まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

とりあえず、アキラにカミングアウトにする時期、いくつかあるパターンの中で、
どれにするか未だに悩み中(笑
やっぱり無難なのは北斗杯最中、ですかねぇ(まて
そのほうが何かとのりつっこみがたのしいもので(だからまて
何はともあれ、まだまだ当分かかりそうですが、ともあれゆくのですv
そろそろちまほらとヒカル&アカリの恋愛色をもちらほらと(笑

#####################################

「へ~。本当につくったんだ、同好会」
「うん!あのね。久美子とそれと私とあと優衣の三人なんだけど」
女のコばかり、というので多少ほっとするヒカルである。
夜。
いつものようにヒカルの家を訪れてのアカリ報告。
「お前、遅くなりそうなときいえよ?ついでだし。棋院帰りくらいによれるから」
アカリもまた自転車通学、ではある。
といっても電車を乗り継いでの自転車通学なのでとある駅に置き自転車をおいてある。
「普通の手合いだと放課後よれるけど、いこっか?」
「う~ん、まだいいや。それに今、ヒカルも北斗杯とかで大変でしょ?」
「そういえば何か周りがさわがしくなってきてるよな~」
「もう!ヒカルったら!代表の一人なんだからしっかりしてよ~!」
「あはは。悪い悪い。それよりさ。お前…ここ、まちがってるぞ?」
「えええ!?」
「というか、なんで俺ん家で宿題?」
「おちつくし」
「何だよ。それ」
たわいのないやり取りではあるが心地よい。
「ま、おわったらいえよ。俺は俺で本よんでっから」
「は~い」
いい年をした男女が二人密室で二人っきり。
だというのにそれぞれ一人は宿題をし、一人は本をよみ…何かかなりかわっている。
第三者がみたら絶対に断言すること請け負い。
だが、それがヒカルとアカリの性格というか付き合い方、でもある。
それは、今も昔もかわらない……

星の道しるべ   ~動き出した運命~

四月十三日。
水曜日。
「そういえばさ。おじさんの中国リーグ出場日がきまったんだって?」
「うん。来週の木曜日。場所は深圳しんせんでね」
本日、二人して異なる棋戦の予選があったのだが、いともあっさりと昼になる前にと中押し勝ち。
高校に入学したとはいえ、対局数が減るわけでなくむしろ勝ち進むごとに増えてゆく。
それはアキラのほうとて同じこと。
「中国かぁ。一度いったみたいなぁ~」
何しろあっち方面のことは中国のほうはかなり詳しいハズである。
何より日本と異なり間違いなく偏見の目でみられることもまずめったとないであろう。
中国、四千年の歴史は伊達ではない。
「そのうち、国際棋戦で嫌でもいけるよ」
「ハハ。そうできるように頑張るよ」
どちらにしても、高校などに関しては出席日数なども影響する。
最もそのあたりのことも海王こうこうはいろいろと免除方式があるらしいが。
棋院を出たものの、
とはいえお腹もすくのでひとまず昼前ではあるがお昼を食べに近くの回転寿司にとはいっている二人。
どうでもいいが、寿司を食べつつ会話する内容では絶対にない。
「いっとくけど!僕もまけてないからな!」
二人はどうみても学生くらいの年齢であることは一目瞭然なのであるが、
とはいえ、北斗杯のこともありニュースで取り上げられたこともあり、一応補導されることはないらしい。
ちなみに、店の人もたまたまそのニュースをみていたのか、
二人に記念にサインを、といってこられたりもしたのだが。
「おじさんっていつでんの?棋譜とかみれんの?」
「棋譜はたぶんのこらないんじゃないのかな?団体戦のしかもリーグ戦だし。
  あ、でも父が戻ったら…いや、父がでるからもしかしたら誰かが棋譜くらいはつけるかも」
何しろ世界の塔矢行洋、である。
引退したとはいえその実力は健在。
ゆえにそういった行為を好意でするものがいても不思議ではない。
「あ、これ中国リーグのパンフ。君にも上げようと思って余分にもらってたんだ」
いいつつも、鞄の中より取り出して一冊のパンフレットを取り出すアキラ。
「へ~。でも俺、中国語はわかんねぇょ?」
「覚えたほうがよくない?今後のために?」
確かにそれはそうかもしれないが……
「ふ~ん。とりあえず、いざというときは裏ワザつかうし」
そもそも、相手の霊力に波長を合わせればどうにか声も拾うことも可能らしい。
というのは以前の霊場めぐりで一応知識として習得はしている。
最も、実際にやってみた試しはまだ一度とてないのだが。
「裏ワザ?…あ~、アレは頭いたくなるからやめといたほうが……」
そんなヒカルのセリフに思い当たることがあり、こめかみを押さえてつぶやくアキラ。
「そういえば、お前、明子おばさんによく昔やられてたらしいな~」
そのあたりことは一応明子からヒカルはきかされている。
まあ、注意をするときにその方法をつかえばたしかに子供心的にはかなりきくであろう。
「…アレはおもいっきり頭にひびくよ」
しかも直接霊力を使って相手の脳に言葉をたたきこむ方法。
知らないものがやられた場合…その反応と思いは…おしてしるべし。
「それよりさ。これからどうする?」
「あ~。一応、石心に顔をだそうとおもってさ」
最近あそこによっていない。
「なら、そこでうつ?」
「あ。そうしよっか」
打つのはどこでも同じである。
そもそも周囲にギャラリーができようが、二人は打ち始めれば対局のみに集中する。
この時期、ヒカルとしてもあまり住宅街の外を歩きたくはない。
鯉のぼり…
ダイレクトに一年前のあの日、佐為が消えてしまったことを思い出しかなりこたえてしまう。
「それより、へ~。北京チーム対、深圳チームか。これ、英語版もあるんだ」
丁寧に英語表記がされているのがありがたい。
完全なまでに英語はできないものの、何がかかれているのか簡単なことくらいはわかる。
「英語は結構、共通語に近いしね。ちなみにもう一つのチームのほうには、
  韓国の徐彰元が所属してるよ。父と彼はよく以前、国際棋戦でNo1の座を争っていたしね。
  最も、だいたい父がかってたけど」
そういわれてもヒカルにはピンとこない。
「へい。おまち。しかし、何ですねぇ。塔矢先生、お元気なんですか?」
どうやら従業員の一人が塔矢行洋のファンであるらしく、
注文をうけていたスシを出しつつカウンターの中から問いかけてくる。
「ええ。元気いっぱいですよ。来週からは中国ですし」
実際、引退してからの父のほうがかなり活動的であることは否めない。
「でもさ。束縛のないフリーの碁うちになりたかったとしても。
  今の日本の規約じゃあ塔矢のおじさん、棋戦出場とかにはでてこれないんだよな?」
「たしかに。規約が変われば囲碁界も面白いよね。
  日本棋院や関西棋院の棋士でなくても、どの棋戦も誰でも参加できるようになれば」
「ああ。いろいろな人と打てるしな。ネット上のように」
「でも今はネット棋戦ってものもあるよ?」
「そなの?」
「…し~ん~ど~う~?」
「と、とにかく。でも、それいいな~。誰もが参加できる棋戦ってさ。規約変更しないかな?」
とりあえず何やらアキラの声が低くなったのをうけてさらっと方向転換。
「あはは。いいね。それ。韓国棋院、中国棋院、はてはアマの人たちも参加可能、か。
  でもそうなったら日本にいながらいろんな人と打てて勉強になるね」
実際にそうなったらたしかに面白い。
「そうすりゃ、おじさんのことだから、フリーの塔矢行洋として参加してきそうだし」
「するする!お父さんなら絶対!」
……幽霊にはそれでも参加資格はないんだろうな……
そうおもうと少しさみしくなってしまう。
今の日本の主たる棋戦の規約においては、引退した棋士には…出場の資格は…ない。

