まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

いろいろと、これに関しては過去話などいろいろありますけど。
ひとまず初代アニメ&原作にそってあの牛尾の回より(笑
というわけで、いくのですv
まったく原作とは設定が肝心たる基本のところが異なってますけどね(笑
王様のきおくが元々ある…ということ自体が~(まてこら
でも名前はおぼえていないからよしv(かなりまて
何はともあれ、ゆくのですv

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  ~第1話~

「そうか。遊戯ももう十六か……」
「うん。もう僕と君とあまり歳はかわらなくってきたね」
少し不思議な気がする。
物心ついたころから自分の心の中にいたもう一人の自分そっくりの自分。
自分自身は歳をとってゆくのに彼は昔のまま。
額につけている古代エジブトの神をあらわすシンボルだというウジャト瞳のサークレトも。
そしてまた、耳につけている黄金の耳飾も。
昔と異なるのは、その服装を最近のものにと変えている。
ということくらいであろう。
「でもさ。どうやってもあそこからパズルがまだ解けない……何かしてない?お兄ちゃん?」
思わずじと目でといかえす。
小学校に上がるまえに、千年パズル、と呼ばれている品物をとき、完成させた。
にも関わらず、今現在再びパズルが組みあがっていないのは、
表にでてきた目の前の『彼』自身が壊したからに他ならない。
「さあ?それはどうかな?」
「ずる~いっ!絶対に何かしてるっ!お兄ちゃん、昔っからそういういいぐさするときそうだもんっ!」
ふてくされる彼に対し、
「遊戯殿、ファラオにもファラオのお考えがあることなのですよ」
そんな彼をなぐさめる、まるで古代の物語にでてくるような魔道士のような格好をしている男性。
かつて、彼をまもるために自らの魂を精霊と同化して、彼とともに存在することを選んだ存在。
「も~。マハードさんはいつもお兄ちゃんの味方なんだから……」
ぷうっ。
「そうはいうが、遊戯。俺にも俺の事情というものがあるしな。
  …だが、そうだな。お前に足りないもう一つのものがお前に目覚めたとき。
  再び俺は表にでることができるようになるだろうさ」
そう。
彼にはまだ足りないもう一つのものがある。
それは決して欠かすことができないもの。
だが、心のどこかでそれを知らずに過ごしたほうが目の前の遊戯にとっては幸せだ。
というのも理解している。
だが…それはできない。
この世界を守るためにもそれは必要不可欠なこと。
「いいもんっ!絶対に自分の力でまたお兄ちゃんといつでも話せるようにするんだからっ!」
思わずがっつポーズをとりながら宣言する。
自分とて彼の力になりたいのに、気づけば今までずっと守られていたばかりの自分。
だけどももう、自分も十六。
高校一年に進学した。
彼の力になれるはず。
いや、絶対になりたい。
それは心からの願い。
心のどこかでそれは必要不可欠なことだ、と叫んでいる自分がいる。
「それに…杏子もまたお兄ちゃんに会いたいみたいだし……」
小学校のころからの幼馴染である真崎杏子。
彼女もまたもう一人の彼…即ち、『王』と呼ばれているもう一人の『遊戯』と面識がある。
ユウギ、という名前もまた『王』の名前に他ならない。
彼はかつて、王たるもの、民を治めるものは民の暮らしもしっておかねばならない。
という信念の元に、多少どこかずれているのではないか?
と思われるような信念で、名前をかえ、民とともに行動していたことがあるがゆえ。
その名前も、王の名を決める儀式のもとに告げられた神の宣告。
それこそが『ユウギ』。
彼自身が記憶から、そしてまた関係者すべて、歴史上すべてから消し去っている彼の真の名。
それとは異なるもう一つの名前――。
「あてにしないでまってるさ」
「ひど~~いっ!!みててよっ!絶対になしとげてやるんだからぁぁ!」
「ところで?遊戯?宿題はおわってるのか?」
「……あああっ!!!!!」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
「…早く意識回復させてからやりとげろ……」
ここは、彼の心の中。
途中まで組みあがっているパズルを通して会話している二人の『ユウギ』。
「うんっ!またねっ!って教えてくれてありがと~!!」
指摘されてあわてて、今日の宿題がまだであったことに気づいて、
現実に意識を目覚めさせるためにと『扉』の外にとでてゆく遊戯。
そんな彼を見送りつつ、
「…あのおっちょこちょいさは誰ににたんだ?」
「ほんっと、ファラオの幼い日によくにてますね~」
「ですね~」
「マハード!マナっ!おまえらっ!!」
和気藹々と残された部屋の一角にて話す三人の姿がしばし見受けられてゆくのであった……

