まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
あれ?シモン登場の前に、アテムが呼び出したケルちゃんいれたら(まて)
シモン爺ちゃんたち登場はもーちょっと後になりそーですね(汗
次回で、アンズたちと行動開始…かな?過去話……
ま、ともあれ、ゆくのですv
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「よっし。大丈夫だ」
ひとまず、その場で話し込むのも何なので、また悪人たちがもどってこないか確認しつつ外にと出る。
閉じ込められていた女性たちを伴い、再び外に面した建物の中の部屋にともどってきたが、
そこには幾人かの男達が未だに気絶し倒れたまま。
どうやら意識を回復させる気配はないらしい。
それゆえに、そのまま、表を確認しながらも外にと出る。
「とりあえず。マイ、といったな。それをもって全員を王宮につれていってくれ。
俺はまだ他にもたぶん奴等が誘拐している人たちがいるらしいからその人たちを助けにいく」
いや、ちょっとまってよ。
というか、何でこんな小さな子供がそんなことまでしないといけないの?
というか、そもそも…これ…何?
すでに薄暗くなってきているので、よくよく見ないと何が描かれている。
とかまでは判らない。
どうみても、自分よりかなり年下の子供である。
そんな子供にそんなことをいわれても、
はい。そうですか。
というわけには年上としても納得するわけにはいかない。
「ちょ。ちょっとまってよ。坊や?というか。何なの?これ?
というか、何で君がそこまでする必要があるわけ?まあ、たしかに。
役人の中にもあいつらの仲間がいる、という可能性は否めないけど」
何しろ、神官団を名乗って悪事を働いていた彼らである。
そんな身分あるものの名前を名乗っても今まで何もお咎めなどをうけていない。
ということは、すなわち、誰か関係者が内通しているか、もしくは情報がもれているか。
そのどちらか。
それは少々考えるまでもなく、素人ですら気づくこと。
「俺にも俺の事情があるので。ちなみに、それは持っていけば無条件で王宮の中に入れるはずだ。
ついでに、それをみてやってくる人物に君たちから今回の一件。
即ち、その神官団を名乗っていた偽者達の話しをしてくれればありがたい」
いいつつ。
「…とりあえず、王宮までの保護はいるかな?」
ふとそんなことをつぶやきながら、小さく何やら印をきる。
そして。
「いでよ!!ケルペロスっ!!!!」
かっ!!
少年が何やら手を突き出すと同時に、大地より煙りが湧き出し、
その場になぜか唐突に真っ黒い一匹の犬が出現する。
『このオレを呼び出したのは、何ゆえ?』
「「って、犬がしゃべった!?」」
その黒い犬がいきなり言葉を発したのをみて何やら叫んでいるマイ、と名乗った女性や、
そしてまた、リョウ、となのった少年と、そしてまたアンズ、となのった少女たち。
また、後ろにいる多数の女性の一部も戸惑いの声を発していたりするのだが。
「どうやら、今回の件は、おまえのほうにも思うところがあるんじゃないのか?ケルベロス?」
冥界の番人ともいわれている、漆黒の犬、ケルベロス。
本来、その頭は三つあるが、今の姿は普通の黒い犬の姿。
それは、彼が呼び出すときにそういうように命令を含めたからに他ならない。
そんな彼の台詞をうけ、
『………それで?このオレに何を望む?というか…そちらの力のみでもいいのでは……』
彼の力を知っているからこその言葉。
「彼女たちを安全に王宮までつれていってほしい。
ちなみに、その途中でおそってくる闇の眷属に関しては手加減はいらないが、殺さないように」
『ふむ。…手加減しなくてもいいんですね?』
手加減はいらない。
その言葉をきいてどこか口調が明るくなっているのはマイたちの気のせいだろうか?
