まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

のんびりまったりとアニメと原作の矛盾をみくらべたらまあいろいろでてくる、でてくる(汗
まあそれはいわぬが花、ということなんでしょうけどね。
そ~いやこれのオレイカルコス編はおもいっきりオリジナルだよなぁ…(自覚あり
しかし何話までになるのかな?これ?
面白いからKCグランプリは出したいしなぁ(だからまて
ちなみに、ちらっとだしたアトランティス大陸。
それは現代から九千年以上前、といわれている伝説の出来事ですvあしからずv
その当時はアテムはアテムにあらず、ホル・アテン、でしたので~(かなりまてv
何はともあれゆくのですvではでは♪

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「君はいったい……」
目の前で起こった光景に思わず茫然としてしまう。
あれほどいた闇の住人が光とともにかき消えた。
自分の中で暴れていた闇の鼓動も光に触れると同時に落ち着いた。
とらわれていた二人を助け出し、表にでたとたん襲撃をうけた。
それらが一瞬のうちにと消え去った。
先ほどからみせている不思議な力といい、普通の子供、とはおもえない。
と。
ざわざわざわ。
何やらこちらに近づいてくる人の気配が多数。
「…げ」
それらが何を意味するのかを瞬時に悟り、
「と、ともかくここから離れよう」
助け出した二人の女性とリョウとアンズ、そして彼を入れての計五人。
馬に乗って移動するのには多少人数が多すぎる。
それゆえに、
「いでよ!ビャクヤ!」
カッ!
声と同時に現れる真白の虎。
しかしその体はかなり大きく目を見張るものがある。
『私に何か御用ですか?』
「「うわ。しゃべった!?」」
いきなり真っ白い虎が出現したのにも驚きを隠せないがさらにいうならばそれが人の言葉を話したことに思わず驚くアンズ達。
「このあたりの不浄な気配を風で浄化してほしい。それと申し訳ないが彼らを安全な場所までつれていってやってほしい」
確かにこのあたりの空気は淀んでいる。
『あなたさまはどうなさるのですか?』
「まだ俺にはすることがあるからな。しかしこれ以上民を巻き込むわけにはいかないから、頼む」
しかしこの虎…どうみてもおそらく虎、が敬意を示しているこの少年はいったいぜんたい本当に何者なのか。
『わかりました。ではそなたたち、我の背にのるがいい』
アンズ達の戸惑いは何のその。
しばしそんな光景がその場において見受けられてゆく……

~第21話~

お兄ちゃん、どうしたっていうんだろう?
とりあえずもう閉館時間間近。
しばらく前にやはり触ることすらできなかった金倉オーナーに頼まれて双六が部屋にまでもっていった。
貴重品なのできちんとキロクを残しておきたい、そういわれてしぶしぶながらも了解した遊戯。
閉館時間にオーナー室にと取りに行く、というので一応話がついている。
しかし、金倉の思惑はそれまでにすでに取引をおえて遊戯にはいくらかのお金をわたせば解決する。
そうおもっていたりするのだが、そんなことを遊戯が知るはずもない。
パズルを一度ひっこめるときに再び心の中にと戻り声をかけても返事がない。
扉も固く閉ざされたままでどうやらその意識はパズルのほうにと向けているらしい。
「では遊戯。儂は外でまっておるからの」
「うん。わかった」
万が一、不審な人物が入り込まない、とも限らない。
それに何よりも千年アイテムをもった人物が出てきたときにすぐに対応できる位置。
見れば大体その特性はわかる。
闇に属しているものか、かたまた光に属しているものなのか、くらいならば。
そんな会話をしつつも、すでに人気のなくなった美術館の奥にと進んでゆく遊戯と美術館の外にとでてゆく双六の姿。

暗闇の中人影のみが壁にと映りこむ。
美術館の奥まった場所にとあるオーナー室。
「くくく。わしの援助出資でファラオの墓が発見され、なおかつ千年パズルでひともうけできるとは。わしはついとる」
なぜか触るたびに電撃がはしったようになり、さらには動けなくなるほどの体がおもくなる。
それゆえに仕方がないので壁にとひとまず千年パズルをかけている。
この壁に指示をして武藤双六にここにおいてもらったのは他ならない彼自身。
パズルをみながらそんなことをいいつつも、
「しかし、なぜわしに触れることができん……」
それがどうにも解せない。
静電気、というわけでもなさそうである。
触れただけで力すべてが吸い取られるような感覚はおそらく木のせい。
そう自分自身で結論づける。
「そろそろだな」
時計をみれば閉店時間の十分前。
取引相手にはこの時間帯にくるように伝えてある。
「Mr金倉……」
トントン。
「おお、きたな。はいってきたまえ」
トントン、と扉がノックされるおと。
ようやくきたか。
そうおもい声をかけるとほほ同時。
その瞬間、部屋の中がいきなり暗くなる。
「何だ?停電か?」
まだ日もくれてない、というのにこの暗さはどういうわけか。
キィ。
そんなことをおもっていると目の前の扉が静かに開かれる。
ドサッ。
それと同時に倒れこむように部屋の中に崩れ落ちてくる取引相手の体がひとつ。
その表情から何かとてつもなく恐ろしいものをみたかのようなそんな感じをうけれもする。
が、その顔に生気がひとつもともってないのはいったいぜんたいどういうわけか。
「な、何ものだ!?きさま!?」
そんな倒れた男性に目もくれることもなく、部屋の中にはいってくる一人の男性。
全身を真っ白なマントとローブでつつんでおり、頭には白いターバンがまかれている。
その胸元にはかわったネックレス。
そしてなぜか手にしているひとつの天秤。
ぱっとみた目の感じからしておそらくエジプト人であろう、というのは予測はつくが。
まったく見知らずのものがはいってきて驚きの声をあげない人間などいない。
「われは三千年の墓守りの血族。アヌビスの使途……」
「あ、アヌビスの使途…死者の神、だと!?な、何を馬鹿な」
そんな金倉の言葉に静かに感情のこもっていない声で淡々とその人物はいってくる。
アヌビス。
それは古代エジプトにおいては死者の神、といわれている存在。
その使途、といきなり現れた目の前の人物はいう。
それゆえにはき捨てるようにいいきる金倉。
「オマエのけがれた欲望によってまたひとつ王家の谷の神の眠りの領域が冒された。
  よってキサマをこの場で裁く」
淡々とそれでいて目の前の人物はだんだんと自分のほうにと近づいてくる。
「わ…わかったぞ!きさま、エジプト政府の回し者だな!?わ…わしは財宝の密売などしらんぞ!?」
裁く、といわれてふと思い当る。
自分はたしかに密売をしている、と疑われてエジプト当局から目をつけられている。
あの頭の固い政府のものが誰か送り込んでも不思議ではない。
そもそもただ飾っていただけでは何にもならない。
とは金倉の言い分。
ほしがるものに高値でうって何がわるい。
それが彼の信条でもある。
それが悪いことだ、などと彼はまったくもっておもってなどいない。
彼の心情は世の中、金がすべて、なのだから。
そうわめく彼の目の前の机にいきなり何かがコトリとおかれる。
みれば男が手にしていた天秤を机の上に置いた模様。
ごくありふれた普通の天秤。

