まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
んふふv今回から復活佐為ちゃん、本格的に起動!です(笑
しかし、最近あるサイトさんの小説よんだせいで、
(いやもうおもいっきりテッシュひとつ空にするほど泣けた話でv)
(それだけ心に染みいるそちらのサイトさんはこちらv)
またまた別のヒカ二次さんおもいついてたり。
アニメで佐為=正夫さんの声が同じだったこともあり。
ヒカルが佐為になついた(?)のはその声も原因という設定さんで。
(父親はヒカルかばって死亡という設定で、ヒカルはかつて白血病)
んで、もう一つは小話にだしてる別バージョンもの。
佐為がもどってこずに、アキラと結婚するお話ですけどね(苦笑
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星の道しるべ ~淡麗さと物腰と~
「進藤?」
今の進藤の固まり具合からして…もしかしたら…とはおもう。
思うが…saiが誰なのか教えてもらえるチャンスなのかもしれない。
そんな期待をも抱いてしまう。
これを逃したらまた当分この先ないのではないか…と。
『フム。つまり塔矢に私の姿が視えれば二面打ちでも問題ない、と?』
何やらものすごく無理なことをいってくる佐為。
自分以外の人には視えない。
以前明子がくれていたネックレスはヒカルが気がついたときにはもう割れていた。
それはそれを身につけいてたがゆえにあのとき、学校で倒れたとき命まではとられなかったのだが。
そうはいうけど、それってムリなんじゃあ?
今は昔もらったあの水晶ネックレスも何もない。
しかもあの水晶は明子おばさんのみ限定品。
ゆえに塔矢に姿を…というのは絶対に不可能。
かといってヒカルも佐為の姿をどうすれば他人に見せられるのかなんてわからない。
よく見聞きしていた内容と佐為とはまったく異なるのはいろいろ試したがゆえに将地しているつもりである。
一般に、霊がみえないのはその霊に霊力がたりないから。
といわれることがある。
そしてその霊に霊力を追加させて力を上げれば誰でも視えるのだ…と。
しかし、佐為はその逆。
力が強すぎるがゆえに、視えてもヒカリにしか視えないらしいのだ。
普通はそんなヒカリすら認識できないお方ですよ。
と数名の佐為の存在に気づいた人たちに言われたこともある。
ゆえにこそのヒカルの問いかけ。
『ヒカル、ヒカル』
「?」
『私のこの石の本体、もってますよね?』
いいつつ佐為が指にて指し示したのは、佐為が耳につけているピアスのような石。
なぜ平安時代にそんなものを?
と以前ヒカルがきいたとき、
何でも昔のしかも貴族の間では子供の成長と安全をまもるべく、
大地の恵みをうけているであろう綺麗な石をけっこう子供に埋め込んだらしい。
一番無難な耳元というか耳たぶに。
そんなことはヒカルにとっても、おそらく史実からしても初耳であろう。
それが記録にのこっていないのは、そのことを悪い精霊にどに知られたら威力をなくす。
という、いわばそんないわれがあったらしい。
ゆえにこそ、今のこっている絵姿などにもそれらはとりいれられていない、らしいのだが。
陰陽師に生まれたときにこの子の石はどの色のものがいいです。
とかお伺いをたて、その石をさらには八卦など様々な方法を使い見出して。
それを探し出して子供に与える。
佐為の場合はある程度年齢がいったのちに藤原家の養子になったので、
石を埋め込まれたのは物心ついたあとだったので『かなりあのときはいたかったんですよ~』
とヒカルに涙を浮かべて説明していた。
そんなことをふと思い出しつつ、
……もってるけど。
とりあえず問いかけにはこたえるヒカル。
佐為のいいたいことがよくわからない。
そもそも、佐為の形見だというその石そのものは以前ある少女からもらっているままである。
しかも一時手を離れていたときになぜか石そのものが小さなリングに姿を変えていたが。
その理由はヒカルがわかるはずもない。
まあ、今はピンキーリングが主体というのもあるので手にいれたものがそのように佐井九をしたのだが。
もっとも、その石をもっていたせいでその当事者はかなり大変な目にあってしまったが……
しかも、加工を頼んだ人がかなり便利性を追求したのか、小さな赤ん坊用のビンキーリング。
それと兼用でピアスにも使えるように加工がしてあったりする。
ゆえにぱっとみためちょこっとかわった形のペンダントトップが二つついているネックレス。
といった形に今はなっている。
『その石の一つを塔矢に渡してみてください』
???何で?
意味がわからず問いかけても佐為はにこにこと笑っているまま。
?
どうやらこの顔は何かいたずらを思いついたときの顔である。
しかしそれが何なのかはヒカルにはわからない。
今回は前のときのように意識の中に佐為がいる、というのではなくそばに佐為がいる。
というような感じなので佐為の内面までは深くわからないのが現状。
以前は自らの心の中にいたがゆえに内面まで知ろうとおもえばできたのだが。
しかし、わたすにしてもいきなり渡すというのは何だかおかしい。
そもそもネックレスをいきなり外したら怪訝がられるのは必然。
ゆえに。
「あ。とうや。悪いけどちょっと目をつむってくれる?」
「え?うん」
いきなりそういわれ、怪訝におもいながらもとりあえず言うことをきき目をつむる。
別につむったところで何か自分に不都合なことがあるわけでもない。
アキラが目をつむったのを確認し、ネックレスをはずして石を一つほど鎖から取り外す。
「手、だしてみて」
「?」
意味のわからないままに手を差し出す。
その手の中に小さな何かを置かれたような感覚。
ひんやりというか多少ぴりっとくるような、ヒカルが対局しているときの空気に近いような。
そんなピリッとした痛みが一瞬おそいくる。
「進藤?これって……」
静電気にもちかいその感覚。
ゆえにきになって何のきなしに目をあけ、そのまま目の前をみつめ……
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そのままの姿勢でおもわず硬直し絶句する。
先ほどまでは確かにいなかったのにものすっごい美人が…そこにいる。
しかも部屋の中、さらにいえばヒカルのすぐ間横に。
服装がかなりかわっていなくもないが、だけどもそれすらも気にならないほどの超絶美形。
……巫女?
