうかべつつも遊戯と杏にむかって闇の力を発動させる。
「ははは!これですべてのプレイヤーは人形と化した。このゲームマスターである僕の圧勝……」
カッ!
バクラが指をさすのとほぼ同時。
遊戯の胸元の千年パズルが光を発する。
「…何だと!?」
光とともに先ほどまで座っていた遊戯の姿が一変している。
雰囲気も、そしてその背も。
ことごとく。
「久しぶり、だな。バクラ・ネクロディアス」
「…何!?」
遊戯の心は確かに移し替えたのに。
それと同時に千年パズルが光った。
確かに心は移したはず、なのに。
ではこの目の前にすわっている【武藤遊戯】は……
「ちっ。お前が千年パズルに宿りしもの…か。しかし覚えていてくれたとはねぇ。王様よ。
  てっきり何もおぼえちゃいないのかとおもってたぜ」
自分も自分のことを完全に覚えているわけではない。
それゆえに自分の名前をいわれて戸惑いを隠しつつも吐き捨てるようにと言い放つ。
まさか【王】自がでてくる、などとは夢にも思わなかった。
「俺には信じられる仲間、がいるからな」
「ちっ。昔も今もいけすかない野郎だぜ。しかしこれは好都合。キサマを倒せば封印もとかれる」
「どうかな?しかし、よりによってゾークをボスモンスターにするとは、お前らしいな」
そもそも彼の主がゾークである。
それゆえのユウギの言葉。
「…け。そこまで覚えている、ときたか。…誰かキサマに記憶を渡したやつがいた、ということか……」
彼の封印は解かれてはいない。
つまりそれは別の方法で彼は記憶を取り戻している、ということに他ならない。
しかしバクラは気付かない。
遊戯とユウギがもともとは【一人】である、ということに。
「安心しな。皆の魂はこの俺が助け出す。そしてリョウの魂も、な」
「くっ。宿主はすでに闇の中、さ。キサマに何ができる。力を失った王様よ」
「キサマは今も昔も人の心を甘くみすぎているな。人の心はそれほど弱くない。
  …っと、バトルの途中だったな。ダイスを振るぜ。このターンの攻撃を戦士に振り替える。ゾークへの反撃、だ」
いいつつもバクラの問いかけをさらっとかわし、ダイスを振るユウギの姿。

「って、おい。遊戯、どういうことだ!?」
「あれ?あの人ってこの前であった遊戯君のお兄さん?」
いつのまにきたんだろう?
それゆえに首をかしげている美穂。
自分がなぜか人形になっている。
しかも次々と皆もやってきた。
さらにはこの前あった遊戯君のお兄さんまでそこにいるのがみてとれる。
それゆえに首をかしげてつぶやいている美穂であるが。
というかこの状況をさくっと受け入れている美穂もまたすごいといえばすごい精神の持ち主。
気付けば自分たちの心は人形にと移されていた。
しかも続けざまに遊戯と杏までもがやってきた。
何がどうなっているのかまったくもってわからない。
しかも遊戯が今は二人いる状況。
…遊戯が二人いるのは知ってはいた。
それゆえにあまり驚いていない城之内と本田。
「城之内君。皆。大丈夫。お兄ちゃんならきっとバクラ・ネクロディアスを浄化してくれるよ。
  それより僕たちはおそらくこの世界にいるだろう了君を助け出さないと」
「って、了?でもあれも獏良…じゃないのか?」
「ううん。あれは闇の人格。獏良了君じゃない。千年リングに宿っていた負の心。
  その心が今は了君を乗っ取って表にでてきてるんだ。おそらくこのどこかに了君の心も封じられているとおもう」
だからこそ遊戯もまた城之内達と同じように人形の中にと入り込んだ。
遊戯と彼らの違いはただ一つ。
城之内や本田、杏や美穂はバクラの闇の力で人形に封じられたが遊戯はユウギの力にて自分の意思でここにいる。
ということ。
その証拠に遊戯の魂の入った人形には先ほどまでなかった千年パズルがしっかりと首にかけられていたりする。
「…つまり、よくわからないけど悪霊とかに体をのっとられてるってことか?」
よくわからないけどそれならあの変わりようもなっとくがいく。
「げ~!おれ、オカルトきらいっ!」
「何いってんのよ。城之内。いまのこの現状がまさしくオカルト現象でしょうが」
本田の言葉に身ぶるいする城之内にすかさず突っ込みをいれている杏。
杏には恐怖心はない。
絶対に【ユウギ】が助けてくれる、と確信しているからこそそんな考えは欠片も抱かない。
「ん~。よくわからないけど。とにかく獏良君をさがせばいいってこと?」
美穂としても状況は理解不能。
夢なのか現実なのかわからないが、目の前にあるこの現状が真実。
『03。ヒット』
そんな会話をしている最中、どうやらユウギのダイスの目が出たらしい。
モンスターワールドのフィールド上に人形、と化した遊戯達の耳にとユウギの声が聞こえてくる。
「よっしゃぁ!」
行動が制限されているのはわかる。
攻撃などは自由に行えないらしい。
それ以外の行動はどうやら自由にできるらしいが。
ユウギの言葉をうけて剣をふるう。
何がどうなっているのかわからないがとにかく目の前の敵を倒す。
そうしなければどうにもならない。
「今度こそゾーク!キサマは俺達が倒すっ!…って、あれ?【今度、こそ】?俺何いってんだ?」
しかしゾーク、という名前をきいたときから心の中にあるわだかまり。
決着を自分でつけたい、という城之内の思いはかなり強い。
「ユウギ!ダイスを振るのはまかせたぜ!」
「安心しな。皆の命は俺が預かった。俺がゾークをぶったおすぜ。こいつはゾークを模したただの器、だしな」
本物のゾークはこんなものではない。
無制限に力が補充されるあのゾークではなく、ゲーム、というルールの上で存在している魔物。
ゆえにルールにのっとれば確実に倒せる。
「?ご主人様が二人?」
「ぽっちゃん」
戸惑いを浮かべているモンスターの頭をなでる。
なでられると何か心が温かくなってくる。
この気持ちは?
