まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

今回は、あまり展開すすんでない…というかほとんど時間的にはすすんでない?
ひとまず、遊戯たちは遊戯の家にと移動中~
さて、双六お爺さんには苦労してもらいましょうv(笑
何はともあれ、ゆくのですv

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きょろきょろ。
よし!成功!
すたっ。
回りに誰もいないのを確認し塀をとびこえる。
まったくもって外にだしてもらえないのは絶対におかしいとおもう。
自分だって外の…王宮の外をみてみたい。
まだ幼いから…という理由だけでは納得できない。
すべては自分の目で確認しなくては気がすまない。
額につけているサークレットや、そしてまた体につけている様々な装飾品。
それらをそのままに、とにかく全身にマントとローブを纏い、
頭にふかくすっぽりとフードをかぶってとにかく外にとでてゆく。
別に習ったわけではないが、何となく姿を相手に気づかせない方法。
つまりはその魔術を使うことができるのがわかったからには使って出かけないと損である。
そんなことを思いつつ、そのままとてとてと小さな彼はそのまま王宮を抜け出し町にとでてゆく。
それは…彼が六歳になるかならないかの日の出来事……

  ~第3話~

「やれやれ…すっかり遅くなってしまったわい」
時計をみればそろそろ午後七時をまわって八時になりかけている。
しかし…運命とは不思議なものじゃのお。
彼らもまたファラオの後を追って転生してきたんじゃろうな……
夕刻、孫である遊戯を家にと連れてきた男性二人。
二人は遊戯のクラスメートだ。
そう名乗った。
名前を城之内克也。
そして本田ヒロト。
カツヤとヒロト。
かつてとまったく同じ姿のままで目の前に現れた二人に多少驚きもしたが。
それは自分にもいえること。
魂の強さは外見にも影響する。
たしか以前そう聞いたことがある。
それゆえなのか、はたまた別の意味があるのか。
それは今の彼にはわからない。
彼らもまた、あのとき…かなり後悔というか自身を攻めていたのを彼は知っている。
自分とて…守るべき主を犠牲にして得た平和など…という思いもあった。
だが、すべては『王』の願い。
ただ一人、すべてをひきうけ、自身の名前も人々の…自分達の記憶からも消し去り、
そして…精霊に命じて自らの名前がわかるものはすべて破棄した聖なる王。
それらはすべて、再び暗黒の神がよみがえらないようにするための処置。
そして…一人で『彼』は…三千年ものあいだ、ずっとそれらの封印をほどこしてきたのだ。
再び悪意がよみがえらないために…人々が永遠に幸せでいられるように……
だが…この時代、再び闇はうごきだした。
それゆえにあの方もまためざめられた。
自分がかの場所に呼ばれてあの墓地へと出向いたのも…それも導きのうち。
「……分かたれた魂であるにしろ、遊戯の魂に導かれたんじゃろうな……」
『彼』の力はどれほどであるのか、自分ですらおそらく理解していなかったはず。
産まれたときより課せられていた過酷なまでの運命。
それに負けることなく、民の希望の光であったあのとき。
今もまた人知れず、かつての悲劇が起こらないように復活している。
だからこそ…今度こそ、守りきるために、そしてまた、再び共に戦うためにと願いをかけた。
夜空をふりあおげばすでに月がのぼりだし、星星がきらめいている。
この光景は何千年たってもかわることがない。
かつての前世の思いに夜空をみつつふと浸る。
遊戯が怪我をして帰ってきたのをうけて、自分なりに相手…即ち、
遊戯に怪我をさせた人物のことについて多少しらべてきた帰り。
表向きは風紀委員としてたしかに先生たちからも評判はいいが、裏ではゆすりやたかり。
それも弱者からかなりお金などを巻き上げている。
という事実が判明した。
それでも先生たちが動かないのは被害届がでないがゆえ。
先生たちはそんな噂はただのやっかみの噂だ、ととりあってもいないこの現実。
夜空をしばらく眺めて夜道を歩きやがて家と兼用している店が見えてくる。
店といっても従業員は自分のみという小さなものであるが。
一階部分の店には当然明かりはともっていない。
その後ろにある部分の家から明かりがもれいでている。
と。
……カッカッカッ……
「?」
何やら場違いな音が耳にと入り込んでくる。
なぜこんな時刻…いや、時刻とかは関係ない。
どうしてこんな街中でこのような音が聞こえるのか。
別にそれはハイヒールが響く音のような生易しいものではない。
強いていえるならば、その音の正体に思い当たるものはひとつだけ。
「いったい何の……」
家の中に入ろうとするものの、その音が何やらとても気になり思わずその場に立ち尽くす。
やがてだんだんと音が近づいてくるとともに、何やらかげがうっすらと視界に映りこんでくる。
……何で街中で馬??