一瞬アキラの思考に浮かんだのは巫女という言葉。
しかし、頭には時代錯誤というかなぜか鳥帽子をその人物はかぶっており……
声がでないとはまさにこういうことなのかもしれない。
アキラにはめずらしく目を見開いておもわず口をあんぐりとあけてしまう。
そして。
「…し…進藤?そこのきれいなひと…だれ?」
自分でも間のぬけた質問だとはおもう。
誰もだって部屋の中に入ってきた気配などはなかった。
目の前の人にも人、という気配は感じない。
だけどそこまで考える余裕は今のアキラにはない。
目を見開いて口をあんぐりあけつつも何とか声をしぼりだす。
ふと、手の中をみれば、そこにはヒカルがいつも身につけている【紅い石のお守り】のひとつが手の中におかれている。
アキラの母・明子がヒカルに何よりも必要なもの、といってはばからないそのお守りの一つ。
「って、塔矢!?」
いきなり態度が豹変したアキラの姿に逆に驚かざるをえないヒカル。
この反応は?まさか?!
まさか、佐為がいきなり視えてる!?
でも、何で!?
ヒカルとしても頭の中はいきなりのことでぱにっくである。
『あ♡成功なんですね♡こっちに戻れることになったとき、あるかたからきいたんですよ~♡
私の一部でもあった石を姿を視せたい人にほたしたら姿も視えるし話せるって♡』
いたずらが成功した子どものように目をきらきらさせて、わくわくした表情でさらっといってくる佐偽。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「って、お前!んなこと昨日、もどってきてから一度もいわなかっただろうがっ!!」
さらっと爆弾発言する佐為に思わずヒカルが叫ぶのは間違っていない。
絶対に。
『そうでしたっけ?』
「きいてない、きいてない、きいてなぃい~~!!!」
騒ぐのもヒカルの気持ち的にはわからなくもないが……
アキラからすれば何がおこっているのかは理解不能。
『まあまあ、ヒカル。おちついて』
「って、お前が原因だろうな!悠長に他人ごとのようにいうなっ!
さらっと重要なことを聞かされておちつけるかぁ!!」
ヒカルの言い分は至極もっとも。
『だって~。私も今、思い出しましたしぃ~…』
「……は~…おまえらしいよ……」
きっぱりとどこかこまったように断言されてはもはやこちらが折れるしかない。
がくっとヒカルの全身から力がぬけてゆく感覚。
だけどもこのやり取りが、佐為が本当にもどってきてるんだ。
と改めて実感させられるやりとりであることも事実である。
「……進藤?…もしかして…この綺麗な女の人が…あのsai?」
はっきりいって絵からぬけでた超絶美人。
とはこういう人をいうのかもしれない。
とにかくひたすらに美人、麗しい、という言葉がしっくりくる。
アキラの戸惑い気味な問いかけにおもわず目をぱちくりさせ、佐為ともども顔を見合わせ、
「塔矢。こいつ、男」
『?私、男ですが?』
ものの見事にヒカルと佐為の声が一致する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
「ええぇぇ~~~!!?」
どうみても超絶な美人にしかみえない。
声もさほど低くはない。
ゆえにアキラの叫びは誰しも納得するであろう。
どうみても佐為はぱっとみため、美女、としかとらえられないのだから。
『とりあえず。改めまして。あなたが私を視るのは初めてでしょうし。
わたくしは藤原佐為ともうします』
佐為からすればアキラもう昔ながらの知り合いなのだが。
それこそ付き合いというか知り合った期間はヒカルとほぼ同じである。
「……サイ?」
ではやはりこの目の前の美人さんが…あのsai?
あの棋力を…父との対局をしっているだけにどうみても人物像があわない。
ものすごいギャップである。
あまり相手が幽霊かもしれない、という認識をもっていても驚かないのは、
おそらく多少の気構えがあったことと、そして佐為が絶世の美人、ということもあるだろう。
おもわず誰でもぽ~と男でも女でも見とれてしまうほどの美貌である。
しかし、サイ、という名前はわかるが、フジワラノ?
何だか時代を感じさせる名前である。
『ねね!ヒカル!これで塔矢にも私の姿が視えますし!ヒカル!二面打ちやりましよ!ね!ね!
せっかくなんですし、二面打ち、私の手でやらせてくださいよ~!!』
アキラに自分の姿が目視できたことを確認したのち、ヒカルの腕をつかんで必至に懇願。
「…お前、塔矢の意見はどこだよ……」
はたからみれば何だか子供が駄々をこねているようにも視える光景、ではあるが。
相手は美形。
…かなりこれまたギャップを感じさせる光景といえば光景。
そんな光景にさらに目をぱちくりして唖然としたのち、はっと我にともどり、
「え…え~と?」
これが、sai?
あの?
女の人に視えたが実は男性で、しかも目の前で繰り広げられている光景は…
どっちが大人だか子供だかわからない、そんな光景。
下手に佐為が華麗であるがゆえにものすごくギャップもまた大きい。
ゆえにどうしても戸惑ってしまうのは仕方がない。
…幽霊という驚愕する事実すら通り過ごしてそちらのほうがはるかに驚きがおおきい。
「進藤?この人が…本当にあの父とうった…あのsai?」
あまりのギャップの激しさにどうしても確認せざるを得ない。
「あ。うん。昨日、いきなり戻ってきて。去年のこの五日にいきなり消えたくせに……」
『ヒカル!ヒカル!今度はわたしはでも自分で石をもてるんですよ!それこそもう千十数年ぶりにっ!』
「それ、昨日もさんざんきかされたってば」
おもわずそんな佐為に突っ込みをするヒカルはなれているらしく、アキラとちがってあまり驚いてはいないらしい。
『だって、私だってずっとまた、自分で石をもってうちたかったんですよ!?
今までは場所を示して指示をしてその場所に打ってもらう方法しかなかったんですしっ!』
「…だからって、お前。姿が視えない相手にそれしたら、絶対ひっくりかえるか気絶するぞ?まちがいなく。」
え~と…
二人のやり取りらしきものをきいていて、唖然とするアキラにも何だか話しがつかめてきた。
いつまでも驚いてばかりいては先にと進めない。
何よりも気になっていた答えが今、目の前にあればなおさらに。
「えっと。とりあえず。あらためまして。あなたにとってはたぶんはじめましてではないでしょうけど。
塔矢明です。進藤の…師匠…ですよね?」
ヒカルには師匠はいない。
そう、表向きには。
だがしかし…まちがいなく、彼と進藤光は…
それはアキラの確信。
「というか、この道にひっぱりこんだのが佐為だしな~」
『だって。私が取り憑いたときなんて、ヒカル囲碁のイの字もしらなかったじゃないですか~
とってもさみしかったんですよ~!!あのとき。せっかく百四十年ぶりに私の声が聞こえた人間なのにぃぃ!って。
また碁が打てる!とおもって喜んだのに、あなたときたら何もしらなかったんですものっ!』
「つ~か、絶対に波長があったとかだけだ、と俺はおもうんだけど?
