まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

けっこう知ってそうで覚えていないエジブトとかの政府組織(汗
一応、学校で習ってるはずなんですけどね(汗
覚えてるのは歴史的事情関係くらいだわ(汗
この話にちまちまとでる予定だから、すこしウェィブ上で検索です……(汗

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ぴた。
殺気。
あからさまな。
気配を当人は隠しているつもりであろうが、自分にはまるわかり。
それゆえに、人気のまったくない路地にてぴたりと足をとめる。
たしかに自分や父の命を狙うものはいるのはわかっている。
それは上にたつものにとっては宿命ともいえることなのかもしれない。
「……なにもの?」
『力』を使うような相手なのか、それを見極めるのが何よりも重要。
そんな彼の声に反応するかのように、ざっとなぜか屋根の上から飛び降りてくる人影が一つ。
そして、そのままだっと彼の間合いに入り込み、
「てめえっ!ようやくみつけたぞっ!あいつらの仲間だなっ!妹はどこだっ!!」
いきなりといえばいきなりなことをいってくる。
しかも、胸もとをつかんで。
「……は?」
どうやら完全に人違いされているらしい。
だが、目の前の歳のころならばおそらくは十代後半くらいであろう。
自分よりも数歳年上のその男性。
「しらばっくれるなっ!」
いいつつ、拳を振り上げようとするが、
ふわっ。
くるっ。
すたっん。
こういったときの対処法も習っている。
それゆえに相手の力の反動を利用してそのままその手を振りほどき、後ろにかるく飛び上がり、
一回転して体制を整える。
「……な!?」
まさか自分の手が振りほどかれて逃げられるとは思っていなかったらしく驚愕の声をあげるその少年。
「て…てめえっ…っ!」
さらにつっかかってゆこうとするが、
「おい。まてっ!かつや!そいつ、ど~みてもまだ子供だぞ?」
「うるせえっ!こんなあからさまに怪しい格好をしているやつだぞ!?
  あいつらの仲間にきまってるっ!!」
そんな彼の頭上からもう一人飛び降りてきて諭すようにと話しかける。
が、どうやら目の前のこのカツヤ、と呼ばれた男性は聞く耳をもたないらしい。
「?どうやら何やらわけありのようだけど……何かあったのか?」
この王都で、しかも目の前の少年の様子から彼の妹の身に何かがあった。
と容易に想像はつく。
「てめえっ!このごにおよんでっ!」
「カツヤっ!」
どうやら完全に頭に血がのぼって聞く耳をもたない彼を一喝し、そして。
「いや。わるかったな。どうやらこいつが人違いをしたらしい。俺はヒロト。んでこいつがカツヤ。
  しかし、坊主もわるいんだぞ?何でそんな格好をしてるんだ?」
などと多少警戒しながらも、それでいてきちんと誤ってくる、ヒロト、となのったカツヤと同年代らしき少年。
「え~と……家のものから隠れるため?」
嘘ではない。
家というか王宮の関係者の目から…というのを入れていないだけで。
「何だ。坊主、家出か?」
「いや。違う。ただ家のものには内緒ででてきてるだけだ」
「それってあまり家出とかわらないような気がするんだけど……」
そんな彼の台詞に戸惑いの声を思わず発するヒロト。
そんな二人のやり取りをしばしながめつつ、
「…なんだ。あいつらの仲間じゃなかったのか?…わるかったな…俺はてっきり……」
どうやら自分がわるかった。
そう理解したらしく素直にあやまってくる。
「いったい、カツヤとヒロト、といったけど?何事?妹さんがどうかしたのか?」
子供とはおもえないどこか大人びた口調。
だが、どこか逆らえないような雰囲気すらをももっている。
「いや。こいつの妹が神官を名乗る偽者集団に誘拐されてな。噂でこの王都にきた。
  そうきいたもので……。坊主、何か噂とかきいていないか?」
何かこの目の前の少年には嘘をついてはいけない。
そんな気がする。
それゆえに素直に答えるヒロト。
「……何だって?」
そんな彼らの説明に、しばしさらに声のトーンが低くなる彼の姿……
そんな輩は絶対に許しておいては、父上の信用に関わるどころではない。
…いや、民の為にもならない――

  ~第5話~

「その格好をみてたら昔を思い出しますな~」
「?何?爺ちゃん?」
『シモン?』
