まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さてさて、今回、あるいみギャグ系さんv
次回でさらっと爆弾発言佐為ちゃんにゆくよていv
あ、最後の小話は前回につづいてギャグ系かもしれません(笑
何はともあれゆくのですv
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『…いいなぁ…おそば……』
は~……
うらやましそうにのぞきこまれては食欲どころではない。
というか、こいつ、ほんとかわんないよなぁ。
そうはおもえど憎めない。
かといって周囲には倉田も塔矢も社もいる。
しかも他の客や従業員すらも。
おおがかりなことはできない。
が、佐為を助けようとしてめぐりめぐっていた霊場めぐりで身についた力がある。
ゆえに、静かに目を閉じて、しばらくじっと自分の前に運ばれてきたそばにと意識をむける。
手をふれなくても、霊力の反応にあわせて物質と霊体を分けることは可能ということがわかった。
もっともそれはかなり力を消費してかなり疲れるが。
だけども今はそんなことはどうでもいい。
とにかく佐為にはいつも笑っていてほしいから。
ほら、佐為。
わかれてるの、みえるだろ?
とっとたべられるか?
『わ~~い!おそば、おそば、いっただきま~す♡』
「あ」
おまえ、箸…
箸を持たずにどうやって食べる気だ?
とヒカルがおもったその直後、なぜかぱっと佐為の手元に箸が一膳出現する。
?
佐為?お前、その箸…どうしたんだ?
『え?そういえば、でもおはしなければたべられませんよ?ヒカル?』
いや、それはそうなんだけど。
今、佐為の手にぱっと出現したように視えたんだけど……
『そういや、私どうやって箸、つかんだんでしょう?はて?』
「・・・・・・・・・・・・」
どうやら佐為にもよくわかっていないらしい。
「?進藤?」
いきなり目をつむったかとおもえば、少しばかり後ろをむいたとおもえば、さらに次は唖然とした表情になる。
「うん?どうした?進藤?ソバきらいか?」
「あ、いえ。たべます。いただきます」
きらいか、といいつつもひとの食べ物に手を伸ばしてきてほしくはない。
そもそも、これを他人がたべたらおかしいとまず気付かれる。
そもそも【中身】が入っていない状態なのだから。
ヒカルの横でおいしそうにちょこん、と正座してそばを食べている佐為をみれば、
ま、いっか。
という気持ちになってしまう。
そんなことをおもいつつも、ヒカルもまた昼食を食べることに――
星の道しるべ ~北斗杯開催中!~
「……ったく、倉田さん。何を考えてるんだ?」
ぐだっと椅子に体を預け口にださずにはいられない。
「そりゃあ、進藤君も強いけど。けど塔矢君は中国の陸力を破ったんだよ?」
そんな悪態をついているが、古瀬村はヒカルの実績をほとんど知らない。
「古瀬村さん、し~!!」
こんなホテルの中にとある喫茶店というか食道で話すことではない。
そもそも、ひとに聞かれればかなりマズイ話である。
情報は、どこからもれるかわからない。
それがもし、棋院関係者の口からもれた、となればかなり厄介極まりない。
どうもこの古瀬村という記者はそのあたりのことがよくわかっていないのか、性格が子どもなのか。
おもいたったらすぐに口にするこのクセはどうにかしたほうがいい、とおもうのは気のせいではないであろう。
「何だよ。し~って。倉田さんがいるわけじゃないし」
そもそもひとに聞かれる、ということすらまったくもって失念している。
「ひとに聞かれたらまずいですよ」
しかもこの食堂には大会をみにきている客もいるはずである。
もし噂が一人歩きでもしたらそれこそ取り返しはつかない。
「とにかく。囲碁ファンの期待は大きくなってるんだ。
生意気な口を聞いた高永夏を塔矢明ならやっつけてくれるかもしれないってね。
そりゃ、進藤君の一戦はすごいといえばすごいけど、中押しで終局までいくまもなかったし」
事実そうであったがゆえに何となくあっけなく感じてしまっても仕方がない。
囲碁を知らないものからみれば、何でここでおわり?
