まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

さてさて。ようやく王様登場回~
このたびから、遊戯と彼のやりとりができるのでたのしいかもv(かなりまて
しかし…はたからみたら、遊戯、独り言いいまくるかわった子ですよ(笑
ま、見た目が子供だからほほえましくは映るでしょうけどね(爆
ともあれ、ゆくのですv

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「うん?何だ?おまえは?」
何となくそのままひかれるようにとこの場にきた。
何かが自分を呼んでいるような、そんな感覚。
街中の少し路地にと入り込んだ場所にとあるちょっとした建物。
たしかここは役人たちの駐在所のはずじゃあ?
建物の形からそんなことを思うが中にいるのはどうみてもそれらしき人々ではない。
視界に入るのは、まるで闇を纏ったかのような人物もちらほらと垣間見える。
場違いな全身を布で覆って顔や体を隠している小さな子供。
そんな彼の姿を目にとめて、何やらいってくる男が一人。
あからさまに話しかけてくる男からは強い負の心が感じられる。
だけども、何よりも確認したいことは唯一つ。
「……どうして闇の住人がこんなところに?」
きっと、そこにいる闇を纏ったかのような男達にむけて語りかける。
そう。
漠然とわかる。
彼らは闇の住人である。
ということが。
本来ならば、この地上にいるべきはずのない存在たち。
どうしてそれか判るのか。
と自分自身にといかければ、何となく。
としかいうよりないが。
そんな彼の言葉に、すっとその視線に殺気をも含め、
「……きさま。ただのガキではないな?」
わらわらと、幾人もの男達がそんな彼を取り囲む。
小さな子供に対して大の大人が十数名以上が取り囲み、威圧してくるが。
だけども、別にそれは怖いものでも何でもない。
「俺は。どうしてこんなところにいるのか?ときいているんだが?」
多少声に力をこめて言い放つ。
びりっ。
彼がそう言うと同時に、空気が振動し、男達はまるで金縛りにでもあったかのごとくに動けなくなる。
「……きさま……なにやつだ?ただの子供では…ないな?」
奥にいた一人がそうつぶやき、手をすっと掲げると同時。
その回りから黒い霧のようなものが出現し、それらは瞬時に異形の生物の形をなしてゆく。
異界の魔物。
神官たちなどはそれらを意志にて従えることは可能であるが。
大概は、石版に封じられているそれらを呼び出すのが常識と今現在はなっている。
だけども霧からそれ自体が出現したのに驚くことはない。
それは当たり前でありえることだ。
と判っているからなおさらに。
そのまま、霧の中から呼び出した魔物たちに命令し、目の前の子供に攻撃を静かに命ずるものの、
「静まれっ!!!!魔物たちっ!」
かっ!!
目の前の小さな子供が一括すると同時に、少年のお腹辺り、そしてその額あたりが金色に輝き、
その輝きは瞬時に部屋全体を満たしてゆく。
光の風にたなびき、深くかぶっているフードが揺れる。
そのフードのしたから垣間見えるその顔の額には…第三の眼を示す額飾り。
そして…その額飾りが金色にと輝きをましている。
「き…きさま…はっ!?」
そのあまりといえば圧倒的なまでの聖なる力。
それゆえに驚愕せざるをえない。
ゆっくりと、静かに一度瞳を閉じて、再び開いて問いかける。
『今一度問う。何ゆえにこの地上にでてきている?…こたえよ』
静かに、それでいて有無を言わさずその口調。
「ひっ……ゾー……さ……ま……」
光にまるで掻き消されるように存在自体が薄くなってゆきながらも、
一番奥にいた人物が何やら最後に助けを求めるようにと虚空を掴みながらも叫ぶ。
そのまま、少年の体から発せられた光に飲み込まれるようにしてその人物は掻き消える。
それと動じにその場にいた男達全員もまた、その場に倒れ伏す。
あとには、累々と横たわる男達の中、ひとりぽつんと立たづむ少年が一人……
「やはり……冥界の邪神を何ものかが呼び出しているのか?」
ぽつりとつぶやく、そんな彼の言葉には誰も答えるものはいない――

  ~第6話~

ふわ~
はっきりいって退屈きわまりない。
というか、よくもまあ熱中して先に宿題をすませられるものだと思わず感心する。
んなのもは適当にやっていればいいとおもうのに。
そこが遊戯のいいところであり、真面目さなのであろうが。
「しかし。遊戯の部屋…この前はゆっくりみれなかったがいろいろあるな」
何やらかわったゲームやら、本やらがたくさんある。
「お。これなんか何だ?」
何やら表紙にみたことない文字が描かれているちょっとした分厚い本らしきもの。
海外の言葉にしてもみたことがない。
それゆえの好奇心。
それを本棚からとりだし、そのままぱらり。
とめくる。
どうやら一ページがかなり分厚く、普通の本ではないようだが。
「………は?」
いっしゅん、おもわず目をぱちくりしてしまう。
適当に開いたとある一ページ。
どうやらこれはアルバムらしい。
そこに映っているのは小さいろこの遊戯と…そして……
横にいるの……誰だ?
それもきになるが、映っている遊戯がそれぞれ雰囲気が異なっているのはどういうわけか。
「あれ?城之内くん?どうかしたの?」
「え?あ。いや。何でもない」
許可をとってみたわけでなく、無断でみたもの。
それゆえにこれに映っている遊戯のことについて問いかけるのははばかれる。
「もう城之内くん宿題おわったの?あ。もうジュースのんだんだ。
  ちょっとまってね。おかわりもってくるから」
城之内が本棚からとあるモノを取り出してみていたことにはまったく気づかず、
そのまま初めにもってきていたコップの中身が空になっているのに気づき、
そのまま一度部屋からでて一階に飲み物などを取りに行く遊戯の姿。
「え?お…おう」
遊戯が部屋から出てゆくのを確認して、おもわず後ろに隠していた先ほどの写真が貼られているもの。
即ち、アルパムらしきものをまじまじみる。
「…これって…遊戯…だよな?」
それにしては格好からしてどこかこう…強いていうならば古代エジプトの服装のような気がする。
ましてや格好てきに横にうつっている自分達とあまり年代が変わらない【遊戯】の姿は。
よく歴史の教科書などに載っている古代の地位ある人の服装にみえなくもない。