今日は遊戯の母親である花蓮が食卓にいない。
というのもあり、久しぶりにと表に霊体として出てきている【遊戯】。
花蓮がいるときに姿をあらわしていると彼女が当惑するのがわかっているからあまり姿を現さないのだが。
幽体だというのにシモンが後ろに下げた椅子にと座り、
遊戯の横に座る格好で、遊戯の朝食にとつきあっている【ユウギ】であるが。
「いや。遊戯の姿とファラオの姿を見比べていますとな。こうファラオが王子時代のことが……」
前世のことを思い出して思わず感傷にひたってしまう双六。
今のファラオと呼ばれているユウギの姿は以前のときのそのまま。
つまりはファラオとしての姿のままであるがゆえ。
だが、双六にとっては赤ん坊のころからお世話していた人物でもある。
そして、遊戯もまた小さなころから面倒をみていた。
だからこそ二人の性格がよく似ている。
当たり前のことではあるが……というのもわかっている。
「あ。でもお兄ちゃん、何もたべれないって…つらくない?」
『いや。心配はしなくても大丈夫だ。それより遊戯早くたべないと遅刻するぞ?』
ふと自分ばかり食べているのを申し訳なくおもいそう横にいる【ユウギ】にと話しかける遊戯。
「え?あ。うん。そういえば今日は図書館に…だったよね?」
『遊戯の都合でいいぞ?』
昨夜、とりあえず学校の図書館の本をみてみたい。
という【ユウギ】との会話をうけ、今日の放課後。
彼にと体を譲り、しばし読書にふけこむ予定である遊戯たち。
「しかし…ファラオ?くれぐれもあまり無茶をしないでくだされよ?」
それでなくても彼の力は通常の人からすればかけ離れたもの。
だからこそ心配になってしまう。
『一応きにかけとく』
「「一応って……」」
そういう彼の台詞に思わず二人同時に突っ込む遊戯と双六。
そしてふと思い出したかのように、
「そうそう。そういえば。二人とも。
  昨夜、童美野刑務所から脱獄した犯人がうろついているらしいからの。十分に気をつけての」
今朝の新聞でもかなり大々的に取り上げられている。
昨夜、この町にとある童美野町の刑務所から脱獄した犯人が未だに辺りをうろついているらしい。
というので近隣の住民には注意を呼びかけている。
警備の警察を一人殺害し、さらには拳銃を奪って逃走しているらしいが。
『念のためにこの町内を精霊達に警護してもらったほうがいいか?』
「いや。そこまでしていただかなくても。というか、ですからっ!あまり無理をしないでくださいっ!」
ファラオはやるといったらとことんやる。
それが民の安全を守るためならば自身の命すらかけるほどに。
それでなくても今の彼は魂だけの存在。
しかも、いまだにまだあの邪神をその意志の力で封じている状態であることも知っている。
ゆえにこそ、あまり無理をさせたくない。
「大丈夫だよ。お兄ちゃん。警察の人が頑張ってるんだし。あ、ごちそうさまでした~」
そんな会話をしながらも、とりあえず朝ごはんを食べ終わり、かたんと席を立つ。
そして。
「それじゃ、爺ちゃん、いってきま~すっ!お兄ちゃん、いこっ!」
『それじゃあ。またな。シモン』
「二人とも、くれぐれも気をつけていくんじゃぞ?」
「は~い」
『それじゃあな。シモン』
そんなやり取りをしながらも、学校にゆくために遊戯達はともに家を出てゆく。
共に、といっても片方は霊体であり、元々は遊戯の心の中に存在しているので、
二人…というのは多少語弊があるだろうが。
そんな二人を見送りつつ、
「お願いですから、ほんっとぉぉに無茶をしでかしませんように……」
一人静かに祈りを捧げる双六の姿が、しばし見受けられてゆくのであった……
それは、彼にとっては心からの祈り。
かつてのファラオの行動を知っているがゆえの祈りでもある……


き~ん、こ~ん、か~ん。
「おわった、おわった~」
終了の鐘をきき、大きく伸びをする。
そして、
「おい。遊戯。帰りどっかよってかないか?」
教科書などをしまっている遊戯にと話しかける城之内であるが。
「え?あ。ごめん。僕今から図書室にいこうとおもってたんだ。城之内くんもいく?」
「げ~!!冗談っ!って何かあるのか?」
遊戯の台詞にずざっと思わずあとずさる。
「えっと…多分調べもの?」
多分。
といったのはもう一人の遊戯が何を調べたいのかが不明だから。
「一応。昼休みに先生に許可はとりにいってるし」
放課後、図書室で調べものがしたいんですけどいいですか?
