まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

さてさて、ようやく韓国棋院での混乱(?)がヒカルの耳にととどきますv
それからようやくアキラの家にての合宿もどきさんにvv
ちなみに、次回にでてくる簡単スープさん。
三分でできますよ(笑
用意するもの。
コンソメスープの元。
レタス。
カニカマ。(他のでも可、だけどカニカマだと高級っぽくなります・・笑)
の三点さんv
お湯わかしてコンソメスープいれてレタスいれてカニカマをいれれば、あらふしぎv
簡単手軽な栄養度もぱっちりなあたたかスープのできあがりvv
手軽なわりに手がこんでいるようにみえるのがぐっとですv(笑
けっこういけますし、一度興味あるひとはおためしあれvv

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「ええ?…えっと。古瀬村さんは昨日、きたんですか?おかしいなぁ?今日、のはずですよ?」
「やっぱりかっ!」
通訳担当の金に確認してみればやはり昨日ではなく今日のアポイントであったらしい。
「まあ、でも。通訳はどうにかなったみたいですし~」
彼らは知らない。
とんでもない通訳になってしまっている、ということを。
「まあ、永夏だけでもいてくれてたすかったよ。
  いくら相手の勘違いかもしれなくても、誰もいなかった~
  というんじゃ、日本棋院における我が国の印象が悪くなるしね」
うんうん。
しばし韓国棋院の事務所内にてそんな会話が繰り広げられてゆく。
だがしかし、この一件が彼らをとんでもないことにつき落とす。
ということを、今この場にいる誰もが理解していない……

星の道しるべ   ~波乱の予感~

四月三十日。
土曜日。
「…やっぱり信じられんなぁ。高永夏がそんなことをいうなんて」
秀策、とても力ない、日本まける。
秀策、過去の人。
秀策から学ぶことはない。
日本弱い、秀策弱い、残念でした。
話し、もうない、いうことない。
…いくら、聞いても信じられない。
「ちぇっ!高永夏だけじゃないんだぜ?他の人もみんなオレに冷たかったんだから!」
自分が日日をまちがえているなどおもってもいないがゆえに周囲が冷たかった。
そうおもいこんでいることを彼は自覚していない。
「こんな不快な話、週刊碁に載せられないのはもちろん、ひとにもいえないよ」
本因坊秀策はそれほどまでに伝説と化している最強の打ちての一人。
なのに……
日本棋院内部にとある茶寮・遊山。
「ああ、いわないほうがいいだろうな」
そんな会話をしつつも店からでる。
と。
「!」
ふと店からでると棋院のエレベーターの前にと見覚えのある姿が。
「進藤君!」
「はい?」
いきなり名前を呼ばれて振り向く。
どうも最近寝不足になりがちなのはついついアキラと夜遅くまで一局うつか検討してしまうがゆえ。
ゆえに思わずアクビをかみころす。
「あ。え~と…たしか。出版部の……」
たしか天野さんの後任の古瀬村さん…だったっけ?
そうヒカルが名前を呼ぼうとする間もなくずんずんとヒカルの元にあゆみより、がしっとヒカルの両肩をつかみ、
「頼むよ!北斗杯がんばってくれ!特に韓国には負けてほしくないんだ!」
真剣な表情でそんなことをいってくる。

「おい!今いったろ!ひとにはいわないほうがいいって!」
・・・??
何だか様子がおかしい。
それゆえに首をかしげつつ、
「そりゃ、韓国にだって中国にだって負けたくないけど……」
そういえば、楊海って人、日本語できるらしいから。
あの佐為の棋譜のことで何かきいてくるかな?
そんなことをふとおもうヒカル。
あの時は、どんな形であれ佐為がいた証がほしかった。
それは今でも変わらない。
が。
もし、塔矢名人とかの棋譜もコミハンデいれたデータだったから気づかれたかなぁ?
とにかく、特に佐為の強さがわかる棋譜を送った。
あとから新初段シリーズのときの棋譜まで送ったことに気づいたのは…数か月たってから。
しかも、丁寧にハンデのコミの数をいれている棋譜である。
つまり、そのときのヒカルの思考回路はまだまともではなかったことを示しているのだが。
ま、今まで何もいわれてないし。
大丈夫かな?
そんなことをふと思う。
しかし、何やらこの彼らの態度は尋常ではない様子。
「何か、あったんですか?」
問いかけるヒカルからひきはがすようにしてもう一人いた別の出版社の職員らしき人物が、
わめく古瀬村を押さえている様子が気にかかる。
「気にしないで!いって!」
「あったんだよ!」
「・・・?」
古瀬村の反応はただ事ではない。
いったい?
「いや、韓国棋院の取材で、ちょっと冷たくあしらわれたから怒ってるだけさ。
  どうせこいつの態度がわるかったんだよ」
「違う!あそこまでいわれてくやしくないやつはいないよっ!」
どうやら韓国棋院で何か、があったらしい。
「やめろ!古瀬村!オレには信じられん!」
そういう人物の手をふりきりつつ、
「ウソなもんか!本因坊秀策なんかたいしたことないっていわれたんだよっ!」
ぴた。
ヒカルの動きが…一瞬止まる。
「…本因坊…秀策…なんか、たいしたこと…ない?」
声が震えるのがヒカル自身にもわかる。
「秀策から学ぶことなんかないっていったんだ!あんなの過去の人だって!」
「…なんだって?…韓国の棋士たちが…そんなことを!?」
ヒカルの声が低くなってゆくのがいやでもわかる。
「そう!日本を舐めて馬鹿にしてるんだ!」
「お前な!いい加減にしろ!進藤君!違う、違うからねっ!
  韓国の棋士がみな、そんなふうにおもってることじゃない!いったのは高永夏だよ、高永夏一人!」
あわててヒカルにいいわけをし、いまだにわめく古瀬村をこづきたおし、
「もう、さっさといけっ!」
これ以上いらないことをいわせないためにとエレベーターの中にと放り込む。
「……コ…ヨンハ?」
そんな彼らをしばし呆然とみつめつつ、今言われた言葉を頭の中で反復させる。
…北斗杯にでてくるやつだっ!
それは、ヒカルにとっては触れられたくない…最も深い部分。
佐為の存在を否定する言葉…に聞こえてしまう。
あいつは…あいつはあんなにすごいのに…!
なのに…なのにたいした…こと…ない?
ずっんっ。
ヒカルを中心に一気に日本棋院全体の空気が、まるで極寒の冬場のように一気に冷えてゆく。
伊達にヒカルの霊力は高まってはいない。
無意識とはいえ…ヒカルの内なる李霧は確実に周囲に影響を及ぼすほどヒカルの霊力は高まっている。

