まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

ようやくまとも!?というかアニメオリジナル?のゲーム四天王!
原作では海馬ランドで出てきた人たちですよね。そ~いえば(まて
しかし、いろいろと詰め込みすぎかなぁ?入学してからいろいろと事件ぼっ発すぎてるかも(自覚あり
早く良の登場にまでいきたいものですv
彼がでてくれば物語も少しはすすむv
何しろ遊戯の他に【王】のことを知ってる存在、ですからねぇ。バクラ、は。
何はともあれゆくのですv
ちなみに、アニメとはこれはまた異なってますよ~。
何しろ遊戯は物心つく前から双六&アテムに指導をうけてる実力だ(笑
何はともあれゆくのですv

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~第24話~

「今日も海馬君、休みなのかなぁ?」
というかお兄ちゃんはただ精霊界におくっただけっていってたけど、何かあったんじゃないのかな?
そんな不安がふとよぎる。
ユウギとゲームをした後、海馬瀬戸は一度も登校してきていない。
「はい。では朝のホームルームを始めます」
何だかとても昨日から心が軽い。
今までいろいろと悩んでいたのが嘘のよう。
「野間先生」
ガラッ。
教室にと入ってきた先生の姿をみとめ誰ともなくつぶやき、それぞれにと席にとつく。
「先生。海馬君は今日もお休みですか?」
別の生徒が問いかける。
「ああ。今は何でもプロジェクトの企画が忙しくて学校にくる暇もないらしい」
そもそもすでに海馬コーポレーションの社長、という立場にいる以上学歴とかはどうでもいいような気もしなくもないが。
一応肩書は必要らしい。
何よりも中学卒業のみ、という肩書では世界と渡り合っていけない、というのもあるらしいが。
「プロジェクト?」
「海馬君のお父上がこの間お亡くなりになってね。それで今はいろいろと引き継ぎなどで大変なようなんだ」
ざわざわ。
そんな担任の野間の言葉に教室の中が一瞬ざわつく。
「つまりは彼は君たちと同級ながらも世界に誇る海馬コーポレーションの社長となったわけだ。
  これからはあまり学校にはこられないかもしれないな」
何しろ上にたつ、ということは責任がつきまとう。
社員の数も世界各地にかなりいる巨大企業。
かの企業をつぶすのが今がチャンス、とばかりに動き出す企業などもあるであろう。
「え?…お悔やみにいったほうがいいのかな?」
「君たちも、心配してお悔やみとかに行きたい、とおもうだろうが。彼も大変だろうから協力してやってくれな」
「「は~い」」
「…何だか海馬君もお兄ちゃんと同じく若いうちから大変みたいだね……」
『…光をきちんと取り戻していれば問題はないんだがな……』
あのまま心が悪意に染まったままでそんな巨大企業を引き継げばいやでも邪悪な存在に目をつけられてしまう。
「え~。本当ならば一時間目は国語の時間だが。先生達は会議があるので一時間目はプリントを配る」
「「え~~~!!?」」
「学級委員は授業開始と同時に配って、おわってから職員室にもってくるように」
ざわめく生徒達をさくっとムシし、用意していたプリントをどさっと机の上にとおく野間。
野間大輔。
それが遊戯達のクラス担任の名前。
そののんびりとした容貌からのろま、と影でアダナをつけている生徒もいたりするのだが。
「プリントが終わったものはそれぞれに自習をしておくように」

「え~。まけちゃったの~」
しゅん、と思わず下をむく。
「武藤はゲームとなったら強いよな~」
「そんなことないよ」
わいわいがやがや。
プリントをさくっとすまし、暇でもあったのでユウギとともに一人でカードゲームをしていた遊戯。
そんな遊戯に気付いてかいつのまにやら人があつまってきており、気づけばちょっとした人だかり。
ゲームなら静かでもあることでもあるし、何をしなければならない。
ともいわれていない。
とにかく他の教室に迷惑にならないように過ごせば問題はないわけで、ゆえにゲームもまたありだととらえられる。
素直に自習、といわれて勉強ばかりする生徒はそうはいない。
「つ~か。武藤。オマエこんなカードまでもってたのか?」
みたことのないカードもある。
何か魔法使いっぽい感じもしなくもないが。
「おお!これってブラックマジシャンじゃね~かっ!すげ~っ!」
遊戯の手持ちのカードをみてそんなことをいっている他のクラスメート達。
箱の奥底の二重底に神のカードのひとつ、天空のオシリスがはいっていることに彼らは気付かない。
もっとも気づかれたら大騒ぎになるのは目に見えてるが。
その人が選んだカードに合わせて遊戯もまたデッキを組んでいるのでそこそこに楽しめる。
「ん~。何でまけちゃったの~」
何だかとても納得がいかないようにつぶやいている美穂。
「美穂ちゃんは攻撃と防御だけでトラップカードとか使わないから。
  トラップカードとか特殊カードを利用してカードの力をさらに強くするのもこのゲームのダイゴミなんだよ?」
すでにカードを決められた数だけ選んだ時点でその選択は狭まってくる。
「おまえ、ゲームだと容赦ないんだな~」
そんな遊戯にとしみじみいっている城之内。
「ゲームは楽しんでやらなくちゃ。それにきちんとプレイしないと相手にも失礼だもん」