というように感じるであろう。
「みんながみたいのは、塔矢行洋の息子対高永夏なんだよ」
「ですから、古瀬村さあんっ。大きい声はっ。
でも、中国戦の戦いぶりをみてオーダーを決める、と昨夜倉田さんがいったそうですね」
とりあえず声のトーンを落として話しかける。
それを彼は社から聞き出した。
「それで、妥当永夏に燃える進藤君は大将になりたくて中国戦を全力で挑んだんでしょうね」
気持ちはわからなくもない。
ないが……
「そんな進藤君は大好きだけどさ。相手に圧倒的な力を見せつけて勝ちを収めたわけだし。
だけど、みんながみたいのは塔矢行洋の息子対高永夏なんだよ」
いいつつ、またまたためいきひとつ。
「どう考えても高永夏を倒すのは塔矢君に任せたほうがいいとおもうけど」
「でも、ねぇ~」
は~…
いいつつも互いにため息ひとつ。
彼らとて明を一人の棋士、とではなくあくまでも塔矢行洋の息子、としてしか解釈していない。
それほど彼の父親が偉大といえばそれまでだが、息子のほうはたまったものではない。
「おっと。中韓戦がはじまるな」
「いきましょう」
そんな会話をかわしつつ、昼食の休憩を終えてそれぞれに対局場にと向かってゆく彼らの姿。
『ふむ。まあまあ、ですね。相手の力は』
一手目から佐為は興味津津で食い入るようにモニター画面三つとも全部を見つめている。
少し、離れた場所で。
ヒカルもそれにあわせて目の前ではなく少し数席離れた場所にと座っているのだが。
打ち方をみていれば相手の棋力も性格もおのずとわかってくるというもの。
『しかし、若いとはいえおもしろい暴言をいったものですねぇ。この向こうで打っているという韓国の彼も。
というかヒカル?この打ち方、私が前そこそこ強いといつていた確かエベレストとかいう人ですよ?』
「…あ、この手筋…Everestだ。他ししかに。塔矢、こいつあのエベレストとかいうやつだ。ネットの」
「え?」
たしかに佐為にいわれるまでまったく気づかなかった。
何か剥きになってきて何度も再戦申込をしてきたあげくさくっといく度も佐為に倒されてきたあの手筋である。
「ええと。あのネットの?でもよくわかるね。進藤」
たしかに打ち方は似ているかもしれないが。
まだ始まって間もないのに相手の手筋を読み切ったとでもいうのだろうか。
ゆえにこそ多少驚ききかずにはいられない。
「ん~、みてたら何となく。手筋がさ。よくにてるんだ。最も俺が知ってるのは一年前までのだけど」
それでもクセというものはなかなかなおらないものである。
そのクセが別に問題がなければ人はなおそうとはしないのだから。
laitoとしては彼とはまだヒカルは一度も対戦したことはない。
「ん?ああ、そっか。進藤君はしってるかもな。確かに。彼は【Everest】だよ」
ヒカルのセリフを聞いて楊海が日本語で説明してくる。
たしかにsaiの対局を観戦しまくり棋譜までつけている彼ならば知っていても不思議はない。
最も、ヒカルに関しては観戦していただけではない。
という確信を楊海は抱いているのだがそれはヒカルにはいっていない。
「何や?それ?」
「いるんだよ。ネット碁の中に。そういうハンドルネームのやつが。
そいつの手筋とこの手筋のクセがまったく同じでさ。だから同一人物だっていってたの」
一人わかっていない社にひとまず説明するヒカル。
「へ~。ネット…か」
そういっても自分家のパソコンは父親のもんだからむりやな。
ともおもう。
「しかし、ここを封殺されてはどうにも黒がつらい」
『?』
「しかし、黒のルーリィ君。他の手はないでしょう?」
『?この人達、なにいってるんでしょう?ありますよ?手は?』
ちらりとみだたけですばやく最善の一手を示すことができる佐為。
それでも佐為は自分はまだまだだ、といってはばからないが。
だがしかし、そんな佐為だからこそ誰にもきづかれない手を考えだすことができるのであろう。
まあ、たしかに俺にもテはわかったけど。
そんな呟く様子をみておもわずくすっと内心笑ってしまう。
「永夏のトビが癪だけど。すごくいい手なんだよな」
倉田がそんなことをいっているが。
『しかし、そこは後々のことを考えてもトビではなくてアガリのはずなんですけどねぇ。
そうすれば後々の読みも楽になりますし、何より相手を封じられますし』
どうやら佐為もまた彼らがいっている検討に加わっているつもりらしい。
いや、佐為。
おまえの気持ちもわかるけど、お前の声はとどいてないから。
思わず突っ込みをいれてしまうヒカルである。
「しかし…あた~。陸力のやつ、塔矢君に負けたのが堪えてるのか?手に迷いがある。手が中途半端だ」
三面のモニター画面を同時にみていてもすべての局面の石の流れが自然と佐為にはその心に刻み込まれている。
そして、それぞれの局面に対する注意点もすかさず見つけ出す。
それこそすべて。
それが佐為が佐為である所以なのだが。
このあたりは彼が生前のころからかわらない彼の技術である。
「でも、そこから生じる隙を永夏は見逃しませんよ?」
「世振は進藤君との対局が尾をひいてるな。気持ちの切り替えができていない、というか勇み足すぎだ」
守ってばかりではどうにもならない。
ゆえに今度はとにかくどこまでできるか攻めの一手にとかえている。
「秀英が負ける碁を拾ったのはラッキーでした」
佐為には不思議とどの言葉も日本語に聞こえている。
ゆえにヒカルがわからない言葉も佐為は日本語としてとらえているので別に支障はない。
支障があるとすれば、一番に彼の姿がヒカル以外の誰にも視えていない、ということくらいであろう。
よくよく対局をみていれば、気づけばすでに対局も終局近い。
ヒカルに負け、自分を試したいがゆえに勝負にでてほんのスキをつかれて負けた王世振。
しかし碁の内容自体は評価できるもの。
「くそ~、まさか三敗におわるとは」
おわってみればどうやら中国の三敗負け。
つまり韓国の三勝ちである。
苦々しくつぶやきながらも検討していた碁盤の上の石を片づける楊海の姿。
「日本勢を甘くみてはいけないことはわかりましだか。しかしやはり優勝は韓国のものですよ」
そうしなければ、高永夏のいった暴言が伝わり、大騒動となっている故郷の国の棋院に申し開きがたたない。
「ち!おい!日本チーム!!明日は応援してるからなっ!がんばれよ!高永夏のやつに一泡吹かせてやってくれ!」
いいつつも、ヒカルの肩をばんっと叩いて対局場にとむかってゆく楊海の姿。
「…明日、オーダーしったら、驚くやろな。楊海さん」
そう、社は思うがそうではない。
今日の一局をみていても、ヒカルのほうがはるかに棋力が上なのだとわかるものならば理解できたのも事実である。
倉田さんが中国戦の進藤をみて大将にしたくなったんはわからんでもない。
何しろ圧倒的な差をつけての勝利という。
しかし、社はその一局をみたわけではない。
相手が弱かった、または実力が出し切れていなかった、ともとらえられる。
何よりも知名度と話題性からいっても、誰もが大将は塔矢明だとおもうはず。
しかし、塔矢自身は文句の一つもいわへんけど、どうおもうとるんやろ?
