まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さんざんさがしまくって、原作にてようやく北斗杯の日程発見!
五月四日、五日、でしたね~。
できたら佐為がもどってくるのも五月の五日にしたかったけど。
この暦さんでいけば五日開始にしたら木、金となってしまって金曜日は平日だ(汗
し…仕方ない…全部の日付訂正するのは大変ですしね(くすん…
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佐為。
いつかもしかしたらお前がかえってくるかもしれない。
毎日、お前の絵姿をみてはそんな思いにかられてお前の姿を探すんだ。
町の中でも。
割り切ったつもりでも、やっぱり姿をどうしても探してしまう。
そんなときは、お前がいつかいっていた自分が二人いる、と考えて碁をうつ。
あの方法をやってみるんだ。
そうすると、お前がまるで俺と対局していてくれるような気持ちになれるから……
星の道しるべ ~国際杯~
九月二十四日。
金曜日。
「お前、今日の相手、だれ?」
「川崎三段。本因坊リーグ戦、第一次予選の三回戦」
「ふ~ん。オレは名人戦、一時予選の二回戦。遠山三段、だ」
棋院の前でばったりと一緒になった。
それゆえに今日の対局相手をそれぞれにとといかける。
「そっか。お互い頑張ろうな」
「そういえばさ。和谷。王星、って誰かしってる?王様の王に星ってかくやつ。よみかたはわかんないけど」
「…は!?いきなり何だよ!?」
いきなりといえばいきなり、である。
「それがさ~。昨日ネットやってたらいきなり名前らしきものをいわれてきてさ。
それで、君はだれだ!?みたいなこといわれてさ~。しかも中国語で」
漢字ばかりであったのでおそらく中国語かな?
と検討をつけて翻訳サイトを開いて翻訳してみたところ、そのように問われていたのも事実である。
「翻訳サイトで相手が何をいってきたのかは理解できたけどさ。それで相手が名前らしきものまでいってきてさ~」
そんなヒカルのセリフに思わず頭を抱えたくなってしまった和谷は何も間違ってはいないであろう。
「…進藤。た~の~む~か~らっ!海外のプロ棋士のことくらいは覚えてくれぇぇ!!」
王星は中国で今やNo1とまでいわれているトップ棋士、である。
名実ともに実力のあるトップ棋士の一人。
が、ヒカルはそのことを全く知らない。
「よくわかんないし、次の対局したかったから、?マークつけて返信してうちきって次にうつったけどさ」
相手からすればたまったものではない。
圧倒的なまでの差をつけられて負けた、というのに。
だからこその問いかけ。
まるで…まるでsai、とうったときのごとくのその強さを目の当たりにすれば…問いかけるのも…必然。
「・・・・・・・・・・・は~…ところで。その扇、何?」
おそらく進藤光には何をいっても無駄。
それゆえにため息をつかさざるを得ない。
そもそも短時間で説明できるような内容、ではない。
時間があるときにみっちりとそういったことは教えないといけないんじゃぁ…
そんな考えすら和谷にと浮かぶ。
「昨日買った」
「・・・へ~……」
何だか扇を手にしているヒカルをみるとさらに強くみえてきて…怖い。
いや、怖い、というよりは畏れ、であろう。
どうして恐ろしいまでに強いのに…常識的な囲碁界の知識を知らないのか。
それゆえにどこかヒカルはほっとけない。
というか、下手をしたら日本の棋士っていったい・・・と諸外国に思われかねない。
こいつ…そんなこと、絶対にわかってないんだろうけどな…
「…は~……」
何だか対局前にものすごく疲れた。
そう思うのは…おそらく、和谷、だけではない……
今日の相手は確か今年入団のヤツ、だよな。
プロになってもう半年以上。
強いモノならばすでに二段に昇格しているはず。
なのに…なぜ……
び~!
「さ。お昼お昼」
「おっと。お昼だ。かつ丼、カツドン」
ヒカルが立ち上がり、それに続いて隣の席にいた対局相手もたちあがる。
はっ!