そのシルエットはどうみても馬そのもの。
目を凝らしてみるその馬の背に何やら人影らしきものがみえてくる。
「って、…は!?」
人影に気づいて一瞬目をぱちくりさせる。
なぜか馬の背に見慣れたシルエットの人影が……
「…ゆう…ぎ?」
のわけはない。
ならば……
「って、まさか…ファラオ!?」
思わず夜だというのに叫んでしまう。
あわてて叫びながらそちらのほうにとかけてゆき、やがて完全に真っ白い馬と、
それにまたがる見慣れた姿が視界にととびこんでくる。
そしてその背後に確か夕刻、家に遊戯をつれてかえってくれたクラスメートだという男児が二人。
どうやら完全に気を失っているらしく、荷物のようにくたっと伸びた状態で馬の背にのっかっている。
そして…
「……ピム?」
ブルルルル……
近くによればよくわかる。
その馬が自身がよく知っている存在である。
ということが。
甘えたような声をだしてくるそんな白き馬とは対象的に、
「…シモン?」
馬の上よりかけられてくる声が一つ。
その声にはっとなり、
「って、やはりファラオですかっ!?というかなぜにピムが!?」
いや、先に突っ込みが入るのは別のところではないだろうか。
もし第三者がいればそんなことを思うであろうが……
「いや、彼らを運ぶのに呼び出したんだが……」
さらっというその台詞に思わずこめかみに手をあててうなってしまう。
そして、はたととあることに今更ながらに気づき、
「…ん?そういえば、ファラオ?いつまた完全に表にでれるようになっているのですか?」
先に気づくべきはその点のはずだが今さらながらに気づいて問いかける。
「まあ、話しはともかく。彼ら二人をひとまず休ませたいんだが……」
未だに気絶している馬の背後にのっけている二人をちらりと垣間見て話してくる『遊戯』の姿。
だがしかし、いつもの遊戯の姿とは雰囲気も、そしてその身長も異なっている。
声も異なっているがゆえに、確実にいつもの遊戯とは別人である。
というのが見てとれる。
もっとも、それは彼が話している遊戯の祖父である武藤双六にとっては当たり前というか、
知っている事実であるがゆえに動じることもないのだが。
「この二人は…もしかして、もしかしなくても?」
肌の色や髪の色は違えども、まちがえようのないその魂がもつオーラの色。
現世においても魔力をもっているがゆえにそのあたりのことはよくわかる。
「カツヤとヒロトではあるが…二人は俺のことを覚えていないようだけどな」
かつての自分のことを覚えているのは目の前にいる双六ことかつてのシモンくらいなもの。
あとは、精霊となっているマハードとマナ。
そして精霊界や神界にすむ存在達など。
「…何かあったのですか?」
何かなければ、こうして王自らが遊戯の体の表にでてくることなどはまずないはずである。
ましてや神界にその身を属しているはずの天馬であるピムを召喚しているなど。
「それより、この二人を運ぶのてつだってくれるか?シモン?」
「それは…お手伝いしますけど…」
気になるのは、馬にのっている彼の姿がほかの人たちにみられていないか。
ということ。
まずこんな街中で馬にのっているなどとは目だってしかたがない。
まあ、空を飛んできた・・とも考えられるが、それでも人目につくのは明白。
そんな彼のいいたいことを察し、
「ああ。パズルの力を使って他人の目には映らないようにしてきたから問題はない」
さらっと何でもないように言い放つ『遊戯』。
その言葉にようやく、再び千年パズルが組み立てられているのに気づき思わず目を見開く。
パズルが再び組み立てられている。
それ即ち…遊戯の心に足りなかった一つのものが出現した。
ということ。
それをかつて王自らに聞かされて双六は知っているがゆえに戸惑いを隠しきれない。
「とりあえず、詳しい話しは中で話す」
「わかりました」
こんな場所で長話していても、いつ何どき誰か通行人が通るとも限らない。
いくら夜だといっても犬の散歩やウォーキングなど。
様々な人たちがいるのにはかわりないのだから。
聞きたいことは山とあるが、ひとまず馬の背から二人を下ろし、
それぞれ一人づつ、気絶している本田と城之内をその身で支える。
そして二人を降ろすと同時に、
「ご苦労だったな。ピム」
そう『遊戯』が声をかけると同時、