*******

キ~ン、コ~ン、カ~ン、コ~ン……
「終わった、終わった~」
「お昼食べ終わったらバスケやろうぜっ!」
いつもの光景。
いつもの風景。
ざわざわと、それぞれが昼食を済ませて外にとでてゆく。
みんな元気だよな~
そんなクラスメートたちの姿をみて思わず感心する。
高校に入学してもうすぐ一ヶ月たとうとしている。
「お~い。遊戯。いつも一人で遊んでばかりいないでたまには一緒にバスケでもやらないか?」
クラスメートの一人がそんな遊戯にとその片手にパスケットボールを持ちながら誘ってくる。
「え?…いいよ。僕が入ったチームは負けちゃうから……」
ああいった体を使う競技はどうしても相手のことを考えてしまい本気になれない。
もし相手にボールをあてて、痛い思いとかさせたりでもしたら。
その思いが先立つがゆえ。
それよりは、静かに相手にも自分にも害のない机上で行うゲームのほうがよほどいいとおもう。
「それもそうだな。よ~し。みんな行くぞ~」
そんな遊戯の返事にあっさりと納得してそのまま教室からでてゆくクラスメートの男性。
たまには皆でゲームしたいな。
鞄にたくさんいれていつも学校にきてるんだけどな。
だけど皆の邪魔してもわるいし……
「そだ!今日こそはっ!」
いつもは学校にもってこないけど、昨日の今日である。
ある意味、意地になっている部分もある。
それゆえにもってきた大切な宝物。
「この箱の中に僕の宝物がはいってるんだけど、絶対に秘密。
  この中の宝物は見えるんだけど見えないもの。また絶対にくみあげるんだもんっ!」
一人つぶやくようにと、鞄から取り出した金色の小さな箱にと手をかける。
と。
ばしっ。
「…城之内君……」
今まさに箱に手をかけようとした遊戯の横から手がすっとのびてきて、
机の上にとおいてあったその小さな箱をかすめとる。
その手の行き先を視線でおうと、そこにはクラスメートの一人、城之内克也の姿が。
「遊戯。なぁに独り言いってるんだ?
  見えるけどみえないとか、わけのわからないことばかりぬかしやがって」
ひょいひょいと、箱を投げてはうけとめながら遊戯にと話しかけてくる。
「あ。かえしてっ!それは…っ!」
もし、彼がそのまま手を滑らせて床にでもおとして中身が一つでもなくなったらとんでもないこと。
ゆえにこそ、あわててそれを取り戻そうと懇願する。
「ったく、いじいじとこんな箱大切にしやがって。あのなぁ。遊戯。
  お前のそういうところ、なんつうかにえきらない、というかいらいらするぜ。
  お前を男らしくするために指導してやる。ほら、この箱とりかえしたいんだろ?
  ならおもいっきりかかってこい」
いつも一人で静かに遊んでいる武藤遊戯。
人にいろいろと頼まれてもいやとはいわず、素直に疑うことなく信じて行動する。
そんな彼に対して何かこうむかむかしてしまう。
それが自分に対するむかつきだ。
というのは理解しているものの、その矛先をどこにむけていいのかわからない。
自分とて人を信じて行動したい。
という思いは強い。
だが…今までの経験上、力こそが彼を救ってきた、というのもまた事実。
唯一、そんな自分を見捨てずに一人ほど腐れ縁ともいえる悪友がいるにはいるが……
「ん~。僕、喧嘩とか暴力とかだいっきらいっ!」
そんな城之内克也の台詞に対し、力強くおもいっきり言い返す。
そう。
喧嘩とか暴力からは何もうまれない。
そもそも、『ユウギお兄ちゃん』が命を落とすきっかけとなったのもまたそれに由縁している。
人の心の闇が産みだした邪神。
人々を守るために自身を犠牲にし、数千年以上にわたり束縛されている彼。
彼曰く、それは自身が望んだことであり、確実に闇を消滅させるため。
とはいっているが、それでも…束縛されているのにはかわりがない。
力は力をよび、そしてまた悪意も生み出す。
だからこそ、喧嘩とか暴力、といった悪意につながるものは遊戯は好きではない。
そんな遊戯の心を城之内は知る由もないが。
「だ~。根性ないくせに声だけは大きいな。お前は」
目前で大声で叫び返されて耳をふさぎながら言い返す。
「と、とにかくその箱かえしてよ」
思わず剥きになって言い返したあとに、はっと我にと戻り再び箱をもどしてもらうべく交渉する。
「そうだ。やめろ。城之内」
そんなやり取りをしている最中。
二人の横に別の男性がたち、箱を手にもっている城之内にと話しかけてくる。
なぜか刈り上げている髪型が印象深い遊戯のクラスメートの一人。
「お。何か用かな?
  一年生のくせに生徒会長に立候補して落選しお掃除委員となった本田ヒロトくん?」
そんな彼に対してわざとらしくも言い返す。
「お掃除委員ではない。美化委員といえっ!」
挑発されている。
というのはわかってはいても、訂正すべく叫び返す。
「だ~。お前も声でかいな」
耳元で叫ばれ片手に箱をもったまま残った片手で耳をふさぎながら言い返す。
そんな城之内に対し動じることなく、
「そう。お前のいうとおり、たしかに俺は生徒会長には落選したが。
  だがそのことで俺はひとまわり大きな自分に成長したのだ。美化委員として……」
延々と自分の意見をその場にて語り始める本田と呼ばれた男性の姿。
そんな彼の延々とした説明をあっさりと無視し、
「ところで。この箱何がはいってるんだ?」
腰をかがめて遊戯にと問いかける城之内。
それだけ、彼と遊戯の身長差はかなりあるがゆえ。
見た目もどうみても小学生に見えかねない遊戯。
それほどまでに彼の身長は普通の同い年の子と比べても低い。
「み…みてもいいけど絶対になくさないでよっ!すごく大切なものなんだからっ!それには…っ!」
それにはお兄ちゃんたちがいるんだからっ!
最後の言葉はかろうじてのみこむ。
人にむやみにいうものではない。
というのは幼いころより祖父から口すっぱくいわれている。
だからこそ、どうにかその言葉を飲み込む遊戯。
「おいっ!人の話しくらいちゃんときけっ!」
自分の話しをまったく無視して会話している城之内に対して剥きになり叫ぶ本田。
そんな本田を軽くいなし、手にしている箱の蓋をあけて中身をちらりと垣間見る。
箱はまるで黄金というか金でできているかのような輝きをもっているもの。
中身もよほど価値があり、値段がはるものがはいっているのかも。
