まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
今回はいろいろと付随をばv
獏良君とそして闇獏良vこれはやはりおさえとかないとv
さらっと遊戯が何気に第三の眼、のことをいっているのが今回のポイントですv
何しろこの遊戯さんのお話ではそれが一番のネック、になってますからね(笑
何はともあれゆくのですvv
#####################################~第25話~
「やり~!遊戯、さんきゅ~!!」
「遊戯。私にまでわるいわね」
「きゃぁん。美穂頑張ってそだてよ~!」
翌日。
双六からもらったゲームをもって学校へ。
頼まれていたのもあり、城之内達にとキーホルダーゲームを手渡す遊戯の姿。
「遊戯はもうペットを育ててるの?」
「うん。昨日から育てはじめてるんだ~」
『まっさらな魂を育てるのも悪くないしな』
何やら二人してそんなことをいっている遊戯とユウギ。
ちなみにユウギは制服姿で遊戯の横に姿を表している状態。
といってもその姿は誰の目にも映っていないのだが。
何もないまっさらな状態の生命体をどのように育てていくのかはそれは育て方次第。
そんな会話をしている最中。
「はい。みんな席について~」
ざわざわざわ。
がらっと扉をあけてはいってくる担任の野間。
「はいはい。席について。それでは出席をとりますよ~」
いつもの点呼とともに、朝のホームルームが開始される。
「はい。今日はみなさんに二カ月遅れのクラスメートを紹介いたします。君、はいってきて」
ガラッ。
担任の野間の言葉に従い教室の扉が開く。
扉から入ってきたのは何となく大人しそうな感じをうける少年が一人。
「きゃ~!」
「かっこい~!」
何やら女生徒達からそんな声があがっていたりするのだが。
「獏良了君、だ。みんななかよくしてやってくれな」
かきかきかき。
黒板に彼の名前を書き出し生徒を見渡す。
「獏良了、です。よろしく」
薄水色の神に緑の瞳。
『…リョウ。それに…この気配は……』
気配でわかる。
「?お兄ちゃん?」
何やら彼を知っているっぽい。
ゆえにこそ心の中でつぶやいているユウギに問いかける。
「獏良君はしばらく入院していて、入学が遅れたが。今日から君たちのクラスメートだ。
仲良くしてやってくれな。えっと、獏良君の席はあそこ。だよ」
「はい」
野間にいわれて素直にその席にとむかってゆく転校生。
ちょうどその席は城之内のとなりに位置している場所。
そんな彼をしばし気配を隠してじっと見つめているユウギ。
闇の気配が濃くなったのには気づいていた。
ゆえにこそこちらの気配は隠している。
ゆえにこそあちらにこちらの存在はまだ気づかれてはいないようである。
「獏良君。きをつけてね。城之内はクラスイチの環境汚染物質だから~」
「何だと!てめぇらっ!」
わきあいあい。
一人の女生徒の台詞に思わず突っ込みをいれている城之内。
このクラスは何だかとても温かい。
心がとても温かくなる。
「えっと。よろしく。…城之内君…でいいのかな?」
「おう!仲良くやろうぜ!」
何だかとても他人のような気がしないのは気のせいか。
初めてみたときどこか懐かしさを感じたのも事実。
そんなことをおもいつつも、横の席にやってきた獏良に手をあげて挨拶している城之内。
「はいはい。それでは朝のホームルームを始めたいとおもいます。
今日は文化祭についての話し合いをしたいとおもいますので。
まずは実行委員を決めたいとおもいますが。誰かやりたい人はいますか?」
パンパン。
ざわめく生徒達を鎮めるためにと手をたたく。
「はい!」
率先して手をあげている生徒が一人。
「はい。真崎さん。え~と、他にはいませんか?いないのでしたら真崎さんに決定しますが。
真崎さんでいいひとは挙手をお願いします」
野間の言葉にほとんどの生徒がいっせいにと手をあげる。
「はい。それでは実行委員は真崎さんで決まりです。では真崎さん。実行委員として進行をおねがいします。
まずは出し物の意見をみんなから集めてくださいね。私は横でみてますから」
いいつつ、野間は横に椅子をおきどうやら完全に生徒に任せる気満々らしい。
野間の言葉をうけて、杏が教壇のほうにとでむいていき、そのままクラスを見渡し、
「え~。それでは実行委員を務めさせてもらいます。みなさん、何か意見はありますか~?」
全員を見渡してとりあえず言われたとおりに問いかける。
文化祭実行委員、B組代表は立候補した杏が他におらずに実行委員にときまった。
野間は横で生徒達の自主性にと任せている。
何かあれば手助けすればいい。
教師の役割、というものは基本そういうもの。
野間の考えは
「文化祭、か~。何かたのしそうだな~」
ざわざわと生徒達がそんな意見にとざわめきをます。
「は~い!お化け屋敷がいいとおもいま~す!」
一人の生徒が手を挙げて意見をだす。
「でもそれだと他のクラスとだぶりそうでない?」
「確かにポビュラーすぎる、よね」
しかも文化祭は全校で行うもの。
一年から三年まで、さらには先生達までまきこんだちょっとしたお祭りさわぎ。
「文化祭っていつだっけ?」
「六月でなかった?」
「げ~。台風シーズン?!」
しかも六月は梅雨の時期でもある。
「つうか、一か月もないじゃないかよっ!」
何やらかなりいうのが遅いような気がするのは生徒達の気のせいであろうか?
今の季節は五月。
「文化祭があるのは六月」
「普通文化の日にあわせて十一月じゃないの?」
本来、法律で定められている文化の日は十一月三日。
今は五月。
ゆえに生徒の意見ももっとも、ともいえる。
「初めての文化祭でおそらくよくわからないだろうが。まずはそれぞれのクラスが意見をだし。
そしてそれぞれのクラスが出し物を決めて重なればいわば競争、となる。
実行委員はクラス代表として出し物、そしてそられを出す場所などを勝ち取る、という役目をももつ。
まあ、あまりセオリーすぎる出し物だと競争率が強すぎて後には何も残らない可能性もあることを肝にめいじとけ」
「先生!ならこれで決まり!名付けてリアル女子高生キャバクラ!
何といっても高校の文化祭!一大イベント!ここはやはりお色気勝負で!