忘れかけていた何かを取り戻せそうなきがする。
「ふっ。王様よ~。でもわかってるのか?人形の中に封じられたヤツラのHPが0になればそれは彼らの死を意味する」
「そして、それはお前にもいえること、だな。俺がみすみすと仲間を死なす、とおもうのか?」
「けっ。だな。キサマはそういうやつだよ。…昔から、な。そのせいでゾーク様を封じやがって!」
何だか会話をしている間に多少思いだしてきた。
それゆえに苛立ちを隠しきれないバクラ。
そもそも彼があんなことをしなければまちがいなく世界は闇に包まれていた…はず、だったのだから。
「…なあ。あいつらって知り合いなのか?」
そんな二人の会話をききつつも、フィールド上で遊戯に問いかけている城之内。
「あ…あはは…何か口げんかになってるような気がするのはきのせいかな~?」
そんな二人の姿をみて思わずから笑いをあげている遊戯。
まああるいみ、喧嘩、といえば喧嘩…なのであろう。
「…と、とにかくバトル続行だ!こうなったらキサマの器ごとほうむってやる!
  不覚にも傷をおったゾークだがしかし事態はさらに悪くしたともいえる」
城之内が切りつけたゾークの肉片。
それらが形を変えて新たな魔物へと姿を変える。
とにかく器となっている遊戯という人間の魂。
それを葬ればすくなくとも封印解放の活路はひらけるはず。
もしくは器を亡くしたその後にパズルの中にはいりこみ封印を解除することも可能。
バクラからすればそのように解釈していたりする。
それゆえの行動。
「ゾークはそう、だよねぇ。自分の欠片を使って仲間を増やす」
かつてもそう、だったらしい。
聞いていてしっているがゆえに肉片から魔物が誕生しても動じていない遊戯の姿。
「救いは倒した人々まで傀儡と化して兵士として使う気はこのゲームではないみたいだからいいけど」
何やらしみじみとそんなことをいっている遊戯はあきらかに驚いている城之内達からしてみれば異様に映る。
「これって一体どうなってるの?遊戯君?」
いまだに美穂はよく状況を理解していない。
「これってバクラ・ネクロディアスが用意しているゲームのシナリオ、なんだよ。
  彼の目的は冒険者のフイをつく形でゾークを出現させてプレイヤーの心をこうして人形に閉じ込めること。
  そうすれば自分の意思で自由に行動ができなくなって、簡単に自分の目的が果たせる、とでもおもったんでしょ。きっと」
おそらく彼の目的は千年アイテムの中に封印されている、というゾークの復活。
それがわかっているからこその遊戯の言葉。
「しかし。俺達の行動はダイスの目に影響される。もう一人のお前にすべてをまかすのは心苦しいぜ」
どうしていつも彼にすべてを押し付ける形になってしまうのであろう。
それは彼とて不本意、だというのに。
「…?」
そんな思いが心をよぎり、思わず首をかしげる本田。
「大丈夫だよ。バクラ・ネクロディアスも使っているけど、お兄ちゃんも使い手だし。
  ダイスの目を操る方法ってあるんだよ。それにお兄ちゃんにいかさまは通用しないよ」
「「何ぃ!?いかさま、だとぉ!?」」
何やら話しが異なる方向にいっているような気がするのは気のせいであろうか。
彼らの目の前にはいまだにゾーク、そしてゾークの生み出した新たなモンスターがいる、というのに。
緊張感の欠片もない……とはこういうのをいうのかもしれない……

「ぽっちゃん、すごいね~」
ユウギの出したダイスの目によりすでにゾークが生み出した分身ともいえる魔物は倒している。
「というか、本気でクリティカルだしてるとは。もう一人のお前ってすごいな」
戦いにおいてすべてクリティカルヒットを導き出している。
「ダブルヒットっていう技なんだよ。十面ダイスの形で可能となる技なんだ。
  五角錐の形をしているからね。駒のように回すことによって目をコントロールすることが可能となるんだ。
  僕はまだ完全に数字のコントロールできないけどお兄ちゃんのほうは百発百中でコントロール可能だし」
「しかし。カウちゃん。これからもよろしくね」
さきほど遊戯がハンドパワーによって仲間にしたあらたな小竜モンスター。
ちなみに、ガウガウないていたから、という理由で美穂が命名したのだが。
「…って、あ。次から手から滑り落とす方法でダイスを振ることになったみたい」
千年パズルを通じてユウギのほうの光景も遊戯にと直接伝わってくる。
たとえ人形にその魂を今は宿している形とはいえ基本は遊戯とユウギはひとつの体を共有している。
もっと詳しくいえば遊戯の心の部屋に人形の扉がつくられそこに遊戯が少しばかり入り込んでいる。
それゆえに基本的には遊戯の心はそのまま遊戯の体とともにある。
「つまり、バクラのほうもいかさまはできないってことか」
「でもよくわかるな。遊戯。お前フィールドの外のことが」
そんな遊戯の言葉にしみじみといっている本田に、多少疑問におもいつつも問いかけている城之内。
「この千年パズルを通じて光景は手にとるようにわかるから」
嘘ではない、嘘では。
人形、という形をとっているとはいえ基本、いつも自分の心の部屋にいて様子を視ているのと何らかわりはない。
「とにかく、森をぬけないと」
「そうね。たしか森をぬけたところに城があったわよね?」
人形となった身からすれば小さなフィールドも大きくみえる。
「え~?ならこのままで森をぬけるの?美穂歩くのむり~」
右も左もわからない森の中。
どちらにむかって歩いて行けばいいのかすらもわからない。
「美穂ちゃん。なら俺の背に。杏はともかく美穂ちゃんの体はこんな山の冒険には不向きだしね」
「どうせ野蛮だよ。私は」
弱音を吐いている美穂に対してしみじみいっている本田。
何気に杏に対してひどいことをいっている、という自覚は本田にはない。
「さあ。美穂ちゃん。俺の背中に。おぶっていってあげよう。もし、よければ…だけど」
「ほんとう!?美穂、本田君、だ~いすきっ!」