「これは?」
こんなものをおいてどうしよう、というのだろう。
この男は。
それゆえの問いかけ。
死者の書ブシュコスタシア。第百二十五章最後の審判の場面をしっているな。これはその【心理を図る天秤】だ」
伊達に古代の遺跡の密売をしているわけではない。
知識がなければあいてにもなめられる。
しかし死者の書?
最後の審判?
この男、頭がおかしいのか?
今のこの科学の世の中、古代の妄想をさも現実のように言い放つなどとは。
古代エジプトにおいては死者の魂は冥界の王オシリスの前でその罪を裁かれる、といわれていた。
そのときにおこなわれるのが魂の裁判。
天秤の片方には真実の羽を、もう一方には死者の魂をおいて罪の重さをはかるという。
そして罪の重さが羽よりも重かった場合、そのものは怪物アメミッドの餌食となる。
古代においてはたしかにそう信じられていたのも事実。
だが今は科学の発達している近代世界。
そんな話をもちだしてくるなどこの男、どうかしている。
「心理を図る天秤…これでわしの罪をはかる、というのか?」
それゆえに小馬鹿にしたように言い放つ。
しかしそれでも多少声が震えているのは視界に写る、どうみても息をしていない取引相手の姿。
さきほどから部屋に倒れこんできたままでぴくり、とも動いていない。
…何かがあった、のは明白。
それゆえにわけがわからないがゆえにおそれもまじる。
「これからゲームをする。闇のゲームだ」
「ゲ…ゲーム?」
闇のゲーム。
それは確か古代においておこなわれていた、と聞いたことがある。
それが何をいみするのかは金倉にはわからない。
壁画にはたしかにそのことはかかれているが詳しくは書かれていないので現代人には意味不明。
いいつつも頭のターバンについている鳥の羽のようなものをすっと取り外し天秤の片方にと載せてくる。
羽を置かれた状態になっても天秤は水平を保っている。
「この片方のさらに真実の羽マァトのはねをおく。みてのとおり今はつりあっている状態だ。
  そしてこれからいくつかの質問をする。もしお前が真実を答えぬ場合もう片方の皿に重さが加わってゆく。
  それはオマエの罪の重さなのだ。その皿が地面に触れたら罰ゲームがまっている」
しかし片方の皿には何ものっていない。
これで罪を図る…とは。
無罪放免もいいところ。
しかし罰ゲーム、というのが気にかかる。
「では最初の質問。…深い井戸に少女がおちた。
  しかしお前の足元には少女の身に着けていた金の指輪がおちている。…さあ、どうする?」
何かおちゃらけた雰囲気ではない。
この目の前の男は何かこう普通でない感じがする。
こんな男ととっとと質問にこたえてかえってもらうに限る。
そう思っている最中の男の問いかけ。
ここはそのまま見捨てる、が自分の行動だが男の手前助けるといったほうが好まれるであろう。
それゆえ、
「…た、たすける。その少女をたすけるぞっ!」
意に反したことを即座に回答する金倉。
何をどうしたのかはわからないが、おそらくあの男を殺したのはこの男なのであろう。
ならば怒らせないほうが無難、というもの。
さきほどから緊急用のブザーを押しているが何の反応もない。
停電中だとしても緊急用のブザーなどは起動しているはず、なのに。
ぐらっ。
金倉が答えると同時に天秤の片方…何ものっていないほうがぐらり、と重くしたにと傾く。
「な…なぜだ!?わしはうそをついてないぞ!?なぜ何ものっていない天秤がかたむくんだ!?」
何ものっていない天秤がかたむく、などとはありえない。
ならないブザー。
恐怖の表情をひきつらせて死んでいる取引相手。
何ものっていないのに傾く天秤。
人は、理解不能なものなどに直面すると恐怖を感じる。
まさに今、金倉の心理もその状況。
「では、次の質問……」
相手の質問に答えれば答えるほどにどんどんと沈んでゆく何ものっていないはずの皿。
何ものっていない皿がうごくなどありえない。
何か仕掛けがあるはずなのだがそれすらもわからない。
「な、何か仕掛けがあるはずだっ!罰ゲーム…とは一体なんなんだ!?」
何か得体のしれない恐怖が支配する。
ありえない、とおもっているのに本能が恐怖を覚える。
「いいだろう。最後の質問にいくまえに罰ゲームを教えよう。それはきさまの心の中にある……」
言葉を言い終わるとほぼ同時。
金倉が座っていた椅子がいきなりぐにゃり、と柔らかく変化する。
まるでドロドロにとけた何か得たいのしれないもの。
たしかに自分は椅子にすわっていたはずなのに、今や自分は視たこともない醜い怪物に座っている状況。
しかも見上げれば魔物のクチが自分を今にも飲み込まんとして両手をしっかりと押さえているのはこれいかに。
「アメミッドだ。お前の心の部屋に住みついた魔物……」
何だか男がそんなことをいっているが金倉は自分のみているものが信じられない。
しかし自分がたしかに魔物につかまっているのは紛れもない事実なわけで……
恐怖と混乱で何が何だかわからなくなる。
「では、最後の質問だ。お前は神の領域を冒し輝きに満ちた宝を金にかえ私腹をこやしたか?」
男が質問してくるが、それより魔物の恐怖のほうがうちかつ。
「や…やめろぉぉ!金なら払う。いくらだっ……」
とにかくこれをどうにかしなければ自分の命はない。
いくら払ってでもこの現状を打破しなければ。
恐怖と混乱に陥りながらも懇願する。
が。
「…お前の心の部屋に真実はない。あるのは欲望のみ。よって裁きをうけるがいい」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
その懇願は逆に彼を追い詰める結果としかなりえない。
男の言葉と同時に金倉をつかんでいた魔物が大きくクチをあけそのまま彼をのみこんでゆく。
それと同時に金倉の断末魔ともいえる叫びが部屋の中にと響き渡ってゆく。
「人はみな、心の部屋をもっている。私の千年錠をつかえばその部屋をあけることができる。
  お前の心の部屋は金と欲望の臭気に満ち溢れている。それゆえにそこは魔物の格好の住み家となる。
  お前はその罪悪によって自らが生みだした幻影に喰い殺されたのだ」
天秤においた羽をとりターバンに再びつける。