「ああ。かまわない。俺は背後にいる黒幕をいぶりだしながらも、しばらくは戻るつもりはないしな」
このまま、王宮には戻れない。
そんな会話をしながら、
「よっし。話しはついた。君たちは、このケルが王宮まで安全に連れて行ってくれるから」
「って、ちょっとまって!?これ、何!?というか、この犬!?何!?はなしてるしっ!?」
「?冥界の番人、ケルベロスだけど?」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
「あ…あんた…もしかして、かなり実力ある王宮関係者?」
ケルベロスの名前は一度くらいは聞いたことがある。
それが真実か否かは別として。
だがしかし、いきなり出現したこの黒い犬が普通の犬でないのは明らか。
それゆえの問いかけ。
「実力はないとおもうけど……」
『どこがですかっ!』
きょとん、としてつぶやくそんな彼にすかさず突っ込みをいれるのはほかならぬケルベロス。
といわれた黒き犬……
~第11話~
「…さて……」
とりあえず、シモンのカードは取り戻した。
あとは、セトを家に送り届けておくだけ。
とはいえ今は彼はカードの中。
即ち、精霊界にと送っている。
ゲーム終了と同時に、闇のフィールドは終了している。
つまりは闇の結界はすでに解かれている状態。
今までは闇の結界を張っていたがゆえにこの教室には誰も入ってこれなかった。
その結界をときはなち、そのまま教室の外にとでてゆくユウギ。
とりあえず瀬戸がもっていた鞄をもってゆく。
遊戯の背負う形の鞄はまたあとからでもとりにくればいい。
そう思い、まずは瀬戸のことをどうにかするためにと屋上にと向かってゆく。
あまりというか滅多というか、好きではないのでやることはまず皆無といっていいが。
それでも、必要なときにはそれを使う必要性。
それは判っている。
だからこその行動。
未だに遊戯のほうは気絶したまま目覚めていない。
もし目覚めていたら何かいってくることは請負である。
そのまま、すたすたと屋上にと向かってゆく。
そこには未だに気絶している海馬瀬戸のボディーガードの二人がいるはずである。
屋上にいってみれば、案の定。
未だに気絶している二人の姿が目にはいる。
先ほどまでこの場にいた城之内と本田の姿はないことから、二人は目覚めているのはわかるが。
「あまり、のんびりはしていられないな」
この姿で彼らにあうと、何をいわれるかわからない。
というかどう説明していいのか判らない。
そう思い、意識を切り替え精神を集中する。
ぽうっ。
それとともに、ユウギが首からさげている千年パズルが光を発し、
ユウギのその額にも光る第三の眼が出現する。
『我、ファラオの名の下に命ず……』
【能力】を使い、相手を操る。
いや、この場合は催眠術に近いもの。
意識がない彼らだからこそ、あまり力を使うことなくすんなりとできる。
本来ならば完全なる操り人形と化すことも彼には可能であるが、彼はそういうのは好きではない。
だが、今は何よりも瀬戸を無事にひとまずカードの状態とはいえ家に送り届けるのが何よりも先決。
だからこその行動。
しずかに、ゆっくりと彼らがすべき行動を【魔力】をこめて言い放つユウギ。
ユウギが彼らに望むことはそう多くはない。
海馬瀬戸の封じられているカードをもって、そのまま彼の家にともどること。
そして、彼の鞄などをもきちんと彼の私室にもってゆくこと。
そしてそのカードを彼のベットにおいておくこと。
基本はこの三点。
とりあえず、あとは彼の家には使用人たちも多々といるがゆえに、
怪しまれないように幻術の技もかけておく。
それは第三者がみたときには、海馬瀬戸としての姿の幻影が視えるようにする技というか術。
つまりは、彼らの背後に言葉は発しないが海馬の姿が見えるようにしておく。
これでまず違和感は第三者にも抱かせないはずである。
…もし、その海馬に触れようとするものがいれば、それが幻である。
とすぐに判ってしまうような簡単な幻影ではあるが。
だが、この場合はそれで十分。
ユウギの声にしたがって、ゆっくりと立ち上がる二人のボディーガードたち。
だがその瞳はどこか虚ろであり、今もって完全に意識が回復していない証拠。
そんな状態で車の運転をして大丈夫なのか?