そんな期待をもちつつも、箱の中を覗くが……
「…なんで~。つまんないもん」
おもいっきり顔をしかませる。
金銀財宝とか入っているとかおもったのに……
箱は見掛け倒しか?
けっこうな重さがあるのに……
そんなことを思いながらつぶやく城之内であるが遊戯に箱を返す気にはやはりならない。
こんなものを大切にしている。
というのも何となくむかつく。
男ならばこう、もっと大事なものがあるだろうに。
そんなことを思っていると、
ぱしっ。
片手にもっていた箱が廊下から入ってきた人物にとあっさりと掠め取られる。
箱を奪った当人に視線を移せば…
「ま…真崎!」
「あ、杏子!」
思わず驚愕した声をだしている城之内に、顔をぱっと輝かせていっている遊戯の姿。
廊下より教室にともどってきたのは、遊戯のクラスメートであり、
そしてまた小学校より同級となり幼馴染でもある真崎杏子の姿。
その整えられたおかっぱ頭の髪はいずれ彼女は伸ばす予定らしいのだが。
「つまんないんならさっさとかえしてあげなさいよ。
  それに弱いものいじめするあんたの顔のほうがよっぽどつまんないよ」
城之内の手から遊戯が大切にしている黄金の箱を取り返し、
きっと城之内をにらみながらも言い返す。
「弱いものいじめじゃねえよ。俺は遊戯を男らしくしてやろうと…っ!」
「おだまりっ!」
どうにか抗議しようとするものの、一言のうちにとその抗議の声は掻き消される。
杏子が強く叫ぶと同時、
「…きゃっ!」
そんな杏子の声に驚いて廊下に立ちすくむ一人の少女。
「あ。美穂ちゃん」
「あ。ごめん。美穂にどなったわけじゃないのよ」
そんな美穂、と呼ばれた少女に対して謝るようにいう杏子に、
顔をぱっと輝かせて話しかけている本田の姿。
「ちょっとびっくりしちゃった。購買部ものすごく並んでたからお昼まだなのよ」
教室に戻ろうとしたらいきなり怒鳴られた。
それが自分に対してではないにしろ、びっくりしたのもまた事実。
ほっと胸をなでおろしつつ、つぶやくようにというその少女。
彼女もまた杏子と同じく遊戯のクラスメートでもあるのだが。
「何!?それはいけないっ!すぐに俺が!」
そんな彼女の台詞をきき、そのままだっと廊下に駆け出していき購買部にと向かってゆく本田。
「あ、俺もいくぜっ!」
そんな本田を追いかけるように、
または強いていうならばこの場を逃げ出すように、そのまま廊下へとでてゆく城之内。
「ったく…あいつら……」
そんな二人の姿を見送りながらも思わずあきれたようにつぶやく杏子。
そして、そのまま、手にもったままの箱を遊戯の机の上におき、
「はい。遊戯。まったく、遊戯もきをつけないと。
  あいつら遊戯が大人しいことをいいことに、いろいろと無理難題、難癖つけてくるんだから」
遊戯は基本的には他人に言い返さない。
そのまま相手がいうがままに、抗議をするわけでもなく行動する。
それが間違っていることとかならば一応は指摘するが。
相手に頼まれればいやとはいえない心優しい性格をしている。
というのは長い付き合いである杏子であるがこそわかっている。
だからこそ、許せない。
そんな遊戯の優しさにつけこんで難癖などをつけてくる存在などは。
「え?でも城之内くんはそんなに悪い人じゃないよ?むしろ優しいよ?」
「あのねぇ……」
心からそういっているのが判るがゆえに思わずあきれた声をだす。
それが遊戯だ。
といえばそれまでなのだが。
そしてふと、
「ところで。遊戯?この箱って…もしかして……?」
今、遊戯にと返した箱にと視線をむけて問いかける。
箱にと描かれている独特な瞳。
それはたしかに前、遊戯がもっていた逆三角ピラミッドのペンダントと同じモノ。
「何々?何がはいってるの?美穂、みた~い」
ぱっと見た目のこの小さな箱はどうみても黄金製に見てとれる。
実際に黄金でできているのであるが。
まがりなりにも、『彼』の魂が込められたモノを軽んじるような存在達などはいない。
まあ、まさかこんな子供が本物の純金製の箱を持っている。
と一体誰が想像できようか。
よくて、メッキ製の箱であろう。
というのがほとんどの人たちの感想であり、意見でもある。
実際は異なるのであるが。
「えへへ。みててね。美穂ちゃん、内緒にしててね」
長い髪をポニーテールにしている女の子をみつつもゆっくりと箱をあける。
箱を開けると同時、その中に黄金に光る何かが姿を現す。
「わ~。綺麗!なにこれ!?たからもの!?」
「パズルだよ。エジプトで発見されたものすごく貴重なものなんだ」
黄金にと輝くそれをみて目を輝かせる美穂に説明する遊戯に対し、
「昔、遊戯それ組み立ててたけど、たしかお兄さんにまた壊されたっきりだったわよね」
「え?遊戯くんってお兄ちゃんいたの?」
杏子の台詞に驚いたようにいってくる美穂。
野坂美穂。
遊戯のクラスメートであり、そしてクラスのマドンナ的存在。
「似たようなものかな?とにかく!またこれを完成させて今度こそお兄ちゃんと一緒にいるんだ!」
パズルさえ完成させれば今はまだ心の中から出て来れないもう一人の自分と現実に話すことも可能。
すべてのパーツに自らの魂を分断させているがゆえに、くみあげなければ表にでることができない。
それは祖父の話しからも、そして彼の話しからも今は理解している。
昔はよく理解していなかったが。
「ん~。よくわかんないけど。何かすごいね。あれ?何かこの箱かわった模様があるね?」
「あ?それ?古代エジプト文字がえがかれてるんだ。このマークはウジャト眼っていって、
  古代エジプトが神々の力を象徴して使ってたマークなんだ」
実際には様々な言われがあるマークではあるが……
復活を示すシンボルだとか、すべてを見通すシンボルだとか…
それらはだがしかし、今ここで説明することではない。
「へ~。何ってかいてあるの?」
「…え?これには……」
いっていいのかな?
――我を束ねしもの、闇の力と知恵をあたえられん
そうこの箱には刻まれている。
だがそれはこの箱の中にある存在の真実を悟られないための手段。
それは祖父から聞いて知っている。
その真実を知っているものはまずいないが。
「遊戯。はやくまた完成できたらいいわね」
「うんっ!」
「それはそうと、本田くんたち…おそいな~。美穂、もうお腹すいちゃった……」