ふとそんな疑問を抱く社。
「さてと、今日の閉会のあいさつはオレラはでなくていいらしいけど。
だけど一応、関係者たちの集まりはあるからな」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
そんな倉田の言葉に思わず無言。
そして。
「「「は~……」」」
思わず同時にため息をつく、ヒカル、アキラ、社の姿。
『??ヒカル?塔矢?それに社とかいいましたよね?みなさんどうされたんですか?』
前日のあの堅苦しい前夜祭を思い出し、おもわず溜息をついているヒカル達。
佐為のみが意味がわからずにきょとん、とした声をあげているのが場違いといえば場違いだが。
「ま、とにかく。ひとまず対局場にいくぞ」
そういう倉田に続いてヒカルたちもとりあえず、対局場となっている部屋にと向かうことに。
「倉田さん!」
「何だよ?」
「オレ、絶対に勝つから!勝ってあいつの発言を絶対に撤回させてやるっ!」
とりあえず、簡単な顔だしのあとにと倉田の部屋にての本日の一局の検討会。
「おう!その息だ!」
検討がおわり、そういい放ち、そのまま部屋をでてゆくヒカルをみつつ、
「…あいつ、いきみすぎてヤバイんちゃうか?進藤のやつ。あんなんで大将やらせていいんですか?」
事情を知らない社はどうしても言わずにはいられない。
「社」
それは団長がきめた決定に逆らうことであり、社会人としてはどちらかといえばあるまじき行為。
まあ、疑問をまったく口にださないのも問題ではあるのだが。
それゆえにたしなめようとアキラが口を開くより先に、
「ああ、大丈夫。今のあいつは…こう、何というのかな?
たとえ何がおこったとしてもこう静かに怒りをたたえつつも落ち付きがある。
風林火山のごとくってやつかな?それに、あいつには高永夏との一戦が必要なんだ」
腕をくみつつそんな社に説明してくる倉田であるが。
「?必要?」
そういわれても社にはよくわからない。
彼は強いものとあたってより強くなろう、とおもったことがほとんどまずない。
すべて順調にあるていどここまでのぼりつめていた。
そもそも関西棋院の中では彼より棋力のある棋士はそうはいない。
「たぶん。この一戦で更に成長するぜ。進藤は。
これがそういう一戦だってわかっちゃうとさ。やっぱり打たせたくなるんだよな。
別にオレ、あいつの師匠でも何でもないけど。そもそもあいつには師匠はいないし。
あいつの成長って何かこうわくわくしちゃうんだよね。
あいつがどこまで高みにのぼってゆくのかみてみたいのもあるのかもしんないけど」
そう、かまえば強敵になるのがわかっていてもかまわずにはいられないのは。
好適手は強いほうが自分も燃える。
それにつきるものがある。
だが、そういわれても社にはピンとこない。
ゆえに。
……そこまで進藤のことを評価しとるんか?倉田さんは?
そう思い違いをしてしまう。
まあ、思い違い…とはいえないかもしれないが、とにかくそれとはまた異なる。
たしかに、すごいとおもう相手がどこまで伸びてゆくのか見てみたいという心理はひとにはある。
が、きっぱりそう聞かされると自分と比べてへこんでしまう。
そんな社の想いを感じ取り、ぽん、と肩にと手をおき、
「あせるなって。お前はじっくり伸びてゆくタイプだから」
にっこり笑っていいきる倉田。
「倉田さん……」
そういわれても何だか適当にいわれているように思えてしまうのはなぜだろう?