そもそも何もしらないやつに碁をうってくださいい!というおまえの執念にはあきれたけど」
『ヒカル、ひどい……』
・・・・・・・・・漫才?
おもわずそんな二人のやり取りをききつつアキラがおもってしまったのは間違いであろうか?
まあ、世間的に実は幽霊に取り憑かれてその幽霊に頼まれて囲碁をはじめました。
さらにはその幽霊に師事しています、とはいえない。
絶対に。
しかし…百四十年?
しかも、また?
何だかつまりは進藤の前にも誰かに取り憑いていたようなその言い回し。
つまり、おそらく彼の前にも誰かいたわけで。
百四十年ほどまえに。
もしかしたら、もしかしなくてもそれは……
『虎次郎のときは、私をすぐに受け入れてくれましたのにぃ~って。さみしかったんですよ~!』
「おまえな~。そのとき、虎次郎のやつはもう囲碁やってたんだろ?
俺は爺ちゃんがやってるのみてたくらいで何もしんなかったんだからしょうがないだろ?
虎次郎。
それは本因坊秀策の幼名である。
アキラの中で疑念が確信へと変化する。
「サイ、さんはいつまでこちにらいられるのですか?」
とりあえず相手は幽霊、ということを念頭にいれつつも相手の美貌にそれすらわすれてといかける。
『さあ?』
アキラの質問に首をよこにかしげる佐為。
「さあって、お前!?」
そんな佐為の声に悲鳴に近い声をあげるヒカル。
ヒカルにとってもそれが不安な点でもあったのに。
考えないようにして、とにかく佐為といるこの時間だけを大切にしよう、とおもっていたのに。
『それが、私を現世に戻してくれた方がいるのですけど。期限をきちんといわれなかったのですよ。
あ、でもヒカルの行く末を見届けたい、といってましたら笑ってましたし……
どうなんでしょう?虎次郎の時のようにまた一人取り残されるのか、それとも?
それともその前に私も今度こそ完全成仏して逝くことになるのか、わからないのですよ。本当に』
そういう佐為の表情に嘘はない。
というか戻してくれた人、というのがかなり気になるが。
『あ、でもでも。もし今度自分が逝くことになったのがわかったら、きちんといいますよ?ヒカルに?』
「…お前、去年は大丈夫だからっていって俺を仕事にいかせたくせに、翌日消えたじゃないか…
俺がうとうとしてる間に…なにもいえずに……。そういわれてもだからあてにならない」
『まあ、それはそれでおいといて』
「って、おいとくなぁ~!!」
「・・・・・・くすっ」
そんな二人のやりとりを視ていておもわずくすりと笑みがこぼれ出す。
何だかいいコンビ?
はじめは驚いたが、何やらのりつっこみのようでみていておもしろい。
というか相手はかなり淡麗な容姿をしてはいるが幽霊、という感覚はまったくない。
むしろそこいらにいる人間よりも人間らしい、といったほうがはるかによい。
喜怒哀楽がしっかりとすぐさまに表情に表れているのが視てとれる。
というかどこかいつもの進藤と自分の喧嘩を彷彿させるのは気のせいか。
まあ、突っ込み役とつっこまれ役が逆転しているのを別として。
『ね?ね!?塔矢も私とうってみませんか!?
ひさ~しぶりに多面打ちしてみたいんですっ!昔はよく都でしてましたけど。
ヒカルとやったときは自分で石をもてずに指示しただけですし……』
都?
何やら目をきらきらさせてすがるように、いわれてはうん、としかいえないのではないか?
というか断るほうが罪悪感にかられてしまう。
絶対に。
アキラがそんな思いにかられていると、
「何か強引さはあいかわらず、というか……。まあ、と、いうわけらしいけど。塔矢、どうする?」
何が、というわけなの!?
という突っ込みをいいたいのは山々。
しかもまだきちんと説明をうけていないっ!
と叫びたいのも本音である。
しかし、しかし…である。
…父にかったあのsaiと打てる……それはたしかに魅力で……
「部屋から、碁盤、もってくる」
好奇心よりも打ちたい要求のほうがはるかに強い。
説明はいつでもきける。
が、こういった機会はなかなかないかもしれない。
ならば、優先すべきは今、この打てる機会をのがさないこと!
