まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さてさて。杏子が脅されていた回はこの話で完了v(笑
意味不明とおもわれし場所はわざとぼかしてありますのでご了解くださいなv
いったい犯人(まて)達は何をしようとしていたのか。
また、何をしていたのか。
は読み手の想像にお任せなのですv
何はともあれ、いっきますv
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『……ふっ』
少し時間がたつにつれ、またまた濃くなってくる闇の気配。
たしかに、彼がいうように彼女たちを連れ戻しにとやってきている闇の眷属の姿。
だがしかし、手加減はいらない。
そう命令をうけている。
それゆえに、それらに使われている力をすべて自分の元にと取り込んでゆく。
「…な、何がおこってるの?いったい?」
虚ろなまでの表情をした男達がおいかけてくる。
だがしかし、それらは黒犬の吠える声一つでことごとく塵と化してゆく。
また何かに操られたかのような無表情をしている男達はといえばその場にバタバタと倒れてゆく。
そんな光景を繰り広げることはや一時。
やがて、視界に見えてくる王宮の表門。
『マイとやら。さきほどあの方からもらったあれを門番にみせろ』
「え?あ…はい。えっと…あの、すいません……
これ、とある人に王宮の人に見せろ。っていわれたんですけど……」
何と説明していいのかわからずに、とりあえず無難なところをいって門番にと恐る恐る声をかける。
いきなり現れた黒い犬をひきつれた女性たち。
いったい何事か?
と思って警戒していた矢先に先にその女性たちの代表らしき人物から声をかけられる。
「?何を…って……」
ぴしっ。
マイが手にもち、門番にと見せたそれを目にしてその場に固まる門番たち。
そして。
「って、おまえ!?これをどこで!?」
何やらものすごい剣幕で問いかけられる。
「え?えっと…私達を助けてくれた子供が、これをもっていけって手渡して……」
マイがいい終わるよりも早く。
その場にいたほかの門番数名が何やらあわてて門の中にと駆けてゆく。
そしてまた。
「って、早く神官様たちに連絡をっ!」
バタバタバタ。
何やらいきなりあわただしくなってくる。
「あ…あの?」
何が何だかわからない。
戸惑いを浮かべるそんなマイたちに、
「と。とりあえず。おまえたちは中にはいれ。おまえたちの口から詳しく上の方々に説明してくれ」
『上の方々…って……』
そんな一兵士の台詞に思わず同時にハモル女性たち。
そしてまた。
『さって。俺はここで失礼するぞ。…ひとまずあのお方のところに連絡はしにいかないとな』
ひゅっ。
彼女たちにのみ聞こえるようにと声を発し、その場からいきなり黒い霧と共に消えうせる。
「って!?なっ!?今のはもしかして
それを目の当たりにして他の兵士が何やら叫ぶが。
「えっと。今の犬もこれくれた子が呼び出したんですけど……」
いったいこれが何を意味している。
というのだろう?
「って、やはり外にいかれておられるのかっ!?」
「というか…王子の実力って……」
「「「はい?」」」
何やらざわざわとざわめきながらも話すそんな兵士達の台詞に思わず間の抜けた声をだすマイたち。
今…王子…とかいわなかった?
……何のことだろ?
彼女たちはまだ知らない。
彼女たちを助けたあの人物こそ、今の王たるアクナムカノンの一人息子である。
ということを……
~第13話~
うおっ!?