という疑問が普通ならば起こるであろうが、そのあたりに関してもユウギにとっては問題ない。
車自体に特殊な術をほどこしておけば、何も問題ないのだからして。
そのまま、ふらふらとまるでユウギにいわれるままにと屋上を後にして外にと出てゆく二人の姿。
とりあえず念の為にそんな彼らの後ろからついてゆくユウギ。
あれは……遊戯…じゃ…ない。
後姿は遊戯そのものであるが、だがしかし身長が異なるがゆえに違うとわかる。
「って、やっぱりユウギお兄ちゃんが表にでてきてるし。何かあったんだわっ!」
そんなことをいいながら、一瞬城之内たちを呼ぶかどうか迷うが、
だがしかし。
「とりあえず、事情をきくのが先よね」
いきなり城之内たちに、もうひとりの遊戯に会わすのはどうかと思いなおし、
一人そのまま、遊戯…もとい、ユウギが歩いていった方向。
すなわち、校庭にむかって杏子は校舎の中から駆け出してゆく。
門の少し先に彼らが停めていた車が目にはいる。
そのまま、二人が車に乗り込むのを静かに確認し見届ける。
それとほぼ同時。
『
心の中より呼びかけてくる自分を呼ぶ声。
そしてまた。
「…あれ?お兄ちゃん?…えっと…?海馬くんは?それに城之内くんたちは?」
ようやく目覚めて姿を霊体として現し、今はユウギとなっているもう一人の自分にと問いかける遊戯。
遊戯は今まで何があったのかは覚えていない。
というか今の今まで彼は気絶している状態であり、意識がなかった。
それゆえにユウギが瀬戸を完璧なまでにカードゲームで打ち負かしたことを遊戯は知らない。
「カツヤとヒロトなら無事だ。あとセトは今あいつらに命じて…もとい、お願いしてつれて帰ってもらった」
嘘ではない。
完全なる事実でもないが。
もし、ここであのボディーガードの男性二人を催眠術のようなもので操っている。
とでもいったら、遊戯から延々と言われるのは目に見えている。
彼とて、自分でもそういった類なものは好きではないのだから。
「そういえば。海馬くんから爺ちゃんのカード、かえしてもらえたの?お兄ちゃん?」
不安そうに問いかけてくるそんな遊戯の問いかけに、
「ああ。ここにあるぞ」
いって、カードを遊戯にみせて安心させようとするユウギ。
実際は返してもらった…というよりは、取り戻した。
というほうが正解なのだが。
「そうなんだ。よかった。海馬くん、わかってくれたんだ」
いや、それは違うんだが……
思わず突っ込みそうになるその声をどうにか押し殺す。
出来ればこれ以上、遊戯を悲しませたくはない。
というのもある。
そんな会話をしていると。
「ユウギお兄ちゃんっ!」
何やらユウギのほうにむかってかけられてくる声が一つ。
彼をそう呼ぶ人物は限られている。
ふと、声のほうを思わず同時に振り向くユウギと遊戯。
案の定、というか、やはりというか。
彼らのほうにむかって走ってくる杏子の姿が目に入る。
「あ。やっぱりユウギお兄ちゃんのほうだ。何があったの?いったい?
城之内と本田はかなりやられてたみたいだし…それに……」
話しをきけば、今日の朝、海馬瀬戸が遊戯の祖父のカードをすりかえた。
それゆえに、彼らは海馬を諭そうと呼び出したが、逆に返り討ちをうけた。
そう簡単に杏子は説明をうけている。
『城之内くんと本田くんはどうしたの?』
「遊戯、遊戯。その姿で話しかけても杏子にはきこえてないぞ?」
思わずそのことを失念して杏子に話しかけている遊戯に苦笑しながらも突っ込みをいれるユウギ。
「あ。遊戯のほうの霊体も今は表のほうにでてきてるんだ。
でも、やっぱりあたしにはみえないんだよね。あ、城之内と本田なら、校舎の中で、
遊戯と海馬くんの姿をさがしてるはずだよ。…あ、二人とも何かこっちにきづいたみたい」
ふとみれば、校舎の中からこちらをみている二人の姿が遠目に映りこむ。
「なら、とりあえず、俺は奥にひっこむな」
『あ。まってよ。お兄ちゃん。せっかくなんだし。城之内くんたちにお兄ちゃん、ちゃんと挨拶しない?ね?』
奥に引っ込もうとしたユウギをにこやかな笑みで押しとどめる遊戯。
「って…遊戯?おい?」
一瞬、遊戯が何をいいたいのか理解しかねて思わずつぶやくユウギに対し、
『だってさ。お兄ちゃんは二人のことをしってても、城之内くんたちはまだ知らないんだよね?
ここはやっぱり、いい機会だし、きちんと挨拶とか話しとかしておいたほうがいいかな~
とか僕としては思うわけで……』
「って、だから何でそうなる!?」
『え~?だって、お兄ちゃんにとっても二人は大切な友達なんでしょ?だったらいいじゃない?』
「そういう問題かっ!」
『あ。もしかしてお兄ちゃん、城之内くんたちがお兄ちゃんのこと怖がるとかおもってる?』
「そうじゃないっ!というか、普通混乱するだろうがっ!」
何やらそんな言い合いをしているそんな二人。
…というか傍目にはユウギが独り言をいっているようにしか映らない。
だがしかし、
「…あ~…何を二人で話してるのか大体見当はつくわ……これは…」
おもわず目をぱちくりさせながら、面白いのでしばらく観察にとどまろうと傍観者を決め込む杏子。
視える存在がみれば、まったく同じ容姿をしている身長の違う二人が言い争いをしているように視えるのだが。
?あれは?