まさか闇のゲームをしかけるとは。
しかしそれで納得がいった。
あの男がかなり闇に染まっていたわけが。
どうりでオーラが曇っていたはずである。
パズルの中からしばし様子をみていたが、本当に裁きを行っているらしい。
しかしそのままアメミッドを出現させるとはおもわなかったが。
そもそもやるならそのままその肉体ごと闇に沈めればよい。
今のこの時代、死体などが発見されたら騒ぎになる、というのは目の前の男はわかっていないのだろうか?
そんなことをふと思う。
とりあえずこちらを気づかれないようにはしていたが、相手の正体を探るのが先決。
今までかけていた目くらましの術をすっととく。

「…!?」
ふと壁にと目をやるとそこには金色に輝く逆三角の物体が壁にとかけられている。
「な…これはまさか…千年パズル!?」
しかも組みあがった形で。
三千年の間一度も完成したことがない、といわれていたのに、なぜここにこれがあるのだろう。
この国にパズルを解いたものがいる、というのか?
いったい何ものが!?
心の中で自問自答をしつつもパズルに手を伸ばす。
ひんやりとしたその感触はまるで古代エジプトの王の墓の空気を連想させる。
確かめねばならない。
このパズルを解いた人物を。
そうおもいつつも壁にかけてあるパズルを手にし部屋をあとにしてゆく男の姿がみうけられてゆく――

「え~と。たしかオーナー室は…っと」
さすがに閉館時間をすでに過ぎただけのことはある。
すでにもうひとはいない。
どちらにあるのかは感覚でわかる。
それゆえに迷うことなくそのまま奥にあるオーナー室に続く道をすすんでゆく遊戯。
と目の前から何やら先ほどのエジプト人が歩いてくるのが目にとまる。
が、問題なのはそこではない。
男が片手でもっているのはまぎれもなく……
「あ。僕の千年パズル」
普通にもっててこの人、平気なのかな?
お兄ちゃん、何か考えがあるのかな?
直接に触れたら心の悪意がたちどころにその人物の潜在意識が反応してしまうのが千年パズル。
闇の力に耐性のない人間が触れればまちがいなく悪意に飲み込まれかけてしまう。
そのことを遊戯は一応知っている。
「ま…まさか……」
先ほど美術館の中で出会った少年の言葉に思わず目を見開きつつもおもわずつぶやき、
「これをといたのは…君か?」
戸惑いながらも問いかける。
「え?あ。うん。だけど何でお…いや、パズルもってるの?」
つい、何でお兄ちゃんをもってるの?
といいかけてあわてて言い直す遊戯であるが。
そんな馬鹿な……
だが、パズルを解いたものには、力が宿るという。
わが一族と同じ力が。
だとすれば、この少年には……
確かめねばらなぬ。
今、この千年錠を使って、この少年の心の部屋を具間みる。
そんなことを思いつつもすっと目を閉じる。
それと同時、首にかけている♀の形をした鍵のようなものがほのかにひかる。
……?かぎ?
爺ちゃんがよくいってたのとよくにてる?
これってもしかしてやっぱり千年錠?
千年アイテムが光を放つのは当たり前。
ゆえに驚くこともなくそんな光景をのんびりとみている遊戯の目の目の前で、
いきなり男はその場につったったままうごかなくなってゆく。

鍵の力をつかい心の中にと入り込んだ。
「な…なに!?」
思わず驚愕の声が漏れるのは仕方がない。
こ、この少年の心の中には二つの部屋がある。
ありえない。
普通ひとつの心にはひとつの部屋しかないはずである。
多重人格者の部屋にしても部屋の中にいくつかの部屋がある、という形をとっており、
基本はひとつの心の部屋でまとまっている。
始めから別々の心の部屋の扉があるなどありえない。
開いているひとつの部屋は、おもちゃが散らばってはいるが純粋そのもの。
邪念がまったくない。
ここまで澄み切った心の部屋の持ち主は物心つかない小さな子供がもちえるもの。
そして…もうひとつの部屋は……
扉の正面には見慣れた第三の目を現す、ウジャト瞳の紋様。
そのまま、そっとその扉に手を触れる。
と。
ギィィ……
手を触れると同時に力をいれてもいないのに自然にその扉が内にとひらいてゆく……

ぴくっ。
?誰かがお兄ちゃんの部屋にはいった?

