まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

そろそろいろんな話しが交互というか交差してきます。
まあ、それはそれで問題ない?とはおもいますけど。
初代遊戯王&原作知らない人はみていても意味不明、というのは自覚しております。
完全オリジナル展開になっていくのはもうすこし~(今でも十分オリジナル)
何はともあれゆくのですvv
しかし、何年ごしにうちこみしてるんだろう…自分・・・(自覚あり……

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~第27話~

「なるほど。ではまたリョウ殿がネクロディアスに利用されていた…と」
夜。
とりあえず、食事時にちらり、と目配せして合図をおくったがゆえに遊戯の部屋にきている双六。
獏良了のことをきき思わず腕を組んでしまうのは仕方がないであろう。
どこまで前世の因縁は付きまとうのかはわからない。
だがしかし、根源たる存在をどうにかしなければおそらくそれは収まらないであろう。
おそらく自分たちが願ったことがらも【ゾーク】に利用されている可能性も無きにしも非ず、なのだから。
「どこまで伝えていいのかが問題、だがな」
遊戯はどうやらかなり疲れたのかすでに眠りにはいっている。
ゆえにこの会話には加わっていない。
千年アイテムが作られた経緯と理由。
父が知らなかったこととはいえ数多の人の犠牲の上に千年アイテムは創られた。
神々の力に匹敵し、また神々を操ることも可能な力。
その力には代償はつきまとう。
もっとも、彼に関しては生まれつきそんな代償など関係なかったのも事実なのだが。
「わかりました。リョウ殿には儂から説明いたしましょう」
そもそもソレに対して決定を下したとき、傍にいたのは他ならない自分自身。
ゆえにこそ説明の義務はある。
「あ。それと。アイシスより連絡がありましてな。数日後、こちらにこられるそうですじゃ」
「アイシスが?…ああ、例の美術館のことでか」
あらかた説明を聞き終え、そんな会話をしつつふと思い出したようにと連絡をする。
「ええ。彼女は今ではエジプト政府にて役職についていますからな」
もっとも、エジプト政府関係者の上層部にはユウギもよく知っている者たちも多々といる。
それゆえに、イシュタール家が自らに貸していた束縛から離れたあと、
彼女たちを支援したのも他ならない彼ら達。
イシュタール家が自分たちの血筋に課した使命。
それは冥界の石板とともに、【王の記憶のありか】を示した壁画を守ること。
しかしすでにその記憶も双六…否、シモンによってほとんど復活を遂げていた。
ユウギとて彼らに長年の苦痛を強いていた、と知った以上、彼らをこれ以上束縛したくはない。
ゆえに、かつて自らの命で彼らを自由にした。
まさか三千年も長きにわたり、俗世とたちきり地下に潜って生活していたなどとは……
そのときのユウギの思いははかりしれない。
何よりも彼は人に苦痛などを強いることを極力嫌う、のだから。
それにそもそも自分自身の問題、でもあるのだから。
あのとき、自分の力不足で封印する、という手しかつかえなかった。
そのために三千年にわたり彼らに苦痛を強いた…と思えば【王】の心痛もかなり大きい。
しかも、ラーの報告のこともある。
アイシスがきたらそのあたりのことも問いただしてみる必要がある。
しばしそんな会話をする二人の姿が、遊戯の部屋において深夜、見受けられてゆく……

チチチ……
「おはよう。お兄ちゃん」
何だか夢をみていた。
しかしその夢の内容はよくわからない。
何か三体の竜が人となり、何かと戦っていた、そんな夢。
彼らが守っていたのは人と、そして精霊達。
それが何を意味しているのか今の遊戯にはわかるはずもないのだが。
『おはよう。遊戯。早く着替えないと遅れるぞ?』
目覚めればすでに起きていたらしいユウギとばっちりと目が合い挨拶する。
「うん。は~い」
いつもの朝。
そんな会話をかわしつつも、服を着替えて部屋の外にいき洗面所へ。
「あら。遊戯。おはよう。ユウギちゃんも」
降りてきた息子に気付いて声をかける。
いつものことだが二人いる光景にもう慣れきっていて不思議、とはおもわない花蓮。
ちゃん、と呼ばれるたびにユウギがすこし困ったようなそれでいて顔をしかめているのはいつものこと。
その表情をみるたびに、おもわず笑いをこらえつつ、
「おはよう、ですじゃ。二人とも。さ、花蓮のつくったご飯がさめないうちにたべるとしましょうか」
「うん。は~い」
いわれてそのまま台所のテーブルにとつく遊戯。
「そういえば、輝さんが今度もどってくるらしいですよ。お父さん」
「今たしか彼はギリシャにいっていたんじゃったかの?」
「え?お父さんがかえってくるの?」
何だかとても久しぶりのような気がひしひしとする。
父はめったに考古学専門、ということもあり家にともどってはこない。
その筋では遊戯の父もまた名のしれた人物であるのだが、そんな自覚は遊戯には当然ない。
「ええ。何でもお父さんに直接きいてみたいことがあるって昨日電話でいってましたわ」
「直接?…何かのぉ?また何かの解読かの?」
「さあ、そこまでは……」
祖父と母の会話に交じることなく、もくもくと出された食事をとりながらもそんな会話をきいている遊戯。
「ごちそうさま。んでもっていってきま~す!」
やがて食べ終えがたん、と椅子から立ち上がり、荷物を背負う。
「二人とも、気をつけていくのよ~」
「は~い」
『ではいってきます』
花蓮の言葉に反応して返事を返している遊戯とユウギ。
双六と花蓮の目にはユウギの姿も視えていることから違和感はないが、
第三者がみれば遊戯に対して【二人】といっているように映るので違和感を感じるであろう。
何やらしばらく祖父と母は父のことで話しているらしいが、遊戯はともかく今日も学校がある。
「あ。おはよう。遊戯」
「おはよう。杏」
基本、通学は歩き、もしくはバスを利用する。
何でもここ最近は物騒なので歩きや自転車通学よりも学校側としてはバス路線を推進している。
それならば学校専用のバスをつくってほしいのであるが、そこまでの予算も余裕もないらしい。
バスの中で杏と出会い互いに挨拶を交わす遊戯と杏。
「昨日はおつかれさま」
「杏のほうは大丈夫だったの?」
おそらくあんな経験は杏は初めてのはず。
ゆえに確認をこめて問いかける。
昨日。
闇の力によって杏達の魂は人形の中にと一時封じられてしまった。
いく度かユウギによる闇のゲームを目の当たりにしたことのある杏とはいえ実際に経験したのとではまた違う。
「うん。平気」
ただ、きになるのは今朝がたみていた夢のこと。
あの夢って…いったい?
夢の中で、自分は巫女見習い、であった。
肌の色が今と違い黒かったのを記憶している。
そこには美穂もいて、そして城之内達もいた。
――ユウギが即位かぁ……
――あいつ、もう俺達とつるめない…のかなぁ?
――んふふ。ミホはね。ユウギ君で玉の輿ねらうのv
――ミホちゃん!!このオレというものがありながらぁっ!
――そういや、リョウ君は?
――ユウギのやつの即位きまってからあいつ、おちこんでたからなぁ……
何やら気心しれた仲間達があつまって会話していた、そんな夢。
全員が全員、肌の色がしっかりと焼けたような色合いになっており、服装もまたかわった格好であった。
その夢が前世の出来事の一部である、ということを杏は知らない。
「あ。そういえばね。今度お父さんがもどってくるらしいんだ」
「え?遊戯のおじさんが?ひさしぶりね」
「うん。だから楽しみなんだ」
土産話にしてもしかり、お土産にしても然り。
たわいのない会話をしつつも、二人を乗せたバスは何ごともなく路線を進んでゆく――