「よぉ!久しぶりじゃねぇか!お。今日は塔矢Jrも一緒か!」
「こんにちわ」
「こんにちわ」
どうしても父の子どもとしてしかみられないのはもう慣れた。
それでもどこかさみしさを感じずにはいれないことに周囲の人々は気づいてはいないであろう。
それゆえに苦笑しつつも挨拶をするアキラと、とりあえずその場にいる全員に挨拶しているヒカルの姿。
「お!進藤プロに塔矢明プロだ!」
「本当だ!」
二人の姿をみてその場にいた客たちがそんなこえをあげてくる。
「やあ。進藤君に塔矢君。年末にきてくれて以来だね。いらっしゃい」
そんな二人にマスターが声をかけてくるが。
「お前なぁ。ここへはただで通わせてもらってたんだし。もう少し顔だせよ」
いいつつもぐしゃりとヒカルの頭をなでている河合。
「ほんと、君ってうちだと遠慮してこないのにね~」
いくら席料はただでいい、といってもヒカルはそれはよくないから、といって。
なかなか囲碁サロンのほうで打つことはままならなかったというのに。
「河合さん。うちだって進藤君のおかげでお客さんに喜んでもらってたんだから」
何しろ院生と打てる、というので当時かなり客が増えたのは事実である。
「そういえば、二人とも、北斗杯の代表決定ですってね」
「楽しみにしてますよ。北斗杯」
口ぐちにそんな二人にと石心の中にいた客たちが声をかけてくるが。
「まあ、楽しみよりは不安のほうがおおきいけどな。何せ相手は中韓だ」
「バカヤロウ!何が不安でい!バリバリ期待しているぜ!オレは!」
いってさらにぐしゃぐしゃとヒカルの頭をわしゃわしゃしつつ、
「え?おい、わかったか!?きたいしてっからな!」
ヒカルにそんなことをいってくる河合の姿。
くす。
そんな二人のやり取りはここにくればよくみられるのでおもわず横にいた明も笑ってしまう。
「わかったわかった!期待したきゃしたいだけすればっ!」
どうにか河合の手を振りほどこうとしてヒカルがそんなことをいっているのも、
ここにくればほとんど恒例儀式のようなもの。
「本当。ここってうちの碁会所とはまったく雰囲気が違いますよね」
アキラのところはこういったアットホーム的な雰囲気はあまりない。
「まあ、うちはうち、よそはよそ、だからね」
確かにそれはわかるが。
アキラは基本、自分の家が経営しているあの場所しかしらなかったので驚いたのはいうまでもない。
「そういえば。当日って君たちは直接家からいくのかい?」
「あ。いえ。大会前日のレシェプションのこともありますし。全員部屋がとってあります」
何やらいまだにじゃれあっているヒカルと河合を横目になごやかにそんな会話をしているアキラの姿。
「勝てますか?」
「とにかく。全力でいくのみ、ですよ。ハハ」
勝てますか、といわれてもハイ、とはいえない。
勝負とはやってみなくてはわからないものなのだから。
「まったく。うちの男どもは。プレッシャーかけてどうすんだか。はいよ。塔矢君、進藤君」
そんな男たちの会話をききつつも、カウンターのむこうよりコーヒーを二つだしてくるおかみの姿。
「あ。すいません」
「そういえば。塔矢君。塔矢先生が中国の北京リーグに入ってる件だけど。今度、いつ初戦になるんだい?」
「ああ。それでしたら来週、木曜日。場所は……」
しばらくどうやら話題は、塔矢行洋のことにそれたらしい。
しばしそんな光景が、ここ石心においてみうけられてゆく。

