まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

もしかして、もしかしなくても、この海馬編は3話では終わりそうにないかな(汗
そろそろ、ちまちま、ぼろぼろ裏設定でまくりですv
今回の一番のネックはさらっと暴露している白竜の真実v(こらまて
何ともあれ、ゆくのですv

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「さて…と」
どうやらこの場にいた悪意ある男達はすべて気絶しているようである。
精神を集中すれば、地下のほうからしてくる人の気配。
空気の感覚からしても、おそらく隠し扉があり、そこから地下にとつながっているのであろう。
きょろきょろと満たせば、壁に描かれている絵の中の一つから違和感を感じる。
「これか」
その違和感を感じる絵の一つに手をあてて、すこしばかり意識を集中する。
と。
ガッコン……
それと同時にほのかに絵が光り、横の壁が左右にと開く。
何らかの魔力を使った隠し扉。
まず、そういった分野に通じていなければできない仕掛け。
「奥は…深いのかな?」
そんなことをおもっていると、ふといくつもの足音がしたのほうから聞こえてくる。
「?」
数的には十数名、といったところであろうか。
そして。
「はやくっ。いそいでっ!」
「みんな、がんばって!」
などといった掛け声が。
そしてまた、
「今のうちに、全員早く外にでてっ!」
何やら切羽詰まったような少年の声も聞こえてくる。
「?いったい?」
どうやら何かがおこっているらしい。
それゆえに、そのままその隠し扉の向こう側にとある階段を彼はゆっくりと降りてゆく……

コッコッコッ。
「…誰かくる?」
びくびく、おどおど。
もしかして悪い人たちの仲間がやってきたのでは。
閉じ込められていた女性たちはその場に震え上がる。
そんな彼女たちを守るかのように、すっと前にでている二人の女性と、そして一人の少年。
階段をのぼってゆくとしばらくして、少し広い場所にとでた。
そこには部屋などはないものの、部屋の中にいくつかのベットなどが置かれている場所。
どうやらここは、見張り役のもの休憩場所か何からしい。
というのは何となく理解できる。

さっきまでそこにいたはずの人形のような男が消えてる……
さきほどまでそこにいたはずの人の姿が見当たらない。
そのことに対して不安になる。
もし、まったく動かなかったあの人物が仲間を呼びにいっていたら……
そう思っている矢先、何やら上のほうから降りて来るらしき足音が一つ。
いやでも逃げ出した女性たち全員に緊張が走ってゆく……

