まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
内容の長さ的に、この回で佐為ちゃん復活もってきましたvぱちぱちぱちv(かなりまて
でも、詳しくはかいてないのはお約束v
夢なのか、幻なのか、そのあたりをひっぱる感覚でだしてみたりv
よくありますからねぇ。
現実とおもってすごしていたら、すべては夢と幻だった、というリアルすぎる夢は(私だけ?
何はともあれ、ゆくのですvv
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…日本の、進藤、光?
ええ。二年ほど前に、彼とはアマチュア囲碁大会でうったことがあります。
彼のハンドルネームがたしか、laito、でした。
中国アマチュアNo1の人物からの情報提供。
舐めてかかった初戦は惨敗し、それならば、とばかりに相手がどうも日本語しかわからない、
とみて日本語で再戦を申し込んだ。
楊海の協力を得て。
それでもやはり見たこともない定石を打ちだされ、あれよあれよというまに決着がついてしまった。
saiと交互のようにはいってきていたので覚えていた。
だから対戦申込をしてみた。
だが、その強さは、まるで、まるでsaiに通じるものがある。
そう確信したのもまた事実。
しかし、彼は二か月ものプロになってすぐにずっと不戦敗がつづいていたらしい。
質問を投じてみてもその理由をしっているものは皆無。
その後、楊海がその話をきき、入院していた、という話を彼にするまでは。
日本で警戒すべきは…その、進藤光、という少年。
塔矢行洋の息子である塔矢明、同様に…
中国内部のトップ棋士たちがそのように彼から話をきいて思ったのは…いうまでもない……
何しろその一局の内容は、驚愕する棋譜、だったのだから……
星の道しるべ ~許せざるものと復活するもの~
「三位まで賞金でるんだし。花相撲って感じで気楽に臨むんだろう?」
牽制の意味アイをかねて韓国の団長にと話題をふる。
「おや、中国はのんきそうですね。ありがたい。韓国優勝まちがいなしだ」
にこやかにそう切り返されてくるのが多少悔しい。
「日本は?」
「警戒するのは塔矢明君ですが、彼はまだまだ経験が足りないでしょう。
日本のあとの残りの二人は正直、とるに足らないだろうとおもっています」
にこやかにそんなことをいってくる。
ということは、こいつあの進藤ってヤツの力を知らないな。
何より楊海が怖いとおもっているのは塔矢明ではなく進藤光である。
何しろあの王星に中押し勝ちした【iaito】…それこそが、彼、【進藤光】なのだから。
「楊海さん、優勝は韓国がいただきますよ。三位の賞金より優勝賞金のほうがいいですからね」
ちっ。
本気でくるな、あれは。
うちの陸力が、今、調子を下げているから牽制しておきたかったんだが……
だけども、おそらく韓国の優勝はないであろう、ということはわかっている。
下手をすればよく見知った相手でもある韓国よりも誰も実力をしらない日本勢のほうがかなり怖い。
彼らはこの大会が国際棋戦、初デビュー、なのだから。
「お、日本チームのお出ましだな」
そんな会話をしている最中、ちかづいてくる一団が目にはいる。
「はじめまして。塔矢明です」
まさかいきなり北京語で挨拶されるとはおもっていなかった。
「お。北京語はなせるのか?」
ゆえに少しうれしくなり明にとといかける楊海の姿。
「いえ。少しだけ。覚えはじめたばかりです」
「よろしくたのむよ」
「こちらこそ。よろしくお願いします」
いいつつもぺこりと相手に頭をさげる。
…塔矢って北京語、できるんか。
そんなアキラをみて思わず心の中でつぶやく社。
しかし、塔矢明、か。
物腰やわらかいねぇ。
棋譜からうける感じとはずいぶんちがうな。
そんなことをふとおもう。
「さってと。お!君が進藤君か!」
そもそも当人をみるのは初めてである。
「・・・あ、どうも。その節は……」
一応、彼が団長だ、というのは倉田から聞かされている。
だからこそ頭をぺこりとさげるヒカルの姿。
「君のくれたあれ!かなり役立ってるよ~、ね、ね。まだあるんでしょ?」
いきなりがしっと肩をつかまれ、耳元でそんなことをいわれて思わず戸惑いつつも、
「え、あ、はい。…ですけど……――…楊海さんは本因坊秀策をしってますか?」
少し考えつつも、気になっていたことを問いかける。
「とうぜん!ちなみに、オレはsaiはネット上の噂どおり、ネットによみがえった秀策と信じてやまない一人だしね。
…もっとも、他のやつらは笑うけど」
周囲に彼の考えをいってもほとんど笑い飛ばされるだけ。
すでに故人である昔の人がそんなことをするはずがない。
そもそもネットなんて江戸時代の人がするはずないでしょう。
というのが大半の意見。
…どこか最後の意見はちょっぴりずれた否定の言葉のような気もしなくもないが……
「……いえ。そんなことはないとおもいます。では、今度、前のメルアドにまたおくっときます」
高永夏のことがあるだけに、佐為を認めてくれる人の発言は…何よりもうれしい。
そんな彼の言葉に少しばかりの安らぎをいだきつつも、にこっとほほ笑みつつも返事を返す。
しかし、塔矢明といい、この進藤光といい。
棋譜よりうけていた印象とまったく違うよな。
やっぱり日本、要注意、だ。
そんなことをふと思う。
と。
「あ、いたいた!楊海さん!…あれ?進藤君、楊海さんと知り合い?」
さがしていた当人がヒカルの肩をつかんで話していれば疑問におもうのも無理はない。
「あ、ネット碁仲間なんです」
ヒカルの言葉は嘘ではない。
「そっか~。あ、すいません。楊海さん。中国チームの取材、いいですか?」
「ああいいよ。じゃ、またあとでね。進藤君」
「はい」
古瀬村達に頼まれて、ヒカルから離れてゆく楊海の姿。
「お~い!塔矢達ぃ!」
楊海をみおくっていると何やら倉田から呼び出しがかかる。
どうやら集合しろ、といっているらしい。
よくわからないままにとにかく倉田の元にと移動する。
「やあ、これはみなわかいですねぇ」
「期待してますよ」
??
