まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

ようやく今回で1話目の内容おわるかな?おわるかな?
しかし…1話目で四話かかるって…どうよ(汗
ともあれ、今回で第1話分のエピソードは完了ですv
ともあれ、いっきますvv

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うわ~
ざわざわざわ。
時刻は夕刻。
それゆえか人の並がものすごい。
一人でこのように王宮から出るなど初めてのこと。
ときどき、バーのみで肉体から抜け出て街の中を探索していたりするが。
 ゆえに、一応王都の町並みはそこそこ頭に入っている。
だからこその今日の決行。
それに何というかこう…何かに呼ばれているような気がここ最近強くなっている。
ここ数日、その感覚がよりつよくなり、その呼ばれる感覚がここ数日の間は王宮からかなり近くに感じられる。
ゆえにこそ、確かめるためにとこっそりと抜け出たのだ。
子供が一人でうろうろしていたら目立つかな?
という思いはあるが、ちらほらと見られてはするがあまり気にされてはいないらしい。
まあ、格好てきにたしかに何か怪しい格好かもしれない。
とは自分でもおもう。
何しろ頭にはすっぽりとフードを目深にかぶり、体は体で白い布を巻きつけている状態。
まあ、砂漠地帯などを越えるときの格好によく似ている。
といえばそれまでだが。
だからこそあまり気にかける人が少ないのだろう。
道沿いにと並んでいる露店の数々。
このように実際に人々が売っていたりするのを目にするのも自分にとっては新鮮。
何しろ必ず、王宮の外などにでるときには警備のものと一緒か、もしくは王宮内部しか出歩くことは不可能。
そんな状態だからこそ……
「うわ~。何かものすっごく楽しいっ!」
ぐっと思わずこぶしをつくり握り締める。
みているだけで様々な人々がいるのがわかる。
この人々を護りぬくのもまた自分の使命。
父がそうしているように。
そんなことを思いつつ、
「とにかく…感覚のするほうにいってみよっと」
そのまま、とてとてと走りながら路地裏のほうにとかけてゆく小さな子供の姿が一人、
日が暮れかけた王都の一角においてしばし見受けられてゆく――