「…な、何だ?こりゃ?」
いつもはこのあたりは放課後はガラのわるい生徒たちのたまり場。
かくいう自分も一時というか、この前までここにたむろしていた一人だが。
だがしかし、ことごとく何やらいい噂をきかない上級生たちが校舎にもたれかかるようにと気絶している。
それぞれ、かなりの腕がたつ人物のはず。
「え~と。何この人たち、気絶してるの?」
「さ、さあ?とにかく。美穂ちゃん。杏子が呼び出されたのは…確か体育倉庫だったよね?」
唖然としている城之内とは対照的に、きょとん、とした声をだしている美穂。
そして、そんな美穂の興味を他にそらそうとしている本田。
本田としてはこのような光景はあまり美穂に見せたくない。
というのが本音。
「あ。そだ。早くしないと杏子がっ!」
あたりに転がっている生徒達も気にはなるけど、今は何よりも杏子が気にかかる。
それゆえ、
「杏子~!!遊戯くん、どこ~!?」
「「お~い!杏子!遊戯!!」」
近くにいれば返事があるはずである。
遊戯もまた話しを聞けば杏子がどうの…とかいっていたのでおそらくは杏子のところに向かったのであろう。
というのは何となく理解できる。
それをどうして遊戯が知ったのかは城之内たちには理解できないが。
ちなみに、三階の窓から遊戯が飛び降りた。
というのは美穂には彼らはいっていない。
いえば大騒ぎするのは目にみえている。
しばし、何やらばたばたと倒れている生徒達を横目に、彼ら三人は体育倉庫があるほうにと向かってゆく。
進んでゆくことしばらく。
「って…あれ?…あれって……」
やがて彼らの視界にと、見慣れた二つの影が映りこんでくる。
「えっとぉ……」
さっきは杏子が危ない。
とか聞いてたからあまり気にならなかったけど…改めてみたらすごいかも。
そんなことを思わず思ってしまうのは絶対に仕方がないとおもう。
「遊戯?この人たち…気絶してるだけ…よね?」
倉庫の出入り口の前に数名、その場に崩れるようにして座っている生徒の姿。
それだけでなく、表校舎のほうに向かってゆくために校舎裏を進んで行くことしばらく。
校舎裏にと寄りかかるようにして気絶している生徒達の姿もまた目にはいってくる。
「うん。…多分そうだとおもうけど……」
というか、この人たちって…お兄ちゃんの【力】に吹き飛ばされる形で気絶してるしな~。
ユウギが発した千年パズルの光に吹き飛ばされるような形で気絶している彼ら達。
それゆえに、どのような状況に陥ったのかは遊戯にはよくわからない。
まあ、おそらくは死んではいないはずである。
精神的にどのような負担がかかったかはわからないにしろ。
「…って、あ。杏子。あそこ……」
戸惑いながも歩いていると、何やらこちらにかけてくる人影が三つ。
遊戯がそんな彼らの姿に気づくと同時。
「杏子っ!!」
「杏子!遊戯!無事だったかっ!」
「つ~か。一体何がどうなったっていうんだ?」
杏子に飛びつくようにかけてくる美穂の姿に。
そして、ほっとした表情の本田に、戸惑いを隠しきれないような感じでつぶやく城之内。
いや。
そもそも、遊戯がいきなり三階から飛び降りてまったくの無傷。
というのも突っ込みたいところではあるが。
「杏子。よかった~。何もされなかった?杏子、一言も何もいわないんだもん」
ほとんど潤々と涙を瞳に浮ばせて杏子にと話しかけるそんな美穂の言葉に、
「ごめん。ごめん。心配かけて。…でも、よくあたしのいる場所がわかったわね」
このタイミングで、たまたま通りかかった。
というのもかなり微妙。
それよりは、何らかの方法で自分が体育倉庫に呼びだされた。
というのを知って、城之内と本田を伴いやってきた。
という理由のほうがしっくりくる。
「そういえば。城之内くんや本田くん。それに美穂ちゃんはどうして?」
自分はお兄ちゃんに聞いて杏子の危機を知ったわけだけど。
最も、杏子を助けたのもお兄ちゃんであって僕じゃないけど。
そんなことを思いながらも遊戯もまた首をかしげて問いかける。
「えっと。杏子。これ忘れていったでしょ?」
正確には忘れていったのではなくて、美穂がこっそりと杏子のポケットからとっていたのだが。
それは口にはせずに、忘れていった。
という表現をしている美穂。
「え?…あ、あれ?あたし、それ机の中にいれてたっけ?」
たしか、スカートのポケットいれといたようなきがしたんだけどな?
もしかして授業中にみてたから、あのときに無意識に机の中にいれたのかな?
ふとポケットの中をまさぐり、そこに手紙がないのに今さら気づいてつぶやく杏子。
「まったくだ。それに。遊戯!おまえいきなり飛び降りるなっ!」
「って、僕にいわれても~……」
こつんと遊戯の頭をたたいて心配したかのように言い放つ城之内の台詞に困ったようにいう遊戯。
いきなり飛び降りたのはユウギであって自分ではない。
まあ、自分だったら間違いなく即死か、もしくは大怪我はまちがいなし。
であるが。
「そういや。おまえ体、何ともないのか?」
三階から飛び降りてまったく無傷。
というのがにわかには信じられずに問いかける本田。
「お兄ちゃんが出てるときはものすごく身体能力とか高いし。
そういえばよく騒ぎにならなかったよね?」
時間的にも生徒がかなりいたはずなのに騒ぎになっていない。
というのに今さらながらに気づいてふと心の中のユウギにと問いかける。
『視られないようにしてたからな』
「そなんだ」
「?遊戯くん?何独り言いってるの?」
何やら一人で言っている遊戯の態度に首をかしげる美穂。
そういえば……
美穂のやつはまだもう一人のあの遊戯にあってないんだっけ?