そんな隣の人物の声にはっと我にと戻る。
「き…きみ!」
たしか対局前に知り合いらしき会話をしていた。
ならば、この疑問を解消できるかもしれない。
それゆえの問いかけ。
「……な、なぜ初段、なんだ?彼は?」
「え?」
一瞬、川崎三段が何をいっているのか理解不能。
それゆえに首をかしげる和谷。
「なぜ、進藤君はいまだに初段なんだ!?」
それは悲鳴に近い声。
教えてほしい。
その答え、を。
「ああ。あの、春から夏にかけてずっと入院してて大手合いにでられなかったやつのことしりませんか?」
大手合いはだいたい春先から夏場にかけて集中している。
夏からはおもにさまざまな棋戦のタイトル予選が始まるがゆえに手合いもつまる。
「……そういえば…噂で……」
不戦敗でさぼっている、と噂されていたその人物が、実は入院していたのだ、と人々が夏ごろに噂していた。
それゆえにそういわれてはっと思いだす。
「それが進藤。です。あいつ五月から七月初めにかけてずっと対局していないから。
その後、復帰してからずっと勝ちすすんでいようが…昇段点をとれるのはまたまだ先、で。
だから当分は初段です。あいつ」
恐ろしいまでの棋力をもつとはいえ、ヒカルは和谷達と同期の棋士。
どんなに力があっても、規則はかわらないのだからどうにもならない。
「……当分は初段?…これだけうてるのに?…最強の初段、だ……」
そう、としか言いようがない。
手も足もでない、とくればなおさらに。
圧倒的な力の差が…今、目の前に…ある。
……あいつ、更に上をいってやがる。
守ればいいのに、攻めて相手はもう盛り返しのしようがない局面となっていた。
おそらく今のヒカルにとっては間違いなく低段者など的ではないであろう。
まるで、まるでそう、ネットのsaiのごとくの強さ…とまではいかないものの、それに近いものがある。
休憩場で川崎三段とヒカルの対局の局面を思い出しふと思う。
手筋はそれほどにすすんではいなかった。
が。
圧倒的な力の差はいなめない局面。
しかし、何というか……
「なにかあいつの碁って最近、怖いほどに痛いようだよ…な」
入院するまでの打ち方と、退院してからの打ち方。
比べてみても一目瞭然。
まるで、何かを追い求めているかのごとくの打ち込み方をヒカルはしているようにも見受けられる。
それが何なのか、は和谷にもわからない。
怒涛のごとくの打ち込み。
それが、今現在の【進藤光の碁】でもある……
アキラもそれに気づいている。
いるが…いえないのも事実。
母に相談したところ、
【時がくれば】
としかいわなかった。
その【時】とはわからない。
それでも…
【彼らしさを取り戻したとき、面白くなると思うのよね~。何か夢の中でも女の子がそういってたし】
いっていたずらっぽく微笑み、
【…世界、を巻き込んで…ね】
そういった母の言葉がアキラの頭から離れない。
しかし、和谷は当然、そんなことを知る由もない……
「遅い!進藤!」
「悪い悪い。お前のほうは、今どんな?」
「って、君らしいけど。今から並べるよ」
アキラは本因坊リーグ戦、二戦目である。
洗心の間でうっているヒカルたちとは違い、五階にある個室の一つの部屋にてうっている。
本当は二階の一般用の対局場でもよかったのだが、六階の部屋の一つがあいているから使ってもいい。
と棋院から許可がでたがゆえに二人してお昼持参で、
対局の合間の昼時間だというのに、検討をすることにしているヒカルとアキラ。
しばし、アキラの午前中の検討が繰り広げられてゆく……
「やっとオムツもとれて楽になってきたのよ?」
「でも、それじゃ、これからが目が離せないわね」
女流棋士たちの中には結婚し、子供がいるものも多々といる。
囲碁界には結婚退職、といった概念がない。
それゆえにたとえ一年だろうが二年だろうが休んでいても何の問題もない。
ただ、昇段が送れることと手合い料などがはいらない、といった不都合以外は。
「最近、体もなまってきたな~」
そういえば、とおもう。
そんな棋士たちの会話をきいてふと思い出す。
あいつ、前にオレがプロになったら運動も仕事にある!とかいってたの本気で信じたっけ?
…今でも信じているのかな?
……誰かが嘘だ、といわないかぎりおもいっきり信じてそうだよな~、あいつ。
実際にヒカルはいまだに信じたまま、であるのだが……
「そういえば。若いプロ対象の国際棋戦をやるらしいぜ?」
「ふぅん。どんなの?」
ふとそんな会話が和谷の耳にと飛び込んでくる。
「十八歳以下、だったかな?日中韓Jr団体戦とかいう……」
…日中韓Jr団体戦!?