「来週。中国にいったらまたしばらくかえらないから。よろしくね。明さん」
夜。
家族団らんの夕食中。
そこでアキラにと話しかけてくる明子の姿。
「お母さん、今度もまた一緒にいくの?」
父が退院後、そして引退したのちいつも母は付き添っている。
それゆえのアキラの問いかけ。
「ええ。私もいろいろと勉強したいしね。私力はまだまだ、だと思い知ったし。
  あちらのほうの歴史は長いから」
明子の能力に関する筋においてもあちらのほうがいろいろと研究は進んでいる。
「それより、明さん。また一人になるけど、何なら家政婦さんをやとってもいいのよ?」
それくらいの余裕はおもいっきりある。
まあ、母親からしてみれば息子に自立できるほどの能力をついでに身につけてほしいのはあるが。
「ううん。必要ないよ。進藤君とも話しはついてるし。それに市川さんも手伝いにきてくれるし。
  市川さん、料理のレパートリーが豊富でさ。彼が負けずとがんばるもので、僕も!
  と頑張ってはいるんだけど……」
それでもいまだにアキラの料理は形にすらなっていない。
「あらあら。…でも、明さん?くれぐれもこの時期、進藤君に鯉のぼりをみせたらだろよ?
  何がきっかけになって再発するかわからないからね」
いくらお守りがあったしとても、当人の気力次第。
その気力が低下したらそれこそ…どこまでもつか…それは明子でも理解不能。
「わかってる」
去年のような思いはアキラとてしたくない。
なので母の忠告は確実に守るつもりのアキラである。
「お父さん。日本にはいつ戻るつもりですか?」
とりあえず真剣な表情でうなづきつつも、話題を父にとふりかえす。
「北斗杯はみにいくつもりだ」
表情を一つもかえることなく淡々といってくる。
まあ、これが行洋の性格なのだから仕方ないが。
「北斗杯、っていえば。この間私デパートで外商部の人にいわれたわ。
  塔矢明さんに期待してます。日本チームのためにも頑張ってください。ですって」
母の言葉をうけ、
「出版部にもそういった手紙が何通もきてるんだって。団体戦はやっぱり注目されるんだね」
中には進藤光さん、がんばってください!
という手紙もかなりあるらしいが…
ヒカルの経歴はこれ、といって今まであったとすれば、若獅子戦優勝くらい。
それゆえにプロフィールというか簡単な人物紹介になぜかプロになってすぐに入院し、
奇跡的に回復した棋士、と載せたらしい。
そのためかヒカルもまた人々の心をつかんだらしく応援の手紙が舞い込んできている現状。
人という心理は病み上がりの人が頑張る姿を応援する傾向がある。
それはつい自分自身と重ね合わせてしまうがゆえの心理、なのかもしれない……
しばし、いつもの食事の光景がここ、塔矢邸においてみうけられてゆく……