遊戯の親戚か何かか?
それにしてはそっくりだな~
まあ、たぶん。
背後にうつってるのがエジブトみたいだから…それの関係かな?
そんなことをおもいつつ、とりあえず先ほどそれがあった場所にそっともどす。
もし、彼がその写真のしたに書かれている文字にまで注意を向けていれば、
すべての謎は解決したであろうが。
彼はそこまで気にすることなくそれをしまう。
もし彼がその写真に写っている自分達と同じくらいの年齢の少年に注意をよくむけていれば、
その姿が透けて映っているのが判ったであろうが……
……いうまでもなく、それは遊戯の祖父である双六がファラオの姿を映したアルバムである……
「おまたせ~。さ。城之内くん、ゲームしよ?」
「まってましたっ!」
今日、この遊戯の家にきたのはこのため。
それゆえに先ほどの写真のことはすっかり頭から綺麗さっぱりと消えて、
頭の中はゲームで埋め尽くされる城之内の姿が見受けられてゆく――


き~ん、こ~ん、か~ん、こ~ん……
今日も無事に授業終わり…っと。
トントントン。
本日つかった教科書などをまとめながらも鞄の中にとしまいこむ。
「う~。おわったぁ。おい。本田。たまにはバスケでもやらないか?」
かったるい授業がようやくおわった。
そう思い、背伸びをしながらふと目に入った本田に話しかけている城之内。
「え?あ。いや、今日はちょっと忙しいんだ。いこうか。美穂ちゃん」
だがしかし、そんな城之内の誘いをわざとらしく棒読みで忙しい。と言い放ち、
そしてそのまま美穂のほうにと歩いてゆき。
「うん」
「さ。二人ともはやく」
そのまま、杏子とともに、美穂、そして本田も一緒にそのまま帰宅してゆく三人の姿。
そんな三人の姿を唖然と見送りつつも、
「…ね、ねえ?城之内くん?まさか本田くんまで援助交際…だなんていわないよね?」
一昨日に続いて、昨日、そして今日。
あからさまに怪しい態度のような気はするけど。
でも三人とも何か共通した用事があるのかもしれないし。
『というか。ヒロトのやつ。あれは何か隠してます。とおもいっきりいってるようなものだな……』
そんな遊戯の横ではいつのまに表に出てきていたのか、もう一人の【ユウギ】がしみじみといっていたりする。
あれ?
お兄ちゃん、いつの間に?
遊戯がそんな自分の横にいる霊体として出現している彼をみてそう思うのとほぼ同時、
「いや。ありえるぜ。相手はリッチなおばん。それで決まりだ」
しみじみと顎に手をあてて断言している城之内。
「もう。真剣に考えてよ。あからさまに怪しい態度だよ。あの三人」
もしかして何か困ったことに巻き込まれている可能性も否めない。
『たしかに。隠し事をするにしてはあからさまに怪しすぎるな』
そんな城之内に対して、話しかける遊戯と同じく、しみじみといっている【ユウギ】の姿。
ちなみに、彼は学校などで表にでるときには回りとの違和感を解消すべく、
学生服のいでたち…という形式をとっているのでいくら回りの人々に姿がみえない。
とはいえ、遊戯の目からみても、さほど違和感はない。
どちらかといえば、【ユウギ】も自分と同じく高校に通っている、そんな感覚となっている。
「よっしゃ!とりあえず疑問を解消すべく……」
三人が何をしているのかかなり気にかかる。
それゆえに、にやりと笑いとあることを提案する城之内。
「え?でもそれって……」
『たしかに。疑問は解消しないと気になるのは事実だな』
迷いを見せる遊戯とは対照的に、うんうんうなづくもう一人の【ユウギ】。
「も~。お兄ちゃんまで~」
「?遊戯。誰と話してるんだ?ともかく!いくぞ!遊戯っ!」
「え?あ。まってよっ!城之内くんっ!」
いうなり、鞄をひっつかみそのまま三人を追いかけるように走ってゆく城之内をあわてて追いかけながら、
遊戯もまた、鞄をせおい、杏子たちの後を追いかけてゆく。