四月の終わりだというのに、この寒さは?
何よりも電気機器がこぞって絶不調。
それゆえにいきなりのことに対応に追われてゆく職員たち。
ヒカルの周囲に何ともいえない【場】が出来上がってゆく――

佐為。
おまえがいたら、あんなこと…いわせやしないのに。
くやしい。
佐為の力をしらないやつが、佐為を否定する発言をするなんて。
しかも、取材、という公式の場で。
一度、自分の部屋にともどりじっと掛け軸を見つめるヒカル。
おまえがきいたら何ていう?
自分はもう生きてはないのだから仕方ない、とでもいうか?
それも……
問いかけても、掛け軸にかかれた絵姿の佐為からは答えはもどってこない。
問いかけても答えがもどってこないのはわかっている。
だけどもきかずにはいられない。
胸の中に燃えたぎる怒りが静かにヒカルの中にと広がってゆく……
本日、土曜日は塔矢邸から一度家にともどり棋院にとたちよっていた。
そこであんなことを聞く、なんて…
午後から社と駅で待ち合わせ。
海王高は四月三十日はついで、という理由で学校自体が金・土・日の三連休。

おろおろしてしまう。
棋院によって昼にはもどりそのまま自室にこもってしまった息子・ヒカル。
そりゃぁ、国際戦とかいうのが近くていろいろあるのかもしれないけど……
自分の息子が日本代表に選ばれた、というのも信じがたい事実だというのに。
戸惑わずにはいられない。
そもそもそんなものはテレビの中の自分たちにはあずかり知らぬところの雲の上の話。
そんな感覚で今まで生活していればなおさらに。
帰ってきたときの息子の様子は声をかけられる雰囲気ではなかった。
まるで別人のような怖い表情をした息子の姿に戸惑ったのも事実。
それゆえにどうしていいのかわからずに、
ただ一人おろおろする美津子の姿が進藤邸の一階においてみうけられてゆく。

佐為。
おまえなら笑ってゆるすんだろか?
子供のたわごとですよ、とでも。
では、私の実力をみせてあげましょう!
とかいうのか?
俺は…俺は…高永夏ってやつは…許さないっ!!
「ヒカル~!そろそろいかないと~!時間がないわよ~!」
母の声ではっとする。
いつのまにか外は暗くなっていたらしい。
「…佐為。いってくるからな」
ぎゅっと首元のネックレスを握りしめ、掛け軸の佐為へと声をかける。
絵姿はただただ、その視線をじっとその絵の碁盤に向けているのみ……
「じゃぁ、これ。ちょっと重いけど。今日の夜食に食べてもいいし。
  明日の朝、食べてもいいから」
荷物をもって玄関にいくと母より手渡されるちょっとした大きな袋がひとつ。
かなり大きな紙袋である。
「ねえ。お母さんが一日くらいいってあげましょうか?去年のこともあるし……」
去年のこの時期。
正確には四月の終わりごろからヒカルはおかしくなり…そして倒れた。
原因不明のまま、というのが親の心配をあおっている。
もしかしたら、また再発するのではないか…と。
「いいってば。俺は大丈夫。それにお母さんなんかきたらみんな気にして碁の勉強なんかできないよ」
気をつかってしまうのはまずまちがいはない。
「そ…そう?」
それでも心配なことにはかわりがない。
ヒカルのいいぶんもわかるが心配なのは親心。
「で、今晩からまた三日間、塔矢君のうちに泊まったあとは?」
「一回。三日のレセプション前にもどるよ。じゃ、いってくる」
いって玄関をあとにする。
「気をつけてね。何かあったらすぐに連絡するのよ?」
いいつつヒカルを見送る美津子。
一年前から美津子はかなり心配症になっている。
それもまあ、仕方ないのかもしれない。
だが、心配されるたびに、自分が佐為を逝かせてしまった負い目が蘇る。
…明後日の五月の五日は佐為がいなくなって一年目……
でも、それ以上に、今は…
「高永夏っ!!」
ぐっ。
つぶやきぐっとこぶしを握りしめる。
秀策を…佐為を馬鹿にしたという人物を…何よりも今は…許せない。