  ~第4話~

……あれ?
えっと…ここって……
ふと目を開くと見慣れた風景。
こじんまりとした部屋であるが、壁にぴっしりと古代の文字が刻まれているのが印象深い。
「えっと…たしか…僕?」
何でここ…お兄ちゃんの部屋の一つだよね?
そんなことを思いつつ、思わず首をかしげて起き上がる。
「気がついたのか?遊戯?」
ふとみれば、ベットの横に腰掛けている自分そっくりの人物が話しかけてくる。
「あ。お兄ちゃん。…えっと僕…って、そうだ!?城之内くんたちは!?」
ぼ~とする思考の中、やがて意識がはっきりと覚醒してくる。
「彼らなら大丈夫だが。それより遊戯。はやく表にでて意識を回復させないと、遅刻するぞ?」
「…え?」
「もう八時まわってるんだが?」
「…えええええっ!?」
いったい全体何がおこったのかはわからない。
判らないけど、唯一ついえるのは、早くしないと遅刻してしまう。
ということである。
「嘘~!?」
「叫ぶ暇があったら目覚めろっ!」
「は…は~いっ!あ、お兄ちゃん、きちんと説明してよ!?」
おぼろげながら覚えている。
パズルを再びくみ上げたことは。
ならば、通常の昔どおりに彼もまた表にでてこれるはずである。
魂としての霊体の姿と、そしてまた自身の体をつかって。
そういいつつも、ぱたぱたとあわてて部屋の外へと出てゆく遊戯。
ここは遊戯の心の奥底にとあるそれぞれの深層意識の奥底にある心の部屋。
ここからでてゆき、遊戯は今度こそ完全に現実として目を覚ます。
がばっとあわててとびおきる。
たしかにいわれたとおりに時刻はすでに八時を回っている。
学校からもどってすぐに次の日の教科はそろえているので鞄はもってでるだけ。
ふとみれば、首にかけられた状態の千年パズルが目に入る。
やっぱり僕、ようやくまた完成させてたんだよね?
そんなことを思い、一瞬パズルに両手をかける。
『…おいおい。遊戯。だ~か~ら。早く着替えないと……』
それと同時にほのかにパズルが光を放ち、遊戯の横に遊戯そっくりのもう一人の人物。
肌の色などが異なるにしろほかは身長以外はほとんど同じ。
強いていうならば声や口調も異なるが。
ともかく、もう一人の遊戯がその場にと透けている状態で出現する。
「あ。そうだったっ!」
指摘をうけてあわてて服を着替えだす。
『ってもう15分すぎてるぞ……』
時計をみればもはやもう八時十五分すぎ。
どう走っても遅刻はまちがいない。
はうっ。
それゆえに、思わず盛大にため息をつきながら、
『仕方ない。遊戯。家からでたらピムを呼ぶからそれにのっていけ』
コメカミに手をあてながらも遊戯にと話しかける【遊戯】。
「え?あ、ありがと!遊戯お兄ちゃんっ!」
『お礼をいうより、はやくしろっ!!』
「は~いっ!」
こんなやり取りでも心の中だけでなく現実でやはり話し合えるのがとても嬉しい。
この三年間、このやり取りは心の中でのみしかできなかったのだから。
【遊戯】にせかされて、服を急いで着替え、そのまま学生鞄をもって部屋を飛び出す。
バタバタと駆け下りるようにと階段をおりてゆく。
「あら?遊戯?まだいたの?」
てっきり静かなのでもう出かけたとばかり思っていたがゆえにそんな息子の姿をみと問いかける母親。
「あ、おはよう。お母さん。んでもっていってきま~すっ!!」
「あ、ちょっと!遊戯っ!」
カラッン。
バタバタバタ……
母親である花蓮が話しかけるよりも早く、そのままあわてて家を飛び出してゆく遊戯の姿。
そんな息子の後姿を見送りつつ、
「…あのこ、完全に遅刻じゃないかしら?」