「とりあえず。尾行作戦、開始」
もう。
何でお兄ちゃんまで表にでてるままなの?
おもわず心の中で突っ込みしてしまう。
『いや。何か面白そうだし』
どうやらちょっとした悪戯心というか好奇心が勝っているようである。
彼にしては珍しいというか何というか。
まあ、誰しもあからさまに何かを隠しているような態度をとればそれを暴きたくなる。
というのは心情なのかもしれないが。
かつての彼もよく、こうしてカツヤたちに連れられて様々なところに出向いたいった経験がある。
それゆえに、シモンたちなどからは、カツヤたちはかなり注意人物な悪友とみなされていたが。
そんな心の中で会話をしながらも、傍目からみれば二人。
だが、実際は遊戯と、そして城之内。
彼ら二人以外に遊戯の横にもう一人の【ユウギ】の姿。
つまり三人で杏子たちをこっそりと追いかけてゆく彼らたち。
路地を利用し、かくれながらの追跡。
そんな彼らの視線の先では、
「今日はいつもより鞄おもいのよ」
「あ。俺がもつよ」
本田ヒロト・野坂美穂・真崎杏子の三人が仲良く並んでそんな会話をしていたりする。
と。
『遊戯。気づかれるぞ?』
「え?あ、城之内くん。こっちこっち」
ふと、杏子が気配に気づき足をとめたのをすばやく気づき声をかける【ユウギ】。
そんな彼の言葉をうけて、近くにある薬屋のマスコットの熊の置物の後ろに隠れながも城之内を呼ぶ。
遊戯と城之内が熊の影に隠れたのとほぼ同時。
きっと背後を振り向いて周囲を確認している杏子の姿。
「?どうしたの?」
足をとめて後ろを見ている杏子に対し首をかしげて問いかける。
「ううん。何でもない。いこ」
そんな話しかけてきた美穂をうながし、そのまま駅前通りのほうにむかってあるいてゆく。
そんな彼らの姿を見送りながら、
「あ。あぶな~い」
今のお兄ちゃんがいわなかったらみつかってたな。
ほっと胸をなでおろし、
「ありがと」
横にいるユウギにとお礼をいう遊戯。
「?何いってんだ?遊戯。しっかし…むちゃくちゃ勘がいいな、よし。いくぞ」
城之内にはもう一人の遊戯の姿はみえない。
それゆえに首をかしげながらも、そのまま遠さかってゆく三人を再び追いかけ始める。

三人に気づかれないようにつけてゆくことしばし。
やはり、杏子たち三人は駅前のほうにと進んでいる。
そして…
三人が並んで入っていったその場所は……
「え?」
「こ…ここは……」
思わずその前で足をとめて唖然とした声をだす遊戯と城之内。
『三人は中にはいっていったようだな』
苦笑しながらもいっているユウギの姿。
「バーガーワールド!?」
「何で?」
二人がわけがわからずに何やらいっている最中。
『まあ。はいってみればわかるんじゃないのか?』
至極最もなことをいってくるユウギであるが。
彼には中の様子を視ようと思えば視える力がある。
それゆえに、ちらっと確認したところ、彼らは面白いことをしているようである。
しかし…よく三人が三人とも採用されたな。
そんなことを思いながらも苦笑してしまうのは仕方ないのかもしれないが。
「たしかに。はいってみればわかるかもしれないけど……」
「おっしゃ。ともかくいこうぜ。どうせここにはいつかこようとおもってたんだし」
ほんっと、遊戯のやつときどき独り言をよくいうな。
それですまし、そのままバーガーワールドに向かって歩いてゆく。