  ~第9話~

「うん?…まさか…君は……」
店にとやってきた海馬の姿をみて思わず唖然として遊戯と彼をみくらべる。
確か今日は転校生の家にいくとかいっていたようじゃが……
しかも、もどってきたときに何か思案顔であったファラオのことも気にかかっていた。
『やはりシモンにもわかったか。どうやらセトの生まれ変わりらしい。
  だが…少し問題が。セトはかつてのように魂に光を今は持ちえていない』
遊戯が家と兼用しているこの店に友達をつれてくる、というのはまず珍しい。
ヒロトとカツヤは前回のこともあり理解しているが、美穂と瀬戸の姿をみるのは始めて。
美穂はともかく、気になるのは海馬瀬戸。
となのった少年のこと。
思わず双六が目を見開いてしまい、遊戯の横にいるファラオに視線をむけるのも仕方がないこと。
彼同様、肌の色は違えども、かつての姿そのまま。
ヒロトやカツヤにつづいてセトまで……
たしかに、自分達は願った。
ファラオが再び復活するときに自分達もまた転生し、彼とともに戦いたい…と。
すでに、アイシスも現世に転生してきているのも知っている。
かつての六神官。
そのうちの数名は今は様々な国の上層部のメンバーとして君臨していたりする。
ということも。
静かに、それでいてうなづきなからも説明してくる『ユウギ』の台詞に、納得せざるを得ない双六。
いわれてみれば、たしかにその瞳に命というか輝きが宿っていない。
かつての彼にはあったあの輝きが。
本来もちいているはずの光を何か負の心で覆っているのがみてとれる。
「ほっほっほっ。儂のとっておきのカードが役にたちますかな?」
なぜに、王が彼をこの場につれてきたのか瞬時に理解する。
即ち…かつての彼の魂の光。
その鍵となるカードはたしかに自分が持っている。
『あれは、シモンが新しく育てている精霊が宿っているものだから問題はないだろ?』
今の彼をあのキサラがもし視れば、悲しむのは必死。
ファラオのいいたいことはわかる。
だが…今のこのセトにあのカードをみせて大丈夫なのか?
という不安も多少ある。
「お願い。爺ちゃん、みせてあげて」
そんな祖父ともう一人の自分の会話をききつつも、遊戯もまた祖父である双六に懇願する。
あんなにカードを大切にしている人が悪い人だ、とはおもえない。
いや、思いたくない。
万が一、心が負の力にまけていようとも、それに打ち勝つ力をも持っているはずだ。
そう、かつて『ユウギ』からきいたように。
闇の邪神や、その闇に飲み込まれてしまった実の父親にすら屈しなかったその心の強さを信じたい。
「お願いします。是非」
ユウギと双六の会話は彼の耳にははいっていない。
それゆえに、普通に自分や遊戯に話しかけたものだ。
そう理解しつつも、どうにかそのカードを見極めようと下手にでる。
ファラオと遊戯、そしてさらにはセトの生まれ変わりとみられる海馬瀬戸。
その三人に懇願されては断るすべはない。
「しょうがないの。ちょっとだけだぞ」
いいつつも、箱にといれているカードの中から一枚を取り出し、
「これじゃ」
いって、それをカウンターテーブルの上にちょこんと手をおき遊戯たちのほうに向ける双六。
どうせあまりたいしたことはないカードだろうがな。
そんなことを思いながらも、ふとそれに視線を落とすと同時。
「こ…これはっ!?」
その場に硬直してしまう海馬。
まるで電撃に撃たれたような感覚が襲い来る。
青眼の白竜【ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン】
そう描かれている文字と、そして白い竜の姿がそのカードの絵柄には描かれている。
「なんだ。もっとダイヤとか宝石とかついてるのかとおもっちゃった」
「他のとかわんねえよな」
「おう」
それを目にして、きょとんとしながらもいう美穂、城之内、本田であるが。
彼らはこのカードがもつ意味をまったくしらない。
だが、何かどこかで見たような気がしなくもないという不思議な感覚に一瞬襲われる。
それは、彼らの魂がもつ記憶があるがゆえ。
「う~ん。わかっとらんな。これは。これは青眼の白竜ブルーアイズホワイトドラゴン。といって。
  あまりの強さに製造中止になってしまった世界に四枚しかない、
  マニアなら手がでるほどほしがる超ウルトラ級のレアカードじゃ。
  もっとも、こいつはジュニアじゃがの」
本来の彼女でもある青眼のキサラにはすでに了解をとり、このカードの精霊は別なもの。
すなわち、シモンこと双六が今育てていっている精霊のカード。
判っていないらしい城之内たちに説明するように丁寧に説明する。
カードの価値からすればまず、手に入らない貴重品。
だが、このカードは……
「そういわれれば、何だかおごそかな感じがするわね」
双六の説明に、しみじみとそのカードをみながらもつぶやく杏子。
この竜…どこかで……
そんな親近感のようなものが湧き出すのは気のせいかしら?
杏子もまたそんな感覚にと襲われる。
それは気のせいでも何でもなく、彼らの魂の絆からきているもの。
「お、お爺さん、そういうカードが一番危険なんですっ!
  美化委員として忠告します。こういうものは厳重に保管してくださいっ!」
ダッン!
そんな双六の説明をきき、カウンターに両手をついて体を前のめりにだしながらも力説する本田。
世界に四枚なんてそれこそかなり危険分野。