といって、許可はすでに申請にいっている。
許可がでているからこそ、ゆっくりと気のすむまでかわっていようとおもう遊戯。
放課後にまず図書室にいる人などはまずいない。
図書委員がいるにはいるが、彼らとて長くいるわけではない。
とはいっても、やはりそこはそれ。
多少の生徒はいるのたが。
「何だよ?その多分って……」
「えっとぉ……」
何だといわれても説明のしようがない。
「一人でいくのも何だから、
  童美野町の駅前に新しくオープンしてるバーガーワールドに誘おうとおもったのに」
「え!?あのバーガーワールド!?」
その言葉に思わず反応する遊戯。
たしか、ものすごくおいしいって最近オープンしてから人気のバーガーショップだよね?
そんな遊戯の叫ぶ声をきき、おもわずぴたり、と急いで帰る支度していた杏子が手をとめる。
そして。
「え…えっと。城之内?遊戯?それって駅前のバーガーショップのこと?」
戸惑いながらそんな城之内たちにと問いかける。
「お?何だ?杏子、お前も興味あるのか?」
「じ…冗談っ!あそこって開店直後からあまりのまずさにお腹壊す人が続出してるって有名よ!?
  だから、絶対にいかないほうがいいってっ!」
城之内の台詞に思いっきりあわてたようにと叫ぶそんな杏子の台詞に、
「え~?美穂はそうはきいてないよ?ものすごくおいしいってきいたけど?」
ひょっこりと、そんな杏子の横から声をかけてくる美穂の姿。
「そうだぞ。美穂ちゃんのいうことが正しい!
  それより、学校帰りの寄り道は禁止だろうが?城之内?」
美穂の台詞に一瞬あわてるものの、本田の台詞にほっと胸をなでおろす。
「けっ。固いことをいうなって。一年生のくせに生徒会長に立候補して落選し、
  あげくの果てにお掃除委員になった本田くん?」
「お掃除委員じゃなくて、美化委員だっ!
  おまえら、学校帰りの寄り道は校則で禁止されてるとしらんのか!?」
よし、その調子!
そんな本田を思わず心の中で応援する杏子とは対照的に、
「でも、、バーガーワールドっていってみた~い」
「いきましょうっ!」
ちょっと!本田!
もっと城之内をとめなさいよっ!
心の中でそう叫ぶが、それを声にだすわけにもいかない杏子。
「お…おまえな……」
やばい…このままだと、彼らがあの店にいってしまう。
美穂の言葉にころっと態度を改める本田を目の当たりにし、ためいきとともにつぶやく城之内に、
そしてまた、あせりながらもそんなことを思いつつ、
「あ。でも。それに先生もいってたじゃない。刑務所から脱走した凶悪犯の話」
どうにか話題をそらそうと、無難な話題をふる杏子。
「あ。そうそう。そうだよ。凶悪犯だよ。凶悪犯。街中大騒ぎだもんね」
そういえば、朝も爺ちゃんから注意されたっけ?
お兄ちゃんは精霊達に頼んでこの街を警備させようか?
とかいってたけど……
それって視える人とかがみたら騒ぎになるのは見えてるしな~。
そんなことを思いしばし外を見ていると、
「何だよ。びびってるのかよ?根性ねえぞ?」
そんな遊戯をからかうようにといってくる城之内。
「だって、警備員一人射殺して拳銃もってるって話だし~……」
どうやら完全に話がバーガーワールドから外れたのをみてとりほっと息をつき、
そしてそのまま、そっと未だに騒いでいる遊戯たちをそのままに教室をでてゆく杏子の姿。
しばし、脱獄犯のことで騒いでいたものの、ふと杏子がいつのまにやら教室をでていったのに気づき、
「しかしよ。遊戯。さいきん杏子のやつ妙に付き合いわるくないか?」
いつもなら放課後などはよく絡んできたというのに。
ここ最近はあまりない。
「そういえば。ここ最近一緒に杏子とかえってないけど……」
城之内の言葉に、ここ最近一緒にもどってないな。
今さらながらにそのことに気づく遊戯。
大概、戻る方向が一緒なのでよく一緒に帰宅していた。
というのに。
それでも、それをあまり気にしていなかった。
というのはそれはまさに遊戯ならではのこと。
用事があるんだろうな。
それで済まして一人で帰路についていた遊戯。
「まさか。もしかしたら杏子のやつ。放課後援助交際とかやってるんじゃないだろうな」
しみじみといきなりといえばいきなりのことをいいだす城之内の台詞に、
「な…何をいう!我が校にそんな輩がいるはずないっ!」
「そうだよっ!杏子にかぎってそんなっ!」
本田と遊戯。
二人して思いっきり否定する。
遊戯に関しては顔を真っ赤にしつつの否定なのだが。
「お~。むきになって。顔が真っ赤だよ。遊戯。さてはお前……」
「あ~ん。そんなんじゃないよ」
というか、事実城之内がいいたいことが的を得ているのだが。
遊戯はそんな自分の心に気づいていない。
そんな三人のやり取りを背後でききつつ、
え…援助交際!?