というわけで女子は全員客の要望にかなうコスプレを……」
「ひっこめっ!城之内!!」
「あんた何かんがえてるのよ~!!」
野間に続いて何やらいきなり立ち上がり、力説している城之内であるが。
そんな彼にとすかさず女生徒達から反発が巻き起こる。
「まったく。何考えてるんだか。そうだ。獏良君。何か意見ない?」
城之内の意見に頭をかかえつつも、今日からやってきている獏良にと話しをふる。
「え?…僕?」
いきなり話しをふられて思わず戸惑う。
杏の言葉に全員が自分に注目しているのに思わず恥ずかしくなってしまう。
「僕は…たとえば、ゲーム…とか……」
それ以外に思いつかない。
「ゲーム、かぁ。いいね。それ。獏良君もゲーム好きなんだ」
そんな獏良にとにこやかに椅子に座ったまま話しかけている遊戯の姿。
「え?あ。うん」
ひかれるのではないか、とおもっていたのに賛同されておもわず照れる。
好きなのになぜか原因不明の事件がおこり、人とゲームをするのを避けていた。
しかしやはりゲームは一人でやっても面白くない。
それゆえに彼の提案。
「ゲーム、かぁ。ゲームにもいろいろあるけど。だけどいいね。ゲーム」
「そうだ。武藤。オマエゲームにはいろいろ詳しいだろ?ゲームでも何がいいとおもうんだ?」
獏良の言葉にそれぞれが語り出し、やがてその話題は遊戯にと振られる。
「え?そうだな。やっぱりカーニバルゲームかな?ほら、よく遊園地とかにあるやつ。あれならみんなもたのしめるし」
カードゲームとかも楽しいがやはり文化祭は全員でわいわいと騒げるもののほうがいい。
そんな遊戯の意見にクラスがそれぞれ顔を見合わせ、
「うん。いいんじゃない?」
「何かたのしそうだし」
「ゲームなら誰もがたのしめるしね」
わいわい、がやがや。
何やらそれぞれに話し合い、
「では他に意見ありませんか?なければカーニバルゲームが第一候補、というのでいいとおもうひとは挙手をしてください」
杏の指示に従いすべての生徒が挙手をあげる。
「なら獏良君と遊戯の意見でカーニバルゲームで一年B組は決定、ということで。
他に重なるわけはない、とおもうから。どんなゲームがいいかそれぞれ意見してください」
そもそもそんな意見、他のクラスがだしてくるとは思えない。
「こらこら。一応いっておくが。一クラスの分担費用は五万円だからな!それを頭にいれとけよ!」
ここまですんなりと出し物の意見がきまる、というのも珍しい。
「え~?なら射的とかの景品にものすごいものとかむりってこと?」
「あ、それならさ。それぞれの家でいらないものとかもちよってそれらを景品に、とかは?」
それならば決められた金額とは関係ないので品物にもメリハリができる。
「あ~。おまえら。もりあがるのはいいが、そろそろホームルームの時間もおわりになるからな。続きはまた、ということで」
たしかにすでに時間が迫っている。
このまま一時間目が野間の授業ならばそのまま継続して審議をさせる。
という手もつかえるが一時間目の授業は地理。
つまりは他の教師がやってくる。
それとほぼ同時。
き~ん、こ~ん、か~ん、こ~ん……
時を知らせるチャイムの音が鳴り響く。
「獏良君。入院していたっていうけどもう平気なの?」
一時間目の授業がおわり、みんなクラスにやってきた獏良了に興味しんしん。
「あ、うん」
「しかし。いい案だしてくれたよな。ゲーム、かぁ。お前ゲーム好きなの?」
隣の獏良に問いかける城之内に対し、
「うん。大好きだよ」
「なあなあ、ならみてるか!?日曜日のあの番組!」
「うん。僕もみてるよ。ビックマネー。ゲームでゲットショー、でしょ?」
毎週日曜日の七時からある番組。
この四月から始まり、いまのところずっと一人が勝ち進んでいる人気番組。
「お!お前もみてるんだ。すごいよな!」
「へぇ。獏良君もみてるんだ。あれ。でもすごいよね。あれってたしか勝ち進むごとに賞金が増えていくんだったっけ?」
席を離れて獏良の席にむかっていき、その会話に混ざっている杏の姿。
「おう!一週目で十万円。二週目で二十万円。十週勝ち抜けば百万円だぜ!」
思わず力説していってしまう城之内は間違ってはいないであろう。
「すご~い。今までいくらかせいだのかな?あのチャンピオン?」
休み時間。
すでに獏良了の周囲には人だかり。
主に女生徒達がたむろしていたりするがそれはそれ。
いつのまにやらクラスのほとんどが周囲に集まってきていたりする。
「ダメだ。いけない。美穂ちゃん。こいつらの安易な憧れに染まっては。何といっても人間地道にこつこつと生きるのが一番!一攫千金を夢見るものは所詮世間のはみ出し者になり、最後には断頭台の露と消えるのがせきの山だ」
きらきらと瞳を輝かしていっているそんな美穂に本気で何やら提言している本田。
「……ぷっ」
何だかとても面白い人達……
そんなやりとりをみていて思わず噴き出す。
こんなに楽しい気持ちになったのはしばらくなかった。
だけども、自分のことをしれば彼らもこんなに話しかけてくれなくなる……
そう思うと心に影がおちる。
「何わけのわからないことをいってやがる!百万円だぞ!百万円!
それだけあればアホなオヤジが酒やギャンブルで作った借金が少しでもかえせるっ!
闇金から逃げるみじめな生活が少しでも改善されるっ!うまくすれば借金とりから逃れるみじめな生活とおさらばだっ!」
百万程度では焼け石に水、ではあるが。
しかしひとつの闇金業者からの取り立てはすくなくとも解放される。
「…城之内…
「…おま、そんな生活してたのか?」
「…しまった!…つい……」
城之内のそんな台詞に思わず集まっていた生徒達が呆れたような声をだすが。
はっと気付いて口をふさぐがあとのまつり。
「あ…あんたそんな生活してたの?」
人間見た目ではわからない、といういい典型。
それゆえに唖然としつつもつぶやく杏。
「そういえばお前。小学生のころから学費から生活費まで全部自分で工面していたとか……」
詳しくは聞いてはいないが、何でも両親が離婚したのちずっと自分で工面をしてきた。
そのようなことを本田は聞いている。
「そ…そうよ!親のスネをかじってぬくぬくと生きてきたヤツラとはわけがちがう。地道にコツコツと生きてきたのは俺のほうよっ!」
「…みんないろいろあるんだね」
自分だけが不幸のような気がしていたが、それぞれに家庭の事情はある。
少なくとも自分は金銭面では父親がどうにか工面してくれているので問題はない。
「あ。えっと。獏良了君、だったよね。僕は武藤遊戯。よろしく」
少しばかり会話に混ざるのが遅れたのはユウギとしばし話し合っていたがゆえ。
彼の席にとちがついていき、にこやかにあいさつを交わす。
彼らがゲームでゲットショーの話題をだしているのは知っていた。
そもそもあの人物が勝ち進んでいる理由は明白。
テレビを通じてでも遊戯には彼に憑いている【フォルトナ】の姿が視えているのだから。
しかしそれはわざわざ説明するようなことでもない。
「おっと。そういえば自己紹介がまだだったな。俺は城之内克也。こいつが本田ヒロト」
「野坂美穂で~す!んふふ。獏良君、なかよくしようね?」
すばやく美穂がにこやかに獏良にと話しかける。
が。
「ずる~い!美穂!抜け駆けはなしよっ!」
「え~?そんなつもりじゃないよ~」
そんな美穂に女生徒達が抗議の声をあげていたりするのだが。
「私は真崎杏。よろしくね」
「こちらこそ。…ところでえっと…武藤君…だったよね?」
「遊戯、でいいよ。僕も君のこと了君ってよんでいい?」
ユウギがいうには彼はかつて闇の人格『バクラ・ネクロディアス』に利用されていたらしい。
自分が何もできないまま他人を傷つける様子を心の中でみているしかできない。
というのはおそらくとても悲しいことであったはず。
それがわかるからこそあえて名字ではなくて名前をいっている遊戯。
「遊戯。なら俺もカツヤでいいぜ?」
自分は名字で呼ぶのにどうして彼は名前なのか。
そうおもいつつも遠慮しているのかも、とおもっていうもののね
「城之内君を僕がカツヤ君っていうの?」
ぶるっ。
「…いや、何かいますっげぇ悪寒がした。名字でいいや」
自分で提案しておいて何ではあるが、遊戯にそういわれて一瞬鳥肌がたった。
なぜ?