この感じは……
遊戯の手にしていた箱から別人の手にと一つの部品がわたっている。
どうやら遊戯は箱の中から部品が一つ抜かれたことに気づいていないようであるが。
それを遊戯に伝えようとするが、おもわず懐かしい感覚に気づいて思いとどまる。
『ファラオ?』
一番重要でもある部分ともいえる、ウジャト眼の紋様が入っている千年パズルのバーツの一部分。
遊戯の心の奥底の心の迷宮の部屋の一角でパーツを通じて見えてくる人影が二つ。
いつもならば、というか今までならば悪意があってパズルに手を触れたものはすべて闇の力によって制裁をうけていた。
その力が悪用されないがための彼の処置。
だが今回は何もしていない彼に対して戸惑いながらも問いかける。
「マハード、わからないか?彼…いや、彼らは……」
まさかこの時代に彼らが転生しているとは。
その事実に驚愕するも、だがしかし懐かしい思いが先にたつ。
『おや?あの二人は…まさか……』
肌の色の違いや髪の色の違いはあれど、マハードとてその魂の色はわかる。
伝わってくる感情からは、なつかしくもかつて出会ったときの彼らの様子が思い出される。
それほどまでに似通った感情。
自分の力というか自分自身が許せなくて、どこかで救いをもとめながらもがむしゃらにと進んでいる。
出口がみえない迷路を手探りで進んでいるかのごとく。
そのような感情。
『どうなさるおつもりですか?』
彼らの今の心理状態からして、確実に部品は投げ捨てるだろう。
それがわかっているからこその問いかけ。
「俺は彼らを信じている。遊戯も彼らを信じているはずだ」
そういいつつも意識の視点を再び部品のほうからずらして遊戯にとむける。
そう。
彼らならば……
この時代に彼らがいる、というのはきっと偶然ではないはずだ。
おそらく、自分のために彼らもまた転生してまでも手伝いにきてくれたのだろう。
それがわかるからこそ……