「ただいま~」
ガチャン。
「待って。ちょうどかえってきたわ。ヒカル。和谷君から電話」
玄関をはいると、母がちょうど電話をもって何やらいっている。
「和谷?」
家にかけてくるなんて珍しいな。
そうおもっていると、
「ほら、はやく」
「あ、はい。もしもし?…あ!?携帯!そっか!電源いれるのわすれてた!」
なぜ家に?
としばらく考えていたが、よくよく考えれば対局中、電源をきりそのままほったらかしていた。
それゆえにそのことを思い出し受話器をとって思わず叫ぶ。
「…お前らし~な~。まあオレもひとのこといえないけど。
  どうせそんなこったとおもったぜ。それより進藤。今週の週刊碁、みたか?
  北斗杯のメンバー、全員発表されてたろ?」
どうやらそのことで電話をしてきたらしい。
「うん。あいつもでてくるんだね。洪秀英ホン・スヨン。あと楊海ヤンハイさんもいたし……」
たしか韓国、中国の代表メンバー、そして団長のところに名前がのっていた。
「何だ。お前、中国の団長と知り合いか?」
「あ、あったことはないけどさ。ネットで。伊角さんから俺のこときいたらしくてさ。
  碁をうったあとでチャットで日本語で話しかけてきたことがあるんだ。だから」
何よりも、他人に佐為の棋譜をおくったのもあれがはじめて、であった。
深くあれから追及してこない、ということはどうやらネットで観戦していてつけた。
と思われているらしい。
もっとも、和谷にはそこまで詳しく言う必要もないし、
逆に突っ込まれても困るのでヒカルはそこまではいわないが。
「うん。すっごい楽しみ。あのときは俺がかったけど。あいつだって強くなってるだろうし。
  と、スヨンと俺があたるかどうかはわかんねぇか。はは」
団体戦、ということは誰と誰があたるかは不明である。
「なあ、進藤。俺の部屋でやってる研究会でさ。表を作って定期的にリーグ戦を始めようと思うんだ」
「リーグ戦!?面白そう!!」
それはかなり面白そうな企画である。
「あのな。それから越智をこの研究会に誘った」
「越智?くるって?」
彼はあまりそういうのに参加してこなそうな気もしなくもないが……
「ああ。門脇さんもくるぜ。伊角さんが声をかけたんだ」
何だかとても面白そうな計画である。
「面白そう!なあなあ!塔矢もさそっていいか!?あ、でもあいつ対局多数で忙しいからな~……」
リーグ戦は多いほうが楽しめる。
「・・・時間があえば、こっち的にはかまわねえぜ?
  そのかわり、そのときには森下師匠には内緒、な?血の雨ふりかねないし」
森下門下としては師にばれたらかなり怖いものがあるものの、
しかし塔矢明もまた実力者の一人。
直接打ってみたいという思いのほうがはるかに強い。
「ははは。了解。よ~し。じゃ、塔矢に連絡とってみるよ。目標は全勝だ!」
「このやろ!阻止してやるっ!……進藤。お前、北斗杯、がんばれよ?」
「ああ」
たわいのない会話であるが、それでもあいての想いは伝わってくる。
彼らとて代表になりたかったのはわかっている。
そんな和谷達の想いを背負い、ヒカルは代表にと選ばれた。
その自覚をしなければ。
そう、和谷の声をききつつも、そんなことを思うヒカルの姿が、
進藤邸の一階においてしばらくの間みうけられてゆくのであった……

四月二十一日。
木曜日。
中国。
通称、江鈴杯。
「すいません。ファンミンさんはおられますか?」
「しっ。もう対局がはじまった」
ざわざわと会場内部が騒がしい。
それでも大会が開始されるとどうじにぴたりとその騒ぎは収まりをみせる。
パシャパシャ。
カシャカシャ!
会場に鳴り響く、シャッター音と、カメラ撮影の音。
「取材の方々は退出してください」
あまり長く取材陣をおいておけば対局にさし障る。
それゆえに時間限定の撮影許可。
大会の進行係りに促され、それぞれの記者たちが大会会場の外にと出されてゆく。
「古川さん。お茶でものみすか?」
「あ、はい。いただきます」
NHK囲碁・将棋ジャーナルと日本棋院出版部。
それぞれがそれぞれにここ中国に仕事で取材にきている彼ら達。
「しかし、それにしてもすごい数の取材陣だな」
会場を埋め尽くすほど、といっても過言でない。
しかも世界各国から取材陣が殺到していればその数は並みたいていではない。
「そりゃあ、そうですよ。中国で大人気のこのチーム対抗リーグ戦に塔矢行洋、が登場してきたんですから。
  その実力は世界のしるところ!まだまだ時代の中心は塔矢行洋だよ」
「息子の塔矢明はどうなんでしょうね?二週間後にはいよいよ国際棋戦デビューですけど」
「お手並み、拝見だな」
そんな会話をしつつも、会場をあとにしてゆく日本勢、二人の姿。

