まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

さて。とりあえず佐偽が帰還(?)したことだし。
のんびり、一気に時間をすすめよう(かなりまて
その前に周囲の反応をもいれとかないと。
与えられた時間の説明から今回は始まります。

ちなみに、今回は小話のほうをか~なり前(先)に打ち込みしてますのです。
ちなみに、今回の小話のバージョンは二点ほどあったり…(こらこら
竜神の姫バージョンと巫女姫バージョン~(だからまて
ともあれ、んではでは~、いくのですv
ぽそっとヒカルならやりかねない、とあるサイトさんにあったお話しをいれてみたりv
・・彼なら絶対!にあれはやる!(確信v

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さわっ。
そよそよ、ふわふわ。
『・・・・・・・・・・・・・・』
確かいつのまにか寝たのは覚えてはいる。
いるがどうしてこのような場所にいるのやら。
「え~と…ヒカル?きのせいでしょうか?私、すっごくここ、覚えがあるんですけど……」
確かにヒカルの部屋にいたはずなのに、気づけば周囲はすべてが桃色。
否、桃色の空間、といっても過言ではない。
ふわふわとした心地よさに、そよそよとした風のようなものが肌をなでる。
しかしその感覚も風のそれとはまた異なる。
「…俺も……」
というか忘れようがない。
かつて佐偽が自分に扇子を渡してくれたあの場所であり、そして……
ふときづいたらここにいた。
ゆえに多少間の抜けた声になってしまうのは仕方がない。
たかが一年。
されど一年。
忘れるはずもないこの空間。
「…とりあえず、何か意味があるのかもしれないし。先にいってみようぜ」
「…そう、ですね」
ここで立ち止まっていても仕方がない。
それゆえに二人して淡く色づく桜のような木々が立ち並ぶその道らしき場所を歩きだす。
その先に何があるのか、判るはずもなく……