時間的に走っても絶対に遅刻は間違いないであろう。
そんなことをつぶやく母親であるが、
「ほっほっほ。まあその心配は無用じゃろうて。何しろまたパズルをくみ上げてるからのぉ」
「それは…遊戯の横にあの少年がいたからわかりますけど……」
父親の魔力を受け継いでいるのか普通ならば視えないものまで視える体質である。
ゆえにこそ、遊戯の側に遊戯そっくりのもう一人の人物がいるのをうけて問いかけようとしたのだが。
あの姿は昔からよくみていた。
父親でもある双六がいうには、彼がパズルの中に封印されていたというか、
自らを悪意ある存在から人々を護るために共にパズルの中に封印した。
そう聞かされてはいる。
半身半疑ではあったが、さすがに古代エジプトにでてくるようなあの格好の少年を目の当たりにして、
多少のことは信じられるようにとなっているこの花蓮。
「でも、何であの少年が再び表にでてこれたら大丈夫なんですか?」
「何。彼は精霊を呼び出せるからのぉ。ほっほっほっ」
よもやいくら何でもかつてのように…空間移動までは今はできんじゃろう…だとはおもうがの。
それが一番双六にしては気がかりな一点であるが。
何しろ彼…【王子】であったときの彼はよく自身でくみ上げた力をつかって王宮の外にと脱走していた。
という経緯の持ち主である。
邪神などの封印のためにその力をかなり分断しているがゆえにそのような力は今はない。
そう信じたい。
あったら何をしでかす…もとい、どこにいくかわからない。
「精霊って……」
そりゃ、彼の周りには変わった形の人でない人たちがたくさんいますけど。
その言葉はどうにかのみこむ。
父娘がそんな会話をしているとは夢にも思うことなく。
一方では、
『我が命のもとに現れよっ!ピムっ!!』
遊戯の横で【遊戯】がそう叫ぶのと同時、目の前の空間がぐにゃりとゆがみ、
そこから現れる真っ白い馬が一頭。
『ほら。いくぞっ!遊戯っ!』
「って、あ、まってっ!」
もう一人の自分にけしかけられ、彼に続いて遊戯もまたその馬にとまたがる。
朝だというのに誰もこちらを気に留めていない。
というのは他ならぬ、【遊戯】がパズルの力を使って他人からは見えないようにしているがゆえ。
遊戯が馬にまたがると同時、ふわり、とそのまま真っ白い翼をはためかせて空に飛び上がる白き馬。
これこそが、古代よりもう一人の遊戯こと、【ファラオ】の愛馬でもある、天馬ピム。
空には別に障害物なども何もない。
ゆえに空を飛んでいけば学校までの距離などはたかが知れている。
それゆえに数分もたたないうちに遊戯が通っている高校が見えてくる。
そのまま、人気のない裏門のあたりにふわり、と着地する。
『ご苦労だったな。ピム』
「えっと。ありがとう。ピム」
このピムとも遊戯は小さいころからの付き合いなので気心は知れている。
本当はこのピムはファラオ以外には昔からなつかないのだが。
遊戯はそんなことは知る由もない。
ヒヒ~ンっ!
そんな二人の声に対し喜ぶようないななきをあげ、そのまま再び空にと舞い上がって掻き消えてゆくピムの姿。
そんな天馬ピムの姿を見送りながら、
「あ。いそがないとっ!」
ふと我にともどり、ばたばたとあわてて表のほうにとかけてゆく遊戯。
朝であるがゆえに裏門のあたりには人はあまりいない。
朝は基本として表門のほうから人は出入りする。
それは先生達にしても同じこと。
ゆえにこそ、遊戯がハタからみたらいきなり出現したように見えるこの現象を突っ込む第三者。
それがいない、というのはあるいみ幸いであろうが。