韓国、ソウル。
「へ~。あれが韓国棋院」
ソウルの一角にたしかに棋院とかかれている建物がある。
「ああ」
゜せっかくの観光旅行に仕事いれるなよな~。古瀬村」
大学の同期の仲良し三人組での旅行。
それゆえにぐちをいいたくなるのも道理。
「お前らものぞく?」
「遠慮しとく」
「というか。お前、言葉つうじるのかよ?」
当然観光旅行なので通訳などはつけていない。
素人旅行にそんなものは普通はつけない。
「オレが今日、いくことはいってあるから、通訳の人がいるとおもうよ」
「ふ~ん」
そういわれても、あまり関心がないのも事実である。
「じゃ、一時間後、な」
「またな」
いいつつも棋院の前で仲間とわかれ、一人棋院の中にとはいってゆく古瀬村の姿。
そのまま棋院の事務所へとむかってゆくことしばし。
「どうも、こんにちわ。じゃない、アンニョンハセヨ!」
ざわっ。
いきなりの出現にざわめく人々。
【あ、あなたは~!?】
【?誰です?】
【日本棋院の週刊碁の記者で古瀬村さんだよ。あうのは二度めだ】
【あれ?くるのは明日じゃないんですか?】
【明日、さ!私はそうきいているっ!!】
だからこそ驚かずにはいられない。
ちなみに韓国語で話しているので互いが互いに古瀬村にも、相手にも会話の内容は伝わっていない。
古瀬村からすればすでに連絡している、ということもあり、一人で話しをぺらぺらとすすめていたりする。
よもや相手のほうが日にちを勘違いされている…この場合は実際、古瀬村が間違えているのだが。
最終日に立ち寄るのを何を勘違いしてか前日に立ち寄っているのだが、
とうの本人がその記憶をはき違えているのだからたまったものではない。
「あの~?」
何だか棋院の人たちの反応がおかしい。
というか自分がくることは伝えているはずなのに、歓迎も何もないのはどういうわけか。
【ちょっとまってください!お約束は明日ですよね!?】
あわてて、そんな古瀬村にかけよりそんなことをいうものの、
「や~。お世話になります。すいません」
まったく会話がつうじていないがゆえに、普通に日本語で挨拶をしている古瀬村。
少しでも旅行をすることにより、簡単な日常語を勉強しておけばこの事態もどうになかったであろうに。
古瀬村はまったくそういうことはしていない。
せめて、今日、明日くらいの単語くらいは覚えておいてほしいものである。
【おい!今日日本語できるやついたっけ!】
【いませんね】
【通訳の金さんはお休みだし】
棋院関係者とて日本語をマスターしているものはほとんどいないといっても過言でない。
そもそも日本語は難しすぎる。
これがまだ英語とかならばどうにかなるが……
【スヨンは!?日本語できたよな!?】
【今日はきてない、とおもいますけど?】
そうなればもう手詰まりである。
そもそもどうして明日くるはずの人物が今日きたのか彼らとてわからない。
何か様子がおかしいな。
とおもいつつも、とりあえず友達をまたしても何なので自分の要件をさっさと切りだしている古瀬村。
よもや会話がまったく通じていない、などとは夢にもおもっていない。
【あの~?バイトの若いのがたしか日本語を少しだけ話せたとおもいますが……】
【おお!すぐによんでくれ!】
【古瀬村さんの電話をうけたの金さんだろ?でも金さんが聞き間違うなんてことはないよな?】
というかありえない。
【じゃぁ、金さんから伝え聞いたパクさんの勘違い?】
【え!?私の勘違い!?】
そういわれても、そんなことはない、と…人間であるがゆえに言い切れない。
が。
【パクさんはそんなミスをするひとじゃないよ。いく度も確認するひとだし】
自信がないからこそ幾度も確認する。
仕事では些細なミスが命取りになりかねない。
ましてや大人数の棋士のスケジュールを管理している事務所である。
対局予定日のブッキング…などはっきりいって洒落にならない事態である。
【あたりまえだ!だから…日にちを間違えたのは…絶対に君だ!!】
「?」
何かどなられているのはわかるが、何をいわれているのかわからない。
というか、何でみんなこんなに不親切なわけ?
何か韓国棋院の人達ってイメージよくなぃなぁ…
そんなことを古瀬村はおもっていたりするが。
…よもや自分のせいだ、とはまったくもって彼は気づいていない……