どうもこの倉田という人物象はつかめない。
ものすごく子供っぽい大人だ、とは理解はできたが。
それが社が倉田という人物に抱いている印象。
まあ、韓国の大将相手にさんざん呆れるような内容でライバル意識をもっていれば、
そうおもうのも当然、であろう……
「まあ、塔矢は不服だろうけどな」
いいつつも、その視線をアキラにとむける倉田の姿。
「いえ。僕のほうからもお願いしようとおもっていましたし。それに彼の成長は僕も望むところです」
そう、互いによりたかい位置を目指すことができるから。
「…ただ、僕は知りたい。進藤が、本因坊秀策にこだわるわけを」
そして、saiと秀策のかかわりを。
あの、因島でみたあの棋譜。
あれがどうしても昔の進藤と重なる。
あの秀策がどうみても二人いたとしか思えない棋譜。
そして…進藤の背後にいた、誰か…おそらく【sai】。
しかし数百年もそんな存在がこの世に存在するのかははなはだ疑問。
そもそも、母も昔のそういった存在は自我もほとんど乖離しているともいっていた。
その意味はアキラにはよくわからないが……
「そういえば、塔矢ん家に泊まった夜。あいつ【秀策なら高永夏に負けねぇのに】とかいうとったな」
ふと思い出したようにしみじみつぶやく社に続き、
「まあ、進藤はあれだな。秀策マニア。でなきゃ、普通筆跡なんてわかるはずないよ。
だからオレ、あいつに初めてあったとき、秀策の愉快な署名鑑定師、ってアダナつけたもん」
いいつつも。
「ま、とりあえず。今日の検討はここまで。とりあえず服を着替えて晩飯だ」
気がえもせずにそのまま倉田の部屋に直行で検討会を行っていたのも事実である。
倉田の声をうけて、社とアキラもまたそれぞれの用意されている部屋にとむかってゆく。
知りたい。
進藤、僕は…僕は、まだ彼から、何もきいていない……
何ともいえない焦燥感を味わっているアキラには倉田も社も気づいていない。
「なあなぁ。佐為佐為、お前、何たべたい?な、な!?」
ぱっとメニュー表を佐為の前にとつきだしてにこにこ顔。
『ヒカル?』
そもそもこの表は何なのか。
それゆえに首をかしげる佐為に対し、
「お前と夜を一緒にたべようとおもって。そうしたら気兼ねなく話しもできるし碁もうてる、だろ?」
もしかしたら、佐為がもどってきたのは一時的なことなのかもしれない。
日本には盆といった死人がもどってくる日というのもがある。
しかも明日は佐為が逝ってしまって一周忌。
そういうことがありえるのをよく知っているからこそ限られた時間かもしれないこのときを大切にしたい。
それがたとえ覚めてしまうかもしれない夢だ、としても――
どうやらこのホテルにはルームサービスがあるらしく、頼めば部屋までもってきてくれるらしい。
関係者用のバイキングの夕食もあるにはあるが、ヒカルはともかく佐為と一緒にいたい。
そもそもそんな場所では佐為もヒカルもゆっくりできない。
『そうですね~。あ、でも私が食べたらヒカルはおいしくないのでは?』
佐為が食べ物の【中身】を食べるということは、ただの器のみがのこるのみ。
ゆえに何ともいい難いものになる、と以前、明子に聞かされた。
「そんなのきにしなくていいから!おまえ、それにこういうところのって初めてじゃん?」
いく度かホテルにとまったが、そういえば佐為はホテル食を食べたことがない。
というかホテルの設備などに感動してしまい、さわぎまくってそこまで気が回らなかった。
というのもあるにしろ。
平安時代を短い生涯とはいえ生身でいき、そして江戸時代を虎次郎と幽体として共にすごした。
佐為は二年ばかり、ヒカルとともにいた生活で現代をかいまみたにすぎない。
ゆえにこそみるもの、聞くものすべてが新鮮で騒ぎまくっていた二年あまり。
さすがにもう何度めなのかではあるので前ほどホテルにいても佐為はあまり騒がないが……
『そう、ですね。では~』
しばらく悩んだのちに無難なメニューを指さす佐為。
それをうけてヒカルはにっこりとし、部屋にと設備されている電話をてにとりフロントへの番号を回す。
【はい。フロントです】
「すいません。ルームサービスお願いします」
【かしこまりました。メニューはいかがいたしましょうか】
すでに内線電話、ということで相手の部屋の番号はフロントにはわかっている。
しばし、メニュー表からいくつか抜粋し、フロントにと電話注文するヒカルの姿が部屋の中において見受けられてゆく。
「まっとく間、うつか?佐為?」
『はい♪何しろもう自らが石をもてるのが楽しくて楽しくて♡』
「うん。俺の楽しい。前は俺が全部お前が指示した場所に石おいてたしな」
一番佐為に石をもって打たせてやりたい、とおもっていたのはヒカル。
自分とは触れあうことができるのに、石をもてないそのさみしさ。
自分が囲碁を始めてのめりこんで…わかった。
頭の中だけでなく、佐為もずっと、千年以上石に触れたかったのだ、と。
目の前にあれども触れない、触れることすらできずに透けてしまうその体。
どれほど悲しんだことだろう、ともおもう。
佐為はいっていた。
虎次郎のときも自分と触れあうことはできなかったのにヒカルとではできるのですね。
とかなり驚いたように。
それゆえかかなり肉体的なスキンシップを佐為は求めてきた。
まるでそう、だだっ子のように。
ヒカルもそれゆえに、佐為は幽霊でなく本当の人間だ、として扱っていたところもある。
それが…いきなり、ずっと続くとおもっていた時間がたちきられ…
千年。
佐為はずっと碁盤の中で一人でずっと孤独に存在していた。
そして、出会った虎次郎とは話せても、やはりふれあうことはできずに…
そして、今回出会ったヒカルとは、生きていたときのようにふれあい話すこともでき、
そして食べ物すら死んでからはじめて口にできた。
その喜びは考えてもあまりある。
それが、いきなり自分が消えてしまう、逝かなければ…いや、有無をいわさず成仏してしまう。
そうおもったときの…その絶望はいかばかりか。
そんな佐為がもどってきて、しかも石がもてるようになった。
というのである、それゆえ昨日もヒカルは自分のことのように喜んだ。
塔矢のおじさんより、サイってさすが年季がはいってるだけあってものすごく綺麗に石を打つんだよな。
それがまずヒカルが佐為がうつところをみたときの感想。
塔矢行洋がうつところをみたときもすいこまれそうになったが。
佐為のはまた異なる。
それこそすべてをわすれさせるほどに洗練された打ち方、といえるのだ。
まるで石とその身と碁盤が一体化しているかのごとくに。
佐為ってこういうように碁をうつ人だったんだ。
と新鮮さを覚えた昨夜と今日。
とにかく時間があれば打ち、または心の中で会話をしては目隠し碁をする。
ときには心の中で碁盤を思い浮かべ、そのイメージだけで打ちあった。
そして、時には些細な会話を。
その時間、一時、一時がすべて、いとしい。
今は確かに大切な国際棋戦だ、とわかっている。
いるが、今のヒカルにとって何より大切なのは、佐為がいま、側にいるこの時間。
なのだから――
「よ~、社。ちゃんと食べてるか~?」
「あはは……」
オレも塔矢みたいにフロにはいるからとかいうて断わるべきやった……
しかし、こういう場がはじめての社が上のいうことを断る手を思いつかないのは仕方がない。
果てしなく食べるつもりなのか!?