社清春との待ち合わせは二十時半に駅のホームで。
「進藤!」
「…社」
さまざまな思いを考えていた。
ふと名前を呼ばれて我にと戻る。
「一か月ぶりやな」
「ああ」
あまりの人ゴミの迷いそうになったが、ヒカルの周囲のみ綺麗さっぱり人がいなかった。
それゆえにかなり目立って迷わずにヒカルを見つけられたのも事実である。
「…何や?この寒さ…」
ぶるっ。
ヒカルの霊気がヒカルの心情にあわせて高ぶっているがために、
一般の人々にすら影響を及ぼし、周囲の空気にすら影響を及ぼしているのが実情。
ヒカルはまったくもって無自覚なのだが。
他の利用客達も好き好んで…異様に鳥肌のたつような、何となく悪寒すらして息ぐるしい空間にはいたくない。
ゆえにほとんどの人々がヒカルから離れてヒカルが一人、ぽつんと立っている状態になっていたのだが。
【二番線にまもなく電車がまいります】
「おっと。挨拶はあとだ。これにのるぞ」
東京に点在する駅の電車はほとんど分きざみ。
それゆえにゆっくりと会話をしている暇はない。
挨拶を交わすまもなく入ってくる電車にと乗り込んでゆくヒカルと社清春。
電車にのりこみ一息つき、
「…なんや、東京のほうは電車の中の冷房、ききすできへん?」
「そう?」
二人が乗り込んだ直後、寒さを感じた大部分の乗客は他の車両にうつっている。
今、この現在この状態をわかっていないのはヒカルくらいであろう。
ヒカルの様子からしてどうやらそうでもないらしい。
そう勝手に判断し、
「塔矢の家はここからとおいいんか?」
とりあえずきになっていたことを問いかける。
「電車でいけば近いよ。駅からはだいぶあるけど。タクシーのるし」
「タ!?歩きでえ~んちゃうか?」
学生碁うちとしては資金は節約したいところである。
「社。このご時世、しかも夜。しかも子供が夜歩きしてて、万が一大会前に何かあったらどうする?
  …って、塔矢が」
たしかに今のご時世は何があるかがわからない。
しかももう時刻は二十一時近くである。
外はすでに真っ暗状態。
「……なるほど。しかし、塔矢明ともうてるんやな」
噂では塔矢明のことをきいたことはあるにはあったが、打つのは初めてである。
と。
くっん。
ふと匂いにきづき、鼻をくんくんさせ、
「…何かくいもんのにおいがする」
「ああ、これ?お母さんに持たされたんだ。みんなで食べなさいって。お弁当」
「・・・・・・・・・・・」
その言葉に多少うらやましくなるのは仕方ない。
社はヒカルの事情をしらない。
「何だよ?」
「いや、弁当作って応援、か。うちの親とは大違いやな、とおもて」
「?大違い?」
「ああ。高校卒業する、いう約束で何とかプロにはさせてもろうたけど。
  今でも碁打ちなんか、ていいよる。月曜と火曜、学校休むんもだいぶうるさくいわれたわ」
これだから碁打ちは…そんなモンはやめろ!
とまで。
「あ~。それはうちもこうこうくらいはでてないと世間体が!とかいってたから一応は入ってるけど」
「何や。お前、高校いきよるんか?」
てっきりいってないかとおもっていたのに。
「塔矢もいってるよ?まあ、俺の知り合いは高校にはいかずにそのまま家を出て一人暮らしをしいるやつもいるけど」
だけど、あれって自立にはなってないよなぁ?
というのがヒカルの本音である。
「家を出るのだけはあかんっ!オレが活躍しても何もつたわらへんっ!
  【月刊囲碁関西】なんて家族の誰が読むねんっ!」
おもわずヒカルの言葉に対して言い返す。
【次は~】
そんな中、次の停車駅のアナウンスが社内にと流れてゆく。
「おっと。降りるぞ。社」
アナウンスが流れるとすぐに電車は次の駅にと停車する。
そのまま二人して荷物を持ちなおし電車をおりつつ、
「オレが家に残ってオレの記事が載った囲碁関西を居間にひろげておいたるんや。まずはそこからや。
  ほんでいつかトップ棋士になってオレのことを認めさせたるっ!」
親はどうも碁打ちを馬鹿にしている節がある。
そんなものはやめてサラリーマンになれ、と毎日いってきているのが現状。
「ま、どこの家も感心ないのは一緒かぁ。ま、塔矢ん家は特別だろうしな。
  うちも両親ともども『囲碁?何それ?』の状態だし。何でそんなもんに?って感じ」
まあ、父親は若いんだから好きにさせとけ、そのうちあきる。
とかも母にいっていたようであるが……
「それにしちゃ、お前……それ……」
感心がないのにお弁当をわざわざ作成してもたせる。
というのはあまりどうも結びつかないような気がするのは気のせいであろうか?
「あ?これ?ん~。囲碁とは関係ないとおもうけど。
  俺さ去年の五月に倒れて意識不明になったことあってさぁ。原因不明で。
  そのあとも一か月くらい入院して、それから、かな?
  親があまり囲碁やっててもあまりうるさくいわなくなったの。
  これもさ、俺や塔矢っていつも打ち始めたら食事もしないほどに没頭しちまうから、
  絶対にたべなさい!って意味だぜ。きっと」
嘘ではない。
が、原因わかってはいるが、科学的な面からしてみればたしかに原因不明だったのだから。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あっけらかん、というような内容ではないとおもうのは…社の気のせいであろうか。
だがしかし、進藤光のことを調べたらたしかに去年の五月と六月はずっと不戦敗である。
入院していたのであれば、のどおりがゆくが……
だけども、それでは自分と同じく親に碁打ちとして認められていない、というのは同じなのでは?
ともおもえてしまう。
そもそも、そのことがあったからうるさくいわなくなった、というのならばなおさらに。
そう思うのは社の思いすごしであろうか?
「あ、タクシー!」
駅からでると、数台のタクシーが常に駅前に駐留している。
近寄ってきたタクシーにと乗り込み、
「塔矢邸まで、って…河合さん!?」
おもわず運転手をみて声をだす。
みればなぜかそこには河合の姿が。
よくよく考えればたしかにこのタクシーは河合の所属する会社のものではあるが…
「おう!進藤!」
「…何や?知り合いか?進藤?」
どうやらタクシー運転手と知り合いらしいヒカルに首をかしげてといかける社。
「びっくりした~。何で河合さんがここに?」
そもそも彼の担当範囲はこのあたりではなかったはずである。
「お前の母親から会社に連絡があってな。心配だから知りあいをできればまわしてやってくれ。って。
  去年のこともあるから、だとさ。連絡があったときちょうど近くに客をのっけてきていたこともあったしな」
事実、河合は客をのせてこの近くにときていたのだが。
それゆえにヒカルたちがたどり着くであろう時刻にこの駅の前でまっていた。
「…母さん…心配しすぎ……」
ヒカルの気持ちはわからなくもない。
ないが。
「そりゃ、おめぇ。去年むちゃくちゃ顔色悪いのに無理して一泊の仕事やら。
  あげくは旅行まで思いつきでお前しただろうが。それで心配なんだろうぜ。
  ま、のれや。お、そっちの兄ちゃんはたしか社とかいったな。まひとつよろしく」
「は…はぁ~……」
誰や?
どうやら進藤の知り合いらしいが……
怪訝に思いながらもひとまずタクシーにと乗り込む社。
しかし、今の会話で何となくだがつかめたものがある。
…どうやらこいつ、かなり親に認めてもらおうとして無理した挙句に倒れたんやないのか?
それは社の憶測にすぎない。
だが、もしもそうならば親が口出ししてこなくなったという理由もわかるというもの。
あまりいい、認められ方ではないにしろ……」
「名人邸まで、だろ。いくぜっ!」
「河合さんっ!安全運転だかんねっ!」
いく度か河合の運転するタクシーにのっているがゆえに思わず念をいれるヒカル。
念には念を。
といってもこの河合がきくともおもえないが……
ギュルルルっ!
「「うわっ!?」」
ヒカルの指摘は何のその。
そのまま河合の運転するタクシーはヒカルと社を乗せて塔矢邸にとむかってく。