「ははは。優勝でしょう、優勝!!」
何やら見知らぬ大人たちにどうやら自分たちを紹介したいらしい。
というか、誰?この人たち?
誰や?こいつら?
おもわず同じ思いを抱くヒカルと社とは対照的に、
「精一杯がんばります」
いって丁寧に頭をさげているアキラの姿。
「…アキラ、だれ?」
「知らない。けど、こういう場では誰かわからなくてもいい子を演じていれば問題ないよ」
「…おま、案外したたかやな」
「そう?世俗の術だよ」
「「・・・・・・・・・・・・・」」
こそっときいたアキラの即答におもわず突っ込むヒカルであるが、
さらっとかえされ思わず社とヒカルの二人して無言になってしまう。
まあ、たしかにいっていることはわかる。
わかるが……
そういえば、秀英と永夏の姿がみえない。
あいつ、誤解を解くとかいってたけど……
ふと、ヒカルがそう思うのとほぼ同時。
「お。やっときたか。遅かったな」
韓国の団長が彼らの姿に気づいて声をかけている姿が目にとまる。
…高永夏!秀英!
じっととにかくそんな二人を見つめるヒカルに気づき、
「進藤!」
とにかく永夏ああいったけど、誤解はとかねばならない。
ゆえに近づこうとするものの、
「あの、いいですか?」
参加者には胸に花がつけられる。
ゆえに係りの者に足止めをくってしまう。
「あ、高永夏だ、あいつ~!!」
そんな彼の姿にきづいて古瀬村が毒づいている姿が目にはいるが。
「あ」
誤解を解こうにも、ヒカルたちは先に会場にはいってしまいどうもそのヒマは…ないらしい。
それと同時にレセプション開始のアナウンスが会場にと流れだす。
「お~い!進藤!」
「あ、はいっ!」
倉田によばれてあわててそちらに移動するヒカルに、
「秀英?どうした、はやくこっちへ」
何か様子がおかしい秀英のことに気づきながらも会場へ入場するために選手たちはそれぞれ、
割り当てられた場所へとむかってゆくことに。
「本日はお忙しい中をおこしくださいましてありがとうございます。
ただいまより、レセプションを始めさせていただきます。
司会進行は私、佐野智子が勤めさせていただきます。よろしくお願いいたします」
スピーカーから流れる司会進行係りの声。
「それでは、北斗杯参加プロ棋士、ならびに役員の皆様のご入場でございます。
どうぞ盛大な大きな拍手でお迎えください。まずはじめに日本チームの皆様を御紹介いたします。
団長に倉田厚七段。つづきまして……」
延々と説明がなされ、それにあわせて選手たちが会場の中にと進行する。
それにあわせて会場が拍手の渦にと包まれる。
全員が入り終わり、それぞれにはじめの挨拶も一通りおわり、
「それでは、ここで歓談をはさみまして。組み合わせの抽選、選手代表挨拶とさせていただきます。
皆様、ごゆっくりおつくろぎください」
どうやら多少の自由時間があたえられるらしい。
といっても、本当の自由時間ではなく、むしろ顔見せと各自の挨拶の時間といっても過言でない。
…やっぱり、ここじゃ、無理だな。
あと、レセプションがおわってから進藤に説明しよう。
どうも抜けだして進藤に説明にいく余裕がない。
カシャカシャ。
「秀英」
「あ、はい」
団長につられて秀英もまた挨拶回り。
「…やれやれ。棋戦があるたびにこんなことやるんか?たまらんな。
頭さげたりお愛想笑いしたり。明日から戦うオレラを疲れさせてどないすんのやなぁ。おい」
おもわずぐちが口から飛び出してしまうのは仕方ないであろう。
ようやくちょっとは何かたべてこい。
俺も食べるから。
という倉田の言葉でひといきついた。
まあ、団長たる倉田はがつがつとバイキング形式の食材をお皿にもって平げているので、
とりあえず他人のふりをして少しばかり社は距離をおいているのだが。
社のそんなつぶやきも今のヒカルにははいってこない。
秀英。
何もいってこない。
あそこまでいったくせに。
やっぱり事実だったんだ!