どうしてお兄ちゃんの部屋に?
もしかして……この人が?
いきなりその場にしゃがみこんで動かなくなったエジブト人。
それとほぼ同時に心の部屋に誰かが無理やり入り込んできたのが【判る】。
しかし問題はそこではない。
と、とにかく僕もいってみよ。
何かほっといたら大変なことになりそうな気がする。
ユウギの身になにがあっても遊戯は気が気でない。
それゆえにそのまま遊戯もすっと意識を心の中にとむける。
それと同時に遊戯の体もまたその場に崩れ落ちるような格好になるものの、
エジブト人の上にのっかる形になるので床に直接、というわけではない。
あとには、その場にうずくまるエジプト人とおもわしき男性とそれにのっかかるカタチで意識を失っている遊戯の姿が、
美術館の一角においてみうけられてゆく――

「ほおう。俺の部屋を訪れるものがいるとはな」
こ…これが先ほどの少年!?
さきほどとまったく雰囲気が違う。
いや、この雰囲気はむしろ……
まさか、そんな。
その可能性を頭の中で否定する。
「何ものだ?あんた?」
低くそれでいて有無を言わさない口調の問いかけ。
私は過去にいろいろな心の部屋をみてきた。
通常、ひとつの心の中には心の部屋はひとつしかない。
なのに…この少年のもうひとつの心の部屋はどうだ?
まるで、重たく…まるで、古代エジプトのファラオの墓のような……
そこまでおもい、はっとなる。
まさか…そんな、まさか……
「あんたがどんな力をつかって俺の部屋を訪れたのかはわからないが。何の目的があってか聞かせてもらおうか」
何の力。
というのは視れば一目瞭然。
なのでなるべく彼が近くにいるときには表にはでていかなかったのだから。
それでも確認をこめて問いかける。
目の前の人物…否、人ではないのは気配からして明らか。
判っていても問いかける。
無断で他人に心の部屋に入ってこられれば面白くない。
それは誰でもいえること。
「ふっ。君からすれば私は招かざる客。その質問に答えのがせめてもの礼儀だろうな。
  私は君がもつ千年パズルの力の秘密が知りたくてここを訪れた」
ぴくっ。
その台詞に警戒を強くする。
「千年パズルの存在を知っているのか?」
彼は知っていても不思議ではない。
そもそも彼はかの石板の守護者のはず。
それを知っている、というソブリをまったくみせずに問いかける。
そんなユウギの問いかけに、
「千年パズルは闇の千年アイテム。古代エジプトの時代から三千年もの間、王家の墓に伝わってきた。
  それらは古代のファラオに仕えるものたちによって王家の墓を暴くものたちを裁くために産まれたもの。
  そうベルエムフルの書にそう記されている」
それはかなり事実を歪曲した記載だが。
それらが曲解している事実だ、と彼は知っている。
知ってはいるがわざわざ真実をいうことではない。
そうすれば闇の力をもとめたものが何をするのかわかったものではない。
そう。
かつての古代人のように。
「それで?ここにこれたのはその千年アイテムの力のおかげ、ということか」
彼の首からさがっている品は、かつてシモンがシャダがその主であった品。
見間違えるはずがない。
「闇の千年錠の力。これは人の心の部屋の扉を開ける鍵。部屋をみることによって、その存在の全てを知ることができる。
  性質、コンプレックス、潜在能力。そしてもうひとつは闇の千年秤。裁かれしものの、罪の大きさをはかるもの」
人の心に巣食う魔物を呼び出す鍵ともなる。
あえてその使い道をきちんと説明していないのか、はたまたわかっていないのか。
そんなことはどうでもいい。
「それで?」
「だが、私は千年パズルの力はしらない。それを完成させたものにいかなる力が宿るのか」
「その答えを得るために無断で俺の部屋にはいりこんだのか」
「そのものの部屋をみればいかなる力が宿ったかがわかる。私はそれを見極めたいのだ。
  そして必要ならばわが一族にとりこむ」
千年アイテムは持ち主により闇の力を増すこともあれば光の力を増すこともある。
それを見極めるのも自分の役目。
「まあ、あんたがどこまで真実をいっているかどうかは別として。
  まあいいさ。確かに。パズルの力はこの部屋のどこかにある。だが簡単に教えるわけにはいかないな」
それでなくても見世物にされて多少気分を害していたというのに。
さらには間近であんな負の心をもったものが自分のそばにいればなおさらに。
ゾークの波動を封じ込めるのにけっこう気をつかっていた最中、いきなり入り込んできたこの男性。
少しばかりストレス発散しても文句はないはず。
そんなことをおもいつつ、
「わかってるな。ゲームの時間だ」
淡々と表情ひとつかえずに問いかける。
自分の予測があっていれば目の前のこの人物…否、この精霊の正体は……
しかしそれはわざわざ教える必要のないこと。
そんなユウギの心を知るはずもなく、
よっし。
心の中で手ごたえを感じてうなづくこの青年。
「あんたが勝てば千年パズルの力の秘密を教えよう。ルールは簡単だ。
  この俺の部屋の心の領域のどこかに俺の本当の心の部屋がある。あんた、それさがしだせるか?」
その真実の部屋はユウギですら見つけられない。
その真実の部屋はすなわち、ゾークを封じ込めている場所でもあるのだから。
それらの鍵は遊戯の記憶にかかわるもの。
すなわち、彼の真実の名前に。
ゆえに自分の記憶から名前を消し去った。
自身の力と名前を鍵としてゾークの魂を地上にもたらせないために。
「ふふ。ちなみに、いい忘れていたが、私にはある能力がある。それは人の心を自由に操ることができる。という能力がな。
  もちろん、人格を破壊することも。な。このゲーム、受けてたとう。そして君の本当の部屋を見つけ出す」
「ふ。千年錠の力に耐性がなければそれも可能だろうな」
「なに!?」
自分はそれらが千年錠の力だ、とはいっていない。
「そう簡単にいくかな?これはあんたがおもっているより危険なゲームだぜ?」
ユウギがそういうと同時に、部屋全体が右も左も、そして上下すらもない階段と無数の部屋にと変化する。
「こ…これは!?」
いきなりのその部屋の変化に戸惑いを隠しきれない。
「どうした?あんたがうごかないとはじまらないぜ?」
一言で言い表すならば、心の迷宮。
その見渡す限りの無数の扉のひとつが真実の扉のはず。
「…まずは、ここから……」
とりあえず、近くにあった部屋をあけるといきなり頭上より鉄球が落ちてくる。
そのまま心の部屋にはいっていれば確実につぶされていた。
「ふ。今のでおじけづいたか?このぶんだと、本当の部屋への道のりは険しそうだな。頑張れよ」
……罠か。
しかし罠があるからといってあきらめるわけにはいかないのだ。
…パズルの力を見極めるために。
片っぱしからそのまま扉に手をかけて無限ループともいえる迷宮をひたすらに進んでゆくことしばし。
気配をさぐりだす為に、全ての神経と精神を集中させれば必ずわかるはず。
なのに視えない。
こんなことはいまだ一度足りとてない。
ありえるはずもない。
…それが千年アイテムの所持者であったとしてもありえない。
それらの耐性をもっている存在は…それは……
いや、そんなまさか。
ならばすんなりと心の部屋にいれさせてはもらえないであろう。
そんなことを思いつつも意識を集中させつつ扉をひらいてゆく。
が、その扉のすべてのことごとくはすべて罠。
この少年の心はかたくなに他人の侵入を阻む。
だが、それでも私は知りたいのだ。
いや、知らなければいけない。
真実を。
千年パズルの力の謎を。
主が命をかけてまで守り通したその謎を。
精神を集中すると、やがてひとつの光らしきものが見えてくる。
そのまま、感覚に誘われるままひたすらに、上や下ともわからない階段をとにかく進んでゆく。
目をつむって進んでゆくことしばらく。
目の前に瞳らしき紋様が描かれている扉が。
「……ここか」
ぎいっ。
そのままその扉をそっと開く。
中ははじめの部屋と同様。
いや、異なっているのはその中心にあるひとつの椅子。
まるで…そう、玉座のようにその椅子の周囲には何らかしらの文様が描かれているのが見て取れる。
「よう」
そしてその椅子にそのまま座っている先ほどの少年…ユウギの姿が目に入る。
そのまま、彼の姿があったことにより、ここが真実の部屋、とおもい部屋の中にそのままはいってゆく。
が。
ふっとユウギが笑みを浮かべたのをみてとり、
「違う!ここも罠!」
がらっ。
それに気づくよりも先に、足元の床が一気に崩れ落ちる。
「人の心を覗こうなんていい趣味、とはいえないぜ」
かろうじてその場に残った床にとしがみついて、奈落の闇に落ちそうになっている男性にと言い放つ。
これまで彼が明けた扉はすべて彼の心を試すもの。
この迷宮は入ってきたものの心をそのままに反映する。
ゆえに相手の本質も見極められるというもの。