それでも相手の力に合わせてはいるつもり。
まあ、相手がいつも強すぎる相手なのでそのあたりの要領がつかめていないのもまた事実。
「遊戯。今度は俺にやらせてくれよ。俺もカードもってきてるんだ」
今流行りのデュエルモンスターズ。
カードをおくボードさえあればどこでもできる。
「しかし武藤、あまり知られてない特殊能力まで詳しいよな~」
どうでもいいようなカードの特殊能力すらをも使いこなしているようである。
それゆえの別の生徒の言葉。
「ほんと。武藤も大会にでればいいのに」
もったいない、とおもう。
デュエルモンスターに少しは自信がある人物はことごとく挑戦するがことごとく負けている。
しかもどこがわるかったか丁寧に教えてくれるのもまた彼らしい。
しかもそれがとてもわかりやすい。
遊戯からすればカードに書かれている様々な生き物などは現実と重なっているので知っていて当たり前。
何しろ彼の傍には物心つく前から常にそれらの存在がいた。
「僕はあまり目立つの好きじゃないし」
だからそれがもったいない、とおもう。
どこまで強いのかみてみたい、とおもうのは人の心理。
何しろことごとく赤子の手をひねるかのように負けていればなおさらに。
「美穂ちゃんの場合はね。このカードの組み合わせだと、このカードにこれとこれをいれたらねこのカードがいきてくるんだ」
いいつつも、カードを取り出し美穂のカードの束の横におく。
いつのまにか授業時間はおわっており、すでに一時間目と二時間目の間の十分間の休み時間のチャイムが鳴り響く。
「う~。遊戯君。もういっかいっ!」
美穂の言葉とほぼ同時。
ピンポンパーン。
【一年B組の武藤遊戯君。一年B組の武藤遊戯君。至急保健室にきてください】
校内放送がかかり、なぜか遊戯を呼び出す放送が。
「?何だろ?」
「遊戯。呼ばれてるわよ?」
「遊戯。オマエ何かあったのか」
保健室、というからには何かがあった、としかおもえない。
「?美神先生が何のようだろ?」
とりあえず呼ばれたからにはいくしかない。
「ちょっといってくる」
カードをそのままにしておくのも気にはなるが、しかし悪意をもって触れようとすればたちどころにカードの精霊たちは反応する。
しかしクラスメート達をそんな目にあわせたくはない。
ゆえに開いていたカードをひとつにまとめ箱の中にと納めてカバンの中へしまいこむ。
「遊戯。このボードかりてもいいか?」
「うん。いいよ?ならちょっといってくるね~」
とりあえずカードそのものに触れなければ問題はない。
何しろ遊戯のもっているカードの中には遊戯達以外の命令をまったくうけつけない輩もいるのだから。
何やらいまだにわいわいとにぎやかなクラスをそのままに、ひとまず一階の保健室へと向かうことに。

コンコン。
「失礼しま~す」
…あれ?
気配がひとつ、二つ…それに精霊も?
『…は~…完全に心は取り戻せてない…か』
がらっと扉をあけると同時に感じる気配。
近くにいればはっきりとわかる。
『……お願いです。セト様を…セト様を助けてください…私の声が今のセト様には届かない……』
扉をあけると近づいてくる一人の女性。
白き髪に青き瞳。
どこかやさしそうでそれでいてさみしそうな雰囲気をもっているその女性。
…?
どこかであった?
どこか懐かしさを感じるのは気のせいか。
『キサラ。か。精霊界でも無理だったか……』
そんな彼女の様子にさらに遊戯の横でため息をついているユウギの姿が目にとまる。
お兄ちゃんの知り合い?
この人もどうやら精霊のようだけど。
遊戯がそんなことを思っていると、そんな彼らには気付くことなく、
「武藤遊戯君、ね?」
どうしてわざわざ確認する必要があるのやら。
そもそも遊戯は彼女とはいく度もであっている。
椅子にすわったままそんなことをいってくる美神保険医。
「おはいりなさい」
何だか様子がおかしい。
「先生。僕に何か?」
そこまでいってはっとする。
・・・・・・・・・・・・・・・・・先生の周りにまとわりついているワイヤー…何?
そして何よりも。
「あれ?あ。海馬君!学校にきてたの?大丈夫?」
カーテンの背後から感じる気配は紛れもなく海馬瀬戸のもの。
ゆえにこそ、カーテンを開いていきなり話しかけている遊戯の姿。
案の定、カーテンの後ろには海馬瀬戸が様子をうかがうために隠れていたのだが。
そしてまた、
「それと、おじさん、だぁれ?何で美神先生をワイヤーでつってるの?」
カーテンの背後に隠れていた人物にとこれまたいきなり話しかけていたりする。
『…遊戯。いきなりは少しまずいとおもうぞ?』
『それは私も同感です』
そんな遊戯の様子に思わず突っ込みをいれてきているユウギとキサラ、と呼ばれた女性。
遊戯にみつかったことにより、ぴたっと美神保険医の動きがとまる。
確か聞いたことがある。
人を操る奇術がある、ということを。
他人を気絶させておいて意のままにと操るというその奇術。
よく手品などで使われている技でもある。
「…な!?」
自分の人形使いの腕はこんな少年にあっさりと見破られるものではないはずだ。
なのにすぐさま見破られ、しかも操っている自分まで見つかってしまった。
ゆえに声を一瞬つまらせる。
「ちっ」
まさかすぐに見破られるとはおもわなかった。
が、しかしすぐに表情をつくり、