そうおもうとさらに怒りがこみあげてくる。
そんな中。
「では、それでは組み合わせ抽選を行いますので、各チーム。団長の皆様ステージにおあがりください。
明日、一回戦はAとB。二回戦はBとC。二日目はAとCになっております」
説明をうけて倉田達がクジをひくと、倉田はA、楊海はB、そして安太善はCをひきあてる。
「対局の組み合わせは、以上のように決まりました。一日目、一回戦、日本対中国。二回戦、中国対韓国。
二日目、日本対韓国、李丈となっております。では団長の皆様がたに一言づつ……」
このようなまだるっこしい挨拶というか集会はさすがに小学や中学の全校集会でなれているものの、
やはりこう疲れることこの上ない。
「オレから?オレからだよね?」
「は、はい!おねがいします!」
その言葉をきき、進行係りの女性に倉田がといかけ、そのままずいっとステージにとあがり、
「日本はね。塔矢明だけが注目されてるけど。他の二人もやってくれますよ。というかやってくれ!
安太善の勝ち誇った顔はみたくないっ!!」
というかこういう場でいう発言ではない。
絶対に。
「かわれ!倉田っ!」
何をいいだすかわからない倉田からあわててマイクを取り上げる。
「え、え~。対局はきっと白熱したいい戦いになるとおもいますよ。
それより対局外で選手をトラブルを起こさないかと心配でね。みんなまだまだ子供、ですし。
何せみんなまだ未成年でしょう?だからこうしてオレたち団長がガキのお守としてついてきてるわけです」
『ははははっ!』
楊海の言葉に会場から笑い声が巻き起こる。
「まあ、日本チームだけは団長のほうが選手よりガキのようですが」
『わははははっ!』
どうやら楊海はこういった場で人々を笑わせるコツがわかっているようである。
「楊海さん、交代です。え~、今、楊海さんは子供のお守、といわれましたが。
うちの選手はみなしっかりしてますから。私はのんびり観光でもしてこようとおもっています。
韓国の優勝は信じてますので」
にこやかにいって団長挨拶が三国ともども終了する。
「続きまして、千種代表の皆様、ご登壇ください」
それぞれ、日本の代表は塔矢、韓国は高永夏、中国は陸力の三人が檀上にとあがる。
「まず、日本チームの代表、塔矢明三段に一言おねがいいたします」
そんな言葉をうけて、しずかにマイクの前にたち、
「私たち、日本チームの選手三名はみな、国際棋戦は初めてで、経験不足の感は否めません。
が、それでも皆さんの期待を裏切らない戦いをすることをお約束いたします」
そんなアキラの挨拶をききつつも、勝手に約束すんなやっ!
おもわず心の中で突っ込みをいれている社である。
「十五歳でよくあんなしっかりした挨拶ができるな~」
そんなアキラをみて横のほうで古瀬村が何やらいっているが。
ヒカルとしては檀上にあがって永夏のことが気になってしかたがない。
無意識のうちにきっとにらみつけている状況がずっと続いていたりする。
「次に、中国チームの…」
中国チームの挨拶がおわり、次は韓国の代表挨拶。
きちんとした挨拶を考えてはいた。
いたが、一方的誤解とはいえずっと睨まれているのはあまりいい気分ではない。
だが、そっちがその気なら。
【……本因坊秀作をずいぶん評価しているようだが……】
「?永夏?」
考えていたはずの挨拶とはちがう。
何をいいだすの?
と秀英が思うまもなく、
【はっきりここでいってやる。彼などもし今あらわれてもオレの敵じゃないっ!】
「永夏!?何をいいだすんだ!?」
「え?通訳、通訳するの!?…え、えっと…
え、え~。日本では本因坊しゅぅさくが高い評価をうけているようですが、もし今その…
彼が今あらわれても自分の敵ではない…と……」
しどろもどろになりつつも、とりあえず通訳の仕事は仕事。
それゆえに汗を流しつつ通訳する。
彼とて一応秀策の名前はきいたことがある。
ゆえに通訳するのも冷や汗ものである、が何も通訳しないわけには仕事にならない。
「何だ?何いってんだ?あいつ?」
「挨拶になってないじゃないか」
「本因坊秀策より強いんだ、とアピールしてるのか?」
ざわざわ。
何やらその永夏の発言に会場がざわめきたつ。
「?秀策って何?昔の棋士?」
「え?!知らないんですか!?有名なのに!?」
「私は塔矢名人しか知らないから」
「塔矢行洋はたしか引退したでしょう」
「じゃ、今の名人って誰?」
この場にはあまりそういった囲碁会の情報ツウともいえる人々はあつまっていない。
とにかくおえらいさんたちの集まりでもあるのでそういった知識が皆無のものばかり。
「…おいおい。あいつ、喧嘩うってんのか?何かあったのかな?」
おもわずそれをききつぶやく楊海。
わざと誰かにたいして喧嘩をふっかけているようにしかみえない発言である。
「戸刈君。ホンインボウシュウサクって誰?」
「さあ?私は囲碁には詳しくないので」
「ふ~ん、日本人が知らないのか。それじゃ、やはり大したことはないのだろうな」
そういうが彼はまた聞く相手を間違っている。
「え、ええと。代表の皆様、ありがとうございました!」
どうやらこのままではラチがあかない。
ゆえにとっとと切り上げるのが先。
それゆえにあわててそういって切り上げようとするものの、
すたすたとそのまま檀上からおりてヒカルたちのもとにと歩いてゆく永夏の姿。
「永夏!?どこへいく!?」
「永夏が日本のテーブルに!」
「永夏!」
仲間たちが気がついてあとを追うが時すでにおそし。
【ああ。この記者だ。この記者がいったことは全部本当のことだぜ?誤解なんかじゃない】
古瀬村を指さしつつ、横にいるヒカルを挑発するようにいい放つ。
「何をしている!とにかくこっちへこいっ!」
そんな永夏をあわててその場からひきはがそうとするが……
……ぷちっ。
「え、で、では、北斗杯にむけて……」
秀策の名前を言われたような気がしたので、霊力を相手にあわせていた。
だからこそ、わかる。
「「……ふざけるなっ!!!韓国の棋士は昔の医大な棋士に対する尊敬も畏敬の念すら何もないのかっ!!