何か起こる前に対策をして自衛を促すことも美化委員の使命。
そんな思いからの行動なのであるが。
「何で美化委員がそんな心配をするんじゃ?」
そんな本田の台詞に一瞬目を丸くして、苦笑しながらも答える双六。
「た…たしかに……」
そんな双六の突っ込みに、はた、と我にと戻ってうなづく本田。
いわれてみれば何かどこかが違うような気がする。
今さらながらにそんなことを思っていると、
「お、お爺さん!そのカードをこのケースのカード全部と交換してくださいっ!」
ドガッ。
何をもってきていたのかとおもいきや。
車にのっているときから気になっていたちょっとした大きさのあるケース鞄。
よく旅行や、お金などをいれるようなそんなケース。
それを双六がいるレジのカウンターにとどかっと置いて開く海馬。
彼のもっているケースの中にはぴっしりと埋め尽くされているデュェルモンスターのカード。
万が一にも結構いいカードであった場合に交換の為にもってきていたカードすべて。
「え~!?」
「すげえっ!?」
だっん、とカウンターの上にケースを置いて、中身を見せている海馬。
枚数的にはかなりのものになるはずである。
それゆえに、驚愕の声をあげている本田と城之内。
たかが、一枚のカードと、おそらく数百枚以上はあるであろうカードを交換してくれ。
というのは彼らの感覚からは理解できない。
「ほっほっほっ。だぁめ」
だがしかし、そんな彼の申し出をいともあっさりと却下する遊戯の祖父である武藤双六。
「こ、ことわるのもすげえっ!」
「えええっ!?」
そんな祖父の即座の否定にまたまた驚愕の声をだしている城之内たち。
彼らの感覚からすれば、なぜ断るのかわからない。
世界に四枚しかいまだに市販されていない。
というその意味は、デュエルモンスターズの世界的人気を知らない彼らにとっては理解不能。
「海馬…セト…くん、じゃったの。君は。瀬戸くん。これは君がもとめるものじゃないぞい?
  君の気持ちはわからなくもないが…これは儂にとってはとても大切なものなんじゃ。
  儂がこのカードを手放したくないのは単に珍しいものだからじゃないしの。
  このカードは大切なアメリカの友人から譲り受けているものなんじゃ。
  大切な思い出が詰まっている宝物のカードなんじゃよ。手放せるわけがなかろう?
  じゃからキサラ殿にお願いして、これは彼女の力とは別のものになっとるしの」
彼の気持ちは痛いほどわかるつもりではある。
だがしかし、このカードに封じられている精霊は、彼の魂が求めている彼女ではない。
とはいえ、目の前のこの少年はどうして自分がカードに惹かれているのか。
というのをどうやら理解していないようである。
ただ、純粋なまでに、最強、といわれているカードがほしい。
ただ、それだけの感情で動いているように垣間見える。
キサラ…って、あ、たしかこの青眼の白竜の魂の人の名前だっけ?
双六の言葉にふとそんこなとを思う遊戯。
「それに。じゃ。本当に大切な宝物などには心が宿るんじゃ。
  じゃから、セトくんもこのトランク一杯のカードを大切にしてあげることじゃ」
かつての彼は石版をとても大切にしていた。
初めのころはただの道具、としか見ていなかったようであるが。
今の彼はそのときのあの姿と重なってみえる。
心とは、すなわち精霊のこと。
また、その力がつよければあらたな精霊を誕生させることすらもできる。
そう、自分が今、このカードに新たな精霊を宿して育てているように。
くっ。
そんな双六の説明に、思わず一瞬顔をしかめつつも、
「…ほんと、そうですね。僕がまちがってました」
ここで力づくで奪うことも簡単であるが、さすがに目撃者が多すぎる。
ましてやいつ何どき、他の客がこんな小さな店だとて入ってくるかわからない。
それゆえにこの場は一度引き下がり、バタンとケースを閉じ、
「……僕はこれでかえらせてもらうよ」
いって、そのままくるりと向きを変えて外でまっている車のほうにと歩いてゆく。
「あ、海馬くん」
『…あれは納得してないな。絶対に』
そんな海馬の後姿を見送りながら、思わず声をかけている遊戯に、
ため息とともにそんなことをいっているユウギ。
そして、一方では、
「爺さん、いいこというじゃないか」
今の双六の台詞に感動して彼にと話しかけている城之内。
何でもお金や地位や品物。
それらよりも大切なものがある。
それをあの海馬に知らしめることができた。
そんな思いからも彼にエールを送っている城之内なのであるが。
「すご~い。みなおしちゃった」
「これこれ」
そして、そんな双六にカウンターの後ろに回りこんで抱きついている美穂。
美穂に抱きつかれてまんざらでもない声をだしている双六の姿。
「それはそうと、お爺さん?キサラ…って、誰ですか?」
一方で、さっき海馬くんに説明してたキサラ…って人は誰なんだろう?
そんな疑問を抱いて双六にと問いかけている杏子。
「うん?それはじゃの。
  このカードの原型となった精霊の持ち主。いや、当人といったほうがいいのかの?
  蒼き瞳のキサラ殿といっての。白き竜をその身に宿した女性じゃよ。
  このカードはその精霊の石版の姿をみて作られたものじゃからの」
「「「精霊の石版?」」」
双六の説明に異口同音で声をそろえ首をかしげる城之内、本田、美穂。
「うん。昔の人はそれぞれ、自分の精霊をもっていたらしいんだ。