「ヒヒ~ン!」
軽くいななき、そのままぱさっと白い翼をはためかせ、空に向かって飛び去り、
夜空にまぎれるようにと掻き消えてゆく、ピム、と呼ばれていた馬の姿。
そんなピムの姿をみおくりながら、それぞれに城之内と本田をだきかかえ、
二人して家の中にとはいってゆく――


「あら?お父さん?もどったんですか?」
ふと人の気配を感じて声をかけてくる女性が一人。
ぎくっ。
先に『遊戯』が部屋にとはいり、自分が後から部屋にはいった。
それがせめてのも幸いか。
今の彼の姿を娘でもある彼女にみせるわけにはいかない。
そう判断し、
「おお。花蓮か。ちょうど外で遊戯と一緒になってな」
いいながらも、部屋のドアの前に立ちふさがるようにして中が見えないようにして返事を返す。
「遊戯ももどったんですか?あのこったら学校にいくとかいって……怪我も心配なのに……」
いいながら、部屋の中に入ろうとする娘をどうにか制し、
「あ。遊戯のことは心配ない。わしがみてるから。それに遊戯の友達も一緒にきてるしの。
  それより、花蓮は今日は出かけるとかいってなかったか?」
たしか今日はこのあたりの町内の集会が夜あったはずである。
それぞれ仕事の関係上、たしか夜遅くに行われる。
それが今日だったはず。
「そうですけど…遊戯が心配で……」
母親ならばこその心配はもっとも。
何しろ息子である遊戯はその心の根の優しさゆえに自分が傷つくことはいとわない。
「遊戯のことなら心配しなくても大丈夫じゃよ。儂もついておるしの」
「そうですか?…じゃあ、お父さん、お言葉にあまえさせていただきますね。
  私はなら集会にいってきますので……」
かなり心残りはあるにしろ、だからといって集会に遅れるわけにもいかない。
そんなことをおもいつつも、そのまま家からでてゆく遊戯の母親でもある花蓮であるが。
そんな娘の姿を玄関先まで見送り、無事に外にでてゆくのを届けほっとひとまず胸をなでおろす。
そして、そのまま再び二階にとあがり、遊戯の部屋にと向かってゆく。

「さて…と。それで?きちんと説明してくださいますかな?ファラオ?」
とりあえず、未だに気絶している城之内と本田と名乗った二人を横にしてねかし、
改めて目の前にいる『遊戯』にと問いかける双六。
何かがあったのは間違いない。
だがしかし、何があったのかは説明をうけなければわからない。
そして、何よりも……
「ファラオが表にでられてこられている。ということはもうひとりのほうは……」
先刻の今である。
夕刻、気絶して怪我を負ってもどってきた孫である遊戯。
それゆえに何があったのかは想像に固くないが。
おそらくは、自身が調べてきたあの牛尾とかいう生徒に関係しているのであろう。
というのは容易に想像はつく。
「遊戯の心は今マハードに任せているから問題はない。
  遊戯のやつはあの牛尾とかいう生徒にわき腹を刺されて気絶したからな」
「さ!?」
さらっといわれたその言葉に、思わず絶句する。
「ああ。怪我のほうはもう問題ない。俺が表にでると同時に怪我は治しておいたしな。
  ちなみに、この二人をかばおうとして受けた傷ではあるけどな」
未だに気絶している二人を目にして説明する。
「シモンも知ってのとおり。遊戯の心には『心からの怒り』というそのものが抜けていた。
  ゆえに千年パズルの力に完全に耐えられなかった節がある。
  だからこそ、闇の鼓動が激しくなったあのときに一度俺はパズルを再び砕いたんだが……」
「それはパズルを壊したあの日にファラオからお聞きして知ってはいますけど……」
千年パズルに宿りし力は聖なる力だけではない。
光の力と闇の力。
その両方がそなわっている。
そしてまた、そのパズルの中にはかつて彼が封印した邪悪なる邪神の力すらも封印されている。
もっとも、その力は彼の本来の真名がもつ力と、もともともちえている力。
それらで封じられているのでまずは表にでてくることはないが。
それでも、その邪神の本体は冥界にある以上、現世においても影響がではじめている。
それは人々の心に再び闇の鼓動が広がってきた証でもある。
「どうも。悠長に構えている暇はなさそうになってきている節がある……」
再びすべての意志力をもってして自らが封印していた様々な邪悪なる力。