ガ~……
「「「いらっしゃいませ。バーガーワールドにようこそ♡」」」
バーガーワールドの出入り口でもある自動ドア。
扉がひらくと同時に中から店員の制服をきた三人が客である彼らを出迎える。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
思わず入り口で硬直してしまう。
なぜかそこにはバーガーワールドの従業員の制服をきた杏子・美穂・本田の姿が。
「あ…ちゃ~……」
しばし固まったのちに、小さくつぶやく本田に。
「あ…杏子……」
唖然としながらも、杏子の制服姿に見とれている遊戯。
そんな遊戯の横では、おもわず苦笑しているユウギの姿が見えているが。
「お、おまえら…何やってんだ?こんなところで?」
そんな三人にと唖然としながらも問いかけている城之内。
しばしその場に固まりながら、
ば…ばれた。
しかも超、口の軽い城之内に。
この男にだけはばれちゃいけなかったのに。
などと思っている杏子の姿があったりするのだが。
というか…杏子のやつ…こんなところでアルバイトしてたら他の生徒とか、
または教師たちにもみつかりかねないの…気づいてないのか?
一人、的確なことを思っているユウギ。
杏子や遊戯たちが通っている童美野高校は基本的にアルバイトは禁止。
特殊な事情がある場合は許可をとればそれは可能だが。
「こら!何とかいえ!」
くるり、と向きを変えて背を向けている彼らにと叫ぶ城之内の台詞に、
「な…なにって!見ればわかるだろっ!バイトだ!美しい汗をながしてるんだっ!」
逆にひらきなおって、そんな城之内に叫び返している本田であるが。
「お前…パイトは校則で禁止されてるだろうが。いつもえらそうなことをいってるくせに」
城之内も許可を申請するものの、その素行の状況で却下されることはしばし。
それゆえに彼もまた無断でアルバイトを朝早くの新聞配達などをしている口ではあるが。
そのたびに、本田が何か説教じみたことをいってくる。
それゆえにここぞとばかりに言い返す城之内。
「いうな。城之内。俺だって…俺だって悩んだんだ。胃に穴があくほどにな」
そんな城之内の指摘をうけて、その場にてわなわなと体を振るわせつつも拳を握る。
「し…しかしだ……」
そして、声を震わせながら言葉を発するが、
「だって。美穂、ほしい服、いっぱいあるんだもん♡」
そんな本田に続いて、にっこりと微笑みながら口を挟んでくる美穂の姿。
そんな美穂の台詞に、うんうんうなづきながらもなぜか涙をながしている本田。
『……魂の本質は転生してもほんっとうにかわらないものだな……はぁ~……』
そんな本田の姿をみて、額に手をあてておもわずつぶやいているユウギ。
「本田くん……」
もしかして、本田くんって…昔からこうなの?
思わずそんなユウギの台詞に、心の中で突っ込みをする遊戯。
『俺がゾークを封印する前もこんなだったぞ?ヒロトは………』
「そ…そ~なんだ……」
城之内と本田がかつてユウギの友達であった。
ということは遊戯は彼から聞いて知っている。
だからなのか、彼らとあったときに昔からの知り合いだったような感覚に陥っていたのは。
それゆえにこそ、城之内にいろいろといわれたり、パシリ扱いされていても気づかなかった遊戯。
最も、城之内でなくても遊戯はその悪意にまず気づかないであろうが。
遊戯がユウギとそんな会話を交わしているそんな中。
「こらこら。君たち。お客様じゃないのかね?はやく席に案内して」
何やら出入り口で話し込んでいる彼らにとこの店の店長が話しかけてくる。
まだオープン間近なこともあり、客数もけっこう多い。
それゆえに学生アルバイトも大歓迎。
もっとも、やる気がある存在達に限るが。
「あ。はい。……どうぞ、こちらへ~」
杏子……おもいっきり棒読み……
おもいっきり不快感をあらわにし、開いている席にと遊戯と城之内を杏子が案内し、
「さ。俺たちも仕事、仕事。ね。美穂ちゃん」
「うん。ここの制服ってほんっとかわいい♡」
それぞれ接客へとむかってゆく本田と美穂。
「ご注文は?」
杏子…目が怖いよ~……
「え?えっと。スペシャルバーガーセット……杏子、おこってる?」
「さあ?何のことでしょう?バーガーセットですね。そちらさまは?」
うわっ。
こいつもこんな冷たい雰囲気だせるんだ。
そんなことを思いながらも、
「お。おう。俺も遊戯と一緒で」
「かしこまりました。少々おまちくださいね」
表情をぴくりともうごかさず、そのまま注文を聞いて奥にと引っ込んでゆく杏子。
そんな杏子の後姿をしばし見送りつつ、
「ねえ。城之内くん?店にきたのまずかったんじゃない?杏子…おこってるみたいだし……」
杏子が遠のくのとどうじ、張り詰めていた空気がうすれ、こわごわと城之内にと話しかける遊戯。
『というか。こんな場所でアルバイト…って……』
どうやらユウギにも思うところがあるらしく、しみじみといっているユウギの姿。
お兄ちゃん、何を心配してるのかな?
何か表情と口調からしてユウギが何か心配しているのを察して首をかしげる遊戯。
とうぜん、彼の言葉は遊戯以外には聞こえていない。
この場に霊感などといったものが強いものがいれば視え、聞こえるであろうが。
「けっ。ざまあみろっていうんだ。これで奴等の秘密をにぎった。っていうことだぜ」
まったく。
あいつらはこの俺と違ってアルバイトする理由なんかないだろうが。
こっちは生活がかかってるのに許可もらえないんだからなっ!
半ば怒りながらも言い捨てる城之内。
そんな城之内とは対照的に、杏子の制服姿を思い浮かべ、
でも、かわいかったな。
杏子のコスチューム。
などと思いながらもぽっと顔をあからめている遊戯であるが。
『遊戯…おまえ、顔あかくなってるぞ?』
「え?…え、えっと、その……」
ユウギの突っ込みに思わずあわてるものの、遊戯がさらに言い訳をするよりも早く、
「お待ちどうさま」
どっん。
無造作にテーブルにおかれるトレーが一つ。
その上に二人分の注文した品物、『スペシャルバーガーセット』がのっている。
「杏子」
まだ杏子…怒ってる……
杏子の表情を気にしながら恐る恐る問いかける遊戯。
そんな遊戯の問いかけはあっさり無視し、
「当店のハンバーガーは、ケチャップをたっぷりかけてめしあがってくださいね」
どばどばどば……
おもいっきり力をこめて高い位置よりハンバーガーにとケチャップをかける杏子。
ちくったらゆるさん。
起用にもケチャップでハンバーガー二つにそんな文字を描いていたりする。
「あ…あんず……」
さすがにその文字を目の当たりにしておもわずひく遊戯に、
「杏子っ!おまえなっ!」
そんな杏子に対して文句の一つをいおうとする城之内。
『へ~。杏子のやつ、器用だな。けっこう』
「お…お兄ちゃ~ん……」
その文字をみてしみじみというユウギに思わず脱力した声をあげている遊戯。
杏子に文句をいおうと叫んでいる城之内はそんな遊戯の突っ込みには気づいていない。
そのまますたすたと立ち去ってゆく杏子にむかって思わずさらに文句をいいかける城之内。
だがしかし、
「ま、こうしてバイトしてんのばれちゃったし、これ以上隠す必要ないけどさ。
  あたし、お金ためてんだ。卒業したらアメリカにいくためにね」
ぴたっと足をとめて後ろ向きのまま独り言のように説明してくる杏子。
「「アメリカ?」」
そんな杏子の言葉におもわず異口同音でつぶやく遊戯と城之内。
『そ~いえば、以前のブロードウェイの劇をみたときそんなこといってたな。杏子のやつは』
以前、杏子を伴い遊戯の祖父と父親と共にアメリカにいったときのことを思い出し、
ふとづふやいているユウギ。
あの劇のことはよく覚えている。
そもそも、なぜかマナの精霊。
すなわち、曰く『ブラックマジシャンガール』と今はとあるカードで名前がつけられた彼女が主人公の劇。
今では、マナもマハードと同じく、精霊とその魂を同化して自身と共に存在しているが。
「ニューヨークでダンスの勉強するの。夢なんだ。笑うなよな?」
多少てれながらも説明する杏子に、
「杏子、すご~い。そういえば杏子、昔からダンスのプロになるの夢だもんね」
ふと、杏子が小さいころにいっていたことを思い出し、瞳をきらきらさせながらいう遊戯。
遊戯は杏子が幾度もプロになるダンスの試験を受けているのをしっている。
知っているからこそ素直に感心できる。
「僕達、誰にもいわないよ。ね?城之内くん?」
いいつつ、城之内に視線をむける遊戯であるが。
「ふ。安心しな。杏子。俺らはちくったりしないからよ。ちくったらこのハンバーガー一万個くってやら」
いいつつ、杏子のほうをみてかるく右手の親指をたてて肯定の意を示し、
「しかしこの店、こんなケチャップだらけのハンバーガー、客にくわして金とるのかよ?ひでえ店だぜ」
いくら何でもケチャップがかかりすぎである。
そんなちゃかしたような城之内の台詞に、
「安心しな。あたしのおごりだよ」
ひらひらと手をふりながらも席を離れてゆく杏子であるが。
そんな彼女の姿をみおくりつつ、二人してかるく笑みを浮べ、
そのまま静かに注文したハンバーガーを口にしはじめる遊戯と城之内。