アキラとて、棋士。
より強いものと打てる機会を逃したくは…ない。
『わ~い♡』
「…も、好きにしてくれ。あ、塔矢。その石、おとすなよ!?」
半ば、こうなればあきらめの境地である。
「くすっ。これが下手に他人の手にわたったらどんな大変なことになるのか。
それは母からもよぉく聞かされているからそんなヘマはしないよ」
ヒカルが身につけてこそ価値のあるもの。
下手に第三者が持てば石の【力】にまけてさまざまな現象が引き起こされてしまう。
ヒカルは知らないが、アキラはヒカルが入院中のとき母、明子よりこの石のもつ力について簡単に説明をうけている――
五月五日。
木曜日。
「だけと。今日の大将戦。お客さんは大ブーイングだろうなぁ」
「その上、塔矢君までまけたら何をいわれるか」
対局場の前にたちながらもそんな会話をしている古瀬村達。
「倉田さんは非難されるでしょうね。あ、日本チーム、きましたよ」
ふとみればたしかにニホンチームが歩いてきているのが見て取れる。
「…と、いうか、お前ら、大丈夫か?」
しかも塔矢と進藤。
二人してアクビをかみころしているのだからあきれずにはいられない。
聞けば何でも気づいたら明け方近くまでついつい打ちあっていたらしい。
まあ気合の表れ、ととれなくもないが……
「つい、ムキになっちゃって……」
「俺も……」
倉田達は塔矢と進藤が打ちあっていた、としか思えないが。
真実は違う。
というか二面打ちにもかかわらず、全力で挑んでもさくっと二人して佐為に負け続けたのは一度や二度ではない。
しかも佐為は二人の実力を引き出す打ち方をして棋譜を作り上げているのだから、その実力はおしてしるべし。
ついイジになり、また熱中して何局もうっていると気づけばいつの間にか外は明るくなっていた……
しかし、二面うちをしながらも、二人に気をつけるべきところはきちっと終局後に伝えているのが佐為らしい。
アキラからすればとありえず石はすでにヒカルにかえしたので今は佐為の姿を確認することはできないのだが……
「まあ、気合をいれようと対局していたその根性はみとめるがな。社はねられたのか?」
倉田からしても気持ちはわかるのであまり怒るわけにもいかない。
が、寝不足で力がだしきれませんでした~ということになってもかなりこまる。
「あ、はぁ」
いきなり話しをふられてとりあえずうなづく社。
というかやはりフカフカベットは社も二日目とはいえ落ち付かずあまり寝ていないのだが。
「気持ちはわかるが。おまえら、対局中はしっかりしてくれよ?っていうまでもないか」
この二人の集中力は驚愕に値する。
そのことを倉田はよくしっている。
「お、おはようございます」
あるいてゆく先にかかりである渡辺の姿をみつけて声をかける倉田の姿。
「おはようございます。倉田さん」
「はい。渡辺さん、これ。メンバー表」
いいつつも渡辺に本日のメンバー表を手渡す倉田。
その様子をみて何ともいえない顔をして顔をみあわせずにはいられない古瀬村達。
対局前にメンバー表を渡すことにより、不正を防ぐ。
これは公式団体戦のルール、でもある。
「どうも。…え?」
倉田から手渡されたそれをひらき、その場で固まる渡辺の姿。
「え~!?た、大将進藤君!?」
「そ、団長のオレが決めたの。文句ないよね?」
「し、しかし!」
客は塔矢Jrと高永夏の対局を楽しみにしているのに、これでは……
「ち、ちょっとまった!く、倉田さん!これは…」
書かれている内容に驚愕しあわてて確認しようとするものの、
「まった。はないでしょ。渡辺先生。ほら、彼にわたして!」
すでにもう大会進行役のものはそばにきている。
「ま、いろいろいわれるのはしゃ~ないやろな」
それをみつつぽそっとつぶやいている社。
「し、しかし…っ!」
「はいはい、よろしくね~」
戸惑う渡辺をさくっとかわし、大会の関係者にそれを手渡すようにと促す倉田。
そんな中。
「おはようございます」
いいつつも韓国メンバーが集まってくる。
そのまま団長の安太善が、
「これ、対戦表です」
いいつつも自分たちのメンバー表をいまだにあわてている渡辺にと手渡してくる。
「お、安太善、きたな」
「あは…はぃ」
倉田といいあっている暇はどうやらなさそうである。
ゆえにまだ言いたいことはあるがしかたなく彼からメンバー表をうけとる渡辺。
二カ国のメンバー表を受け取り、それを元にして対局場のネームプレートなどを用意する係りのものたち。
「…永夏……」
ふとなにげにテーブルにと目がいった。
名前プレートがおかれているそこに。
「?どうした?」
一点をみて何やら立ち止まった秀英に違和感を感じてそちらに視線をむける永夏であるが。
「大将戦のテーブルに進藤の名前が!」
ゆえにこそ驚かずにはいられない。
「…進藤?」
…みれば、たしかに高永夏の横には、進藤光、のネームプレートが……
「おはようございます」
「おはようございます。パンフレットをどうぞ」
来場してくる人に一人一人声をかける。
そうしてパンフレットを手渡すのが彼女の仕事。
「しかし、昨日の一戦はさすがだねぇ。昨日の見事なかちっぷりはさすが若先生!
それなのに広瀬さんたらねちまうんだから、ひでぇよ」
たしかに昨日、対局中に眠くなってねてはいたが。
「いやぁ、申し訳ない。でも、北島さん、進藤君も圧勝でしたよ?」
それこそもう20目以上の差をつけて。
「けっ。相手が弱かったんだよ。若先生のほうがすごいね」
「北島さん、それってひがみ……」
まあ、どちらにしてもヒカルのことはあまり取り上げられることなく、
メディアとしても塔矢行洋の息子が華々しく国際デビュー!
といった形でとりあげたのでヒカルと社の扱いは微々たるもの。
つまり世間的には彼らなどどうでもいい、というわけで……
「どうぞ」
そんな会話をしつつ会場に入ろうとする二組の男性にとパンフレットを手渡そうとする相川であるが、
「あ、もう昨日もらいましたから」
いってことわり中にと入る。
そして。
「今日はちゃんとおきてなよ!」
と念をいれるのを忘れずにそのまま北島と広瀬の姿。
「あれ?何だ、きたの。私が誘ったときにはいかないっていってたのに」
そもそも囲碁なんて興味ないからいかない。
と断られたのはつい先日。
「ああ。いやね。今朝の新聞をみてさ。塔矢行洋先生の息子の塔矢明が中国の大将を破った。
って知ったら、俄然今日の大局がみたくなってね。ハハ!」
人、というものはどうしても肩書きに踊らされる。
そのようにみられる当人の気持ちなどこれっぽっちも気にすることなどなく。
「おはようございます。どうぞ」
いって手渡される北斗杯のパンフレット。
「何とかって副将もかって昨日は中国に勝ったらしいけど。
やっぱり期待は塔矢明だよね。あの塔矢行洋の息子だし」
他のものはべつにどうでもいい、というのがかなり本音。
「なあ、今日、日本がかったら優勝は日本、だけど。韓国がかったら韓国が優勝?
もし昨日中国がかって全部が一勝一敗だったとしたらどうなってたんだ?」
それはちょっとした素朴な疑問。
「さあ?」
そんな彼らの会話を聞いてふと足をとめ、
「その場合ですと、三カ国とも一勝一敗の引き分け。賞金総額をなかよく三等分となる予定でした」
お客さん第一。
それゆえに声をかけて説明する主催者側の戸刈の姿。
「ああ、そうなんですか」
まったく知らない人から説明され怪訝におもいつつもひとまずお礼をいっておく。
「しかし、どちらにしても日本は優勝か二位、くうっ!何としてもここまできたら優勝してほしいねぇ」
彼らには説明してきた人物がこの大会の主催者だと知る由もない。
パンフレットにきちんと目をとおしていればのってはいるがそこまでいちいちみる客はまずいない。
「おいおい。韓国にかったら。だろ?塔矢明以外勝てるとはおもわないな。
昨日の副将の子は相手が弱かったから何とかかてたんだよ」
囲碁を知らないものからすれば圧倒的すぎてそうみえても不思議ではない。
「そうか?昨日の副将戦は相手が弱いところか副将の子がつよいんだって解説の人はいってたぜ?