「さあさ、お姫様」
背を差し出すと同時に、よろこんで本田の背にとまたがる美穂。
人形、とはいえ美穂ちゃんにはかわりがない。
ゆえにこそ顔がにやけている本田。
「ええい!あまったれない!これくらいでねをあげてどうするのよ!これからもっと危ない冒険がまってるっていうのにっ!」
おそらく闇の手が伸びてきている、ということはこれからもいろいろとおこりえるはず。
それゆえの杏の言葉。
しかし美穂達からしてみれば、それはこのゲームのみ、としかとらえられない。
「まあまあ。杏。とにかく、いこ。…おそらく了君はゾークにとらわれているとおもうし。早く助け出さないと」
うかうかしていたら本当に闇に飲み込まれてしまうかもしれない。
それだけは何としてもさけなければならない。
「そ、そうよ!獏良君をたすけるんだった!さ、本田君、ファイト!」
「…って、美穂、あんたは本田からおりなさ~いっ!」
どこか緊迫感が欠けているような気もしなくもないが。
そんな会話をしつつも森をひたすら抜けるためにと歩く遊戯達の姿がフィールド上においてしばし見受けられてゆく……

プレイヤー、として上からみたのと人形としてみるのとではその大きさも何から何からすべてが違う。
こうして不本意にも人形になって行動していると何となくだがRPGでの冒険者たちの気持ちがわかるような気がひしひしとする。
実際に今は自分が冒険をしている形になっているのだが。
違うのは痛みを感じても血などが出ない、というところであろうか。
「このお城の仕掛けはどうなってるんだろう?」
お城のパーツの組み合わせ方により様々な形をなす。
外見しかみていないのでどんなパーツを組み合わせているのかは遊戯には判らない。
「基本はこのゲームは分解ジオラマの形式をとってるからこれもそう、だとはおもうけど」
何やら冷静に物事をみてそんなことをいっている遊戯とは対照的に、
「ようやく城についたぜ。ここがゾークの城、かぁ」
何だか上からみていたのとしたから見るのとでは感じが違って見える。
「いよいよゾーク城にのりこむぞ!覚悟はいいか!」
何だかこういうのはどきどきする。
なぜ自分が人形になっているのかはいまだによくわからないし、深く考えないことにする。
とにかく今はあのゾークを倒すことのみを考えればよい。
そんなことを思いつつも、全員を見渡してそんなことをいってくる城之内。
遊戯達が城にたどり着くのと同時、門の橋がおろされる。
「これがラストクエスト、か」
おそらくここにラスボスがいるはずである。
それと同時に城が分解し別の空間が創り出される。
「あ、やっぱり分解ジオラマだ。この中にいるであろうラスボスをみつけだして倒せば僕たちの勝ち、だよ」
何やらのんびりとそんなことをいっている遊戯に対し、
「ねえねえ。何だろ?これ?」
目ざとくもかわったものをみつけた美穂がきょとん、とした声でといかける。
そこにはひとつの塔があり、その中に何か意味ありげな台座がおかれている。
「って、そこにはいっちゃだめ~!」
『そこにははいるなっ!』
美穂の言葉につられて塔の中に入ろうとする本田達に対してあわてて叫ぶ遊戯とユウギ。
「あぶないっ!美穂!」
「本田君!」
ぐいっ!
塔の中にはいっていた美穂と本田を同時にひっぱりだしている遊戯と杏。
それと同時にさきほど二人がいた塔の上からがらがらと何かが落ちてくる。
「まったく。二人とも!罠がいたるところに仕掛けられているのは常識なんだから軽々しくあるいたらだめだよ!」
落ちてきた罠はどうやら天井板、らしい。
「吊り天井、か。…とすれば他にもいろいろと仕掛けがありそうね。ここ」
杏の意見は至極もっとも。
たしかにこの城にはいたるところにこういった罠が仕掛けられている。
それはよくよく注意してみればわかるもの。
しかしその注意の仕方を杏達は知らない。
「…ちっ……」
罠にかかればそのままゾークを出現させたのに。
まさか罠を逃れるとは。
それゆえに思わず舌打ちするバクラ。
「ゾークのやつ、どこからでてくるんだ?」
どこかにおそらく隠れているはず。
どこにゾークを隠しているのかをしっているのはバクラのみ。
「ねえねえ。皆。ちょっといいかな?」
遊戯にはゾークがどこにいるのかはわかる。
千年パズルが反応している。
そしてまたかの邪悪な気配は強すぎるゆえにいやでもわかる。
『お兄ちゃん、この作戦、どうかな?』
『わかった』
遊戯の立てた作戦にそのままのり、
「次はお前のターンだが?」
いまだに罠にひっかからなかったことに不満そうなバクラにと言い放っているユウギ。
ふとフィールドをみてみれば遊戯達の姿が見当たらない。
どうやらそれぞれが分かれていろいろな場所を探しているのか影も形もみえやしない。
おそらくはフィールドのバーツのどこかに紛れているので判らないのであろう。
しかし、それはあるいみチャンス。
一人ひとり倒していけば問題はない。
何よりも標的は遊戯、一人、なのだから。
ちらり、と遊戯の魂の入った駒がどこにいるのかすかさず確認する。
「ゾークの出現判定。…ゾーク出現!」
ユウギが選んでいる遊戯によくにた駒。
その駒の頭部分をちらりとみたがゆえにその背後に出現させた。
「ふっ。ひっかかったな」
「…何!?」
はっとみれば、ゾークの真後ろに遊戯達の姿が見て取れる。
「馬鹿な!?」
はっとみてみれば、遊戯の駒の頭だ、とおもったものは仲間モンスターの一人。
かのモンスターには擬態の能力がある。
遊戯の髪型部分のみ真似をしてわざと目につくように隠れていたに他ならない。
「背後による先制攻撃。フイをつく形となるので俺達の攻撃となる」
カラン。
ユウギがいうと同時にダイスを振る。
「…遊戯?」
しばし精神を集中する。
このどこかに絶対に了君がいるはず。
闇の邪悪な気配の中に埋もれるようにひっそりと。
意識を集中すればおのずと隠されているものも視えてくる。
…いたっ!