杏子が?
しばし一人いろいろと思考をめぐらせパニックになっている野坂美穂。
ま…まさか、杏子にかぎって!?
ううん。でも以外と杏子ってオヤジ好きのする顔してるし。
やっぱりこれは……もう、やぁぁ!
一人で考えているとロクなことはない。
という典型であろう。
だんだんと悪いほう、悪いほうに想像が膨らみ、一人で勝手にパニックに陥り、
そして、
まっててね。杏子!美穂がおやじの手から救い出してあげるからっ!
一人でかなり的外れなことを思いながら、家とはまったく逆方向に歩いてゆく杏子をつけてゆく美穂の姿がその日、見受けられてゆく。
「…あれ?美穂ちゃんは?」
ふと気づけば美穂の姿もない。
「え?あれ?美穂ちゃん!?」
それに気づいてあわてだす本田。
「な~んか気がのらなくなっちまった。遊戯。また気がのったときにいこうぜ」
「あ。うん。なら僕は図書室いくね。本田くんたちも気をつけてかえってね」
どうやらバーガーワールドにいく、という当初の城之内の考えはなくなったようである。
それを聞いてほっとしつつも、そのままその場に二人をのこし、図書室にと遊戯は向かってゆく。


「うわ~。けっこういるけど、どうする?お兄ちゃん?」
ここは、童美野高校の中にとある図書室。
みれば、放課後だというのに結構生徒の姿は垣間見える。
『とりあえず奥のほうなら問題はなさそうだ』
「了解~」
とりあえず、ほぼ確実に生徒がいない棚の列にと入ってゆく。
図書室の名簿に記帳するのは基本的には本を借りたりするときのみ。
あとは自由に図書室は生徒に開放されている。
きょろきょろと周囲に誰も生徒がいないのを確認し、
「それじゃ、お兄ちゃん。僕ひっこむよ?」
そういいつつ、首からさげている千年パズルに手をかけて静かに精神を集中して目を閉じる。
それと同時にパズルが光り、遊戯の体も一瞬光に包まれる。
ふわり、とまるで光になびくようにと揺れる髪。
第三者がもしみていれば、
遊戯の体が光とともにゆっくりと違和感なく身長が伸びているのがわかるであろうが。
まるで背伸びをするかのごとくに、先刻までの遊戯の身長とはうってかわり、
歳相応の身長に添った形にと肉体的に変化する。
本来、遊戯は只今十六歳。
歳相応の身長があってもおかしくないのだが、
遊戯の身長は小学生高学年あたりくらいでぴたりと止まっている。
それは遊戯の魂に負担がかからないための処置なのであるが、そんなことは遊戯は知らない。
ふわり、と光が引くと同時にゆっくりと瞳をひらく。
先ほどまでの遊戯の人懐っこいような表情とは打って変わり、
どこか近寄りがたい雰囲気にと変化しており、見る人がみればおもいっきり変化がわかるほどに。
そこにいるだけで、何か空気が和らぐような雰囲気をもっているのが遊戯ならば、
今の『遊戯』はそこにいるだけで、何かこう空気が緊張するかのような威圧感をかんじえる。
まるで気おされるような感覚を感じ得ざるを得ない。
服装も、顔立ちもすべて遊戯そのものなのに、身長や顔つきが変わっただけでまるで別人。
だが、これこそがもう一人の遊戯…即ち、彼の中にいる【ファラオ】と呼ばれている当人そのもの。
『遊戯も一緒にみるか?』
いつもの遊戯の声変わりしていない多少甲高い声でなく、とても落ち着いた声。
静かに…それでいてどこか大人びた感じを感じさせるような声。
「え~?でもお兄ちゃんって…わからない原書とかよむし……」
事実、彼はよく翻訳されてものではなく、元となる書物を好む。
曰く、翻訳されているものはかなりの翻訳誤植があるとか何とか……
そのあたりのこだわりというか誤植は遊戯にはよくわからない。
というか、そもそもよくずっとパズルの中に封印されていた…しかも三千年も。
だというのに、別の国の言葉などがすぐに理解できるよね。
お兄ちゃんって……
そんなことをおもいつつ、『ユウギ』の横に透けた形で出現している遊戯。
他方が表にでているときは、このようにして霊体として表にでることは可能であるがゆえ。
それはまた、もう一人の【ユウギ】にしてもまた然り。
『基礎がわかればどの言葉も理解できるぞ?』
「んなのお兄ちゃんだけっ!絶対にっ!」
少しかじっただけでどうしてこうしてそうさらさらと理解できるものなのだろう。
それでなくても、彼は一度見たり聞いたり調べたりしたことは、
まるで乾いた土が水を吸い込むかのごとくに吸収する。
わいわいと騒いではいるが、基本的には遊戯のほうの声は他人には聞こえていない。