それらを監視していたが、ここ近年。
年々その力が再び強くなってきているのがわかる。
それは千年眼ミレニアムアイを今世で受け継いだ、とある人物。
その人物が作り出したとあるカードゲームにも由来している。
そのカードゲームはかつての古代の石版をカードにおきかえたもの。
すなわち、精霊界などとの扉というか入り口を簡素化させたもの。
さらには自身に仕えていた最強の僕でもある三幻神。
それらのカードまでをも再生させているこの現状。
「ゾークだけでなくオレイカルコスのほうの動きもどうやら活発になってきているようだしな……」
そういって思わずおおきく息をつく。
そんな彼の台詞に、
「ファラオ…それは……」
今の状態で万が一、それぞれかつて彼がほどこした封印が解除されることになりでもすれば。
今の彼では……
「ゾークのほうの封印はそう簡単には解かれないはずだ。
  何しろ俺自身の記憶からも鍵となる名前はすべて消し去っているしな」
そう。
鍵となるのは自身の真の名前。
そして、その名前は歴史上などにおいても一切のこされていない。
自身の魂とともに邪神の力をも封印し、パズルを砕きしとき、
それとともに人々の記憶からも自身の名前のみはけしさった。
名前が思い出せない。
というのは多少寂しいものがあるにしろ、彼にとってはもう一つ名前がある。
それが『ユウギ』という名前。
王として、そして王子としてでなく普通の民などと共にすごして物事をみるための名前が。
「古代文明を滅ぼした暗黒の神のほうを封じた扉は三幻神の力だしな。
  まず俺が呼び出さないかぎり問題はない」
そう。
彼ら、神々を呼び出せるのは彼自身のみ。
もし力なきものが神を呼び出そうとするならば、神の怒りにふれて命をおとす。
かつてカードを作り出したペガサスという男性が神々のカードまで作り出そうとし、
その関係者すべてがその神々の怒りに触れて命を落としたように……
普通の人間に神々がもつ神気などといったものは到底、耐久性などあるはずもない。
かつて自身の記憶と魂とともにその力を封じた千年パズル。
それを砕いた三千年前。
そのときに記憶と力を七つの千年アイテムにそれぞれ封じて、念には念をいれた。
それゆえに力をつかいすぎて自身の記憶そのものも完全にふきとんだが。
かつての側近であり、また彼自身の教育係でもあったシモン=ムーランの生まれ変わりである、
武藤双六のその記憶によって彼自身はある程度の記憶は取り戻している。
それにえに様々な対応なども先手、先手でおこなえる、という利点もある。
だが、それでも確実に完全にすべてを思い出しているわけではない。
ただ重要なことは思い出しているのでまず問題はない。
そう彼自身としては思っている。
自身の名前を思い出すのがまず一番の重要なことだ。
とは理解しているが、それには自身の深層心理の奥底におそらくあるてあろう心の部屋。
その中にいかねばならない。
だが、そこにはかつて自身がその名前をもって封印した邪神の力もまたねむっている。
そして…それは、現世においてその邪神を一度不完全ながらもよみがえらせてしまう。
ということを意味しているのであるからして。
自身の名前は光の力をもっている。
それは覚えている。
そしてそれは闇を滅する力をも持っている。
ということも。
そしてまた…その名前とともに、今は彼が失っている特殊な力も……
三千年。
それは人からすれば気がとおくなるほどの遥かな時。
それを一人の意志力ですべての邪悪なる力を封じてきたのである。
彼は。
当時は封じる以外に、あまりに出来事が重なりすぎて方法がなかったがゆえに……
「…ファラオ……」
そんな彼の心情を察しつつ小さくつぶやく双六。
目の前にいる人物は、たしかに自分の孫でもある遊戯でもあるが、
今表にでてきているその魂は、かつて自身が仕えていた…そして自身が育てた。
といっても過言でない、かつての聖なる王そのもの。
いや、さらにいうならば、自身の孫として生まれてきている遊戯もまた王の魂の一部。
すべては…再びこの世界に邪悪なる意志がよみがえらないがためにかつての『彼』がとった処置。
これ以上、主である彼を憂いにさらすわけにはいかない。
それゆえに、
「ところで…あの?ファラオ?その牛尾という人物はどうなされたのですか?