ともあれ、表のほうにとまわると、ぞくぞくと生徒が学校の中にとはいっていっている。
腕時計をみれば時刻は今は八時二十分になるところ。
「お兄ちゃん、ありがと~。おかげで遅刻しないですんだよ」
はたからみればおもいっきり独り言。
だがしかし、遊戯にはたしかに自分の横にいるもう一人の自分が視えている。
だが、遊戯以外の誰のその姿は視えるはすもない。
それは遊戯の心が彼とつながっているがゆえに視えるのであって、
こういった人数が多い場所などで彼が姿を現す場合は、
『パズルの力』を使い他人の目からは視えなくしている現状がある。
それにもまたきづいていない遊戯なのであるが……
『遊戯。人がいるところで俺に話しかけてたら独り言をいってるようにしかうつらないそ?』
ゆえに、一応今までも幾度も注意をしてはいるが無駄とはわかりながらも注意を促す。
「でも、せっかくお兄ちゃんいるのに?」
『だから……と』
そんな会話をしつつもロッカーにて靴を履き替え校舎の中にと入ってゆく遊戯。
そして階段をのぼりきり、ふと人の気配を捉えてふと黙る。
そんな彼の態度に、
「?お兄ちゃん?」
いきなり黙った【遊戯】に対し、きょとんと首をかしげるが。
『どうやら人がきたようだしな。俺は奥にひっこむ』
そういうと同時、遊戯が首にかけている千年パズルが光ったかとおもうと、
そのまま遊戯の心の中に再びひっこんでゆく【遊戯】。
「って、お兄ちゃん!?」
そんな彼に対してまだ話したいことはあるのに。
そんなことをおもい、思わず両手で千年パズルを掴んでそれにむかって叫ぶものの、
『それより。遊戯。ほら……あいつがまってるぞ?』
「え?」
いわれてふと前のほうをみてみれば、柱の側に佇む人影が一つ。
「よ。遊戯」
「あ。城之内くん。…怪我…大丈夫?」
顔にみえる絆創膏が痛々しい。
それが自分のせいであるがゆえになおさらに。
「俺はたいしたことねえ。それよりお前こそ大丈夫なのか?」
気のせい、といわれればそのような気もしなくもないが、あの血の色ははっきりとまぶたにこびりついている。
遊戯が刺されたあの瞬間も。
だからこその問いかけ、
「うん。僕は大丈夫だよ。それより城之内くんや本田くんたちは大丈夫なの?」
自分のことよりも二人のことのほうがかなり気にかかる。
「俺にとっては全然平気だぜ。こんなの」
本気で心配されていることに対して後ろめたさを感じてしまうのは今までの行動があるがゆえ。
だけど、これだけは今いわないと絶対にいえないような気がする。
だからこそ遊戯が登校してくるまでこの場でまっていた。
「遊戯。俺もよ。お前にみならって宝物をもつことにしたぜ。みてえか?」
意を決して遊戯に対して話しかける。
「え?うん!」
素直にうなづかれて思わず苦笑してしまう。
が。
「へへぇ。残念。俺の宝物もよ。見えるんだけど見えねえ。だからみせらねえ」
自分でも恥ずかしいことをいっている。
というのはわかっている。
だけど、今までのことと、そして昨日の遊戯の心の強さ。
遊戯は男らしくないと思っていた自分の心の狭さ。
遊戯は誰よりも男らしく、そして強い心をもっている。
というのがわかったからこそ、今いわないと絶対に自分もこのままで卑小もので終わってしまう。
「見えるんだけどみえないもの?」
腕をくみながらいってくる城之内の台詞に首をかしげる遊戯。
「それは友情さ。俺とお前は互いに見えるけど友情ってやつはみえないだろ?」
何でこう今日の俺は恥ずかしい台詞がぽんぽんと……
「うんっ!」
そんな城之内の言葉にぱっと目を輝かす。
くすくすくす。