「まったく。むかつくぜ」
「こらまて。城之内、美穂ちゃんに対してむかつくとは何だ!?」
廊下を歩きながらも思わず毒づく城之内に対して突っ込みをいれる本田。
「だぁ。そうじゃねえ。野坂美穂じゃなくて、真崎だよ。真崎杏子!
  人をいじめっ子みたいにいいやがって……」
とにかく何だか無償にいらいらする。
それは自分にたいする苛立ちでもあることは理解しているが、それの消化方法がわからない。
「くそ。誰がよわいもんいじめだ……」
いらいらする気持ちをおさえながらも背後を振り返る。
と、それと同時に前から歩いてきていた人物とそのままぶつかってしまう。
体格のよい見た目あまり高校生にはみえないその男性。
その片腕には【風紀委員】という赤いワッペンがとりつけられている。
「君たち、いじめがどうしたって?」
見下すように二人に対し問いかけるそんな彼に対し、
「何でもねえよ、ひっこん……」
吐き捨てるように言い放とうとする城之内の口をぱしっと本田がふさぎ、
「あああっ。いや、何でもありませんです。はい」
あわてて目の前にいる人物にと言い訳する。
「ふうん。イジメはよくありませんよ。イジメは」
そんな二人をちらりと見下すように見ながら、そのままその場を通り過ぎる。
「はい。わかってます」
さわらぬ何やらにたたりなし。
その言葉どおりにいまだに城之内の口をふさぎながらもこくこくとうなづく本田。
「ああ。それから、学生服のポタンはきちんととめるように」
何事もなく二人の横を通り過ぎていこうとするが、ぴたりと立ち止まりづいたことを忠告する。
「は。はい」
素直な本田の返事をきいて、そのまま渡り廊下を渡ってゆくその男性。
彼の姿が完全にみえなくなるのを確認してほっと息をつく本田と、それとは対象的に、
「ぶはぁっ。おいっ!てめえ苦しいじゃないかよっ!」
ようやく本田の手をふりほどき、息をぜいぜいはきなから文句をいっている城之内。
そんな城之内に対し、
「ばあか。お前誰に喧嘩うろうとしたかわかってんのか?」
あきれたようにと言い返す。
「え?」
「風紀委員の牛尾さんだぞ?学校の規律はすべて彼が仕切っている。すごい人なんだ」
はっきりいって相手がわるすぎる。
彼に喧嘩をうること。
それすなわち、下手をすれば先生たちにも喧嘩をうる、ということ。
「けっ。どうだかな。ああいうのに限ってかげで何やってるかわかんねえよ」
あの人を見下したような目。
ああいう目をしている存在はろくなものがいない。
それは今までの人生の中でよく城之内は身に染みて理解している。
「ばかいうな。それはそうと。何だそれ?おまえ、何もってるんだ?」
一言のうちに城之内のその台詞を否定しつつ、
ぱしりと何か手の平から投げつつ力強く言う城之内に首をかしげて問いかける。
「さっき遊戯の宝物の箱からこっそりもちだしたもんよ。
  ちらっとしかみえなかったけどパズルのようなものだったことは確かだ。
  つまりよ、このパーツ一個でもなくなれば宝であって宝でなくなるってわけよ」
自分が悪いことをしている。
という自覚はあるが、それ以上にいらいらする心のほうが大きい。
「城之内、お前昔っからしょうもないやつだったけど、ほんっとしょうもないやつだな。
  少しはこころの美化をはかったらどうなんだ?」
城之内とは、小・中学からの友人でもある。
彼の心がすさんでいる理由もなぜかは知っている。
だからこそ、彼をほっとけない。
というのも本田の心理。
「そういえばお前、弁当をかいにいくんじゃなかったのか?」
そんな本田の心がわかっているがゆえに、城之内もまた本田をあまり邪険にしない。
これ以上延々と説教をされてもたまらないので、ふとわざとらしく今思い出したかのように話題を変える。
「あ!いけねえ!」
城之内に指摘され、そのままあわてて学食のほうにとかけてゆく。
そんな本田の姿を見送りつつ、手のひらにもっている部品をしばらくながめ、
そしてそのまま窓の外にと目をむける。
ちょうど渡り廊下のすぐ真下というか少しさきに見えている学校のプール。
そのまま、いきおいよくそれをプールめがけて投げ捨てる。
けっ。
何が宝だ。
いつまでも子供みたいに遊戯のやろう…そういうところがむかつくんだよ。
人に頼まれごとなどというかいやなことなどをおしつけられても文句一つもいわずに自分がかぶる。
人を疑うことがないその性格もどこかいらいらする。
それゆえの行為。
それがすべては自分に対するむかつきからきている、というのはわかっている。
だけどもそれらをどう消化していいのかがわからない。
そのまま、投げ捨てた品がプールに沈んでゆくのをみながらそのままその場を後にする。

こぼこぼとゆっくりとであるがプールの水の中におちてゆく。
それがほのかに光を放っているのは…当然誰も気づくはずもない。

学校の鐘つき塔を背景にして沈んでゆく太陽。
夕焼けの空と、夕焼けに染まった校舎を背にし校庭に集まっている数名の生徒たち。
「ひとぉつ。我々は世の規律を護るためにつくす」
「「つくす、つくす、つくす」」
「一つ。我々は世の正義を護るために戦う」
「「戦う、戦う、戦う」」
牛尾の言葉をうけて、殴る格好や、蹴りを入れる練習をしているのは他ならぬ、
牛尾が組織というか管理している風紀委員のメンバーたち。
あ、風紀委員の人たちだ。
邪魔にならないようにそうっと早くかえろ。
校舎からでて門に向かう途中にそんな彼らの姿をみつけて、そのままそっと帰路に着こうとする遊戯。
だがしかし、
「ちょっとまちたまえ。きみ」
「え?」
いきなり風紀委員のおそらくはリーダーらしき男性に呼び止められる。
「武藤遊戯くんだよね。君」
「はい」
この人…あ、たしか風紀委員のリーダーの牛尾さんだっけ?
でも、そんな人が僕に何のようだろ?
遊戯がそんな疑問を抱いていると、
「実は君に聞きたいことがあってね」
「え?」
いきなりいわれて困惑する。
「君、クラスの特定の生徒にいじめられているんじゃないのかい?」
「え?僕そんなことされてないですよ?」

