まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
どうやら1話につき、だいたい約3話で完了かな?
とすれば…えっと…話数は考えないようにしよう…うん(汗
今回、王様のらいばるv海馬瀬戸(神官セト)の登場ですv
何はともあれ、ゆくのですv
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しくしくしくしく……
「ああもうっ!何でこんなことになってるわけっ?!」
おもわず苛立ちを隠しきれない。
そもそも、王都に巫女の補充がある、といわれてついてきたというのに。
どうみても神官の一行にしかみえなかった人々が、まさか人買いの一員だったとは。
「美味い話には裏がある……か」
「もう。マイさん、そんなに悠長にいわないてくださいっ!
とにかく、はやくここからでることを考えないとっ!」
自分達以外にも数名の女性が捕まってこの場にいる。
この前まで向かい側の牢屋にいた女性二人はどこか別の場所につれていかれたらしい。
何でも高くうれるあてがあるとか何とか犯人の一味たちがいっていたが。
地下にとある隠し牢屋の中では捕まっている女性たちのすすり泣きが響いている。
その中で悲観している彼女たちとは対照的に、どうにかこの状況を脱出しようとしている人物が二人。
「そうはいうけどね。ここの牢屋の鍵…特殊な力が加わってるらしくて私にも無理なのよ」
多少の鍵などはその手先の器用さでどうにかする自身はある。
だがしかし、何らかの力が加わっているらしく、小手先の器用さでは鍵は開かない。
「それは私にもわかりますけど…だけど…ああもうっ!どうしてこうなるわけっ!?」
私はただ、早く完全な巫女になりたいだけなのにっ!
なので一番勉学などにも力をいれているらしい王都にいきたかった。
まず巫女などといった類の職は食いっぱぐれのない、安定した職である。
両親を早くなくした彼女にとってはてっとりばやく自分で生きてゆくためにはその方法が一番。
そもそも、生まれながらに多少の魔力ももっている。
というのも幸いしている。
だから、世話になっていた親戚のいる村においては巫女見習いとして働いていた。
そんな中、王都からやってきたという神官団。
彼らの誘いにのって村をでたはいいものの…結果はこの始末。
この苛立ちをどこにむけていいのかわからない。
そもそも、この現状を誰かに伝えるだけの力はまだ自分にはない。
だからこそよけいに苛立ちがつのる。
そんなことを思っていると、
コッコッコッ……
誰かが牢屋のほうにと歩いてくる足音が彼女たちの耳にと聞こえてくる。
おもわず身構える彼女たちの耳に…
「…君たち、大丈夫?」
どこかおっとりした優しい感じをうける男の子が一人、牢屋の外より話しかけてくる。
『……だれ?』
おもわず警戒しつつ問いかける。
「まってて。今鍵あけるから。今何かみんな気絶してるみたいだから。今のうちに……」
いいながらどうやって手にいれたのかは彼女たちはわからないが、
ともかく鍵の束をとりだし、一つ一つ、鍵穴に差し込んでは確認してゆくその少年。
「僕はリョウ。何か気づいたらこんなところにいたんだけど……」
嘘ではない。
が事実でもない。
だがそれは…彼女たちは知らぬこと…
ガチャ。
いくつか鍵をあわせてゆく中、やがて鍵がぴったしあったらしくてガチャリと鍵の開く音がする。
「よっし。あいたっ!さ、はやくっ!」
きょろきょろと周囲を警戒しつつも促すそんな彼の言葉に思わず顔を見渡しつつ、
「と、とにかく!みんな!今のうちににげるわよっ!」
「ほらほら!めそめそめとないてないでっ!」
一番元気な先ほど会話をしていた女性二人が他の女性たちを一括する。
目の前の少年が誰なのかはわからない。
だが…一つだけいえるのは、どうやら敵ではない。
ということである……
~第8話~
『デュエルモンスターズ?』
「うん」
異口同音で問いかけられたそのセリフににこりと笑いながらうなづく。
「元々は古代エジプトの石版の戦いからきてるらしいんだけどね。これ。
これを生み出した人がそれからカードとして現代によみがえらせたものなんだ」
いいながら、机の上にいくつかのカードを並べ、
「ほら、ここに絵と、そして守備力とか攻撃力、そしてルールとかかかれてるでしょ?」
そこには何やら様々な生き物が描かれている絵柄と、
たしかにその下に何やら文字らしきものが描かれている数枚のカード。
「古代エジプト…って、たしか遊戯のそれも古代エジプトのものだよね?」
そんな遊戯の説明に、ふと気づいたように問いかける杏子。
授業が始まる前のひと時。
始業のホームルーム前。
最近この学校でもはやっていることもあり、また何か面白いゲームとかあるのか?