何やら心の中でもう一人の彼が笑っているのが感じられるが。
あいつ…前も同じようなことをいってたよな。
ほんっと変わらないよな……
そんなつぶやきが遊戯の心に響いてくる。

遊戯お兄ちゃんって、城之内くんと知り合いなのかな?
あとからきいてみよ。
そう遊戯がおもっていると、
「それじゃあな!授業はじまるぜっ!」
顔を真っ赤にしてそのまま走ってゆく城之内。
あわてていたからか、上履きを片方その場に落としていっていたりするが。
「あ。まってよ。城之内くん!上履き片方おとしていってるよっ!」
そんな城之内の上履きをひろってあわてて追いかけてゆく遊戯の姿。

ざわざわざわ……

何かあったんだろ?
そういえば、朝から何か騒がしいような気がするけど?
教室に入ると、何やらクラスメートたちが騒がしい。
「あ。おはようっ!ねえねえ、きいた!?」
クラスに入ると遊戯に話しかけてくる杏の姿が。
「?杏子?」
「お。城之内。お前、きいたか?」
そしてまた、城之内にと話しかけている本田の姿。
ざわざわとクラスの中全体がいつもよりざわめいている。
「えっと…何かあったの?」
きょとんとしながらも話しかけてきた杏にと問いかける遊戯の言葉に、
「あ。やっぱり遊戯はしらなかったんだ。風紀委員長だった牛尾先輩っていたじゃない?」
「「…え……」」
その名前に思わず二人して思わず言葉が途切れる遊戯と城之内。
「おい。本田。あいつがどうかしたのか?」
昨日の今日である。
気にならない、というほうがどうかしている。
「いや。それがさ。俺も学校にきてから知ったんだが……」
「何でもすごいショックで入院したらしいのよ。いったい何があったのかしら?」
「それだけじゃなくて、彼が今まで生徒たちを脅していたという事実が判明して学校中大騒ぎよ」
本田にかわり、口々に説明する美穂と杏子。
『すごいショックって……』
その言葉に思わず顔を見合わせる城之内と遊戯。
自分達は彼にやられて気絶していた。
ならばその後に何かがあった。
ということか。
「お兄ちゃんに聞けばわかるかなぁ…そのあたりのこと……」
いいながら、首からさげた千年パズルにと手をかける。
そんな遊戯の姿をみて、
「あら?あ。遊戯。千年パズルくみあがったんだっ!おめでとう!
  ってことは、また前のように話とかできるのよね?」
遊戯と違い、常に話すことは不可能ではあったが、それでも表にでてきた彼と話すことは可能だった。
「うん。あ。そっか。そういえば杏子にはお兄ちゃんの姿はみれないんだっけ?」
「くやしいけど、遊戯のお爺さんがいうには魔力がたりないらしいのよね~」
そんな何やら第三者がきけばわけのわからない会話をしている遊戯と杏子。
「って、何なんだ?その魔力とか何とか……」
「うわ~。このまえのパズルできあがったんだ。綺麗~。ピラミットの形してたんだ」
疑問符を浮かべて問いかける本田の台詞をさえぎり、
だっと遊戯の側にいって目をキラキラさせて問いかける美穂。
「うん。千年パズルっていうんだ。古代エジプトの王家の墓から発見されたもので、
  十八代王朝の王様でもあるお兄ちゃんの魂がこの中に悪者と一緒に封印されてるんだ」
『って、さらっというんじゃないっ!遊戯っ!!』
さらり、と言い放つ遊戯の台詞に思わず驚き、あわてて遊戯の心の中からでてきて、
霊体ではあるものの、遊戯の横にたってあわてて注意を促すもうひとりの【遊戯】。
「うわ~。すごいっ!今、これ、ひかったよね。ね!?」
だがしかし、その姿は遊戯にしかみえておらず、美穂たちにはパズルの紋様の瞳が光った。
それだけしかわからない。
「え?でも本当のことじゃない?」
『…あのな。遊戯。いきなりそんなことをいわれて、はい。そうですか。と思ううとおもうか?』
「うんっ!」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
きっぱりはっきりと言い切る遊戯に思わず無言となりはてため息が出てしまうのは仕方がないであろう。
そんなハタからみればおもいっきり独り言をいっている遊戯に対し、
「って、遊戯?おまえ、誰とはなしてるんだ?大丈夫か?」
やっぱり昨日の怪我が元でどこかおかしくなってるとか……
その心配があるがゆえに、心配した声をだす城之内。
「城之内くんにも見えないの?僕の横にいる僕そっくりのもう一人の僕。
  そ~いえば、何でお兄ちゃん、服を学生服に替えてるの?」
『…遊戯~…も、いい……』
「あれ?あ、お兄ちゃん、ひっこんじゃった……?」
ため息とともに、再び心の奥にひっこんだ【遊戯】に対して首をかしげる遊戯であるが。
「?おい。遊戯。お前ほんとうに大丈夫か?」
ハタからみれば独り言をいっていた。
としか当然うつらない。
それゆえに本田もまた心配し、
「何なら保健室にいったほうがよくないか?」
そういう本田とは対照的に、
「すご~い。ね。杏子、さっきこれひかったよね?ね?私もほし~」
などといっている美穂の姿。
「美穂。それは無理よ。というか下手にそれは遊戯以外はもてないとおもうわよ?」
以前、遊戯のパズルを手にしてその体が消滅しかかった人物を杏子は覚えている。
それは杏を誘拐した人物なのだが。
あの誘拐犯人があの後どうなったのかは杏子は知らない。
そのまま彼は闇に飲み込まれて行方不明…となっている事実も。
杏自身も、パズルを手にしたとき何ともいえない感覚が自分の中を占めそうになったのを覚えている。
強い意志がなければおそらくは、その感覚に負けてしまうであろう。
ということも。
それが何を示しているのかは杏はわからないが、だがしかし、いえることがある。
それは遊戯が持っている千年パズルは誰もが扱える品物ではない。
ということ。
それは無意識のうちに理解している唯一の事実。
「遊戯。それ、どこでうってるんだ!?」
「え~?この千年パズルはどこにもうってないよ?
  確かこの千年パズルと同じアイテムはほかに六つあるらしいけど。
  僕が知ってるのはあと二つだけだし~」
遊戯につめより、どこで手に入るか問いかけてきた本田ににこやかに答える遊戯。
そういえば、あの二人元気かな?
イシズお姉ちゃんに、それにマリクくん。
遊戯にとって、祖父以外に始めて【遊戯】の姿を見れた大切な友達。
「しかし…ほんと、牛尾先輩、何があったんだろ?ま、でも人はみかけによらないわよね」
自分から話を変えておいて、さらにまたまた自分から話をもどす。
そんな美穂の台詞に、
「美穂ちゃん。君のことはこの本田が責任をもってまもってみせるからねっ!」
「あ、先生きた!」
すかっ。
勇気を振り絞り本田がいうものの、美穂は前の入り口から入ってきた先生の姿をみてそのまま自分の席にとついている。
ゆえに、本田の台詞はまったくもって聞こえていない。
「ほらほらっ!みんな。席につきなさいっ!」
ガタガタガタ……
クラスの担任でもある教師がきたがゆえに、その声に従いそれぞれ自分の席にとついてゆく。