この人、何いってるんだろ?
というか僕まったくそんな事実はないけどな。
それゆえにこそ即答する。
「まあまて。そういう人間こそ、そう受け答えするもんだ。こちらでちゃんと調べはついているんだ」
いや、だからそんなことないっていってるのに……
この人、僕の今の声きこえてなかったのかな?
あくまでも自分の意見が聞き入れられていない。
とは思わないのが遊戯のいいところであり、優しさ。
「だが安心していいぞ。遊戯くん。今日からこの牛尾が責任をもって君のボディーガードをかってでよう」
遊戯のそんな思いはまったく無視し、一人でかってに話を進める。
「え?でも僕、ほんとにそんなことないですから。失礼しますっ!」
あまりにもおかしなことをいってくるそんな彼に対して戸惑いなからもそのままぺこりと頭をさげて、
そのまま門のほうにむかって駆け出してゆく遊戯。
何なんだろ?
変なひと?
僕、ほんとうにイジメとかされてないのにな。
遊戯はいじめられていてもそれをイジメと捉えていない。
そもそも、彼はそれらはすべて自分の為にやってくれていること。
そう捉えているのだからして。

ふふ…遊戯くん。この牛尾がついていれば君の学園生活はばら色になる。
牛尾が走って帰宅してゆく遊戯をみながらそんなことを思っているのを当然遊戯は知らない。

「ただい…まぁ。って、あ、杏子」
ゲーム屋、GAME。
それは遊戯の祖父である武藤双六が経営している小さなゲーム屋。
ゲームとカメをもじってその名はつけているらしいが。
そこが遊戯の実家であり、祖父とそして両親…
とはいえ父親は大概海外にいるので母親と三人で暮らしている。
もっぱら祖父はいつも店番を昼間はしているので店のほうにいるのだが。
「えへへ。ひさしぶりに遊びにきちゃった」
少しおそくなったとおもって急いでもどるとそこにいたのは幼馴染の杏。
そしてまた、
「おそかったのぉ。遊戯」
「ただいま。爺ちゃん」
そんな遊戯に優しく話しかけてくるのは遊戯の祖父である双六当人。
「それにしても杏子ちゃん。しばらく見ないうちに綺麗になって。
  いよいよ八十の大台ってところかの?」
「え…?」
あ…あいかわらずよね。
この遊戯のお爺さん……
「それはそうと、遊戯。杏子ちゃんにきいたぞ?
  とうとう学校にまでもっていってるんだって?あのパズル」
あまりあれは持ち歩かないほうがいいんじゃが……
下手に心が弱いものがあれに触れでもしたらその心の闇に飲み込まれてしまう。
もっとも、そのあたりは【ファラオ】が何とかしてくれるじゃろうが……
そんな双六の思いは何のその、
「絶対に遊戯お兄ちゃんが何かしてるんだとおもうんだ。
  何か肝心な方法が僕の頭から抜けてるようなんだけど」
何かとても重要な方法というかやり方が抜けているような気はひしひしとする。
だが、それか何だかわからない。
そういいつつ多少ふてくされる遊戯に対し、
「…まあ、あの御方ならばそれくらいはするだろうがのぉ。
  そういえば、あの御方は元気なのかの?マハードとも最近あってないしのぉ」
しみじみとそういっている双六。
「マハードさんなら元気だよ?お兄ちゃんはあいかわらずだけど」
そんな二人の会話をしばし横でききながら、
「遊戯の中にいる、というかパズルの中にいたもう一人の遊戯お兄さんかぁ。
  私もまたあいたいな。遊戯、がんばってね」
初めは信じられなかった。
遊戯の中にいるというもうひとりの遊戯。
だが性格からしても、その態度からしても、遊戯とはまったくの別人。
そもそも、知り合ったときはまだ杏は小さな女の子。
遊戯の肉体を使って表にでてきた彼とであったのはまだ小さかった杏子が誘拐されたとき。
それゆえに彼の存在を杏子は知っている。
「うん!」
千年パズルとは今世紀初頭にイギリスの王墓発掘隊がみつけだしたもの。
だが、その人々はそれを持ち出せることなくすべてのものは息絶えた。
すべては彼らの心の闇に負けたがゆえ。
それを持ち出したのは他ならない双六当人。
「そういえば。杏子。何?」
「あ。宿題一緒にやろうとおもって」
「ほんと!?ならいっしょにしよっ!」
「ほっほっほっ。あとで何か差し入れするからの」
「ありがと~。爺ちゃん」
そんな会話をかわしながら、遊戯と杏は二階にある遊戯の部屋にと向かってゆく……


「う~ん。どうしてもここから先がいつもつまっちゃうんだよなぁ」
かちゃかちゃかちゃ。
とりあえず今日の授業の復習とそして明日の予習。
そしてきちんと宿題を済ました後にと再びパズルにと手をかける。
予習、復習が常に日常ついているのはもう一人の彼、
即ち【王】の教育ともいえる行動のたまものなのであるが。
かちゃかちゃと夜遅くまで挑戦している孫の遊戯の姿をそっと部屋の鍵穴からのぞく。
まだやっとるのか。
しかし…再びパズルが完成するとき…それは…遊戯にとってよいことなのか悪いことなのかわからんの。
なぜ遊戯が再び今現在パズルを組み立てられないのか知っているがゆえに複雑な心境の双六。
「こら。遊戯。あまり遅くならないうちにねるんじゃぞ?」
「は~い」
ひとまず無理をしかねない遊戯に声をかけ、遊戯の部屋から遠のく双六。