「お~い、塔矢~」
ガラ。
そろそろ来るだろう、とおもって用意していた。
何だかインターホンがならされて、さらにはものすごく疲れたような声が玄関から聞こえてくるる「
ガラガラ。
それゆえにかけていた鍵を開けて引き戸式の玄関をガラガラとあける。
「ふ~。やっとついた~」
「よ!塔矢君!」
「って、河合さん!?…進藤?」
どうして彼がここにいるのだろう?
それゆえに疑問をこめてヒカルをみつつ視線でといかける。
「駅で河合さんにぱったりつかまってさ~。河合さん、運転荒すぎ……」
絶対にタクシーの運転ではない、とおもう。
切実に。
「……あ~…それで、か。社君が疲れたような顔をしてるのは。ま、あがれよ」
明も幾度か乗ったことがあるので河合の運転テクニックはよくしっている。
だからこそ納得せざるを得ないものがある。
「よっしゃ、荷物はオレがはこんじゃる!」
「…というか、河合さん…だから仕事中……」
どうも魂胆が丸見え。
だからこそ呆れて問いかけるヒカルに対し、
「かたいこというなって!な、かまわんだろ?」
ありありと塔矢元名人の家にはいってみたい、とおもっているのがまるわかり。
「…ま、いいですけどね。とにかくはいって」
いつまでも玄関先で立ち話、というわけにはいかない。
それゆえにヒカルたちを玄関の中にと促すアキラ。
そのまま玄関をくぐり、ヒカル、社、そして河合の順のひとまず家にとあがってゆくのを確かめ、
そのままカチャカチャとカギをかけなおす。
「そういえば、社君も高校、いってるんだっけ?」
「俺達は連休だけど。社は学校だったらしいぜ?」
海王高校はゴールデンウィーク前だというのに太っ腹にも三連休。
まあ、理由は春先の大会などがこの時期に多いために授業よりもそちらを優先。
という理由もあるのだが。
「ああ、それで夜に待ち合わせだったのか」
それでどうして夜遅くに待ち合わせ時間だったのかのどおりがいく。
「しかし。親が碁打ちやとええな。いろいろうるさくいわれんのやろ?
  棋士なんかよりサラリーマンになれいわれることもないわな」
毎日のようにそういわれていれば意地になるというもの。
「社の親ハプロになるのに反対だったんだってさ。俺の場合は試験勝ってに受けたけど。
  でもまあ、よく昔から就職するなら手堅い公務員!とよくいわれてたなぁ」
入院後は公務員になればいいだの何だのとはいわれなくなったが。
「まあ、うちの家族は爺ちゃん以外、囲碁なんて何もしらないしな」
「というか。君だってそうだったろうに。まつたく僕は本当に驚愕したものだよ。
  なぜあそこまで打てるのに何もしらない!?って。
  はじめてのときには握るの意味もコミの意味も何もしらなかったし。さらにはインセイまでも知らないときた」
「…ちょいまて……」
何だか今、アキラの言葉に聞き捨てならない台詞があったような気がするのは社の気のせいか。
「あはは」
「あはは。じゃない!それより、きちんと毎日教えた中韓の棋士の名前は覚えただろうな?進藤!?」
「あ、そういやさ」
「って、話をずらすな!さてはまだ覚えてないなぁ~!?」
「「・・・・・・・・・・・」」
何やら社と河合をそっちのけで喧嘩がぼっ発しそうである。
「と、ともかく。北斗杯はありがたい棋戦や。
  日本代表、とか国際大会。とかは碁を知らんでもなんやすごいとおもうしな」
「まぁ、たしかに。お~い。荷物はここにおいてもいいのか?」
そんな会話をききつつも、部屋の中にとはいってきて、荷物をそのあたりにおいていいのか問いかける河合。
「あ、はい。そのあたりにおいてください」
「よっこらせ。お!もう碁盤もでてるのか、いいね~!」
荷物をおいた河合の目にすばやく碁盤がとびこんでくる。
まあ、彼らしいといえば彼らしいが。
「…河合さん、交るとかいいだす気なんじゃぁ……」
「あん~?いいじゃねえかよっ!」
溜息まじりにつぶやくヒカルの言葉に即答している河合である。
「仕事中、でしょ!し・ご・と・中!!レッカー移動されちゃうよ!外!」
たしかにタクシーは塔矢邸の目の前に留めているままである。
駐車場にいれているわけでも何でもなく普通に路上駐車をしている状態。
「何やらイイコンビやな~。ともかく、北斗杯のパンフを居間においてきよったわ。
  あれをみれば家族も少しはオレを見直すんやないかな?…あとは勝つだけや」
そうすればあまりうるさくいわれなくなくなるはずである。
「あとは勝つだけ。か。言葉だけはたのもしいな。北斗杯のレベルをわかっているのか?
  まさか勝ちたいと願えば勝てる、などと幼稚なことを思ってるんじゃないだろうね?」
プロになったばかりで周囲のことを知らないがゆえにいっているともとらえられる。
「塔矢!いいすぎだぞ!思いだって時として力になるぞ!」
「そうはいうけど!以前、君の前に勢い勇んで挑んで負けたときの僕だって勝てる!
  と思って惨敗だぞ!?君に!ろくに石ももてなかった君に、だ!」
「昔のことをだすなっ!」
というかそもそもそのときうったのはヒカルでなく佐為である。
「昔じゃない!今だって僕は君に負けたくない、とおもうのに、ほとんど最近では負けっぱなしだしっ!」
それもまた事実である。
「それはお前が固く手堅くいきすぎるからだろうがっ!」
「…おひ?」
何やらまたまた聞き捨てならないというか信じられないような会話が聞こえたのは気のせいか。
ポッン。
「ま、気にすんな。この二人の言い合いはいつものこった」
唖然としている社の肩をぽんと叩きにかっと笑っていいはなっている河合の姿。
「…は、はぁ~……」
何だか気がそがれてしまう。
痛いところをついてこられ言い返せない自分の力も悔しいが。
というかそれ以上にこの二人の会話のほうが社にとってはかなり衝撃的である。
「それよりさ。碁盤をだしてんだから、うつんだろ?な?な?オレも混ぜてくれよ~」
「…だ・か・ら!河合さん!仕事!」
「一局、一局、なっ!?な!」
「…このおっちゃん、碁、うてるんか?」
「お!いうねぇ!社とかいったよな。驚くな~!」
確かに河合はアマの段位をもっているが、プロではない。
「…何だ気がぬけた…お湯、沸かしてくる……」
は~…
おもわず河合のセリフにため息をつきつつも、その場をあとにするアキラ。
「あ、じゃあ俺はお風呂にお湯はってくるわ」
勝手しったる他人の家。
ともあれアキラは台所へ。
ヒカルは風呂場へと向かうことに。