彼らがそんな会話をしている最中。
はぁはぁ……
くそっ。
脱獄したはいいものの、ここまで警備が厳重だとは。
服を盗んで近くの銀行による押し入って資金を得たが。
車を盗もうとして気づかれ、警察の目から逃げている今現在。
息をきらせつつも、外を走っている男が一人。
しかも人目を気にしながらの逃避行。
その片手には警官から奪った本物の拳銃が握られていたりする。
と。
ん?
ラッキ~
あんなところにドライブインがあるじゃねえか。
ふと、身を隠しながら進んでいた公園の先に目に入ったとあるバーガーショップ。
それに気づいてにやりとする。
酒もタバコも、そして足となる車もすべてそろっている。
あそこでひとまず、一人くらいまたぶち殺せば素直に逃げられるはずだ。
そんなことを思いながらも、目の前に見えるとある店にむかってゆく男が一人……

「杏子。夢にむかって頑張ってるんだ~」
いくつもオーディションをうけている。
というのは知ってはいるけど、もうお金をためはじめている。
というのは驚いた。
中学生のときは遊戯の店の手伝いで多少の資金を得ていたが。
夢……か。
僕の夢は…やっぱり、お兄ちゃんと同じかな?
誰もが幸せにくらせる世界。
大切な人たちが幸せにくらせる世界。
それが夢、といわれればきっとそれが一番のはず。
今一番、自分がおそらくしなければいけないことは、きっともう一人の自分。
すなわち、遊戯お兄ちゃんの失われている名前を見つけ出すこと。
それが自分の役目だと思っている。
精霊達曰く、だんだんと闇の力がつよくなってきているらしい。
そしてまた、すべての鍵は彼の真なる名前にかかっている。
というのは祖父から聞いて知っている。
祖父の記憶からも、そしてまた当人である【王】の記憶からも消されている真実の名前。
でも、その手がかりとなるだろう三枚のカードって……
お兄ちゃん曰く、まだ自分の手元にはないほうがいいとかいってたけど……
一枚はすでに手元にある。
そして、残りの二枚はエジブトの地に未だにたしかあるはずである。
あの三人の力で闇の力とか封じてるらしいしな。
お兄ちやん……
遊戯がそんなことを思っているとは露しらず、
「しかし。杏子のやつ…ただのでしゃばりってわけじゃなかったんだな。少し見直したかな?」
ケチャップがむちゃくちゃかかっているハンバーガーをぱくりとかじる城之内。
『……遊戯。気をつけろ』
「…え?」
ふと、いきなり横に出現したもう一人の【ユウギ】がいきなり遊戯にと話しかけてくる。
しかも外をみながらも何やら険しい表情をして。
「お兄ちゃん?」
「?遊戯。どうかしたのか?」
遊戯がそんな彼に問いかけるのと、そしてまた、遊戯の反応に疑問をいだき声をかける城之内。
それとほぼ同時。
が~……
再び入り口の自動ドアが開く。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
美穂や本田は他の客へ注文品を運んでいるがゆえに杏子一人での出迎え。
まだ開店したばかりの店であるがゆえに、アルバイト店員はいまだ募集中。
それゆえに、杏子のつながりで入ってきた美穂や本田も採用されたという現状があるのだが。