と城之内に聞かれてこのゲームをもってきている遊戯であるが。
「ああ。この千年パズル?このパズルはお兄ちゃんのお父さん。
つまりアクナムカナンっていう王様が生み出したアイテムらしいけど。
でもこれ、お兄ちゃんにしか扱えないよ?」
そんな杏子にといかけに、にこやかにさらっと言い切っている遊戯。
『遊戯~…だから……』
そんな遊戯の説明をきき、遊戯の横に現れた霊体のもう一人の彼そっくりの人物。
本来の名前は当人すらからもかつての封印と動じに記憶からも消されている。
「遊戯くんって、お兄ちゃん、いたっけ?」
「ううん。僕は一人っこだよ?」
美穂の問いかけに、きっぱりはっきりいいきる遊戯。
「それじゃ、その兄っていうのは誰なんだ?」
「遊戯の親戚とかか?」
交互に問いかける城之内と本田の問いかけに、
「親戚?・・・どうなんだろ?元々お兄ちゃん、このパズルの中に昔、
人々を苦しめる存在を封印するために自分の魂ごと封印しちゃってる人だし……」
『ふつう、さらっというか……おまえは~……』
さらにさらっという遊戯の台詞におもいっきりため息とともにつぶやくユウギ。
「ちょっとまて…お、俺そういったオカルトとかって苦手なんだけど……」
おもわず退く城之内とは対照的に、
「よくわからないけど、だけど何で遊戯くんのお兄さんなの?」
「だって、僕とまったく瓜二つだもん。お兄ちゃん。肌の色と髪の色の一部が異なるくらいで。
あ、あとは身長かな~?それにお兄ちゃん、かっこいいし」
「???」
美穂の問いかけにこれまたさらりと答えている遊戯。
そんな遊戯の説明に、ただただ美穂は首をかしげる以外にない。
「ま、まあよくわからねえけど。ところで、遊戯?これってどういって遊ぶんだ?」
とりあえず何かオカルト系統の話になりそうなのであわてて話題を変える。
「え?ああ。これ?カードの対戦ゲームなんだ。
ほら、守備力とか攻撃力とかかいてあるでしょ?全部で何千種類以上あるんだよ。
そしてこのフィールドの上で相手のカードと戦って取り合いをするんだ」
そんな城之内の質問に、丁寧に質問を開始している遊戯。
机の上にとでている地図は、様々な地形が描かれている。
どうやら話しをはぐらかされた。
というのに対して気づいてもいないらしい。
それはまあ彼らしい、といえば彼らしいのだが。
「へ~。けっこうおもしろそう」
遊戯の説明をききつつ、心からそんなことをいう杏子に対し、
「そうか?こういうチマチマしたゲームは俺の趣味じゃなねえな」
説明をききながらも、カードと、
そして机に置かれている地図のボードをみながらも面倒くさそうにいう城之内。
まだ完全に説明をきいたわけではないが、何となく面倒くさそうである。
それが城之内が感じた初めの感覚。
「ふふふ。チマチマしたゲームじゃなくて、頭をつかうゲームといったらどうだ?」
コツコツコツ。
そんな城之内のほうにと近づいてきつつも、何やらいってくる本田の姿。
なぜか学生服の上にとある文字がかかれているタスキをかけているのが気になるが。
「本田。どういう意味だ?」
ガタンっ。
そんな彼の言葉に、席をたちあがり、本田をにらみつける城之内。
「聞いたとおりだ。他意はない」
だが、いつものことなので動じずにあっさりきっぱり言い切る本田。
「くっ…き、貴様ぁ……」
この二人ってほんっと仲いいよね。
そんな二人の様子をみながらもそんなことを想っている遊戯であるが。
『まあ、この二人は似た者同士ではあるな…たしかに』
そんな遊戯にしみじみとうなづいているユウギの姿。
「それより、何?その格好?」
そんな二人のやり取りはいつものことなので、あまり動じることなく、
それよりおもいっきり目立っている本田が肩から腰にとかけているタスキのことを問いかける。
なぜか本田の肩には【美化強化週間】と書かれているタスキがかけられている。
「これか?今そのカードが流行っているだろ?