くっ。
この闇におちたら、私の精神は永遠に…っ!
かろうじて片手でたもっている腕にも力がはいらなくなってきている。
したをみればそこのみえない無限の闇。
おちれば永遠に自分の精神は闇の中に封じられてしまうであろう。
だがしかし、まさか封身をとくわけにはいかない。
彼の真実もわからない、というのに。
と。
「ああもう!やっぱり!何やってるの!お兄ちゃんっ!」
何やらどこかで聞いたような声が。
「なんだ。遊戯。お前もきたのか」
その姿をみて、あきれたように言い放つ。
が。
「きたのか。じゃないよ!この人が何か無理やり心の部屋にはいったような気がしておいかけてきたけど。
  お兄ちゃん、何やってるの!?」
気になってきてみたはいいものの、やはりというか何というか。
それゆえにユウギにと問いかけている遊戯の姿。
「そうはいうけどな。遊戯。こいつは千年アイテムの力をつかって人の心に勝手にはいりこんできたんだぞ?」
人の心に勝手に入ってきてこれだけですませているのだからかわいいものである。
そもそも本来ならば心の中に入ってこようとした時点で【力】にほとんどのものが負けて消滅してしまう。
その力を抑えて迎え入れたのでなければまちがいなく彼もまた消え去っていたであろう。
彼のもつ本来の力の前にはすべてのまやかしも小細工も通用しないのだから。
「そりゃ、元爺ちゃんのもってた錠の力でだろうけど。だけど!下手したらこの人まで闇にとらわれちゃうじゃない!」
闇に飲み込まれて戻ってきた人物をいまだに遊戯は知らない。
「こいつはそのあたりのことはわかってるはずだが?」
「もう!そういう問題じゃないって!…ほら!お兄ちゃん!手伝ってよ!」
予測通りの反応というか、本気で始末しようとしているのならばこんな廻りくどいことはしない。
というのは遊戯もわかっているであろうにどうしても相手を心配してしまうのは遊戯の心が澄んでいるからこそ。
そんな遊戯の言葉におもわずふっと笑みを浮かべる。
そんな二人の姿を茫然として眺める入り込んでいる男の姿。
何やらいいつつも、いきなり登場したさきほどの少年。
それともう一人の少年との言い争いを驚くようにしてみている彼。
ありえない。
ありえるはずがない。
心の中に二つ部屋があり、ましてやその人格がそれぞれに意見を交わすことができるなど。
「お兄ちゃん、もしかして腹立ちまぎれにこの人に闇のゲームしかけたんじゃない?」
うっ。
確かに多少のストレス発散というか遊び心があったのは事実。
それゆえにおもわず言葉につまる。
「あ~!!やっぱり!そんなに展示されたの嫌だったの?でも、お兄ちゃん。
  昔でそういうのに慣れてたんじゃないの?」
ファラオは常に人の上に立ち、人々を導いていた存在。
常に周囲の目がそそがれていたことを遊戯は祖父からきいて知っている。
「それとこれとは話が別だ。あの男たちはかなり負の心をもってたからな。
  かといって闇の力をつかえばシモンにも迷惑がかかるからどうにか抑えてたのもあるしな。
  これでもパズルをもって発動しないようにかなり抑えていたんだぞ?」
多少ぶすっとしながらも、遊戯とともに手をさしだしているユウギ。
そもそも抑えていなければ力に反発して彼がかけている術もさくっと消されていたであろう。
「とりあえず。この人とは別件でしょ?つかまって。ごめんね。お兄ちゃんが無茶したみたいで」
「遊戯。謝る必要はないぞ。こいつが勝手に人の心に入ってきたのが悪い。
  むしろ感謝してほしいものだな。本来ならば入り込もうとした時点で消滅だぞ?」
一体……
同じ姿をしている少年が二人。
だが、雰囲気や身長、といったものがまったく異なる。
世の中には、多重人格者、というものもいる。
それは知っている。
だが…これは……まさか、この彼ら…この御方、達は……
もはや遠い日の出来事でもあるがゆえに、わすれかけていた感覚。
だが、それが彼自身の存在意義。
戸惑いながらも差し出された手を、かろうじて床をつかんでいた手とは逆の手で握り返す。
みれば、床をつかんでどうにか奈落の底におちないようにしていたが、
その手をもう一人の人物が握っている。
そして、そのまま息もぴったりあわせて穴の開いた床から引き上げる二人の遊戯達。
「き、君たちは……」
戸惑いの声を彼がかけるのとほぼ同時。
「そういえば、あなたの名前は?お兄さん?でもよかった。闇の中におちていかなくて」
にっこりと微笑みながらそんな彼にと問いかける遊戯。
名前がわからないと呼ぶのに困る。
それゆえに問いかけたのだが、
「え?私は…シャーディー……」
彼がそう名乗ったのその直後。
『ファラオ。遊戯殿。人が近づいています』
ふと、二人のみに聞こえるようにと声がしてくる。
「?遊戯。お前の体は今どうしてるんだ?」
「たぶん。美術館の床にそのまま横になってるとおもうよ。
  とりあえず、部屋にはいったときにマハードさんが出てきたのでお願いして見張りたのんどいたんだけど」
マ…ハード?
まさか…?
その名前には覚えがある、シャーディー、となのった男性。
そう。
それは、今ではかの御方の魂を保護しているはずの精霊の名前と同一のもの。
「すると。遊戯の体は今……」
すっと意識を表にむけてみる。
たしかに、床にこてん、と崩れるように横になっている遊戯の姿が目にはいる。
このままでは金倉の死因に遊戯がかかわっている、ととらえられかねない。
まだあの人間の死体はみつかっていない。
警備員や第三者が来る前にとにかくあの場から遊戯を離すのが先決。
「ちっ。アレに遊戯がかかわってる、とかおもわれたら厄介だな。
  シャーディー。とかいったな。今後は勝手に人の心の中にはいらないことだな。次は容赦しないぞ?」
そう、背の高いほうの何ともいえない雰囲気のほうの少年。
すなわち、ユウギがいうと同時。
かっ!!
部屋全体をまばゆいばかりの光が覆ってゆく。