「やあ。遊戯君。おはよう。ちょっと学校にきたはいいけど気分が悪くてね。ああ、彼は僕を心配してついてきてくれたんだ」
ものはいいよう。
作り笑いを浮かべてそんなことを言い放つ。
「大丈夫?さっき先生が海馬君のお父さんが死んで大変だっていってたけど……」
「仕方ないよ。僕が頑張らないと従業員達も路頭にまようしね」
それはわかる。
会社とはいわばひとつの国のようなもの。
かつてユウギもまた国を治める立場であったのだからそのあたりの話しは遊戯はよく聞いている。
「で。何でこのひと、美神先生を奇術で操ってたの?」
気になっていたことを問いかける。
おそらく間違いはないはずだ。
そもそもその手に操るために必要な道具をもっていればなおさらに確信がもてる。
「…よく見破りましたね。君。いまだかつて私の奇術を見破った人などいませんでしたのに」
さすがに海馬様が気にしているだけのことはある。
わざわざイギリスから自分を呼び寄せた理由が何となく理解はできた。
理解はできたが…しかしそれを見破ったから、といってゲームに強いのかどうかまではわからない。
「でも人を操るのはよくないよ?おじさん」
「おじ…私はシェルダン。以後お見知りおきを」
確かにこんな子供のような人物からしてみればそういわれてもおかしくはない。
ないが紳士として名前を名乗らないわけにはいかない。
「シェルダンさん?僕は遊戯。武藤遊戯。よろしく。海馬君の会社のひと?」
確か海馬コーポレーションは世界各国にその支店をおいている。
ゆえに日本人以外の従業員がいてもおかしくはない。
「彼はシェルダン伯爵。イギリスから来てもらっているんだ。遊戯君。今日の放課後、時間とれるかい?」
「え?別にかまわないけど。何で?」
伯爵っていうことは伯爵位をイギリス王家から受けている人物、ということなのだろう。
しかし海馬が何をいいたいのか遊戯はよく理解していない。
『キサラ?』
『セト様はわざわざ彼をイギリスから呼び寄せたのです。すべてはあなた様を倒すために……』
だからこそ悲しくなる。
必死に呼びかけても今の彼の心は曇っていて自分の声が届かない。
邪悪なる波動に気付かれないように彼の周囲に結界を施しておくのがやっと。
『まあまだ邪悪なものに気付かれてはいないようだしな。…闇のゲームで一度心を砕く必要があるかもな……』
悪意に満ちた心を一度浄化し、自分自身の力で再びく見直すことにより本当に目覚めるはず。
できれば自分の力でそれらの悪意の力を払いのけてほしいのが本音、なのだが……
『わたしはセト様が再び闇に染まるのをみたくありません。ですからどうか、セト様を……』
キサラの願いは切実。
心の奥底では彼もまたキサラを求めているはずなのに。
それは青眼の白竜のカードに異様な執着心をもっていることから容易にうかがえる。
今彼はその地位や財産、ツテをすべて使い残りの三枚のカードを手にいれるようにと指示をだしている。
カードが手元になくとも常に彼の心の中に自分はいる、というのに。
そのことに気付いてもらえない。
だけども傍で少しでも役に立ちたい。
その思いは今も昔も変わらない。
『わかっている。セトもそう愚かではない。忘れたのか?かつてセトは自分の力で闇を払いのけた。
  魂の光はたとえ生まれ変わろうと変わるものではない』
そしてユウギ…否、王のその最後の力によりキサラもまたよみがえった。
セトと二人、精霊としてかの地をまとめ導いた、そうシモンよりユウギは聞いている。
あのときゾークを封印したのち、自の肉体を構成する力をすべて使い惑星すべての犠牲になったものをよみがえらせた。
その結果、彼の体は跡形もなく光となって消え去ってしまったのだが。
遊戯が海馬達と話している横でそんな会話をしているユウギとキサラ。
しかしそのことに海馬は気付いていない。
彼の心の曇りがはらわれたとき、その視界にキサラの姿を捉えることが可能となる。
しかしそのことに心が曇っている海馬は気付いてすらいない。
「少し協力してほしいことがあるんだ」
「うん。いいよ。僕にできることなら」
遊戯からしても海馬の手助けになりたい、とおもう。
そうすることにより少しでもユウギの心の負担がかるくなるとわかっているからこそなおさらに。
「あ。授業はじまっちゃう。じゃあね。海馬君。えっと、それとシェルダン伯爵さん。…あ。美神先生、平気?」
そういえば、先生に呼ばれたはずである。
しかしここに海馬がいる以上、遊戯を呼んだのはどちらかがわからない。
「いいよ。授業に遅れてもいけないだろうしね。僕もそろそろ時間だから戻らないといけないし。後で迎えにくるよ」
いろいろと忙しい中時間を割いてやってきたのだ。
…まさかゲームを仕掛ける前にさくっと気づかれる、などとは夢にもおもわなかったが。
「先生には僕からいっとくよ」
「そう?でも海馬君。ほんと無理はしないでね?じゃ、またあとでね!」
自分に頼みたいこと、とはなんなんだろう?
そんなことをおもいつつも、ちらり、と何やら話しこんでいるユウギにと視線をむける。
『ではな。キサラ』
『はい』
何しろ休み時間はたったの十分。
その間に机の上を片づけておかないと次の授業にさし障りがある。
ちらり、と腕時計をみてみればあと数分でチャイムがなる。
いったい何の用事だったのかは気にはなるが海馬君に何か関係していることなのかな?
