まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
今現在の実際に棋戦時期に関してはこちらから♪
とりあえず実際にある棋戦や大会についてはなるべく事実と異ならないように采配中(汗
それでもそこはそれ。
二次創作さんなので多少変えたりしても許してくださいな。
…ま、本当に囲碁やってる人とかはこれなんかみないでしょうねぇ(しみじみと
しかし、佐偽転生までいったいいくつの話数になるのやら(汗
…連載的には100の大台超えそうでこわい…(滝汗……
つうか確実に超えるな…あはははは…(もはや笑うしかない?
まあ、○部、みたいな感じでとらえれば…(って言い訳です…はい……
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「あの?あなたは……」
たしか以前出会ったときに姿を確認する方法を教わった。
その子供がどうして自分の夢の中にでてくるのであろう。
夢、と自覚している夢は多々とみる。
周囲は淡い桃色とでもいうべき色に覆われており、ふわふわとした心地よさ。
何かに抱かれているような、そんな感覚。
「こんにちわ。明子さん。時が動き始めますよ?」
ふふふ。
にこやかにいいつつもふふ、と笑みを浮かべる目の前の少女。
そういえば、とおもう。
目の前にいる少女は以前みたような服装ではなく、薄い淡いレースのような服装に身をつつんでいる。
その長すぎる髪も現代においては絶対にありえない。
かつて出会ったときも髪はかなり長いように感じてはいたが。
目の前の少女の髪は少女の身長よりもはるかに長い。
「変革のときはすぐにそこに……」
はっと目がさめる。
「今の夢は……?」
何か説明をうけたような気がする。
だけどもそれが何だったのかよく思いだせない。
唯一判るのは、それが進藤光と藤原佐偽に関係する、ということ。
そして、世界に関することだ、ということのみ。
「…変革の…とき?」
それが何を意味するのかはわからない。
だけども確実に『何か』が動き始めている。
自分に与えられる役目。
それはわからない。
しかしおそらくこのような夢をみた、ということは何か絶対に意味があるのであろう。
何かが、確実におころうとしている。
しばし今までみていた夢の意味を考える塔矢明子の姿が見受けられてゆく――
星の道しるべ ~世界アマチュア囲碁カップ~
竜星戦。
棋士全員参加ができ、重要な棋戦の一つ。
96名による勝ち抜き戦のあと、16名によって決勝戦が行われる。
予選はA組、B組と分かれており、そのあたりもまた運も実力のうち。
それぞれより八名が選ばれる。
タイトルホルダー所持者はシード枠が設けられているのでわざわざ予選をうけることもない。
「なんかくやしいよな~……」
思わず愚痴ってしまうのは仕方がない。
自分は今予選に参加しているがもう片方では本戦を経由して決勝トーナメントが開始されている。
とはいえ仕方がなかったという思いもある。
もしもあのときに普通に参加していてもおそらく自分はきちんと集中できずに対局すらできなかったとおもう。
この時期に行われているNHK杯やNECカップ、という棋戦の参加資格は新米棋士にはない。
「…よくいうぜ。まだ初段でありながら阿含・桐山杯の最終予選にのこったやつが……」
阿含・桐山杯の棋戦においては予選は二月から行われていた。
この時期に行われているのは最終予選。
このたびは快挙、ともいえる年若い棋士がいく人か最終予選にまで残っている。
桐山杯の本戦は七月から。
このままでいけば十月には初の低段者による優勝という快挙がみられるかもしれない、
と一部ではかけごとすら行われている。
が、しかしそんな裏事情をヒカルは知るよしもない。
大手合いの合間を縫い棋戦の予選がそろそろ活発化する。
昨年度は五月より入院していたこともありヒカルはほとんどの棋戦に参加していない。
それはすでに予選が入院時期にすんでいたがためなのだが。
それをどうこういってもどうにかならないのも事実。
『ヒカル?幾度もききますけど。いったい私が離れたあと、何があったんですか?本当に』
ぎくっ。
ぎくぎくっ。
先日の病院、といい絶対に彼は何か自分に隠している。
不思議に思い聞いてみても毎回何だかはぐらかされているような気がするのは気のせいではないであろう。
それゆえに佐偽としては何があったか、と心配でたまらない。
好きで離れたわけではない。
だけども自分が離れて…否、いなくなってしまったせいでヒカルの身に何かがおこっていたとすれば…
それは自分を責めても責めてもつぐないきれないとおもう。