一瞬その話を聞き洩らさないようにと聞き耳をたてるのは、何も間違ってはいないだろう。
「しかし、日本の代表はどうやってきめるのかな?」
「代表選抜とかをやるんじゃないの?」
代表選抜…か。
だけども、それが本当ならば…自分の力を…試してもみたい。
中国!?韓国!
すげえ!十八歳以下!?
低段者のオレたちに大舞台のチャンスだ!
しかし…代表選抜…か。
団体戦、ということはおそらく三名枠。
一人はリーグしていることもあり、おそらく塔矢明で決定だとしても。
そして、ヒカルは勝つ、であろう。
ならば、残りの枠は…一人、のみ。
「そういえばさ。進藤。中国、韓国、日本。三国合同、日中韓Jr杯のことはきいた?」
「?何それ?」
まったくきいたことすらない。
それゆえにきょとん、と首をかしげるヒカルの姿。
「…は~。北斗杯っていうんだって。若いプロ棋士対象の国際団体戦。十八歳以下の若手プロが対象、だってさ」
「へ~。十八歳以下かぁ。お前、でるの?」
「…でるの?って…進藤、き~み~はぁぁ!君だって予選に勝ち抜いたら出られるってことわかってないな!?」
「へ?俺も対象?」
「十八歳以下っていっただろ!?」
……は~…
おもいっきりコメカミを押さえて溜息ひとつ。
「その北斗杯、僕はリーグ入りしてるからすでに代表に決まった。
残り二名は予選で決まるらしい。北斗杯の予定は五月。四月ごろから予選をするらしい。
進藤、絶対にその枠の中にはいれよ!いいな!」
「団体戦、かぁ。たしかに面白そうだな~。あ、でもその予選っていつからなんだろ?
まさか他の棋戦の予選とかとかさならない、よな?」
「いくら何でもそれはない、だろ」
もしくはそうなったとしても棋院のほうがうまく組み合わせをかえるはずである。
「おっと、そろそろ時間だ。塔矢。対局すんだらみにいくからな!」
「まってるよ。じゃ。いこっか」
本因坊リーグ戦。
今日は塔矢明と一柳棋聖との対局中。
「塔矢君。一柳先生に午前中は必至にくらいついていた、って感じだけど……」
「一柳先生は余裕、だな。やはり格の違いか」
「…みさせてもらうよ」
一柳先生はよく知っているが、この塔矢明。
本因坊リーグの一人として彼のことをもっと知っておかなくては。
それゆえの観戦。
「ん?芹沢君もみにきたのか」
「乃木先生」
何やら他のリーグ所属の棋士たちもこの一局は気にかかっているようである。
「ん~……」
パチっ。
悩んだ末に一柳棋聖が打ちだしてきた一手。
…この手は…
その一手にはっとする。
昼間、ヒカルに指摘された手。
まさにそのもの。
……勝てる。
確実に。
負ける気が…しない。
一柳さん、手堅くすすめてるじゃないか
さて…塔矢君はどうする?
そんな彼らの対局を検討室などではなく対局部屋にてみている人々がそれぞれ想いをはせる。
座間との対局のときは十分な力をあまり出し切れていなかったような感じがあったが、
今回も同じならば塔矢明、おそるるにたらず。
そんなことを思うのは逆にアキラを警戒している表れ、でもある。
本当に怖い新人なんかなかなかでてこなん。
まあ、ありがたい、というべきか。
この一局の前半をみるかぎり、アキラも噂ほどではないのだ、と心のどこかでほっとする。
彼らがそんなことを思っている最中。
ガラッ。
あ、まだヤッテル。
ラッキー。
そうおもいつつも相手いる場所、すなわち記録係りの横にと座るヒカルの姿。
対局がおわり、すぐにこちらの様子をみにきたのだが、この場にいるアキラ以外知る由もない。
…?院生?それともプロか?
塔矢君の友達がみにきたのかな?
しかし、どこかで??
どこかで見たような気もしなくもないが思い出せない。
彼らがそんなことを思っている最中。
ヒカルはすわり、そっと局面に視線を走らせる。
…あれ?
本気で一柳先生、あそこにいってる。
あれってさっきの検討で、あののちシマリにつけて~と検討した手、だよな?