「おはよう」
「あ、了君。おはよう!」
ちょうどクラスに入ろうとしたところでばったりと遭遇する。
それゆえに互いに挨拶を交わす遊戯と了。
「獏良君。おはよう。昨日はお疲れさま」
そんな彼にたいしてねぎらいの言葉をかけている杏。
「こっちこそ。ごめんね」
まさか父のかってくれたあのペンダントがすべての原因だったとは。
今考えても不思議で仕方ないが、現実は現実。
「傷、大丈夫?」
獏良了の左手には昨日の出来事が嘘でない証拠にしっかりと包帯が巻かれている。
「うん。こんなの何ともないよ」
自分の知らなかったこととはいえ、アレが友達を傷つけていたことを考えれば何ともない。
「お。遊戯!おまえんち、デュエルモンスターのカード、入荷してないか?」
「?確か今日はいるはずだけど?」
教室にはいるなり、数名の学生に囲まれていきなり問われて戸惑いながらもこたえる遊戯。
「それより!今はデジタルペット!だろ!来週のきたる日のためにっ!」
何やら別の生徒は力説してそんなことをいっていたりするが。
「それは美穂も同感~。みてみて~。美穂のこんなに成長したんだよ~」
「デジタル?そういえばそんなのが今発売されていたっけ?」
「了君、もってないの?」
「うん。実は……」
それどころではなかった、というのも事実。
「品評会、かぁ。たしか優勝はオーストラリア旅行だったわよね?」
「あと二週間あるんだし。獏良君も参加しようよ。ね?ね?」
何だかずいっと了につめよりそんなことをいっている美穂。
「ちょっと!美穂!ぬけがけしないでっていってるでしょ!?」
そんな美穂に対してクラスの女子から抗議の声。
き~ん、こ~ん……
「やば。チャイムがなったわ」
「はやく席につかないと。いこ。了君」
「あ、うん」
何のためらいもなく手をさしのべてくる遊戯に対して思わず笑みが浮かぶ。
昨日、あんなことがあったばかり、だというのに。
今までは自分に対してはほとんどの友達は不思議なことがおこるたびに無視したり遠ざかっていた。
しかしこの遊戯達にはそれがない。
だからこそ大切にしたい、とおもう。
…今度こそ、誰も犠牲にしないため、にも。

「で、あるからして……」
一時間目の授業はそのまま朝のホームルームに続いて担任の担当の教科。
生徒の間をあるきつつも教科書を読んでいる野間教師。
と。
プププププ……
教室内部に変わった音が響き渡る。
「ん?何だ?」
何か聞き覚えのあるような音をきき、思わずその場に立ち止まり教室内部を見渡すことしばし。
「…って、あわわっ!」
その音をうけてあわてつつも、ばっと机の下にとかがみこんでいる城之内の姿が目にとまる。
「さっききれいにしたばっかなのによぉ……」
いいつつも、机の中にいれておいた小さなそれを取り出してちまちまと操作を開始する。
「これでよし」
ほっと一息をつくまもなく、
「おほん。何やっとる。城之内」
かがみこんでいるそんな彼の上で咳払いしつつも仁王立ち。
「え?先生、しらないの?デジタルペットさ!自分のペットを育てんだよ。
  餌をやったり、トイレの世話をしたりして。育て方によってペットのできに差ができんだよ。
  それに。デジタルペット同士でデータ交換をして個性的なペットを育てることもできんだよ」
いいつつも、誇らしげに野間にむかっていっている城之内であるが、
「おまえなぁ!授業中にやるな!といっとるんだっ!」
野間の一括が教室内部に響き渡る。
「馬鹿だなぁ。城之内。電源きっとけよ~!」
どっ。
クラスメートの一人がそんな城之内につっこみをいれ教室はどっと笑いにつつまれる。
「かくいう。師匠も育てているが。授業中は電源はきっとるぞ?」
「「って先生もやってるんかいっ!!」」
にっとわらってぽけっとから小さな箱のようなものを取り出していっている野間に対してさらに突っ込みが入る。
「先生だって、旅行に…いや、そうじゃなくて!とにかく!授業中はデジタルペット禁止!」
『あははははっ!』
そんな彼らのやりとに、教室内部が再び笑いに包まれる。
「ともかく!授業を再開するぞ!」
どうやらこのままではラチがあかない。
ゆえに強制的に授業を再開する野間の姿が見受けられてゆく。