そんなことをふと思う。
何しろ海馬がしばらく休んだ原因の一端は知られてはいないがユウギ、にあるのだから。

「おかえり~。遊戯。何だったの?」
「それがよくわかんないんだ」
「何だそれ?」
き~ん、こ~ん、か~ん、こ~ん……
教室にもどり机にとつく。
すぐに杏や城之内が何の用事だったのかを聞きに来る。
しかし遊戯からしても説明のしようがない。
本田が首をかしげるとほぼ同時、授業開始のチャイムが鳴り響く。
「やば。片づけないと」
それぞれがガタガタと席につく中、いまだに広げてあったボードをたたんでカバンの中へ。
そして次の時間割りの教科である英語の教科書を取り出し前をむく。
ガラっ。
それぞれがそれぞれの席につくのとほぼ同時、英語の担当教師が教室の中にとはいってくる。
結局、何だったんだろ?あの呼び出し?
そんな疑問を心に抱きつつも、そのまま遊戯は授業をうけてゆく――

き~ん、こ~ん、か~ん、こ~ん……
「じゃ、僕用事があるから」
いいつつもカバンを背負って帰り支度をはじめて教室の外にとでようとする遊戯。
「ちょっと遊戯。用事ってまさかゲームセンターじゃないでしょうね?」
そんな遊戯を呼びとめて問いかけている杏の姿。
「え?違うよ」
「遊戯はゲームになるとお金の使い方がハンパじゃないってあんたのお母さんがいってたわよ?」
何しろ二人してゲームに目がないのだからそれはそれで使う金額もハンパではない。
何しろ必要とあらばユウギの名義の貯金を下ろす、という手段すらもとれる。
「今日はゲーセンじゃないよ。じゃあね」
今日は本当ならば新しく入るKISの新しいゲームをしたいところではあるが、海馬の頼みのほうが優先される。
あまり待たせてはいけないよね。
そうおもいつつも学校を後にする。
門を少しいったところに場違いな黒塗りの車がとまっているのが目にとまるが。
「あ。海馬君」
みれば車の中に海馬の姿が。
「遊戯君。のって」
「あ、うん」
後ろの扉が開かれて、そのまま素直に車に乗り込む。
遊戯が車に乗り込んだのをうけて車は静かにその場を発進してゆく。
「?どこにむかってるの?」
「人形の館、さ」
「人形の館?」
運転手はどうやら昼間の男性らしい。
後部座席には遊戯と海馬。
そしてまた、そんな遊戯のとなりにはユウギが一応姿を表しているのだが海馬はそのことに気付かない。
「確かシェルダンさんっていったっけ?海馬君の運転手なの?」
遊戯のそんな素朴な疑問は何のその。
「彼は我が海馬コーポレーションが誇るゲーム四天王の一人。ミドリィ・シェルダン伯爵さ」
『へぇ。ゲーム四天王、ねぇ。セトにしては面白そうなものをつくってるな』
彼はどちらかといえば自分から率先してゲームに参加するタイプだというのに。
おそらく気の感じからいっても性格はかつてと同等のままであろう。
「闇のゲームとやらをみせてもらいましょうか」
「…え?」
その言葉に思わず横にいるユウギのほうにと視線をむける。
お兄ちゃん、この人、闇のゲームのことしってるの?
心の中での問いかけ。
『いや。おそらくセトからきいたのだろう。どうやらそいつは俺を負かせるためにセトが連れてきたようだな』
しかもわざわざイギリスから。
今のセトは旅立ちの扉などは使えないずである。
ならばわざわざ海外から連れてきたとしか思えない。
「…勝負のためだけに?」
『そう考えたほうが無難だろう』
しかし、彼らの前でユウギと変わるのは何となくだが危険なような気がする。
「…海馬君。たのみってゲームをすること、なの?」
そんな遊戯の問いかけに。
「遊戯。オマエを膝まづかせてやる。人形の館でな」
あのときからずっと心にくすぶっている敗北感。
彼が負ける姿をみなければこの敗北感はおそらくぬぐえないであろう。
それゆえに先ほどまでの猫をかぶっていた顔をはずしてきっぱりはっきりいいきる海馬。
『…ヤツラに気付かれる前に心を一度浄化したほうがいいか?これは?』
それは一時にしろ廃人のように成り果てる、ということを意味している。
え!?ちょっとまってよ。お兄ちゃん。
僕が何とかしてみるから。
彼の心の光を信じたい。
できればユウギの力によって、ではなく彼の力で闇を振り払ってほしい。
そうユウギも願っているのがわかるからこそなおさらの遊戯の懇願。
『…しかし遊戯。油断はするなよ?』
「うん。わかった」
そんな二人の会話をどうやらゲームをうける、という答えととらえ、そのまま車は目的地にむかって走ってゆく。

『何だかなつかしいな』
「いや、懐かしいって……」
思わずつぶやいているユウギの声に思わず突っ込みをいれる遊戯の気持ちは間違っていないであろう。
連れてこられた場所はどこを見渡しても人形だらけ。
『こういう場所はよくあったからな』
こんなのは序の口。
もっとひどい光景を目にしたことも多々とある。
数多とある人形に囲まれた部屋の中央にはデュエルモンスターズの舞台となるボードが置かれている。
「何だかいっぱい見られているようで落ち着かないんだけど……」
「この人形の館がお気に召しませんかな?」
「何かたくさん見られているみたいでおちつかないよ」
『遊戯も視線に慣れたほうがいいとおもうぞ?』
常にかつては見られているのが当たり前であったことを覚えているユウギと覚えていない遊戯の感覚の差はやはりある。
「ふふ。みんなお前が負けてひざまづくのがみたいのさ。…早くカードをひけ。ゲーム開始だ」
「でもまだ僕、デッキくんでないよ?」
箱の中には多数のカードが入っている。
「なら早く選ぶんだな」
きょろきょろと周囲をみてばかりの遊戯にいらだちつつも言い放つ海馬であるが。
いわれてコトリ、とカバンの中から箱を取り出す遊戯。

あの箱…どこかで?