高永夏の棋譜はみた。
徐彰元に挑んで負けた国手戦の棋譜。
たしかに力があるのは認める。
が、佐為には遠く及ばない。
それなのに、過去の人だなどと言い切るなんて……
それでなくても昔の人には畏敬の念を抱くのは礼儀ではないのか?
だからこそ……いろいろな意味で許せない。
「中国や韓国の棋譜の研究よりまずは打とう。明日は倉田さんがくる。それまでに打てるだけうつ」
ピッピッ…
対局時計をセットする。
社と一局うった後、河合はしぶしぶとではあるが仕事にもどっていって今はいない。
「じゃぁ、とりあえず先に夕食と風呂にしないか?打ち始めたらとまなんいし」
ヒカルの言い分は至極もっとも。
「そうだね。でもそれじゃあ、君、寝そうだよね。進藤」
「あ~の~な~!」
きっぱりいいきられて思わず文句をいうヒカルをあっさり無視し、
「でもま、早碁にすれば眠気もとぶか」
居間まで風呂にとはいり、ご飯のあとにはよく寝てしまっていたがゆえに完全には否定はできない。
「夕飯は母さんが持たせてくれた弁当があるし。じゃ、用意するな」
「僕は何をしよう?」
「お皿とかもってきとけば?食べながらいろいろ相談もできるだろうし」
「なるほど」
そんな会話をしつつもそれぞれがそれぞれに行動を開始する。