ふとそのことに思い当たり思わず顔を見合わせる本田と城之内。
『それより。早いところここから立ち去ったほうがいいぞ?いつ教師たちがくるかわからないしな』
そんな遊戯にと心の中のみで語りかけてくるユウギのそんな台詞に、
「と。とりあえず。一度教室にもどらない?」
いつまでもこんな場所にたしかにいては説明するのもかなり手間。
というか説明のしようがない。
「それもそうね」
そんな遊戯の言葉に素直にうなづく杏子に、そんな杏子に続いてそれぞれうなづく本田と美穂。
その一方で、
「杏子。詳しくはなしてもらうからなっ!まったく。何で俺たちにひとこと手紙のことをいわないっ」
せっかく暴れるというかストレス解消とかにもなるかもしれなかったのに。
そもそも、あんな理不尽な呼び出しというか脅しをするやつは虫がすかねぇ。
それゆえの抗議。
「あはは。初めは城之内がそれ、出したとおもったしね~」
城之内の多少ふてくされたような台詞に、さらっとにこやかに言い切る杏子であるが。
「って、何で俺がっ!?」
そんな杏子の台詞に面白いまでに驚きの表情してすかさず叫び返す城之内。
「あんたくらいしかおもいつかなかったし」
「って、こらまてっ!杏子っ!」
「またないよ~だ!」
かるく舌を出してそのまま駆け出してゆく杏子を追いかけて城之内もまた走り出す。
そんな二人をしばし眺めつつ、
「と…とりあえず。教室もどろっか。美穂ちゃん」
「うん。美穂こんなところに長くいたくないし」
このあたりはあまり学校の中でもいい噂を聞かない。
俗にいう不良たちのたまり場にもなっている。
とも噂されている場所である。
校舎などによりかかって気絶している男子生徒達の姿は気にはなるが、
あまり面倒ごとには好き好んで巻き込まれたくない。
そもそも、自分がやった。
と思われるのも困る。
それゆえに素直にうなづく美穂であるが。
「そだね。あまりゆっくりしてても日が暮れるし」
すでに日は沈みかけている。
四月も終わりというこの時期。
もうすぐ五月に入り、そして高校に入って始めてのゴールデンウィークに突入する。
この三年間は心の中のみで表のほうで会話などは出来なかったけど、これからはいつでもできる。
やっぱりまた図書館めぐりとかになるのかな?
そんなことをふと思いながらも空を見上げて答える遊戯。
とりあえず、このままここにいても何なので、そのまま遊戯たちは教室のほうにと向かってゆく。
「そういや、これを出したやつはどうなったんだ?」
ひとまず教室にもどるとすでに他の生徒は帰宅しており教室にいるのは彼ら五人のみ。
「そういえば。遊戯。何がいったいどうなったんだ?