その箱に何となく覚えがあるような気もしなくもないが、気のせいであろう。
そう解釈し、
「シェルダン。キサマのほうはいいのか?」
横にいるシェルダンにと話しかけている海馬の姿。
遊戯が取り出した箱は千年パズルがもともと入っていた黄金の箱。
海馬がその箱に見覚えがあるのは当たり前。
何しろかの箱を初めてに手にとったのは他ならない『セト』当人。
目の前で『王』はその肉体を消滅させてなおかつ身につけていた黄金でその場で箱を創りだした、のだから。
『ここはどうやら人形フィールドにもともとなっているようだな』
場の力を借りてそれぞれのカードの力を強くする。
「みたい、だね。でもとりあえず確認は必要…かな?」
いいつつも、いく枚もあるカードの中から扱うカードを選んでその場におく。
そのままカードの束を交互に変えてそれぞれがカードをシャッフルし互いに戻す。
『視界にみえて確認できたほうがやりやすいか?』
うん。それはまあそうかな?
ユウギの問いかけに素直にうなづく。
「でも相手の出方をみてから…かなぁ?」
ざっとみて大体相手がどのような攻撃をしてくるのか予測がついた。
それゆえにそれなりのカードでデッキを組んだつもり、ではある。
「何をぶつぶついっている。遊戯。準備ができたのならいくぞ。ターンは伯爵から。ゲーム開始だ」
海馬の言葉をうけて、人形の館の一室において遊戯とシェルダンの戦いが幕を切っておとされる。
『科学の力でいろいろと仕掛けがしてあるようではあるな』
周囲を見渡せばダメージにあわせてそれぞれにダメージがプレイヤーにかかるように椅子にと仕掛けがしてあるらしい。
「山フィールドで攻撃」
何やら剣士のネオンナイトのカードを山にと置いてくる。
どうやら先ほどのカードシャッフルにおいて遊戯の手から海馬が手にとったときに抜き取っていたらしい。
しかしそれは遊戯もユウギも気づいていた。
それをどうするのか見極めよう、としていたのも事実。
しかし隠すことなくそれをすかさず使ってくるとは何ともいえない。
山においてはよくカミナリが出現してもおかしくはない。
剣士の剣を利用してカミナリを味方にする攻撃パターン、らしい。
『お兄ちゃん、視覚的効果おねがいね』
『わかった』
ぽうっ。
遊戯の首にかけている千年パズルが光を放つと同時、周囲の雰囲気が一変する。
「じゃあ、いきます。シェルダン伯爵さん。デスウルフを森のフィールドで攻撃」
いいつつ、森のフィールドにカードを置く。
それと同時にカードが視覚的にも実体化する。
はっとみればネオンナイトの姿もいつのまにやら実体化していたりする。
いや、実体化しているように見える、といったほうがいいのであろうか。
海馬様は立体映像システムをこの場にほどこしてあるのか?
海馬コーポレーションがまるで本物のごとくの立体映像システムを開発している、というのは知っている。
ゆえにこそそんなふうに思うシェルダン。
真実はユウギの力にてカードにかかれているものたちが実体化しているのだが。
「狼モンスター、デスウルフ?!」
攻撃力は千二百。
結構これもまたレアなカード。
そんなカードまでもっているとは侮れない。
「プラス。一枚。シャドゥマン」
シャドゥマンはそのまま守備表示。
ゆえに何の行動もおこさない。
「闇の剣でネオンナイトと戦うつもりかね?無謀だとおもうよ?私は」
「そうかな?」
別にそれで戦うつもりではない。
ゆえにきょとん、と首をかしげている遊戯。
「まあいい。君に合わせて真っ向勝負をしてあげよう。キングビートルを攻撃表示」
攻撃力は千四百。
キングビートルの火炎攻撃はデスウルフやシャドゥマンの攻撃力には到底およばない。
遊戯の狙いに気づくことなく勝利を確信して小馬鹿にしたように、
「キングビートルの火炎攻撃はデスフルフやシャドゥマンの攻撃力では到底太刀打ちできない。残念だったな」
勝利を確信して笑みを浮かべつつも言い放ってくる。
が。
「そんなことないよ。シャドウマンの攻撃。そして守備表示でカードを一枚、ここに伏せる」
シャドウマンが攻撃するのはフィールドそのもの。
シャドウマンが剣をつきたてることにより周囲そのものが闇にと包まれる。
「こ…これは…!?」
「シャドゥマンの役割は攻撃は攻撃でも役割はフィールドを暗闇にするという役割の攻撃。
  闇の剣でフィールド全体を暗闇にすること。キングビートルもネオンナイトも暗闇に弱い。
  だけどデスウルフは闇に強い」
しかも攻撃力は闇にまじれば倍となる。
それを見越しての召喚。
遊戯のターンとなり、デスウルフの攻撃によりネオンナイトが倒される。
それらはまるでそこで実際に物事がおこっているかのように実体化しているモンスター達が戦っているようにみてとれる。
否、事実、実体化しているのでそのようにみえる、のではなくそれこそが現実、なのだが。
「う、うて!火炎攻撃だ!」
闇に乗じているデスウルフを攻撃しようとするものの、闇に紛れた狼はとらえようがない。
そのまま狼はキングビートル…見た目どうみてもカブトムシのオス。
その角にかみつきかみきろうとする。
しかし普通ならばすぐにかみきれるはずが手間がかかっている。
あ、やっぱりここ人形フィールドの特殊効果発動してる。
この攻撃はそれを見極めるためのものでもある。
伊達にユウギに特訓をうけているわけではない遊戯。
当人が気づかないうちにその駆け引きも通常では考えられないほどに強くなっていたりする。
…当の本人はまったくそのことに気付いてすらいないのだが。
どぐわっ!