星の道しるべ   ~時間と猶予~

「『ふわぁ~~~』」
思わず二人同時に大きくあくびが出てしまう。
「…なんか、昨日、変な夢みたような気がするんだけどなぁ~。佐偽も一緒にでてきた夢?」
『ええ。私もなんですけど……』
なんだか寝た気にならない、というほうが正しい。
何か夢の中で大事なことを聞いたような気もしなくもないがそれらが何だったのかさっぱりもって思い出せない。
ただ、なぜか漠然とあった不安のみがなぜか和らいでいるのが気にかかる。
その思いは佐偽とて同じ。
「ま、とりあえず。大手合いに今は集中しないとな」
『そういえば。ヒカル。ヒカルは初段のまま、なんですよね?』
「うん。まだ棋院のほうから段位が上がるって話しはないし」
そもそも、去年の春から夏まで休んでいたがゆえにそれは仕方がないとはおもっている。
いるがやはりどうしても上位の段位保持者と対戦してみたい、という思いはある。
もっとも今はそれ以上に佐偽と打ちあうことがヒカルにとって最上の喜びとなっているのだが。
でも佐偽が消えてから自分が打つ、と決めてからこのかた、負けたことがないんだけどなぁ。
いつになったら俺、段位あがるんだろ?
そんなことをふとおもう。
段位をあがるためのテストらしき手合いもないがゆえに自分はまだなんだろう。
そう思っているヒカル。
「珠算検定ではすべての科目の点数で段位が決まるから同じようなものだろうし」
『そういえばこの時代の棋力判定はどうなってるのか私も知ってなかったですねぇ~』
そもそも、過去においてもいつのまにやらやれ高段位だの何だの、といわれていた。
対戦を申し込まれればひたすらにそれを片づけていっていただけだ、というのに。
かつての昇段の基準も佐偽はよくわかっていなかった。
そのあたりの采配はすべて虎次郎がやっていたので仕方がない、といえば仕方がないのであるが。
虎次郎からしてみればわずらわしいことから佐偽を遠のけて碁に専念してほしかった。
という思いがあったのだが。
「でもなんかかわってるよな~。というか大手合いの合間に棋戦とかあるわけなんだし。
  どうしてもどちらかをとったらどちらかは出れない仕組みだろ?この日本の制度は?」
事実、どうしても時期が重なるものがある。
それゆえに今、日本棋院のほうでは昇段のシステムを変更しよう。
という話しがでているのだがそんなことをヒカルが知るよしもない。
「よ!進藤。大あくびしてどうしたんだ?」
大あくびしつつも棋院にはいる。
そんな彼の背後からぽん、と背を叩かれてふとふりむけばそこには和谷の姿が目にはいる。
何やらテンションが高いように感じるのはおそらく気のせいではないであろう。
「なんでもない。ちょっとかわった夢みて…それより、和谷?何か今日元気じゃない?」
何か異様に元気のような気がひしひしとする。
いつもと異なり何かやる気がみなぎっているようなそんな感覚。
「そりゃな。何しろ今日かてば三段にあがれるしっ!」
ぐっと力をこめて言い放つ。
今のところ、平均昇段点は七十点。
かてばどちらにしても平均点をクリアしていることにより晴れて上の段にとのぼることができる。
「いいな~。俺なんかまだ初段のままだぜ?」
「進藤はそろそろあがれるんじゃないのか?・・・・・・・いや、ちょっとまて。
  お前…すこしきくけど、昇段点って・・・しってるよな?」
いくらなんでも知っている、とおもいたい。
切実に。
しかし彼の知識のなさも十分に理解しているつもりである。
「?・・・・・・なに、それ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おひ・・・」
きょとん、とした表情でといかけてくるヒカルに対してまさに目が点。
「?どうかしたのか?何そんなところでつったってる?」
手合いの間の入口。
ゆえにつったっていればどうしても人目につくのはあたりまえ。
「…ちょっとまていっ!おま、まさか、まさか、まさかほんとうにしらないのか!?」
思わず口調が強くなってしまうのは仕方がない。
絶対に。
注意をしてきた他の棋士の言葉は今の和谷の耳にははいっていない。
「知らないって、何のこと?」
「おま、まさか昇段の仕組みわかってない、とかいわないよな!な!進藤!」
冗談だ、といってほしい。
切実に。
そもそも北斗杯において勝利を収めたような棋士が昇段の仕方もしらない、などと思いたくない。
「珠算検定のように何か検定があるんじゃないの?そういやいつ検定ってあるの?」
「し~ん~ど~う~……」
何だかものすごく重たいような声が背後からしてきたのはおそらく気のせいではないであろう。
「あ、塔矢」
「あ、塔矢。じゃないっ!君は…君はまさか本当にわかってないのかっ!?」
そういえば、とおもう。
彼は復帰してこのかたどの対戦もたしかに負けたことはなかったはず。
だが…だがしかし。
普通ならばきちんとそれらは自分で昇段の点などは計算しているはずである。
そう、普通なら。
何のきにしに声をかけようとしたところで和谷との会話が耳にとはいってきた。
昇段云々、といっている会話からそういえば進藤はいつ昇段するんだろ?
というかそろそろしてもおかしくないはずなんだけど?
そんなことを思っている矢先の和谷の台詞。
それに続いてのヒカルの言葉。
「だから。珠算検定みたいに段位所得するための試験があるんでしょ?そういやいつあるの?」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
どうやら本気でいっているようである。
そういえば、とおもう。
北斗杯の合宿のときにもアマチュアの級所得がよくわかってなかったようだけど。
まさか…まさか本当にわかってないとはっ!
それゆえに思わずその場にいる和谷と顔を見合わせ、
次の瞬間。
二人ほぼ同時におもいっきり大きく息を吸い込み、
「この大馬鹿やろぉ~~~!!」
「せめて前からいってる常識くらいは頭にいれろぉぉ~~!!」
和谷と塔矢の叫びはほぼ同時。
「何なに?何さわいでるの?アキラ君らしくない?」
ふと何やら入口付近で騒いでいる姿に目をとめこちらにと駆け寄ってきている芦原に、
何ごとか、とおもいそれぞれ手にとめてヒカル達のほうを凝視しているその場にいた棋士の数々。
「検定なんかないにきまってるだろ!」
「というか、今のシステムはこの大手合いがそれにあたるんだっ!」
「・・・・・・・?」
二人の交互の台詞をきいてもヒカルには意味がわからない。
むしろそれより、
「なんだよ。和谷も塔矢も。二人してそんな大声だして」
どうして二人が怒っているのかヒカルには判らない。
「これが大声ださずにいられるかぁっっ!」
「こらこら。お子様ず。何さわいでるんだ?」
今は大手合いの手合い前の時間。
騒いでいい、という時間ではないはずである。
それゆえにエレベーターを下りた倉田が何やら騒いでいる彼らを制裁に入ろうとするものの、
「きいてくださいよっ!倉田さん!こいつ、昇段の仕組みがわかってないんですよっ!」
ごがしゃっ!
大きな声できっぱりいう和谷の声はその場にいた他の棋士の耳にもとどきゆく。
それゆえに盛大にその場に突っ伏す棋士や、はたまたこけている棋士。
中にはそのままの状態で硬直している棋士など人それぞれ。
「あはは。まさか。いくら進藤でも……」
笑い飛ばそうとするものの、ふと北斗杯のときの合宿を思い出す。
しばしそのままの姿勢でフリーズし、そして。
「…進藤。お前確かいままで、退院後復帰して一度も負けてなかったよな?確か?」
すべての棋戦などの予選においてもヒカルは一度も負けてない。
昇段における点数は棋戦の予選などは関係ないが。
北斗杯のときはまだ最低手合い中、十六局にいってなかったはずである。
あるがあのときはたしか十二か三局程度はヒカルはこなしていたはず。
北斗杯以後、すでにこの手合いで四局目。
相手との段位の差がどれだけあるにしろよくよく考えれば昇段を申請していなければたしかにおかしい。
「うん。そういえば、倉田さん。昇段に対しての試験っていつあるの?
  ほら、前倉田さんが合宿のときにいってたじゃん?珠算検定とおなじようなもんだって」
「・・・・・・・・・・・・・・・あ゛~・・・・・・・・・・・・・・・」
そういえばあのとき説明が面倒なのでたしかにいった。
いった。
が、しかしそれとこれとは話しが別。
「・・・・・・嘘だろ・・・・・・・・・・・・」
どうしてあんな碁が打てるのに昇段の仕組みもわかってないのであろう。
倉田ですら思わず脱力してしまう。
「って倉田さん!こいつにそんなこといったんですかっ!?」
ヒカルの台詞にその矛先を倉田におもわず向けている和谷。
その気持ちは聞いている者たちからすれば多少わからなくもない。
「いや、まて。おちつけ。とりあえず今は他のやつもいるんだし。
  それに今からの手合いに騒いでいたらひびくぞ?な?進藤!お前は手合いがおわったらまっとけ!」
「今日という今日はみっちりと、細かいことまで覚えるまでかえさないからなっ!」
そんな彼らのやり取りをなかば茫然自失としながらも視界の端にいれつつも、
「…先生。なんで北斗杯にでれるようなあんな碁がうてるやつがそれすらもしらないんですか?」
思わずその場にいる森下にと問いかけている棋士の姿が目にとまる。
「…ワシにきくな……」
この場にいるのは何も低段者ばかりではない。
様子をみにきていた高段のものたちも多少いる。
この場にいあわせたことがあるいみ不幸、といえば不幸にあたるであろう。
会話が耳にはいってきてしまった以上、脱力せざるを得ないのだから……