おまえ、杏子を助けにいったんだろ?つ~かどうやって知ったのかはおいとくとして」
「っておいとくのか。おい」
城之内の台詞に思わずつっこみをいれてるい本田。
あのとき、目の前でいきなり三階の窓から飛び降りたのは、たしかにもう一人のユウギのほう。
というか、先日遊戯がもう一つの人格である、というもうひとりユウギにとであってはいるが。
なぜ身長まで変化するのかははなはだ疑問であるが、おそらく遊戯に聞いてもそれは判らないだろう。
それだけは判る。
「杏子を助けたのはお兄ちゃんのほうだよ~。僕じゃ、何もできないもん」
多少申し訳なさそうに杏子をみながらも小さく答える遊戯に対し、
「前々からおもってたけど。遊戯くんのお兄さんってどこにいるの?というか同じ学校にいるの?」
きょとんとしてそんな遊戯にと問いかけてくる美穂。
まあ、確かに。
同じ学校にいる、いえばいるのであるが……
「お兄ちゃんはいつも、僕の心の中にいるよ。もしくはこの千年パズルの中に」
首から下げている千年パズルを手にしながらいう遊戯。
「??」
そんな遊戯の答えだけでは当然、美穂には何のことだかは判らない。
「まあ。美穂にもそのうちに紹介できるわよ。きっと」
この状態でユウギお兄ちゃんが表のほうに出てくる、とは思えないし。
そう判断した杏子が美穂をそういってなだめるが。
「それより。杏子が無事だったのはいいとして。…でも大丈夫なのか?」
手紙と、それにはいっていた写真と新聞の切り抜き。
おそらくは手紙を出してきた奴の手元にはネガなどはあるはずだ。
またどんな手段を用いて杏子を脅しにかかってくるかはわからない。
「あ。それなら大丈夫だとおもうよ。
たぶんあの人たちは二度と杏子にちょっかいはかけられないとおもうし」
それだけはきっぱりと断言できる。
それゆえにそういいきる遊戯の台詞に、
「「?何でだ?」」
思わず問いかける本田と城之内。
「…今まで、お兄ちゃんのお仕置きうけて、さらに悪いことした人って、
僕の記憶の中には今のところいないもん」
きっぱりはっきりとそれだけは断言できる。
最も、遊戯は行方不明になった人たちもいる。
という事実は知らないのであるが。
そんなきっぱりと言い切る遊戯の言葉に、
「「…もう一人のおまえっていったい……」」
思わず異口同音でつぶやく本田と城之内。
「って。ああ!もうこんな時間!はやくかえらないと遅くなっちゃうっ!
外が真っ暗になっちゃう~~!!」
そんな会話をさえぎるかのようにいきなり叫ぶ美穂。
たしかに気づけばいつのまにか時刻は六時を回りかけている。
「あ。ほんとだ。とりあえず今日はかえらないと。すぐにくらくなっちゃうわね」
「って、もうこんな時間かっ!まじっ!」
「美穂ちゃん、遅くなったからおくってくよ」
いつのまにか時間が押し迫っているのに気づいてあわてて帰宅の準備を始める城之内たち。
あまり深く突っ込まれなかったことに対してほっと心でひといきついている遊戯とは対象的。
ともあれ、彼らはあまり遅くなっても何なので。
というのでそれぞれ帰路にとつくことに……
こんなのは、まやかしだ。
まやかしに決まっている。
ずるずると手にもっているビデオカメラからも黒い人影が出現し、
その人影は自分を飲み込むかのごとくに襲い掛かってきている。
そのまま、自分達をカメラの中、もしくは足元の黒い液状の塊の中に引きずりこむかのように。
なぜか見える景色は、同じように黒い人影のようなものに飲み込まれていっている協力者の姿。
別に彼らは仲間だとかそういうのではなく、それは契約の都合上。
彼らを使い、様々なビデオをとり、とある場所を通して裏ルートで売りさばく。
それが彼らの裏の収入源。
けっこう金額のいいアルバイトであるがゆえに、ここ一年ほどかなり稼いでいた。
ビデオを手放そうにもまるで張り付いたかのように離れない。
「…こ、このぉぉ!」
ビデオを手放せば開放されるかもしれない。
そんな思いを抱きながらもとにかく、ぶんぶんと手を振り回す。
他の者たちはみれば、手をばたばたとしてどうにか逃れようとしているが。
「君達?大丈夫なの?」
「…こ…これは……」
何やら騒ぐ声を聞きつけてこの場にとやってきた。
外で気絶していた生徒達は何があったかまったくもって覚えてもおらず。
なぜ自分達が気絶していたのか、なぜその場にいたのかすらもわからないという。
全員が全員、同じようなことをいい当人たちもまた困惑していた。
それゆえに、何かあったのではないか?