…何だかとても落ち着かない。
そもそも、というか一番風呂を使わせてもらっていもいいものなのだろうか?
そうはおもうが社はこの家に来るのは初めてでゆえに手伝おうにも勝手がわからない。
仕方なくいわれるままに案内された風呂場にて汗を流し湯船にとつかる。
そういえば、よくよく考えたらここであの塔矢元名人もはいってんのか~
そう思うと妙に興奮してしまう。
何だか自分までもが名人になったような、そんな錯覚すら抱いてしまう。
「しかし…さっきのあの二人の会話……」
院生すら知らなかっただの、石もろくにもてなかったのに塔矢明にかった。だの。
…進藤光にたいする社の謎は深まるばかりである。
塔矢明と同等の棋力がありながら、どうやって碁の勉強をしてきたのかすらわからない。
自分より碁を始めたのは三年遅いというし。
しかも碁を覚えたのは小学六年の終わりという。
さらに驚くことには進藤光には師匠たる存在がいない、ということ。
だからこそ…余計にわからない。

「一手、十秒の超早碁~!?」
食卓を囲み、それぞれ風呂にはいったのちにひとまず夕食。
すでに時刻は十時近い。
「ああ、勝ちぬき戦、だ。勝ったものは打ち続け、負けたものは交代する」
ハムッ。
煮つけを口にと運び一口。
「オレは早碁は得意やで?しかしこの味付けかわっとんな~」
たしかにかなり薄味ではある。
「関西と東京との味付けの差もあるけど、うちは去年からおもいっきり薄味だし。
  だけど、塔矢?お前早碁で今まで俺にかったことね~じゃん?」
「ぐっ!」
「…ちょいまてや……」
何だか信じがたい言葉をまたまた聞いたような気がするのは気のせいか。
「でも、他の方法だと、君はぜったい!にねる!詰め碁やっててもねるしっ!」
「いや、不可抗力だし、どう考えても」
そもそも毎日のように明け方までとなっていれば眠気もおそってくるというものである。
「とにかく!北斗杯まであと三日。打てるだけうとう」
「でもさ。いちいちにぎるのか?」
ヒカルの質問は至極もっとも。
「そうだな…握りははじめだけ。そのあとは勝つ者が白をもつ。コミアリで」
白にコミがつくことから、連続して打ってつかれていてもそれだと問題はあまりない。
「コミの数はどっちにすんだ?五・六?」
「北斗杯が六目半だから、それにあわせよう」
「了解。あ、順番どうする?じゃんけんか?」
「そう…だね。進藤とはいつもうってるし。社と僕がさきにやってみてもいいかな?
  進藤はこの前、社と予選でうってるし」
いいつつも、コロッケを口にしてパクリと飲み込む。
「あと、進藤。もし気分がわるくなったらすぐにいうように!
  今、また去年のように倒れられてもこまるからなっ!」
まあ、アキラもあの倒れた理由は健康上の理由ではない、としってはいるが。
やはり気になるものはしかたがない。
「…その心配は、ない。――倒れられない、理由が、今はあるから……」
ぞくっ。
ヒカルがつぶやくと同時、瞬く間に部屋の空気が真冬のように冷たく変化する。
それゆえにぞくりとアキラと社ともども悪寒が全身におそいくる。
「進藤。僕はまあ母でなれてるからいいけど。社、かたまってるよ?」
アキラはよく母がおこったときにこの空気になれているのでさほど驚かない。
が、社は別。
「え?あ、わるいわるぃ」
「?」
ヒカルがそういうとどうじに空気がまたまた変化する。
社には何が何だかわからない。
別にヒカルは意識したわけではないのだが、無意識に霊力を相手に感じ取らせてしまったようである。
しかし…この進藤の反応、【何か】があったな。
そう思うが今はとにかく聞かないほうがようであろう。
慣れている自分ならばともかく、社が驚いて北斗杯で使いものにならなくなったりすれば大いに困る。
「ま、そういえばさ。社は何で囲碁に興味をもったんだ?来る時もききそびれたけど。
  俺の場合はこづかいがらみだったけど」
おこづかいめあてに蔵にいき、そこで佐為とであったことがすべてのはじまり。
「は!?こづかい!?」
ヒカルの言葉の意味がよくわからずに目を点にして問いかける。
「進藤はね。小学のころ社会の成績がわるかったからって、
  おこづかいとめられて。祖父の平八さんからおこづかいをもらうためにやる気になったらしいよ…」
それでアキラは当時としてはかなり憤慨したのだが。
事実は似ているようでことなるのだが。