秀策がなんかたいしたこと、ない、だと!!よくそんなこといえるな!おまえは!!
お前は一敗もしたことないのか!!あいつは違う!打てば一度も負けはないっ!!
城碁においても十九戦して十九戦圧勝を収めた快挙をもっている!!
彼が現代の定石を覚えればそれこそ誰もかてるはずもないっ!!
すでにこの世にいない人を侮辱して、お前、何様のつもりだっ!!」」
き~んっ!!
「つっ!?」
「何だ!?」
「この声…」
それと同時に会場にいるすべての人々の脳にヒカルの声がこだまする。
「…た~…やったか……」
頭に血がのぼり力の制御も何もない。
それゆえに全力で声に霊力を上乗せしておもいっきり叫ぶヒカルの姿。
いきなり脳に直接響いてきたかのような【誰か】の声。
それが日本の代表選手の一人の声であることは疑いようはない。
ないが…
どうして日本語でいったはずの言葉をその場にいる全員が理解できたのかは誰にもわからない。
とにかく全員の脳に直接、その声は響いたのだから。
「何?じゃぁ、あの韓国の子、死人を侮辱したの?」
「そりゃおこるわ」
日本人は何よりも死者に礼儀をわきまえる種族でもある。
「って、城碁って何?」
「ほ~。打って一度も負けなし、の古の偉人、ねぇ。秀策ってすごいんだ」
ざわざわ。
…何だ?
こいつ?
いきなり直接頭に響いてきた声。
それと同時に一気に会場全体が何ともいえない圧迫感にと襲われる。
「「秀策のことを何もしらないくせにっ!!傲慢も大概にしろっ!!
それとも韓国の棋士はみな、過去、生きていた人たちにたいする尊敬の念はないのかっ!!」」
その言葉は…同郷、同国のものにとってはかなり痛い。
「ちょっとまて!我々はそんなことはないぞ!?」
「しかし、あの若者がきっぱりいいきったというのは、世界に韓国がやはりそのように……」
ざわざわ。
一人の発言だけではおさまらない。
何しろ国の代表者の言葉、である。
それはすなわち、韓国の人々がそのようにおもっている、とこの場にきている、
世界各国から招かれている人々にそのような印象を抱かせるには十分すぎる材料。
「と、とにかく!場をおさめなさい!智君!」
「え?あ、は、はいっ!」
【声】からどんな人物を韓国の代表が侮辱したのかが大体わかった。
自分ですらわかったのだから、おそらく会場にいるみなすべて、同じ、なのであろう。
「進藤!とにかくおちつけ!社!進藤を外に!」
このままでは彼の力が露見しかねない。
それゆえにあわててヒカルの手をとりで入口にとむかってゆくアキラの姿。
「え、え~。それでは北斗杯にむけて英気を養っていただくために。
選手団の皆様はここで退場いたします!皆様、どうぞ大きな拍手でお送りください!」
もう、もはやなげやり。
とはいえ、会場は落ち付くどころかさらにざわめきを増してゆく。
何よりも、この場にいたすべての人々に、ヒカルの【声】は聞こえたのだから――
ヒカルたちが退場したのち。
因島関係者もまた、レセプションに参加していた。
それゆえに急遽ざわめきをおさめるためにと、選手たちが退場したのち、
江戸時代における本因坊秀策の説明がなされ。
過去の偉人を馬鹿にした棋士。
ということである意味話題性は十分。
ゆえに各国の記者たちがこぞって彼の発言を、
【礼儀のなっていない韓国棋士!日本人棋士、怒る!】などといって取り上げたのは…いうまでもない…
は~……
おもいっきり溜息をつかさざるを得ない。
「楊海さんのいったとおりだ。どんなに碁がつよくても、永夏もまだ子供だ。
そんな誤解…さっさとといて終わりじゃないか。それをわざわざ絡むなんて……」
事のあらましをきき溜息をつかさざるを得ない。
「オレがどう思われようと別にかまわないでしょ」
ぶすっとした表情でクッションを抱き抱えながらいってくる永夏の姿。
「日本主催の棋戦に参加してるんだぞ!?日本の人たちに悪感情をもたれてどうするっ!」
安太善の叫びに横入りし、
「いや、日本だけじゃない。なぜかあの日本の選手の声は会場にいた全員に理解できていた。
つまり、韓国の棋士は過去の偉人をないがしろにしている。ととらえられかねない」
真実もうそのように捕らえられていたりするのだが。
「はじめは反応が鈍くてごく普通に拍手してましたけど・・・あの子供の声をきっかけにざわめきだしましたもんね」
「たしかに、あそこにいた連中の多くはスポンサー関連だろうけど。何人、碁をうてることやら」
「おそらく、拍手をしていた彼らは秀策を知らなかったんでしょうね」
たしかにそうであるのだが。
だがしかし……
「今の日本の囲碁はその程度なものなんですよ。勘違いとはいえ秀策をわるくいわれおこったという、
その古瀬村という記者には好感もつな、オレは。ははは!」
「笑いごとじゃないでしょぅ!?」