無邪気すきるのもあるいみ困ったものだよな……
まさかあそこでさらっと説明するとはおもっていなかった。
まあ、回りの人々は理解できていなかったようだが。
理解できるほうがまず不可能。
だがしかし…それでも、理解できかねる要素を彼らはもっている。
だからこそ、心配なのだ。
城之内、本田、そして…杏にミホ。
彼らとはかつてエジプトの地にて友達でもあったがゆえに。
彼らにはかつての前世の記憶はないようである。
自分のことをおほえていないというのに寂しさも感じるが、だが覚えていないほうがいいこともある。
あれらとの決着は自分自身でつけなければならないことなのだから。
これ以上、彼らをなるべくは巻き込みたくはない。
というのが本音。
だが…彼らの性格上、きっと関わってくるのであろう。
…二度と、後悔をしないためにも。

「え~。何やら学校中にいろいろな噂が飛び交っているようだが。
  くれぐれも、変な噂話にまどわされないようにっ!」
学校側とすれば、風紀委員として信頼していたあの彼が恐喝を行っていた。
という事実は信じがたい。
それでも、実際に被害者がいるのだからそれは事実なのであろうが。
この事実が外にもれればこの学校の…童美野高校の信頼もがた落ちである。
ゆえにこその生徒への口止め。
まあ、なぜか気が狂って入院した牛尾に関しては、おそらく罪の意識からであろう。
というのが医者や先生たちの意見。
事実は誰も知る由もない。
よもや、闇のゲームによって牛尾が自らの心の闇にとりこまれてしまった。
ということを。
そんな先生の説明をききながら、
そういえば……
まだきちんとお兄ちゃんにきいてなかった。
そのことに思い当たり、すっと瞳を閉じて精神を心の中にと集中する。
心の中で話すのに関しては、別に第三者たちの目…即ち、先生の視線を気にする必要もない。
誰の目にも触れないのだから。
まだ授業ではなく授業の前のホームルームである。
今のうちに聞いてみよ……
そうおもい、そっと意識を心の中にと移動させる。
意識を移動させ、ゆっくりと目を開くとそこには見慣れた風景。
自分の中にある自身の心の部屋と、そしてもう一つ、瞳が一つ描かれている静かな部屋。
向かい合わせにとあるその部屋の中にと自身の部屋の中からでて移動する。
「おに~ちゃ~ん?」
幾度きてもこの中は何か寂しさを感じるというか、落ち着くというか……
たしかに落ち着く雰囲気ではあるが、だがどこか冷たく寂しい感じがする。
それはかつて祖父につれられていった古代エジプトの王の墓のごとくに。
まあ、事実お兄ちゃんは王様だけどね。
そんなことを思いながらも部屋の中にいるであろうもう一人の遊戯にと叫んで呼びかける。
「おや?遊戯殿。どうかなされましたか?」
その呼びかけに乗じて先にとでてくるのは、この部屋をというか、もう一人の彼。
即ち、【ファラオ】である【ユウギ】を守っている精霊、マハード当人。
かつては彼に使える六神官の一人であり、彼を守るために自らの魂と、そして自らが使役する精霊。
その二つを融合させて、ファラオを守るべく存在を変換させた存在。
「あ。マハードさん。お兄ちゃんは?」
「ファラオですか?ファラオならいつもの部屋ですけど……」
「ありがと~」
「あ。ちょっとまってくださいっ!遊戯殿っ!」
マハードの説明が終わらぬうちにと駆け出してゆく。
遊戯が駆け出すと同時に何もなかったはずの部屋の奥に扉が出現し、
その扉の奥には上下左右ともわからないほどに無数の扉が出現する。
これこそが、【ファラオ】の心の部屋でもある、心の迷宮。
この無数にある扉の一つに彼の真実の記憶と、そして邪神の魂が封じられている【真実の扉】がある。
その真実の扉がどこにあるか、この部屋の持ち主でもあるファラオにもわからないのだが。
「えっと…っと。…うわっ!?」
ぶわっ。
思わず感じた威圧感というかものすごい圧迫感。
扉を開くと同時に思わずその場にしりもちをついてしまう。
「…遊戯?」
そんな遊戯に気づいてふと振り向くもう一人の遊戯。
先ほどの姿とはことなり、昔からのいつもの姿を今は成しているらしい。
額につけているサークレットも、そして四肢にとつけている装飾品も。