「馬鹿ねぇ。何でスイッチきっとかないのよ?」
一時間目もおわり二時間目までの間の十分間の休憩時間。
休憩時間に城之内の席にといってあきれたようにいっている杏の姿。
「スイッチきってる間は成長しないんだぞ?俺は早くそだてたいんだよ」
ちまちまやっていたのでは間に合わない。
とにかくこの日曜日までに完璧に育てなければ意味がない。
「手間かかって仕方ないじゃないのよ。ま、そこがかわいいところでもあるけど」
普通の生身の動物などと同様に、手をかければそれに応えてくれる。
生身でもデジタルでもかわいいものはかわいい、とおもえる素直さは何よりも大切。
「ちゃんと世話をすればそれにこたえてくれるもんね。何か愛着わくよね」
いつのまにか気が付いたらデジタルペットに新たな魂がやどっていたりしたりもしたが。
ある程度の力がつけば実体化させることも可能、らしい。
ユウギがそういっていたのを思い出しながらもにこやかに答えている遊戯の姿。
「だろ?今おれはこいつのために一日の半分はつかってるぜ」
あののんだくれの父親の相手をするよりはよほどまし。
相変わらず父親は働こうとしない。
早朝と夜のバイトで何とかやりくりをしているこの現状。
そんな中でこのゲームは城之内にとってはある意味安らぎ、ともいえるもの。
「く、くだらんっ!!そんなものに時間を費やすとは!まさに青春の浪費!ムダ!不敗!」
授業中にやっているなどもってのほか。
さらにゲームごときで時間をつぶすなど、無駄以外の何ものでもない。
それゆえにそんな城之内にきっぱりといいきっている本田であるが。
「何だとぉ!」
「そこまでいうことないでしょ!?」
そんな本田に対して城之内と杏の抗議の声が同時に発せられる。
「本田君。これ面白いよ?やってないの?」
あのとき、杏達に頼まれていたのもあり、彼にもゲーム機をわたしている。
しかしどうやらこの口ぶりからやっていないらしい。
「いいや。興味ない。俺はデジタルペットの糞を始末すべきために美化委員になったわけではない。
  俺が美化すべきは、デジタル世界ではないのだ!
  たとえ全人類がデジタルペットの糞をひろおうとも、俺は現実世界で塵一つひとつを拾い続けるだろう。
  この美化委員。本田ヒロトとして!」
しかも家でかっている犬の散歩の役目も彼にまかされている。
まあ自分が小学校のときに連れ帰った犬なので文句のいいようがないのだが。
ゆえにそんな時間は彼にはない。
それに時間があるときは近くの美化活動にも参加している身。
いちいちゲームなどに時間を費やす、ということは今の彼には思いつかない。
「本田君、興味ないの?美穂のペット、とってもかわいいのよ?みてみて」
そんな彼に対して、ごそごそとポケットから取り出してその場の全員に見せている美穂。
美穂の取り出したゲーム機の液晶画面にはリボンをつけた何ともかわいらしいペットが表示されている。
うぉぉ!ぷ、ブリティ!!
美穂ちゃんどうようにかわいいっ!
その画像をみて本田がそんなことを思っていたりするのだが。
「そういや。美穂はこの週末のコンクールに参加するつもりだっていってたわよね」
このデジタルペットのダイゴミは、育ててくれた人に似通った形をとる。
というのを売りのひとつにしているらしい。
様々なパターンを組み入れており、さらにはデータ交換によっていろいろとアレンジ可能となっている。
「うん!」
ふっと思い出し、美穂にといかける杏ににこやかにうなづく美穂。
「何だ?それ?」
コンクール、といわれても本田にはよくわからない。
と。
「知らないの?これよ、これ」
ごそごそごそ。
美穂がとりだしたのは一枚のポスター。
そこには日時と場所と、そしてデジタルペットコンテストに関する事柄が記されている。
そして入賞者に対しての景品なども記されている。
優勝賞品のメダマとしてオーストラリア旅行が用意されているらしい。
「美穂。絶対にオーストラリアにいきたいの!」
「たしか優勝者はオーストラリア旅行にペアでご招待、だったよね?」
しかし何よりも、この大会は地区予選。
地区によってそれぞれ優勝景品が異なるらしい。
この童美野町は海馬コーボレーションの本部があることから優勝賞品にもこだわっている。
「ははぁん。城之内。あんたこれねらってるわね?」
どうりで授業中も電源を切らずに育てていたわけである。
ゆえにあきれつつも城之内にとといかける杏であるが、
「へへへん。ま、こんな機会でもないとよ。海外旅行なんていけないしな」
一番の目的は、妹にきれいな景色をみせてやりたい、という思いが強い。
莫大な手術費用をどうにかできないのであれば、少しでも何とかしてやりたい、とおもうのは家族ゆえ。
できれば手術費用をもどうにかしてやりたいが、数千万から億単位のお金を一高校生がどうにかできるはずもなく。
だからこそ優勝して、母と妹にチケットを送ってやりたい。
それゆえに授業中も育てていた城之内。
「でも美穂。つかれちゃった。昨日もあまりねてないんだ~。
  誰かかわりにコンテストで優勝するようなペット、育ててくれないかな~」
時間があるときに常に電源をいれて育てていた。
しかしさすがに夜はついつい電源をつけっぱなしにして寝不足になりかけている。
しゅん、となりつつそうつぶやく美穂に対し、
「美穂ちゃん!まかせてくれ!俺が美化委員の名にかけて優勝してみせる!」
がしっ!
美穂の手をとりきっぱりといきなりいいきっている本田。
本田の脳裏では先ほどのペア旅行、という言葉が反復しさらには妄想の世界に浸っていたりする。
「きゃぁんっ!ほんとう!?」
本田の言葉をうけときゃいきゃいとはしゃぐ美穂。
これらもまったく計算せずに無自覚でやっているのだから美穂もあるいみはたから見れば天然といえば天然。
悪気がなくいっているのだからどうしようもない。
「お~い。全人類がどうとかってのはどうしたんだよ?」
あからさまの本田の心変わり。
しかしその内心は手にとるようにわかり、あきれておもわず突っ込みをいれる城之内であるが。
「今気づいたんだ。現実世界もデジタル世界も差別すべきではない、と!」
「…あ、そ」
ここまでかからさまに好意をむけられてても、美穂、気づいてないのよねぇ。
それゆえに、多少本田を憐れみつつも、あきれている杏。
まあ、ヒロトが美穂の言葉ですぐに意見を変えるのは毎度のこと。
それゆえに、