「馬鹿らしい。どうでもいいや。オレは自分の部屋にもどります」
そもそもこんなことで大切な時間を費やしたくはない。
ガチャ。
「「あ」」
部屋にもどろうと扉をあけようとすると、確認にいっていた人物とばったり出くわしてしまう。
「今、古瀬村さんから話をきいてきました」
「どうでした?」
「おおむね。秀英からきいた話と同じです」
「で?韓国の棋士の通訳がカタコトだったこととか伝えたんですか?」
「伝えました。…が、何分永夏が檀上ではっきり断言しちゃいましたし……あ、そうそう。おおごとになってますよ!
今回、秀策ゆかりの地の方がレセブションにみえられていたとかで。
われわれが退場したのち、本因坊秀策の実績やら人がらを説明なされて……
各国、【古の偉人をないがしろにした!】とかいって…日韓どころではないですよ。もう」
しかも、秀策は晩年、自らが感染するかもしれないのに、率先して治療に専念し、
若くしていのちを落とした人物でもある。
そんな人物を馬鹿にした…と知れば…いくら秀策のことを知らなかった人々とはいえ怒りもする。
『・・・・・・・・・・・・』
つまり、それは世界各国の囲碁関係者たちを敵に回してしまった、ともとらえられる。
そしてまた、人権保護の面においても……
ビルルル。
そんな会話をしている最中、安の携帯電話が鳴り響く。
「はい。太善です。あ。はい。…え、何ですって!?」
何やら携帯を通じて叫んでいる安太善の姿がみえていたりもするのだが。
「あはははは!」
何か自分の発言がどうやらかなり面白いことになったらしい。
ゆえに笑わずにはいられない。
ぼすっ!!
「何するんだ!」
いきなりクッションを投げつけられて思わず文句をいう永夏に対し、
「もういい!!永夏なんて勝手に嫌われてろ!!ボクはボクのことだけ考えてるよっ!!」
こんな状況になっても笑うなんて信じられない。
というか呆れてものもいえないとはこういうことをいうのかもしれない。
「わかってるじゃないか。明日の中国戦、まけるなよ?」
あきれつつも部屋をでてゆく秀英にそんなことをいっている永夏。
「まあ、囲碁の歴史はもう日本を離れたんですよ。塔矢行洋とともに、ね」
そう一人がつぶやくのとほぼ同時。
「永夏!!棋院からだ!棋院に苦情電話が殺到しているらしいぞ!地部んで説明しろっ!!」
さずかに情報が伝わるのは早い。
永夏の言葉を知った囲碁関係者たちや普通の人々。
当然といえば当然だが。
韓国棋院に苦情と怒り、説明を求める電話や押しかける人々で大変なことになりかけているらしい。
何しろ秀策のことを知れば人格者、としても完全にまかり通る。
そんな人物を否定した、となれば…国民性が問われかねない。
そもそも関係ない他の人たちまで同類にみられることは必然。
ゆえに人々の怒りはもっともといえばもっとも。
「…まったく、後始末がこりゃ、大変だ……」
よもやこんな騒ぎをしでかしてくれるなどとは夢にもおもっていなかった。
自分の国のチームは大丈夫、とタカをくくっていたのに。
「しかし、秀策ねぇ。彼などとっくに過去の棋士、さ」
ぴっ。
「そうでもありませんよ」
何やらわめく棋院関係者の言葉をさらっとかわして勝ってに電話をきりつつも、
「もし、彼がこの世にもう一度あらわれたとしたら、きっとものの半年で世界のトップにたつでしょう」
それは確信。
今でこそ形はかわれども彼の定石は現代の要として受け継がれている。
「そんな仮定の話に興味はないな。永夏。うるさいハエはこちらにまかせろ。
それより永夏。いつ世界のトップにたってくれるんだ?」
「ご希望は?」
「三年…いや、二年以内」
「わかりました」
いいつつも、そのまま部屋をあとにする。
「やってのけるでしょぅね。彼は」
「モノが違うよ。進藤とかいうただ永夏をにらむことしかできないやつとは」
彼らは知らない。
誰よりも敵にまわしたら恐ろしい存在。
それが進藤光という存在なのだ、ということを――
「…は~…なるほど。お前が前、韓国戦の大将になりたいっていったのはこういうわけか」
なぜ自分の頭に響くように聞こえてきたのかはわからないが。
そもそももしかしたらヒカルの近くにマイクがあったせいだろう。
そう勝手に解釈しているがゆえにあまり倉田は動じていない。
よもや会場にいたすべての人々に声が理解できている、などとは夢にもおもっていないのが倉田らしい。
「永夏と戦わせて!」
必至ともいえるヒカルの言葉。
「天狗になって好き勝手いうとるだけのことやろ。何でそこまでおこるんや?」
それにさっきのあの声は直接、脳に響くかのごとくにダイレクトに伝わってきた。
横で大声をだされたからそう思えただけなのかもしれないが。
「直接あいつは俺にいったんだ!ひっこめるかっ!」
しかもわざわざあんなことをあんな場所でいうなんて…っ!