そういうコレクション物になると必ず不正な手段で珍しいカードを手にいれようとする輩がでてくる」
そんな杏子の疑問に答えるように、
遊戯が机の上に出しているカードを指差しつつもきっぱりと言い切る本田。
「まさか。こんなカードで?」
きっぱりと言い切る本田の言葉に戸惑いを隠せない杏子。
杏子がみたかぎりは、たしかに絵は綺麗ではあるが、ただのカードである。
それゆえにこそ、そんなことをいわれても信じられない。
「ううん。そんなことないよ。この学校では三年生の間ではやりだしてたみたいだけど。
もうでもこれって全国大会とか世界大会まであるくらいなんだよ。
アメリカじゃあ、これで家一件うって、一枚のカードを買った人もいるってきいたよ?
ちなみに、爺ちゃんもマニアなんだ。爺ちゃんの場合は必要性もあってみたいだけど」
信じられない。
という表情をしている杏子にととりあえず詳しく追加説明をする遊戯。
それに……何しろこのカードは扉らしいし。
それに、お兄ちゃんの場合はこのカードを鍵にして古代の神々とかも呼び出せるし……
『そもそも、これは古代の石版を模したものだしな』
遊戯がそんなことをおもっていると、霊体のままでなぜか透けているカードを手にしていっているユウギ。
それゆえに、彼がカードを手にして何かいっている。
というのは当然、杏子たちにはわからない。
そもそも、この場では遊戯以外には彼の姿は視えていないのだからして。
「そこで。だ。この俺が美化強化週間として不正カード防止に乗り出すことにした」
いきなり遊戯の机に手をついて、ずいっと顔を近づけてきぱっと言い切る本田。
一瞬、そんな本田の姿に戸惑いを覚え、唖然としている遊戯であるが。
『美化とは関係ない部類のような……』
「おいおい。そんなの美化委員の仕事じゃないだろ?」
ユウギの突っ込みと、城之内の突っ込みはほぼ同時。
「ふん。よごれたものを掃除するだけが美化委員じゃない。まずゴミをださないっ!
それが美化委員の使命だと気づいたのだっ!
だが、美化委員多しといえども、そこまで悟れるものは少ない。いや、俺だけだといっていい!
そこでこの俺が独自に強化習慣を設定し、先頭にたつことにしたのだ。
これはゆくゆくは全国キャンペーンに発展させ……」
何やら一人自分の世界にひたりなから力説している本田。
たが、彼が力説しはじめたその直後。
ガラリと教室にはいってくる教師の姿。
それゆえに、そのまま席にとついてゆく生徒達。
担任が教室に入ってきたのも気づかずに、いまだに力説している本田に向かい、
「おいおい。美化委員。少し中断せんか?」
苦笑しつつも話しかけている担任の姿。
「え?…あ、はい」
気づけばいつのまにか先生が教室に入り、遊戯たちもすべて席にと着いている。
たっているのは本田一人。
人当たりのよさそうな男性の教員。
それが遊戯たちのクラスの担任教師。
「え~。今日は最初に転校生を紹介する」
クラス全員を見渡し、出席、欠席の有無を確認する。
見渡しただけで誰が欠席しているとかはすぐに判断できる。
それゆえに全員出席していることを確認し、にこやかに生徒達にむかって報告する。
そんな担任の言葉をうけて、
どんな子だろ?
ゲームの好きな子だといいな。
机に肘をついて頬を押さえてそんなことを思っている遊戯。
「入りなさい」
がらっ。
担任の言葉をうけて、がらりと前の出入り口の扉を開けて教室に入ってくる男性が一人。
「海馬瀬戸くんだ」
そのまま、すたすたと教壇のほうに歩いてくる彼をみながら。
黒板に名前をかいてクラス全員にと説明する。
『あれは……』
そんな彼の姿をみて思わず驚きの表情をうかべているユウギ。
「?お兄ちゃん?」
そのあまりの驚愕ぶりに思わず遊戯が首をかしげつつ問いかけていたりするが。
だがしかし、そんな遊戯のつぶやきは、
「海馬…って、あの?」
「アミューズメント産業でもあのトップくらすの、あの海馬コーポレーションの?」
ざわざわとしたクラスメートたちの声に掻き消され、他の生徒には聞こえていない。
海馬コーボレーション。
それはこの童美野町に住んでいるものならばまず知らないものはいない有名な会社。
さらには、世界に名が売れている会社でもある。
つまりは大企業。
「そう。跡継ぎだ」
そんな生徒たちのざわめきを代表するかのようにクラス全員を見渡しながら言い切る担任教師。
「よろしく」
『……かわってないな。奴は……というか、あれ…作り笑いだな……』
にこやかにそれとはわからない作り物の笑みをクラスメートにむける彼の本質をすばやく見抜き、
ため息とともにそんなことをいっているユウギ。
「そなの?…って、お兄ちゃん、知ってるの?あの転校生のこと?」
『間違いない。やつは……』
いいかけて、ふと気づく。
彼の魂に以前のような輝きがなく、何か曇っているようなそんな気配。
つまりは、何らかの心の闇に捕らわれている。
という証。
『……セト……』
かつて、闇の邪神の誘いをも退けた強い意志をもつ彼の姿は今は見受けられない。
どちらかといえば始めてあったときの彼の魂と似通っているものがある。
「…セト…って……」
たしか、それってお兄ちゃんの従兄弟で親友の人の名前じゃなかった?