「そういや、遊戯のペットはどんななんだ?」
さらっと話題をかえて遊戯にと問いかける。
「僕?僕のはこれ」
ごそごそとポケットからデジタルペットのゲーム機を取り出し電源をいれる。
そこには何だか遊戯の髪型を模したような小さな動物のようなものが表示されている。
「かわいい!遊戯にそっくりね」
「えへへ。相談してU2って名前にしたんだ~」
なぜか思いっきりデジタルとはいえ魂が入り込んでしまっているがそれはまあいつものこと。
それに何よりそこまで説明する必要もない。
「城之内君のペットはどんなの?」
「おう!俺の会心のペットはこれだっ!」
遊戯にいわれて、取り出した彼の手に握られている液晶画面に映し出されているのは、
何だか涙がたを逆にしたような、そしてその頭には?マークがとりついているよくわからない目の据わった一体のペット。
「かわいくないっ!美穂ちゃんの天使のようなかわいさがまったくないっ!」
「うわ~。生意気そうなところが似てるわね~」
ちらり、とそれをみて即座に突っ込みをいれている本田と杏。
「私のをみなさいよ。スモモちゃんよ」
杏の取り出したデジタルペットのゲームにはかわいらしい桃型のペットが表示されている。
そしてその頭にはかわいらしいリボン。
何とも杏らしい、ペットに育っているのが彼女らしい。
「杏のはかわいい!…でも城之内君のはかわいくない……」
さくっと本音をいっている美穂にまったくもっと悪気はない。
「わるかったなぁっ!そうだ!遊戯。ちょっとデータ交換しないか?お互いもっと成長させようぜ」
「うん。いいよ。U2はちょっと大人しいから、城之内君のワイルドさをもらいたいな」
このゲームの特徴は、本体に接続端子がついており、それぞれに接続することによりデータ交換ができるという点。
「よっしゃ!じゃ、接続だ!」
カチャ。
いいつつも二つのゲーム機を接続する。
接続したゲーム機の内部で互いに見合う遊戯と城之内のデジタルペット達。
「あ、俺のジョーが画面から消えた」
「僕のほうの画面にあらわれたよ」
みれば遊戯のほうの本体に二体のペットが同時に表示されている。
「「「あ」」」
げしげし、けりっけりっ。
ぴ~ぴ~
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
その画面をみて思わず全員の目が点。
「やぁん。いじめてる」
「…やっぱ、あんたそっくりだわ」
画面の中では城之内のジョーが遊戯のU2をけりまくっていたりする。
そんなジョーに対してただU2はひっしに耐えているのみ。
そんな様子をみて声をだしている美穂に、あきれていっている杏。
「あ。でもお互いに気があったみたいだよ?」
みればどうやら互いに打ち解け合ったらしい。
プップップッ……
「どうやらデータ交換がおわったよ?」
プッ、プッという音はデータ交換が完了した、という証。
魂が宿っている、とはいえいまだにU2はデジタル世界の住人に他ならない。
ゆえにこそデータ、という枠からは逃れられない。
「よっしゃ!これでオーストラリアはいただきだぜ!」
遊戯のペットみたいに少しはかわいさも必要になるかもしれない。
データ交換によりどう育つかはわからない、わからないが今より確実に優勝に近くなったような気がひしひしとする。
「ピ…ピ~!ピ~!」
「?U2?」
ふといきなり画面の中でおびえ出すU2の様子にただ事ではない、と感じて思わず問いかける。
『ん?この気配は……』
そんな会話の最中、彼らをはたからみていたユウギがふととある気配に気づいてある方向を振り向くと同時。
「どうかな?優勝はこの俺様のペットがいただきだぜ!お前ら、俺様のペットがみたいだろ?」
遊戯達に近づいてくる一人のクラスメート。
『…やばいな。このままだとやつはアメミットに操られるぞ……』
ちらっとみただけでそのことに気付き怪訝そうな声をだすユウギの姿。
「?鯨田君。鯨田君もデジタルペット、飼ってるの?」
声をかけてきたのは遊戯のクラスの鯨田、という男子生徒。
『アメミット?』
『ああ。ヤツの手の中にあるデジタルペット。あれはただのペット、ではない。
  どうやら闇の手のものの一人、らしいな……』
おそらくはデジタル世界、という人間世界に普及しているそれを使い、闇の力を蓄えている下っ端のうちの一人。
アメミッド、といったのは抽象的なことばであるがゆえ。
『かつては人の内部に入り込んで人を操った。だが機械、という器をえてそこから操るつもりだろう』
そんなものが普及しまくったらそれこそ人間世界は大混乱に陥ってしまう。
遊戯がユウギと心の中でそんな会話をしていることなど知るはずもなく、
「当たり前だろ?だが、俺様のはお前らのとはかなりできが違うぜ。
  お前ら、しってるか?このデジタルペットには隠れキャラ、なるものが存在していることを」
「「「隠れキャラ?」」」
そんな鯨田の言葉に思わず顔をみあわせている杏、城之内、美穂の三人。
「何でも隠れキャラが出現する確率は数万分の一、ともいわれている。
  裏データによればそれは致命的なパグか、はたまたウィルスか…今のところよくわかっていないらしいけどな。
  様々な条件がかさなったときにそれは現れる!」
つまりは負の力に引き寄せられて突発的に表れるそれをそのように人々が捉えているのに他ならない。
と。
キ~ン、コ~ン……
「おっと。もう時間か。詳しく説明してやりたかったけど。時間がないな。じゃあな。
  せいぜい無駄なペットを育てていろよな。あはははは!」
そんな会話の最中、休憩時間の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
「何あれ?!かんじわる~!」
「?あいつ以前はあんなじゃなかったのに、どうしたんだ?」
どちらかというと大人しいタイプであったはずなのに。
何だかいまの口調はどこか人を見下したようなそんな印象をうけた。
「それより。本田君。美穂のかわりにがんばってくれるのよね?美穂、とってもたのしみにしてるね!」
にっこり。
「任せてください!美穂ちゃんっ!」
「…こっちもこっちでおかしいわ。こりゃ……」
は~……
そんな鯨田の変わりように首をかしげている城之内と、まったく気にもとめずににこやかに本田にいっている美穂。
そんな美穂と本田の姿をみてあきれつつもつぶやく杏の姿が、しばしの間みうけられてゆく。