  ちなみに、爺ちゃんの前世でもある、シモンって人の精霊はエクソディア。
  爺ちゃんはその精霊のカードもすべてそろえてるけど」
かつてもあまりの強さに国を守った後にその体を五つにわけて、王国の守りとして配置していたらしい。
その石版を元に作られたデュエルモンスターズのカードもまた五つのパーツにと分かれている。
古代の石版の伝説は、時をこえて、様々なものにと姿をかえて現代に至っている。
それは、タロットカードに姿をかえたり、または他のものに姿を変えたり…と。
そして今、現代に石版同様として蘇ったものが、【デュエルモンスターズ】というカードゲーム。
「まあ、ファラオの場合は三幻神が忠実なる僕じゃったからのぉ~……」
『三幻魔のほうは結構命令から脱線することもあったしな……』
そんな遊戯と双六の会話に、何やらしみじみといっているユウギ。
神と魔。
それら全てを従えていたかつての彼。
それゆえに、聖なる王、として未だにその伝説は語り継がれている。
だが、その名前や存在自体は歴史上からとある理由から抹殺されている存在。
それほどまでに崇高なる、それでいて聖なるファラオ
「えっと。お爺さん?遊戯?その説明って絶対に城之内や美穂にはわからないとおもうわよ?」
自分はかつて、ユウギや双六から詳しいことをきいて多少のことは知っている。
それゆえにそんな二人におもわず突っ込みをしている杏子であるが。
「そういえば、お兄ちゃん、城之内くんも昔、精霊もってたっていってなかったっけ?」
ふと、精霊という言葉で昔、祖父ともう一人の自分であるユウギから聞いたことを思い出し、
ちらり、と城之内をみながらさらっといっている遊戯。
『…ちょっとまて。遊戯……』
いきなりといえばいきなりな遊戯の台詞。
それゆえにあわててそんな遊戯の台詞をさえぎろうとするユウギであるが、
「ほっほっほっ。カツヤ殿は確か、根性で生み出していたのぉ。あれにはさすがにこの儂もたまげたの」
遊戯の問いかけに、双六もまたかつてのことを思い出し懐かしさを込めてそんなことをいっていたりする。
『……おい……』
そんな双六の台詞におもいっきりため息をつきながら額に手をあてているユウギ。
だが、当然この場においては双六と遊戯以外には彼の姿は視えていない。
「??カツヤ…って、もしかしてオレのとか?」
たしかに自分の名前は城之内克也。
である。
だがしかし、どうしてそこで自分の名前がでてくるのかがわからない。
戸惑いながら問いかけてくるそんな城之内の台詞に、
「いや。何。気にするな。城之内くん。君の前世の話しじゃよ」
にこやかに、さらっと問いかけを交わしている双六。
「…前世……って……」
いきなりそんなことをいわれても、ただ唖然とするしかない。
そういう系統はどちらかというと苦手な分野。
それゆえに多少固まる城之内とは対照的に、
「いや、ものすっげぇそれってきになるんだが…遊戯のお爺さん……」
多少興味を引かれつつも、こちらも同じく戸惑いながら問いかけている本田であるが。
「前世?前世って、あの前世?えっとね。美穂の前世はね。きっととっても綺麗な中世とかのお姫様v」
たしかに、彼女はあるいみ、お姫さま扱いをされていた。
というのはあるかもしれない。
巫女として、そして踊り子としてかなり皆に好かれていたことは疑いようがない。
何となく憎めないのは、今も昔も変わりない。
『シモンまでつられて彼らに昔のことをいってどうする……』
はあ~……
おもわず遊戯のペースにはまり、昔のことをさらっといっている双六に対して思わずため息をつく。
彼らは今は過去の、つまりはかつて自分とともに生きていたときの記憶はもっていない。
前世は前世、現世は現世。
そうして人は未来を紡いでゆく。
だが、それは過去から現在に至るまでつながっている一筋の道。
「ほっほっほっ。まあそれはご愛嬌。ということで。
  しかし、どうじゃの?君たちもこのデュエルモンスターズ、やってみるかの?
  何ならせっかくじゃし、この中から一組ほどカードを選んでもいいぞい?」
あ、爺ちゃん、さらっと話題をかえた。
さらっと話題をかえた双六に気づいて心の中で遊戯がそう思うとほぼ同時。
「ちなみに、遊戯の友達じゃしの。一組は無料にしとくが二組以上買う場合はやすくしとくぞ?」
いいながらも、売り物のデュエルモンスターズのカードをカウンターの上に取り出す双六。
最近はこのあたりでもブームになってきているので、なかなか手にはいらなくなってきている。
彼自身は海外から直接輸入で仕入れていたりするので、海外版。
そして日本版の両方のカードがこの店では手にはいる。
「お爺さん…あいかわらず商売上手ね……」
カードは十枚一組となり、中に何がはいっているかは買って中身をみなければわからない。
もっとも、中身を透視できる存在であれば、その心配は無用だが。
普通の人間にそんなことができるはずもない。
「え?いいの!?美穂、じゃ、これっ!」
美穂が喜んでその中の一つに手を出すと同時。
ふと顔を見合わせ、
「あ、なら、俺はこれっ!」
「あ、俺もっ!」
何やら交互に争うようにカードを選んでいる城之内と本田の姿。
そんな彼らの姿をみつつ、
「ほっほっほっ。よくよく考えて選ぶことじゃよ?」
カードは持ち主を選ぶ。
それは双六だからこそわかること。
双六が手にいれているカードのほとんどは…異界との扉の役目を担う魔力を秘めているもの。