ヒカルからしてみればあのことだけはどうしても佐偽に知られたくはない。
彼が自分を責めて責めて悲しんでしまう様子なんて見たくもない。
せっかく戻ってきてくれた佐偽を悲しませたくはない。
「そ、それより。なんで俺達が駆り出されてるんだ?和谷?」
『ヒカル…何か今、話題そらしませんでした?』
どうもこのしらじらしさは以前とほとんどかわっていない。
絶対に何か隠しています。
そう確信すれどもヒカルがいわなければそこまで追求できないのも事実。
どんな言い訳をしようとも自分がヒカルの元を去った、というのは紛れもない事実なのだから。
じと目で自分に問いかけている佐偽に対しては笑みを浮かべただけでこたえることもなく、
話題を転換させて横にいる和谷にと問いかけているヒカル。
今、彼らがいるのは日本棋院。
「おまえなぁ。この前の北斗杯の結果のためか。いつもより参加人数が多いせいで人がたりないんだってば。
棋戦に参加している棋士は動けないし。仕方なく俺達のような下っ端棋士まで狩りだされてるんだよ」
不本意、といえば不本意ではあるが。
そもそも仕方がない。
段位が上の実力のある棋士などはすでに様々な棋戦の対局が待ち構えている。
大切な棋戦対局の最中に別の仕事を棋院としてもいれるわけはいかない。
それゆえにそれらの棋戦に参加していない、もしくは予選落ちした棋士達にとその矛先は向かっている。
「せやで。そもそも俺ら関西棋院の棋士までかりだされてるんやからな」
そんな彼らの横で何やらため息まじりにいっている社。
彼もまた日本代表として北斗杯に参加した、ということもあり今回の指導員の一人に駆り出されていたりする。
会場もまた分散して今回の大会は執り行われることになっている。
棋院側としてもここまでの参加者の増加は予測しておらず対応に追われているのが実情。
「そういやさ。進藤はしってるか?今回の大会にあのsaiがいるかもしれない。
とネット上ではまことしやかに噂がながれてるんだぜ。俺もあえるならあいたいぜ」
「『・・・・・・・・・・・・・』」
思わず横にいる佐偽と顔を見合わせる。
確かにこの五月五日に佐偽が戻ってきて、そして北斗杯が終わり。
今まで佐偽が打てなかった分だけ、と佐偽にひたすらネットで打たせていたのも事実。
しかしそんな噂が持ち上がっていたなど今初めてヒカルは聞いた。
まさに寝耳に水。
和谷には真実を教えたい。
教えたいが彼はその手のことにたいしての免疫はまったくもってなさそうである。
というか普通は信じないであろう。
幽霊などという存在は。
視えるものはそれゆえに俗にいう一般的感覚をもっている人からは異端扱いされてしまう。
「もう五月も終わり…なんだな~……」
何やら日々が北斗杯後、ばたばたと過ぎ去ったような気がひしひしとする。
それでもいまだに目が覚めたときに佐偽の姿をみてほっとしている自分がいるのは仕方がない、ともおもう。
今までのことがすべて願望がみせた夢だったらば…という不安は今でも光の心の中にと根付いている。
「俺と社はB会場。進藤は…」
「A会場、になってる」
それぞれ担う会場は棋院によってすでに決められている。
ちなみに会場は全部で四つ。
AからD会場へと分けられている。
それぞれの会場で予選を行い、勝ち抜いたものが決勝戦につづく本戦へと進むことになる。
「進藤!おまえ、日本のハジになるようなことはいわなくていいからなっ!いらんことはいうなっ!な!?」
「…和谷。どういう意味だよ……」
棋力だけはけた外れに強い、というのにいまだに進藤光の囲碁界の知識のなさは否めない。
ゆえにこそ念には念を、とばかりにヒカルの肩をがしっとつかんでいっている和谷。
「お。バスがきたで」
ふとみればそれぞれの会場に向かうバスが棋院にと乗り付けられる。
そのまま各自、今回の係りに選ばれた棋士達はそれぞれが受け持つ会場へとバスにのり向かってゆく――
『ほんとものすごい人ですねぇ~』
わくわく。
この熱気が何ともいえないここちよさ。
ここにいるものすべてが囲碁を愛しているものたちである、とわかっているからなおさらに。
この時代はあまりにも囲碁をたしなむものが少なすぎるとおもう。
かつての平安の時代においては教養のたしなみの一つであったのに。
江戸の世においては普通の人々にも囲碁は浸透していた。
しかし今の時代はあまり浸透していないようなので佐偽からしてみればさみしくもある。
『そういえば。ヒカル?』
「何?」
とりあえず近くに誰もいないので佐偽の問いかけに対し普通にこたえる
『ヒカルは大丈夫なのですか?なんか無理をしているような気がするのですけど……』