『お兄ちゃん!ゾークの手の傷の中から了君の気配がしてるっ!』
『さきほどのカツヤの攻撃でバクラ・ネロクディアスの力も一時緩んだんだろう。リョウを呼び覚ますチャンスだな』
心同士での会話。
『というか、私たちの活躍がないからつまなんい~!!』
ふっ。
活躍の場がないので心の中で何やら文句をいっているマナの姿が視えてはいるが。
『マナちゃんたちにはちゃんとやってもらうことがあるんだよ。ね。お兄ちゃん』
『ああ。お前たちには重要なことをしてもらうつもりだからな』
そう、彼女たちにはやってもらうことがある。
しかし今は了を助け出してゾークを倒すことが先決。
【ボスモンスター・ゾーク】の背後を遊戯達がとっていることにはかわりがない。
それゆえにしばし遊戯達の先制攻撃のターンとなる。
どがっ!
どごぉっん!
どがしゅっ!
「な…なぜだ?!」
先ほどからユウギがふるダイスのすべての目はクリティカルヒットを出している。
ゆえに驚愕の声をあげざるを得ない。
「だけど。予測通り、というか。僕たちのレベルでは勝てないように設定されてるゾークの規定値。
  …だけど、了君!今助けるからねっ!あと闇なんかにまけないで!!」
続けざまの攻撃をしていても、ゾークにはあまりダメージをあたえられていない、ということもわかっている。
この攻撃はあくまでもゾークの目をいっとき攻撃による爆煙でくらませるものにすぎない。
「何を馬鹿な!…っ!?」
自分のターンとなりたしかにダイスを振った。
自分の力を込めたダイスを。
しかしどうして…この数値がでるのやら。
「99…だとぉ!?」
それは自爆を意味している。
どぐわっ!!
自分の攻撃が自分に炸裂する。
それゆえにゾーク自身が自分の力の暴走によって傷つき破壊される。
「…な、何だとぉ!?」
たしかにまともにダイスをふった。
ありえない。
と。
カチャカチャ……
「なに!?俺様の左手がかってに文字を!?」
気付けば自分の意思とは関係なく左手が何やらキーボード上に文字を打ち出している。
――僕は獏良了。お前に友達は殺させない。僕も戦う!
画面上にはそのような文字が。
「リョウ。聞こえるか?闇に飲み込まれるな。自分の心を信じろ。光を信じればおのずと闇は光によってかき消される」
獏良了の意識が目覚めたのはユウギにも判った。
ゾークの傷口から直接に遊戯が千年パズルの力を借りて直接に力を送り込んで獏良了の心に送ったメッセージ。
それは闇に閉ざされていた獏良了の魂に光を与えた。
闇の中に一筋示された細い光。
しかしその光は了にとってはまさに希望、という光。
ゲームという世界を通じてバクラとゾークは一心同体の分身体と成り果てている。
ゆえにこそゲームの世界で傷ついたゾークの左腕の傷から獏良了の体を乗っ取っているバクラに遊戯達の【声】が届いた。
人の心は闇も光も飛び越えて伝え合うことができる。
闇にも光にもどちらにも属し、また属していない人、という種族がもっている心の特性。
「ち!戯言を!!」
そう、戯言。
たかが人間風情が自分の封印を解いて出てこられるはずなどはない。
「そう、かな?次はこちらのターン。いくぜ!遊戯、いくぞ!」
「うん。まかせて!!」
「何をする…何!?」
彼らがやろうとしているのはありえないこと。
それはゾークに対してなぜか手玉ハンドをこころみようとしている様が見て取れる。
「馬鹿め!ゾークにそんな技が通用するとでもおもったか!」
勝ち目がない、とさとって無謀な策にでた、としかバクラは思えない。
「どうかな?」
【な…何!?】
自分を仲間にするなどできはしない。
しかしハンドパワーを使われたのは彼の左腕。
その左腕にある傷口から煙がもくもくとわいてでる。
「みて!ゾークの左腕を!」
「あれはっ!」
ずるっと傷口の中からひっぱりだされるひとつの人形。
ゾークの左腕からありえるはずもないことに、人が遊戯の手玉ハンドによってひっぱりだされている。
「了君!しっかりつかまって!」
ずるり、とひっぱりだされたその顔はまさしく獏良そのもの。
その姿はどうやら白魔道士の格好らしい。
「おっしゃ!…って獏良のやつ、ゾークの中に閉じ込められてたのかよ……」
あの悪霊、悪趣味。
そんなことをふと思う。
そう思う本田は何も間違ってはいないであろう。
「皆…ありがとう。助けてくれて。遊戯君達の声が届かなかったら僕はずっと闇の中に閉じ込められてた……」
先ほどまで真っ暗な暗闇の中にいた。
どうにもできない自分に落ち込んでいた。
そんな中で聞こえてきた光。
そして差し伸べられた手。
その手をつかみ、きづいたらここにいた。
自分が自分として創り出した人形の姿をとって、ここモンスターワールドのフィールド上に。
闇の中で何もできなかった。
わめこうが何をしようがそこには闇があるだけで、何も。
ぐるりと見渡せばそこには人形にその魂を封じられているとはいえ遊戯達五人の姿が見て取れる。
「何ぃ!?俺様の中に封じていた宿主が人形に宿った、だとぉ!?」
ありえない現象に思わず叫んでいるバクラ。
「しかし。獏良。お前も災難だったなぁ。あんなやつに体のっとられるなんて。
  世の中よく霊に取り憑かれる話しはあるが、まさか目の当たりにするとはおもわなかったぜ」
「本田!だから俺はオカルトは苦手だってしってるのにわざわざいうかっ!?それ!?」
「何をいまさら。城之内。でもよかった。獏良君。怪我とかはない?」
「わ~い!獏良君。美穂ね。獏良君のこと信じてたよ~!」
何やらフィールド上では獏良了の出現により盛り上がっている遊戯達。
「く……」
なぜだ。
ありえない。
ありえるはずもない。
こんなこと、絶対に。
ゆえに動揺を隠しきれない。
「僕はもう一人のノンプレイヤーキャラクターであり、マスターでもある。もうお前の好きにはさせないっ!