  儂も一応、彼のことは調べましたが…かなりとんでもない人物のようでしたが……」
あえて話題を元にともどす。
「まあ、それはそれなりに」
いって口元に手をあてるそんな彼の動作にため息ひとつつき、
「…闇のゲームしかけましたね?ファラオ……」
思わずじと目でといかえす。
「そうはいうが、シモン?奴は遊戯を傷つけて、さらには他人を何ともおもわないような奴だぞ?
  それなりのお仕置きは必要だとおもうが?」
闇のゲームとは自らの心と対峙する究極のゲーム。
それゆえに心よわきものなどは命を落とす。
もっとも、その闇のLV具合にもよるが。
仕掛けたのはそれほど強いものではない。
そういいつつも、
「…人とは時代がかわっても、心に闇をもつ。というのはかわらないものだな…シモン……」
「……ファラオ……」
かつて、人の心の闇が様々な悪意をもった魔物などをも生み出していた。
今でもまた生み出されてはいるが、人々はそれらに対して目をそむけているだけ。
だが、人はその心の闇に打ち勝つ力をももっている。
また、もたねばならない。
それが人の宿命であり、存在意義の一つ。
光と闇をあわせもち、その狭間の存在でもある。
それが人間、という種族。
「とりあえず。俺も遊戯が心配でもあるし。
  この肉体も休ませてやらなければならないだろうし。一度奥にひっこむ。あとは頼む」
「って、ちょっとおまちくださいっ!ファラオっ!」
窓の外をみながらしみじみという彼の言葉に思わず言葉を失っていると、
いきなりくるりと向きをかえ、さらっと言い放ちそのまま瞳を閉じる『遊戯』。
それとともに、彼の首にかけている逆三角ピラミットの形の黄金のペンダント。
すなわち、『千年パズル』が光をはなち、それとともにがくん、と彼の体はその場に崩れ落ちる。
それをあわててうけとめるシモン、と呼ばれていた双六。
光とともに、今まで話していた彼の姿から、元々の姿に一瞬のうちにと還りゆく。
といっても瞳を閉じている状態なのでその背が本来の遊戯のものにもどった。
ということくらいしか視覚的には判らないが。
まだ肝心なことは聞いていない。
それなのにそのまま再び奥…つまりは遊戯の心の奥底にと引っ込んだ王に対して思わずつっこむ。
「…まったく。あのおかたは昔から~っ!!!」
思わず愚痴をいいたくなるのも仕方がないのかもしれない。
あの性格は今も昔もかわっていない。
そもそも、自分から幾度いっても危険に身を投じるような彼であったのだ。
それは今の遊戯のほうにもいえることなのだが。
ため息をつきながら、崩れ落ちた遊戯の体をそっとベットにと横たえる。
そしてひとまず、未だに学生服のままであるので、寝巻きにと着替えさせておく。
どうやら服にはいったであろうナイフの裂け目もまた王は治しているらしい。
そのような痕跡ははっきりいってのこっていない。
そして、遊戯の服を寝巻きにと着替えさせた後。
「やれやれ……」
軽くため息をつきつつつぶやく双六。
さすがに床に二人、ベットに遊戯を寝かすと部屋そのものがそれほど広くないのでとても狭い。
とりあえず…この二人を先に目覚めさすのが先決じゃろうな。
遊戯が万が一にも先に目覚めでもしたらそれこそかなりやっかいなことになる。
たしか遊戯は刺された。
といっていた。
だが、その傷は王の力ですでに回復しているこの現状。
今のこの文明でそんなに早くに回復できる手段はまだない。
だからこそ、彼ら二人には先に目覚めてもらいどうにか言いくるめる必要がある。
遊戯のほうは…まあ、自身が刺されたことに気づいてないという可能性のほうがかなり大きい。