三将の子は負けましたがおしかったっていってましたし、ねぇ?」
とりあえず背後の男性は詳しそうなので同意を求めるその男性。
「ええ。解説のプロの話ではそうらしいです」
「どんなにおしくても負けは負け。それにたぶん、昨日の副将の相手の子は調子わるかったんだよ。
まぐれさ、まぐれ。塔矢明ほどの子どもがほかにいるもんか。何しろあの塔矢行洋の息子だぜ?」
そういいつつも、
「しかし、その塔矢明も韓国の高永夏って相手には完敗するかもだし。優勝はむりだろ」
さんざん持ち上げておいてこけおろす。
彼の性格をしってはいる。
いるが…
「お前って嫌なやつだな~……」
おもわずいわずにはおられないのは長い付き合いだからこそ、だろう。
もちあげては相手をこけおろすのは彼の性格。
この意地の悪さは昔も今もかわっていない。
「ともかく。日本の選手には頑張ってほしいですね。代表三人の下には選手に選ばれなかった若い棋士たちがいます。
日本チームがよい結果をだせばその若い棋士たちも奮い立つでしょう」
そう。
納得がいかないから、と追加戦を申し込んだ、あの越智、という子供のように。
彼らにそんなことをいっていると。
「あ!室長!こんなところにいたんですか!主催者が特定チームの応援なんかしちゃだめですよっ!」
主催者?
それでようやくその人物がこの大会の主催者側の人物だ、と男たちは知るのだが。
だけども別にそれがどうした、というのだろう。
別にさんざん嫌味をいった人物も自分が謝るようなことをいった、とおもってないのだからなおさらに。
「相川君」
呼ばれてふりむけばそこには会場案内役をまかせていた相川の姿が目にとまる。
「別に私は応援をしちゃいけない、といってるわけじゃありません!ただ……」
「?相川君?」
彼女がこのような反応をするのは珍しい。
それゆえに少し興味を持ってといかける。
「応援するのならば日本チームだけでなく、中国や韓国だって応援をしなくちゃいけない、といってるんです!
私は中国だって応援してますし!チャオ・シィ君、もうかわいいしっ!!文句なし!
今日の観戦は日本だけじゃなく韓国も応援していますよ!
コ・ヨンハ、もうアイドル並みにかっこいいし背たかいしあれで十六なんてしんじられないしっ!」
「・・・・・・・・・・・」
やっぱり相川君は相川君だ。
しかし、どこか応援の基準が間違っていないか?
おもわずそんなことをおもい無言になってしまうのは仕方がない。
「でも、日本チームに頑張ってほしい、なんていうなんて。室長、かわられましたね」
どこがかっても関係ない、といっていたのに。
ただ話題になればいい、としかいってなかったというのに。
「いや、君こそ……」
それがたとえミーハー根性だとしてもここまできちんと仕事をこなすとはおもっていなかったのも事実である。
まあ、そのがんばる方向性が間違っているような気がしなくもないが……
彼らがそんな会話をしている最中。
「お。選手のメンバー表が出たようだな」
クリップボードに示される本日の対局のメンバー表。
ふと、係りのものが名前をそこにととりつけてゆくのをみつつ、
「ん?あんた、まちがえてるよ。そこ」
大将のところにみたことのない名前があるので注意を促す。
が。
「いえ。これであってるんです」
「まさか!大将は塔矢明でしょ?」
あっている、といわれてもよくしらない名前の人物が大将だ、といわれても信じられない。
というかありえない。
そもそも、この進藤光という人物ってだれ?
状態。
「それが……これであってるんです。本当に」
「ええ!?この進藤ってのが大将!?塔矢明が副将だって!?」
全員の名前を貼り終えたのをみて思わず叫ぶ客の姿。
ざわざわざわ。
名前が貼り出されたのをうけて人々がそれをめにし一気にざわめきはひろがってゆく。
「何だって!?」
「塔矢Jrが!?」
「ええ!?」
「え、嘘だろ!?」
「どうした?」
「塔矢Jr、副将!?」
「本当か!?」
「なぜ!?」
「一番強いのが塔矢明なんじゃあ?進藤ってこは何の実績もないらしいし。たしかまだ初段のはずだし」
素人考えではどうしてもそう判断してしまう。
ざわざわざわ。
何やら会場が騒がしい。
「おいおい、何さわいでるんだ?」
大盤解説場から騒がしいので少しばかり外にとでてみた。
「北島さん」
そんな北島に何といっていいものかわからずに戸惑いの声をあげている広瀬の姿。
「おいおい!コ・ヨンハと塔矢jrの一戦みられないのかい!?」
「そりゃないよ!塔矢元名人の息子との対局を楽しみにきたのにっ!」
客たちからそんな声が巻き起こる。
それをききつつ、彼らは塔矢明、という人物を父親の子どもとしてしかみていない。
それがわかり…何だか多少むなしくなってしまう戸刈。
偉大な父親はたしかに尊敬にあたいする。
が、ずっと個人ががんばっても父親の影はつきまとう。
あいつは二世だから…と。
だからかれは父親のあとをつがずに実力で別の会社にはいり上位の位置までのぼりつめた。
「どうかしましたか?」
「塔矢明が副将なんですよっ!」
この場にきているほとんどの客は、塔矢明を一人の棋士、ではなく塔矢行洋の息子。
としてしかみていない。
つまりはそういうこと。
実力があり海外でもそしていく度も新聞やテレビなどで取り上げられていた人物の息子ならば、
一度くらいはみても損はない。
そんな認識。
それゆえに父親とおなじ期待をかける。
期待にかなっても、父親にはやっぱりかなわない、と。
そして期待にそえなかったら、父親はあれほどすごいのに…と。
つまりどちらにころんでも父親の影は付きまとう。
名前すら聞いたことがない子供なんかどうでもいいのが本音。
「な!?どういうことだ!?」
「コ・ヨンハには勝てそうにないからって逃げたのか!?塔矢Jr」
ぷちっ。
一人の客のその叫びに、
「何だと!おい!若先生が逃げただと!!」
「き、北島さんっ!」
その客にくってかかる北島を何とか止めるのに必至の広瀬。
ざわざわざわ。
しばし対局メンバーが貼り出されたクリップボードの前においてはざわめきがどんどん広がってゆく。
「?何だろ?ざわついてるな」
会場についてみれば何やら会場が騒がしい。
それゆえに首をかしげてつぶやく和谷。
「何かあったの?」
伊角も何があったのかわからない。
「何かあそこをみてさわいでいるようだね」
「越智」
みれば背後にはいつのまにか越智までもがやってきているのが見て取れる。