はぁ~……
ずずっ……
部屋の中、飲み物をすする音が静かに響く。
「やれやれ。台風のようでしたな……」
「まったく……」
すでに午前中の騒ぎは彼らの耳にもはいっている。
いるがゆえに誰もが頭をかかえてしまったのは仕方のないこと。
対局が終わり、各自の棋士達からいろいろと説明されてヒカルがかなり落ち込んでいたりしたのだが。
同じプロ棋士達としてはたまったものではない。
何しろ強い、と自分達が思っている相手が昇段の仕方もわかっていなかった、などと。
というかそんな彼が何しろ日本代表となり・・・そして勝った事実もある。
そのときにその話題がでなくてこれほどよかった、とおもえたことはない。
切実に。
思いはみな同じ。
そもそも日本の囲碁界におけるレベルすら疑問視されてもおかしくない問題。
「まあ、今のシステムに問題がないわけでもないがなぁ~……」
そもそも、今のシステムにおいては恐ろしいほどに九段がどんどん増えていっており、
石を投げれば九段にあたる、とまで一部ではいわれているほど。
「とりあえず進藤君においてはまあ仕方ないとして」
彼の囲碁界の知識のなさはすでにもう知る人ぞしる常識となりはてている。
ゆえにあきれはすれども、そこまで知らなかったか・・・という脱力感のほうがはるかに強い。
「今様々な意見をしきつめて新しいシステムを摸索してるらしいですけどね」
今でもおそらくは談話室において進藤ヒカルにそれぞれの棋士がいろいろと説明をしているはずである。
彼らがいるのは上段者用の談話室。
すでに本日の対局もおわり、何やら自然とあつまり愚痴大会のようになっているこの現状。
「しかし、アマチュア囲碁大会の前にわかってよかったというか、何というか……」
棋院のほうからすれば大会で勝ったこともあり広告塔としてヒカル達を指導係りにまわそう。
そうおもっていたのも事実。
しかしもしそこで今回のことが発覚すれば日本の品位が問われかねない。
今月末には日本棋院主催のアマチュア囲碁世界大会が開かれる。
参加国もかなりの数にとのぼっている。
今回の北斗杯優勝にあたり飛び込み的に参加者は日に日に増えている。
人材確保を目的としている棋院とすれば彼ら若者を広告にすえて若い棋士達の勧誘を図りたいところ。
もっとも、同じ日本棋院であれども関西と関東の棋院では仕組みが異なっている。
統一しよう、という話しもでているがこれはいまだにまとまってはいない。
「そういえば。ネットのsaiがまた復活してるのしっていますか?」
「あれにはおどろいたよ。というかそういえば話しにきいたけど。
  北斗杯の夜、塔矢先生がsaiとネットでまたうってたらしいね」
「でも先生は海外にいかれてたわけですし。いつsaiと取り決めしたんでしょうか?」
「たまたま…にしては変ですよね?」
ふと一人が最近再び一年ごしに復活したネットのsaiの話題をふり進藤光からその話題に変化する。
北斗杯の日ではあったにしろあの対局をみているものは見ていた。
ゆえに再び一時関係している掲示板が炎上状態になっていたのも事実。
「案外。あの会場にネットのsai本人がきていたりしてね。それで塔矢先生とうちあわせしたとか」
「あはは。まさか。それだと名人のことだからまちがいなくネットでなく実際にうち合うだろう」
この場にいるのはほとんど上段者。
ゆえに塔矢行洋、という人物の性格をほぼ理解している。
「棋院とすれば塔矢名人と同じ棋力、いやそれ以上かもしれない、というsaiを本格的に探すか?
  という話しがでているらしいですよ?」
saiが日本からネットをしているのは間違いがない。
ゆえにもしも他国に出し抜かれては面白くない、というのもある。
もっとも、ネット上は老若男女すべてが平等であり普通は判らない。
が、しかしあの打ち筋からかなりの年配のものであろう。
というのはほとんどのものがおもっていること。
たしかに年月だけはたっている、といえるにはいえるが、
よもやsaiの正体が幽霊だ…などと常識からはずれまくっている事実を見極めているものはこの場には…はない……