という心配から周囲を一応は捜索していると、体育倉庫の中から聞こえてくる意味不明な叫び声。
一人や二人の声ではなく、何やら尋常ではないような気がしたがゆえに数名の教員達で立ち入った。
四、五人の生徒達が何やら意味不明なことをわめきながらのた打ち回っている。
「……これは……」
かさり。
その場に落ちていたビニール袋。
それも一つではなく幾つか転がっている。
「……シンナー……ですかね?」
「……でしょうね……」
思わず盛大にため息をついてしまう。
目の前でわめいている生徒達。
そして、床にところがっているビニール袋。
教師たちには、彼らが今どんな現状に陥っているのか理解できていない。
彼らを今襲っているのは視覚的には見えないもの。
だからこそ、教師たちには理解できない。
「どうします?」
「……あまり公にしたくないですしね……」
それでなくても、この前の牛尾という生徒の一件があったばかりである。
こうも続けざまに不祥事が表ざたになれば学校の存続そのものも危うくなってしまう。
「とにかく。それぞれの保護者をよびましょう」
「救急車はどうします?」
「でも、一応意識不明とかではないですし……」
たしかに、全員が幻覚らしきものをみているがためかわめいてはいるが、意識はあるようである。
それに自分達が彼らに触れてもこちらに気づいていないようでよくある暴れるといったこともない。
こういったシンナー中毒などで厄介なのは相手がいきなり暴れだす。
等という点が一番やっかいなのだが。
ともあれ、今のところそのような心配はなさそうである。
それゆえに、あまり事を大事にしたくない。
という思いから、ひとまずそれぞれの保護者にと各自連絡を取ることにしている教師たち。
それが学校のためには一番いい。
各自どこかきちんと対応しなければいけない。
そう心に思いつつ……
「さて……と」
く~……
どうやら遊戯は完全に眠りについたらしい。
それゆえに、そっと表にでて起き上がる。
遊戯を起こさないように気をつけながら。
遊戯の意識が眠っているときには断りをいれることなく普通に表にでることは可能。
最も、パズルが組みあがっていないときにそれをやるとかなりの精神力を使うがゆえにあまりやらなかったが。
「王子?それで。どうする気なんですか?」
彼のことである。
あの昼間の生徒達の背後にすべての鍵となる人物等がいる。
というのはわかっているはず。
「悪事の根はたたきのめさないとな」
「…
やはりというか、絶対にそう言い出すのではないか。
と危惧していたとおりというか、何というか……
それゆえに、思わずため息もつきたくなってしまう。
「マハード。そうはいうが、おまえもわかっただろう?あいつらにまとわりついていたあの負の気は……」
あからさまな悪意を含んだ負の気配。
彼らの心の闇が具現化したときにはっきりと確信したこと。
それは、あの生徒達の背後に、生徒達を使って悪事を働いている者達がいる。
ということを。
「だからといって、
昔からそういったことを見逃せない。
その性格は今も昔も変わっていない。
それは、遊戯においても言えること。
元々は一つの魂なのだからそれは当たり前、といえばそれまでだが。
「早いうちに手をうっておくに越したことはないしな。それに……」
被害がこれ以上広がるのは好ましくない。
それでなくても、そういう負の力は闇の力をも増幅する結果となる。
それは、この世界に残っている負の残留思念にもまた力を与える結果となる。
人は、なぜか自らの手を自分達の首を絞めることをよく行う。
それは、今現在起こっている自然破壊などにおいてもいえること。
それらの手はまあ今後、手を打つとしても……
「とりあえず。遊戯が目覚める前にすべては終わらせる」
「「……はぁ~……」」
きっぱりはっきりいいきるユウギの台詞に思わず盛大にため息をつくマナとマハード。
遊戯は派手なので着ることはないが、自分に似合いそうだから。
といって買っている服がいくつかある。
その一つにと着替え、その背に上着をかるく羽織る。
普通に着こなすよりこのほうがしっくりくるのはかつてマントになれていたがゆえ。
そのまま、元千年パズルが入っていた箱の中より一枚のカードを取り出し、それを掲げ。
「異空の扉よ、ひらけっ!」
ユウギがそう叫ぶとともに、部屋の中に一枚の扉が出現する。
デュエルモンスターズのカードとしては扱い方は異なるが、だがしかし。
本来の使い方を知っていればこういうことは誰でも可能。
最も、使いこなせなければそのまま異空間に取り残されてしまい戻ってくることは不可能になってしまうが。
「さ。ゆくぞ」
そのまますたすたと扉のほうにと向かってゆくそんなユウギの姿をみて、
諦め半分のため息を再びつき、そのままそんな彼にとついてゆく二人の姿が。
しばし、遊戯の家の彼の部屋において見受けられてゆく――
……では、次のニュースです……
「遊戯」
「?何?爺ちゃん?」
テレビをつけての朝の朝食。
「おまえ、昨晩、何かあったか?」
「??何か…って?」
ぎくっ。
きょとんとする遊戯とは対照的に、
のんびりと表に出てきて幽体としてニュースをみていたユウギがぎくりとする。
そんな彼の一瞬の変化を見逃すことなく、
「なるほど。つまり昨夜、部屋にいなかったのは
おもわずじと目で問いかける双六。
「?いなかった。って、爺ちゃん、僕はずっとねてたよ?」
きょとんして言い切る遊戯に対し、
「いや。部屋にいったら遊戯がおらんかったからの。何かあったのか。ともおもったが…
どうやら、
『シモン……何で……』
「伊達に長年、仕えていたわけではありませんしの。
というか何か胸騒ぎがしましての~。で?どこへいかれてたんですかの?