「あ、塔矢。ちょっといいか?」
「何?」
「社がさ~。俺ん家に電話してきたらしくて。ほら昨日俺が着替えをとりにもどったじゃん?」
明子と行洋が中国に旅行にいっているのでヒカルはアキラの家にとまりつつ、
手合いのない日は学校にもきちんと一応通っている。
同じクラスであることもあり、教科書の併用もできるがゆえの業であるが。
「昨日は、ついつい早碁と検討でいいそびれてたしさ~」
やはり夜、碁を打つ相手がいるとほっとする。
それが二年間、日常となっていたがゆえになおさらに。
「それで、何て?」
「たぶん、番号は日本棋院できいたんだろうな。北斗杯の前に俺達と練習手合いやらないか、ってさ」
携帯の電話も棋院は把握しているはずであるがどうやら実家のほうの番号を教えたらしい。
まあ確かに。
携帯の留守録にいれていても気づかないことが多々とあるヒカルにとっては、
家族に伝言をたのんでいたほうが確実に伝わるのだが。
母が電話番号をきいていたので、ヒカルのほうからかけなおしたのであるが。
「もしいいなら大会の三日前に東京にでてくるって」
「いいよ。場所は?」
「決めてないけど。社がどこかホテルに泊まるだろうから。その部屋、とかかなぁ?」
とはいえ狭い部屋では対局にも問題がでるであろうが。
「なら、僕のうちでどうだ?社もホテルなんかじゃなくてうちに泊まればいいし。
  君だっていま、とまってるんだし」
実際、ヒカルはこの時期、部屋で一人でいると佐為のこともあり、かなりくるので、
北斗杯まではアキラの家に泊まることにしてはいるが……
「おまえんち?そっか。そういえばおじさんとおばさん、三日まであっちにいるんだっけ?」
たしかそのようにきいている。
しかし、それもいいが、きになることは……
「でもさ。この前の土曜日みたいになんねぇ?」
「「・・・・・・・・・・・」」
ヒカルの言葉に思わず同時に顔を見合わせるアキラとヒカル。
この土曜日の和谷の部屋での研究会。
人数が人数なだけに和谷の部屋ではかなり手狭。
それゆえに狭いから、というのでアキラが自宅を提供したのだが……
かなり充実しまくっている棋譜全集などに気をとられ、研究会ところでなくなったのは記憶にあたらしい。
まあ、一部。
【すげぇ!生の塔矢行洋先生宅だ!】
と騒いでいた人物もいたにはいたが……
「いくら何でも、ない。…だろ。…たぶん」
「たぶんって。でもそのほうがしっかりうてていいかもな。じゃ、そうしようぜ」
ヒカルとて大人数のほうが気がまぎれるというもの。
それでなくても五月は目前。
とにかく人が多いほうが気がまぎれてかなり助かるのも事実。
「じゃあ、お互いのその週の手合い日は対局を入れないように手合い課にお願いして、スケジュールをあけとこう。
  手合い課のほうには僕のほうから連絡しとくよ」
「わかった。じゃ、社には俺から連絡しておく。って、今、あいつ学校かな?」
「さあ?」
「「???」」
社は来期からプロ活動が開始されるのでおそらく今は普通に学校にかよっているはずである。
今日、ヒカルとアキラは手合い日なので休みをもらってはいるが。
この後、一度は学校による予定ではある。
「夜のほうがよくないか?」
「そうだな」
そんな会話をしている二人。
どうでもいいが、二人の対局相手はといえば、圧倒的な強さを前にして、
未だ盤面を呆然とみている状態だ、というのに。
何とも気の抜ける会話をしてほしくないものである。
……二人の間隔は、どこかずれている。
それが周囲の二人に関する感想だ、と二人は知る由もない……


「中国リーグは独特の熱気がありますね。昨日はおもしろかった」
先日、始めてのリーグ戦が終了した。
あとはもう日本にともどるのみ。
「残念ながら、あなたと私の対局は組まれませんでしたがね。
  お互い勝利することができて何よりです。チームとしては二勝二敗と引き分けで、お互い悔しいところですが」
一チーム、六名の選手のうちから四名が出場しての団体戦。
ゆえに互いに対局できるかどうかは組み分け次第。
しかもそれで引き分け、というのは多少口惜しいものがある。
「ここの棋院は初めてですか?塔矢さんは?」
「ええ。ここで一般の人は碁をうてるのですか。いいところですね」
しかも普通の喫茶店と併用のようになっているので飲み物などにも困らない。
気がるに誰でもはいれる雰囲気がここにはある。
「まだ時間が早く、お客が一人もいないからでしょう。おかげで塔矢さんとのんびりはなせる」
それはかけなしの本音。
たしかに朝もはやいがためか周囲をみてもひとはまばら。
気付かれれば間違いなくすぐさま人だかりができてしまうであろう。
「徐、さん。まさか私とのんびり話すために帰国を一日遅らせたのですか?」
そんな彼の言葉に唖然としつつも問いかける。
「そうですよ?あなたが韓国の私の家に滞在されていた時は、ずっと碁漬け、でしたからね。
  我が家で研究会を開くなど、ここしばらくはなかったですけど。
  連日あのときは誰かれあつまってきて大変だったなぁ」
もっともそれだけ充実した日々でもあったが。
ちなみに、やはりというか彼、徐彰元の家にくる人々はみな塔矢行洋目当てではあったが。
「あのときはお世話になりました」
きっぱりいいきる彼の言葉に苦笑しつつも、かるく頭を下げる行洋の姿。
「いやいや。とんでもない」
別に恩着せがましくいっているわけではない。
ふと思い出していっただけのこと。
ゆえにお礼をいわれる筋合いはない。
そもそも、ぜひ我が家に!といったのは他ならない自分なのだから。
「それにしても、驚いたのはあのとき、あなたが一人が町の碁会所にかよったことですよ。
  かけ碁でずいぶんかせいできてましたね。ははは」
他人がきけば、塔矢行洋がかけご!?
とさぞ驚いたことであろう。
「みんな、私の顔をしっていましたが、おくするどころか挑戦的でしたよ?
  置き碁で何人とも勝負しましたが、大人しい碁は一局もなかったな」
それでも圧倒的なまでに行洋は強かったのはいうまでもない。
「…塔矢さん。引退してかわられましたね?」
前は彼はこんな表情をするような人物ではなかったとおもう。
それゆえのといかけ。
「自由な時間が増えたおかげで、好きにいきている。…それだけ、です」
そう、何に縛られることなく。
自分の願いに忠実に。
「塔矢さん。あなたが今回、対戦した相手、中国の陳学明八段が、昨晩こういっていました」