杏子が話しかけるが、目の前の客は答えてこない。
「あの?お客さま?」
杏子が問いかけるのとほぼ同時。
「おらおらっ!うごくなっ!!!!!」
「!!!!!!!!!!?」
いきなり目の前の男が杏子の横に回りこみ、そのまま杏子の口をおさえ拳銃をつきつける。
「おらおら!騒いだりうごいたらこの女、ぶっころすぞっ!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
「うわぁぁぁぁぁああ!脱獄犯だっ!」
どうみても撮影とかいった類ではない。
いま、話題がもちきりの例の脱獄犯だとすぐにこの場にいた全員が理解し騒ぎ始める。
「あ…杏子っ!」
『…ちっ』
たまたま出迎えた杏子が人質にとられ、悲鳴に近い叫びをあげる遊戯に、
その姿を確認して舌打ちしているユウギの姿。
悪意あるものが近づいてきているのは知っていた。
だが…まさか杏子を人質にとるなどとは。
やはり…まだ俺の力は完全ではないな……
そのことに多少自嘲してしまう。
仕方がなかった。
ではすまされない。
自分には人々を守るべき理由があるのだから。
だがしかし…かつての力のほとんどを悪意ある存在を封じたりするのに使い、また封じている今現在。
そんな事情から察するに予測できなくても仕方がない。
としかいいようがないのだが……
「…なっ!?」
杏子が人質にとられたのをみて思わず席をがたん、と立ち上がる城之内。
そしてまた。
「うわぁ!脱獄犯だっ!たすけてくれっ!」
「ひ~~~っ!!」
席を立ち上がりながらも当然の反応というべきか。
おもいっきりパニックになり騒ぎ始めるほかの客たち。
「おらおら!どいつもこいつもさわぐんじゃねえっ!全員床にふせろっ!」
バァッ…ンッ!
客たちがだんだんと騒ぎ始めたのをみて店の中の天井にむけて拳銃を一発ぶっぱなす。
乾いた音が店の中、そして店の外にまで響き渡る。
「……あ…あ……」
そしてそのままその拳銃を杏子のこめかみにと押し付ける。
そして。
きゅっ。
この店の制服の一部でもあった首に巻いていたスカーフをするっと抜き去り、
「俺だってこんなところに長いするつもりはねぇ。腹につめるもんつめたらおさらばするつもりよ。
  だが、その間は俺の横で大人しくしててもらうぜ。
  人間っていうのはな。視界がなくなると恐怖で声もだせなくなるんだぜ?
  ほら、囚人が死刑執行の前にそうするだろ?おおっと。俺も死刑囚だっけか。くくっ……」
いいつつ、杏子の視界を杏子がつけていたスカーフを抜き取り目隠しをする。
いきなり目隠しをされて恐怖で声もでない。
「あ…杏子っ…」
「くそ。あ…あのやろうっ……」
「きゃぁぁ!杏子っ!」
「くそ…まさか脱獄犯がこんなところにっ!」
杏子を心配し立ち尽くす遊戯に、
下手にうごいたら杏子の命がないのがわかるがゆえに、苛立ちを隠せない城之内。
相手が飛び道具である拳銃さえもっていなければいつもの喧嘩でケリはつくのだが。
だが、あいての手には拳銃が。
偽者ではなく本物の。
それゆえに手出しができない。
杏子が人質にとられ、叫んでいる美穂に、手出しできずにもどかしく感じて叫ぶ本田の姿。
「他のやつは全員うごくな。動くやつはこうだ。床にふせろっていったろっ!!」
ぱあんっ。
そう言い放つと同時に天上にむけて拳銃を一発ぷっぱなす。
小さいころから夢みていた。
いつかプロードウェイなんていわない。
せめて小さな舞台で踊りたいって。
でも…その夢もこんなところでおわっちゃうの?
誰か…誰かたすけてっ!
心の中で助けを呼ぶ。
下手に動いたり逆らったりしたら確実にコメカミにおしつけられている拳銃が炸裂するのは明白。
あまりの恐怖に声もでない。
「あ…杏子……」
どうしよう。
どうすればいいんだろ?
このままじゃ杏子が……
『まさか。杏子を人質にとるとはな……あれがシモンもいってたニュースにでてた脱獄犯か……』
そんな遊戯の横では、人質に取られている杏子の姿をみて怒りを押し殺しているもう一人の遊戯の姿。
今ここで、『力』を使えばたしかに杏子は助けることができる。
だけど、それには目撃者が多すぎる。
いきなり遊戯の姿を見えないようにする、というのも目立ちすぎる。
より一番よい方法で杏子を助ける方法を思索する彼とは対照的に、
ただただ、オドオドとうろたえるしかない遊戯。
「さあて。これから俺が要求するものをテーブルにもってこい!
  そこの気のよわそうながきっ!お前だっ!」
床に伏せることもできず立ち尽くす遊戯に目をつける。
「まずは酒とタバコだ!他のやつらは床に伏せたままでうごくなっ!
  そして床に伏せて目をつぶっていろっ!いいなっ!少しでも逆らうとこの女の命も。
  それにこの場にいる全員の命もないとおもえっ!」
くそっ…杏子を人質にするなんて…最低のやろうだぜ。
脱獄犯の言葉に心から何もできない自分に苛立ちを感じるが。
杏子を人質にとられている以上、何もできないのもまた事実。
「…え?…僕?」
犯人に指摘されて一瞬たちすくむ遊戯。
『遊戯。俺に考えがある。まずはあいつのいうとおりにしろ。必ず杏子は助ける』
お兄ちゃん……
横に出現しているもう一人の自分である彼が真剣な表情をしていってくるのをうけ、
心の中でつぶやき、こくん。
とうなづく。
とにかく、杏子を助けるのが何よりも優先。
その思いは互いに同じ。
「ほらほら。さっさとしろっ!この女がころされてもいいのかっ!」
動かない遊戯に豪をにやし、杏子のコメカミにさらに拳銃をつきつける。
『遊戯っ!』
「は…はいっ!」
「早く奥からもってこいっ!」
遊戯の返事は犯人にしたものではないが、犯人からすれば霊体であるもう一人の彼の姿はみえていない。
ゆえにこそ、おどおどしている遊戯にとさらにたたみかけるように叫ぶ犯人。
そのまま、せかされるように他の客や城之内たちが床に伏せている中。
遊戯はひとり、店の奥。
すなわち、厨房のほうにとはいってゆく。