ヒカルの怒りはまさに頂点、ともいえる。
うっ。
何だかヒカルの気迫だけで息すら止まってしまうほどの圧迫感がたしかにここにある。
「進藤の秀策へのこだわりはお前と初めて出会った大会でもわかってるけどな。
何しろ御器曽さんの偽物の署名の碁盤を偽物と一目で見抜いたほどの本因坊秀策の署名鑑定師だし。
さらにその碁盤をひっこめさす条件つけて御器曽さんが他の客にうっていた、客には劣性の碁。
それをおまえがひっくりかえして御器曽さんが負けたってきているし。お前、秀策がからむととてつもないよな」
それは倉田の本音である。
「?ちょいまて?署名鑑定師?何やそら?」
そういわれても社には意味がわからない。
「いつか、こいつがたぶん小学生のときの地方の大会でさ。
御器曽さんが素人を騙そうと偽の署名付きの碁盤を売りに出してたわけ。
ついでに新カヤを本カヤと化偽って販売させてたりしてね。
こいつ、それをみて一目で偽物って断言したらしくてさ~」
あのあと、念のために署名鑑定師がよばれ、本当に偽物、としっかりと判明し、
あの業者はどこの大会などにおいても出入り禁止を食らったことを倉田はきかされている。
「…何や、それ?…ただの秀策ファンやない…つ~こと?」
ふつう、秀策の字なんて見てもわからない。
というか達筆すぎる字は何とかかれているのかすらもわからない。
「だから、まあ、秀策の悪口いわれて頭にくんのはわかるけど……」
「倉田さん!お願い!韓国戦!俺を大将に!!」
は~。
だけどもそれはできないのが大人の事情。
「大将は進藤。お前は力があるが実績がない。だから進藤、おまえは副将。
でもまあ、明日の中国戦でいいところみせたら考えてやらなくもないぜ」
「は…はいっ!」
倉田の言葉にぱっと顔を輝かす。
これで進藤の力が十分に発揮できたら社は無理として進藤と塔矢で二勝一敗でかてるな。
そう内心おもいつつ、
「おい。中国戦の出来、不出来は三人ともみるからな。さあ部屋に戻ってさっさと休め」
いいつつも退室を促す倉田。
「ホンマや。こんな騒ぎでつかれと~ないわ。かえります」
それでなくても初めての大会で緊張しているのに騒ぎにまきこまれたくはないのが本音である。
「失礼します」
ガチャ。
そのままその言葉をうけてくるっとムキをかえて自分のとまっている部屋にと戻ってゆくヒカルの姿。
「あ!」
「おいっ!」
「…ったく、あいつ……」
何だか声をかけづらい雰囲気ではあったのは確かだが……
「進藤……」
聞かせてほしい。
君の口から。
saiと、秀策のつながりを。
「何やしらんが並の気合やないで。アイツの勢いにオレらものったろやないか」
「…ああ、明日の中国戦、全力でいくぞ」
部屋にともどり、息を吸う。
佐為は確かにいたのに。
誰にもまけなしの強さ。
それを…っ!
いくら天狗になっているかもしれない、といっても許せないことはある。
何よも尊敬し、また志半ばで自らも不本意であっただろうに逝かなければならなかった佐為。
死者を冒涜すること。
それはヒカルにとっても許せない行為の一つである。
くそっ。
あいつが…あいつがいれば、あんなことをいわせないのに。
いや、そうじゃない。
相手が何をいっているのかが伝わってきた。
それゆえについかっとなって言い返した。
相手がいってきたのは『弱いものこそよくほえる』といった内容。
くやしい。
自身の力はまだまだ佐為には及ばない。
塔矢行洋との一戦の棋譜。
すでに彼を思い出すのは棋譜を並べるしかすべがない。
そしてまた、自身の碁の中に宿っている彼の打ち方しか。
だからこそ、あの言葉を撤回させたくて…あいつはすごいんだ、とおもいしらせたくて。
だけども……
「……佐為……」
ヒカル、無理をしたら大会に響きますよ?