「きり~つ、礼」
「では、ホームルームを始めるぞ?…ん?本田はどうした?」
五時間目は今度の文化祭にむけての話し合い。
ふと教室を見渡せば、本田ヒロトの姿が見当たらない。
確か朝はいたはずである。
それゆえの問いかけ。
「これ、おいてかえりました」
本田の前の席の男子生徒が野間教師にとある封筒を差し出し手渡す。
「ん?何だぁ?」
そこには封筒の上に【育児休暇届け】と書かれていたりする。
「育児休暇ぁ!?」
あいた口がふさがらない、とはこういうのをいうのかもしれない。
唖然としながらも思わず叫んでいる野間とは対照的に、
「…あ…アホだ……」
「…バカ……」
がくっとその意味を悟り、机に突っ伏したり、もしくは頭をかかえている杏や城之内。
「…本田君。育児休暇…って家でなにかあったのかな?」
一人よくわかっていないらしく、本気でそんなことをいっている了。
休み時間内に一応はカバンに入れっぱなしておいたデジタルペットを
「まったく。…とりあえず。今日のホームルームは今度の文化祭のことについて。
  文化祭実行委員の真崎杏。前にでてこの前の時間の会議の報告を」
「はいっ!」
ガタッ。
この昼休みに文化祭実行委員が集まっての会議が行われた。
それぞれのクラスが出し物を提示し、かぶっていた箇所は再びきめる、という形。
「え~。それでは、先日の文化祭の出し物ですが。うちの出し物の……」
しばし杏の進行による文化祭の出し物の話しがその場において執り行われてゆく――