それゆえに説明はあまりいらないとおもう。
というか王がそれなりに上手に説明してくれるじゃろうしな。
そう判断し、そのままその場にかがみこみ、未だに目覚めていない城之内と本田に向き直り、
きゅっと手を手をあわせてとある印をくむ。
そして、まずこの時代では誰もいなわくなっているであろう『精霊の言葉』を紡ぎだす。
それと同時に双六の体があわくひかり、印を組んでいるその手より横になっている二人にと、
何やら淡い青いような光が降り注いでゆく。
古代においての怪我などの回復は主に魔力をもったものなどに託されていた。
それは現代よりも精霊とのつながりが強かったゆえ。
薬草などといった知識も様々であったが、彼らの力を借りたほうが断然はやく結果はでる。
それゆえに神官などといった存在はかなりあがめられていた実績もある。
今のこの時代ではかつての常識などは当てはまらないが。
ほのかな淡い光はやがて二人の体を包み込むようにし、二人の体内にと吸い込まれてゆく。
それと同時、
「「…う……」」
今まで気絶していた二人が同時呻いて身じろぎだす。


ゆっくりと意識が浮上してくる。
……あれ?俺は…俺たちは……
確か、学校で…そして……
ぼんやりとした脳裏にだんだんと今までのことがおもいだされる。
学校で遊戯と出会い…そして…
「…って…遊戯!?…つっ……」
そうだ。
たしか遊戯があの牛尾のやつに刺されて……
そのことを思い出し思わずがばっと飛び起きる。
体に多少痛みがのこるが、だがしかし記憶している痛みとは大分緩和されている。
「…って…こ…ここは…?…って、遊戯のお爺さん?」
がばっと飛び起きた城之内とは対照的に、頭をふりかぶりつつ起き上がる本田。
自分達はたしか学校の校庭内で倒れたはずである。
なのにここはどうやらどこかの家の中。
しかもふとみれば、ベットには遊戯が横たわっているのがみてとれる。
そしてまた、自分達の横には夕刻であった遊戯の祖父だという人物の姿が。
「おお。きがついたようじゃの。二人とも。どうじゃの?調子は?」
そんな二人にとにこやかに話しかける双六。
すでにもう組んでいた手の印はほどき、にこにことその手は腰の後ろに回している。
「…って、たしか遊戯の爺さん?…ここは……遊戯は!?」
そんな遊戯の祖父である双六の姿をみとめ、はっと気づいて遊戯の姿を求める城之内。
そして、ふと横をみればベットに横になっている遊戯の姿。
「遊戯!?爺さん、遊戯のやつは大丈夫なのか!?」
「そうだ。たしか遊戯は牛尾のやつに……」
数刻前までは尊敬して、『さん』づけしていたが、彼の本性がわかった以上、その必要はない。
それゆえに本田もまた牛尾を呼び捨てにして双六にと問いかける。
たしかに自分達をかばって遊戯は刺された。
それは紛れもない事実のはずだ。
「うん?別に問題はないぞい?学校で気絶していたというお前たちを連れてきてくれたひとがいての」
嘘はいっていない。
つれてきた人物、というのがもうひとりの『ユウギ』である、という事実をいっていないだけで。
「遊戯のほうはかなり体力的にも疲労が激しいのかなかなかすぐには目をさまさんじゃろうが。
  さして大きな怪我なども遊戯を含めておまえさんたちもなさそうで何よりじゃよ」
実際はかなりの大怪我をしていたが、
それらをただ精霊などの力を借りて治しているというだけなのだが。
そんな双六の説明に城之内たちが口を挟むよりも早く、
「例の牛尾とかいう不良学生にまたからまれたという話のようじゃが。
  まあ、今後はその不良学生もこんな真似はできんじゃろうよ?