懐かしい声を思い出す。
彼がいなくなって毎日、どこかで彼の姿を探している。
あれから彼は夢の中にはでてこない。
言葉も交わすことはなく目がさめた。
夢でもいい。
もう一度…もう一度、佐偽に…逢いたい。
「……は~……」
「?楊海さん?」
何かめずらしく溜息をついている団長。
それゆえに首をかしげて問いかける。
「王。お前明日は覚悟しとけ。ありゃ、進藤君、手加減なくくるぞ?」
楊海とてヒカルが秀策をどれだけ心髄しているか知っている一人。
楊海が秀策=saiと信じている。
といったとき、ヒカルもまた自らもうなづいていた。
saiは、誰にも負けない強さをもっていましたから、と。
…過去形だったのが気になる、が。
「?進藤?日本で警戒するのは塔矢明だ、と棋院の上のものはいっていましたよ?」
どうやら彼までまだ話はつたわっていないらしい。
「…お前もネットやってるなら知ってるだろうが。ハンドルネーム【laito】。
彼がそのlaitoだよ。シンドウ・ヒカル」
ざわっ。
「って!?ちょっ!?楊海さん!?それってまさかあの王星にかった!?」
いきなりいわれて驚愕する以外の何ものでもない。
「というか、あのsaiの再来かとすらいわれてる!?」
「ありゃ、まちがいなく高永夏の発言で頭にきてるだろうしな~。
ああもう!!あいつもオレ同様、いやそれ以上に秀策を心髄しきってるしな~……」
ゆえにこそ、溜息もでる、というもの。
「…おれ、大将戦でよかったかも」
「陸~!やだよ!オレ!いくら手を抜いていたとしても!あの王星に中押しで勝ったことなんてぇぇ!」
「あ、そっか。実績優先でそんな子だけど副将なんだ」
「チャオ~!ル~!!」
何やら泣きごとをいっている副将にと選ばれている王世振。
「ま、ともかくがんばれ。でも怒りで棋力が落ちるタイプじゃないな~、あれは…どちらかといえば逆だな、うん」
「楊海さぁんっ!!」
しばし、楊海の部屋において王の何ともいえない声がこだましてゆく。
ここは?
ああ、これ夢だ。
俺、いつのまにねむったんだろう?
碁盤に向き合っていたのはおぼえているのに、ふと気付けば夢の中。
だけども、何だかとてもいいことがおこりそうな予感がする。
『佐為さんの形見です。肌身離さずにもっていてくださいね』
若獅子戦が終わったのち、碁会所で塔矢と打っていたときにやってきた女の子。
小学一年のときに彼女とはあったことがある。
そのときとまったく変わらない容姿で…
……その姿が他の人には視えていなかったことからあの子も人ではなかったのであろう。
いわれて手渡された彼がしていた耳飾りは常になくさないようにして首飾りにしてかけている。
それを手にしていれば彼がいつもそばにいてくれるような感じになれるから。
――ヒカル。
周囲は桃色の空間。
見上げればあたり一面、紅い桜の木々で埋め尽くされている。
そんな中、とても、とても懐かしい…ずっと切望していた声が聞こえてくる。
まさか。
だけど……だけども、まさか。
ばっと振り向いた先にみえるのは、さらりとゆれる長い髪。
「……サ……」
あまりの衝撃に言葉がでない。
あのときから一度も夢にあらわれたことはなかったのに。
「…佐偽っ!!」
さまざまな思いがごっちゃになりながらも何とか声をしぼりだす。
にこやかにほほ笑みをたたえ、見慣れていた鳥帽子。
「――ヒカル。ただいま」
「……佐為っ!!」
がばっ。
……え?
ふと気付けばそこは見慣れない部屋の中。
彼のほうに駆けてゆうことしたその矢先。
どうやらたどり着くもまなく目覚めてしまったらしい。
何で……
何で話すまもなく夢がさめるんだよっ!!
ふとみれば、どうやら碁盤の前で寝てしまっていたらしい。
今までこんなことは一度もなかったというのに。
夢の中で聞いたなつかしいあの声が耳から離れない。
話したいことはたくさんあったのに。
そう、たくさん……
こみあげてくる涙はどうにもならない。
明日は大切な一戦があるのはわかっている。
わかっていてもこればっかりはどうにもならない。
『おや。これは…なつかしいですね。あのものと私の対局の棋譜、ですね』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・え?
さらりと感じるなつかしい感触。
背後からかかるさらっとした髪の感触。
まだ夢が続いているのだろうか?
それとも…幻?幻聴?