「今日から俺がお前の親だ!一瞬たりともはなさんぞ!」
遊戯からもらってはいたが、まったく手をつけていなかった。
家でかっている犬をみていれば世話が大変なのはよくわかっている。
やってみてわかった。
たしかにこれは実際に生きているものよりも手間がかかる。
そして手がけた数だけすぐさまに結果があらわれる仕組みとなっているらしい。
コンテストで優勝して美穂に優勝賞品を渡すまでは、何としてもやりとげなければ。
まずはそのために不眠不休で世話をする。
何ごとも挑戦あるのみ。
そんなことをおもいつつも、しばしデジタルペットに熱中する本田ヒロトの姿が、
自宅の一室においてみうけられていたりするのを遊戯達は知るよしもない……


「でも、本当にいいの?」
何だか昨日の今日だ、というのに、いいのだろうか?
そんな不安が脳裏をよぎる。
父がお守りがわりに、とかってきた品物でよもやあんなことがおこっていたとは。
「だって了君も詳しいことをしりたいんでしょ?」
たしかに。
自分はあの品物のことを何もしらない。
わかっているのはよくない力が宿っていた、ということくらい。
「それはそう、だけど……遊戯君は詳しいの?」
「そこそこ、かな?僕より爺ちゃんたちのほうが絶対に詳しいし。あ、ぼくん家、ここだよ」
いって指し示されたのは一件の小さなお店。
その背後に家がみえることからどうやら自宅兼用となっているお店らしい。
「でも、城之内君達もわざわざこなくてもよかったんじゃあ?」
「何いってやがる。遊戯。俺達も当事者なんだから知る必要はあるだろう!・・って、またトイレしてやがる!」
「…あんた、うざいわよ?」
獏良了に説明するために遊戯の家にと放課後、そのままやってきている彼ら達。
遊戯としては了に説明するつもりで呼んだのだが、なぜか一緒に城之内と杏、そして美穂までついてきていたりするのはこれいかに。
そんな会話をしつつも、電源をきることなく必死にデジタルペットの世話をしている城之内に対し、
杏が冷めた視線をむきつつも冷淡に言い放つ。
「爺ちゃん、ただいま~」
かららん。
とりあえず用事があるのは祖父である双六のほう。
ゆえに自宅の玄関からでなくお店のほうにとはいる遊戯。
「お。おかえり。…やや!?そちらの子がリョウ殿、かの?」
ぱっとみてわかる。
前世にしろ現世にしろよくもまあ前世そっくりに転生してきているものである。
つくづく千年アイテムの力のすごさに感心してしまう。
「え?え、えっと……」
いきなり名前をいわれて戸惑いながらもその場に硬直。
「双六お爺さん、こんにちわ~」
「遊戯君のお爺さん、お邪魔しま~す!」
そんな双六に対して元気に挨拶をしている杏と美穂。
「了君。紹介するね。僕の祖父で武藤双六っていうんだ。このお店の店主でもあるんだよ。
  古代エジプトのことはとても詳しいんだ。爺ちゃん、彼が昨日いってた獏良了君」
というかその時代に生きて当事者であったのだから詳しくてあたりまえ。
彼が生きていた時代はいろいろとあり結構歴史から消え去っている時代でもある。
そんな双六に対してにこやかに紹介している遊戯の姿。
「よくきたのぉ。それに杏ちゃんたちも。ん?今日はヒロト殿は?」
きょろきょろとしてみても、見慣れた姿が見当たらない。
大体美穂がいるところ、必ず彼はいたはずなのに。
「あ…あははは……」
そんな双六の至極もっともな意見に思わずからわらいをしている遊戯に、それぞれ額に手をあてている城之内と杏。
「おお。そういえば、これをいっとかないとな。ファ…とと。遊戯。
  先日仕入れにいったときに手にいれたデュエルモンスターのカードが明日入荷するぞい?」
おもわず、ファラオ、といいかけてあわてて訂正。
「本当!?何だか最近あれ、どこも品切れ、だね?何でかなぁ?」
扉の役割をしていることなど知らないはずなのに。
人を引き付けてやまない何か、があるらしい。
「おお!爺さん!それ本当か!?よっしゃ!明日もくるぜ!」
「あ、あんたねぇ。デジタルペットでいま手がはなせないんじゃないの?」
「何いってやがる!杏!いいか!?最近あれもかなり流行ってるんだぞ!しかも賞金までかけてる大会まであるし!」
ゆえに手札をそろえておいても損はない。
ある程度の力と運さえあれば多少の資金がかせげるかもしれない。
城之内克也の基本は常に金銭が付きまとう。
それもまあ仕方ない、といえば仕方ないのだが。
「幾度も日曜日の番組に応募しててもうからないしよ~」
あれも一種の運、である。
しかし、一週目だけでも勝てば十万円。
少しは家計の足しにできる。
家においておいたりすればまちがいなく父親がかってにつかいまくるので常に持ち歩いているのが現状だが。
『しかし、闇金融、か。彼らを裁いといたほうが世間のためかもしれないな……』
『ファラオ。お願いですから行動を起こさないでくだされ』
今回もまた【ユウギ】をよくない方向に連れて行く可能性もなくはない。
ゆえにこっそりと自分の精霊をつかって克也達の身元調査をしていたりする双六。
その結果、彼の父親のこと、家族関係のことなど一応は把握しているので彼の金銭に対する執着もわからなくはない。
克也の台詞に遊戯の横にいたユウギがぽそっとつぶやいたのをうけてすかさず突っ込みをいれている双六。
双六の言葉は古代エジプト語で話されているので杏達には理解不能。
「ともあれ。はじめまして。ですじゃ。遊戯の祖父の双六、といいます。
  リョウ殿のことはユウギ達から聞いておりますじゃ。しかし災難でしたなぁ」
現世においてもまた利用されるとは、何と運命とは皮肉なものなのだろう。
そう思わずにはいられない。
まあ、昨日の今日である。
祖父とともに住んでいるようなので話していても不思議ではない。
しかしこの彼も自分を責めるようなそぶりはなく逆に気遣ってくれているのが何となくだがわかる。
それゆえに何かとても悪いような気になってしまう。
知らないまでも自分があの悪意の手助けをしていたのにはかわりがない。
そんな思いがある了からすればそれは仕方のない思い。
「え。あ。はじめまして。獏良了、といいます。昨日はほんとうにお孫さんの遊戯君達には迷惑をかけてしまってすいませんでした」
しかしそういわれてはっとしてあわてて姿勢を正してぺこりと頭をさげる了。
「何の。しかしうちにきた、ということは千年アイテムのことですかの?」
「それよ!お爺さん。いったい千年アイテムって何なの?
  そりゃ、不思議な力をもってたりする、というのは知ってはいたけど」
まさか自分が経験することになるとは夢にもおもわなかった。
それゆえの杏が双六の言葉に即座に反応し突っ込みをいれてくる。
「やっぱ、あれってオカルト、なのか!?」
あんな経験をしてまだオカルトではない、と信じたい城之内の心情は何かとてもかわっている。
もっとも現実におこったことは現実ととらえ、さらっと飲み込んで納得している城之内でもあるのだが。
「まあまあ。とりあえず、皆学校がえりで疲れたじゃろう。今何か飲み物をもってきますじゃ」
「そういえばお母さんは?」
「花蓮は今は町内会の寄り合いにいっておるよ」
どうやら今は母は家にはいないらしい。
「あ、爺ちゃん、僕も手伝う!」
いいつつも奥にはいってゆく双六に遊戯が話しかけるものの、
「何の。もう用意はできておるから大丈夫じゃ」
すでにマナから連絡をうけて人数分の飲み物はすぐ裏にと用意してあったりする。
それゆえに用意、といってもさほど時間はかからない。
「あ。椅子が用意されてる」
ふとみればカウンターの横にパイプ椅子が数脚立てかけられていてそれに座ればかなり楽っぽい。
何でこんなところにパイプ椅子が?
ともおもうがおそらく何かの用事で出していたのであろう。
そう思い、カウンターの横に立てかけてあったパイプ椅子を組み立ててひとまずカウンターの前に並べる杏。
ずらっと並ぶのも何なので、人数的には杏、美穂、城之内、そして遊戯に双六。
五人なので三対二の割合で椅子をカウンターをはさむようにおけば問題ないであろう。
ことこと、とレジ兼カウンターにしてある商品棚ケースの上にコップをおいてゆく双六。
「そういや。爺さん。表に看板とかだしとかなくていいのかよ?」
「そういえば。お客さんがきたら美穂達ジャマかなぁ?」
いわれてみれば椅子にすわりこんでいたらジャマ以外の何ものでもないかもしれない。
そんな城之内や美穂の言葉に、
「何。心配はいらんて。それに、じゃ。若いおまえさんがたがいたら逆にお客さんもよってくるかもしれんしの。ほっほっほっ」
「って、それってサクラっていわない?」
「杏ちゃん、それは言わぬが花、じゃよ。ほっほっほっ」
たしかに学生がいく人もいれば何だろう?とおもってはいってくる客がいても不思議ではない。
ないが…どこか釈然としないような気がするのは杏達の気のせいであろうか?
「まあ、まずはそれぞれに座ってゆっくりなされ。この時間帯はあまり客もこんからのぉ」
そもそもこんな小さな店に客がくることがかなり珍しい。
まあお店そのものもあるいみ双六の趣味でやっているものなのだからそれはそれで仕方がないのだが。
双六の進めもありそれぞれが椅子にと座る。
遊戯はカウンター側に双六と並んで座り、その横にもう一つ椅子をおいてユウギようにと設置する。
そしてまた、遊戯達の反対側、つまりはカウンターの表側に城之内、美穂、杏の順でそれぞれ座る。
「さて、では何から説明しましょうかの?」
昨夜の会話でどこまで彼らに話すかファラオと相談ずみ。
それゆえににこやかに笑みをうかべながら杏達を見渡してといかける双六。
千年アイテムに秘められた謎。
かといってすべての真実を今、教えるわけにはいかない。
どんなきっかけで彼らの記憶が解き放たれて過去の出来事を思い出してしまうかもしれないのだから。