といわれてもわからないが。
それは覚えてはおらずとも魂が覚えている記憶によるものだ、と彼は知らない。
「了君はどんなゲームが好きなの?」
「僕はボードゲームが大好きなんだ。中でもモンスターワールドっていう盤ゲームがとてもきにいってるんだ」
一人でもたくさんの友達と遊んでいるような気持ちになれる。
それゆえに気に入っている。
遊戯の言葉ににっこりとほほ笑みながらも返事を返している了。
「へ~。モンスタ~ワールドかぁ。うん、あれたのしいよね」
「遊戯。どんなゲームなんだ?」
いわれてもぴん、とこない。
それゆえに遊戯にと問いかける。
「遊戯の家はゲーム屋さんなのよ」
「そうなんだ」
杏の説明に心の底から納得する。
なぜ?
というのはよくわからないが、なぜかとてもしっくりするような気がしたのも事実。
「モンスターワールドはね。ボードゲームとロールプレイングゲームを足して割ったようなゲームなんだ。
プレイヤー側はモンスター側一名と冒険者側…これは数名でパーティーを組むんだけど。
とにかく別れてフィールド上を冒険するゲームなんだ。リアル版のロールプレイングゲームってところかな?
さまざまなキャラクター、種族や職業の人形があるからそれらを選んでプレイするんだ。
モンスター側からなら冒険者を、冒険者側からならモンスターのボスモンスター一体を。
それぞれがそれぞれに倒したほうが勝ち、となるんだ」
「なるほど。つまりボードゲームでドラクエとかのロールプレイングをするようなものか」
遊戯の説明にどこか納得している城之内。
「このゲームのいいところは。自分で様々なユニットを組み合わせて舞台を創ることができることなんだ。
たとえば森とか町とか、城、とかね。フィールドの組み合わせ方によって大冒険も小さな冒険もできるんだ」
「さすが遊戯ね。ゲームのことになると詳しいんだから」
「えへへ。面白いからデュエルモンスター以外でもときどきやってるんだ~」
ちなみにメンバーは遊戯の心の中においてやっているのでほとんどが人あらざる存在達であるが。
「なんか面白そうだな。よ~し!遊戯!明日そのモンスターワールドやってみようぜ!こいつもいれてさ!」
がしっ。
横にいる獏良の背を抱えていいきる城之内。
「え?あ…えっと……。そ、それより遊戯君。さっきからきになってるんだけど、君のそのペンダント……」
さきほどから遊戯の首にかかっているそれがきになっていた。
ゆえにこそ話を変えるためにも問いかける。
「これ?千年パズルっていうんだ。千年アイテムっていってね。七つ全部であるんだ。
パズルを筆頭にして、タウト、杖、瞳、リング、秤、錠、の七つ。
かつての古代エジプトではそれらのアイテムをつかって罪人をさばいていたんだよ?」
「千年…?」
自分のもっているペンダントに何となく似ているような気がするのは気のせいだろうか?
そんなことをふと思う。
それに彼が近づいてきたときにペンダントがなぜか視たこともない輝きを一瞬放ったのも事実。
「ちょっとみせてくれる?」
それゆえに戸惑いつつも遊戯にと懇願している獏良の姿。
「別にいいけど?ね?」
そもそもあえて彼に見せることにより真偽を見極める。
と言い出したのは他ならないユウギ自身。
最後の問いかけは気配を隠して出現しているユウギに向けたもの。
遊戯の許可をうけてそれを手にとる。
「実は、僕も……」
どくっんっ!
それと同時にパズル、そして彼の胸の中にいれているリングが光を放つ。
――みつけた!
何やらそんな声がしたような気もしなくもないが。
『まずい。遊戯。すぐに離すようにいえ。…やはりまだのこってたか。ネクロディアスの思念が……』
パズルの中に入り込もうとしてきたので即座に対応した。
「了君。大丈夫?もしかして了君もこれと同じ模様のついたアイテム何かもってるの?たとえば千年リング、とか」
了の手からパズルをうけとり、さらっと自然と問いかける。
「千年アイテムにはね。それぞれにこの瞳の模様が入っているんだ。ウジャト瞳を模した模様がね」
「ウジャト?何だ?それ?」
遊戯の説明の意味がわからずに首をかしげる本田の姿。
「真実を見極める目、ともいわれるけど。古代エジプトにおいては神の目、ともいわれてたんだよ。
だけども世界各地に神瞳の伝説はいろいろとあるんだ。実際伝説でなくて第三の瞳、はあるらしいけどね」
よもや遊戯は自分がその持ち主である、とはいまだに夢にも思っていない。
「そういえば。遊戯のお爺さんやお父さん、そういうことに詳しいんだっけ?」
それに何より遊戯の傍にいる人物が人物である。
遊戯の説明にどこか納得しつつも問いかける。
そんな杏に対し、
「まあね。で、やっぱり了君ももってるの?」
いわれて隠すことでもない、ともおもう。
しかし、なぜかやめろ!
というような声が心の奥からしているようにも感じられるのは気のせいであろうか。
「うん。僕の父さんがエジプトの骨董屋さんでお土産にってかってきてくれたものなんだけど……」
いいつつも服の中からかけているペンダントを表にとだす。
そこにはピラミッド型の形をしたものの周囲に輪がありその輪にいくつかの飾りがついている。
「あ。千年リング」
すべてのアイテムの形は遊戯は教えられているので知っている。
かつてマハードが所持していてバクラ・ネクロディアスに奪われた品。
どう?お兄ちゃん?