「あれ?…あれは、杏子に…それに…遊戯…か?」
「いや。遊戯にしちゃ、何かこう……」
ふと、窓からみえる校庭にいる二人に気づいて足をとめる。
シルエット的には遊戯には間違いはない。
間違いはないが……
「……遊戯のやつのほうが身長…たかくないか?」
絶対にいくら遠目だからといっても身長の差は歴然としている二人である。
そんな見間違いなどするはずもない。
「…とにかく、いってみるか」
「だな。海馬のやつのこともきにかかるしな」
そんな会話をしながら、校庭にいる二人の下に、城之内と本田もまた向かってゆく。
「そもそも、何で今、そんな話になるんだ!?」
それはユウギとしては至極最もな意見。
『でもさ。いずれはきちんと話さなきゃいけないとおもうし。
それに、僕が説明するより、お兄ちゃんから話したほうがいいとおもうんだ。僕』
「だからといって、なぜに今!?」
『あ。二人がこっちにきてる。ってことで僕のほうが奥にひっこむね~。
それじゃ。お兄ちゃんv海馬くんのこととかの説明よろしくv』
「って、こらまてっ!遊戯!!おまえのほうが心の奥に引っ込むな~~!!!」
『
『そうそう。王子。小さいほうの王子のいうことももっともだし~』
「マハード!マナっ!おまえらまでそういうかっ!!?」
……ぷっ。
「あはは!おかしいっ!めずらしくユウギお兄ちゃんがあわててる~。
たぶん遊戯のことだから、城之内たちにもちゃんとお兄ちゃんから説明して。
とでもいって奥にひっこんだんじゃない?く…くるしいっ!」
しばし、傍観しながらそんなユウギの様子をみていた杏子がふいに笑い出しはじめる。
しかもかなりお腹を抱えて。
杏子の目からみれば、ユウギ一人が横をむいてわめいているようにしか映らない。
映らないが…大体何をいっているのか見当がつくのものまた楽しい。
「ったく…遊戯のやつ……変なところがこの俺とまったく同じで頑固なんだから……」
『あ。王子、認めてるんだ。自分も頑固だっ。ていうの』
『そもそも、遊戯殿と
杏子のそんな様子には気にもとめず、
遊戯の態度に多少自分と重ね合わせてため息まじりにつぶやくユウギ。
そんなカレにとすかさず突っ込みをいれているマナとマハード。
たしかに、マハードのいうとおりではある。
いうとおりではあるが……
しかし…この格好でいきなりヒロトたちと…どう説明しろっていうんだ!?
ともあれ、今は何よりもそのことを考えなければいけないのにハタ、と思い当たる。
ユウギがそう思い当たるとほぼ同時。
「杏子っ!」
ユウギと杏子のもとにとかけてくる城之内と本田。
「…遊戯!……って…遊戯…だよな?」
そして、城之内が杏子をよび、そして本田が遊戯を呼びかけ、その違和感に気づいて一瞬戸惑う。
「えっと。身長っていきなり伸びるものなのか?」
そして、その違和感。
すなわち、身長の差に気づいて、杏子とユウギの姿をしばし交互にながめつつ、
きょとんとしながら真剣な表情で本田に問いかけている城之内。
「んなわけあるかっ!」
そんな城之内の問いをすかさず否定している本田であるが。
だけども、目の前…つまりは、杏子の横にいる彼はどうみても遊戯そのもの。
いや、何というか…いつもの遊戯とは雰囲気は多少異なっているが。
「まあ、遊戯の場合の身長はちょっとした事情でストップしている。というのが現状だが……」
そんな彼らの疑問に答えるしかないか…とあるいみ覚悟をきめてため息まじりにいうユウギ。
いつもの遊戯の声がわりしていないあの独特のかわいい甲高い声ではなく、
かなり落ち着いた、聞いていて何か心地よいような声。
「えっと。城之内、本田。紹介しとくわね。彼が遊戯がよくいってた『ユウギお兄ちゃん』よ」
未だに多少先ほどの笑いをこらえつつも、そんな二人にと説明している杏子であるが。
「遊戯…って、姿も名前もまったく同じなのか?」
突っ込むところはそこではないとおもうのだが。
なぜかそこにあまり驚くことなく突っ込みしている本田。
まあ、世の中、似ている人は三人いるし。
という概念のもとにあまり驚いていないようなのだが。
普通はもっと驚くであろうに……