翌日。
何だか昨日聞いた話は信じがたい話し、ではあった。
千年アイテム。
それは古代エジプトに伝わっていたとある書物を解読しそして創られた、という。
そしてその力は神を呼ぶことも可能、である。
と。
しかし強大な力は逆に負の力をも呼び寄せることにもなりえる。
光が強ければつよければ逆に闇もまた濃くなるのは道理。
しかし強い光であればその闇をも抑え込むことすら可能。
すべての千年アイテムがそろった時、それらの力によって冥界…すなわち死者の国への扉が開かれる、という。
その言い伝えがどこか今の世の中では間違って強大な力を得ることができる、と伝わっている。
とも説明をうけた。
三千年以上昔から伝わっている、というアイテムの製造法。
そしてそれによりつくられた千年アイテム。
しかしそれらが現実である、と実際にそのひとつの品物をもち不可解な経験をした以上みとめざるを得ない。
「おはよ。了くん」
「あ、おはよう。遊戯くん」
教室にはいり、昨日の話しを思い出しながらも千年リング、とよばれていたそれを手にした日からのことを回想していた。
たしかにアレを手にしてから不思議な現象が起こり始めた。
しかしめったとかえってこない父からのお土産品。
それに関連づけて思わなかったのも事実。
「そういえばね。昨日、連絡があって。今まで意識不明だった人達が全員意識とりもどしたんだって」
母親からそのように連絡があったのは昨夜のこと。
マハードの気遣いで彼らが人形に封じられていたときの記憶は消されている。
そのことを了は知るよしもないのだが。
しかし気にしていた人々が意識をとりもどした、というのは了の心を安心させたのも事実。
「ほんとう?!よかった。ならもう大丈夫だよ。だけどアレは直接に身にけないほうがいいよ?」
「父がお守りにってかってきてくれたあの品物にあんな力があったなんて。遊戯君のほうのは逆の力っぽいけどね」
あの悪意のかたまりともいえるモノが【ファラオ】と呼んでいたのも気にかかる。
かかるが昨日の説明でそれに関する説明はなかった。
「力、というかそもそもすべての力はお兄ちゃんの元にあるわけだし」
嘘ではない、嘘では。
「そういえば、あのときダイスをふってた遊戯君そっくりのひとって……」
と。
「こらぁ!おまえら!もうチャイムはなってるぞ!」
がらっと扉がひらき、教室に担任教師がはいってくる。
たしかにすでにホームルームを開始するチャイムは先ほどなっている。
いまだにそれぞれに席につかずに話していた生徒達に野間の一喝する声が響き渡る。
「あ、先生きた。またあとでね」
「あ、うん」
また詳しいことを聞く前に時間になってしまった。
昨日も詳しいことをきこうとすればお客がきたり、また別の話題となり話しがずれてしまっていた。
気になるのはあのときダイスを振ってゲームをしていたもう一人の彼のこと。
後で遊戯君に詳しくきいてみよう。
そうおもいつつも姿勢を正す。
「起~立。礼。着席」
クラス委員が声をかけるのと同時に全員が立ち上がり野間教師にむかってかるく頭をさげる。
「はい。みんな。おはよう。それでは出席をとる」
いいつつもクラス名簿を片手に出席番号順にと名前を呼んでゆく野間。
「本田は…休みか。昨日でてくるようにいっといたんだがなぁ」
一応気になったので電話はしている。
しかしどうやら今日は来ていないらしい。
そもそも、勉強よりもゲームを優先させるなどあってはならないこと。
その気持ちはわからなくもない、ないが…教師としてはそれでは許されない。
「あと、最近何か通り魔的な事件が多発しているらしいから皆十分に注意するように!」
「「は~い」」
この地区ではまだないが、よそでは最近多発しているらしい。
大人しかったはずの人物がいきなり豹変し他人を傷つける。
そんないやな事件がここ最近増えてきているのもまた事実。
そしてまるで魔がぬけたように彼らは自分のしたことを覚えてはいない、というのもまた特徴。
学校でもそのような事件がおこっているのでこの童美野高校にも注意がまわってきた。
それゆえの野間の忠告。
「今日の休みは本田と鯨田の二人、か。あと!授業中はゲームの電源はきっとけよ!特に城之内!」
「って先生!なざしかよっ!」
どっ!
そんな野間の台詞にクラス全体が笑いに包まれる。
まあ、昨日のことがあればそれも仕方ない…のかもしれない……