バタ……
『ヒカル。大丈夫ですか?』
おろおろおろ。
さすさすさす。
さすがにあの場の騒ぎも佐偽とてたまげたが。
どうしてこうしてそれぞれがそれぞれにヒカルにいろいろと説明をしてきたのやら。
佐偽とてよく意味はわかっていない。
口ぐちにいろいろと説明をうけてヒカルからすればたまったものではない。
家にかえりそのままベットに横になってしまったヒカルを一体誰が責められる、というのであろう。
しかも帰りにはしっかりと何やら分厚い本がいくつか手渡されたのも事実。
そこにいろいろな規約、はては資格や制度といった囲碁界における常識なものが書かれているらしい。
佐偽とてこの時代の囲碁における常識的なことを知りたいのは山々なれど。
そういえば、とおもう。
『私、本の触り方も教わるべきでしたかねぇ~……』
碁石がもてることがうれしくて他のことはすっかりきれいさっぱり失念していたが。
よくよく考えれば棋譜とかみるのにあたりそれも習っておいたほうがよかったかもしれない。
とりあえず今心配なのはヒカルの体。
かなりどうやら疲れている様子がハタメにもわかる。
自分にできることはひたすらに疲れているであろうヒカルの背中をさすさすとさするのみ。
ヒカルはまだ十五歳。
そう、まだ十五なのだ。
今は昔とは違う。
今では平安時代、というらしいが。
自身が生きていたときと江戸幕府時代。
十三歳で成人、とみなされる時代とはまったく異なる。
人の一生もまた格段に変化している。
この時代の十五歳、といえばまだまだ子供と大人の境目をいったりきたりしている現状。
そう佐偽はとらえている。
小さなころから大人としての自覚を叩き込まれていたかつての時代とはわけが違う。
もっともこの時代においては大人になりきれない大人もまた多発しているようなのだが。
かつての虎次郎の時代ではみえなかったものが今ではみえる。
『ヒカル?大丈夫ですか?』
彼を大人たちの世界に叩き込んだのは他ならない自分のせい。
虎次郎のときはとにかくひたすらに碁をうつことだけに集中していた。
ふと気付けば虎次郎の生活も何もかも自分が狂わせていた。
それがわかっていてもやめられなかった。
彼の優しさに甘えてしまい。
そして今。
今また自分はヒカルに甘えてしまいそうになっている。
ヒカルが自分にも打たせてくれる機会をもたせてくれる、というのはとても嬉しい。
だけどもそれでなくてもヒカルの一生を左右してしまった、という思いは消えない。
一度、ヒカルの元を離れてみてそれが身にしみてよくわかっている。
自分の存在意義。
かつての自分はヒカルに『道』を示すためにと存在していた、そう理解した。
なら、今の『自分』は?
ヒカルを一生見守るためなのか、彼が一人立ちできるまで見守る役目を与えられたのか…
それは佐偽にもわからない。
そもそもどうして自分がこうして再びヒカルの元に戻されたのか、も。
あの少女の思惑がわからない。
どうして彼女が当時のままの姿でいたのか、なんてわからない。
ただ、彼女が人ではない、というのはかつても判っていたつもりではあった。
あったが…何ものか、というのまではあまり深く追求もしなかった。
当時はそのような摩訶不思議なことが日常的によくおこっていたのでさほど不思議には思わなかった。
そういえば、とおもう。
今朝の夢の中でとても大切なことをヒカルと一緒に『彼女』から聞かされた。
その内容までは覚えていない。
だけどもとても大切な…何か。
『ヒカル。疲れているのはわかりますけど。とりあえずきちんとオフロにはいってご飯をたべないと。
  今、あなたは育ちざかりなんですから』
「ご飯いらね~…ごめん。佐偽、俺、も、ねる……」
ぱたっ。
精神的な疲れは肉体的にもかなりくる。
『ちょ!?ヒカル!?』
それゆえにそのまま深い眠りに誘われる。
「ヒカル?ご飯はどう…って、もう。このこは。まったく。仕方ないわねぇ。
  ご飯は冷蔵庫にいれとくから。お腹すいたらたべるのよ?」
どうやら服のまま寝てしまっているようである。
息子の様子を確認しにきた美津子が呆れた声をだし、そのままそっとヒカルに布団をかけて部屋からでてゆく。
『申し訳ありません。母君。私にできればよかったのですけど……』
そんなヒカルの母親に対して頭を深く下げている佐偽。
母親が部屋からでてゆくのをみつつ、
『…きめました!私。布団や本も自分でさわれるように努力しますっ!』
そうすれば少なくともこういうときヒカルの役に立てるはず。
何よりもヒカルの手間を少しでも減らしたい。
それゆえに一人、何やら決意新たにする佐偽の姿がヒカルが寝入っているその横において見受けられてゆくのであった――