心の中でユウギにと問いかける。
ユウギが心配していたのは再び彼がかつてのように闇に乗っ取られること。
『まだ彼の中にまでは入り込んではいないようだが……』
しかし油断は禁物。
そもそもアクナディンの体が端末となりいまだに【ネクロディアス】達にと闇の力を供給しているはずである。
だからこそ油断はできない。
「ほんとだ。遊戯君のと似てる~」
確かにどことなく似通っていなくもない。
「これって金なんだよね。美穂もほしいな~」
金は金でも作られているモノが何によって作られているのかを知らないからこそいえる言葉。
「って武藤君達ばかり話しててずる~い!」
「ああ!もう時間じゃないっ!」
キ~ン、コ~ン……
他の生徒達も獏良と話したいのに遊戯達ばかりが話していて思うように話ができなかった。
それゆえの他のクラスメート達の不満の言葉。
ガラッ。
「ほらほら、もうチャイムはなったわよ。席について」
それと同時に正面の扉が開かれて次の教科の担当教師がクラスにとはいってくる。
それをうけてそれぞればらばらと再び席にとついてゆくクラスメート達の姿がしばし見受けられてゆく……
きゃいきゃい。
…何だかなぁ…こういうの僕、苦手なんだけど……
とはいえ断るのも何だかわるい。
学校を案内してくれる、という彼女たちに悪気があるわけではない、とわかるからなおさらに。
しかしこう騒がしいのはあまり居心地がよくないのも事実。
「うん?お前は確か獏良了、だったな。もう退院したのか?体のほうはいいのか?」
ふと女生徒達に囲まれて学校の中を案内してもらっていた獏良にと話しかけてくる人物が一人。
「げっ。体育の刈田先生」
名は姿を現す、というが刈田、と呼ばれた教師の髪は今のこのご時世に珍しく五分刈りにかられている。
「え、あ、はい……」
「まあ、不幸中の幸い、というかお前も大変だったなぁ」
いきなりいわれて顔を曇らせる。
「まあ、無理はするなよ?他のやつらはまだ意識不明らしいからな」
「あ、はい……」
そこまでいってくしゃり、と獏良の髪をなでて、
「あと体育のとき体調がわるいようならすぐにいえよ?じゃあな」
いってひらひらと手をさせつつもその場をあとにしてゆくその教師。
「…何かさぁ。この前から先生達、かなり丸くなったわよね?」
「あ。それは私も思う。あの刈田なんて前はガチガチの頑固者だったのに」
ある日を境に確かに先生達の態度が激変した。
それは先生だけでなく生徒達においてもいえること。
暴れて手のつけられなかった生徒もまた大人しくいい生徒にと変貌している。
以前の刈田ならばまちがいなくちょっとしたことでもいちゃもんをつけてきていたであろう。
それがわかるからこその女生徒達の会話。
「まあ、みんなが改心するのはいいことだけどね」
「そうそう。学校もすごしやすくなってるもんね~」
何かにびくびくして過ごす必要がなくなり、自然と生徒達ものびのびと生活できる。
そんな雰囲気が今のこの童美野高校にはある。
「?」
そんな彼女たちの会話の意味は獏良には判らない。
判らなくて当然、なのではあるが。
「そろそろ教室にもどらない?みんなのおかげで大体のところはわかったよ。ありがとう」
とりあえず案内してくれたのは事実なのでお礼をいっておく。
この謙虚差が女生徒達からしてみればどこかほっとけない。
「きゃぁん。かわいい。気にしないで。獏良君」
「また判らないことがあったらいつでもきいてね?」
何やら多少身もだえしている女生徒の姿が見えなくもないが。
「うん。ありがとう」
何しろ休み時間はたったの十分。
それゆえにそのまま彼らは再び教室にともどってゆく――
「了君。昼食はどうするの?」
「え?あ。僕はお弁当つくってきたから」
いいつつもカバンの中からお弁当を取り出す。
「ならいっしょに食べない?」
「あ、私も私も~」
「美穂も!」
昼休み。
すでに他の生徒はそれぞれに昼食のために学食にでむいていたり購買に出向いてクラスの人数はまばら。
今この場にいるのは、お弁当をもってきている生徒達、もしくは購買ですでに買ってきた生徒達くらいである。
ここまで自分をかまってくれるのはとても嬉しい。
嬉しいが…だからこそ心配になる。
「そうだ。ねえ。了君。今日の帰り迷惑じゃなければ一緒にゲームでもやらない?
了君が好きっていってたモンスターワールド。僕の家にもあるし。みんなでやったら楽しいよ?ね?
それにゲームを通じてもっと仲良くなりたいし」
いつのまにか椅子をもってきてちょこん、と横にすわりつつもお弁当を広げている遊戯が問いかける。
「…やっぱり迷惑?何か用事でもある?」
唐突といえば唐突かもしれない。
しかし、遊戯からしてみればユウギの心配を早く取り除きたいのも事実。
まだ今なら彼に入り込む前に【悪意】を遮断することができる。
ユウギからしてみてもかつてのように彼が自を犠牲にしようとするところなど二度とみたくない。
「そんなことないよ!…だけど、やめといたほうがいいよ。…僕だってみんなとゲームはしたいけど……」
そう。
皆とゲームをして楽しみたい。
それは本音。
だけども……
「…実は前の学校でも友達を集めてゲームをよくしてたんだ。…でも…そのあと必ず不思議なことがおこってね……」
「「?不思議なこと?」」
戸惑い気味にそれでいて沈みがちにいう獏良の言葉に思わず顔を見合わせる城之内と杏。
「ボクとゲームをした人たちはなぜか次々と意識を失いこん睡状態が続いているんだ。
…今も彼らは病院でこん睡状態で入院している。それが一度や二度、ではないんだ……」
信じてはもらえないかもしれないが、それが彼にとっての真実。
「そんなことが続いてね。中学のときも学校を点々としていたんだ……」
学校でゲームをし彼らが意識を失ったとき、はっと気付けば彼らの意識はなかった。
混乱しそのまま自分も意識を失い…気づいた時は病院、だった。
何がおこった、なんてわからない。
そう、本当に何もわからないことだらけ。
「そんな事件が続けて起こってね。周りの人たちは自然と僕を避けるようになって……
だから僕のことを知らないここを受験したんだ。家族と離れて一人暮らしを始めてね……」
家族に被害がでることは何としても避けたかった。
共通点は自分とゲームをしたこと、のみ。
意識不明となった友人達には何の共通点も見当たらなかったのだから。
自分に責任があるのかも、とおもうのは一時彼の意識がなくなっているがゆえ。
その意識のないときに何かをしているかもしれない、という負い目があるからこその決断。
「僕もみんなと友達になりたいし、ゲームもしたい。…だけどボクはこれ以上友達を失いたくはない。
…だから皆も必要以上にボクにかかわらないほうがいいよ?」
そう。
誰も気づつけたくもないし失いたくもない。