そのまま彼らもまた気になるのでそちらのほうにとあるいてゆく。
「?どうかしたんでしょうか?尹さん?」
「柳さん。さあ?私にも……」
会場にはいると何やら騒がしい。
尹とて海王中学の囲碁部の顧問。
柳のほうは秀英のおじ。
それゆえに二人して観戦にきたのであるが……
しかも、彼らは韓国出身。
自国の大会が気になるのはあたりまえ。
「伊角さん!あれっ!!」
「なっ!?大将…進藤!?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
クリップボードの名前をみて思わず叫ぶ和谷と伊角。
それをみて絶句している越智と、
「これ、きめたの倉田さん、だよな?」
確認をこめて誰にともなくつぶやいている本田。
彼らとて北斗杯の予選から洩れたとはいえ結果はきになっている。
ゆえにこそこうして観戦にきているのだから。
「な!?塔矢君が副将!?進藤君が大将!?いや、しかし…!?」
それをみて思わず叫んでいる尹。
尹とて二人の実力は知っているつもりである。
何しろ進藤光に関しては彼がまずさきに目をつけたといっても過言でない。
小学生ながらに美しい局面をつくりだした、あの棋力。
どこまで強いのか見極めたかったのも事実。
たしかに実力的な面、だけからみれば進藤光がおそらく塔矢明よりは上、なのかもしれない。
そう認識はしている。
たとえ誰にもいわないにしても。
いるが、まさか……
「か、河合さんっ!」
「おお!?いや!こりゃいいやっ!!」
昨日は休めなかったが今日はどうにか休みをもらった。
それゆえに碁会所仲間とともに観戦しにきた。
彼らが目にしたのは、進藤光が大将に選ばれている、という案内盤。
彼らからすればヒカルは院生時代からよく顔をだしているので半ば後援会状態ともいえる。
ヒカルがよくアキラをつれて石心につれてきたときも、だいたいヒカルが勝っていたことを彼らは知っている。
だが、知名度的にはどうしても劣る。
そんな彼を大将にもってくるなどありえない。
と大人の感覚ではおもっていたが、まさか…
ゆえに別の意味で喜ばずにはいられない。
「つ…筒井!あれみろ!オーダー!!」
「え?」
最終日ということもあり友達をさそって観戦にきた。
いわれてそちらに視線をむければ、日本チームの大将のところに進藤光、の名前が。
「お前の後輩!すげえな!」
友達を誘うときに、後輩が日本チームの代表にえらばれたからみにいきたい。
そういってきたのは事実。
しかし、まさか大将とは…
いわれて筒井も絶句せざるを得ない。
「進藤君が…日本ちーむの…大将!?」
小学生のころの彼はしっている。
そして中学。
そして院生となりプロになったのも。
しかし、まさか大将に抜擢されるほどとは……
何だか遠い存在になってしまったような、そんなさみしい感覚。
と。
「アカリ!すごいよ!アカリの彼氏っ!」
「久美子っ!!」
「あ、朱里、まっか~」
何やらきゃいきゃいとした声が聞こえてくる。
ふとふりむけば女の子ばかりのメンバーが何やらきゃいきゃいと騒いでいる。
場違いのような気もしなくもないが、しかしその中の数名は…
「ヒカルが…日本チームの…大将?」
何だかどんどんヒカルが遠くにいってしまうよう……
私の好きなヒカルは?
あの幼馴染のヒカルは?
取り残されてゆく、さみしい感覚。
確かに隣に住んでいるのに。
「あ、進藤の彼女だ」
そんな場違いな女の子たちの声をききつけて振り向いた和谷がアカリの姿をみつけておもわずつぶやく。
「ええ!?し、進藤に彼女いたの!?く、屈辱…っ!」
越智がそれをきき本気で何やらうなっているが。
「お~い。藤崎さ~ん」
とりあえず、気づいたゆえに声をかける。
「あ。えっと。たしか、ヒカルの友達の。和谷君、それに伊角さん、でしたよね。こんにちわ」
ヒカルと一緒にいるのを幾度かみているのでアカリは知っている。
ゆえにぺこりと頭をさげているアカリの姿。
「君もきたの?」
「そりゃ、アカリの彼の初舞台は一度はみにこなきゃね~!」
「もう!ヒカルとはそんなんじゃないってばぁぁ!」
真赤になって怒鳴っても説得力は皆無である。
「よくいうわ~。でなきゃ毎日のように学校おわるまで外で待っててくれる人なんていないわよ~」
「もうっ!久美子!亜紀!!」
まあ、事実大体アカリが学校がおわるころに、ヒカルは常に学校外で待機している状態ではあるが。
…地方対局などのときはむりとして。
正確にいえば、時間があればアカリがつくった囲碁同窓会に顔をだしては指導碁をうち、
そのまま一緒にかえることもしばしば、である。
ゆえにアカリの高校でももはやヒカルとアカリは公認状態になっているのであるが……
まあ、名前を呼び合う二人をみれば普通は付き合っていると思う。
絶対に。
「あら?何かさわがしいけど?」
ふとそんな何か違う騒ぎをしているアカリたちの背後から聞きなれている声が聞こえてくる。
「あ、おばさん」
「あ、進藤のお母さん」
みればそこには進藤美津子と進藤平八の姿が。
どうやら彼らも今日も観戦にきたようである。
しばし、何ともいえない騒ぎが会場内部を埋め尽くしてゆく……
-第77話へー
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あとがきもどき:
薫:何だか、ふと転生バージョンの佐為ちゃん話しが頭からはなれなくなってきてる(汗
(かなりまて)
原作設定のままではあるけど、あのあとすぐに佐為ちゃんが記憶もったまま転生してる、
という現状話さんが頭からはなれない~(だからまてってば
というわけで、今回はその抜粋小話をばv
(少し違うのは森下との対局が本因坊戦予選でなく名人戦予選にかえてますv)
(本因坊予選は森下との対局で力つけたヒカルは初期からシード入りはたしてたりv)
↓
夢を通じて、夢枕にとたち、ヒカルに扇を渡して未来にと紡いだ。
何と声をかけていいのかもわからなかった。
彼の悲しみが痛いほどにわかるから。
ごめんね。
ひかる。
虎次郎は私を残して逝ってしまったけど、私があなたをおいて逝くなどとは私も夢にもおもっていませんでした。
ですけど、あなたは強い。
私のすべてはあなたに託したつもりです。
だからあなたに心配をかけないようにずっと微笑んで、あなたの話をきいていました。
後悔はない、といえばウソになる。
けど、彼と…ヒカルとこの先一緒にあゆめない。
その悲しみのほうがはるかにつよい。
このまま私の意識は消えてしまうのか?