  二度と友達をきさまに傷つけさせたりなんかさせないっ!」
きっとバクラ、そしてゾークをにらんで高らかに言い放つ獏良了の姿を模した白魔道士。
獏良了を器としている以上、了の意思もまたゾークに反映されてしまう。
ゆえにこそ、バクラの意思とは関係なくゾークの防御力などが低下する。
「闇の中で遊戯君達の声が聞こえたんだ。ありがとう。僕を助けてくれて。
  もうゾークには今までのような防御力はない。僕も皆と一緒にたたかわせて!もう誰も傷つけさせやしないっ!」
くっ。
まさか俺様の中に封じ込めていた獏良了がゲーム世界に出現するとは。
こうなれば奥の手をだすまで。
所詮貴様らにはゲームマスターである俺様には勝てないのだ、と知らしめてやる!
『気をつけろ。遊戯。あいつは最終形態をとるつもりだ。自爆にも気をつけろ』
「ラスボスの最終形態!?」
「あれは…まさかいきなり最終形態に!?」
遊戯の声と了の声はほぼ同時。
目の前のゾークの姿がゆがんでいき、その姿が変貌する。
最終形態となったラスボスは定番のごとくに攻撃力も防御力も増加する。
「だけど最終形態になったことで弱点も表にでてきている。ゾークの体の中心にあるあの部分。あそこが弱点だ」
伊達に自分がつくったこのゲームルールではない。
それがたとえ自分以外の誰か、が今それを悪用していようともルールの変化はありえない。
「きをつけて。みんな。このターンはゾークの先制だよ!」
遊戯の声とほぼ同時。
「ゾークの最終形態は攻撃力も格段にとあがっている。そしてこのターンはゾークの先制!
  いくぜ。ダイスロール!」
にやっと笑みを浮かべつつもダイスを振る【バクラ】。
ダイスの目は00。
つまりはスーパークリティカル。
「白魔法、シャイニングシールド!」
「皆!」
「まずいっ」
カッ!
了の言葉とユウギ、そして遊戯の声はほぼ同時。
ゾークから発せられる攻撃はそのまま遊戯達を直撃する。
が、その直前に張った了のバリアシールドがその攻撃を防ぎきる。
それと同時、遊戯の首にかけていた千年パズルが光を発し、別に淡き光のシールドを創りだす。
「獏良!きさまにこの攻撃がもちこたえられるか!?」
このまま表の人格が消滅してくれればねがったり。
器をえて自由に自分は活動できる。
それゆえに邪悪さをこめて言い放つ。
が。
「…何!?」
そこまで彼に力はないはず。
なのに攻撃すべてが防がれているのはどういうわけか。
「ゾークの攻撃がやんだ。大丈夫か?みんな?」
「美穂ちゃん、だいじょうぶ?」
ゾークから発せられたすざましい攻撃。
それゆえに攻撃がやみ全員をみわたしといかけている城之内と美穂を気遣っていっている本田の姿。
「了君。だいじょうぶ?」
「僕は大丈夫」
だけど…あの攻撃は自分の魔力だけでは絶対に防ぎきれなかったはず。
自分の生命エネルギーを変換しても防ぎきれたかどうか。
しかし使ったのは魔力のみ。
あのとき、何かが自分たちを守るように包み込んだ。
それが何、なのかは了にはわからない。
「何!?」
くっ。
ゾークの最終攻撃、インフェルノを持ちこたえるとは……
しかもみたところ彼らのダメージはほぼゼロといっても過言でない。
獏良め・・・そこまでLVあっぷしていたのか!?
などと舌打ちしつつもあせりをみせるバラク・ネクロディアス。
そもそも最終攻撃はその名の通り、おもいっきり弱点部分をさらけ出す攻撃、でもある。
「それより。みんな!今がチャンス!あのゾークの魔法攻撃の射出口。あの奥の目がゾークの弱点!」
不思議におもいつつも体勢を整え、きっと杖をゾークにむける了。
みればたしかにゾークの体の中心に何らかしらの穴のようなものがみてとれる。
「ぽぎ~!!」
「「なっ!?」」
了がそういうのとほぼ同時、ゾークのその射出口が閉じられてゆくものの、その直後。
遊戯達が仲間にしていたモンスターがその出口にむかって突進しその口にとすぽっとはさまる。
それをみて思わず声をだしているバクラ、そして遊戯達。
「ぽっちゃん!」
彼が何をしようとしているのかは一目瞭然。
それゆえにあせりの声を交えておもわずさけんでいる杏。
「ぽき゜~!」
彼らをここで死なすわけにはいかない。
ならばできることをするまで。
自分ごとゾークを吹き飛ばせば、彼らもそしていまだに救われていない仲間達も救われる。
彼らにかけたい。
こんな自分を助けてくれた彼らを。
それになによりも、あの闇と同等に渡り合える【彼】を。
短い冒険だったけど、生まれきてよかった、そう思えた。
きづいたときは闇の手先にされていた。
その暗闇から彼らは助け出してくれた。
思い残すことなど、もう、ない。
だからこそ。
今のうちに僕ごとこいつをふきとばして!