自分のせいで誰かが傷つくなど。
「何いってるんだよ。それは偶然にきまってるだろうが」
「そうよ。獏良君。ゲームで意識不明になんてなるはずないし」
それが普通の人の感覚、ではあろう。
しかし杏や遊戯は知っている。
そういうことがありえる、ということを。
「…ちょっと。遊戯。まさかこの子も闇のゲームを?」
「了君、ではないとおもうよ?だけど……」
おもわずぽそっと隣にいる遊戯にとといかけている杏。
杏はユウギが仕掛けた闇のゲームによりそのような状態に近くなった人達を知っている。
いるからこそ心配になる。
「…だけど、了君が乗っ取られる前に手はうたなきゃ」
つまりそれはあの千年アイテムに宿った【何か】か、が関係しているらしい。
遊戯の言葉に漠然とそれを理解する。
「でもありがと。誘ってくれてうれしかったよ。だけど僕はみんなとこうして学校だけで話してるだけでも十分だから」
あまり深く付き合って何かあったらそれこそ今度こそ自分は立ち直れない。
『あいつの常とう手段だな。昔もヤツはリョウの周囲のものを消していって心を追い詰めていっていたからな』
何だか昔も今もアレは同じようなことをしているっぽい。
人の心、とは強くもあれば弱くもある。
その心に付け込んで人格を追い詰め体を乗っ取る。
それが『あれ』の目的、でもあった。
地上において行動するのにどうしても【器】があったほうが何かと便利、であったがゆえに。
「ごめん。ボクちょっと」
いいつつも、かたん、と席を立ちあがる。
何だかとても胸のあたりが妙に痛む。
そのまま席を立ちあがり、男子トイレへ。
痛みはどんどん強さを増している。
【…くくく……】
「誰!?」
何か声が聞こえた。
振り向いても誰もいない。
どんどん締め付けられるような痛み。
「意識が……」
そのまま意識が遠くなる。
「って、了君!?」
遠くなる先で遊戯の声をどこかでききつつも、そのま獏良了の意識は沈んでゆく……
闇の鼓動が強くなってきている。
そういわれてあわててトイレにと駆けつけた。
了の首から下げているペンダントが光を放ち、彼の心の中に侵入していこうとしているのがなぜか【判る】。
「お兄ちゃん!」
『ああ』
カッ!!
しかしそうは問屋がおろさない。
千年パズルの力を発動させて千年リングの力を抑え込む。
すばやくそのまま千年リングを了の体から外して体に触れさせないようにと処置をとる。
懐から取り出したきんちゃく袋の中にそれをしまいひとまず彼の横へとおく。
「おい。遊戯?」
「あ、城之内君!先生よんできて!了君が倒れてる!」
何やら戻ってこない遊戯達を心配してトイレに駆け付けた城之内がみたものは、
倒れている獏良を介抱している遊戯の姿。
「わ、わかった!」
獏良の顔色はとことんわるい。
それゆえにあわてて先生を呼びに行く城之内。
しばし校内は騒然と化してゆく……
再び身につけない限りは問題はない。
しかしそれを伝える手段がないのも事実。
当人のそれは意識次第。
「大丈夫かなぁ?了君?」
『…とりあえず。一時分離したが。リョウが身につけたら厄介だな』
結局あれから獏良は気分もすぐれない、というので早退したらしい。
気になるのはかなりアレは闇の力を蓄えていた。
アレがその気になれば自在に物すらをも動かせそうである。
それが気がかり、といえば気がかり。
「先生に聞いた場所はここ、だね」
とりあえず今日の宿題のプリントなどを渡すためにと住所をきいて獏良了の住むマンションにと向かっている遊戯達。
「でも、城之内君達までこなくても」
言外にアレが何をしてくるのかわからないのに巻き込みたくはない。
それが遊戯の本音。
「何いってるんだ。俺達だって心配にきまってるだろうが」
「いや、そ~でなくて……」
『事実知ってもカツヤ達は絶対についてくるとおもうがな……』
遊戯の戸惑いの声とため息まじりのユウギの声はほぼ同時。
『しかし。いそいだほうがよさそうだ。ネクロディアスの闇の力が強くなってる』
「え!?…と、とにかくいそごう」
「獏良君、大丈夫かなぁ?」
ユウギにいわれてあせる遊戯と、そして心配していっている美穂。
遊戯、杏、城之内、本田、美穂…そしてユウギを含めた計六人。
もっともハタメには五人、であるが。
ともあれ彼らはそのままマンションの中にとはいってゆく……
ククク……
「誰!?」
誰もいないはず、である。
この部屋にあるのはゲームのアイテムである人形のみ。
家族に手紙をかいていた。
なぜか身につけていたはずのペンダントはきんちゃく袋の中にいれられてカバンの中にと入れられていた。
わざわざ再び身につけることでもないのでそのまま袋のままにと机の横にとおいている。
登校初日。
何だか友達になれそうな人達がいた。
今度の学校はとても何だか温かい。
そのことを手紙にかいていたその矢先、誰もいないはずなのに確かに声が聞こえてくる。
【ほ~。オレ様の声が聞こえるようになった。か。こうしていつでも宿主と会話ができるってわけだ。
今日は本当に記念すべき日、だな。くくく……】
誰もいないはずなのに、たしかにしっかりと声が聞こえてくる。
それも頭の中に響くように。
「誰!?誰なの!?」
【オレ様か?オレ様は千年リングの中にとともにある存在さ。今日は本当に記念すべき日だ。
ついに三千年の時を超えて千年パズルをもつ少年に出会えた、のだからな。
宿主と会話ができるようになったの千年アイテム同士が干渉したがゆえ、だろう】
しかし自分と彼を切り離したあの力。
まさか、とはおもうが【力】を取り戻している…というわけではなさそうではある。
そもそも【王】は力も何も忘れていても不思議ではない。
しかもあの少年がパズルの力を使いこなせている、ともおもえない。
ならば可能性は絞られる。
千年アイテムに宿りし力が反応して自分を切り離した、ということ。
【しかしお前の中は居心地がいい。ここまで居心地がいい宿主など久しぶりだぜ。
お前のおかげで探し求めていた千年パズルをもつ少年にも出会えたことだしな。
これからはお前を永遠の宿主、とでもさせてもらうとするかな?くくくく】
千年パズル?
千年リング?
それはたしか今日、学校で遊戯君が教えてくれた名前のはず。
何が何だかわからない。
わからないが、この声の主はよくない感じがする。
それゆえに。
「誰だかわからないけど、僕の中からでていって!」
頭に響くようなこの声。
【つれないことをいうなよ?今までオレはお前にちゃんと代価をはらってきてやってるんだぜ?】
「…何…」
代価、といわれても意味がわからない。
そもそもこの声はまやかしでも幻聴でもないらしい。
ふとみれば、横においてある袋の中からいつのまにか千年リングが出ており光を放っている。
まさか、これが話してるの!?