確認するのが怖い。
だけども…幻でも、幻聴でもいい。
彼に…佐為にとあえるのならば。
おそるおそる背後を振り返る。
期待と不安をこめて。
ゆっくりと振り向いたその目にとびこんできたのは、白い布に長い髪。
そして…なつかしい笑顔。
ずっと探していた、あの……
「さ……」
夢なのかもしれない。
まぼろしなのかもしれない。
だけども…
『ただいま。ヒカル』
「――佐為っ!!!!!」
万感のすべての重いをこめてその名前を呼ぶ。
夢でもいい。
まぼろしでもいい。
自分の目の前に…今、ずっと探していた彼がいる。
それと同時にふわりと感じる包容される感触。
いろいろといいたいのに言葉にならない。
ただただ、さまざまな思いがヒカルの心の中を埋め尽くしてゆく……
『おや?』
ふと外が明るくなったことにふと気付く。
いつのまにか外はどうやら朝をむかえているらしい。
現世にもどってからずっと、ヒカルと話しをしていた。
碁を打ちながら。
『ヒカル。ヒカル?』
「何?」
夢でも幻でもいい。
が、眠ればこの素晴らしい夢が覚めてしまいそうで怖い。
ゆえに、一睡もしていない。
『ねてませんけど…大丈夫なんですか?ヒカル?今日は大切な大会、なのでしょう?』
ヒカルから弾丸トークのごとくにさまざまなことを聞かされた。
そして今、どんな状況になっているのか、ヒカルがなぜここにいるか、ということも。
そして自分があのとき消えてちょうど一年たつ、ということも。
気遣ってくれるこの言葉も、心配している顔も…すべてがいとしい。
「平気。それよりさ。佐為、うとうぜ!でもお前すごいな~!自分で石を持てるようになれただなんて!」
昨夜、戻ってきた佐為は新たな技を身につけていた。
自ら石をもつ方法がわかったらしい。
それ以外の物を動かす方法は、その応用性までは考えつかないらしく、
もっぱら普通に石をつかんで打ちつけるのみ、の技なのだが。
ちなみに、ひとつひとつの石をつかめるだけであり、大量の石を動かしたりすることはできないらしい。
それでも以前は石の一つすらつかめずに素通りしていたのでかなりの進歩といえるであろう。
ちなみに、石をもてるだけで満足し、佐為も他の方法を知ろうともしなかったらしいのだが……
それが何とも佐偽らしくて、説明をうけたときに、思わずヒカルは笑い涙をこぼしたほど。
『しかし、寝ないと体、もちませんよ?数時間、だけでも……』
「だけど……」
『睡眠不足では囲碁はうてません。思考回路も鈍りますからね。ずっと手を握ってますから、…ね?』
佐為といく度もうちながら、言いたいこと、いいたかったことをとめどなく佐為に伝えた。
でも出てくる言葉は想いで話しや、佐為がいなくなってからあったことばかりで、
まだ完全にヒカルの想いのすべては伝えきってはいない。
どうして戻ってきたのか、というのも怖くてきけない。
これは夢ですから。
とでもいわれたら、それこそショックは大きい。
佐為がいなくなって、こんな碁があったんだぜ?
と記憶にのこるすべての棋譜を佐為にと見せた。
だけども、これが夢でなくて現実だ、とはヒカルとて今だに信じがたい。
現実のような夢ならばヒカルはもういく度となくみている。
そのときは夢だ、とわからなくても、目覚めてそれは残酷な夢と理解できる…痛ましい、夢。
だからこそ…寝てしまえば覚めてしまうかもしれない、残酷すぎる幸せな夢。
現実なのか、夢のなか。
その判断ができない今の状況で、佐為がまた消えている現実にもどるのは…という不安がある。
せめて、せめてもう少し……
そんなヒカルの強い想いはまた佐為にも自然と流れ込む。
ヒカル…
どうして自分が再び現世に戻れたのか今はわからない。
あの少女がいった意味もよく。
だけども、自分が消えたことによりヒカルがどれだけさみしい思いをしたのかは…理解ができる。
『ヒカル。ずっと手をにぎってますから…ね?』
佐為の手はここちよい冷たさを保っている。
それは死人であり幽霊なのでぬくもりがないのは仕方がない。
『大丈夫。私はまた消えたりしませんから……』
そんな佐為の言葉がどこか遠くに聞こえたかとおもうと、ヒカルの意識は自分の意思とは関係なく、
深い闇の中にと沈んでゆく……
-第73話へー
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あとがきもどき:
薫:絶対に各国の記者たち、囲碁関係者はしっているはずですよね?秀策。
んでもって、そんな挑戦的な発言をとりあげないはずはなし。
何しろ人々がおもしろがってくいつくネタではありますし。
原作ではそこまでかいてなかったですけどねぇ。なけりゃうそだとおもうわけで(しみじみ
しかも、あれでよく韓国棋院に原作の中で苦情も、当人にすら非難もなかったのが不思議すぎ。
いくらお偉いさんばかりの集まりレセプション、だとはいえ…ねぇ(汗
まあ、私的にも死者を冒涜するのは何ものにも代えがたい許せない行為、とおもってますし。
そんなことすらわからないほどに、永夏くん、子供、ということだったんでしょうけどね(苦笑
いくらムカムカしてもいっていいこととわるいことの区別くらいはつく年齢v
最近は現実的にその区別すらできなくなっている大人も多々といるようですが…
それでおかしな事件ばかりがおこってますしね(遠い目……
何はともあれ、ようやく佐為、復活!!
彼が復活して何があったの?というパターンはおいおいと回想的に出す予定v
さて、次回は驚愕の日中戦!(笑
ではまた次回にて~♪
2008年9月26日(金)某日
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