この場に霊感や魔力が強いものがいればまた異なるのであろうが。
幸いというか何というか、そういう生徒は今はこの場にはいない。
『でもないとおもうが……。とりあえず、遊戯にも必要なものだとおもったらなら呼ぶな』
「了解。なら僕ちょっとねてるね……」
授業に集中していたらけっこう眠くなる。
さきほどの城之内たちとのやり取りでその眠気は一度は吹っ飛んではいたが、
こう本のにおいに囲まれていると眠くなってしまうのは昔から。
それゆえに、心の奥にひっこみ、ひとまず軽く眠りにつくことにした遊戯。
『わかった』
遊戯の声をきき、素直にうなづくもう一人の【遊戯】。
そして。
『さて……まずは…と……』
表にでてこれなかった三年間。
その間に様々な情報や技術、知識などは世間では増えている。
遊戯の部屋にあるパソコンの端末にて多少の知識は昨夜手にいれたが。
それ以外にも調べたいのがある。
背負う形式の鞄の中より、用意しておいた新しいノートを取り出す。
そして、目的の本をいくつも本棚より取り出し、
人目があまりつかない場所。
即ち、図書室の後ろのほうのテーブルの一角にと腰をおろし、横に本を積み上げる。
選んでいる本のジャンルは様々。
コンピューター関連のものから、様々なゲーム関連のもの。
あとは政界関連や、世界情勢関連のものなどなど……
さらには、日本語以外でかかれている様々な書物等。
普通で考えたら一日では到底読み終えられるものではない。
だがしかし、そのままパラバラとものすごいスピードでそれらを読み解いてゆく『遊戯』の姿。
彼は本などを読み解くときは通常の人よりもかなりのスピードを誇り、さらにはすべて記憶にはいる。
という特殊な能力を昔からもっている。
最も、昔…即ち、彼が生きていたエジプトの地においてはあまり書物などに記載する。
というのはされていなかったのであるが。
だがその能力は昔からのもの。
それにはかなりの集中力を欲し、本の中から重要な部分をそのままノートにと書きとめてゆく。
もっとも、そのノートに書いている文字もまた通常の人ならばまずは読めないであろう。
古代神聖文字ですべてはかかれている。
古代エジプト文字は基本的には絵などを軸にして書かれるが、
神聖文字などといったものはそれとは異なる。
文字そのものが力をもっており、まずこの世界に今では読み解けるものはいないであろう。
それに近いもので、古代の神官などが利用していた文字というものもあるが。
だが今はそれらもすべては失われている文字であり言葉でもある。

「あ。先生」
「まだいたのか?早くかえりなさい」
すでに時刻は五時近く。
今この町は脱獄犯の影響もあり、生徒たちには早く帰るように先生たちは指導している。
今日の授業が終わったのもそれゆえにいつもより早め。
「でも、まだ一人ほど……」
顔はみえないが、一人しずかにもくもくと何やら調べ物をしている生徒がいるのはわかっている。
「ああ。彼なら先生たちにまかせて。君ははやく帰りなさい」
「は…はい」
図書室の担当でもある教員にいわれ、ぺこりとお辞儀をして図書室を後にする図書委員。
「気をつけてかえるんだぞ」
「はい。先生。お先にしつれいします」
生徒を見送りながらも声をかける教員に挨拶をしてその場をあとにしてゆく生徒の一人。
そんな生徒の後姿を見送りつつ、
「さて……」
いいながら、もくもくと何やら本を積み上げて調べ物らしきしている人物のほうにとあるいてゆく。
一年B組の担任より、生徒の一人が今日の放課後、図書室で調べ物をしたい。
と申し出があったのは聞いている。
おそらくは、今のこっている生徒がその生徒なのであろう。
教員の中では知らないものがいない、ある意味伝説となっている超天才児。
ここ数年はその話はきかなかったが。
七歳においてハーバード大学の卒業試験や入学試験をパスした。
という噂というか事実はすでに現大学にも確認済み。
名前もかわっているので同姓同名。
ということはまずないであろう。
そんなことをおもいつつ、そういえばまだその生徒にはあったことはなかったな。
話はいろいろと聞いてはいたが。
そう思いながらも本が積み上げられているその一角にと歩いてゆく。
「?何かようですか?」
近づいてくるその気配に思わず手を止めて問い返す。
びくっ。
問いかけられて何やらものすごい圧迫感に襲われて思わず体を硬直される。
それはまるでかなりの目上のものにいきなり話しかけられたかのようなそんな重圧感。