そんなことをおもっているとゆっくりと意識が浮上してくる。
ぱちっ。
……?
目にはいったのは真白な天井。
かつて陰陽師殿からきいた冥界とはこのようなものなのでしょうか?
だけども、次に視界にとびこんできたのは……
「はじめまして」
見覚えのある懐かしいその笑顔。
はは…上?
「ふ…ふぎゃぁぁぁぁぁ!」
声とは別になぜか何ともいえない声が自分の口らしきものからあふれ出る。
「まあまあ、かわいらしい男の子だこと」
「おめでとうございます。藤原さん」
「はい、ぼく、ままですよ~。お母さんに対面、ね?」
ひょいっとかるがると自分自身が抱きかかえられ…
!?
何が何だかわからない。
というか体がいままでとは違い重く感じる。
自由になっていたはずの手足も動かない。
唯一動く視線をさまよわせてみれば…ガラスにうつったたしか看護師とかヒカルがいっていた姿の人たちと。
そして横たわる母上そっくりな人。
もう母上の面影すら忘れかけていたというのに、ヒカルとともにいて家族のこと、一緒にいきていたあの人々を思い出した。
そして、その看護師に抱かれているのは…まさか…わ、わたし?!
「あ、藤原さん、お名前きめてたらお名前をプレートにかきますけど」
「ええ。もう主人と決めてあったんです。この子の名前は……」
藤原佐為。
フジワラノ、ではなくフジワラ。
…いったい、何が?
何が何だかわからない。
…神よ。
私はこんどはいったいどうなってしまったのですか?
何となくだが母上そっくりな人は今の私の母君でもあるらしい。
それはわかった。
父君はそばにいない。
まあ、昔もそうだったけど。
何がおこったのかわからないが、どうやら私は赤ん坊として生まれてきてしまったらしい。
ふとかつての陰陽師のいっていた輪廻転生の言葉が頭をよぎる。
が、あれからいったい年月はいくらたったのだろう?
ヒカルは?
それがどうしても気がかり。
そんな中、だった。
母上・優衣殿がつけっぱなしにしていたテレビから、ニュースが流れたのは。
【史上初の最年少タイトルホルダー、ですか。すごいですね】
どうやら子供の教育にいいから、とつけっぱなしていたヒカルがよくみせてくれていた、NHKというテレビ番組。
その中でニュースが流れている。
【ええ。この進藤光君は同い年の塔矢明君、あの塔矢行洋元名人の息子さんのお友達らしいですよ?】
【それはそれは。ではここで敗れた桑原元本因坊先生のインタビューを……】
あのものは……
以前、一度、すれちがったことがある。
現代の本因坊といわれるという…?
【ひょひよ!まあ、あやつに敗れたのであればワシも悔いはないわ!
わしのあやつを院生時代にみたときのシックスセンスが間違っていなかったというわけじゃろ?
あん?引退?そんなものはしやせんよ。何せ今の囲碁界は若者が面白いからのぉ。ほっほっほっ!
行洋のやつは引退して世界をとびまわっとるがわしはそんな体力ないしの。
来年、また本因坊戦であやつと戦う気満々じゃわいっ!】
・・・え~と?
つまり…もしかしたら、それって…
【では、新たな本因坊となりました、進藤光君のインタビューをどうぞ】
【僕はまだまだです。なので本因坊、というのはふさわしくない、とおもっています。
ですがこのタイトルだけはどうしても、とりたかったのです。
とても、とても…お世話になった人のために…遠くからでもみてもらいたくて……】
テレビにうつるのは…あれは…ヒカル?!
おもわずテレビにくぎづけになってしまう。
私はまだ一歳になるかならないかの年齢。
ゆえにまだ自由はあまりきかない。
【海外、とかですか?遠くにいる、とは?】
【いえ、もうこの世にいない…とても、とても大切な人です…その人にみてもらいたくて頑張っています。
いつか、その人にがんばりましたね。といってもらえるように、悔いのないように】
「こら!佐為ちゃん!そんなにテレビに近づいたらだめ、でしょ?」
「あ~!あ~!」
ちょっと、母上!私はまだテレビをみていたいのにっ!
「もう、この子ったら、NHKの囲碁講座なんてものつけてたらおとなしいからいいけど」
いいつつも母上は何やら作業中。
何でもナイショク?とかいうもので家計を助けているらしい。
回りの会話をきいていてわかったのは、私の父親はすでに海外で死亡しているらしい。
ボランティア医師団というのに参加していて内戦に巻き込まれて命をおとしたとか。
どんなにすばらしい人だったのよ。
と母上が話してくれてもよくわからない、というのが心情で…
それより、…あれは…ヒカル?
ヒカル。だ。
別れたとき、ヒカルはまだ十五になる前、だった。
だってヒカルの誕生日は九月。
そして私が消えたのは五月の五日。
【十七歳のタイトルホルダー、ですか。囲碁界もほんと若返ってきましたね】
【しかし、新本因坊となった進藤先生の大切な人、きになりますねぇ?】
【ええ。進藤本因坊には師匠はいませんし。もしかしたら身近なお友達かだれか、なのかもしれませんね】
十七?