しばし、カードの袋の山からいくつか選ぶ城之内、本田の姿が見受けられてゆく。

ブルーアイズ……
以前から、カタログをみて何か心引かれていたカード。
世界に四枚しかない。
というのもひかれ、攻撃、防御とも五つ星の超レアカード。
あのカードさえ手にいれられればもはや無敵、といっても過言ではない。
いや、そうでなくて……
心のどこかであの白き竜をもとめている自分がいる。
それは現物のカードをみてからなおらにその思いは強くなる。
この想いが何なのか…彼にも判らない。
それは…魂に刻み込まれた…魂の光の記憶がゆえ……
遊戯の家を後にしたものの、頭の中からあのカードのことが離れない。
「?ぼっちゃま?いかがなされました?」
問いかけてくる運転手の声も今の海馬には届かない。
そんな彼の様子に戸惑いをおぼえ、しばし顔を見合わせるボディーガードたち。
何としても…あのカードを手元に……
そう。
残りの三枚もすべて……


翌日。
「自分のカードの山から手元に五枚ほど引いて常にもっておいて、そして手元のカードをだしてゆくんだ。
  たとえば、元々のそれぞれのライフポイントを二千点にしておくとするでしょ?
  すると、攻撃力で負けたほうの落差の数値がそのライフポイントからひかれるんだ。
  で、常に手元のカードが五枚になるように攻撃がおわったらカードを常にひいておく。
  先にライフポイントが0になったほうが負け。
  そうでないときは手持ちのカードがなくなるまでやるんだ」
早速翌日、自分達もカードゲームをしてみる。
という城之内たちにと丁寧に説明をしている遊戯。
今はまだ朝のホームルーム前。
それゆえに教室にも生徒はまだまだら。
「お。デュエルモンスターズか」
「今、これ全国といわず世界的に流行ってるよな」
わらわらと、それに興味を抱いている生徒達が城之内と本田が囲んでいる席にと集まってくる。
「負けるな~。城之内!」
「美化委員も頑張れ!」
「おうっ!」
クラスメートの声援をうけ、意味もないのに制服を捲り上げている城之内に、
「ふふふ。美化委員の底力をみせてやるっ!」
などと、意味のわからないことをいっている本田であるが。
「とりあえず、細かなルールはやりながらおしえてくよ。どっちからいく?」
そんな二人をみながらもにこやかに説明を続ける遊戯に対し、
「じゃあ、俺から。ゾンビ。攻撃力800.やっぱフィールドは墓場、だな」
机の上にと広げているデュェルモンスターズ用のマップ。
そのマップに書かれている墓場の場所にカードをおく本田。
「次は俺だな。よっし。これだ。暗黒のドラゴン。攻撃力1500、フィールドは海。だ」
本田がカードを出したのをうけて、次に城之内がカードを選び一枚マップ上にと置く。
「魔法カードとか罠カードの場合はその場に伏せておいてすきなときに利用することができるんだよ。
  そして、攻撃として出したカードに書かれている数値。それによって勝負がきまるんだ」
それぞれ、手持ちのカードを一枚だしたことにより、
カードの山から一枚引いている彼らにと追加説明をしている遊戯。
「やった!俺の勝ちだ!」
「くそっ!まけたっ!」
攻撃力の上では負けている。
それゆえに悔しそうな声を出している本田であるが、
「ううん。城之内くんの負け。本田くんの勝ち」
そんな二人にとにこやかに言っている遊戯。
「だな。本田の勝ちだな」
「城之内、フィールドは選ばないとな」
そんな二人の対戦をみつつ、笑いながら突っ込みをいれてくるクラスメートたち。
「「え?!何で?!」」
そんな遊戯やクラスメートたちの突っ込みに、思わず同時に問いかける本田と城之内であるが。
「たしかに、攻撃力も守備力もゾンビは暗黒のドラゴンに負けるけど、
  だけど、そのフィールドは墓場。ゾンビの力は二倍になるんだ。
  カードはフィールドを選ぶことで攻撃力がパワーアップしたり、ダウンしたりするんだよ?」
「あの駆け引きがけっこうむずかしいんだよな~」
「何しろフィールドだけじゃなくて、罠カードとか魔法カードもくせものだよな」
わいわいわい。
カードのルールを知っているクラスメートたちがそんな会話で盛り上がっていたりする。
「くそぉ」
くやしまぎれに手にもっていたカードをそのまま机にたたきつける城之内。
「ふふふ。俺のカードには美化委員の魂が宿っているのだ」
そんな城之内に勝ち誇ったようにいっている本田。
「美化委員のくせにゾンビっていうのはきたねえよな」
「ふふふ。負け惜しみいうな」
そんな言い争いをしている二人に対し、
「ちなみに、カードによっては、いろいろな付属属性ついているものとかがあるから、
  それらも考えながら作戦をねってゆかないと」
なだめながらもさらに追加説明をしている遊戯。
「遊戯って、ゲームとかになると詳しいよな」
「というか、遊戯のやつは成績もいいらしいぞ?」
小学、中学時代から遊戯を知っているクラスメートがそんなことをいっていたりする。
もっとも、遊戯としては彼らとはあまり遊んだことはないのであるが。
「よっし!なら、次だっ!」
「よし、こいっ!」
気を取り直し、机にたたきつけたカードを再び拾い、椅子に座りなおして向き直る。
いつのまにか、だんだんとギャラリーの数は増えていっている。
「おはよぉ。…あれ?城之内くんと本田くんもデュエルモンスターズはじめたの?」
わいわいと、何やら騒がしい教室にとはいってゆく。
ふとみれば、一つの机をはさんでカードとにらめっこをしている本田と城之内の姿が目にはいる。
それゆえに、少し前にといる杏子にと問いかける美穂。
「ええ。海馬くんへの対抗心からね」
いつのまにかギャラリーが増えた席から少し離れた場所にいた杏子がそんな美穂にと説明する。
杏子からすれば思いっきりあきれ半分なのであるが。
「「それはこいつだ!!」」
「「……って、何ぃぃ!?」」
面白いまでにそんな杏子の台詞に反応し、ガタン、と椅子を立ち上がりそれぞれを指差しつつ言い放つ。
それもまったく異口同音に。
そのまま、机に手をついてにらみ合う格好になる本田と城之内であるが。
ふと、美穂の姿に気づき、
「あ。おはよう。美穂ちゃん。ふふふ。美穂ちゃん、みててくれよ?この俺は絶対に勝つ!」
改めて姿勢を正しなおして席にと着きなおす本田。
ゲームにかって、かっこいいところを美穂ちゃんにみてもらうんだっ!
そうして、美穂ちゃんは、俺のことをかっこいい…といって…
「ふふふ……」
一人、自分の妄想世界に入りかけるそんな本田とは対照的に、
「へっ。それはどうかなっ!」
さっきのようなヘマは二度とやらないぞ!
そう心におもいながらもカードを慎重に選んでいる城之内。