というか自分は袋にまったくさわっていなかったのにどうして袋からペンダントがでているのであろうか。
【お前はいつもゲームをするとき皆と一緒にいたい。と願ってるだろ?それをかなえてやってるってことさ】
「!?」
その言葉にはっとなる。
まさか、あの事件は…まさか!?
頭が混乱してくる。
そもそもこんな状況なのにどこか冷静にとらえている自分にも驚きを隠しきれない。
【まあいいさ。しかしようやく探し求めていた三千年の時を得て千年パズルに巡り合えたんだ。
あれを手にする絶好の機会はこの先また何千年またされるかわかったものじゃない。
千年アイテムは古の心を宿すことができる時を超えた墓標。
だが、墓を守る番人もいるとすれば墓を暴く盗賊もいるってわけよ。くくくくく……】
真実すべてではないが嘘でもない。
今の獏良了の混乱している意識ではこのような説明がもっとも効果的。
それゆえの言葉。
「そうか…わかったぞ!墓を守る番人が遊戯君!そして、盗賊がお前だっ!!」
なぜ、といわれてもわからない。
だけども漠然とそう理解する。
遊戯君にこいつは何かするつもりだ!
自分にできること、それは…
この千年リングさえなければ!
そうおもいそれを手にとり投げ捨てようとするものの、リングが手にくっついたようにと離れない。
【おおっと。それはこまる。…何しろむこうのほうからやってきそうだしな…くくく…】
「やめろ!遊戯君には手をだすなっ!!」
初めてあったのに彼と出会ったときどこか心が落ち着いた。
彼にだけは絶対に迷惑をかけたくない。
彼に…彼にこれ以上苦労をかけさせたくない。
なぜだかそうおもう。
心の底から、本気で。
ピンポーン。
そんな会話をしている最中、玄関のチャイムがなる音が。
【どうやらお待ちかねの千年パズルがむこうからやってきたようだな】
と、とにかく彼らをここから離さないとコレ、が何をするかわからない。
それゆえに、
インターホンで確認すればそこには遊戯とそして杏や美穂、そして城之内と本田といった面々の姿がみてとれる。
「みんな…ダメだ。ここにきちゃ、はやくかえっ…」
インターホンのボタンをおして遊戯達に忠告をしようとする。
が。
【おっと。…宿主にはしばらく引っ込んでいてもらおうか】
「…なっ…っ!」
いきなりそのまま意識は闇にととらわれる。
手にもっていた千年リングをそのまま首にとかけ邪悪な笑みをうかべつつ、
「まったく。手間をとらせてくれる宿主だ」
いって。
がちゃり。
そのまま玄関のカギをあける。
「やあ。みんな。いらっしゃい」
『ちっ。遊戯。リョウのやつは今は乗っ取られている状態だ』
その姿をみて瞬時に理解する。
「え?」
『つまり間に合わなかったってこと?』
『いや、まだ完全ではない。しかし……』
気になるのはこの部屋には他の気配も多数ある。
しかもそれらは人の魂の気配。
あいつ…以前のように【人形】にその魂を入れて傀儡とかしてるのか?
そんな考えがふとよぎる。
「みんな来てくれてうれしいよ」
「遠慮なくあがるぜ」
「具合は大丈夫なの?獏良君?」
「うん。問題ないよ」
相手が上がってもいい、といってもいないのにそのまま上がり込んでいる城之内。
「よかった。倒れたって聞いて心配してたのよ?」
杏の言葉に続いてほっとしたような美穂が獏良にと話しかける。
彼らは気付かない。
獏良の雰囲気が学校のソレとは異なっていることに。
「…すごい人形の数、だね。これって全部モンスターワールドの人形、だよね」
『この人形の中には多数の人の魂がそれぞれ閉じ込められているがな……』
遊戯のつぶやきに心の中でそんな遊戯にといっているユウギであるが。
「うん。こってるんだ」
友達がほしい、とおもった獏良が集めた人形の数は並大抵の量ではない。
「すげ~!こんなにあるんだ!」
ずらり、と並んでいる人形の数々。
その姿も容姿も種類は多数。
「やってみる?簡単だよ?」
「うん。やるやる!」
バクラの言葉に美穂がすかさず面白がって賛同する。
「じゃぁ、ゲームルームにいこうか」
常にこのゲームにはまっている了は一室をゲーム場と化している。
「「うわ~」」
部屋全体ともいえるほどに埋め尽くされているバトルフィールド。
ゆえに思わず驚嘆の声をあげている杏達。
「これがモンスターワールドのバトルフィールドだよ」
「すげ~」
どうやら一番最新版のモンスターワールド、らしい。
初期のは紙のシートに様々な情報を書き込んで遊ぶ形式であったが、最新式のはコンピューターにて情報を入力する。
つまりはすべてコンピュータの管理によって進行されるゲーム。
「何かわくわく~!」
「さ。ゲームを始めようか」
「よっしゃぁ!」
「…これって……」
『まちがいなく闇のゲーム、だな……。しかしリョウはヤツの中であらがっている。
リョウとヤツを引き離すには受けるしかないだろうな』
浄化の光で完全に引き離すことは可能のはず。
しかしそれにはリョウの心を表にひっぱりだす必要がある。
「わかった。…やるしかない、ね。城之内君達には説明…どうしよ?」
『…まあ発動さえしなければ説明の必要はない…かもしれないがな…』
「だね」
そもそも相手が闇の力を発動しなければわざわざ説明する必要もない、というのは何となくわかる。
そもそも話しても経験しなければ信じられる内容でもないであろう。
その千年パズル…必ず俺のモノにしてやる。
遊戯の首にかかっているパズルをみつつ強く思う。
あれさえあれば封印を完全に解くこともできるはず。
そのために自分もまたこうして心をリングの中に残しているのだから。
「じゃあ。ゲームのルールを説明するよ。プレイヤーは一人のダークマスターと複数の冒険者にわかれる。
ダークマスターはこの世界にはびこる邪悪なモンスターを操り冒険者たちを阻む。
一方の冒険者たちはそれぞれのキャラクターを決めてダークマスターにと立ち向かう。
そして、どこかにいるボスモンスターを見つけ出して撃破すれば冒険者たちの勝ち。
キャラクター達が全滅すればダークマスターの勝ち、となる」
淡々としたバクラの説明に、
「テレビゲームのRPGとそのあたりのルールは同じなのね」
どこか感心したようにいっている杏。
テレビゲームの中ではプレイヤーが全滅すればやり直すこととなるが。
基本、属にいうRPGはプレイヤーが死亡することはゲーオーバーを意味している。
「僕がダークマスターとなるから。君たちは冒険者のキャラクターを選んで。
人形の中にきっと君たちの気にいる人形があるはずだ。ロールプレイング、とは役割を演じる、ということ。
プレイヤーは自の分身ともいえるキャラクターを演じることで架空の世界に入り込むことができる」
それは他のゲームになどにおいてもいえること。
しかしこのゲームはそんな並大抵のものではない。
「ちなみに。今ではテレビゲームのRPGが主流だけど。
もともとはこういったテーブルを囲んで遊ぶ、テーブル・ローク・プレイングゲームのほうがさきだったんだよ?