歴史書などでみる古代の王様の服装そのもの。
その胸元には首から下げた千年パズルが輝いている。
「って、びっくりした~。あ、こんにちわ~」
その場にいるのは彼だけでなく、見ただけで威圧感を感じるかのような人物が三人ほど。
一人はどこか包み込むような感じをうける女性に、
そして一人は結構体格がよい若い男性。
そしてまた、歳のころならば二十歳くらいにとみえる男性の姿。
その髪がまばゆいばかりに金色にと輝いているのがみてとれる。
「遊戯お兄ちゃん、この三人とお話中だった?」
かつて幾度か出会ったことがあるので彼らが『誰』であるのか遊戯は知っている。
「「「お久しぶりです。遊戯殿」」」
そんな遊戯に対して律儀にきちんと礼をとり丁寧に挨拶してくる三人の姿。
「いや。もう話はおわった。…とりあえず、また何かあれば連絡してくれ」
遊戯を気にしながらも、三人に対して命ずる【遊戯】。
「了解いたしました」
「それでは」
「あと、我が写し身が作られたことにはおきをつけくださいませ」
そう言うと同時に三人の体は光に包まれ掻き消える。
それは彼ら三人の本質でもあるがゆえ。
そんな三人の姿を見送りつつも、
「?何かあったの?お兄ちゃん?」
「いや…何でもない。それより遊戯?今はもう授業中なのでは?」
遊戯に今は心配をかけるわけにはいかない。
だからこそ話題を変える。
「あ。まだホームルームの時間だし。お兄ちゃんに聞きたいことがあって。
  まだきちんときいてなかったけど。僕が気絶したあとって何があったの?昨日?
  さっき、あの牛尾さんが入院した。って聞いて……」
多少遠慮しながらも問いかけてくる遊戯の姿に思わず笑みがこぼれてしまう。
別に遠慮などする必要もないだろうに。
という思いが先だつが。
だが、自分でもきっとそのようになるだろうな。
という思いもある。
「あの人間は自らの心の闇に飲み込まれただけだ。真実の心を取り戻せば戻ってこれるさ」
「って、やっぱり…闇のゲーム?」
闇のゲームの存在は、彼から、そして祖父から聞いてその真実を遊戯は知っている。
まさかとは思っていたが、彼の説明をきいて思わずため息がでてしまう。
「ってことは、あの牛尾さん…心に闇をもってたの?」
心に闇をもっていなければ、闇に取り込まれることはない。
それがわかっているからこその問いかけ。
「あのな…遊戯。あいつはお前をさしたんだぞ?」
「ええ!?でも僕、刺し傷なんてないよ!?」
「それは俺が治した」
「そなの?」
やはりというかまったく、自分が牛尾にナイフで刺されたことに気づいていない遊戯。
それゆえに再びため息が漏れ出してしまうのは仕方ないであろう。
「お前なぁ。気持ちはわかるが、自分から危険にとびこむな」
「それは私からもファラオにものすごくお願いしたいことでもありますが?」
「私も同意見~」
そんな遊戯を諭すように意見する【遊戯】の声にと重なり、別の声が二つほどこの場にと聞こえてくる。
みれば、いつのまにかやってきたのかこの場に自分達以外の人物が二人ほど。
「マハード…マナ……」
ファラオはいつもそうですからね。
  他人を傷つけるよりは自分から率先して何ごとも行い、
  それゆえに我々がどれだけ神経をつかうことか……」
「王子時代からそうだもんね~。だから王子が彼を意見する資格ないとおもうんだけど~」
至極最もな意見をいわれ、おもわずじと目でうなる【遊戯】。
「はう。まあいい。ともあれ、遊戯。授業がはじまるだろ。はやく表のほうにもどれ」
「え?あ。は~い。あ、お兄ちゃんも一緒に授業うけない?」
高校になってから一緒に授業をうけたことは皆無。
小学時代はよく一緒に授業をうけていたものだが。
「いや。それはいい。まだやるべきことがあるからな」
「そうなの?それじゃ、もし表にでたいときにはいってね。いつでも僕は変わるから」
今の彼には肉体というものがない。
遊戯の肉体一つを二人で共有している今現在。
それゆえに二人が表人格として現れることはできない。
片方が霊体として表にでて側にいることは可能だが。
そんな会話をかわして、ひとまず疑問が一つ解決したのもあり
そのまま遊戯は自らの意識を表…即ち現実の肉体のほうにともどしてゆく。