「こ…これは……」
はっと目がさめると、そこにいたはずの少年の姿もない。
そもそも、自分は自分から表にでた記憶はない。
つまりは、あの少年の力によって追い出された、ということに他ならない。
少年がどこに消えたのかかなり気になるが、だがそれよりも、こつこつと近づいてくる人の気配のほうが先。
そのまま、すっとその場から闇にと溶け消える。

「……おや?ファラオ?遊戯?」
ふと、博物館の少し外で遊戯を待っていた双六が声をだす。
周囲には人の気配がないからいいものの、
「あれ?爺ちゃん?」
ふと気づけば、そこは外。
さっきまで博物館の中にいて、心の部屋で会話してたのに。
遊戯がそうおもうものの、すぐさまにとある可能性に気づき、
「って、お兄ちゃん?いきなり肉体ごとこの場にとばしたの?何で?」
滅多にそんな強制的のようなことはしないユウギなのに、だからこそ気にかかる。
『あのままあそこにいたら厄介なことになりかねないしな。
  しかし、遊戯、ほいほいと他人を信じるのはいいが警戒は大切だぞ?』
それでなくても今は闇が濃くなってきている。
下手に刺激をうけて遊戯の肉体が先に目覚めでもすればそれは格好の的となってしまう。
遊戯の肉体、すなわちそれは【王】の肉体と同等、なのだから。
『まあ閉館後もずっといたら何かと面倒だしな。それとシモン。あの吉森という人物はどこにいる?』
「吉森教授ならば童美野大学にもどっているはずですがの?」
周囲に人がいないがゆえに普通に会話をしている彼ら達。
今の現状は遊戯の横にユウギが姿を現している状態。
すでにかの存在の気配が周囲にないからこそできること。
『あいつはおそらく吉森のほうにもいくはずだ。一度戻ってそれから出向いたほうがよさそうだな』
「え?え?お兄ちゃん?どういうこと?」
遊戯にはその意味がわからない。
「…いったい何があったのです?」
闇のゲームが発動したのはわかっている。
千年鍵がつかわれたことも。
かの波動は生まれ変わっている今とて忘れるものではない。
『まずはここから離れよう。いでよ。旅立ちの扉よ』
ゆらっ。
ユウギの声に従い二人の前にいきなり扉が出現する。
わざわざ扉を出現させるなどどうやら本当に何かがあったらしい。
すなわちそれはここに長居をすれば面倒なことになる、というのを暗に示している。
「んでは一度もどってから大学にでむくとしますかの」
「ねえ!お兄ちゃん!爺ちゃんも!僕にもわかるように説明してよ~!!」
一人よく意味のわかっていない遊戯の抗議の声のみがその場に響き渡ってゆく。
そんな遊戯の声は何のその。
彼らは扉をくぐりその場を後にしてゆく。
彼らがいなくなったそのあとで美術館にて騒ぎが持ち上がったことは…遊戯は知るはずもない……