それとほぼ同時。
狼が角をかみきり、周囲に炎の爆発が巻き起こる。
その衝撃派はシェルダンを巻き込みダメージを与える。
幻とはいえ実体化しているそれらは現実の肉体にも影響を及ぼす。
人の心、というものは認識しているものに対してはその思いこみからダメージをうけることもある。
たとえば目隠しをしていてただの氷のかたまりをあてて、これはドライアイスだ、と暗示をかければヤケドをするように。
周囲に勝ち誇った狼の遠吠えが響き渡る。
爆発に巻き込まれ、椅子から転げ落ちそうになり無意識のうちに抱きかかえている人形をかばうシェルダン。
「ぐっ…っ!だ、大丈夫か?フィオナ?」
そして手にしている人形を心配して声をかける。
みれば人形もまた炎で多少焼けている。
「フィオナ……お…おのれ!ゆるさんっ!」
彼にとってこの人形はとても大切なもの。
命よりも大切、といっても過言ではない。
「次はそっちのターンですけど……」
多少、少しダメージ強すぎたかな?
怪我はしてないようだけど……
相手の心配をしながらも少し小さな声で遠慮しがちにいっている遊戯であるが。
「早くゲームを続けろ!シェルダン!」
やはりというか自分が今実現しようとしている究極のゲーム。
この闇のゲームはカードの存在がそれぞれ実体化して視える。
事実、それらがまるで生きているかのごとくに。
これぞ彼が求めているもの。
しかしいまだに遊戯にはダメージをまったくあたえられていない。
ゆえにこそいらいらしつつも口をはさむ海馬の姿。
「山フィールドにガーゴイル。トルネード攻撃!」
シェルダンが叫ぶものの、ガーゴイルの放ったトルネード攻撃はナイトソルジャーの盾によりあっさりと防がれる。
「先ほど守備表示していたカードは罠カード。相手が風属性の攻撃をしかけてきたときに発動する」
「何!?」
罠カードによりガーゴイルの体が瞬く間に木々にと取り込まれ身動きがとれなくなってゆく。
まさかトラップカードを守備表示にしていたとは予測すらしていなかった。
ゆえにシェルダンは動揺を隠しきれない。
トラップカードを発動させたのにはわけがある。
この空間は特殊なフィールドによって包まれている。
遊戯からすればそれの対策に守備表示でおいておいたに過ぎない。
「さらに魔法カードを特殊表示。デスウルフの攻撃。デスウルフの遠吠え。そして伏せカード」
「こ、これは!?」
「魔法カードの効果でデスウルフの遠吠えを振動派にと変換。
  この空間にかかっている人形フィールド、という特殊効果は振動派によって崩される」
「鎧崩しか。こしゃくなっ!すべてを役尽くせ、サラマンドラ!」
「えっと。それは無理だとおもうよ?サラマンドラとかでは振動派には勝てないもん」
振動派は目にみえないもの。
対抗するならば魔法カードの特殊効果でかき消す以外方法はない。
もしくはこのターンの効果を無効化させるカードを表示するか、のどちらか。
しかしシェルダンが表示したのはサラマンドラのカードで攻撃表示。
炎では振動派にかてるはずがない。
振動派によりシェルダンが攻撃表示で召喚していたガーゴイルやサラマンドラはダメージをうけて崩れだす。
「僕の勝ち、だね。最後に伏せカードを表にして。死者蘇生。ネオンナイトをよみがえらせる」
遊戯の言葉と同時にユウギの手元に先ほど消滅したはずのネオンナイトが再び蘇る。
それとほぼ同時にガーゴイルとサラマンドラの体が完全に崩れ去り、カードがその場より消滅する。
『遊戯も先読みがだいぶうまくなったな』
「えへへ」
ユウギに褒められて思わず照れる。
でもまだまだお兄ちゃんにはかなわないけどね。
そう心の中でつぶやくものの、ほめられて嬉しくないわけはない。
もともとのそれぞれの手持ちのライフポイントは二千点。
遊戯は一点も失っていないのにシェルダンのポイントは今の攻撃でゼロとなり果てる。
「…ちっ……」
あのときと遊戯の雰囲気と今の雰囲気は異なるがよもや四天王の一人までをも負かすとは。
自分が手も足もでなかったあの遊戯とは違うような気がする、というのに。
遊戯の勝ち、とともに周囲の雰囲気ががらり、とかわる。
先ほどまで暗闇に包まれていた空間が始めの空間。
すなわち周囲に人形があふれている部屋にと戻っていたりする。
先ほどまで実体化させていたのはあくまでもゲームの進行状況を見やすくするために、
それらの形式を実体化させていたもの。
ゆえに闇のゲーム、とまではいかない。
そもそも闇のゲームの空間では通常のひとの魂はあっというまに消耗し下手をすれば命を落とす。
遊戯がもしそれに参加すれば、魂の枷がはずれかねない結果ともなりかねない。
そうなれば遊戯もまた自分がユウギと本来は同一人物である、ということを思い出してしまうであろう。
それは今の現状では好ましくは…ない。
「シェルダン伯爵さん。ありがとうございました」
丁寧にぺこり、と頭を下げてお礼をいう。
どういう形であれゲームの相手をしてくれたことには敬意を示さなければならないであろう。
それが遊戯の言い分でありゲームに対しての彼の敬意でもある。
「あ、怪我大丈夫ですか?いくら幻の実体化っていっても認識してたら怪我もまたひどくなるし」
それらがいくら幻であったとしても、それが現実、とおもっていればそれなりに体にも変化が訪れる。