「はい。あとは自分で説明してねvお兄ちゃんv」
「あのな…杏子……。ふぅ。仕方ない。…まずは、ひとまず始めまして。といっておくべきだろうな。
俺のほうは二人のことはよく知っているけど」
覚悟をきめてため息まじりに大きく息を吐きながら話し始める。
「「よく知っている?」」
そんなユウギの台詞に思わず同時につぶやく本田と城之内。
遊戯にそっくりな…だがしかし、身長、雰囲気…そして声のことなる。
強いていえば、遊戯よりもかなり大人びた、それでいて頼りがいのありそうな雰囲気。
格好いい。
というのは彼のようなことをいうのかもしれない。
と一瞬思えるほどに。
そう思わせる何かが目の前の遊戯そっくりの彼にはある。
そしてふと、
「?そういや、えっと……」
少し気になることがあり、問いかけようとするものの、何と呼んでいいのかわからない。
「ああ。俺のこともユウギと呼んでくれ。
俺はもう一人の二人がよく知っている遊戯であり、そしてまた、遊戯もまた俺でもあるし」
「「??」」
そういわれても、はっきりとはよく理解できない。
「まあ、簡単にいえば、遊戯と俺は互いに分身のような存在だしな」
嘘ではない。
魂の分身なのだから。
「分身?そりゃ、どういう……」
そんな彼の言葉に思わず首をかしげる城之内。
「まあ、簡単にいえば、俺は遊戯のもう一つの魂というか人格、といったところなんだが。
遊戯が千年パズルを組み立てた状態で所有することによって始めて表にでてこれるんだけどな」
「「…は!?」」
「ん~。よくわからんが。…って、あれ?なら、遊戯は?」
「それが…あいつ、心の奥にひっこんだままでてこなくてな……
きちんとこの俺からおまえたちに説明すべきだ、とか何とかいって……」
そこでまた再びため息。
心の奥。
…つまりは…二重人格みたいなものか?
それにしても、それで身長までかわるか?
ま、そういうケースもあるのかもしれないな。
そんなことをおもいつつ、
「ちょ。ちょっとまて。つまり、えっと、おまえもまた遊戯であって、つまり。
格好いいほうの遊戯の人格が表にでている姿では身長も異なる。とこういうことか?」
一般によく二重人格というか多重人格者というものがいる。
というのは噂には聞いているので知っている。
ゆえにこその質問。
「あ。本田。それ、以前あたしがいって遊戯が傷ついたたとえ」
そんな本田の問いかけに、昔のことを思いだして突っ込みをしている杏子。
「まあ、たしかにこっちの遊戯のほうが雰囲気からしても格好いい。というのは認めるけど。
…ま、ようわからんが、とにかく遊戯なんだな。おまえも」
そんな本田やユウギの説明をききながらも、それであっさりと納得している城之内。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それで納得するか?ふつう?二人とも?」
前世といい、現世といい。
魂の色や、性格はあまりどうやらかわらないらしい……
「ま。どっちの遊戯でも、遊戯には違いないな」
「そういや、海馬のやつはどうしたんだ?」
「というか、もしかしてあの海馬のボディーガードをのしたのはおまえか?」
あまりといえばあまりのあっさりした納得の仕方に、多少拍子抜けするものの、
だがしかし、それもまたかなり懐かしくもある。
え~!?おまえって、王子だったのか!?……ま、いっか。どうでも。ユウギには違いないし。
ユウギはユウギで王子でもユウギにはかわりないんだろ?なら関係ないじゃないか。
そういったかつての彼らの言葉。
「え?あ、ああ。一応……」
「すげ~!!こんど、やりかたおしえてくれよっ!この俺ですらあいつらにかなわなかったんだしっ!」
「それより。何かききたかったんじゃないのか?カツヤ?」
さきほど城之内が聞きかけた問い。
苦笑しながらもそのことに触れる。
「いや、何でパズルをおまえがもってるのかきこうとおもって。
だけど、おまえもまた遊戯なんだろ?ならもってて当たり前だし」
遊戯が大切にしているあのパズルをいくらそっくりさんといえど、そしてまた親戚といえど、
簡単に預けたりするはずがない。