「塔矢先生とは三年前に一度対局したことがあります。
  ちょうど日本国内で四冠を得て勢いにのっておられるころのことです。
  対局はおおかたの予想どおり、塔矢先生の中押し勝ちにおわりました。
  しかし、私はこの三年で力をつけトップ棋士の仲間入りをはたしています。
  片や塔矢先生は失礼ながら自分勝手に引退され、一年ぶりの公式手合い。
  今度は私が力を見せつけてやるばんだ。とおもいました」
そう、自分勝手に引退した人物と、現役でがんばっている自分と。
自分はここまでつよくなったんだぞ!
と見せつけたかった。
なのに……
「そして、今日、対局されてどうでした?」
「・・・三年前とおなじ敗北感を味わいました。いや、三年前以上に……」
前回対局したときよりもかなり高い壁を感じたのも事実。
それゆえにうなだれるしか方法はない。
つまり、塔矢行洋は引退しても塔矢行洋なのである、と身をもって知らされたのだから……

「私もまたおもっています。あなたは以前より強くなっている。と」
しかも、前と違い、碁が格段にわかくなっている。
「うれしいですね。――引退した今。強さだけが私のプロとしての証、なのですから……」
彼と同じ位置に立ちたかった。
彼とてその強さだけが存在の証。
「塔矢さん。私はあなたを客員棋士として韓国棋院に働きかけてみるつもりです」
「…客員棋士……」
まさかそのような言葉がでてくるとはおもわなかった。
「もし、認められればあなたは韓国のどの棋戦にも自由に参加できる。どうです?」
「願ってもない!望むところです!」
徐の申し出は塔矢行洋にとってはかなりありがたい申し出、である。
好きなときに好きなだけ韓国の棋戦や大会に出場することが可能となるそのシステム。
日本にはそのような特別なシステムは今はない。
そういった話もまだでてこない。
「…そのかわり、教えてください」
「え?」
「あなたは何もいわずに引退されてしまったが。今、何を目標にしているのですか?」
体調が理由でないのは明白。
しかも行洋は以前にもまして日々勉強を重ねている。
そんな彼が、今、何を望んでいるのか…徐としても知りたいところ。
「目標?最善の一手の追及。ですよ。その喜びに勝るものはありません」
そして願わくば神の一手を極めること。
「それは、私も同じです。しかし…それだけ、では、ないのでしょう?」
同じ道を志すもの同士だからこそ、わかる。
わかるものがある。
どうやら彼には見透かされているな。
そんなことをおもいつつ、
「…ある、打ちてとの再戦を心に期しています」
「ある、打ちて?」
彼ほどの棋士がいったい誰と再戦したいというのだろうか。
「・・・彼もまた、その強さだけが存在の証……」
自らと違い、肉体を持たぬがゆえに強さが彼の何よりの存在の証となる。
「今は…その再戦のために力をつけている。といったところでしょうか。
  再び対戦したときに恥ずかしくないように、私自信が誇れるように」
それは迷いのない言葉。
だがしかし、塔矢行洋にそこまでいわしめる碁の打ちてなど……
「…塔矢さん。そのうち手とは…誰です?」
塔矢行洋にここまでいわしめる人物、とは、いったい・・・・・・
「お客さんたちが打たずにこちらをみてますね」
ふと話しをそらすかのように周囲をみて話しをふってくる行洋。
「どうやら、われわれが打ち始めるのを待っているようだ。キミ」
ガタ。
ガタガタ。
「「うつぞ!!」」
彼らの姿に気づいた客たちがいまか、今かと対局を待ちわびていた。
それゆえに、二人して碁盤を用意しそれぞれ石を握ってゆく。
「では、おねがいします」
「おねがいします」
どうやら話をはぐらかされてしまったな。
そうはおもうが…彼は口をつぐめば絶対に話さない。
その性格もまた長い付き合いだからこそ徐はよく理解している……


                                -第71話へー

Home   Top   Back    Next

#####################################

あとがきもどき:
薫:次に回せば70いきかねないのでここで区切りです(汗
  次回でようやくヒカルが古瀬村から例の話をきくことにv
  絶対にアレがあったからヒカル、五月の五日を乗り越えたんだとおもうのは私だけだろうか?
  いあ、普通、思春期真っただ中にともに生活していた人が消えた日。
  …情緒不安定になってもおかしくないとおもいますもん(しみじみと
  さてさて、それでは次回にそれはわますとして。
 今回もまたまた例のごとくに、小話、いっきます♪