                                -第84話へー

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あとがきもどき:
薫:今回のはちと支離滅裂、というのは自覚してます(開き直りv
  佐偽が決意新た?にするところと、あとはヒカルが昇段システムしらなかったこと。
  それをいれたくてやってみたりv
  あ、ちなみに今現在では実際は大手合いによる昇段制度は使われてないそうです。
  あしからず…過去と現在の簡単説明はしたの豆知識を参考にどうぞv
  ま、見なくても問題ないですけどね。ただ参考までに(笑

豆知識?をば(参考、日本棋院サイト)
2003年4月より、大手合は廃止されてます。今現在と過去の方法は下記のとおりです

☆ 勝数による昇段

☆ 勝星対象棋戦

八段→九段:200勝

 棋聖、名人、本因坊、
十段、天元、王座、
富士通杯、碁聖、
トヨタ&デンソー杯、
新人王、竜星、
桐山杯(対アマチュアも含む)
三星火災杯(韓国主催)、
LG杯(韓国主催)、
農心杯(韓国主催)、
春蘭杯(中国主催)、
応昌期杯(台湾主催)

七段→八段:150勝、

六段→七段:120勝

五段→六段:90勝

四段→五段:70勝

三段→四段:50勝

二段→三段:40勝

初段→二段:30勝

大手合:段位獲得票

平均点75点 平均点70点 平均点67.5点 段差 手合割   手番 ジゴ
初段 8局以上 12局以上 16局以上 同段 互先

 

先番

75

45

15

二段 10局以上 14局以上 18局以上 同段 互先

 

白番

105

75

45

三段 12局以上 16局以上 20局以上 一段差 先相先 下手 先番

80

50

20

四段 14局以上 18局以上 22局以上 一段差 先相先 下手

110

80

50

五段 16局以上 20局以上 24局以上 一段差 先相先 上手

先番

70

40

10

六段 18局以上 22局以上 26局以上 一段差 先相先 上手

100

70

40

七段 20局以上 24局以上 28局以上 二段差 下手

90

60

30

八段 22局以上 26局以上 30局以上 二段差 上手

90

60

30

        三段差 先二先 下手 100 70 40

 

 

 

 