わざわざ遊戯の体を使って表に出てまで?」
「?お兄ちゃん、昨夜、僕が寝てる間に動いてたの?起こしてくれればよかったのに」
二人に言い寄られ、一瞬固まるユウギであるが。
「遊戯~。杏子ちゃんが迎えにきたわよ~」
玄関のほうから母親でもある花蓮の声がきこえてくる。
『ほら。遊戯。迎えがきてるらしいぞ?』
「
『まあ、それは秘密。ということで。ほら、遊戯、急がないと』
「何かごまかされてるようなきもしなくもないけど……あとで教えてよ?お兄ちゃん。
ご馳走様~。んでもっていってきま~すっ!」
そんなユウギに言い寄る双六をさらりとかわし、どうにか話題を変えようとしているユウギ。
そんなユウギの態度に多少首をかしげながらも、あまり杏子を待たしてはいけない。
そう思い、そのまま鞄を背負い、玄関のほうにと向かってゆく遊戯の姿。
「
『じゃ、いってくるな。シモン』
抗議の声をあげる双六の声は何のその。
そのまま遊戯と共にその場から離れるユウギであるが。
「…まったく……」
また何か無茶なことをされてないといいんじゃが……
そんなユウギの態度に、改めて椅子に座りなおして思わず愚痴る。
何となくそのままその視線をテレビ画面に現れているニュースのほうにと向けると。
何やら新たなニュースが流れている。
昨夜、女性の声で通報があり、警察が駆けつけましたところ……
……尚、病院に運び込まれた男達は、すべて暴力団関連の……
当局では、通報してきた女性の割り出しに全力を……
……たら。
何となくみていたニュースをみながら思わず汗が流れ落ちるのが自分でもわかる。
「杏子ちゃん。いつもありがとね」
「いいえ。さ。いこ。遊戯」
「お母さん、いってきま~す!」
「はい。いってらっしゃい。そっちのユウギ君もね」
遊戯の横にいる霊でもある彼の姿は母親の花蓮には視えている。
そして彼の名前の一つが息子と同じユウギである。
というのは父から聞いて知っている。
また、彼当人からもそれは聞いて知っている。
流石に昔から見慣れているのもあり、もはやまったく動じることがないというのは流石、といえば流石だが。
まあ、遊戯の守護霊のようなものみたいだし。
それで彼女は納得していたりする。
事実はかなり異なるのであるが……
何しろ、相手は古代エジプトの王。
古代エジプトの王は神の化身といわれていた存在。
そしてまた、父の前世において側近を勤めていた人物であるらしい。
そこまで詳しく聞かされているがゆえの柔軟な対応なのであるが。
最も、彼女にすれば物心ついたころから彼の話しはよく聞かされていたのであまり違和感を抱かなかった。
というのもある。
「あ。ユウギお兄ちゃん、今表にでてきてるんだ。う~。あたしにも視えたらいいのに~……」
そんな花蓮の台詞に多少不満げな声をだす。
「あら。杏子ちゃん?でもこのユウギ君はともかくとして。そういう類は視えないほうがいいわよ?