遊戯がそんなことを思っているそんな中。
「素敵」
正真正銘、ほんものの大富豪である。
最も、杏子からすれば古代の王であるユウギをも知っているのでそちらのほうが上であろうに。
という第三者からみれば思うであろうが、だがそれとこれとは話しは別。
最も、『ユウギ』に関しては、実はとある国々の上層部をも動かせるほどの影響力をもっているのだが。
それは杏子は知る由もない。
「けっ。おぼっちゃんやろうか。気に食わないつらだぜ」
比較的に、その作り物の笑顔にだまされて騒いでいるクラスメートとは対照的に、
一人何やらそんなことをつぶやいている城之内。
何となく虫がすかない。
そんな感覚が一目みたときから決定された。
城之内は比較的、自分の勘は信じるほう。
この悪運ともいえる勘で今までいろいろと不都合なことなど回避してきたのだからして。
そんな未だにざわめくクラスメートをそのままにし、
「え~と。遊戯の隣があいてたな」
ぐるっと席を見渡して、そして遊戯の隣にと視線をむける。
「はい」
担任の言葉をうけ、素直にそちらにと近づいてゆく転校生でもある海馬瀬戸。
そもそも、普通に考えればそんな大金持ちがどうしてこんな普通の県立高校にきているのか。
という疑問が通常ならば沸くであろうが。
その疑問に気づいた人物は今はこの場にはいない。
そのまま、遊戯の机のほうにむかってあるいていき、そしてふと、
?
床におちているカードに気づいてそのままかがんでそれを拾う。
「え、えっと。始めまして」
この人が…昔のお兄ちゃんの親友?
爺ちゃんだけじゃなくて、この人もまた転生してきてるんだ。
ユウギの口調から彼がよくユウギが話していた『セト』であることは疑いようがない。
それゆえに、そんなことを思いながらもひとまず挨拶をする遊戯。
「よろしく。はい。これってデュエルモンスターズだね。君の?」
拾ったカードを遊戯に差出ながらカードの絵柄をみようとくるっと向きをかえる。
一瞬、その場に固まる海馬。
そこにはたしかに見慣れた絵柄の魔物が描かれてはいるが、その両脇についているものが問題。
「え?あ。うん。ありがとう。もしかして君もゲームとか……」
驚愕をかくしきれないまでも、それを表情にださずににこやかに遊戯にそれを手渡す。
そんな海馬にと恐る恐る問いかけている遊戯。
「うん。大好きだよ」
こんなレアなものをもっているとは。
こいつ…あなどれないな。
これはこの学校ではもっといいものが手にはいるかもな。
そんなことを思いながらもにこやかに遊戯に返事を返す。
とはいえ、カードの効能的にはそれほど重要なものではない。
そもそも、攻撃力的にははっきりいって屑カード。
だが、その特殊能力は使いようによってはたしかに戦力にはなる。
もっとも、そんな戦闘の仕方は趣味ではないのでそれほど固執するカードでもない。
「でも、めずらしいね。羽クリボーなんて」
「あ。海馬くんもデュエルモンスター、詳しいんだ」
枚数的にはあまり発売されていない羽クリボー。
特殊能力として、クリボーが攻撃対象にされたときのダメージポイントは、
プレイヤーのダメージポイントには加わらない。
ということ。
遊戯と海馬がそんな会話をしている最中、ただただじっとそんな海馬を見つめているユウギ。
?
お兄ちゃん…いったいどうしたのかな?