「…えっと…お酒と…そしてタバコ…っていっても……」
奥にきても、何をもっていっていいのか遊戯にはわからない。
『遊戯。俺にかわれ』
「あ。うん。お兄ちゃん。杏子のことお願いだよ?!」
自分では杏子を助けられる自信がない。
だけど、彼ならば……
彼をより誰よりも遊戯は信用している。
信用しているからこそ、大切な杏子のことを頼めるのもまた彼しかいない。
すべては杏子の身の安全のため。
その思いをたくし、首からさげている千年パズルに手をかけて意識を集中する。
それとともに、パズルが金色の光をはっし、それと共に遊戯の体もまた光に一瞬つつまれる。
ふわり、と光になびくように遊戯の体全体が一瞬揺れる。
まるで一気に成長するかのごとくに身長がのびる。
ふわっとなびく独特な髪の毛。
本来あるべき、十六歳の遊戯の肉体のあるべき姿。
普段の遊戯の身長とはあきらかに差がわかる。
『さて……よりによって杏子を人質にとるとはな。
  しかし…遊戯を……この俺を選んだのが運のつきだな』
人の命を命ともおもっていない輩には情けは無用。
どうやって力を使うかきめかねていたが、チャンスは犯人のほうからつくってきた。
記憶操作でもしないといけないかもしれない。
そんな方法すらをも思っていた矢先に犯人のほうが遊戯を指摘してきたのだから。
他の客や、友でもあるカツヤ達も目をつむって床に伏せているのも不幸中の幸い。
「お…お兄ちゃん……」
いいつつも、奥の厨房を見渡す【ユウギ】に対して不安そうな声をだしている、
霊体として姿を横に出現させている遊戯。
遊戯には彼が何をしようとしているのかはわからない。
だけども、杏子を人質にとったあの犯人を許しておけない。
というその気持ちはいたいほど伝わってくる。
いったい何を探しだして選んだのか遊戯には理解不能。
ともかく、一本の瓶にとはいった酒と、そして封のきられていないタバコ。
その二つと、そして空のコップをお盆にのせる【ユウギ】。
『よし。いくぜ。遊戯。お前はどうする?奥にいてもいいんだぞ?』
「ううん。僕も杏子が心配だもんっ!」
自分には何もできないけど、見守ることならできるから。
そんな強い意志のもとにきっぱりと言い切る遊戯の言葉に笑みを浮べる。
遊戯はたしかに、はためには気がよわく、何もできないように見えるが。
その芯となる心ははてしなく強い。
『なら。いくぞ』
「うん。杏子…まっててね。必ずお兄ちゃんといっしょに助け出すからっ!」
そんな会話をしつつ、そのまま犯人がもつ表にと人格の変わった…
正確にいうならば、
千年パズルの中にと封印されているもう一人の遊戯の魂が表にでた【ユウギ】と、
そして元々の遊戯の霊体とともに犯人のもとにと出向いてゆく彼らたち。