「城之内、がんばれ~」
「ゾンビにかてるカードじゃなきゃだめだぞ~」
わいわいわい。
さらに、集まってきたクラスメートたちから野次がとぶ。
わいわいと、次々にやってくるクラスメートたちも二人がゲームをしているのに気づいて近づいてくる。
何しろここ最近、このゲームは世界規模で有名となっている。
カードゲーム専門のテレビすらできているほどに。
わいわいと、クラスの中が二人の対戦にいろいろと野次を飛ばし始めているそんな中。
ガラッ。
何かクラスの中が騒がしいが……
そんなことを思いながらも教室の扉をあける。
そして、人ごみの中心にといる本田と城之内。
そしてそんな二人の間に座っている遊戯にと目をとめ、
「やあ。おはよう。遊戯くん。昨日はごめんね」
にこやかな笑みを浮かべたまま、そんなことをいってくる海馬の姿。
『……またネコかぶってる……』
遊戯の横に出現して、二人の対戦を見ていたユウギがそんな海馬の姿をみてぽそっといっていたりするが。
「あ。海馬くん。おはよ~」
そんな海馬に気づいてにこやかに朝の挨拶をしている遊戯。
「こっちこそ、迷惑かけちゃって……」
ただ、家にいって、そして自分の家に招待?しただけだった昨日。
いきなり帰ってしまった海馬のことは気にかけていた。
それゆえに、ひとまず謝る遊戯。
「そんなことないよ。おや?へ~。
  君たちもデュエルモンスターズ始めたんだ。このゲームは回りでみてるだけでも楽しいよね」
ふと、二人がカードゲーム…しかもかなりレベルの低い戦いをしているのに気づいて、
だがそう思うことは表情には微塵も見せずに、にっこりと言い放つ。
そんな海馬の台詞をうけ、
「お。さすが海馬!」
「そういや、海馬って確かこのデュエルモンスターズの全国チャンプだったよな」
「御曹司で、しかも全国チャンピオンか。何か理不尽だよな~」
何やら口々にそんなことをいっている集まっているクラスメート達の姿。
そんな揶揄やねたみをも込めた台詞をいともあっさりと無視し、
「そういえば。遊戯くん。昨日の夜、電話した件なんだけど……」
つかつかと、遊戯の側に近づいていきながら話しかける海馬。
「うん。爺ちゃんにたのみこんで、今日だけ貸してもらったんだ」
昨日の夜遅く、ユウギとゲームをしていたら電話があった。
それゆえに、祖父に頼み込んで今日はアレをもってきている。
「ありがとう。どうしてももう一度みたかったんだ。僕にカードを愛する心を教えてくれたんだからね」
遊戯の台詞に、きらり、と一瞬目を輝かせるものの、すぐさまにいつもの演技の表情に切り替える。
「はい。青眼の白竜ブルーアイズホワイトドラゴン
「「「って、何ぃぃ!?」」」
「おい!遊戯!おまえ、そんなレアカードまでもってたのか!?」
「それって、たしか世界に四枚しかない超ウルトラレアカードじゃないかっ!」
「ううん。僕のじゃないよ。爺ちゃんのなんだ。
  爺ちゃん、日本でカードが流行る前からのこのデュエルモンスターズのファンだしね」
嘘ではない。
ごそごそと、遊戯が鞄から取り出した黄金の箱の中にと入れていたカードを取り出すと同時。
面白いまでにそれらを覗き込んでくるクラスメートの姿。
このゲームそのものを知っているものならば、名前くらいは聞いたことがある。
それほどまでに貴重なカード。
「すげえっ!おれ、本物はじめてみたっ!」
「俺だって!」
ざわざわと、そのカードをみてざわめきはじめるクラスメートたち。
そんなクラスメート達をにこやかに見ながらも、そのままそのカードを海馬にと手渡す遊戯。
「すごい。何度みてもいいね」
遊戯からカードを手渡された海馬の背後や左右に群がる生徒達。
男女問わず楽しめる。
というのがこのゲームの醍醐味といえば醍醐味なのだが。
カタログからコピーした偽者のカードと摩り替えて……
ここまでギャラリーがおおいとすり替えは不可能か?
とも一瞬思うが、ギャラリーが多いからこそ成功する確率もまた高い。
それゆえに、
ごそ。
片手で遊戯から手渡されたカードをもちながら、もう他方の手を後ろポケットにとつっこむ。
ギャラリーとして群がってきている生徒達に囲まれて、その行動は他の生徒達の目には映らない。
そして。
「ありがとう。…あ」
ぱさっ。
わざとらしく手にもっていたカードをそのまま床にと落とす。
「「うわ~!!!??」」
貴重なカードを床に落とした。
それで面白いまでに騒ぎ始める野次馬として集まってきていた生徒達。
騒いでいるのはそのカードの価値というか貴重さを知っている生徒達だけなのだが。
「あ、ごめん」
そして、その場にかがみ拾う格好をしながらカードをすばやく摩り替える。
ギャラリーたちのざわめきや騒ぎによって自分の行動はあまり目立たないはずである。
そう確信したがゆえの行動。
そのまま、さきほどポケットから取り出したカードと、そして床に落としたカードをすばやく摩り替える。
「ありがとう。このカードはもつべき人がもって始めてその力を発揮して輝くんだね」
それはたしかにその通りなのであるが。
だが、彼はその意味をまだ完全には理解していない。
セト……
セトがカードを摩り替えたことに気づいてため息をつきざるをえないユウギ。
「「!!!」」
海馬がカードを摩り替えたことに気づいて二人同時にそんな海馬のほうをにらむ本田と城之内。
他の生徒達は気づいていないようであるが、カードを摩り替えたのは二人の目にははっきりとわかった。
伊達に全国大会にまででて優勝しているような人物が、貴重だ。
といわれているカードを床に落とすとは到底考えられない。
というのもある。
だからこそ、海馬の異常な行動に二人とも気づいたのであるが。
二人がそんな海馬に詰め寄ろうと立ち上がると同時。
キ~ン、コ~ン、カ~ン……
高らかに始業を告げるチャイムががっこう全体に響き渡る。
「あ。片付けないと」
間髪いれずにすぐに担任教師が教室にはいってくるはずである。
それゆえに、海馬のことに気づいていても、それは口に出さず、
そのまま机の上に広げているワールドマップをたたんで鞄にしまう。
そして。
「はい。城之内くん。本田くん。二人ともこれ、なくさないようにね」
今まで二人が使っていたカード。
ちなみに、二人が使っていたカードは昨日、二人が遊戯の実家。
即ち、ゲーム屋、カメで購入したものなのだが。
ともあれ、カードをきちんとそろえて、それぞれの手にと手渡す遊戯。
がらっ。
「あ。先公だ」
ガタガタ…
バラバラバラ。
それと同時に教室の前の入り口から教室に入ってくる担任教師。
その姿をみて、今まで遊戯たちの周りに集まっていたクラスメート達もまた、
それぞれ自分の席にとついてゆく――