冒険の舞台と筋立てを容易する人物はゲームマスターって呼ばれるようになったのもそのころからだよ」
さらに前をいうならばテーブルではなくて地面を囲んで…だったらしいが。
そこまで彼らに説明することでもない。
「人形をきめたら次はキャラクターを決めるんだ。種族、そして職業。決められた金額の中での装備品など。
それらがきまったら教えて。入力するから」
慎重にキャラクターを決めるといい。
その人形はお前たちの魂の永遠の器、となるのだから。
「よおし!キャラクターがきまったぜ?」
城之内がいうのと同時にそれぞれが自分の選んだ人形をフィールド上にともってくる。
キャラクター名:ユウギ。種族:人間とエルフのハーフ。職業:魔獣使い。LV1/HP22
キャラクター名、ジョー。種族:人間。職業:戦士。LV1/HP25
キャラクター名:ヒロト。種族:人間。職業:マジックガンマンLV1/HP23
キャラクター名:アンズ。種族:エルフ。職業:魔術師LV1/HP18
キャラクター名:ミホ。種族:妖精。職業:商人LV1/HP15
それぞれの種族と職業によってHPや素早さなども決定される。
初期装備もそれぞれの職業によって決まっている。
それらの情報をコンピューターにと入力するバクラ。
とにかく相手の出方をみなければどうにもならない。
どこにリョウの心が閉じ込められているかもわからない以上、相手の罠にのるしかない。
そんな遊戯の心を知るはずもなく、
「OK。準備完了。皆のデータはすべてコンビューターに入力を完了した。
これらの数値がすべての勝敗を左右する。判定はすべてマスターであるボクの役目だ。
よし、準備は整った。君たちの駒を出発地点において」
すべての入力を終えて指示を出す。
後は彼らがゲームを進めればおのずと千年パズルは手にはいる。
まさかこんなに簡単に手にはいる、とはおもわなかったがな。
心の中でほくそ笑みつつもそれを表にだすことはなく、
「では、ゲーム、スタート、だ」
バクラの静かな声が部屋の中に響き渡る。
「ん?」
駒をおいたはいいものの、フィールド上には何もない。
「何だよ?フィールド上には俺らだけでモンスターも何もいないじゃないか」
城之内の意見ももっとも。
が。
「もともとモンスターの姿がみえてるテレビゲームとかもあるけど。これはどちらかといえばドラクエより。
つまりいきなりモンスターが出現するんだよ。プレイヤーの行動や運、そしてダイスの目によってね」
そんな城之内に横から丁寧に説明している遊戯の姿。
「ドラクエっていわれてもな。俺あんまりあれやってないし」
そもそもゲームなどできる環境ではないのも事実。
ゆえにこそゲーセンターなどにはまっているのも事実である。
「でも。美穂達そういえばこの世界のこと何もしらないんだけど……」
「普通ゲームはそんなものでしょ?遊戯によくつきあわされてやってるからわかってるけど。
何もわからないままに普通は進んでいくものよ。RPGって。
こういうときはまずは町によるのよ。酒場で情報収集が基本ね」
酒場にはいろいろな人物が集まる。
ドラクエに至っては酒場で仲間集めなどもする重要な場として登場している。
美穂の言葉に説明するように杏がかわりに説明する。
「そういや、遊戯。ダイスっていってたけど、それは何なんだ?」
先ほどの遊戯の言葉がきにかかり、首をかしげてといかけている本田の姿。
「ああ。このモンスターワールドではプレイヤーの行動を十面ダイスで決めるんだ。
白のダイスが一の位、赤のダイスを十の位、としてね。えっと…これだよ」
いいつつもごそごそとポケットの中から十面ダイスを二個取り出す遊戯。
念のためにもってきているのはユウギの意見があったがゆえ。
ちっ。
あちらも用意していたか。
ならば自分の力を込めたサイコロはあちらには通用しない。
まあいい。
心で舌打ちしながらも、
「もってきてたんだ。ならそれで君たちの行動をきめて。遊戯君は詳しいようだから説明はまかせるよ」
下手に説明していてこちらのポロがでたらそれこそ水の泡。
自分が獏良了ではない、と気づかれてはもともこもない。
「じゃあ、まずは村にむかって、だね」
いいつつもそれぞれにダイスを振る。
ななめ移動はできないゆえにマスごとの移動となるのがこのゲームの特徴の一つ。
それぞれ五ターンをかけて近くにある町の中にと駒を移動してゆく遊戯達。
模型の村をはずすとそのしたには丁寧にも人々が生活している様の様子が再現され、
それぞれの場所にと駒がおかれているのが見て取れる。
「うわ~!すご~い!」
その細かさに感心の声をあげている美穂。
「よおし!さっそく情報集めだ!」
いいつつも自分の駒を動かして酒場のカウンターの傍にともってゆく。
『…この中の駒はほとんど魂をいれられている人形、だな……』
棚の中だけでなくゲームの駒として使われているものもいるらしい。
ゆえにこそため息をつかざるをえないユウギ。
「おい!そこのおやじ!俺たちゃみてのとおり腕は確かな冒険者なんだが。なんかいい儲け話はないか?」
自分の駒をもちつつも酒場のカウンターの中にいる駒にと本気でいっている城之内。
『…まあ、たしかに。人には違いないが…カツヤのやつ気付かずにあれは本気で話しかけてるな……』
本能、ともいうべきか。
ゆえにこそさらにため息が深くなる。
「さっそく金がらみかよ……」
そんな城之内に横から突っ込みをいれている本田。
ゲームの世界でまでも金に執着しなくてもいいのに…
本田の言い分も至極もっとも。
ゲームの中くらいは現実を忘れて別の世界に浸っても誰も文句はいわない。
しかしそれができないのが城之内克也、という人物でもある。
そんな城之内の言葉にちらり、と視線をむけ、
「…金で解決できるのならばありったけの金をやるわい。
…じゃが報酬を受け取る前にお前さんたちは屍に姿をかえとるじゃろう」
そう、自分のように。
魂が封印されている人形は自分の意思で動くこともできる。
が、あくまで人形。
ゆえにそこに自由はない。
そのままカウンターから離れてゆく老人の姿をした人形であるが。
「…ちょっとまてや!オヤジ!何やらわけありの様子じゃねぇか!話だけでもきいてやらぁっ!」
ご丁寧に自分の駒を手にもち動かしつつも老人のほうにとむけてゆく城之内。
そんな城之内をみつつ、
「こ…こいつ完全にゲームの世界にはいりこんでやがる」
あきれてつぶやいている本田であるが。
「おもしろ~い。本当に人形さんが話してるみたい~」
きゃいきゃいとその姿をみて一人はしゃいでいる美穂。