それに、海馬くん…海馬くんもやっぱりお兄ちゃんの姿…視えてないようだし……
そのことに少しばかり悲しくなってしまう。
かつての親友だった、という人の転生してきている姿ならば、視えても不思議ではないはず。
自分の祖父であるシモンがそうであるように。
「君もデュエルモンスターズ、くわしいの?」
「僕はゲームは何でも好きだよ?」
「そうなんだ。僕達、気があいそうだね」
『……ねこかぶってるな…おもいっきり…セト~……』
「こらこら。そこ。話しは後でゆっくりと。さ、授業をはじめるぞ」
さすがにかつての親友というべきか。
海馬がおもいっきり猫かぶりで演技しているのをあっさりと見抜いて思わずつぶやいているユウギ。
ユウギとしてはセトの姿をみてため息をつかざるを得ない。
どうやら彼の心は今現在、闇に支配されかけている。
というのが視てとれるがゆえに、なおさらに……
キ~ン、コ~ン、カ~ン……
何やら騒がしかった一日はあっという間。
何かあったときの一日はものすごく早く感じる。
休み時間ともなれば、転校してきた海馬のもとにクラスメートか詰め寄り質問攻め。
「じゃ、遊戯くん。まってるからきっときてくれよ?」
終業の合図のチャイム。
部活動がない生徒以外はそれぞれ帰宅についてゆく。
この高校の校風として部活動は個人の自由。
すなわち、はいってもはいらなくても問題はない。
学校によれば必ず入らなければいけない学校もあるにはあるが。
この童美野高校にはそれがない。
校門の前に横付けされた黒塗りのベンツ。
その後部座席から窓をあけ外にいる遊戯にと話しかけてくる海馬。
一応、巨大企業の跡継ぎ、ということもあり護衛が常についているらしい。
それゆえに登下校は車での送迎になるらしいが。
「うん。絶対いくよ」
そんな海馬の台詞に、すぐさまに答える遊戯。
「すごい車ねぇ」
プロロ……
遊戯の返事をうけて、そのまま発進してゆく車。
そんな車を見送りつつも感嘆した声をあげる美穂に、
「…ちっ」
やっぱりきにくわねえ。
そんなことを思いながらも舌打ちしている城之内。
「へえ。遊戯。もう仲良くなったんだ」
海馬と仲良く話している遊戯をみつつ、少し視線を落として遊戯に話しかけている杏子。
以前の遊戯なら、自分から話しかけたりはあまりしなかったはずなのに。
彼に関しては自分から率先して話しかけていたようなきがするのも多少きにかかる。
それは遊戯としてはかつてのユウギの親友であるという彼のことが知りたいから。
というのもあるがゆえなのだが、杏子はそのことを知らない。
「うん。海馬くんのカードコレクション、みせてもらうんだ」
クラスメートたちの質問づめをかいくぐり、席が隣同士。
というのもあって、そんな約束が交わされている遊戯と海馬。
「海馬くんち?美穂もいきたいっ!」
遊戯の説明に、すばやく割り込んでくる美穂。
つまり、それはあの海馬コーボレーションの私邸である。
ということをさししめしている。
つまりはどうころんでも豪邸には違いない。
「皆でいこうよ。きっとよろこぶよ?楽しみだな~」
元々、あのカードって昔の石版からきてるらしいし。
あの海馬くんも昔と同じように石版の変わりにカードから精霊とか呼び出しできるのかな?
いったいどんな風にカードたちを大切にしてるんだろ?
もう一人のユウギ曰く、カードすべてに優劣はない。
すなわち、すべての精霊や魔物・魔獣に優劣はない。
そう断言している。
だからこそ、カード一枚、一枚をとても大切にするように。
そう口を開けばよくいっている。
それは祖父である双六とて同じことをいっている。
大切にすれば、そのぶん、カードは持ち主に答える力を発揮する。
それだけの『力』を秘めている古代のゲームの力を宿せしカード…デュエルモンスターズ。
とりあえず、それぞれ一度家にともどり。
そのまま海馬が教えた彼の家の住所へと出かけることに――
「…お~い。個人がこんなでかい家もつなんて法律で禁止されてるんじゃないのか?」
門と玄関がほどとおい。
広々とした庭に噴水までもが設置されている。
それが門を入らない門の外からでも見て取れる。
そんな様をみて突っ込みどころ満載のことをいっている城之内。
「そんなわけあるはずないでしょ?」
そんな城之内に苦笑しながらも答える杏子に、
『そうか?そんなに大きいとは思えないけど……たぶんこれは、私邸、というよりは別荘の類だな』
だがしかし、その規模をみて即座にそう断言しているユウギ。
事実、その通りなのであるが。
「お兄ちゃんの基準は王宮だもんね……」
そりゃ、古代の王宮とかと比べたらたしかに大きくは感じないだろうけど。
『民の住居とかも知ってはいるぞ?この程度の大きさならば神殿とかによくあったしな』
そんな遊戯の素朴な疑問に丁寧に答えてくるユウギ。
最も、その左右の横にある森と背後の森も海馬家の私有地なのだが。
?