「美穂ちゃん。もう遅くなるからやめたほうがよくない?」
「だから。本田君は先にもどっていていいってば」
「そういうわけにはいきませんっ!」
さくっといわれて即座に反応する。
美穂を家に送り届けるために一緒にかえれたのは嬉しいのだがその途中にて美穂の気がかわり、
再び美術館にと向かっている野坂美穂。
当然美穂を当人いわく守るべく本田ヒロトもまた同行しているのであるが。
ちらりと時計をみればすでにもう五時を回っている。
おそらくもう美術館は閉館しているはずである。
「だけど。もしかしたら閉館してたら展示品を直接さわらせてもらえれるかもしれないし?」
あの大きなルビーの首飾りのことが頭から離れない。
ぜひ一度身につけてみたい、とおもうのは女の子ならば誰でもおもうこと。
ざわざわざわ。
「「?」」
そんな会話をしつつも美術館にと再び舞い戻るとなぜかそこには人だかりができており、
しかも多数のパトカーの姿や警察官の姿が目に留まる。
美術館の出入り口付近には黄色いロープまでもがかけられている。
「?あの?何かあったんですか?」
とりあえずそのあたりにいる男性をつかまえて戸惑いながらも問いかける。
「ああ。何でもここの美術館のオーナーが死んでいたらしいぞ」
「ファラオの呪いよ。きっと。いやぁねぇ。そんな品展示してて大丈夫かしら?」
どうやら野次馬であつまっているらしき人々がそんなことをいってくる。
「え?しんだ…って、嘘でしょ!?」
「え~?何何?」
死んだ、という言葉に驚いて思わず大きな声をだす本田に対し、よく意味がわかっていない美穂が首をかしげてといかける。
「見回りの警備員さんが発見したらしいのよ。まだ詳しいことはわからないけどね」
遊戯がユウギの力にて表にでてしばらくしたのち。
巡回の警備員がいつものように金倉に指示を仰ごうと部屋を訪れそこで死んでいるオーナーを発見した。
「何でも部屋にはもう一人、別のひとの死体もあったらしくて。警察は事件性をうたがっているみたいだけどね」
机につっぷすようにして倒れている金倉オーナーと、床にころがっている一人の男性。
それぞれに外傷はみあたらなかったものの共通することはそれぞれ恐怖の表情がこびりついているまま、
目を見開いて死んでいる、ということ。
もっともそこまで詳しく警察は発表していないので野次馬達は知るよしもないが。
が、しかし、情報、というものはどこからともなくもれる。
すでに目撃した第三者からそのことが野次馬などに伝わりちょっとしたざわめきが大きくなっているこの現状。
「外傷はないけどそれぞれが何かに恐怖したような顔をしてたっていうんだから、絶対に呪いだね」
「「呪いって……」」
もしもそうならば今日、あのミイラをみた自分たちはどうなるのだろう。
そんなことをおもいつつも思わず顔を見合わせる本田と美穂。
「…ねえ。本田君。杏達はしってるのかな?」
「そ、そうだな。…連絡しないとな」
ついさっきまであっていた人物である。
無関係、とはいえないであろう。
「あ。刑事さん、あの子たちですよ。オーナーと昼間話されていたのは」
ふと美術館のチケット売り場の女性が本田と美穂の姿に気付いて何やら横にいる刑事にと話しかける。
今日の金倉オーナーの様子を誰か知っている人はいないか、というのでいろいろと警察も聞き込みしてまわっている。
いきなり指をさされて戸惑うものの、
「失礼。この人からきいたんだけど。君たち、今日ここのオーナー。
  金倉氏とあったらしいが何か気付いたこととか、かわったこととかおもいつかなかったかい?」
本田と美穂を黄色いテープの中にと招き入れ簡単な事情聴取をとりはじめる。
「いえ別に。ねえ何もなかったよね?本田君」
「え。ええ。俺達は吉森教授に誘われてこの美術館の展示品を今日みにきただけでして」
いきなり警察に問いかけられて戸惑いつつも答える美穂に問われて素直にこたえる本田の姿。
「あのあの。一体何があったんですか?あの美術館の館長さん。
  だって美穂達とわかれてからそんなに時間たってないとおもうんですけど」
好奇心が勝り目をキラキラさせて問いかけている美穂。
「あ~。それについてはノーコメント、だ。まだ調査中だからな。君たち、また何かきくかもしれないから。
  えっと、君たちのほかに一緒にいた人たち、というのは……」
ごくごく簡単な事情聴取。
簡単なことだけきいたのちに警察から解放される二人であるが、
「ねえねえ。杏達もこのことしってるのかな?」
「そうだな。連絡くらいしたほうがよさそうだな」
いいつつも、ぴっ、と懐に入れていた携帯電話の電源をいれてゆく――