コツコツコツ…
足音が近づいてくる。
誰かが自分のほうに近づいてきている証拠。
ちょっと…さっき、この男…きの弱そうなガキっていったわよね…
まさか……遊戯?!
「遊戯?遊戯でしょ!?きちゃだめっ!!!!」
気の弱そうなガキ。
それですぐに遊戯と結びつける杏子も杏子であるが。
だが、遊戯以外におもいつく人物はいないのも事実。
それゆえに遊戯を心配して人質にされているにも関わらずに声を張り上げる。
「うるせえっ!だまってろっ!」
パッンっ!
そんな杏子にとおもいっきり平手打ちをかましているその脱獄犯。
『杏子っ!!』
遊戯の声にならない悲鳴がユウギの心と耳にと届いてくる。
そしてまた、ユウギ自身も心の中で思わず叫ぶ。
そして、
抵抗できない杏子に手をあげるとは、手加減は必要なさそうだな。
自分の横で悲鳴をあげている遊戯とは対照的にそんなことを決意する。
そのまま、すたすたと犯人が座っているテーブルにとちかづいてゆき、
トッン。
テーブルにお酒の瓶とコップを置き、
「お望みのものをもってきたぜ」
そのまま犯人とは向かい合わせの席にと淡々と言いながら腰掛ける。
相手が殺人犯だとか、拳銃をもっている。
とかそういった不安や恐れはまったく彼の姿からして見受けられない。
どちらかといえば、相手を試しているような優位にたっている、そんな感覚を受けさせる。
「きさま…誰がテーブルにつけといった?」
そんな自分に対してまったく怯えてもいない彼にむかって怪訝な声をだす犯人であるが。
「なぁに。あんたの遊び相手になってやろうとおもってね。ゲームの時間だ」
そんな犯人の問いかけに、表情一つ崩すことなく淡々と言い放ってくる目の前の少年。
…?
何だ?
こいつ、ほんとうにさっきのあの気の弱そうなちびか?
それに気のせいか身長も何かさっきのチビと違うような気が……
少し離れていたから俺の勘違いか?
たしかに自分は一番気の弱そうな学生服をきたチビに品物をもってこい。
とはいったが。
どう考えても自分が命令した子供と目の前の人物は同一人物とは思えない。
かといって、他にあの子供とそっくりな人物がいた。
とは自分は確認しておらず、また誰も動いていないはず。
自分が指定した子供…即ち、『遊戯』の変化に戸惑いながらもだが依然として自分の優位には違いない。
そうおもいながらも拳銃を握っている手に力をこめる。
…?
今の…遊戯?
いや。違う。
すくなくとも自信に満ちた声。
遊戯とは違う。
……まさか?
視界がきかないのでたよりは耳と勘しかない。
目が見えないので何がおこっているのかはわからない。
気とかの勉強とかしたほうがいいって遊戯のお爺さんにいわれてたけど…
こういうとき、そういうのがあったら楽よね。
ほんと。
ふとこんな状況だというのに、いやこんな状況だからこそそんなことを思う杏子。
人間、見えるものがみえないと不安にかられる。
それは本来もともと見えている人の心情。
目が見えない人たちは、それなりに自分達で周りの情景を視る力をどうにか所得している。
それは風のゆらめきや、空気の臭いといった様々なもので。
そして…一番重要なのは『心の眼』。
いわゆる、心眼、とよばれしもの。
「ほお。ゲームねぇ。すこしばかり興味はあるな。昔から賭け事には目がねえんだ」
杏子がそんなことを思っているなどとは露知らず、目の前の少年。
すなわち、犯人からすればただの子供。
そんな彼の言葉に多少興味を示す。
というかこんな状況でばからしいことをいってくる。
そんな目の前のガキにはお仕置きしてやらないとな。
などと心の中では思っているのだが。
「ただし。ただのゲームじゃない。闇のゲーム。命がけのゲームだ」
犯人がゲームという言葉に反応したのをうけ、淡々と次なる言葉をつむぎ出す。
闇の…って、じゃぁ、やっぱり。
この声の主…って……
今の遊戯は…遊戯であって……
闇のゲーム。
それをしかける人物の心当たりは…杏子には一人しか思い浮かばない。
そんな杏子の心情を拳銃を杏子につきつけているままの犯人は当然知る由もなく、
「おもしろそうじゃねえか。ルールを聞きたいね」
自身の優位を確信したまま言い返す。
馬鹿じゃねえか?このガキ。
舐めたまねをしたらどうなるか、教えてやるぜ。
などと完全に目の前の子供を小馬鹿にしまくっていたりする。
たかがゲームで命がけ。
など聞いたことがない。
ロシアンルーレットでもこの拳銃でやろうってか?
そんな度胸がこの目の前のガキにあるはずもない。
などとかなり的外れなことを考えていたりする。
あるいみ、『闇のゲーム』はそんな拳銃によるロシアンルーレットよりもかなり性質がわるい。
というのを彼は知らない……

妙に静かだ。
いったい何がおこってるんだ?
遊戯が犯人と人質にとられている杏子のもとに品物をもっていった。
それまでは床に伏せているままでも足音と、そして上目遣いでみた光景で確認している。
だが、それからあまりに静かすぎる。
犯人が立ち去った。
というわけでも、また犯人が発砲した。
というわけでもなさそうである。
いったい全体何がおこっているのか。
確認しようにも下手に身を起こすと人質になっている杏子。
そして犯人のもとにおそらく、要求された品物をもっていっているであろう遊戯の身も危うい。
他の客たちはふるふると震えつつも生きた心地がしないらしく、それぞれに祈りを誰にともなく捧げている。
できる範囲でどうにか顔をすこしあげ、杏子のいるテーブルのほうに視線をむけようとするが、
城之内の目の前には、
ちょっとした体格のいい男性が床にふせてガタガタと震えているがゆえに様子を確認できない。
……遊戯…杏子っ!
心配はつのるものの…だが、何も自分にはできないもどかしさ。
そうだ!
メールなら……
犯人に気づかれる可能性もなくはない。
だがしかし、何もせずにはいられない。
外にいる誰かに中継してもらい警察に連絡するくらいならできるはず。
そうおもいながらも、ズボンの中にと入っている携帯電話に手をのばし、
そのまま気づかれないようにと携帯電話を自身の体のしたに忍ばせ、
そのまま静かに音を消してメールを打ち始める城之内の姿―――。


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あとがきもどき:
薫:さて。一番気の毒なのは誰でしょう?
  ちなみに、表現をぼかしてますけど、犯人さん。かなり酷い目にあってます(笑
  何しろ、黒いもや、と表現しているそれらは彼が今までころした人たちv
  ついでに彼の心の中にある悪意が魔物の姿として現れてたりv
  でも、回りには視えていない。
  中にはこの店の中に霊感や魔力の強い人がいたら視えてます(笑
  でも、みなさん床に伏せてる状態なので何がおこっているのかは皆目不明v
  何はともあれ、次回でこの脱獄犯編は完了v
  ようやくアニメの3話にいけるかなvv
  しかし…原作の話は抜かすか、それともいれるか…未だに悩み中……
  ともあれ、ではでは次回にてv

2007年8月23日(木)某日

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