ヒカルがそう思った直後。
パチリ。
アキラの一手が繰り出される。
『!?』
その瞬間、その場にいる大人たちがなぜか息をのむのがわかったが、ヒカルからすれば意味不明。
そもそも、別に今のアキラの一手はそんなにたいしたものでなく。
あの一手にたいすればこの局面ならばその場が一番だ、というだけである。
…いい、手だ。
……思いつかなかった。
…一柳先生も顔が紅潮している。
ヒカルとは対照的にその場にいる棋士たちはそれぞれ心の中でおもわずうなる。
この場にいるヒカル以外、誰もその一手に気づいていなかった、という証拠でもあるのだが。
さっきさんざん検討した通りの手をまさかうってくるなんておもいもしなかっただろうなぁ。
塔矢のやつも。
ふとそんなのんきなことを思うヒカル。
伊達に佐為が幾度も一柳と打っていたわけではない。
すべて佐為の中押し勝ちだった、とはいえヒカルも一柳の手筋くらはよめてくる。
いわば知り尽くしている、といっても過言ではない。
ガララ!
バッン!!
「ふ~」
対局がおわり息をつく。
この瞬間が張り詰めていた空気から解放されるしゅんかん、でもある。
相手が投了をいった直後に顔を紅潮させて部屋を飛び出したのはアキラからすればどうでもいい。
「お疲れ~」
「あ。進藤。君のほうもおわってたの?
ふと声をかけられてそこにヒカルの姿をみつけて声をかける。
「うん。なかなか相手の川崎三段が投了っていわなかったからおそくなったけど」
どこまで強いのかみてみたい。
その思いからあえてなかなか投了をいわなかったのであるが。
「しかし。そういえば一柳先生、どうしたのかな?片づけたとたんに検討する間もなくでていったけど」
ヒカルに対してだからこそ素直な気持ちがといかけられる。
「あはは。きっと読みにまけたのがくやしかったんじゃないの?」
「でもさ。昼に君が指摘していたとおりにうってきてたまげたよ」
「へへ~。一柳先生の大局はさんざんネットでみてたもん。……佐為の、だけど」
佐為のだけど。
という言葉は小さすぎて明の耳にはとどかない。
しかし言葉の最後が小さな声になってしまうのはヒカルの心情からしても仕方のないこと。
「君が指摘してきたから僕も気づいたんだけどね。昼間の検討は無駄じゃなかったよ」
おそらくあれがなければ気付かなかったかもしれない。
「いいよなぁ。お前、濃い碁がうててさ~。あ、おわったなら一局うたねぇ?」
「いいね」
……まて。
かなりまて。
あの一手は自分も、乃木先生もさらには一柳先生すら気付いてなかたとみた。
なのに、この子は?
「でもさ。一柳先生、ネット碁でもそうだったけど意地になってきたらノータイムでうってくるよな」
佐為にそれでいつもさくっとやられてたっけ。
彼もまた佐為の百人切りメンバーの一人でもある。
「局面に集中してないとその気迫にのまれるかも。だけどね。
ノータイムっていうのはけっこう相手にプレッシャーかけるから」
「そんなもん?だってオレよくうってるよ?十秒碁」
以前はよくさんざん佐為と打っていた。
今は、ネットで主にアキラとヒカルは打っている。
「そりゃ、君はネットでもさんざん僕とやってるもんね。十秒碁」
「はは。そりゃそ~だ」
和やかに会話をしている二人であるが。
内容が子供のものとはおもえないのは気のせいだろうか?
「…え~と?塔矢君?この子は?」
和やかに会話をし、さらには川崎三段云々、といっていたのでおそらくプロ、であろう。
そんな二人に声をかけてくる人物をみて少しばかり首をかしげ、
「?なあなあ。塔矢。そういえば…この人たち、誰?」
がくっ。
「し~ん~ど~う~!!僕にハジをかかすな!本因坊リーグの芹沢先生と乃木先生だ!