「お父さん。あまり遊戯を遅くまで連れまわさないでくださいよ?」
「わかっておるわい。花蓮。じゃあいってくるの」
「いってきま~す。お母さん」
『花蓮母上、いってきます』
ユウギにとっても花蓮はある意味で母親同然。
それゆえに彼女を呼ぶ時にはいつも【母上】と敬意をこめて呼んでいる。
一度旅立ちの扉にて家にと戻ったのちに再びでかけている彼ら達。
「そういえば。ファラオ。あの精霊の正体は見極められましたかの?」
バスに乗り込みながらも古代エジプト語にて問いかける。
「あの男の人って精霊だったの?何か普通と違った感じはしたけど」
そんな祖父の言葉に思わず驚きの声をあげている遊戯とは対照的に、
『まあな。とりあえずヤツの心を試してみた。直にパズルに触れさせてその真偽も見定めたがな。
  やはりあの彼は父上が石板の守護者として創り上げた存在に間違いはなさそうだ』
おそらく彼のほうはこちらがそのことに気付いた、というのには気づいていないであろう。
それは確信。
「まさかアクナムカノン王の精霊まで闇に蝕まれた…とかでは……」
『その気配はなかったな。…しかし、彼を試してわかったことがある。
  やはり、アトランティス人が創り出したアレも復活の兆しをみせているようだな……
  三幻魔のことといい、どうしていつの世も闇の力で真なる力を得ることなどはできない、というのに……』
心の迷宮にて彼の魂に巣くう不安などをも見出した。
それらは象徴的なカタチとなりえて罠の姿として出現した。
それらが出現したのは他ならないユウギの心の迷宮の中。
ゆえにそれらが意味をすることはユウギにはまるわかり。
そういえば、とおもう。
オレイカルコスのあの力。
あれこそゾークがもたらした一種の罠だった。
ダーツもまた王としてその役目をまっとうしようとしていた、のはわかっている。
いるがそれで他の世界を支配しよう、という考えは間違っている。
リヴァイアサンを邪悪に染めて創り上げた邪神の存在はいただけない。
あのときにすべての悪意を自らの中に封じたはず、だったのに。
再びその悪意が表にでてきている、というのは闇の力が増しているからなのか。
必要なまでに自分を狙ってきていたのがあの当時も多少はきになりはしたが……
「吉森教授にも話しを詳しくきくことになっていたのですが、光のピラミッドの遺跡もまた発掘再開がきまったとか……」
『アクナディン、か。叔父は最後までその魂を闇に利用されていたからな……』
「ファラオの奇跡でも彼のみはよみがえりませんでしたからのぉ」
今はまだ第三の瞳の力は以前のように使いこなせない。
それは魂を二つにわけていることもあるが、聖なる力の大部分を遊戯の魂のほうに組み入れているからに他ならない。
「たしかアクナディンさんってお兄ちゃんのお父さんの弟さんのことだよね?」
「しかし彼はゾークにその魂を利用されてしまっていましたからのぉ」
遊戯の質問にため息まじりにつぶやく双六。
そして彼は闇の大神官、と成り果てた。
その心の闇に彼もまた呑まれてしまい光を失い完全に闇の存在と化してしまった。
そのときに彼が【王】を殺さんと創り出したのがいわく【光のピラミッド】。
あえて闇に属しているのに光、と称することにより自らこそが正当なる王である、と示そうとした人物。
それがアクナディン。
『問題は。ゾークのやつがまた叔父を媒介として出現しかねない、ということだな。
  あとは千年リングにおそらくゾークがバクラ・ネクロディアスを通じて闇を組み入れているだろうしな…』
自らの記憶の一部のコピーを鍵としてそれらの悪意は封じてはいるが、
人の心の悪意に触れていけばその鍵以外のところからも表にでてきかねない。
あのとき闇が集まり誕生した闇の人格のバクラは人であるリョウの心に敗れさった。
『シャーディーの心を試してわかったのは、千年リングはすでに奪われている、ということくらいか』
「千年瞳のほうはペガサス氏がもっておりますしのぉ。イシュタール家がロッドとタウクを所有しておりますし」
「たしか千年アイテムは七つ、あるんだよね?」
『ああ。それぞれには俺の記憶のコピーの欠片を施してはいるがな』
もっとも、シモンの協力がなければおそらく記憶はいまだに戻らないままではあったであろう。
もしくは先に【力】が覚醒して思い出していたかのどちらか。
「でもあの人、シャーディーっていうんだ」
『人、としての姿ではそのように名乗っているようだな』
「へ~」
心の迷宮では嘘などはつけない。
まやかしも通用しない。
すべてを見通される。
それこそがかの【場所】の特性のひとつ。
『とにかく今は吉森のところに急ぐとしよう。シャーディーには聞きたいこともあるしな』
「ですから。儂の運転でいけばはやくつきますのに」
「「いや、それは」」
ユウギの言葉にしみじみとつぶやく双六に対して思わず同時につぶやくユウギと遊戯。
何しろ双六の運転は何というか個性的。
しいていうならばかなり危険な運転、ともいえる。
「と、とにかく。もう夜も遅いし。きっと駐車場もとじられてるよ。ね、爺ちゃん」
『車にのっているときにしかけられたら面倒だしな』
そういうのは二人ほぼ同時。
「あ、バスきたよ」
そんな会話をしている最中、みればバスがやってくる。
そのまま彼らはバスの中にと乗り込んでひとまず駅にとむかってゆく……


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あとがきもどき:
ふと、原作みなおしてておもったこと。
いや、ありえないから。
絶対にありえないから。
二巻で金倉館長が死亡したニュースが流れて、しかも検視官の結果ももうでてるって?
美術館の閉館時間が五時、でしょ?
んでもってそれから死体発見されてもすぐに検視にはまわされるとはおもえないし。
そもそも現場検証とかもいろいろとあるわけで。
なのに遊戯達がニュースみて家からでたらまだ外はくらくなってない!!(汗
そりゃ、夏場とかはながいけど、それでも八時ごろには暗くなっているわけで…
時間的にありえないでしょ…じょ~たい(汗
そりゃ、ニュース速報で死亡しているのが発見されました、くらいはでても。
検視官のコメントまででてるのはおかしいぞ~(汗
と一人でつっこみをしております。
…普通検視の結果って早くても数日かかるんですが……
ま、漫画にそんな突っ込みをしたらだめ、という典型なのかなぁ?
原作ではアイテム創り出されたのが十七年前、となってるけど。
え~と、ならアテムはいったい何歳なのさ?
という疑問がはるかにまさります。
まあ古代人は短命だったからけっこうはやくに成人扱いなんだろうけどねぇ……
そもそも彼が生まれたときすでに千年アイテムはあったわけで。
と、すればセトとアテムは二、三歳差?
くらいなんでしょうねぇ。
ま、何はともあれではまた次回にて♪

2009年7月2日(木)某日

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