という突っ込みを至極したくなってしまうほどに、とにかく倉田はたべまくっている。
そんな倉田を横目につい他人のふりをしたくなってしまうのは仕方ないであろう。
「進藤のやつは内線かけてもでないし。塔矢もルームサービスですますっていうし。
まったくあいつらときたら付き合いわるいったら」
ガツガツ。
目の前でお皿山盛りの夕食を食べている倉田をみつつ、オレもそうすりゃよかった……
そう思わずにはいられない。
もしかして、塔矢も進藤のやつも、このことみこしてルームサービスにしたんちゃうか?
しかも食事のさなか、関係者らしき人物が倉田野本に来ては挨拶するものだから、
社もまた挨拶するハメにとなっているのだからたまったものではない。
「…は~……」
たしかに食事はうまい。
うまいけど、精神的にこうも食事がうもうないなるもんなんておもってもおらなんだわ……
そんなことを思いつつ、倉田につられやってきた北斗杯関係者用夕食バイキングの会場にて、
いく度めかの溜息をつく社の姿がみうけられてゆく――
ぽ~ん。
「あ、はい」
部屋に備え付けられているチャイムがなる。
ドアスコープから確認してみればまっていたルームサービスが届いたらしい。
それゆえにガシャリとカギをあけて扉をあける。
「どうもおまたせいたしました。ルームサービスです。あのぉ?お隣、お知り合いでしょうか?」
「そうですけど?」
「実はお隣からもルームサービスを頼まれているのですが、まったく反応がないのですが……」
チャイムを鳴らしても、扉をノックしてもさらには内線電話をかけても反応なし。
ゆえに失礼かもしれないとおもいつつも問いかけた。
「…反応がない?」
アキラのつぶやきにこくりと何とも申し訳なさそうな表情をうかべるホテル従業員。
とすれば、部屋において棋譜並べをしているか、あるいは……
一応、北斗杯選手やそれに伴う団長、関係者の部屋にはいくつか碁盤も準備されている。
ゆえにそういったことも部屋で可能、なはずだが……
「僕がいってよんでみましょう」
「すいません。おねがいいたします」
こういうことはあまりお客の手を煩わせてはいけないが、かといって大切な国際大会の参加者。
ゆえにあまりおおごとにしたくないというのもあっての配慮。
アキラが危惧しているのは別の面。
下手をしたら部屋の中で倒れている可能性も否めない。
何しろ母が十分注意な日、ときっぱりいいきっていた五月五日が明日に迫っていればなおさらに……
ぽ~ん、ぽ~ん。
ドンドン……
『……?ヒカル?誰かきたようですよ?』
「え?」
ついつい夢中になって碁盤の前で集中していた。
佐為の声にふと我にと戻るとたしかに何やら扉をノックする音が聞こえてくる。
「あ、本当だ。全然気づかなかった。ルームサービスかな?」
ちらりと時計をみればたしかにもう運ばれてきてもおかしくない時間ではある。
「ちょっとでてくる」
いいつつ局面をうちかけにして、扉のほうにとむかってゆく。
ここまで何の反応もないと不安になってきてしまう。
フロントに電話をしてカギをあけてもらおうか?
アキラがそんなことを思っていると。
ガチャリ。
カギの開く音ともに扉が開かれる。
「…進藤……」
ひょっこりとのぞかした顔をみてほっとするものの逆に何ともいえない気分になる。
彼とてもう、あのときのような…進藤光という存在を失う想いは…二度としたくない。
とおもっている一人。
それゆえの反応。
「あれ?塔矢?」
なぜホテルのお姉さんと塔矢がいっしょにいるのだろう。
そんなことをふとヒカルはおもって首をかしげてしまう。
部屋の人物が出てきたことに心底ほっとし、
「ああ、よかった。お客様。こちらがルームサービスの品です」
特にこの部屋の人物は去年倒れた経験があるから気をつけておいてください。
とはホテルのほうにも注意がされてある。
ゆえにこそかなり心配していたのであるが。
何でもなさそうなのをうけてほっとしたのはいうまでもない。
二人して何やら不安にかられていたその直後に扉が開き中からひょっこりと顔をのぞかせたヒカル。
それゆえにその姿をみてほっとした声と表情でヒカルにといっくてる女性従業員。
「えっと。ルームサービス運んでくれてきた係りの人はわかるけど。塔矢は何で?」
それがどうしてもヒカルにはわからない。
「何で、じゃないよ。君は本当に。また去年のように何かあったのかって心配になったよ。本気で。
携帯にはでない、内線電話にはでない、チャイムならしてもドアをノックしても反応ないんじゃぁ」
間の抜けたヒカルの言葉にため息と同時につぶやくアキラ。
ともあれ無事ならばそれでいい。
自分は自分で仕事をすますのみ。
「お食事がおわりました、こちらのお盆にいれて外にだしておくか。
もしくはお部屋においといてくだされば明日の掃除のときにかかりの者がさげにまいります」
いいつつも、とりあえず指定は扉の前まで、ということもありその場で食事を手渡して、
一礼してその場をたちさる従業員。
ちなみに、ヒカルが頼んだのは海藻サラダとイタリアン・スパゲティ。
それとご飯とお味噌汁が一膳づつ。
「…え?なってたっけ?…あ~、悪い悪い。つい集中してて……」
どうやらアキラのたてた予測はヒカルの反応からして前者、だったらしい。
「明日にむけての棋譜検討でもやってたの?」
「え?え~と……」
説明の仕様がない、というのが事実である。
ゆえに言葉を濁すヒカル。
?