三段差 先二先 上手 80 50 20

昇段の方法:昇段日=昇段後の勝星のカウント開始日
※タイトル獲得による昇段(過去の実績を認める)
※賞金ランキングの上位者を昇段(初段~五段は上位2名、六段は上位1名を昇段)
(1年で2回の昇段はない)

・・・さてさて、今回の小話はどうしても頭から離れない時間逆光ものv(こらまて
それのさわりぶぶんをば。


「あぶないっ!!」
ききぃぃ~~!!
ドッン。
…佐為でないことなんて、わかってた。
それでも、髪の長いその人が佐為の姿とかさなって…気がついたらかけだしていた。
「進藤っ!!」
遠くで塔矢君の声が聞こえてくる。
意識がとおくなってくる。
神様。
お願い。
私を…あの人に…佐為に…合わせて……


ふと、視線をさまよわせてしまう。
いつもどこかで誰かを探している。
「ヒカル?また?」
「…え?何?」
「もう。ヒカルったら。昔から気がついたらななめ後ろをみてはさみしそうな顔をしてるわよね」
藤崎朱里とは赤ん坊のころからの付き合い。
というか同じ公団宿舎に住んでいた私と朱里の家族。
それが分譲住宅の抽選に偶然に一緒にあたり、しかもまたまた偶然に隣同士の土地を引き当てた。
ひっこしてきたのはついこの間。
進藤光。
ただいま小学三年生。
だけど、物心ついたころからどこか私の心はかけていた。
「ほら!しっかりする!あまりぼ~としてたらまたヘンなのに取り憑かれるわよ?」
「あ…あはは……」
朱里が私を心配してくれているのはわけがある。
なぜか私は物心つく前から異様にその手のもの…というか俗に言う幽霊とかいう類のものに取り憑かれやすいらしい。
ゆえに何でも自力である程度は実力をつけないと危険だ、というとある霊能者の意見もあり、
小学一年のときに一応それなりの訓練はうけたはうけたけど。
だけども、いつも幽霊とかが視える、わけではない。
私がみるのは、いつもどこか特徴がある。
背がたかいとか、黒く長い髪とか…
それでも、それらをみるたびに違う。
と心のどこかが叫んでいる。
ずっと、会いたくて、会いたくてたまらない、【誰か】。
以前逆行催眠とかいうのを心配した両親がかけて、何となく理由はわかったけども。
私の前世はとても大切な人を失い、その人を想ったまま死んでしまったらしい。
ちなみに交通事故。
それでも名前までは声にでなかったらしいので周囲もそれがだれなのかまではわからなかったらしい。
ちなみに、あまりに強い想いなので封じたりすれば私の人格に影響がでるとか、廃人になるとか…
よくわからないことをいわれて、けっきょく私は自分でガードとかいうのを覚えるハメになったけど。
…ダケドモコノセカイはワタシのシルバショとはビミョウにチガッテイル。
そんな思いもずっとあるのも事実。
「そういえばさ。けっこう近くだよね。ヒカルのお爺ちゃんち」
「うん。お父さんが、もうお爺ちゃんたちも若くないから心配だからマイホーム、考えたんだって」
そういえば私はまだお爺ちゃん家にいっていない。
いつもお爺ちゃんたちのほうがうちにきていたのもあるけど。
「これからは頻繁にいけるね」
「そうだね」
それでも、何だかいくのが怖い。
そう、何か再びものすごい喪失感を味わいそうな、そんな予感。
たまらなく不安になるのはなぜだろう?
いつも夢にみる。
ふりむいたその先でほほ笑むその姿はかすんで姿がみえない。
だけども、声だけは覚えている。
『ヒカル…』
と。
私も呼びかけようとして、そうして手をのばした先でその人はいつも闇の中にと消えてゆく。
「ま、でも。ヒカル。今日から葉瀬小学校だし。しかも同じクラスだし、またこれからもよろしくね?」
「うん。アカリ。よろしくね」
そう。
私たちは今日から葉瀬小学校にと転入する。
季節は九月。
引っ越しの次期の理由はこの時期、かなり引っ越し業者がやすいから、らしい……
だけども、ここの景色は何だかとても懐かしい。
一度もきたことないはずなのに。
そう…とても…とても……
ソウ。
ワタシはこのミチをアノヒトトトモにアルイテイタノダカラ。
すとん、と心に落ちてくるその感情。
とても大切なことを私は絶対に忘れている。
思い出さないといけないのに。
でないと…でないと取り返しがつかないことにマタ、なってしまうような気がするのに。
…マタ?
そう思う自分の心に問いかける。
マタって何?
「…今度の学校はあまり幽霊ゴッコとかしてくれないといいね……」
「そう、だね」
いくら何でももう夏はすぎたんだから、降霊術もどきのさまざまなことはやらない。
…とおもいたい。
……何だって女の子とかってああいう危険なことを平気でするんだろ?
たわいのない会話をしつつも、私と朱里は登校二日目である葉瀬小学校にとむかってゆく。