強いていえば、一般人がどこぞの王族というか一国の主といきなり面談することになった。
そんな状態のときに起こるであろう威圧感そのもの。
…事実、その通りなのであるが、当然そのことはこの教員が知る由もない。
とりあえず、自分は今はこの学校の生徒でもある。
それゆえに、一応は敬語を使って問いかける。
そういった外交手段などというものも、かつていやというほどに叩き込まれている。
だがしかし、その身からにじみでるその高貴なる雰囲気は誰をも圧迫してしまう。
十六といえばまだどこか幼さが残っているような口調であろうに、
かなり落ち着いた、それでいて有無を言わさないその口調。
「え…あ、いや…えっと…き…いや、あなたが武藤くん…ですよね?」
君、といいかけて知らず知らずのうちに敬語になってしまう。
そういい知らしめる雰囲気がたしかに目の前の少年…?にはある。
遠目にみるにはたしかに少年なのに、どこか少年とは思えないその独特の雰囲気。
そんな教員の態度に思わずふっと笑みを浮べ、そして。
「時間のことなら一応許可はとっているハズですが?」
少々遅くなってもいい。
と許可は遊戯がとったはずである。
それは自分も視ていたので知っている。
「え…あ、いや。もう五時になるけど……」
いいかけて、ちらりとその手元にあるノートをみて思わず絶句する。
見たこともない文字がびっちりとノートに書き込まれており、
そしてまた別のもう一冊のノートにおいては、何やら難しい記号のような何かが書き込まれている。
しばし絶句するものの、はっと我にと戻り、
「まだ時間がかかりそうなら、あまり時間が遅くなると今この町は危険でもあるから……」
とりあえず教師としての役目を果たすためにとその身に感じる重圧感をどうにか押し殺し、
どうにかこうにか目の前の生徒に話しかける。
どうやら敵意とかでなく、本気で自分を心配していってきているらしい。
教師の中には敵意を少なからずもっている存在もいるのも知っている。
だが、目の前のこの教員はそうではなく、あまり遅くなることに対しての心配をしているらしい。
「もう少ししたら終わりますので。ご心配ありがとうございます」
とりあえず、心配してくれていたのがわかったので軽くお礼をいい、そのまま再び本にと目を落とす。
そんな彼に対し、多少とまどいながら、
「と、とにかく。あまり遅くならないようにね」
いいつつも、その場からはなれてゆくその教員。
ガラッ。
「……ほ~……」
ひとまず彼一人を残して図書室をでる。
図書室を出ると同時にほっと無意識ながらに息をつく。
どうやら自分が今さらながらにあの生徒に対して緊張していたのを自覚する。
何だかとても精神的に疲れている。
まるで…そう、ただの一生徒に接したというよりは……
そんな自分の中に沸き起こったその感覚をあわてて頭を左右にふり振りほどく。
そんなはずがあるはずがない。
校長などに対峙したときもあそこまで威圧感を感じることはない。
それなのに……
「あの生徒の独特の雰囲気にのまれたのかな?」
それしか考えられない。
歳相応の落ち着きではなく、何かかなり重い責任を背負っている人物のようなその落ち着き。
「ま…疲れてるのかな?」
最近いろいろあって疲れているのだろうな。
そう自分の心をどうにかごまかし、そのまま教員室にと戻ってゆく――
図書室をでてゆくそんな彼の姿を見送りながら、
「さて…と。次は……」
とにかく、こうして表にでて調べ物などをできるのはごく限られた時間。
それゆえにムダにはしたくない。
本来、この肉体は遊戯のものであるのだから遊戯のほうを優先したい。
だけども、遊戯はその優しさから自分にこの体を譲る傾向があるのも知っている。
自分が何かに熱中すれば軽く数日は寝ずに体を酷使することもまま。
それは遊戯の肉体にとってはよいことではない。
それゆえに加減、というのもが必要となってくる。
それゆえの短期間の勝負。
そのまましばし、もくもくと残りの調べたいことをノートにと抜き出してゆく遊戯の姿。

『もうこんな時間か……』
とりあえずこの学校にて調べられる全ては調べつくした。
教員などはまだ多少残ってはいるが、それでももはや校舎には人影はない。
すでに完全に日は暮れて、空には星星がきらめいている。
腕時計をみれば時刻は七時を回っている。
「だね。もう真っ暗だ」
心理学などに関してはとりあえず一緒に閲覧してそれぞれに意見を交わしながら閲読した。
ゲームに関して、そういった心理学などが重要になることもある。