「って、本田のやつ今日もやすみなわけ!?」
本格的にクラスの出し物は決定し、場所も決定した。
これから文化祭の用意で忙しい、というのに今日もまた休んでいるらしい。
文化祭があるとはいえ授業は通常通りに行われる。
それの合間をぬって各クラスが用意に追われるのだから忙しいことこのうえない。
「何か聞いたら不眠不休でペット育ててるってさ……」
遊戯があまりに心配するのでマナがこっそりと様子をみてきて教えてくれたこと。
それはどうやら寝る間も惜しんでデジタルペットの世話をしている、とか。
それをきいたときおもわずずっこけそうになったのはいうまでもない。
「それって優勝はもうきまったも同然ってこと?んふふ。旅行、たのしみぃ」
それをきいて何やらにこやかにいっている美穂。
「あんたねぇ……」
本田から商品を貰う気まんまんの美穂におもわずあきれて突っ込みをいれる杏であるが。
「って、あれ?鯨田君?」
そんな会話の最中、何やらぶつぶつといいながらも廊下から教室にとはいってくる鯨田の姿が目にはいる。
『ちっ。とうとう完全に操られているな…何とかしないと……』
その姿をぱっとみただけで今の彼の状況を瞬時に把握するユウギ。
実際、いまの鯨田は鯨田にあらず。
ある【存在】により操られているのに過ぎない。
と。
ビ~!ビ~!
けたたましいベルのような音が鯨田の手にしているホルダー型の機械から発せられる。
「なんだ。おなかすいたのか。よこせっ!」
「ああ!ちょっと、何する…!」
近くにいた生徒がやっていたデジタルペットの機械を踏んだくりそのまま自分のもつ機械にと接続する。
男子生徒の抗議の声は何のその。
「光栄におもえ。この俺様のペットの役にたつんだからな。がはははっ!」
「何、こいつ?」
「…なんか、いつもと違わなくないか?」
そもそも、彼はこんなに攻撃的ではなかったはずである。
すくなくとも、一時より前はそうであっても少し前からは性格も改善されていた。
「って、あああっ!」
鯨田の笑い声に合わせて、思わず顔をみあわせて杏と城之内が話している最中、
ゲームを奪われた生徒の叫びがコダマする。





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あとがきもどき:
薫:この回は、アニメのほうでなくあえて原作のほうをとりました。
  理由…アニメのほうは、あれって…え~と?いいのかなぁ?だし(爆
  あれって裏読みものすっごくできる内容でしたよねぇ。初代さんのは(しみじみと
  当時は意味もわからずにみてたけど(それもまて
  まあ、多少は設定原作とは変えてますけどねぇ。
  そもそも、原作には美穂はいませんし(笑
  でも、初期の美穂の役割、けっこういい形をとってたとおもうんですけどねぇ。
  しかし、DMのあの王様扱い…なんなんだろう(汗
  まあとりあえず、こちらの作品では元々記憶があったりするし、それはそれで関係ないですけど。
  今回一話のみでデジタル編を終わらせたらかなりの容量に…ま、いっか(まて
  このシリーズ、一話がすべて異様に長いようなそうでないような……
  まあ、長いシリーズ、として推し進めよう(だからまて
  ともあれ、次回、またまた登場、四天王vんではまたv

2011年1月16日(日)某日

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