放課後。
わらわらと、生徒達が帰路にとついてゆく。
「あれ?遊戯?城之内たちと一緒じゃなかったの?」
今日の授業もつつがなく終了し、校門の下で立ち止まって誰かまっている様子の遊戯。
てっきり遊戯もまた彼らと一緒だとおもったのに。
それゆえに遊戯に気づいて声をかける杏子。
「え?」
そんな杏子の言葉に目をぱちくりさせて逆に問いかける遊戯。
「だって、海馬くんとデュエルモンスターズやるって。てっきり遊戯も一緒かとおもったのに」
なぜか最後まで教室に残っていた二人に話しかけたら、そう答えてきた。
だからてっきり遊戯も一緒だとおもったのに。
だがしかし、その当の遊戯はここにいる。
それゆえに疑問に思い問いかけた杏子。
今日はもどって次のアルバイトなどを探してみよう。
そう思っていた彼女なのであるが。
「城之内くんと本田くんが?」
そんな杏子の台詞に、多少不安になりながらも問いかける。
どうしてあの二人が?
もしかして……
校門のところでまっていれば必ず海馬くんは通るとおもったからここで待ってたのに。
まさか…二人とも、海馬くんがしたことに気づいて?
可能性はなくもない。
「あ、杏子。ありがと!僕、ちょっといってみるね!」
「あ、ちょっと!遊戯っ!」
何か胸騒ぎがする。
それゆえに、そのままくるり、と向きを変えて再び校舎の中にと戻ってゆく遊戯の姿。
そんな遊戯の様子に戸惑いつつも、声をかける杏子。
そんな杏子の声を気にかけることなく、校舎にむかってゆく遊戯の姿をみつつ、
「…何かあったんだわ」
そのまま、杏子もしばし悩んだ後、遊戯の後を追いかけるようにと校舎の方に戻ってゆく。