一応ヒカルは表向きはそういうことにしているのも事実。
まさか幽霊が取り憑いて『碁をうってくださいっ!打たせてください!!ひかるぅぅ!!』
と、騒ぐから始めました。
とは普通はいえない。
「オレの場合は通学路に関西棋院があって、中がガラス張りでみえるんや。
  それで何してるのかな?とおもったのがきっかけやな」
しかも当時は小学三年生。
大人たちからみればかわいいこども。
おやつ目当てでよくかよい、自然と覚えていったのだが。
「でもさ。子供相手におっさんや爺ちゃんたちが相手してくれてさ。
   たべもんやらこづかいやらたくさんもらえんのがうれしかったな~」
実際、社が始めたのもそういう理由なのだから仕方がない。
「…は~…社も進藤もこづかいからみ…ね……」
そんな説明をうけアキラとすれば溜息をつかざるを得ない。
「おまえん家の場合は、おまえが生まれる前からおじさん、プロだろ?
  しょうがないよ。うちなんかいまだに囲碁のことなんてな~んもわかってないしな」
「うちやてそうや。みてろ。絶対におとん、おかん達に認めさせる!」
ある意味、ヒカルと社は似ているのかもしれない。
もっとも、社については父親がかなり頑固…という点では、
ヒカルの父親はかなりおっとりしているのでそのあたりの差はあるが。
「でもさ。社ん家ってサラリーマンになれっていってたんだろ?
  このご時世に?いつリストラされるかわかんねぇのに?
  うちは昔から公務員だとくびきりもめったなことではないから将来安定のために働くなら公務員!
  とよくいってたぜ?」
「お!そっか!今のご時世、リストラとか倒産とかありまくりだしな。
  棋士にはそれがない。よっしゃ!説得材料ひとつゲットやっ!」
何だかアキラからしてみれば頭の痛くなるような会話、と思うのはアキラの気のせいであろうか?
しばし、わきあいあいと話しをしつつ、三人はそれぞれ夕食を平げてゆく……

ジャラジャラ。
石を握り、先番を決める。
「オレが先番やな。おねがいします」
「お願いします」
一手十秒の超早碁。
負けたものが交代し、勝ったものはその場にのこる。
佐為。
おまえの強さは俺がよく知っている。
そしておまえの碁は…俺の中にある。
……絶対に、高永夏に発言を撤回させてやるっ!!
すうっ。
自分の番になり、盤面の前にとすわり大きく息を吸い込む。
と、同時に一気に部屋の空気が一変する。
ぶるっ。
「…何や?この寒さ……」
おもわず横にいた社が身震いしてしまうほどにわかる変化。
春先の気温、ではない。
よくよくみればそれはヒカルから発せられる気迫のようなものだと理解するのに多少の時間を要してしまう。
…この気合というか、気迫のこもり方は……
もしかして、また、sai、又は秀策のことで進藤、何かあったのかな?
対局するアキラはふとおもう。
彼がこのような雰囲気を纏うのは大概この二つのどちらかがらみであることを、
アキラはこの一年の間によ~く学んでいる……

「と、いうか、おきろ~!!!」
幾度か目の対局ののち。
終局してみれば何のことはない。
あぶれていた社が背後の畳んでいる布団によりかかり完全にと爆睡中。
結局のところヒカルの気迫におされてか、交互の社とアキラとが交代してはヒカルと打つ。
という形になっていたのも事実。
「…だ、だめだ。おきやしねぇ~……しゃ~ない、少しねるか?」
「そだね……」
ふと時刻をみればいつのまにやら時刻は夜中の三時をとっくにまわっている。
「あ、片づけとかないとな」
何だかぐ~すかねている社をみていると気がぬける。
未だに台所や夕食の残りものもそのままである。
それゆえに一度休憩をとることにして碁盤の前から離れる二人。
「今のうちに朝ご飯でもつくっとくか」
作り置きして冷蔵庫にいれておけば問題はない。
台所担当にヒカルがなり、アキラはアキラで寝どこの用意。
とはいえ、すぐに打てるように碁盤はだしたままの状態にしておくことにぬかりはない。
「この社って君なみだよね~」
すぐに寝るところなど特に。
「俺はこんなにずぶとくないっ!」
「いや、同じくらいだっ!」
すぴ~……
寝どこをひいてそこに二人係で移動させてもまだ寝ている社をみつつ、
そんな言い合いをしているアキラとヒカル。
本日、何度めともいえない、みもふたもない言い争いがしばし勃発してゆくのであった……