「しかし…どうしましょう?」
さすがに噂は広まってしまうもの。
それゆえに頭を悩ます教師たち。
そしてまた、
「そういえば。あの武藤遊戯がかわった形のペンダントをしてますけど……」
「まあ彼のあれは害があるものでもなし。問題はないでしょう。
  というか彼に転校されても我が校は困りますし」
代表者のみがあつまっている教員会議。
「しかし。ほんとうにあの彼が?我々からみてもとてもそのような……」
小学時代、最年少だというのに様々な資格を所得したという神童。
噂ではアメリカの大学受験問題をも制覇したとか何とか。
どこまで真実でどこまで噂かわからないが。
それでも、たしかに。
アメリカのハーバード大学の入学許可証を持っているのは確か。
というより卒業試験も通わずにパスしている…という現実がある。
今の遊戯をみていれば、それが真実とは到底おもえないが。
それでも、たしかに実績がある以上、そんな人物が自分達の高校にいる。
ということはあるいみ拍車がついているのもまた事実。
最も、彼らは知る由もないのだが。
それら全ては遊戯ではなくて、もう一人の【遊戯】の所業である。
ということを。
「しかし、入試試験においてもほぼ満点なわけですし…」
それはいわく、【ファラオ】のヤマがあたったがゆえの出来事なのだが。
心の中ではもう一人の遊戯とともに勉強していた遊戯。
だからこその成績はそこそこ残している。
「まあ、今はあの武藤遊戯のことでなくて。あの牛尾のことですよ」
「そうですね」
臨時に開かれている教員会議。
その場においてしばし、牛尾に対する処罰などの話し合いがしばし行われてゆくのであった……

その後、牛尾は退学処分ということで落ち着き、学校は静けさを一時とりもどしてゆく……
だが、教員たちは知らない。
遊戯が再びパズルを組み立てたことにより、さらに学校を取り巻く状況すらもかわってくる。
ということを……

                ―――Go To NEXT

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あとがきもどき:
薫:さてさてvラストのほうでさらに裏設定をちらりとだしてたりvv
  王様が表にでてきて、遊戯が七歳のときの夏休みv
  ちょっとした伝説つくってたりしています(こらこらこら!
  ハーバード大学、七歳で受験して合格っていったひ…さすがというか何というか(汗
  でも、その事実は日本では知られていないので遊戯当人としては平和そのものv
  そのとうじ、シモンこと祖父でもある双六ははらはらしっばなしvという裏設定v
  ちなみに、王様は一度習ったり、調べたりしたことは忘れないという知力の持ち主。
  ということて。
  霊体で表にでてくるときも調べようとおもえば書物などから調べ物は可能。
  という設定です。
  何はともあれ、次回よりようやくお話はうごきだしますv
  んではではv
  ようやく遊戯と王様のやりとりにいけるvvv

2007年8月18日(土)某日

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