つまりあれから二年?
…ヒカルがよく西暦○年とかおしえてくれたけど、もう少しおぼえておけばよかったかも……
今さら後悔しても、しかたない。
だけども、わかった。
ヒカルが…ヒカルが私のことをいっている。
と。
そういうヒカルの表情は、とてもさみしそうで、切なくて…
ヒカル…私はあなたにそんな悲しい思いをまだ、させているのですか?
ですけど、ヒカルが本因坊となった。
それはとてもうれしいことです。
どうにかしてヒカルにお祝いを届けることは、できないのでしょうか……?
「ヒカル、何か手紙がきてたわよ?」
「手紙?」
「あなたのファンの子じゃないの?かわいらしい手紙よ?」
というか、住所も何も公開していないのに、自宅にとどくなどありえないはずなのに。
怪訝におもいながら、母からの季節はずれの年賀はがきを一枚、ヒカルは受け取ってゆく…
それが始まり。
すべての。
運命の輪がしずかに再びまわりはじめた、その序章。
とにかく、今回は以前と違い、行洋殿がいっていたとおり、私には肉体があります。
まだ完全に自分の自由に・・とまではなぜかいきませんが。
そういえば、かつて私が幼いころもそうでしたねぇ。
そんなことを記憶の隅にと思いだす。
母上には心配をかけたくはない。
なので普段は普通の子として過ごしてはいるけども。
だって、ヒカルもいってたけど驚くでしょう?
自分の子どもが幽霊に取付かれ…もとい、元、幽霊でその記憶もってますよ?
などと知れば。
しかも今の母上はかつての私の母上と瓜二つ。
だからこそ、心配をかけたくない、というのもあります。
母上は身分がひくいがゆえに苦労をし、そして表にでることなくひっそりと息を引き取りましたから…
それでも、ヒカルとともに暮らした三年あまりの記憶は伊達ではありません。
私だって現代の言葉や、簡単な常識はもっています。
最もこれからいろいろと覚えていくつもりではありますが。
現世によみがえった理由が何であれ。
私は絶対にヒカルに…きちんと伝えなければならないことがあります。
私はあのとき、ヒカルたちとともによりたかい神の一手に続く道を願わくば…
と願いました。
もしかしたら神がまた私のわがままをきいてくれたのでしょうか?
それはわかりません。
ようやくたどたどしいながら、言葉はまだ完全でないにしろ文字くらいはかけ始めています。
…以前の私の字とは雲泥の差、ではありますが、これもまあ日々鍛練、です。
ヒカルの住所はいく度もヒカルの家にきた手紙というものをみているので知っています。
あまっていた年賀はがき。
それにとにかく何かを伝えたくて…筆をとりました。
ヒカル…あなたは、きづいてくれますか?
この意味を…?
「・・・・・・・・・・・・・・・・これは・・・・・・・・・・・・・」
季節はずれの年賀はがき。
文字はかわいらしいおそらく小さな子供であろう。
がんばって漢字をかいた感が否めない。
だけども…それ以上に、その裏にかかれているのは……
「・・・・・・・・・・・・・・さ・・・・・・・・い?」
うちかけの一局。
ヒカルと佐為しか知るはずのない。
その続きの一手が、示された…棋譜が、ひとつと、ただいま、のもじ・・・・
ガタっ!
「お母さん、ちょっと出かけてくる!」
「あ、ちょっと!ひかる!…もうっ!あ、何かしら?これ?…就任披露式典に対する、親御さん参加のお願い。
…って、何これ!?ちょと、ヒカル、ひかる!!ああもうっ!」
手紙をわたすなりそのまま外にとまたまた飛び出していった息子。
ゆえにこそ進藤光の母、美津子は叫ばずにはいられない。
そもそも、息子がタイトルホルダーになりすごいですね!
といわれている現状ならば、なおさらに。
よくよく考えてみれば私は自分の住んでいる住所をはっきりいって知りません。
仕方ないですよね。
ヒカルの家のときとちがってうちにはほとんど手紙などというものはきません。
それでも、気持ち程度あった年賀ハガキというものをみつけてそのとおりにかきました。
ヒカル、きづいてくれますか?
私が…私が、再びこの世にもどってきている。
というこの事実を?
ねえ。
ヒカル?
私は、あなたに伝えたいのですよ。
あなたとともにいた時間はとてもたのしかったですよ。
そして…これからはともに神の一手を目指していきましょう。
…と。
↑
以上v
でも、佐為の文字があまりにつたなくて、ヒカルの住所はさんざんみて頭に暗記されていたがゆえ、
そのとーりにかけましたけど佐為自身の住んでいる住所が佐為からすれば不明で。
ゆえに家にあった年賀はがきのをみながら自分の住所らしきものをかいてもまともにかけず(ま、幼児だし
ヒカル、そのハガキの住所にいきたくてもいけなくて(ぐしゃぐしゃすぎてよめなかった)、ものすごくあせってたり(笑
何せ、あの五月五日のあの一局は、ヒカルと佐為しかしらない一局ですからね。
佐為は気づいてほしくてその棋譜をかいて、その続きの一手をかいて送ったわけです(まて
ちなみに、佐為の母親の優衣は息子のそんな様子が不自然、とはおもってません。
何せ初めての子育て&彼女には身内がいないので相談できるひともいないという設定です。
ヒカルならばおそらく塔矢には自分のことを話したはず。
というか彼の性格からして塔矢のみには話してるかも。
ならあの手紙のことをいっているかも。
とおもってかつてヒカルが興味をもって調べた塔矢家に電話をかけて、
でもしょせんは子供なのできちんと言葉はいえないですけど(笑
母親気づいて大慌て~、いたずらしたとおもってあやまりたおしv
でも、子供の名前をきいた明子夫人が優衣さんの話をきいて子育て相談にのることになってたりv
そののち、優衣の現状をしってならうちにぜひに住み込み家政婦いかがです?
と話しをもちかけて、佐為とつながってゆく、という設定さんのお話ですv
ちなみに、十七としてますけど、その年にヒカルは十八になりますがね(笑
本因坊戦の七番勝負って何月にあるんだろう?はて?
何はともあれではまた次回にてv
ちなみに、この佐為ちゃん、生前のまま容姿はそっくりそのままvです(笑
2008年9月29日(月)某日
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