「遊戯くん。ちょっといいかな」
翌日の放課後。
帰路につく準備をしている遊戯のもとにとやってきた牛尾に呼び出され、
「牛尾さん。何ですか?僕にみせたいものって」
何のようだろ?
そんなことをおもいつつも、とりあえず断る理由ないので素直についてゆく遊戯。
「まあついてきたまえ。きっとよろこんでもらえるはずだ」
二人がならべばはっきりいって小さな子供連れの親子ほどの身長差がかなり目立つ。
そもそも遊戯の身長は小学生といっても過言でないほどに小さい。
それゆえに、私服などをきていたら高校生とは見られないのが実状。
素朴な質問を向けてくる遊戯に対し、淡々と言い放つ牛尾。
やがて裏校舎の人気のない場所にとたどりついた遊戯の目に映ったものは……
「いって……」
「う……」
「!?城之内くん!?本田くん!?」
数名の生徒に蹴られて痛めつけられた本田と城之内の姿。
すでにその体はけっこう痛めつけれているらしく二人して地面に崩れ落ちている。
そんな二人の姿をみて驚きの声をあげ、二人に駆け寄ろうとする遊戯であるが、
「どうだね?遊戯くん」
そんな遊戯の行く手をさえぎりながらも表情を変えることなく言い放つ牛尾。
「これって…一体……」
いったい全体何がどうなっているのか理解不能。
わかっているのは唯一つ。
それは本田と城之内がかなりの怪我を負っている、ということ。
「いったはずだよ。遊戯くん。この牛尾が君のボディーガードをかってでる。とね。
  だから制裁をくわえてやったんだよ。このいじめっ子にね」
遊戯の戸惑いは何のその、さも当然のように言い放つそんな牛尾に対し、
「そんな…牛尾さん。こんなのひどすぎるよっ!大丈夫?城之内くん、本田くん?!」
どうしてこんなことができるんだろう。
そんなことを思いながらも抗議の声をあげ、
自分を二人に近づけさせないようにしている牛尾の手を振りほどきそのまま二人にと駆け寄る。
「遊戯…てめえ…気がすんだかよ……」
そんな遊戯の姿をみて、非難めいた声をだす城之内であるが、
だがしかし、自分もわるい。
というのも心のどこかでは自覚している。
「え?…違うよ。僕がこんなひどいことを頼んだとでも!?」
そんな城之内の言葉をうけて、心がとても寂しくなる。
こんなのは今までに感じたことがない。
そしてまた、牛尾に対して何ともいえない感情がわきあがる。
「どけっ!遊戯!まだ制裁はおわったわけではないっ!」
二人をどうにかその場から助け出そうとする遊戯をそのまま突き飛ばす。
「…え?」
突き飛ばされた遊戯の瞳に映ったものは、
どげっ!
…っ!?
笑みを浮かべながらも城之内と本田に再び蹴りを加えている牛尾の姿。
「や…やめてよっ!もうっ!」
牛尾に突き飛ばされ、それでも牛尾に蹴られる城之内の姿を目にし反射的に二人の前にとでる。
そして二人をかばうように両手をひろげて牛尾に対して言い募る。
「おやおや。遊戯くん。こいつらをかばおうって言うのか?変なやつだな。
  今までの恨みをはらすチャンスなんだぞ?殴れよ、けれよ」
どうして自分をいじめていた相手をかばおうとするのか牛尾にとっては理解不能。
それもあるが、この気の弱そうな遊戯がどうしてこう反抗的に向かってくるのかも理解不能。
「友達に…そんなことができるはずがないだろっ!?」
きっと二人を背後にかばうように両手をひろげ牛尾をにらみながらもはっきりきっぱりと断言する。
そう。
友達にそんなことができるはずがない。
いや、友達でなくても他人を傷つけるなどとは。
この牛尾さんって何かんがえてるの!?
人の痛みは自分の痛みとして感じないの!?
どんどんと遊戯の知らない感情が心の中にとわきあがる。
それが何なのかは遊戯はわからない。
だが、それこそが遊戯に一つだけかけていたもの。
「…な…ともだち?」
遊戯のそんな言葉に思わず目を見開く城之内。
今まで散々遊戯をパシリ扱いしたり、いじめていた。
というのに。
そんな自分を遊戯はかばい、そして友達といった。
自分の心の狭さをみせつけられたようでかなりのショックをうけてしまう。
「ははは。おめでたいやつだな。友達だと?日ごろお前をいじめてバシリをさせてきた連中だぞ?」
「いじめなんかじゃないよっ!城之内くんは僕を男らしくするためにっ!!」
迷いのない、はっきりとした言葉。
それは心からそう思っていた、という証。
「まったく。変なやつだね。君は。まあいい。ところで遊戯くん。君にははらうもんはらってもらうぞ。
  ボディーガード料、しめて二十万だ」
だが、そんな遊戯の心の優しさは牛尾には理解不能。
それゆえに、変なやつ。
ですまし、一番の本題をもちだしてくる。
「そんな!?そんな大金なんてっ!」
表情を崩さぬまま、逆に笑みを浮かべたようにいってくる牛尾の台詞に驚愕した声をだす遊戯。
二十万なんて大金、普通の高校生が用意できるものではない。
というよりは、こんなこと遊戯は頼んだわけでもない。