というのは双六からも、そしてまた【ユウギ】からも聞いているので遊戯は知っている。
だが、それらの心理がどういったものなのか。
というのを知っているのと知らないのとではその応用も大きくことなる。
それはゲームにとわず、様々な分野において応用できる事柄。
霊体のままで空をみあげてつぶやく遊戯。
そして。
「お兄ちゃん、今から歩いてかえったらかなり遅くなけど。またピムよぶの?」
彼の愛馬でもある天馬ピム。
『いや。それよりこっちのほうが今日はいいだろう』
いいつつも、懐から一枚のカードらしきものを取り出す【ユウギ】。
それって……
そういえば、この前、爺ちゃんが仕入れた中にも確かにアレはあったけど……
あれを現実にこう転用できるのって絶対にお兄ちゃんだけだよな……
しみじみと思わず感心してしまう。
かつてにおいては何しろ普通のトランプカードにその力を封じて転用していたのだからして。
『出でよ!旅立ちの扉っ!!』
カードに描かれている絵は扉らしきもの。
その絵のしたには何やら細かい文章のようなものが書き込まれている。
主たる使用方法というかそのカードがもつ特殊な力が書き込まれているのだが。
これは今現在、とある会社から発売されている『デュエル・モンスターズ』というカードゲームのカード。
だがしかし、
そのカードが実は様々な異界とのつながりをもつ扉になりえることを遊戯は目の当たりにして知っている。
その扱い方によっては、世界すらをもひっくりかえす力をもっているんじゃないのかな~?
などとそんな心配も脳裏をよぎる遊戯であるが。
だがしかし、今のところ普通のゲームとしての広がりしかみせていないのでその心配は杞憂であろう。
最も、一部の存在たちの間ではすでに危険な種が芽吹き始めているのも事実であるが。
そんなことは遊戯が知る由もない。
【ユウギ】の声に従い、彼らの目の前にちょっとした大きな二開きの扉が出現する。
そして【ユウギ】が遊戯に聞き取れない何かをいうとどうじ、ゆっくりとその扉は開かれる。
『さ。かえるぞ』
「あ。うん」
その扉の先に見えているのは…どうみても、遊戯の家そのもの。
つまりは、彼はこの扉をつかって学校と遊戯の家の空間をつなげたのである。
そのままユウギが扉に入ってゆくのと同時、扉の姿はその場から掻き消える。
あとには…ただ、普通の校庭の姿があるのみ……


「それでよ~。これがすげえ難しくって。おまえんちいってやってみせてくれよ」
「うん。いいよ」
昨日の今日である。
とりあえず翌日。
昨日は遅くにもどり、多少母親に心配させてしまったようである。
それでなくても、いまだにまだ脱獄犯はつかまっておらず、警察による警戒態勢は続いている。
やっぱりお兄ちゃんと普通に心の中以外でも話せるのっていいな。
そうしみじみと実感しながらも、放課後、話しかけてきた城之内にとにこやかに返事をする。
今日もやはり、脱獄犯の影響で授業は短め。
放課後にある様々な部活動なども自主的に自重しているらしく、生徒はそのまま帰路につく。
遊戯の机をはさんでそんな会話を城之内と二人していると、
「わ~。いいな。美穂もいく」
城之内がもっているのは最新のとあるゲーム。
しかも最新式のゲーム機のもの。
それゆえに興味をひかれ、そんなことをいってくる美穂であるが。
「美穂」
そんな美穂に淡々と、ちらっと垣間見て一言言い放ってくる杏子。
「あ。そか。ごめん。今日はダメだったんだ」
その杏子のことばに、はっととあることを思い出し、ぺろっと舌をだす。
そして、そのままぱたぱたと鞄をもって杏子のほうにとかけてゆき二人一緒に教室を出てゆこうとする。
「あたし達、しばらくメッチャ忙しいから、しばらく誘惑しないように。さ。いくわよ。美穂」
「じゃあね」
そのまま、二人して挨拶もそこそこにそのまま教室から出ていき帰路につく杏子と美穂。
そんなあまりといえばあまりのあっけなさに本田が一瞬うろたえる。
「あ…あれ?美穂ちゃん?」
彼としては、凶悪犯がうろついているので美穂の護衛をかねて一緒にかえろう。
そうさそうつもりだったのである。
昨日に続いて、今日もまたからまわり。
二人なかよくそのまま廊下を進んでゆくそんな杏子と美穂の姿をしばし唖然とながめつつ、
「つ…ついに美穂のやつまで援助交際の仲間入りか。嫌な世の中になったものだぜ」
しみじみと、なぜか昨日のそこから考えが抜けない城之内が顎に手をのせてそんなことをつぶやく。
「じ…城之内!美穂ちゃんがそんなことするわけないだろっ!撤回しろっ!