                                -第72話へー

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あとがきもどき:
薫:

さて、今回の小話は、もしも、とした場合の小話しをばv
この小話のバージョンで、もし佐為が復活しなかったら?
の状況をばv
何はともあれゆくのですv


進藤の中には勝てない誰かがいる。
それはわかる。
彼女はいつも自分を通して誰かをみている、ということも。
だけども…自分をきちんとみてほしい。
彼女が変わったのは、彼女がずっと手合いを休んでいたころから。
復帰した彼女はまるで何かを追い求めるかのごとくにとにかくひたすらに碁に熱中していっている。
その彼女の姿勢は嫌いではない。
だけども…決まって、思う。
この時期、四月と五月。
この時期、彼女は顔色もわるくそれでも対局はこなし、さっさと切りあげて席をたつ。
それも決まって日本棋院の手合い場においての対局のときだけ。
彼女の親友の藤崎朱里という少女が奈瀬明日美、という少女に相談したことから、
アキラもその理由をしった。
彼女に碁を教えたある人が死んでしまったこと。
それが進藤光をずっと苦しめているのだ、と。
彼女を立ち直らせるにはどうすればいいのか。
それはわからない。
だけども…おそらく、その相手というのは……sai。
それだけは、わかる。
彼女の手筋にはsaiのそれがあるのだから。
輪廻転生。
そのときふとテレビでみかけたその言葉。
それをもとに彼女を立ち直らせられれば、とおもって家にと出向いた。
彼女を立ち直らせたのは自分のためでもあった。
彼女は唯一、自分と互角に渡り合える相手だ。
そう、彼女と初めて対局したあのときから、ずっと自分は彼女を求めていたのだから。
だけども…今は、それがどこかさみしい。
彼女は…自分をみているようで、みていない。
あの世にいる人物、しかも父にすらかったsai。
彼に…自分は適うはずはないのだろうか?
それでも……
「お母さん、死んだ人に…かなうすべはないのかな……」
ふと、母に何となく聞いてみた。
「明さん?」
「たとえばね。大切な人がより大事にもおもっている人が死んでしまったとき。
  その自分が大切におもっている人がずっとその人を追い求めていたら…
  その子を大切に思っている人は、どうすればいいんだろう……しんだ人はもどってこない。
  …前を向いていってほしいのに……」
それは本音。
自分を通してsaiをみるのでなく、自分自身をみてほしい。
それは酷なことなのかもしれない。
だけどもそうおもわずにはいられない。
「そうね。たしかに後をむいていてはダメだけど。だけど、明さん?
  その気持ちを共有することにより、その子も、死んだその人も救われるものがあるとおもうわよ?
  その死んだ人の想いではおそらくその子だけのものではないのだろうから」
そう、思いでを共有することによりひとは救われることはある。
だからこその母の意見。
それがヒカルのことをいっているのだ、と明子は何となくだが理解している。
「たとえば。その人の生きた証をその子とともに一緒に記録にのこす、とかね」
「・・・・・・・・・・・・」
想い出は心の中にあるもの。
だけども想いでを共有することにより、またさまざまな人に知ってもらうことにより救われることもある。
それは明子なりの精一杯の息子を、そしてヒカルを思いやった提案……



このもしも、ば~じょんでは、ヒカルを立ち直らせたのはアキラです(笑
アキラの指摘で自分の碁の中に佐為をみつけて前をむくヒカル、という設定さん(まて
いあ~、ひとつおもいうかぶといろいろなそれこそ平行世界(パラレルワールド)のごとくに。
いろんなバージョンが思い浮かぶものなのですよv(笑
この後、ヒカルと相談し、saiさんがいた証を作成してみない?
といわれて、はっとしたヒカルが決意してそれを実行する、という。
ちなみに、さすがに内容が内容なだけに同人誌のような感覚で~
何しろ本因坊秀策の名誉にもかかわりますしね(笑
ヒカル、ちなみに絵もかなり上手なのでそのあたりは漫画のような形をとって作成してみたり(まて
そののち、それでもさみしいことにはかわりがない。
アキラは逝ってしまった大切な人は君の心の中にいてもいいから、
生きている人では僕をずっとみてほしい。
君とずっとともにいきていきたい。
とかいってプロボーズ(まて
ちなみに、ヒカルのさみしさにあるいみつけこみさんというのもありますが(だからまて
ちなみに、アキラはsaiが幽霊であることを聞かされている唯一の人物という設定さんv
まあ、なかなかふんぎりがつかないヒカルにアキラは保健かけて
先にヒカルの両親(特に母親)とかには結婚前提に~というのを言いだしてたり(まて
アキラとしてはヒカルがなかなかおもいきりつかないから、
できちゃった婚にすれば問題なく結婚できるかな?
とかいろいろ作戦をたてて実行にうつしたり(こらこら
いや、彼って情熱家だとおもうんですよね~原作から判断しても。
何しろヒカルおいかけてむちゃして中学の大会にでたほどだし(笑
何はともあれ、次回からはまともな(?)小話にいきますねv
ではではvv

2008年9月24日(水)某日

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