対処の取り方まちがったりしたらとても大変なことになるしね」
自分は父である双六がそれらの対処法を知っていたから今の今まで何とかやってこれてるが。
今ではその力は自分の意思でコントロールすることは可能になっている。
最も、ユウギに関しては彼自体の霊的な力が強いがゆえに普通に力を閉じていても視えるのだが。
「まあ。そういう話はよく聞きますけど……」
「とりあえず。ユウギ君。息子と杏子ちゃんをよろしくね~」
『いやあの………前々からいってますけど…その、くんづけは……』
「あら?いいじゃない」
『・・・・』
言っても無駄だ。
とはわかっていても、やはり何か違和感を感じまくるのは仕方がないこと。
それゆえに思わず盛大にため息をつくユウギ。
「なら、ユウギちゃんのほうがいい?」
『……くん。でいい………』
「前々からおもってるけど。お母さんってお兄ちゃんのあしらい、上手だよね~」
そんな二人のやり取りを聞きながら苦笑している遊戯に対し、
「そんなことより。ほらほら。二人とも急がないと」
「って、あ!遊戯、いそがないと!」
「あ。ほんとだ。それじゃ、いってきま~す!」
いつも大体母親に言いくるめられるユウギを何だかほほえましくも思いつつ、
そのままあわてて杏子とともに学校にと向かってゆく遊戯。
「さって。私も洗濯とかはじめますか」
登校してゆく遊戯たちを見送りおえ、そのまま家の中にと入ってゆく花蓮。
遊戯が中学に上がるまでの日常風景がまた戻ってきたことに多少の笑みが漏れてしまうのは仕方ないであろう。
何しろ昔もこのようにいつも彼らを送り出していた経緯があるのであるからして……
「?ねえ?何かあったの?」
何やら学校内部が騒がしい。
学校にきてまず思ったのはそのこと。
先生たちも何やらばたばたと一時間目の授業が自習になる。
などと。
ガラッ。
「ねえねえ!聞いて、聞いて~!自習になった原因、わかったわよっ!みんなっ!」
職員室にと用事があるとかで出向いていっていた美穂が勢いよく教室の扉をあけて全員に言い放つ。
「え?何々?」
「野坂、まじか!?」
そんな美穂の周りにはあっという間にクラスの人だかりが出来上がる。
「そういや…今日も海馬くん…お休みみたいだね?」
自分の横の席には今日も誰も座っていない。
お兄ちゃんは一日だけ精霊界に送り込んだとかいってたから学校には来てもおかしくないけど。
放課後にでもお見舞いいってみようかな?
「お~かた。プライドが邪魔してこれないんじゃねえか?
遊戯。つうかもう一人のおまえがあいつに、しかもゲームでかったんだろ?」
「え?あ。うん。それはそうだけど……プライドとかは関係ないとおもうな。
病気かもしれないし、僕、放課後、いってみるよ」
ひとまず気になってはいたので、彼ようにノートなどはしたためてある。
最も、彼にそれが必要かどうかは別として。
城之内の台詞に素直に答えている遊戯。
「病気って。あいつがんなたまかっ!」
おもわずそんな遊戯に突っ込みをいれてしまう。
そしてふと、
「そういや、何で今日は自習なんだ?美穂?」
人だかりに埋もれている美穂のほうにとふと気づいたかのように問いかける。
「あ。それそれ!あのね!今日の朝。ニュースでやってたことに関係があるんだって!
あの事件でね。あの人たちが使ってた学生たちの学校名のリストにうちの学校ものってたんだって!」
『え~~!!!??』
美穂のそんな発言に教室内部から一気にざわめきの声があがる。
「って、何だ?そりゃ?ニュース?」
「?」
そういや、今日はきちんと新聞とかよんでないな~。
ニュースもお兄ちゃんと爺ちゃんとのやりとりできちんときいてなかったし。
美穂やクラスメート達の反応に首をかしげる城之内と遊戯とは対象てきに、
「何だ。おまえら。しらないのか?今朝からずっとやってるニースだぞ?」
いいつつも、
「ほら。これだ」
なぜか律儀にも今朝の新聞の朝刊であろう。
それをもってきていたらしく、机の上にと広げる本田。
そこには。
【現代の闇摘発!
昨夜夜遅く、○○にて未成年を使った取引をしている暴力団の幹部が集まっている。
という連絡をうけ、警察が駆けつけたところ、意味不明なことをわめいている男達を発見。
彼らがもっていた物証と、そしてまた車に積んであった品物から、
彼らが未成年たちを中心に取引をして裏取引を行っていたことが判明。
尚、家宅捜査において彼らが使っていたとおもわれし未成年の名前と、
通っている学校の名前の名簿もまた押収され……】
何やら延々と説明らしき文章と、ちょっとした写真が掲載されている。
【尚、顧客名簿とおもわれしものにはさる大物政治家などの名前も記載されており、
警視庁は改めて事情を聞く予定。尚、連絡をいれてきた女性の行方を全力で捜査中。
連絡をいれた女性は、逮捕された男の一人の携帯電話を利用しており、
着信履歴などからは割り出しは困難と警察はみており、目撃者を全力で捜査中……】
そんなことが概要として記載されている。
「へ~。んなことがあったのか」
「意味不明なことをわめいてる…って……」
その記事を読んでただひたすらに感心する城之内に、一点をみてつぶやくようにいう遊戯。
「それだ。警察が踏み込んだときには全員、
何やら幻覚でもみているのか意味不明なことをわめいていたらしい。
中には意識不明になっているものもいたらしいしな。だが別に薬とかをやっていた形跡もないらしい。
それで今朝からどのテレビ局でもいろいろと仮説たてて大騒ぎしてるぞ?