進藤は何だか今朝から様子がおかしい。
心、ここにあらず、といった感じをひしひしとうける。
だが、それがなぜなのか、何が原因しているのかアキラにはわからない。
聞きたいことはある。
佐為と君と秀策とのかかわりを。
だけども君はいつかは話す。
そういった。
だから…今は、まだ聞けない。
話してくれるのを待ちたいから、無理じいではなく。
「……進藤。まさか明日の大将戦を控えて弱気になってなんかないだろうな?」
「あ、それはない」
そもそもヒカルにとって大将戦、というよりは高永夏との対局でありそういう概念はほとんどない。
逆にいえば大将の自覚がない、ともいえるのだが……
『ヒカル?…おや。塔矢。ヒカル、ついでにあがってもらったらどうです?
私、彼の今日の一局、ヒカルのばかりみていたから見ていないんですよ~。
知りたいですし。ね、ね?ヒカル、ね、ね!?』
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
おまえ、ほんっと一年前とまったくかわんないよな~……
まるでこの一年、いなかったのが嘘のような、望んでいたあの日々とおなじ風景。
佐為の様子は一年いなかった様子をみじんもかんじさせなくまったく変わりないともいえる。
できれば佐為とせっかくの二人っきりの時間を邪魔されたいのはある。
あるが佐為の望みはかなえたい。
ゆえに。
「あ、そうだ、塔矢」
「な、何?」
いきなり話しかけられて面喰う。
「お前、ヒマ?」
「・・・・・・・・・・・は!?」
いきなり意味不明のことをいってくるヒカルには慣れている。
いるが……いきなりヒマ?ときかれて思わず目が点。
というか明日は韓国との戦いがまっている。
それゆえに暇でないことはわかるだろうに……
「もし、時間あったらお前の今日の一局、また並べてほしいな~、なんて…ダメ?」
先ほどの検討では主に社のものばかりになっていた。
塔矢のものもヒカルのものもはっきりいってされていない。
ゆえにこその問いかけ。
「……は~…わかったよ……」
少しばかり首をかしげて、まるですがる子犬、もしくは子猫のように見つめられるとダメ、といえる雰囲気ではない。
「じゃあ、僕もルームサーピスたのんでるし。君の部屋でたべてしまうから。夕食もってくるよ」
明が頼んだものは邪魔にならないお寿司セット。
器ひとつで片付くし、何よりも場所をとらないのがアキラには利点である。
「さんきゅ~!」
佐為、いいってさ。
『わ~い♡』
ぴょんぴょんとびはねうれしそうな佐為をみてすこしばかり苦笑し、
「じゃ、まっとくな~」
いってひとまずアキラとわかれて部屋の中にと戻るヒカル。
さてと。
塔矢がくる前に、佐為が食べられるように、これら、わけとこ。
佐為は当然、その体が幽体であることから物質的ともいえる実体があるものは食べられない。
さらにいえば触れることもできない。
唯一、例外がおこったのが今回碁石がもてるようになったこと、くらいである。
ヒカルにはもともと霊能力があり、ゆえにこそ佐為ともはじめから触れあうことが可能だったが。
ゆえに、その応用なのか同じ霊体の品ならば話は別。
アキラがくる前に一応注文していた品々を【二つ】に分けるヒカルの姿――
?
棋譜ならべをしていたにしては対面に碁笥がおかれている。
一人でうつのならば手本に二つなければおかしい。
ヒカルの部屋にきてまずまっさきにアキラの目にとまったのはやはり打ちかけの盤面。
「うってたの?」
「あ。うん、ちょっとまって。今片づけるから」
というか、ちらっと即見したかぎり、黒が圧倒的なまでに有利な局面。
みたことのない石の形。
まあ、みたことがないのは当たり前で、先ほどまでヒカルが佐為と打っていた一局なのだから仕方ない。
じゃらじゃらと碁石を片づけて、それぞれの碁笥にとしまいこむ。
アキラも手伝い盤面上をまっさらにし、
「じゃ、ならべるね」
いって、交互に黒と白をもちつつも、自分が本日うった一局をその場にきれいに並べてゆく。
「…で、ここで終局」
『ほおう。相手もなかなかでしたねぇ。なるほど、やはりあの形はああきてこうなったのでしたか』
そもそも終局の石の並びをみただけである程度はわかるがやはりきちんと初手からしっておきたい。
それは佐為のこだわりではある。
事、囲碁に関しては彼も一度も妥協したことは生前から一度たりとてないのだから。
「なるほど」
「ま、今日の一局はみせたわけだし。せっかくだし明日にむけてうつ?」
「え?ええと……」
アキラとしてはヒカルと打てる確率が高い。
というのもありヒカルの提案をうけいれた。
だが、いつもはすぐさま飛びついてくるはずのヒカルの様子が何だかいつもとかなり違う。
それゆえにすこしばかり怪訝な表情を浮かべるアキラ。
たしかに申し出事態にはものすっごく興味がある。
というかいつものヒカルならばまっさきに飛びついた。
それは自覚している。
だけども今は佐為と一局でもおおく打ちたいのも事実である。
『そういえば、ヒカルとだけでなく塔矢ともうちたいですね~』
あむあむとご飯を丁寧にちょこんと正座してすわりつつたべながらそんなことをいっくてる佐為。
だけど、それをやったらオレがお前とうてねぇし。
何よりもヒカルをとおさなければアキラは絶対に驚く。
何しろ何もない空間にいきなり石がふわふわと浮かんで碁盤の上におかれる。
そのように佐為が視えない人にはうつるのだから。
『あ。何なら二面打ちでもいいですよ♪』
ごっん!!