その言葉をこめて言い放つ。
「ぽっちゃん……」
彼が何をいいたいのかはいわずとも理解できる。
が、しかし。
「ありがとうよ。しかし」
「俺達は共に戦った仲間を絶対に犠牲になんかさせはしないさ!」
「そうだよ!ぽっちゃん!」
「そうよ!悪の心に仲間の命を犠牲にする価値なんてこれっぽっちもないんだからっ!」
そんなは以前の一度っきりでもう十分。
その思いが杏、城之内、本田、美穂の心にふとよぎる。
『?以前?』
ふとそんな思いにかられ、同時につぶやく杏達。
『お兄ちゃん!』
「ああ。まかせとけ」
仲間を犠牲にする勝利など何ももたらさない。
ばっと振り仰ぎつつ心の中でユウギに話しかける遊戯の姿。
「いくぜ。次のターンは魔物使い遊戯の攻撃!」
ユウギがそういいダイスをふる。
ダイスの目は00。
「手玉ハンド出現!ジェットストリーム・パンチ!!」
ユウギのだした目に従い、遊戯のクリティカル攻撃が可能になる。
そのまま手玉ハンドを出現させ、ゾークにむかって攻撃をしかける。
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
それと同時、ゾークの断末魔ともいえる近い叫びがフィールド上にとコダマする。
「よっし!ぽっちゃん!」
「…ぽぎ?」
自分は死を覚悟した。
しかしふと気付けば大きな手の中に自分は救い出されている。
ふと後ろを振り向けば身もだえしているゾークの姿。
「ぽっちゃん、よかったよ~!」
半分涙目になりながらも横にいる本田に抱きついている美穂。
「いくぜ!」
しかしまだ遊戯達のターンはおわっていない。
ユウギのふった目は連続してクリティカルの目でもある00。
「なに!?」
すでにダイスの目をコントロールすることなどできはしないはず。
ただ、ダイスを手にもちそのまましたにおとしているだけではイカサマもできない。
まさか、【ファラオ】…やつは俺様と同じような心をダイスに分けることができるのか!?
そんな思いがバクラの心の中にと去来する。
このままでは負ける。
ゆえに自分の力をゾークのほうにと分け与え、何とかこらえる。
フィールド上のゾークとバクラは一心同体となっている。
つまりはゾークはバクラであり、バクラはゾークでもある。
「やった!ゾークをたおしたぜ!」
「いや、まだよ!」
城之内の攻撃で倒れたゾークをみてガッツポーズをする彼に対して冷静に分析していっている杏。
「まだ、ゾークはたおれていない!」
了もまたそのことに気付いて思わず叫ぶ。
しかしどうみても相手は瀕死状態。
「くくく。次はゾークの反撃!」
クリティカルをしのいだ。
それゆえにダイスをふり、出した目は反撃可能、のダイスの目。
しかし、本来、まだターンは遊戯達にとある。
「うけてたつぜ!いくぜ!」
相手が何をしようとしているのかは手にとるように理解ができる。
フィールド上にいるすべてのものを道ずれにしてゾークを自爆させる。
たとえこの場でゾークを倒してもそれは本体、ではない。
彼はあくまでも末端の一部にすぎないのだから。
そしてそれは闇があるかぎり、無限に力は供給されてやがて再び表にでてくることになるであろう。
そのことをもユウギは理解している。
心の一部をダイスに封印して全員道連れにしてやる!
邪悪な笑みをうかべつつもダイスを握りしめ、
「名もなきファラオよ!きさまのまけだ!」
勝利を確信して言い放つバクラ・ネクロディアス。
この場合、同時にダイスをふり、出た目の数で先制かどうかがきまる。
そしてまた、同じクリティカルをだした場合は、反撃するほうが先制攻撃をすることになる。
ユウギのふったダイスの目は00。
連続してのクリティカルヒットのダイスの目。
「おわりだ!!ゾークとともに、貴様らを道連れにじば…何!?」
絶対の確信をもって言い放つ。
が。
パキッ……
ダイスの目はたしかに自分がクリティカルにするように細工したのに。
しかし地についたダイスにヒビがはいるのはこれいかに?
「何!?ダイスに…!?」
ありえない。
自分の心を封印したはずのダイスにヒビがはいる、などとは。
それゆえのバクラのあせりの声。
「まさか…!?」
はっとみれば、ダイスの中から見知った気配。
お…お前は獏良了!!