  そういえば、おまえさんたち。夕飯はもうたべたのか?何ならうちでたべてくかの?」
今後はというよりは、おそらくはきっと間違いなく病院に入院になるであろうがの。
ファラオもまたどれほどの罰をあたえたのやら……
闇のゲームの段階によっては命を落とす。
だかおそらくは、そこまでは多分していない…ハズである。
もっとも気が狂うくらいの段階にはしているかもしれないが。
何しろ相手は遊戯をナイフで刺したらしいのだ。
それゆえに、彼があまり手加減をするとはあまり思えない。
「いや。そんなことより。遊戯のやつは牛尾のやつにナイフで、俺たちをかばって刺されてっ!!」
「うん?おお。それはたぶん刺されたように見えただけで、かすっただけじゃよ。
  完全にもしナイフで刺されたりしてでもいたらもっと出血などしてるじゃろ?破れてもいないし」
たしかに、みせられた遊戯の学生服にはそのような痕跡はのこっていない。
「たぶん、お前さん達にそうおもわせる何かがあったんじゃないのかの?」
そういわれて思わず黙る以外にない城之内たち。
たしかに、遊戯に対して悪かったと懺悔の気持ちがあったのは確か。
その気持ちがならば、確実に牛尾に刺されたようにみえさせたのか?
人は、心に何かつっかえていることなどがあるとき、その記憶を脳内で変換させることがある。
そういった事実かあるのは一応城之内は知っている。
そしてまた、本田もまた心理学を一時とある事情でかじったがゆえに知っている。
ナイフの痕跡などはまったくない学生服。
ならば…あれは自分達が気絶していたときにみた夢だったのか?
夢だとすれば、どこから夢だったのかすらもわからない。
しかし…二人して同じような夢をみることなどありえるのであろうか?
双六の説明に戸惑いをみせはじめた二人の表情をみてとり、
よっし。
このままどうにか二人にこれ以上追求させないようにするには……
とにかく。
遊戯が刺された。
というのが現実であったというのを絶対にわからせてはいけない。
ならば、なぜ遊戯の怪我が今は綺麗に治っているのか。
という細かな説明が必要となってくるのは必死。
それだけは何としても避けねばならない。
「まあ、どういったことがおこったのかは儂も詳しいことは説明はうけとらんが。
  とにかく、もう夜も更けてきたころじゃし。お前さん達どうするね?何ならとまってくかの?」
いってわざと遊戯の机の上にとおいてある置時計にと目をやる双六。
コチコチコチ……
すでに時刻は九時に近い。
「って…どわっ!?なにぃぃ!?」
そんな双六の台詞に今更ながらに時間に気づき、驚愕した声をだす。
「もうこんな時間!?…はっ!夜遅くまで出歩いているなど言語道断っ!