「こんなところに呼び出して何のよう?」
放課後、校舎の屋上にくるようにといわれた。
別に断ってもよかったのだが、彼らの口調にあるものを感じてやってきた。
彼らのあの口調からさっするに、おそらく朝、自分が何をしたのか。
というのを気づかれたからであろう。
というのも容易に想像はつく。
「とぼけんじゃねえぜ。海馬。ちゃんとわかってんだよ。おまえが遊戯のカードを掏り変えたことはな」
案の定、屋上にと出向いた彼にと本田達がいってきたのは、朝のこと。
今、この屋上にいるのは、彼ら二人のみらしい。
こっそりとボディーガードの二人には待機しているようにいっているので問題はない。
海馬のボディーガードが隠れているなどとは夢にも思わずに、
呼び出しに応じて屋上にやってきた海馬にといいよる本田。
「ふふふ。ひどいな。僕がそんなことするはずがないじゃないか。それじゃ泥棒じゃないか」
これでごまかせるとは思ってはいないが、それでも自分の演技には自身がある。
伊達に長年、仮面をかぶっていい子を演じてきているわけではない。
また、そのように養父からもとことん仕込まれている。
それこそ、元々の人格形成すらも壊れるほどに。
「塵一つみのがさない美化委員の目はごまかせないぞ。出来心なら素直にだまってかえせ」
あの心優しい遊戯を悲しませたくはない。
それゆえの配慮。
そしてまた、彼自身への配慮でもある。
海馬をこの場に呼び出して説得しようとしたのは。
そんな本田の説得にもふんっと鼻でくくったような笑みを浮かべている海馬。
そんな彼の様子をしばしながめながらも、
「出来心なもんかよ。俺は最初からこいつがきにくわなかったんだ」
がっと海馬の胸元をつかんで言い放つ城之内。
あからさまに確信犯というか初めから掏り変える目的であったのは今の表情からも明らか。
胸元を掴んで拳を振り上げる城之内であるが、
そんな彼の行動にまったく怯えるでも、ましてや怒るでもなく。
「ふっ。後悔するよ?」
まるで小馬鹿にしたように言い放ってくる。
「てめえっ!」
そんな海馬の態度にぷちっときれ、そのまま振り上げた拳を振り下ろそうとするものの、
ぱしっ。
「…ふんっ!」
いきなり背後から誰かに手をつかまれ、
がっ!
いきなり城之内は手を掴んだ男性にと殴り飛ばされる。
「城之内!!…きさまっ!」
みれば、いつのまにやってきていたのか、海馬の前には屈強な男達が二人。
つまりは、初めからカードを返す気などはなかった。
という証拠。
「悪くおもわないでくれ。時期社長の僕を守るのが彼らの仕事なんだ」
悪びれもなく、にこやかに言い放つ海馬。
そんな海馬をただただにらみつけている本田と城之内。
そして、そのまま二人顔を見合わせ、
「き…きさまっ!」
「てめえのそのくさった根性、たたきなおしてやるっ!」
だ!
男達、そして海馬めがけて殴りかかってゆこうとする彼らの姿がその場において繰り広げられてゆく……


                                    ――Go To NEXT

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あとがきもどき:
薫:さてさて。何やら先に台詞をいれて、それから途中経過を~
   とやっていってたらムダにどんどん長くなってきているこの罠です(汗
   次回でたぶん、海馬瀬戸と、王様ユウギとのカードの戦いにはいれる…かな?
   何はともあれ、次回に続きますv
   ではまた、次回にてv

2007年8月26日(日)某日

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