にっこりいいきる佐為の提案におもわずそのばにつっぷしてしまう。
「し…進藤?」
いきなり前のめりにつっぷして、おもいっきり碁盤におでこをぶつけるヒカルをみて思わず戸惑いの声を上げるアキラ。
まあ、戸惑わないほうがどうかしているが。
お、お前なぁ!って、そっか。お前石がもてるからお前からしてみればそれも可能…
…って!おまえは俺以外に姿が視えないだろうがっ!
『しかし、塔矢は明子殿のもとで免疫ができているのでは?』
「う…う~ん……」
佐為の言い分もわからなくはない…ないが、免疫…というとかなり違うような気がする。
というか、たしか明子おばさん、アキラたちはそういった力ないから近づけてもないとかいってたような?
いきなり頭を碁盤に打ちつけたかとおもうと、ふとななめ後ろをむき。
さらにはいきなり腕を組んでうなりはじめているヒカルの姿。
さすがにここまであからさまにあやしい行動をされればいくらアキラでも気づく、というもの。
…これは、まさか?
ふと盗み聞きするつもりはなかったが、母が父にいっていた言葉が脳裏をよぎる。
【…彼、もどっくてると思うのよね~…】
その彼とは誰のことなのか。
予測でしかない、推測でしか。
しかし…もしも、もしもその推測があたっているとするならば……
常識的に当てはめれば絶対に突拍子もない、といいきれる。
が、世の中常識では計り知れないことが多々とあることをアキラは母親の影響で知っている。
「…いやでも、普通は驚くし……」
アキラがそんな思いに駆られている最中もヒカルは何やら一人でぶつぶつ独り言をいっている。
……やっぱりダメだって。
いくら理屈でわかっててもいきなりふよふよと石が浮かんで碁盤におかれてみろよ?
それこそ明日の対局どころじゃなくなるほどに動揺するかもだろ?
理屈でわかっていても目の当たりにするのと、しないのとでは大きく違ってくる。
それはヒカルの自分の経験からもいえること。
自分にとって当たり前なことが実はおかしい、と決めつけられる状況の中で身に付いた世俗の十。
「?進藤?そこに【誰か】がいるの?…ひょっとしてsaiがもどってきてるの?」
「え!?」
いきなり図星をいわれて思わずヒカルは硬直してしまう。
万が一の可能性をかけてひっかけをいってみた。
どうやらこの反応からして…もしかしなくても図星?
アキラがそんなことを思っていると、
「え…と、塔矢。一個確認するけど、お前、勝ってにモノが浮かんだりするのみたことある?」
「それはない。けど、普通はそんなのありえないでしょ。何、いきなり?」
今のアキラの問いかけに返答になっていないヒカルからの問いかけ。
だからこそアキラには余計にわからない。
ヒカルが、いったい何をいいたいのか。
そして…彼がいま【視えない人】と話しているのは誰、なのか、が。
「んじゃぁ、やっぱり衝撃がなぁ~…う~ん……」
アキラに問いかけたのちにまたまた腕をくんで考え込むヒカル。
アキラはただただ?マークを飛ばすのみ。
自分は後回しにして佐為に打たせるか。
しかしそれだと佐為が自分で石をもてない。
せっかく佐為がうつのならば是非とも佐為自身の手でうってほしい。
やはり、ひとというものは自らの目に視えない以上、
不思議なことが起こると当人が思っている以上に衝撃をうけるものなのだから……
-第76話へー
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あとがきもどき:
薫:さてさて、衝撃展開さんを次回に回すかどうするか・・・というのを考えつつも、
とりあえず先にあとがきをばvv
佐為ちゃん、石がもてるだけでなく、今回はヒカルと意識がつながっている、とかではないので。
けっこうある程度は自由に行動がききますv
本気の指導霊のような形ですね。しかもおもいっきり自我ありまくりで触れられて喧嘩できる(まて
本来はそういった存在はヒカリのような存在なのでひとには視えない、のですけどね。
しかし、ヒカルが常に身につけている石はもともと佐為が生前身につけていた品であることから、
それを身につけていればおのずと佐為と同調することにより、
ヒカル以外でもその姿を確認&話したり触れたりすることは可能です。(つまり波長が強制的にあう)
といってもその石、ヒカル以外が長時間もってたらわらわらと危険な存在よってくるのでアウトですが(まて
ではまた次回にて~♪
今回も例のごとくに小話しをば♪
↓
「きいたぞ!おまえ、クマおやじなげとばしたんだって!?」
もはやもう院生内部ではその噂でもちきり、である。
「進藤さん。それはちょっとないとおもうな~、というか男としてショックでかいとおもうよ、まじで」
ヒカルが一応カラテなどの腕を段位手前までもっている。
ときかされている院生仲間としては相手に同情せざるを得ないが。
しかし、外見はヒカルはほんとうにだまっていれば小柄なかわいい美少女、につきる。
そんな少女に投げ飛ばされた男性の心情は…おしてしるべし。
「だって…こわかったんだもん~!!」
『あの男もわるいのです!いきなりヒカルの肩をだいてくるなど!言語道断です!』
おもいっきり和谷が爆笑し、横では伊角が溜息をおもいっきりついていたりする。
予選突破はさすがにヒカルも早かった。
まあ、理由は少女が大のしかも大男をなけとばした。
というのをきいたほかの対局者がヒカルとあたったときにたしょう尻ごみしたのもあるにはあるが。
「しょうがないよ。だってきけばさ。ヒカルって、碁会所、ほとんどいったことないらしいんだよ?」
「はぁ?!何それ!?だっておまえ、塔矢明と碁会所でうってたっていったじゃないか!?」
「碁会所とかいうとこで打ったのは二回だけだもん。
だってあんな大人の男の人ばかりところに度々出入りするなんて、お母さんにも許してもらえるはずないじゃない。
しかも一人で入るなんてとんでもないっていわれるの明白だし。それにうつときは塔矢君、家にくるし」
いや、家にくる云々のそっちのほうが問題では?