遊戯のやつ…いったい何独り言いってるんだ?
そんな遊戯をみて首をかしげている城之内。
と。
キィィ……
何やら金属音が周囲に響き渡る。
ふと見れば、
ぜいぜいと息を切らせて後ろに美穂をのせて自転車で遊戯たちの前にと止まる本田の姿。
「…タクシー代、なかったわね」
あきれたようにそんな本田にと話しかけている杏子であるが。
どうやら、本田は美穂をつれて二人乗りをしてここまでやってきたらしい。
それゆえにかなり息をきらしている。
ぜいぜいと本田が息を切らしていると、
【やあ、みんな。よくきてくれたね。どうぞ、はいって】
門に備え付けられている防犯カメラにて確認したのか、ふいにインターホンから聞こえてくる声。
そして、インターホンから聞こえる瀬戸の声と同時に、
キィ……
音をたてて、静かに自動で開く表門。
規模が違う。
というのは明らか。
それゆえに思わず口をあんぐりあけてしまう遊戯たち。
『今は何でもほとんど科学だな』
昔はほとんど魔力とかが主体だったが。
かつての古の時代のエジプトでもこのようなことはやっていた。
その力のよりどころが異なるが。
まあ、昔のほうが自然に優しかったのもまた事実なのであるが。
「うわ~。すごい」
門をくぐり、庭先をながめつつ思わずつぶやいている杏子。
左右と後方に広がる広々とした森。
おそらく塀で仕切られている、ということは私有地であることは疑いようがない。
そして、玄関に続くまでの庭先もまた丁寧に庭木が剪定されている。
まるでどこぞのテーマパーク。
もしくは映画などの中にでてくる屋敷のよう。
そんなことを思いながら瞳をきらきらさせて周囲を見渡している美穂。
「しかし…ほんっとうにムダに入り口から玄関までもがながいな」
しかも主たる屋敷はといえばこれまた西洋風。
どうみても普通の家とは比べ物にならないほどに大きいのが目についてしまう。
それゆえに多少のひがみをこめてつぶやく本田。
そんな会話を交わしている最中にも、ようやく屋敷の玄関先にとたどりつく。
その玄関の扉もまたムダに大きいが。
それでも、ユウギ曰く、小さいほう……らしいが。
キィ……
「「「「わ~」」」」
自動的に開く扉と、そしてその奥に広がる広間の姿をみて、
動じにつぶやく杏子、城之内、本田、そして美穂の四人。
「やあ。みんなも一緒にきてくれたんだね。すごくうれしいよ」
自動的に扉が開くと同時に目の前に待っている海馬の姿。
そしてその背後には数名のメイド姿の女性たち。
この家は主に瀬戸のプライベート用の家。
それゆえにあまり多くの人はいない。
それでも使用人たちが少なくとも十数人以上いる、というのはさすがといえばさすがであろう。
表情を崩すことなく、笑みを浮かべていってくる海馬。
だがたしかに、ユウギにいわれてよくよく見てみれば何かどこかぎこちなさを感じなくもない。
それに気づいているのはどうやら遊戯だけのようであるが。
そのまま、海馬に促され、長い廊下を進んでゆく遊戯たち。
「すごいお屋敷だね」
ずっと伸びている廊下にいたるところに並んでいる扉。
コレすべてが個人の家だ。
というのだから自分の家とどうしても比べてしまう。
以前、いったことのあるエジプトの大統領官邸などとはまた違った趣。
「たいしたとないよ」
そんな遊戯の台詞に、そのまま後ろを振り向くことなく言い切る海馬。
たしかに、彼にとってはたいしたことはない。
彼の目標はまだこんなものではないのだから。
「これでたいしたことなかったら俺ん家はどうなる」
至極もっともな城之内のつぶやき。
彼の家はとある市営住宅のアパートの一室である。
しかも、父親が父親である。
それゆえの当然の反応。
「んふっ」
そんな城之内のつぶやきに続くように、思わず含み笑いをしている美穂。
やっぱり、海馬くん家ってすごいっ!