まあ、今ユウギが行ったのは幻の実体化…というよりはカード効果の実体化、といったほうがいいのだが。
トントン。
そのままカードの束を束ねてカバンの中に入れておいた箱の中にとしまいこむ。
ちなみにカードの量は本来ならばこの箱の中だけでは足りないくらいになっているのだが、
いかんせん、これはユウギがかつて自分自身で創った品。
ゆえにこそ、どうやら『王』の空間にリンクさせているらしい。
つまりは箱にみえても箱にあらず。
常にほとんどのカード達はユウギの心の迷宮のとある一室の中にとしまわれている。
箱にカードをしまい、カバンの中へ。
そのまま椅子から立ち上がり、茫然としているシェルダンのほうにと歩いてゆく遊戯の姿。
「…私のまけ…か……」
「…ゲーム四天王、ともあろうものが……」
まさかここまで彼もまたこてんぱに負ける、とはおもわなかった。
しかし何だろう。
自分が対戦したときとはやはり雰囲気というか何かが違う。
そう、何かが。
「でもこの部屋すごいね。海馬君。人形達だけのための空間としてここ創られてるんだね」
それゆえに人形に対する【場】が出来上がっていたのも事実。
【場】というものは様々な思いなどによっても形勢される。
ここはしいて言えば意図的に人形達のためだけ、に創られている空間、なのであろう。
しかしそんな遊戯の声は今の海馬にははがゆくしか聞こえない。
「シェルダン伯爵さんは本当に人形を大切にしているんだね」
さきほど炎に巻かれたときに人形を咄嗟にかばっていた。
彼のもっている人形が彼にとってとても大切なものだ、というのは容易に理解できる。
『ねぇ。お兄ちゃん、彼のこの人形、なおしてあげられることできる?』
よくよくみれば炎で多少汚れてしまっている。
『まあ可能だが。しかし今はセトのほうが問題だな』
心の中で会話を繰り広げている最中、ふと横をみれば何やら険しい顔の海馬の姿が見て取れる。
「海馬君?」
そんな海馬を心配し、ぺとっと額にいきなり手をあてている遊戯。
「って何を!」
「何か頭がいたいのかな?とおもって。熱はないみたいだけど。海馬君。体調わるいんなら無理したらだめだよ?」
どうやら海馬の表情を体調がわるいから、と勘違いしているらしい遊戯。
『…ぷっ』
そんな遊戯の姿にさらに表情を険しくしているセトの姿に思わず噴き出しているユウギの姿。
こういうとき、純真無垢に対応されると人はその心のやり場を失ってしまう。
遊戯からしてみればまったく悪気がなく、本気で海馬を心配しているのだが。
どうにか怒りで我を忘れそうになるのをかろうじてこらえ、
「さすがだね。遊戯君。まさか我が海馬コーポレーションの誇る四天王を負かすとは。
  だが…おっと。もうこんな時間か。悪いけど僕は用事があるから僕はこれで」
いいつつも、きっとシェルダンをにらみつける。
一度、本性をさらけ出しているのだからいまさら猫をかぷってもしかたない、とおもわなくもないのだが……
「海馬君。ほんと、無理したらだめだよ~?」
本気で心配しているらしい遊戯の言葉にいらいらする。
そのままパタン、と部屋を出てゆく海馬であるが。
「大丈夫なのかな?海馬君。あ、シェルダン伯爵さんも平気?」
いいつつもすっとシェルダンにと手を差し出している遊戯。
そして。
「大切にしている人形に怪我させちゃってごめんね。…お兄ちゃん、お願い」
「?」
遊戯が誰に話しかけているのかシェルダンにはわからない。
遊戯がそういうと同時、遊戯が首にかけている逆ピラミットが光を放つ。
あまりのまぶしさに一時シェルダンが目をつむる。
彼が目をあけていれば、遊戯のかざした手の下で彼の人形が元通りになってゆく姿がみえたであろうが。
一瞬目を閉じたあと、目を開くと先ほどまで感じていた体の痛みもなくなっている。
そしてまた、
「ふ…フィオナ?」
彼のフィオナもまた何ごともなかったかのような姿にともどっている。
「…って、ああ!?もうこんな時間!?僕ももうかえらなきゃ。
  えっと。今日はどうもありがとうございました。あ、でも人のものはとったりしたらダメだよ?おじさん」
ふっと腕時計をみてみればもうかなりいい時間にとなっている。
そのままぺこり、と頭をさげてカバンをつかんで背に背負い、そのまま遊戯もまた部屋の外へ。
ここはどうやら海馬邸の中の一角らしい。
玄関がどこなのかわからないが、靴はそのままはいているのでどこからでても問題ないであろう。
そのまま庭にとでて門があるとおもわれる方向に歩いてゆくことしばし。
「…あ、何か降りそう」
みれば雲行きがかなりアヤシイ。
『だな。さくっともどるか』
「そうだね」
周囲に人の気配はない。
それゆえに。
『なら扉を出すな』
「は~い」
ユウギの声と同時に彼の目の前にそこにありえないはずの扉が突如として出現する。
そのままその扉をくぐりその場をあとにする遊戯。
一応門から外にはでているのでいきなり消えたようには思われないはず。
そのまま二人して扉をくぐりそのまま帰路にとついてゆく――


ザァァ……
いつのまにか外は雨。
「出直しだなぁ。フィオナ……」
負けたものには用事はない。
それが決まり、とはいえ非情といえば非情。
彼らが雇われていたのはその強さゆえ、であったのだから仕方がない。