そう思ったゆえに問いかけようとしたのだが、どうやら今の説明からすると、
目の前の遊戯は遊戯の中にとある別の人格らしい。
そうなぜかあまり疑問に思うことなくあっさりと納得している城之内。
『わ~。やっぱり本田くんも、城之内くんもすごいね。すぐにお兄ちゃんと打ち解けてる~』
「って!遊戯っ!いきなり自分から奥に引っ込んで全部俺に押し付けるなっ!」
そんな会話をしている最中、心の奥に引っ込んでいた遊戯が表に出てきてそんな感想を漏らす。
『でも、僕じゃ、何があったのかは説明できないよ?僕気絶してたし』
「だからといって、こっちも説明にこまるだろうが」
『でも、二人とも、あっさりと納得してるみたいだよ?』
「あ…あのな~……」
ぽうっと遊戯が首からかけているパズルが光ったかとおもうと、
いきなり横に向いて何やら話し始めている遊戯の姿。
とはいえ、城之内たちには彼が何を話しているのかは判らない。
念のために、ユウギは遊戯と話すときには古代エジプト語で話している。
それは、彼なりの配慮。
「?いきなり何いってるんだ?」
「何か、誰かと話してるみたいだけど…杏子?」
首をかしげる二人とは対照的に、またやってる。
というような表情をうかべている杏子にと問いかける本田であるが。
そんな彼らの疑問に苦笑しながら、
「ん~。遊戯の中には二つの人格が今は共存してる状態だし。
ちなみに、ユウギお兄ちゃんってもう一人の遊戯のことはあたしは昔から呼んでるけど」
何やらいきなり一人で…だがしかし、どうやら誰か……
話しの内容からすれば、『遊戯』と話しているらしきユウギの姿をみながらも、
杏子に問いかけてくる二人に対し、彼女にできる範囲の説明をしている杏子。
「それはそうと、海馬のやつは?…というか。おい。えっと…遊戯?例のやつはどうなったんだ?」
身長と雰囲気が違えども、どこをどうみても遊戯である。
それゆえに、あまり違和感を感じず問いかける城之内。
この程度の人格変化ならうちのオヤジよりよほどましだしな……
そんなことを思っていたりする。
あまり身長の誤差に関しては突っ込まないタイプらしい。
そんな城之内の問いかけに、
「セトなら、さきほど男達と共に家にもどったぞ?あとカードのほうはこのとおり取り戻してある」
いいつつも、懐からブルーアイズのカードを取り出して城之内にと見せているユウギ。
『でも。ほんっと海馬くんがわかってくれてよかった~』
完全に海馬が改心してもどしてくれた、と思い込んでいる遊戯の声に多少後ろめたさを感じてしまう。
まあ、だが事実はいずれわかること。
だが、それは今彼がしる必要性はない。
それゆえのユウギの判断。
「って、よくあの海馬が素直にもどしてくれたな」
「てっきりかなりごねるかとおもったぜ」
何しろ、自分達に自分のボディーガードを仕掛けて攻撃してきた海馬である。
それゆえに二人の反応は最もなのだが。
「まあ、セトにゲームを申し込んで。俺がかったらカードをもどしてもらう。そう約束したからな」
『って、お兄ちゃん、海馬くんとゲームしたの?…まさか、闇のゲーム?』
ぎくっ。
さすがというか何というか、図星を突かれて一瞬固まるユウギ。
『あ~!!やっぱりそうなんだ!お兄ちゃんが本気になったら誰もかてないよっ!
というか、海馬くんへの罰ゲーム…変なのじゃないよね!?』
横で騒ぐ遊戯とは対照的に、
「って、まさかあの海馬にかったのか!?」
「というか、奴は世界チャンピオンとかいってたぞ!?デュエルモンスターズの!?」
「だから?そんなのは関係ないぜ?」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
驚愕の声をあげる本田と城之内の台詞に、さらっといいきるユウギ。
そんな彼の言葉に思わず黙り込む二人であるが。
関係ない。
そういいきる彼の実力はいったいどれほどのものなのだろう?
そんな疑問が二人の脳裏をよぎる。
「ま、とりあえず。それじゃ、俺はそろそろ引っ込むから。後はよろしくな。遊戯。二人とも、またな」
『あ!ちょっと!お兄ちゃんっ!!』
カッ!!