そんなことを思っての笑いをも込めているのだが。
「城之内、ヤキモチはみっともないぞ?」
そんな城之内に対して、しみじみと悟ったようにいっている本田。
「本田。てめえにいわれると余計にむかつくんだよ」
そんな彼の台詞に、おもいっきり痛いところをつかれたかのように思わず本田の胸元をつかむ。
が。
「ちょっと。あんたたち、こういうところにきたときくらい上品にしなさいよ」
そんな今にもいつものようにつかみ合いの言い合いを始めようとする二人の間に割って入り、
そのまま二人を引き離して淡々と諭すように言い放つ杏子。
というか、別に個人の家にきたからどうの…という問題ではないとおもうのだが。
それに対する突っ込みをする人物は今この場にはいない。
「いいんだ。にぎやかなほうがたのしいよ」
心の中ではこんなことで騒ぐな。
といってはいるが、それは微塵にも表にはださない。
「あの上品ぶった所…態度がきにくわねえ」
「そうか?金持ちを鼻にかけないいいやつじゃないか」
そんな海馬の態度にあからさまに違和感を感じて吐き捨てるように言い放つ城之内に、
あっさりとだまされて素直に海馬がいったままの台詞を信じている本田。
そんな会話をしつつも、やがて海馬がとある部屋の扉の前で立ち止まる。
そして。
かちゃ。
「さあ。遊戯くん、これが僕のカードコレクションだ」
ドアノブにと手をかけて、扉を開け放つと同時に言い放つ。
そこはどうやら完全にコレクションルームになっているらしく、
四方がすべて強化ガラスにて覆われている。
その強化ガラスの中に丁寧に並べられて壁一面に並べられているカードの数々。
「うわ~。すごい」
思わず素直に感心する遊戯。
『ある意味、
かつてにおいても、魔物や精霊を封じてある石版は、神殿にと安置されて管理していた。
それは石版に宿る魔力を悪用されないがため。
このたび、石版を模して作られているカードに関しては、おそらくそんなことは誰も思わないであろう。
だからこそのつぶやき。
「?あれは?」
部屋に累々と置いてあるトロフィーの数々。
それに気づいて海馬にと問いかける杏子。
たしかに、壁一面に綺麗に並べられているカードも目につくが、部屋においてあるトロフィーも気にかかる。
それゆえの問いかけ。
「ああ。デュエルモンスターズの全国大会で優勝したときのさ」
「「「優勝!?」」」
さらっという海馬の台詞に、まったく動じに城之内、本田、杏子の声が重なる。
遊戯はそういった全国大会などに出場したことはない。
それはそんな時間があるならば、パズルを組み立てるほうに専念するか、
もしくは心の中でユウギと対戦するか、祖父と対戦していたほうが遥かに面白いがゆえ。
それゆえに遊戯自身は今の自分の実力をしっかりと把握していない。
ユウギにかなり鍛えられてかなりの腕になっている…という事実すらも自覚していない。
遊戯はユウギであり、そしてまた、ユウギは遊戯でもある。
互いが互いに影響し合い、向上してゆく。
それは彼らの本質がゆえ。
「……あ……」
さらっといわれた海馬の台詞にその場に呆然と立ち尽くす城之内。
「あきらめろ。差がありすぎる」
そんな城之内の肩をぽんっとたたいて哀れんだような声をかけている本田。
たしかに、城之内からすれば海馬の置かれている状況は理不尽なまでに差がありすぎる。
そうとしか映らない。
だが、それはすべては海馬がかつて自分の力をごまかしてまで手にいれた自身の在り所。
「海馬くん。カードもいいけど、美穂、別なのがいいな。遊園地とか」
たしかに、カードはとても綺麗で見ていてたのしいけど、やっぱりこういうのでなく実際に楽しめるほうがいい。
それゆえに、海馬に近寄っていき、そんなことを聞いている美穂。
「あああ。美穂ちゃん、それなら割引券を」
そんな美穂の台詞をきいて、すかさず持っていた割引券を美穂に渡そうとしている本田。
その割引券は美穂に渡そうと思っていたもの。
そのきっかけがつかめなかったがゆえに、ずっともっていたのだが。
「遊園地ならこんど貸切で招待するよ」
こういう場合の交わし方は理解している。
それゆえに、そういって美穂をかわす海馬。
「わ~い。最高っ!」
そんな海馬の台詞に、そのままぎゅっと横にいる海馬にと抱きついている美穂。
『どうやら彼女の場合は、昔のままあのクセはなおってないな……』
それでかなり騒ぎになったことも幾度かあったことを思い出し、思わず苦笑しつついっているユウギ。
喜んだときや感動したときなど、誰かれかまわず近くにいるひとに抱きつく。
というのは彼女、野坂美穂の性格。
か…海馬ぁ、きにくわんっ!