ふとみれば、ダイスに自分の心を封印したときに自分の中にいたはずの獏良了もまたダイスにはいりこんでいたのか、
その了の心がダイスを破壊させている、というのが理解できる。
「了!」
「了君!」
彼が何をしようとしているのか理解して思わずさけんでいるユウギと遊戯。
「僕はこれ以上、友達を失いたくない!たとえ僕の心が砕け散ろうとも!」
フィールドにいる了の心は本人の分身ともいえる存在。
だからこそ、自分が何をしようとしているのかはおのずと理解ができる。
「遊戯くん。みんな。僕を信じてくれて・・・闇から助け出してくれて、ありがとう」
「お、おい!?獏良!?」
彼が何をいいたいのか理解不能。
ゆえにとまどいながらもといかけている城之内。
「く!きえされ!!獏良了め!!」
どこまでもジャマをする宿主。
ただの器に選ばれた人間だというのにこの俺様をここまで阻むとは。
それは消滅をもってつぐなうがいい。
それゆえに千年リングの力を発動させて、了の魂にむかって解き放つ。
「くっ!!」
「了君!」
『遊戯!』
カッ。
バクラ・ネクロディアスと獏良了がそんなやり取りをしているそんな中。
遊戯とユウギの首にかけている千年パズルが光を発する。
そしてその光はフィールド上にいる遊戯達を包み込んでゆく……

「…馬鹿な!?」
ありえない。
心をダイスに移した獏良了のその意思もその行動も理解不能。
「なぜそんなことが貴様らにできるっ!?」
千年リングの力で完全に獏良了の心を消し去ろうとした。
なのに……
「二度と君に了君を好きにさせてたまるかっ!」
「そうだぜ!獏良についた悪霊め!お前にこいつはコロさせやしない!」
「そうよそうよ!獏良君は美穂達の獏良君なんだからっ!」
しかし全員の心が獏良了、の傍にあるのはいったい全体どういうわけか。
たしかに全員の魂は人形に封じているはず。
それゆえに絶対にありえない。
ちらりとみればフィールド上には変わらずに彼らの人形はそこにある。
つまりは人形の中に彼らの魂ははいっているはずなのだ。
なのに、なぜ……
「…!?まさか…それは!?」
ここにいたり、はっとする。
目の前にいる【王】の首にかけられている千年パズル。
そしてまた、人形にしたはずの遊戯の首にさげられている千年パズル。
モンスターワールドの人形にそんな付属アイテムがついているなどありえない。
それは、すなわち……
「ちっ!きさま!…ファラオ!キサマの力かっ!!」
千年パズルの力は未知数。
すべての千年アイテムを束ね、そしてまた神を召喚できるほどの力をもっている。
おそらくフィールド上にといるもう一人の遊戯の心を利用して何らかの力を施している可能性が高い。
「いっただろう?お前は人の心を甘くみすぎだ…と」
「…くっ!」
パキィッン……
それと同時、彼らの心の力においてバクラが自の力を閉じ込めて落としたダイスにヒビが入りハゼ割れる。
「俺達のターン!すべての力をひとつにまとめた攻撃!」
「「ファイナル・ビックバン!!」」
全員の魔力をすべて杏に託し仲間すべての魔力をこめた攻撃が炸裂する。
【ぎゃぁぁ~~!!!!】
フィールド、そして、
「うわぁぁっ~っ!!」
その攻撃は彼を生み出していたバクラにもまた伝わりそれぞれに叫びをあげる。
「我が命のもとにバクラ・ネクロディアスの闇にとらわれし魂よ。いまここに浄化解放させんっ!」
バクラの叫びと、ユウギの叫びが高らかにコダマする。
かっ!!
それと同時、部屋全体が瞬く間にと光に包まれる。

『ようやく私の出番。もう、王子、私まちくたびれちゃったよ~』
ふよふよふよ。
え~と?
何がどうなったの?
ふと気付けば主人と仰いでいた人物の横にふよふよと浮かんでいる少女が一人。
「で、お兄ちゃん、ぽっちゃんたち、どうするの?」
せっかく仲良くなれたのに、このまま別れるのはしのびない。
そもそも彼らは大切な仲間のうちの一人である。
杏達の意識はまだもどっていない。
しかしモンスターワールドのフィールド上にある人形にはすでに杏達の魂は入っていない。
この場にいるのは遊戯と、そして遊戯が仲間にした二体のモンスター、のみ。
『王子!わたし、そのこたちかわいいからペットにしたいっ!』
「「…マナ(ちゃん)……」」
遊戯の素朴な問いかけにすかさず反応しているマナの姿。
それゆえにあきれたように同時につぶやく遊戯達。
『こら!マナ!ファラオを困らすでないっ!では、ファラオ。我々はとらわれていた魂を元の場所に戻してまいります』
こつん、とそんな少女にげんこつをくらわせている長身の男性。
魔物、として生をうけていたからこそわかる。
彼らがいったい【何】なのかは。
「ああ。たのむ。そうだな。新たに転生の道を開くのもよし。それは各自の判断しだいだ。…おまえたち、どうする?」
いきなりそんなことをいわれてもよくわからない。
それゆえにしばし顔をみあわせる二体のモンスターの姿がフィールド上において見受けられてゆくのであった……

「了君!」
『了!』
遊戯がフィールドにいたのはバクラの力ではなく自身の千年パズルの力によるもの。
ゆえにこそその意思ひとつで元に戻ることも可能。
フィールドから意識を戻し、そのままユウギと交代する。
倒れている獏良了のもとにあわててかけよってみてみれば、千年リングのヒモがはずれて床にとおちているのがみてとれる。
今ある闇の力が消失し、一時的に闇の力を失っている状態で。
「う……遊戯…くん?」
ゆっくりと目をあける。
何か長い夢からさめたような、そんな感覚。
目をあけると心配そうな顔をしている遊戯の姿が目にはいる。
「大丈夫?了君?」
『どうやら大丈夫そう、だな。今のところネクロディアスの残留思念ものこっていなそうだし』
ざっとみただけでそこまで判断できるユウギはさすが、といえよう。
心配して声をかけている遊戯とは対照的に多面的な面からも心配してさぐっているユウギの姿。
もっとも了には遊戯の姿のみで、ユウギの姿は視えるはずもなく。
その姿が視えているのは遊戯のみ。
「「「う……」」」
それと同時、倒れていた杏、美穂、城之内、本田もまた意識を取り戻し起き上がる。
「美穂…美穂!?」
一番始めにとらわれた美穂を気遣い、まだ目覚めていないっぽい美穂を心配して呼んでいる杏。
「…ん…あれ?杏?」
ぽんやりと意識が向上してみれば、目の前に杏の姿が。
さっきまでたしか私、人形になってたけど…え?