これ以上あまり突っ込まれたくないがゆえか、はたまた説明するのが面倒なのか。
いきなり遊戯が表に幽体として出てきているのもあり自分の心の部屋にと引っ込むユウギ。
彼がそういうと同時に、千年パズルがまばゆい光を発し、
ユウギの体が一瞬、光りにつつまれ、
やがてまるで今度は先ほどは背伸びするかのごとくに伸びた身長が、
今度は逆に時をもどしたかのようにいつもの遊戯の身長にともどってゆく。
「ちょっと!お兄ちゃん!だからまたいきなりひっこまないでよ~~!!」
『さきほどのおかえしだ』
「そんなのひどいよ~~!!!」
「「って…なっ!?」」
いきなり目の前の遊戯の持っている千年パズル、と聞いているそれが光ったかとおもうと。
光りがなくなった後にその場にいるのは、いつもの見慣れた遊戯の姿。
きょろきょろと周囲を見渡しても先ほどの背の高いほうの遊戯の姿はない。
つまりは、二人が同一人物である。
というある意味証拠でもある。
何しろ周囲には隠れる場所も何もないただの校庭なのだから。
光りに目がくらみ、目を閉じたのはほんの一瞬。
一秒にもみたない間。
普通に考えてそんな短い時間でどこかに移動するなどできるはずがない。
「昔はよくみてたけど、今みても二人が変わるところっていつもすごいよね」
一人、すでに昔からというか小学校のころから見慣れていたがゆえにあまり動じていない杏子。
「も~。お兄ちゃんったら。あとでお兄ちゃんの心の部屋に押しかけて文句いってやるんだからっ!」
ぶぅ。
多少頬を膨らませてぶつぶついっている遊戯。
さきほどの遊戯とは異なり、いつもの聞きなれた甲高い、多少こどもじみた声。
「…遊戯?えっと、さっきまでの遊戯はどうしたんだ?」
「ユウギお兄ちゃんなら、いきなり心の奥の部屋にひっこんじゃった。
ちなみに、さっきまで出ていたもう一人の僕がよく僕がいっているユウギお兄ちゃんだよ?」
って…人格同士で話すことが可能なのか?
などと思う本田とは対照的に、
「遊戯が二人か~。でもさっきの遊戯のほうが何かかっこいいぜ?」
「ひど~いっ!城之内くんっ!そりゃ、お兄ちゃんには僕は到底かなわないけどっ!
僕だっていつかはお兄ちゃんみたいになるんだからっ!」
多少からかい半分、本気半分で遊戯にいっている城之内。
「と、ところで?今、もうひとりの遊戯のほうがいってたけど。
海馬のやつに勝った…って。もう一人のおまえはそんなに強いのか?」
かなり気になっている疑問を遊戯にとひとまずむける本田。
何しろあの海馬は全国チャンピオン。
そう聞いている。
クラスメートがいうには、世界大会でもかなりの実力を誇り、一位や二位を争う立場とか。
「はっきりいって。僕、心の中で昔からお兄ちゃんとゲームよくやってるけど。
一度もかてたことないよ?それに僕の勉強とかもお兄ちゃんがみてくれてるわけであって。
…何しろお兄ちゃん、昔、表にでてたとき、
海外大学受験あっさりと合格しちゃったような頭脳のもちぬしだし……」
精神年齢的にはたしかにもう一人の自分はかなりの年齢であるのは判っている。
わかってはいるが、この時代などのことを書物などで覚えただけでどうしてそんなにできるのか。
遊戯にとっては理解不能。
というか、永遠にたどりつけない憧れの存在。
それがもう一人の自分であるユウギ、という存在。
「「…もうひとりのおまえって……」」
そんな遊戯のしみじみとした感想に思わず突っ込みをいれている本田と城之内。
「とりあえず。いつまでもこんなところにいても何だし。
そろそろかえらない?どんどん暗くなるわよ?あ、遊戯?荷物は?」
「あ。たぶんきっと教室だとおもう。いってくる~」
杏子に指摘され、背負っていた鞄がないのに気づいて、ぱたぱたと教室にむかって走ってゆく遊戯。
そんな遊戯を見送りつつ、
「な、なんか遊戯って…もしかして、かなりすごい?」
「というか、別の人格か~」
「というか。もう一人の遊戯は昔のエジプトの王様だよ?」
「「王!!??」」
さらっという杏子の台詞に、思わず同時につっこみをいれる本田と城之内。
「うん。たしか三千年前の古代エジブトの王様だって。遊戯のお爺さんもいってたし。
元々、とある事情で遊戯のもっている千年パズルの中に魂と肉体封じたんだって。
で、遊戯がパズルを組み立てたことによって、再び表にでてこれたらしいよ?