美穂に抱きつかれた海馬を目にし、おもいっきり私情を交えて今までもっていた好意から一点、
敵意にとその意識を変えている本田。
彼にとっては美穂に好意をよせるもの。
そしてまた、美穂と仲良くするものは焼きもちから第三者がみてもはっきりとするほどに態度が変わる。
そんな本田や美穂のことはまったく無視し、
「そうだ。遊戯くん。君もめずらしいカードもってるんじゃないの?」
きょろきょろと部屋の中のカードを見渡している遊戯にと問いかける。
「え?僕は全然……」
海馬の問いかけに素直に答える遊戯。
だって僕がもってるのって普通のカードじゃなくてほとんど精霊とかが宿ってるやつだし。
マハードさんのブラックマジシャンやマナのマジシャンガールのカードはお兄ちゃんのものだし。
天空のオシリスもお兄ちゃんのだし、そもそもあれはオシリス神が宿ってるし……
遊戯にとっては精霊が宿っているカードは、カードにあらず。
それは大切な仲間であり、友達でもある存在を示す自分と彼らをつなぐ扉。
だからこそ、世界に数枚しか出回っていない羽クリボーのカードを所有していても、
遊戯にとってはそれは【珍しいカード】といった類には入らない。
それゆえに、海馬の問いかけに全然、と答えたのであるが。
ある意味、『遊戯』ほど貴重なカードをもっている人はいない。
「あ。ほら。さっきお爺さんがすごいカードもってるとかいってなかった?」
そんな海馬と遊戯の会話をきき、ふと思い出したようにいっている杏子。
たしか、遊戯のお爺さんってカードマニアっていってたはずだし。
それを思い出したがゆえの台詞。
「へ~。それは是非みたいな」
きらっ。
杏子の台詞に一瞬目を輝かせる。
そもそも、海馬が童美野高校に転校したのも珍しいカードを求めてのこと。
あの学校の中で一番、レアなカードをもっていそうなのは、この遊戯くらいであろう。
その遊戯がすごいカード、といっている彼の祖父のカード。
興味をそそられる。
だが、そんな黒い思いは表情には出さずに、にこやかに言い放つ。
「遊戯、一発みせてやれ」
「そうだ、そうだ」
そんな海馬の台詞に答えるかのように、とにかくこの海馬をギャフンといわせたい。
そんな思いから二人同時にいっている城之内と本田であるか。
『まあ、キサラは元々セトの精霊だしな。
ブルーアイズのほうならセトに見せても問題ないとおもうぞ。
というか、見せたほうがセトの魂に光が戻るかもしれないしな……』
しばらく観察していたが、やはりこのセトの心は悪意という闇に満ちているのは明白。
ならば、キサラの魂でもある精霊が宿っているわけではないが、あの姿をみることによって、
彼の心に光がもどるかもしれない。
そんな期待をこめつつも、遊戯に言っているユウギ。
「え…うん、じゃぁ……」
お兄ちゃんがそういうんだったら……
城之内や本田の意見はともかく、もう一人の自分である彼がそういうんだったら。
爺ちゃんに頼んでみようかな?
そうおもい、こくんとうなづく遊戯。
「ありがとう。楽しみだよ」
「いつにするの?海馬くん?」
「できたら今からでも」
「「「「今から?!」」」」
即答する海馬の台詞に、同時に突っ込む杏子、城之内、本田、美穂。
「え?今…から?」
「僕の家の車におくせらるよ。遊戯くん家まで」
「え~!?美穂もじゃあ、リムジンにのれるの!?いくいく~!!!」
「…み、美穂ちゃん……」
高級外車でもあるリムジンに乗れる、と聞いて一人はしゃぐ美穂。
そんな美穂の姿をみてがくっと肩を落としている本田。
そして、逆恨みというのであろう。
海馬にたいしてさらに敵意をあらわにしていたりする。
ともあれ、海馬の熱意というか彼もまた忙しくて時間があまり取れない。
というのをきき、そのまま海馬の家の車にて遊戯の家にと彼らは向かってゆくことに――
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あとがきもどき:
薫:ちなみに前ふりでちまちまとやっているのは王様過去編v
とりあえずは、ヒロトたちとの出会い編のみやる予定。
その後のセトとの出会い編とかは今だ未定(こらまて
さてさて、本来ならばここで海馬のキサラへの秘めたる魂の記憶がでてくる所までいく予定。
……だったんですけどね。
多少容量がおおくなったので次回にくりこしv
何はともあれ、んではまた次回にいくのですv
それでは、また次回にてv
2007年8月25日(土)某日
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