遊戯。おまえいつもニュースとかチェックしてただろうに、今朝はみてなかったのか?」
常に学校などに新聞をもってきていたりしていたのを知っているがゆえに不思議に思い問いかける。
「え?あ。今朝はちょっといろいろあって……」
本田の質問に苦笑いするしかない遊戯。
「そういえば。うちの学校の手がつけられなかった不良たちが昨日、全員気絶して発見された。
とか先生いってたっけ?」
「ああ。何でも気がついたら全員何かに怯えたように素直になってたとか……」
「いや。俺は三年生の生徒が入院したとかきいたぞ?」
「この前の牛尾先輩の一件といい、何か重なるね~」
「というか。学校側が不良たちを怖がって野放ししていた結果じゃないか?」
「そうそう。それで力のない生徒はことごとく退学にする厄介な先公もいるしな~」
ふと思い出したようにそんな会話を始めているクラスメート達。
…えっと。
それはお兄ちゃんの仕業なんだけど…まさかこれも…ってことはないよね?
もし、ユウギがあの杏子を脅していた人物たちの背後の存在を知っていれば?
間違いなくお仕置きするのは明白。
それゆえに、何やらたらりと冷や汗が流れ落ちる遊戯。
そのまま、すっと目を閉じ、
えっと…お兄ちゃん?もしかして…昨夜、いなかったとか爺ちゃんがいってたのって……
恐る恐る心の中にいるユウギにと問いかける。
『…小さい王子、気にしないほうがいいよ?』
「って……」
ばたっ。
どこか同情したような視線を向けて横にふわりと出現してくるマナの姿をみてそのまま机に突っ伏す遊戯。
それ即ち…間違いなく、新聞に書かれている出来事にユウギが関わっている。
という証拠……
「ま。しかし。せっかくの自習だ!ゆっくりしようぜ!」
「こらこら。城之内。いくら自習だとはいえ……」
何やら言い合いをしている城之内や本田の会話が遊戯にはほど遠く感じる。
お兄ちゃん…昨夜、これに書かれている人たちに…闇の罰を与えたんだろうな……
僕は昨日はぐっすりと寝てたしな……
わかってたら止めるかどうかしたのに……
しばし、そんなことを思いつつ、ぱたっと机に突っ伏す遊戯の姿が見受けられてゆく。
そんな遊戯の姿をみて、
「?遊戯?どうかしたの?」
心配そうな声をかけている杏子に、
「ね。みんなはどうおもうっ!?」
何やら一人きゃいきゃいとはしゃいでクラスの意見を聞いている美穂。
不可思議なことなどに関して興味をもつのは、古今東西。
人間の心理なのかもしれない……
ともあれ、何やらばたばたしつつも、その日は早めに授業は切り上げられ、
遊戯たちは各自それぞれ帰路にとついてゆく……
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あとがきもどき:
薫:さてさて。ぼかしてますが(笑)当然v暴力団員たちに王様、お仕置きやってますv
ちなみに、通報したのはマナですv(まて
なので当然、指紋などは残っているはずもなく。
また、闇の空間内でお仕置きやってるので目撃者などいるはずもありませんv
ちなみに、初めに悪事を働いていた彼らには王様…闇のゲーム当然仕掛けてます(汗
遊戯は王様の力もあって爆睡してたので、その事実を知らなかったわけですが……
双六お爺さんこと、元側近のシモン・ムーランは流石というか。
胸騒ぎを感じて王様が空間転移したその直後に部屋にいっていないの確認しております…
なので、ニュースで流れたそれと、おもいっきりすぐにむすびつけてます。
ちなみに、とある番組では「犯人たちは闇のゲーム」とかわけのわからないことをいっている。
とキャスターの人が紹介してたりする事実が~(こらこらこら
さてさて。次回はアニメの第4話v
現実にあったらいやだな~というかかなりグロ?とおもった初回(笑
例の時計の回ですv
何はともあれ、ではまた次回にてv
2007年8月30日(木)某日
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