何ともいえない理不尽な不思議な気持ち。
その気持ちがだんだんと自分の中をうめつくしてゆくのが漠然とわかる。
もし…この気持ちが僕の中を全部占めたら僕どうなっちゃうんだろ?
そんな疑問も遊戯の中にと浮ぶが、だがそんな遊戯の不安を吹き飛ばすかのように、
「おや。ならこの二人をもっと痛めつけないと気がすまないということかな?」
いいながらも、遊戯の背後にいる二人に対して殴るような格好をする牛尾。
「!!もうこれ以上二人に手をださないで!やるなら僕をやってよっ!」
二人をこれ以上、自分のせいで傷つけられるわけにはいかない。
友達が傷つくより自分が傷ついたほうがはるかにまし。
それゆえにこそきっぱりと言い切る遊戯。
他人を犠牲にするよりは自分自らを…というこの性格は【ユウギ】に共通するものであるのだが。
そんなことは今の遊戯にとっては関係ない。
「まったく。変とおしていかれてるぞ。おまえ。
  いじめていたやつをかばうどころか、身代わりになるとはな。
  まあいい、わかった。本来この俺は心優しいんだ。貴様の望みどおりにしてやろう。
  金を払わないとどうなるか前もってお前の体に覚えてもらう必要があるしな。
  本来、この私はイジメは嫌いなんだ。だからこれは警告なのだよ」
がっ!
そういうが早いが、小さな遊戯の体をがしっとつかみ、襟首をつかみあげて思いっきり殴る。
そのまま、抵抗するわけでなくやられっぱなしの遊戯を気が遠のきながらも視界にいれる。
何ともいえない苛立ちが、城之内たちの中にもわきあがる。
遊戯の口から血のようなものがはかれ、そのままぐったりとその場に崩れ落ちてぴくりとも動かない。
そんな遊戯を傍目にみつつ、
「まあこれくらいにしておくぜ。いいな。明日までに金をもってこい。二十万だ。
  約束を破ったら今程度の痛みじゃすまないぜ。もっと強烈な痛みをあたえてやる」
いいながら懐からとりだした小さな小型ナイフを取り出してぺろりと舐める。
すでに遊戯の意識はない。
「ははははは!」
笑いながらその場を後にしてゆく牛尾の姿。
牛尾の姿が見えなくなりしばらくして、
「うっ……」
「大丈夫か?本田……」
ようやくどうにか動けるほどに意識が回復したがゆえに身じろぎし呻いている本田に話しかける城之内。
「あ、ああ…だが……」
かなり殴られたが、それでも喧嘩なれしているので完全に動けないほどではない。
それより……
ふらふらする体を何とかおきあがらせる。
少し離れた校舎の下に完全に気を失って倒れている遊戯の姿が目にはいる。
何も抵抗することなく黙っていれば痛い目にあう必要は遊戯はなかったはずである。
それなのに自分達をかばって……
てっきり遊戯があの牛尾に頼んで自分達を闇討ちしたのかとおもったが。
よくよく考えてみればあの遊戯がそんな性格をしているはずがない。
ほんっとうに子供みたいな性格をしていて、人がよすぎる性格の持ち主なのだから。
自分達なら少々多少殴られたりしても耐性ができている。
だが…遊戯は……
完全に見れば遊戯は気をうしない、目覚める気配はなさそうである。
「…ちっ…くそっ……」
じぶんの卑小さがはてしなく恥ずかしくおもえる。
自分は自分の心をごまかすために遊戯の大切なものを捨てたというのに。
だが…遊戯は…そんな自分達を守ろうとして、力も体力もないのに……
「おい。本田。遊戯の家…しってるか?」
「え?お。おう」
とりあえずそのまま二人して怪我の手当てをすることもなく、ふらふらする体で遊戯を背負い、
完全に気をうしない目覚めそうもない遊戯を遊戯の家にと連れてゆく二人の姿がしばし見受けられてゆく――


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あとがきもどき:
薫:いじめられるシーン…あまり抽象的にはかいてません。
   というか、こういうシーンって自分の昔を思い出すなぁ…
   自分の場合はいくら蹴られようが、たたかれようが、絶対に手はださず。
   口で言い負かしていましが…それで、さらにやられるという悪循環……
   でも、いじめとかで命を自ら落とす。というのは気持ちはわかるけど、
   それっていじめている子をよろこばすことになるっ!
   という気持ちもてばどうにか耐えられるものですけどね(自分がそーだったし
   この遊戯に関しては原作にしろアニメにしろ、
   いじめられてても、自分の為にしてくれてること。
   という何とも素直な感性の持ち主なのでそういうのはないようですけどv
   でもこういう心優しい子が世の中…理不尽な目にあうんですよね…悲しいことに…
   ともあれ、次回で王様復活v
   それでは、また次回にてv

2007年8月12日(日)某日

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