いや、実際にあの人話してるんだけど……
思わず突っ込みそうになりあわてて口をふさぐ遊戯。
まだリョウを見つけてはいない。
下手をすれば彼の魂に危険が及ぶ。
それだけは何としても避けなければならない。
城之内の言葉に老人は足をとめ、深いため息とともにあきらめの境地にて口を開く。
ここで本当のことをはなしてしまいたい。
しかしそんなことをすれば死がまっている。
何がおこったのかわからないが魔物に喰われるのだけは何としても避けたい、とおものうは人の心理。
「…つい何年か前まではこの村も平和な日々が続いとった……
じゃが、闇の支配者ゾークが現れ国王を暗殺し、城を根城に変えてしまったのじゃ。
それからというのもこの世界に邪悪なモンスターが現れ始め多くの村人がその餌食となってしまったのじゃ」
自分に与えられた役目をこなすこと。
それしか自分ができることは…ない。
そんな老人の言葉に、
「なにぃぃ!?絶対ゆるせねぇ!よし、おやじ!そのゾークは俺達が必ずやっつけてやるぜ!!」
それにその名前には強い怒りを感じる。
絶対にたおさなせればいけない。
なぜかそう思う。
それゆえに力を込めていいきる城之内。
どうでもいいがゲームの駒にむかって本気で力をこめて言い放つ様はあるいみ不自然、といえなくもない。
「だから、ありったけの金をだしな」
ずるっ。
そんな城之内の言葉に思わずずっこけそうになってしまう。
そんな遊戯の気持ちは何のその、
「鬼だ!」
「このゲーム、性格でるわね~」
あきれてそんな城之内にといっている本田と杏。
「ねえねえ。遊戯君。なんだか本当に人形が話してるみたいですごいね~」
無邪気に遊戯にと話しかけてきている美穂であるが、
「普通は冒険者以外のキャラクターはすべてゲームマスターが演じることになってるんだ。…普通は、ね」
とりあえず普通は、というのを強調して説明する。
今説明してもわからないであろう。
この人形には人の魂が封じられている、といっても。
「ふぅん」
ならこの声も獏良君がやってるんだ。
まあコンピューターがあるみたいだからそのあたりもできるのかな?
最近の技術はすすんでるからな~。
それですまし、
「で、で?その悪役のいる城にいくにはどうしたらいいの?」
というかボード上では城はみえているが、これはゲーム。
ゲームにはゲームの決まりごと、というものがある。
それくらいは美穂とて知っている。
そんな美穂の問いかけに、
「冒険者よ。そこのスミにいる人物に話をきくがよい。ゾークの城までの比較的安全な道を教えてくれるはずじゃ」
そしておそらく彼らもまた自分たちの仲間になるのであろう。
それゆえに悲哀をこめて役割を演じながらも説明する。
誰かがこのゲームをクリアしないかぎり、おそらく自分たちはここから逃れることはできない…のであろうから……
しばしボード上において駒を動かすRPGが繰り広げられてゆく――
「攻撃はOOに近いほど敵にダメージをあたえられる。クリティカルヒット、というわけさ。
だけど99…つまり大失敗を出したら君たちには罰がまってるよ」
そう。
ゲームの世界のフィギュア人形となる、罰が、ね。
すでに彼らは自分の手のうち。
千年パズルも手にはいったようなもの。
千年リングが他人の心を人形に移し替える力があるように、千年パズルの力をも自分のものに。
それこそが目的。
そのための罠。
「追加説明すれば、たとえばゾロメをだせば、敵にヒャクポイントダメージをあたえるとしたら、自分もヒャクポイントほどHPが回復する仕組みだよ。あとモンスターを倒したらダイスをふってその数だけHPを回復させることができるんだ」
モンスターの出現ゾーンに入って初めての戦闘。
バクラと遊戯がそれぞれにプレイヤーにと説明する。
『罰…おそらくそれが目的、か』
?お兄ちゃん?
ユウギは何かに気付いたらしい。
『おそらくヤツはこの俺のことに気付いていない。…遊戯の心を人形に移してパズルを手にするつもりなんだろう』
しかし彼ごときが手にいれても封印は絶対にとけない。
そもそもパズルの形をとっているとはいえとどのつまりはユウギの心の奥底にアレは封印してあるのだから。
もっともそれはユウギしか知らない事実。
『このボードゲームそのものが闇のゲームとなっている。だからこそ人形に魂を入れられている存在も意思をもって動いている』
しかもさきほどのモンスターもどうやら闇からひっぱってきた魔物であることは明白。
人の心を封印するだけでなくどうやらその人の心に巣くう悪意、という名前の魔物をも人形に移し替えているらしい。
このゲームの特徴としてゲームマスターはプレイヤーにいかなる裁きをも下す権限をもっている。
彼らが致命的な行動をしたときが自分の念願がはたせるとき。
『とにかく。皆が99を出さないように気をつけさせないとな』
「うん。わかった。みんな。絶対に99は出さないように気をつけてね」
ユウギと会話をしていても、気配を隠しているがゆえにバクラ、にはユウギの存在は気付かれていない。
ユウギの言葉をうけて皆に注意を促す遊戯。
しかし、遊戯以外はその意味合い…『気をつけて』という意味は…いまだに理解していない。
「さあ。どんどんいこうか」
本心を隠しつつも遊戯達を促すバクラ。
彼らにとっての運命がいま、動き始めてゆく……
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あとがきもどき:
さて。今回は久しぶりに説明さんv
運命の女神:フォルトゥーナ
北欧神話においては運命の女神はノルン三姉妹。(ノルン・ヴェルダンディー・スクルド)
ギリシア神話においては運命のモイライ三姉妹。(ラケシス・クロトー・アトロポス)
ローマ神話においてはフォルトゥーナ、です。
ちなみに彼女はタロットカードの運命の輪のモデルとなっている存在でもあります。
運命の車輪を操り、人の運命を決める、という女神ですv
けっこうポビュラーな女神さまで、いろんな漫画にでてきてますよvGS美神とかパタリロとか(笑
ちなみにスペインにはさすがというか女神のその名前からとったタバコがあったりする事実がありますv
ちらっとだけだしたフォルトナ。
不破登場の回にもでてきますよv今回は主に獏良了のお話をばv
やはり先にもってきといたほうがいいしねv
何はともあれではまた次回にて~♪
2009年7月6日(月)某日
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