なので、別の人格、というよりは別々の魂…といえるのかな?
でも、あのふたりってものすっごく似た物同士なんだよね。
遊戯のお爺ちゃんも何か二人の魂は分身のようなもの。っていってるから。
何か他にも理由があるのかもしれないけど。それは私もまだ聞いたことないし」
事実、分身、というかまったく同一の魂が二つに分かれているのだが。
それを知っているのはユウギと、そしてかつての側近でもあったシモンこと双六のみ。
そしてまた、
その他に関しては、ことごとくその事実は完全に伏せられ、歴史上にも記録は残されていない……
「も…もしかして、オカルト系か?…もしかして…あの写真……」
杏子の台詞をきいて、この前、遊戯の家でみた写真のことを思い出す。
遊戯そっくりの人物が小さな遊戯とともに映っていたあの写真。
あからさまに日本人ではなかったようなきがするが、まったく遊戯そのものの姿であった。
いつもなら、オカルト系はものすごく身震いし、気絶するほど嫌いなのに、
なぜかすんなりとそれを納得している自分にもかなり驚きながらもつぶやく城之内。
あの写真をみたときにも感じた懐かしさ。
それは始めて高校で遊戯にあったときにも感じた。
それゆえに、こう何か遊戯をみていたらこう、もっとこう、何かがちがうっ!
という思いもあり、遊戯を男らしくしくするためにも、そしてまたいらいらの解消のためにも、
遊戯にちょっかいばかりかけていた自分の行為。
自分の中で遊戯はこうあるべきである姿。
というような雰囲気をもう一人のあの遊戯はもっていた。
それが何を意味しているのかは城之内にはわからない。
それは彼の魂が記憶しているかつての
「あれ?城之内もみたんだ。あの写真。
ほんっと、遊戯とユウギお兄ちゃんってそっくりでしょ?だからあたしもあまり違和感感じないんだ~」
「ちょっとまて。いったい何のことだ?」
そんな二人にと話しがわからずに首をかしげながらも問いかける。
杏子と城之内だけどうやら会話が通じてひとりだけ仲間はずれ状態。
それゆえの問いかけ……
ともあれ、すでに時間も遅い、というのもあり。
教室から戻ってきた遊戯を伴い、三人はそれぞれに帰路についてゆく。
道中、様々それぞれに抱いている疑問を問いかけながら――
ここは……
周囲に見えるのは、どうみてもデュエルモンスターズにでてくるモンスターたちの姿。
それ以外にもまだみたことがないような魔物の姿も見えてはいるが。
彼の姿をみつけて追いかけてくるそれらたち。
と。
「セト様!!」
ぐいっ。
いきなり下の名前を呼ばれて、手をひっぱられる。
そして、
「セト様。こちらへ!はやくっ!」
どうやら女性のようである。
いつもなら、その手を普通ならば振り払う。
だがしかし……
「おまえ……は……」
目の前にて自分の手をひいてくる一人の女性。
まだ若い、十代後半といった若い女性。
その物腰穏やかな姿とは対照的に、どこかとても強い力をかんじざるを得ない。
だが…それ以上に感じる不思議な懐かしさ。
「…セト様。私はセト様をお守りするもの」
向かってくる魔物たち。
そんな魔物たちとセトとの間にと立ちふさがり、きっとセトをかばうようにしてそれらを見据える。
「って、おいっ!」
セトが思わずそんな彼女を止めようとしたその矢先。
まばゆいばかりの白い…そう、白い光りが彼の視界を埋め尽くしてゆく。
光りの中にみえたものは……
「あれは……ブルー…アイ…ズ?」
なぜか、そこには女性の姿はなく、伝説のレアカードともいわれていた。
今日、自分が遊戯から奪おうとした
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あとがきもどき:
薫:さてさて。ようやく海馬編は終了ですv
次回でちらっとDM編にでてきた杏子の回をばv
あと、海馬が目覚めたのちの話も少しいく予定v
やっぱりお約束にはいれないとねv海馬四天王v(笑
何ともあれ、支離滅裂だと自覚しながらゆくのですv
ではまた次回にてv
2007年8月28日(火)
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