トクン。
――シンドウサンが好きな人はいますか?
…s・a・i。
「はいはい!授業が始まりますよ!!」
休み時間、ふざけてクラスメートがやったその質問が頭から離れない。
…sai……サイ…佐為。
そう、私がずっと…ずっと探していたのは……
「では、社会の授業をはじめますね。前回まで平安時代の……
  この時代、栄華を極めていたのは何の一族でしょう。はい。篠田さん」
「はい。藤原家です」
ドックン。
――私は、藤原佐為、と申します。あなたは?
――私は…私は、進藤輝!!
ふらっ。
ガタッン!!
「ヒカル!?」
「進藤さん!?」
…どうしてわすれていたの?
私は?
あの人の名前を…
佐為…佐為……
私は…あなたにあいたくて、またここに生まれてきた、というのに…
…愛するあなたは、いま、この世界に、あの碁盤のもとにいるのですか?
あなたを探して転生した。
そしてあなたをみつけて…そして、また失った。
あなたを失ってから私は前世の記憶を取り戻した。
はじめから覚えていたら…と悔やんでも悔やみきれない…過去。

怖い。
だけども勇気を出さなければ始まらない。
社会の時間に倒れた私は気づいたら昼まで寝ていたらしい。
だけども、ただ、寝ていただけではない。
今までずっと忘れていた、かつての記憶。
【進藤輝】として生活してきたあの二十四年間。
その記憶が一気にあふれるがごとくによみがえってきた。
そして、かつて平安の都で暮らした神道家の輝、としての記憶も。
ここは、私のいた前の世界とは微妙に違っている。
だけど、信じたい。
あなたが、ここにいる、ということを。
気分が悪いから早退します、という私の台詞に先生も素直にうなづいてくれた。
だけども私がむかうのは、家ではない。
…一度もいったことのない、祖父の家。
いったことないはずなのに、わかる。
ここの【世界】も私がいた【世界】と風景も、何もかもまったくもってかわっていないから……

どうしてあのような長い夢をみていたのか・・・
本当に夢だったのか。
夢ならば、何という心残りのある別れ方を私はしたのですか?
ずっと覚めなければよかったのに。
――ヒカル。私はあなたを好きですよ?
――うん。佐為。私も。…佐為にふれられたらいいのに……
――ヒカル…
虎次郎と別れたあと、私がここで少女を見出し、そしてその子と数年間。
共にくらしたという何とも残酷な…夢。
少女はやがてプロになり、これから花開く、というところでの突然のわかれ。
夢ということにはリアルすぎて、心がとても痛くて…
自分の役目はおわったのだ、と理解しても彼女と離れたくなかった。
そう。
千年の時をさまよっていた自分がはじめて、愛しい、とおもった少女と別れたくなかった。
あのとき、はっきりと確信したのは、彼女がかつて自分が愛した人の生まれ変わりである。
ということ。
彼女は覚えていないようだったけど、自分にはわかった。
少女はやがて私の目の前で女性となり、私にそのいとしい笑みを浮かべてくれていた、というのに。
彼女に最後まで言葉を伝えられなかった。
意思の疎通ができなくなっていた。
先日久しぶりにみた夢はその少女に私が自分の扇子を手渡す夢。
だけども夢からさめれば私はたしかに扇子を手にしているわけで……
『……ヒカル……』
神の一手を極める前に自分が消えてしまう、ということよりも彼女と別れるほうがつらかった。
あのときは、よかれ、とおもって彼女をおいて自ら命をたった。
だけども残されたものの痛みはあのときの自分にはわかっていなかった。
その心の痛みは現実で…夢とは到底おもえない。
虎次郎のときも悲しかった。
そして分かった。
残されたものがどれだけ傷つくのか、ということが、初めて。
だけどもはっときづいてここで一人で暗闇の中いたそのときの絶望は……
目を閉じれば目の前にいるかのごとくに思い出す。
彼女の…ヒカルのあの笑みを。
その一挙一動を。
うちかけの一局。
もしも、もしもあの夢に続きがあるのなら、私は彼女に伝えたい。
私は…ヒカル。
あなたを愛していました。
と。
いえ、過去形でなく、これからもずっとおそらく私は彼女の面影をおうことでしょう。
神の一手とともに、私は未来永劫ずっとアキヒメ…いえ、ヒカル。
あなたを。
ただの夢…というにはあまりに残酷すぎて…そしてとても幸せすぎた…夢。