よく状況が理解できないまでもとまどいながらも返事を返す美穂。
「みんな!」
全員が無事に目覚めたのをうけ安堵の声をだしている遊戯。
『マハード達がとらわれていたすべての魂を元の場所にもどしているはずだ。
  今までこん睡状態になっているものたちも目覚めているころだろう』
ゲームの内部で死んでしまい、ゾークにとらわれていた魂も解放した。
そして闇に利用されていた様々な魂も。
「ん?あれ?」
「お、俺達、かったのか?!」
最後のほうがよくおもいだせない。
しかしざっと見渡せば全員元通り、人形の姿であったのが嘘のよう。
ゆっくりとおきあがると、目の前にはモンスターワールドのフィールド模型が目にはいる。
「美穂ちゃん!よかった!皆元にもどったんだな!」
美穂が目覚めてるのをみてそんなことをいっている本田であるが、そんな本田をさらっと無視し、
「美穂。やったね。私たち」
「うん!私たちかったんだ!」
何やらこちらはこちらで盛り上がっている女性二人。
「あ、みて。みんな」
みれば、フィールド上に全員がさきほどまではいっていた人形がよりそうようにとかたまっている。
仲間であったモンスター二体も。
「何かみんな、うれしそう」
美穂の言葉に素直にうなづく杏。
たしかに、ただの人形のはずなのに、どことなく嬉しそうにみえるのはきのせいか。
「うん。とらわれていた他の皆も解放されたようだし。でもよかった。了君、無事で」
「えっと……。皆…ごめん……」
何といっていいのかわからない。
しかしわかるのはただ一つ。
自分が助けられた、ということのみ。
「何いってんるんだよ。しかし災難だったなぁ。獏良。そういや遊戯、あの悪霊どうしたんだ?」
「ひとまず消えたみたいだよ?」
嘘ではない、嘘では。
再び出てくる可能性があるにはあるが、ひとまず今はそこまでいう必要もないであろう。
彼らをさらに心配にさせるようなことは遊戯としても本位ではない。
本田の問いかけに、真実を交えて説明している遊戯。
「あれ?さっきまで遊戯君のお兄さん、いたよね?どこいったの?」
「『あ・・・』」
そういえば、いまだに美穂は勘違いしているままだった。
そのことに気付いて思わず声を同時にあげているユウギと遊戯。
「そういえば……」
自分のもっていた千年リングの中にあの悪意は潜んでいた。
ならば、遊戯君のもっている千年パズル…とあれが呼んでいた中には?
しかもあの悪意とどうやら知り合いっぽかった。
それは了としても気になるところ。
「って、あああ!!!!!」
そんな会話の最中。
いきなり大声をだしている美穂。
「って、美穂。いきなり何よ!?」
「なに!?まさかまたゾークか!?」
おもわず美穂の声にばっと身構えている城之内。
「美穂、せっかく獏良君の家にきたのに何もしてないぃぃっっ!」
ずででっ!
すべっ!
美穂のそんな台詞にその場にずっこけている本田達。
「あ、あのなぁ……」
起き上がりつつもあきれたような声をだしている城之内。
その気持ちはおそらく誰もがわからなくもないであろう。
「了君、体のほうは大丈夫?」
「うん。平気。でも何がどうなったの?」
了とてよく理解できない。
ぎくっ。
説明しろ、といわれても説明のしようがない。
そもそも遊戯にもよくわかっておらず、それらすべてはユウギの力によってひとまず解決した、ということしかわからない。
「ねえねえ。それより今度は普通にゲームしようよ!」
「おまえなぁ!!」
さらっと話題をかえていう遊戯におもわずつっこむ城之内。
おそらく彼の意見もまた間違ってはいないはず。
「こら!遊戯!もう!ってもうこんな時間!?」
ふとみれば時計はいつのまにか七時をまわっている。
「ほんとだ。美穂、かえらないと」
「美穂ちゃん、俺がおくっていくよ」
「ほんと!本田君、ありがと~!!」
何だか話題をさらっと変えられたような気もしなくもないが。
たしかにこんな時間まで長居をしているわけにもいかない。
「じゃあね。獏良君。また明日学校で」
いってそのまま部屋を後にしてゆく美穂と本田。
「遊戯、私たちもかえろっか。あまりおそくなっても獏良君にわるいし」
「そうだね。あ、了君。それ、今は大丈夫だけど、身に念のためにつけないようにね?」
それ、というのが何をいみしているのか了にはわかる。
しかし、どうして【今は大丈夫】ということもわかるのかがよくわからない。
「遊戯君は、しってるの?このネックレスのこと?」
「う~ん。僕より爺ちゃんのほうが詳しいかな?明日、僕の家においでよ。
  今日は了君もつかれたでしょ?ゆっくりとやすんだほうがいいよ?」
しばらく闇にとらわれていた魂の疲労は計り知れない。
それゆえの遊戯のねぎらいの言葉。
たしかにいわれてみればかなりつかれている。
「じゃ、また明日ね。獏良君」
「またね」
たしかにあまり遅くまでひきとめておくのは彼らにもわるい。
それゆえにこの場は素直に彼らを見送り、一人部屋にと残される了の姿。
それでもきになるのはあの闇の声。
「…本当にアレが皆を……」
それが真実だ、とわかるがゆえにおちこまずにはいられない。
意識不明のままの友人達のこともきにかかる。
そんなことをおもいつつも、しばし床におちたままのリングを見つめる了の姿が、
彼の部屋において見受けられてゆくのであった……


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あとがきもどき:
何となく、原作ラストのあたりでまよってたり(こらこらこら
遊戯が記憶(アテムと同一)として思い出すか、はたまた試練にて思い出すのか迷い中。
やはり名前を見つけたときに思い出すのがベストなのかなぁ?
まあ、今からまよっていてもしかたなし。
つうかいいかげんに仕上げないと(汗
ともあれ、ようやくおわった一回目のバクラ・ネクロディアスとの戦いさん。
一体全体、何話にこれなることやら(汗
何はともあれ、次回に続きますv
ではでは~♪

2009年7月7日(火)某日

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