しかしよもやあんな子供に負けるなどとは夢にもおもってもいなかった。
しかも人形の特殊空間の特性すらをも把握されていたとは。
世の中、自分の知らない強いものがまだたくさんいる。
それゆえに、自分自身を見つめなおすためにも出直すことが必要。
「おっと…これは私としたことが。イギリス人なのにカサを忘れてしまったよ」
降りしきる雨の中、人形を手にして歩くその姿は異様、としかいいようがない。
しかし彼には人が何たるか、を教えられたような気がする。
負けてくいなし、とおもえたのはこれが初めて。
姑息な手段を用いても今までは勝つことがすべてであった。
しかしあの少年はまっこうから自分を完璧にと打ちのめした。
その純粋なる心で見つめられれば今までの自分が卑屈におもえるほどに。
この雨は自分への戒め。
それゆえにタクシーを呼びとめることもなくしばし雨にぬれることを自ら選んでいるシェルダン。
しばらくは自分探しの旅にでるのもいいかもしれない。
そんなことをおもいつつ、しばし彼はそのまま人形のフィオナとともにてくてくと道をすすんでゆく……

「おかえり。遊戯。しかしなぜに扉で?」
まあ誰もいないからいいとして。
「ファラオ。扉をつかわれて移動するのはいいですが。周囲にはきをつけてくだされよ?」
今の世の中、そんな力をもっていることが知られれば絶対に騒動となりかねない。
まあ、彼のこと。
誰にも気づかれないようにしていることは前提、であろうがいわずにはいられない。
双六の店の中に突如として現れた遊戯達。
それゆえにそんな二人にと話しかけている双六。
「ただいま。爺ちゃん。ちょっとね。海馬君に誘われて海馬君の家にいってたんだ。
  んでおそくなっちゃったし、雨がふりそうだからお兄ちゃんが扉だしてくれたの」
遊戯の説明はうそではない。
嘘ではないが…遊戯はそれを悪意があるもの、としてとらえていない。
それに何より、双六にも心配をかけたくない。
双六もまた『セト』をよく知っていたはず。
ユウギも彼のことで心を痛めているのにこれ以上、双六まで巻き込みたくはない。
というのが遊戯の本心。
「…セトの家に?…まあ何かがあったんじゃろうが……
  お。そうそう。遊戯。この前いってたデジタルペット、さっきはいってきたぞ?」
彼に誘われて、というのであれば必ず何かがあったはず。
そう確信するものの彼らがいわないのであれば追求するのはためらわれる。
それゆえに別の話題にきりかえる。
「え?ほんと!?」
「あと販売を記念して【デジタルペットコンクール】なるものが行われるらしいぞ?これがそのパンフレットな」
品物と同時にそのようなポスターも配布されるのは、ひとえにそれも販売促進の一環ともいえる。
「へ~。海馬君もいろいろと大変なんだね……」
何しろ主催は海馬コーポレーションである。
先日、創業者である社長が死亡したことによりいろいろとイベントなどにも力をいれているのかもしれない。
パンフレットにはコンクールの日程と、そして優勝賞品などの明細が書かれている。
「へ~。オーストラリア旅行、ね。ペットの品評会のようなものかな?」
『だな』
しばし二人してそんなポスターをのぞきこんでいる遊戯とユウギ。
そんな二人の姿を苦笑しつつみつめながらも、
「そうそう。遊戯とファラオにもそれぞれ渡すとするかの。…しかし、ファラオ。
   これだけ!はいいますけど、きにいったとしても。だからといってその世界を新たに創られませんようにっ!」
何だかそこに力を込めていっているのはおそらく遊戯の気のせいではないであろう。
『心配するな。今はまだそんな力は戻ってないしな』
「力が回復されたらやられるおつもりですか!?それでなくてもファラオはいくつ世界をかつて創られているとおもわれてっ!」
『遊戯。とりあえず部屋にもどるぞ』
「あ。爺ちゃん、僕宿題もあるから。じゃあね~。これ、ありがと~!」
「あ!にげられますかっ!ファラオ!それに遊戯っ!!…ったくもう!あのお方達はぁぁっ!!」
さらっと逃げられるのはいつものこと。
とはいえやはり文句の一つもいいたくなるのは…仕方ないであろう……
双六から明日発売の携帯キーホルダーゲーム【でじたるペット】を受け取り遊戯達は遊戯の部屋にと戻ってゆく。
外の雨はまだまだやみそうにない……


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あとがきもどき:
せっかくでてきたのにさくっと遊戯、のほうに負けてしまったシェルダン伯爵v
さりげに遊戯がユウギの力にて実体化されてる空間の中でも平気だよ?というのを複線としてだしてたりv
次回で文化祭&不破の話しにいけるかな?
いまだにどちらにするか悩んでいるのはバクラ・ネクロディアスと海馬ランドの戦いの前後。
どちらのパターンでもいけるんだけど、しかし海馬瀬戸のことを考えるとやはりバクラのほうが先…かな?
かの海馬ランドのことでは遊戯さんの肉体の封身が解ける、というのがあるんだけどな(こらこらこら
あ、ちなみにデジタルペットの回は原作のほうにいきますのでvあしからずv
何はともあれではまた次回にて~♪

2009年7月5日(日)某日

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