「なるほど……」
『ヒカルはもう、これらをもしのいでいきませんとね』
「うん!」
院生生活がはじまり、佐為による指導も熱をましている今日この頃。
はじめのころの何もわからなかったころよりも確実にヒカルは力をつけてきている。
『そういえば、プロ試験というものがはじまってるらしいですねぇ』
「みたいだね。塔矢君もうけてるんだって。明日美達もうけてるっていってたし。
  顔だしてみようか?佐為?」
季節は七月。
今はもう小学校は夏休み期間にと入っている。
毎日、サイトをいじるか、もしくは佐為とうつか、はたまたネットでsaiにうたせるか。
その後、佐為の棋譜をきちんと仕上げてHP上にアップし、自らもきちんとバックアップをとっておく。
それがヒカルの日々の日課となっているが、夏休みということもありもう朝から夜までその繰り返し。
ヒカルが院生試験に合格したのは五月ではあるが、通い始めたのは六月。
院生になって一か月が経過した。
『同じ建物の中でやってるんでしたよね?たしか?』
「って篠田先生はいってたけど?」
??
そんな会話をしつつも互いに顔を見合わせる。
何でも試験は土曜、火曜、日曜日の週三回あるらしく、予選は三回かてば本戦にいけるらしい。
ちなみに本戦もまた週三回のペースで一日一局おこなわれるらしい。
約二か月の総当たり戦。
説明をうけたはうけたがよく理解できていないのも事実である。
とりあえず、もう六年生、ということもあり、ゼミのほうに問い合わせしてみたところ、
先取りしての勉強も可能、らしい。
ゆえに、ヒカルはもう中学生のテキストなどをこなし始めていたりする。
何でも先取りし、予習はしっかりと。
それがヒカルのセオリーでもある。
「たしか。お昼休みがあるはずだから。みんなにお弁当つくっていこっか」
『おや。それは名案ですね。ヒカル、料理上手ですしねぇ。私もたべてみたいです……』
「佐為……そりゃ、私だって佐為に食べてほしいよ……」
それは無理なことだ、とわかっていても、やはり好きな人には食べてもらいたいものがある。
佐為としても自分がすでに肉体をもたない身であることはいやというほど自覚しているので、
モノが食べられないことはわかってはいるが。
それでも生前の感覚はそのままなのでどうしてもうらやましくなってしまう。
『でもまあ。ヒカルも来年うけるのでしょう?』
「そのつもりだけど」
佐為におそわり基本的なことはわかってきているがそのほかのことがわからない。
ゆえに、明に試験に誘われたのもあるが、まだよく基本的なことがわかってないから。
といって、来年ダメもとでうけてみる~。
といったのも事実である。
そのとき、アキラが「基本的なことがわかってなくてどうして僕はまけっぱなしなんだろう…」
とかぶつぶつつぶやいていたのはひとまずヒカルは聞かなかったことにして横においておいたのだが。
何しろたかが数か月、といえども佐為の指導は適格で、
しかもヒカルにもともとその素質があったがためかヒカルはメキメキと実力をつけており、
佐為ですら驚くほどにその頭角を現している。
とはいえいまだにあぶなかっかしいのも事実なのだが。
今のヒカルはアキラと自らがうってもまず拮抗した戦いを繰り広げるまでにとなっている。
それでも、今までの習い事などは優先事項であるがゆえに、
どうしても院生手合いの日が重なったときなどはどちらかを優先しなければならない日々もある。
ゆえになかなか院生の順位もあがらない。
もっとも、そういうときには昼までは院生手合い、午後からは習い事。
とヒカルもきちんと区別をつけてこなしているのであるが。
ちなみに、佐為がアキラとうったときには圧倒的なまでの強さで勝っているのは…いうまでもない……
「さてと。じゃあ、今の棋譜、きちんと記録しといて。それからお弁当つくろっか」
『ですね~。しかし今の時代の女性はたくましいですよね~。すべて自分でやるのですから』
「佐為のときって回りが全部やってくれてたんだからしょうがないよ」
しかも平安貴族。
さらにいえば栄華を極めたフジワラノ一族。
…自分で何かをする。
という概念がなかったのは少し考えてもうなづける。
佐為にすれば身の周りの世話をする人々が常にいた状態の中で生活していたのだから。
それでも佐為があまりそこまでズレテいないのは、虎次郎との三十年あまりの生活があったがゆえ。
何しろ自らが生きていたときよりも虎次郎との生活がながければ自然とわかってくるものもある。
「さって、じゃ、とっととはじめよっか。ね?佐為」
『はい♡』
そんな会話をしつつも二人してパソコンの前にと移動する。
その後、お弁当をもって明日美達の様子をみにいき、
ついでにそういえば塔矢君もいたよね?
院生生活でとてもよくしている数名の品と、そしてよくしてくれている塔矢明のぶん。
人数分のお弁当をもちヒカルは棋院にと向かってゆくことに。


ちなみに、はじめにお弁当わたしたのがアキラで(とっととかってたので)
僕のために!?
とかおもいっきり感動してたら、ううん、みんなのもあるのv
とにこやかにさらっといわれて、がくっときたアキラがいたことはお約束(笑
ヒカルが棋院についたのは十一時ごろの予定ですv
なので対局終了してたのはおそらくアキラくらいかな~、と。
んで、みんなの対局がおわるヒルまでヒマなのでアキラと一局うってまってたり~
という裏設定v
ではまた次回にてvv

2008年9月23日(火)某日

Home   Top   Back    Next