  城之内!はやく家にかえらないとまずいぞっ!」
自分はともかく、城之内の家庭の事情をしっているがゆえに横にいる城之内をせかす本田。
「だぁっ!つ~かいつのまにこんな時間に……」
それだけかなり気絶していた、ということなのであろうが。
遊戯のことも気にかかるが、何より時間とそして自分達の家の者の対応もまた気にかかる。
「おや。かえるのかの?おくっていったほうがいいかのぉ?」
「冗談っ!おい。遊戯の爺さん、遊戯のことをたのんだぜっ!」
「お爺さん、お世話になりました。って、こらまて!城之内!」
びしっと双六に指を向けて言い放ち、そのままがばっと飛び起きて部屋からでてゆく城之内に、
そんな城之内にと続いてぺこりと双六にと頭をさげてこちらもまた部屋からでてゆく本田の姿。
やがてどたどたと階段を降りるおとと、そしてバタンと玄関が閉まる音が聞こえてくる。
窓から外をみれば、それぞれに走って家路についている二人の姿が見てとれる。
そんな二人の後姿をしばし見送りつつ、
「…やれやれ。どうにかごまかせたようじゃの……」
一人、ほっと息をつく双六。
もし、あそこでかなり突っ込まれていたら説明にかなり戸惑ったであろうこは明白。
だがしかし、それはやはり歳の功。
どうにか話題転換をして気をそらすことができたようである。
いまだに気を失い、深い眠りについている遊戯を傍目にみつつ、
一人もくもくと先ほど敷いた布団をかたづけはじめる。
そして、
「さて…娘には何と説明するかのぉ……」
一人、娘であり、遊戯の母親である花蓮に対しての説明を考え始める双六の姿が、
しばし遊戯の部屋において見受けられてゆくのであった……


双六に後を任せ、心の奥に引っ込んだ。
そのまま、自身の心の部屋でもある『心の迷宮』の部屋にともどってゆく。
無数にあるうちの一つの部屋にと出向いていき、その扉をあける。
ちょくちょく昔からやってくる遊戯のために作り出した部屋であり、
一応この部屋にはペットを備え付けてある。
とはいえ心の部屋なので念じればそれが出現する空間でもあるのだが。
「ファラオ」
扉をあけると同時、聞きなれた声が部屋の中から聞こえてくる。
ふとみれば、部屋の中にぽつんと一つだけあるペットに横になっている遊戯の姿が目にはいる。
その横に立っている見慣れた魔道士姿の男性も。
「マハード。遊戯の様子はどうだ?」
「まだ意識はもどりません。おそらく精神的なショックが大きいのもあるのでしょうが」
遊戯の心の中にといたマハードもまた何が起こったかは知っている。
彼自身がでていけばすべては収まったかもしれないが、だがそれでは逆に騒ぎは大きくなる。
普通の今現在の人間には精霊となっている彼自身の姿は見えないのである。
中には視える人間もいるにはいるが。
それに彼が表にでていかれなかった理由はもうひとつ。
完全にパズルが組み立てられていなかった。
ということにもある。
彼の魂もまた基本として王と共にある。
それゆえに、本質てきに彼は王の心の部屋に存在しているのである。
ゆえにこそ、パズルが完成していない状態では表にでてゆくことは不可能。
最も、王の手助けがあれば話は別であるが。
「そうか……」
パズルを自力でくみ上げた。
ということは、遊戯の心に足りなかった心からの怒りが身についてしまったということ。
できれば覚えてほしくなかった感情であるが、だけども絶対に必要な感情でもある。
心からの怒りを知らなければ、それを乗り越える力もまた身につかない。
優しさとはすべてのことを知りえて、より強い優しさと強さが身につくもの。
未だに眠っている状態の遊戯にそっと手を触れる。
ここは遊戯の心の中でもあるがゆえに、心の中。
つまりは深層心理の中では互いに触れることは可能。
その髪をゆっくりとなでるようにとかきあげる。
もう一人の『王』と呼ばれている『遊戯』が遊戯に触れるとどうじ、遊戯の表情がやわらぎ、
それまで苦しんだような表情であったものが安らいだものにとなる。
「マハード。ここは俺にまかせて、お前はシモンのところに出向いて経過を話しておいてくれ」
「了解いたしました」
シモンの生まれ変わりでもある双六にはきちんと説明をしていない。
そんな時間もあまりなかったというのもあるが。
とりあえず、マハードにその状況説明などをまかし、そのままもう一人の遊戯もまた、
遊戯とともに眠りについてゆく―――


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あとがきもどき:
薫:王様の過去編と、今後の展開のその後編v
  つまりは遊戯のかなり歳違いの妹の話を考えてたり(こらこらこら!
  遊戯十六歳にして母親懐妊のため、十七はなれてます(笑
  あるいみ、子供といっても通用するぞ~(こらこらこら
  そんなこんなで脳内で最近遊び中……いつになったら脳内消化できるかしらん?
  しかし…第1話で3話以上って・・・あるいみこわひ……
  初代もDMも原作もとりいれてこれ考えてるんですけどね(滝汗…
  さらにいえば映画も…ま、どうにかなる。…たぶん…
  のんびりまったり、どうせだれもみていないv
  何はともあれ、ではまた次回にてv

2007年8月15日(水)某日

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