とおもわず和谷は心の中で突っ込みをいれるが、それはひとまず口にはださないでおく。
「…よし!進藤!おまえ、今度俺達と碁会所めぐりやってみないか?」
「何何?それ?おもしろそ~」
「奈瀬。お前にいったんじゃね~よ」
「あら?別にいいじゃない。私だってヒカルのことかわいいとおもってるし。
和谷のようなガサツな男のそばにおいといたらヒカルが毒にそまっちゃうわっ!」
「何だとぉぉ!てめぇぇっ!」
『?ヒカル?和谷ってガサツなんですか?』
さぁ?親切ではあるけど?
どこかずれた会話をしている佐為とヒカル。
「そうだ、なら和谷が苦手意識もってるフクもよべばいいかな?」
「だから!奈瀬!おまえもついてくるきか!?」
「とうぜん。ヒカルをそんな場所にたとえあんたたちと一緒でもつれてかれますかっ!
ヒカル、そういう所まったく免疫ないんでしょ?」
「うん」
『いく度かはいったときはすべて私がうちましたしねぇ~』
「だっていつも家でネットだもん」
「そりゃ、対面しての対局になれないとね」
「だから私もついていってあげるわ。和谷と伊角君とあとはフクをさそって。私とヒカル。
うん、ちょうど五名v農心杯の構えでいきましょう♪」
「ってまていっ!」
「??ねえ明日美?なにそれ?なんとか杯って?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ってまさか、しらないの!?ヒカル!?」
佐為、しってる?
『いえ、知りません』
「何でネット碁やっててそんなのしらべてないのよぉ!?まさか他の棋戦とかは!?」
「?キセン?」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
ヒカルはそういった大会のような部類まで、いままだ調べたことがない。
しかしプロ試験をうけようか、という人物が…よもや知らない。
とはおもわなかったらしく、そのままその場にてそれぞれにうなる和谷達三人の姿がみうけられてゆく……
「と、とにかく、そういう国際的な大会があるの。団体戦ね」
「へ~。団体戦って三人でなかったんだ」
「あ~、まあ大体中学とかの団体戦はそうかもしれないけど。
今は男女混合が主体となってきてるしね。というわけで、フクをさそって碁会所めぐり、
IN団体戦集団開始!!」
「だから!奈瀬!勝ってにきめるなぁぁ!」
ぷっ。
何だか明日美と和谷君っていいコンビだね。佐為。
『ですねぇ。しかしおもしろそうですねv』
ヒカルは団体戦出場、というのは二度しかない。
もっとも、はじめのときには男の子のふりをして中学生のふりをして出場したのだが。
佐為も団体戦の仕組みを世界基準ではじめてしったのでかなり興味深い。
「うん。今日きちんとかえってパソコンでネット碁やるまえにしらべてみよ」
「進藤さん、ぜひそうしといたほうがいいよ……」
ぽんっと今だに多少コメカミをおさえながらも、しみじみいってくる伊角の姿。
まさか、キセンという言葉すら知らない、とはおもっていなかった。
まあ、彼女が囲碁界の知識に疎いのは今に始まったことではないが。
周囲に碁をたしなむものがいないとここまで無知になれるのか。
というあるいみ典型的な例、であろう……
↑
ちなみに、農心辛ラーメン杯 世界囲碁最強戦
各国5名の団体戦 次局の対局者は対局開始3時間前までに決定
という国際基準となっておりますvあしからずv
まあ、試験にもうむかっているのにかかわらずに無知なのはお約束、というわけで。
それから日本棋院さんのサイトいって棋戦の内容だけは確認するヒカルです(笑
まあ、それで少しは棋戦の大会くらいは覚えますけど棋院のでは次期まではわかりません(切実…
とにかくひたすらにただいまどこかにないか~、ないか~と捜索中…
年間行事さんのである程度わかるのかなぁ?はて?
何はともあれまた次回にてv
2008年9月28日(日)某日
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