怖い。
けど、進まないと先にすすめない。
大丈夫。
だって、お世話になってくれている霊能者の先生もいっていたもん。
私の想いはとても強い。
想いの強さは奇跡を起こすことが多々とある。
って。
かつての【私】を知らないあの人だとしても、あのひとにはかわりない。
そういえば、佐為の恋人の話を聞いたとき、佐為は今はあなたがいますから。
そういってくれたっけ。
あのときの私には意味がわからなかった。
だけども、今ならわかる。
だから、お願い。
神様。
私にもう一度、佐為と巡り合えるチャンスをください。
目の前にあるのは見慣れた倉。
だけども記憶にあるものよりとても大きくて。
そういえば、私ってまだ十歳になってない子供だったんだ。
と思わず苦笑してしまう。
子供の目線と大人の私の目線では蔵の大きさはかなり違う。
私の記憶では昔は蔵にはカギをかけていなかった。
かけはじめたのは蔵に泥棒がはいってから。
ゆっくりと平八お爺ちゃんたちに挨拶することもなく倉の中にとはいってゆく。
とても扉がおもくかんじるけど、今の私の気持ちほど重くないとおもう。
緊張と…そして期待と、不安。
この世界は、彼がいる世界なのかどうか、すらわからない。
だけども、信じたい。
佐為がいる。
と。

ふと、この中に誰かがはいってきた気配を感じる。
だけども、その気配がとても懐かしく…そして、自分が求めている気配と何となくだけども一致する。
そんなことはありえない。
だってあれは、私の孤独が生み出した…幸せすぎる残酷な夢、のはずなのだから……

どこにあったか、なんて覚えてる。
それは蔵の隅にひっそりとおかれてて…そして……
どきん。
暗闇の中に浮かんでいる一つの人影。
ずっと、ずっと、求めて、あの十五の歳から…ううん、彼が入水自殺してしまったあのときからずっと……
「……サ……佐為っ!!!!!!!」
気づいたら、私は自然と叫んでいた。
名前を。
…この世界の彼は、絶対に【私】を知らない。
この世界の彼の恋人が【輝姫】だったかどうかもわからない。
そう、だってここは【私】がいた世界とはまた違う世界、のはずなんだから……
だけども、その視えた姿が私の記憶の中にある佐為そのもので…
いろいろとここにくるまでかんがえてた。
…佐為が、消えなくてもすむ方法を。

一瞬何を言われたのかわからなかった。
どこか聞き覚えがある…いえ、聞き間違えようのないその声。
私が常にまた夢にみたい、と切実にのぞんでいた、あの……
だけどもその声は夢の中で初めてあったときよりも多少幼く感じ…
何よりも、私は、また夢をみはじめているのでしょうか?
誰もしるはずのない私の名前。
ゆっくりと視線をむければ…そこにたたずんでいる一人の少女。
前髪部分のみが金髪で、だけども夢の中の記憶の彼女とは異なりそれよりもまだ幼い。
だけども、自然に口から出た言葉は。
『……ヒカル?』
私が愛した唯一の少女。
過去においても、そして…幽霊となっている今においても。
幼い、とはいえ私がみまちがうはずなんて…ない。

『…ヒカル?』
この世界の彼ならば知るはずのない私の名前。
どうして、私の名前をしっているの?
それとも、私をひとめみて、私が【アキヒメ】だとわかってくれたの?
だけどもそんな感情よりも先に、その懐かしく、とてもこがれていたその優しい声。
…気がついたら、私は彼のもとにとかけだしていた。
神様。
おねがい。
彼とあえたの。
だから…もう、私から彼を…佐為をうばわないでっ!!



みたいな感じで。
ちなみに、佐為&ヒカル、ものすっごく想いがつよかったがゆえに、
別世界さんの並行世界さんにその魂いっちゃって(まて)
佐為はそこにいた自分自身にその想いごと同化して。
ヒカルはその世界に死んだ後に転生してて常に佐為を無意識のうちに探してる。
というような感じです。
ちなみに、佐為には夢、とおもっていましたけどヒカルと出会うことにより、そうでないことをさとります。
ここで重要なのは!佐為が行洋との一局とかをすべておぼえていること!(笑
つまり、運命はすでにそこからかわってるわけなのですけどね(苦笑


2008年10月6日(月)&2011年1月21日(金)某日

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