 さもなければ……今、この場で腹をきれっ!」
そんな城之内の言葉に過激に反応して、即座に否定の言葉を発している本田。
というか、腹をきれ。
とはここは戦国時代か?
という突っ込みを入れたいところであろう。
もっとも、腹を切っただけでは簡単には死ねないが。
「そうだよ。城之内くん、失礼だよ」
まだ城之内くん、昨日の思い込み、なおってないのかな?
そんなことを思いながらも遊戯が城之内をたしなめる。
「けっ。甘いんだよ。おまえら。知らねえのか?今日杏子のやつ、お昼の弁当に何をかったとおもう?
  最高級スタミナ弁当だぜ!?信じられるか!?
  俺たちが一度も食ったことがないスタベンだぞ!?つまりは金がある。ってことだろうがっ!」
が、そんな二人の態度とは裏腹に、ぐっと力をこめて拳をにぎり、力一杯力説する。
購買部の中で一番高い弁当である。
おこづかいなどが決まっている生徒にとってはたしかにきついものがあるのも事実。
特に城之内に関してはすべての学費を自分でまかなっている。
というのもあるからなおさらに。
ば…馬鹿な。
幻のスタベンを!?
そんな城之内の台詞に思わず愕然とする本田。
たしかに、普通ありえない。
いや、少し考えればありえることではあるのだが。
それでも、きまったおこづかいしかもらっていない身からしたら信じられない贅沢である。
そして、そんな贅沢をした杏子にとついていった美穂……
い…いや、美穂ちゃんに限って援助交際など。
し…しかし、万が一にも魔がさして…ま…まさか……
が…リッチなオヤジには我々高校生にはない嵐の魅力があるのも否定できない。
い…いや、いやでも…しかし…いやでもこれは…
類は友を呼ぶ。
とはある意味どの時代においても世界においても共通しているのかもしれない。
昨日の美穂と同じような妄想世界に入りながら、彼の中でその妄想がエスカレートしてゆく。
おお、何てことだっ!
美穂ちゃん。いけない。目を覚ますんだ。俺が…この俺が君をすくってみせるっ!
一人、かってに自分の中で結論をだし、決意を新たに、
「あ。俺今日は用事があるから。おさきにっ!」
いってそのまま本田もまたあわてて帰路につく。
昨日に続き今日はまた、家とは互いにまったく異なる方向に進んでゆく杏子と美穂を追いかけつつ、
そのまま二人のあとをつけてゆく本田の姿――

「?本田くん、どうしたのかな?」
「変なやつら。それより、遊戯。これ、今日おまえん家いっておしえてくれよ?な?」
というかこれは遊戯から借りているゲームである。
城之内に新作ゲームを買うようなそんな余裕はない。
「うん。ならついでに一緒に宿題もする?」
「先に宿題がくるか!?普通!?」
「だって、ゲームしてたら時間たつの早いし」
至極最もな遊戯の意見。
そんな遊戯の台詞に、ため息ひとつ。
「まったく。お前はそういうところはくそ真面目だよな。わぁったよ」
ここでそんなのやらなくていい。
とでもいったら遊戯のことである。
延々と説得に入るに違いない。
そう確信しているがゆえにため息とともに肯定する。
「それじゃ、いこっ!」
そんな会話をかわしつつ、城之内と遊戯。
二人もまた学校を後にして帰路にとついてゆく――


                      ――Go To NEXT

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あとがきもどき:
薫:さてさて。次回でちらっと複線いれるかな?それともはぶくかな?
  微妙なところ~(こらこら
  でも今後の展開のために、やっぱりいれといたほうがいいのかな?
  というかなり微妙な複線さん(笑
  ともあれ、次回で少しはお話…すすむかな?
  ちなみに、アニメと原作入り混じってるのはご了解くださいねv
  ともあれ、次回にいくのですv

2007年8月20日(月)某日
 
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