ヒカルの元にもどってからこのかた。
自分の勉強をおろそかにすることもなく、自分との碁の打ち合いと検討。
そしてまたネット碁を打たせてくれた後の互いの検討。
通信教育なるものが何やらとてつもない濃い内容になっているような気がするのはおそらく気のせいではない。
『アカリちゃんが遅くなるときはいつもお迎えにいってますし……』
というかほぼ毎日、対局がはいってないときにはその時間帯には必ず迎えにいっている。
「してないって。ただ最近物騒だから迎にいってるだけだし」
最近は何があるのか本当に判らなくなっている。
普通に歩いていてもいつ誰が通り魔的な犯行に巻き込まれるかわからなくなっているこのご時世。
自分が傍におらずに万が一、大切な人を失うことになったら……
その思いのほうがヒカルからすれば強い。
佐偽を失って判った。
いつも傍にいる人がいつまでも元気でいるとは限らない、ということを。
家の手伝いなども率先してあれからは行うようにしている。
それでも碁の勉強をおろそかにはしていない。
日々の睡眠時間を削っての行動であるがそれでも行動を変えよう、とは思わない。
また、思えない。
あんな後悔はもうごめん。
二度と後悔はしたくない、とおもっていたのに何も手をうてないままに一度佐偽を失った。
いなくなる、とわかっていても何もできなかった自分の無力さ。
「とりあえず今日の受け持ちは半々な」
『でも、いいんですか?ヒカルのお仕事なのに?』
「お前だっていろんな人との対局してみたいんだろ?まあお前が石を握るわけにはいかないけどさ」
そもそもこんな場所でそんなことをしたらまちがいなく騒ぎになる。
絶対に。
普通の人には佐偽の姿がみえないのだから、石のみがふわふわと浮かんでいるようにしかみえない。
試すまでもなく嫌でも騒ぎになるのは目にみえている。
「ま、オレのようなようやく二段になったばかりのやつに滅多に依頼してくるやつもいないだろうけどな」
それはヒカルの本音。
そもそもこの場には自分より上段の棋士も多々といる。
いくらアマチュア、とはいえ彼らとてこういう機会に力ある棋士と対戦したいであろう。
ゆえにこそ自分のようなものに役目が回ってくるなどありえない。
ヒカルは自分がかなりの棋力にたっしている、とはいまだに理解していない。
『…そうですかねぇ~……』
そんなヒカルに対しておもわずため息まじりの声がでてしまうのは仕方ない。
でもヒカル。
あなたは私と離れたときよりもかなり腕をあげているんですよ?
その自覚がまったくないのはいかにもヒカルらしいといえばヒカルらしいですけど。
並みいる上段者よりもヒカルと対戦してみたい、と思う人のほうが多いとおもうんですが……
佐偽ですらはっとする手を最近よくヒカルはうってくる。
かつて互いに新しい定石を生み出していたそれらをさらに昇華しているらしい。
だからこそヒカルと向き合い打てることが何よりもうれしくまた誇らしい。
油断をすれば自分すらをも追い越していきそうなほどにヒカルは進化している。
しかしそれをヒカルにいってもヒカルはそんなことはあり得ない。
そう一笑にふすのみ。
ヒカルに碁を教えたのが私、というのもあるのかもしれませんけど。
この感覚のずれは何とかなりませんかね?
そんなことを佐偽が思っているなどヒカルは知るよしもない。
しかしいまだに佐偽には一度たりとて勝てないのだからヒカルの思いも判らなくもない。
彼は自分が基準としている位置が激しく一般的な感覚からずれまくっていることをいまだに理解していのいのだから……
五月も終わりに近い週末。
毎回、この囲碁カップは基本、土曜日から火曜日までの四日間にて執り行われている。
参加者が増えたゆえに会場を増やしたゆえに期間は毎年とおなじくかわってはいない。
「はい。進藤君。これつけてね」
手渡されたのは『指導員』と書かれているネームプレート。
紐のついているそれを首からぶら下げる。
「とりあえずあまり参加者の邪魔にならないように見回りしつつ、お願いされたらそれなりに対応してね」
「は~い」
不正などがおこらないよう、また騒ぎにならないように見回りは怠れない。
特に様々な国の人々がいればいつなんどき騒ぎになるかわからない。
それでなくてもこのご時世。
何があっても不思議ではない。
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あとがきもどき:
薫:
2011年2月12日(土)某日
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