…ちょうどいい!今後は棋士会のことについてもみっちりとしこむ!」
「え~!?」
「え~!?じゃない!僕がはずかしいだろうがっ!」
アキラの言い分もしごくもっとも。
何しろヒカルは知らない、とくればとことん知らない。
本気で無知、なのだから。
「…進藤?」
「ああ。たしかあの院生の……」
若獅子戦院生初優勝という快挙は伊達ではない。
ゆえにけっこう高段の棋士は名前くらいは記憶にとどめているのも事実。
「なるほど。そういえば塔矢君の友達ってきいてたけど。
進藤君だったね。体のほうはもういいの?」
何しろヒカルが二か月ものあいだ入院していたことは、高段者たちの間でもかなり有名。
「あ。はい。もうすっかり。病院通いも今月の調子がよければ免除になりそうですし」
「そう」
…怖いのは、下からくるもの、か。
今の塔矢明の一手といい。
そして…話しの内容からして一柳先生の手を昼間に彼と検討していたという彼といい。
進藤光、か。
そういえば桑原先生が注目している、ときいたことがある。
それもいまの今、うなづけた。
しばし、言い合うヒカルとアキラとは対照的に、複雑な思いを抱く人々の姿がその場において見受けられてゆく――
季節はいやがおうにもゆっくりとめぐってゆく。
十二月三日。
金曜日。
「倉田七段、韓国での三星火災杯、…韓国の安太善に惜敗…と」
かきかきかき。
飛行機の中、ノートにメモをひたすらしている一人の男性。
「出版部も大変だね。負けた記事をかくのはつらいね」
三星火災杯。
世界オープン戦であり、アマもプロも混合で誰でも参加できる国際大会。
持ち時間は一人、三時間。
秒読みは残り五分より十秒となる。
ちなみにコミは六目半。
「日本に帰る足取りも重いですよ」
おとどしまではほとんどこの大会では優勝!という文字が躍っていたというのに。
「おかわりっ!」
そんな彼らの横の席では何やらガツガツとお弁当を食べている青年の姿が目にあまる。
「…二度めのおかわり、だろ?あれ?」
思わず呆れたようにつぶやくのは仕方ないであろう。
事実、すでに一度おかわりしているのだからして。
「はぁ。倉田七段。帰りの機内で負けてやけ食い…なんて記事、週刊碁の読者はだれもみたくないですよね」
たしかに記事にできるような内容ではない。
もっとも、一部のものにはうけるかもしれないが。
「出版部にはなれたかい?古瀬村君?天野さんの後釜じゃ大変だろう」
「いや~。ほんと急な人事異動で。あとをひきうけた自分は何が何やら、ですよ」
何しろ天野はかなり情報通であった。
コネも広い。
塔矢行洋のこともあり、渉外部へと回された天野。
その後釜がかれ、古瀬村、である。
ちなみに出版部では出版物がその名の通り主流であるが渉外部においては棋士のスケジュール管理。
さらにはそれらのすべてをみわたして一人一人の棋士のスケジュールを管理、把握し棋戦の運営にと役立てる。
それゆえに知識の深い天野が回されたのであるが……
「自分は天野さんと違ってあまり情報通でないし。まずはイロイロとコネづくり、ですかね。ハハ」
何しろ何もしらないままに回されたようなものである。
それゆえに戸惑いを隠しきれない。
「それにしても、いよいよ国際棋戦は韓国が中心になってきたな」
今回の優勝も韓国が勝ちとった。
「半年ばかり前までは日本には塔矢行洋ありき、だったんですけどね。倉田も今一つだし」
「しっ!」
ぎろっ。
思わず本音がもれた古瀬村を隣の席からぎろりとにらむ倉田の姿。
「くそ~!!安太善のやつ!!もっと活躍してもらわなきゃ困る、だって!?
倉田さんは韓国では日本の安太善と呼ばれているから自分の名前がすたる。だって!?あいつぅ!」
はっきりいって大人げない。
ゆえに呆れかえってしまうのも仕方のない。
「倉田さんが韓国では有名ってことでは?いいじゃないですか」
「よくない!あっちが韓国の倉田ってよばれなきゃ」
「うわ~、いうな~」
それだけ自身家なのだろうが。
しかしまあ、よくもそんなにどこにご飯がはいるのだろうか?
という疑問はつきない。
「あ。そうだ。土井さん。渉外部では聞いてます?日中韓Jr団体戦、だったかな?」
今ある国際棋戦の団体戦で有名なのは農心辛ラーメン杯。
各国五名による団体戦が国際棋戦としては有名どころ、であろう。
「ああ。あれね。北斗通信システムが主催するってやつね。
何でやるのかオレにはわからん。日本に勝ち目はないだろうに。
韓国には高永夏を筆頭に十代の棋士が目白押しだ。
日本といえば塔矢明だけじゃないか、他は…進藤初段がどうか、という声を聞いたことはあるが……」
「?進藤初段?」
そういわれてもよくわからない。
「ほら。プロになってすぐに長期入院した。院生ながらに若獅子戦の優勝を飾った子で。
でもそれ以外のアマでの実績も何もない。正直何で彼の名前があがるのか不思議だね」
それはヒカルの実力をしらないからこそいえること。
彼は知らない。
ヒカルが碁を覚えてほんの数年でプロになっている、ということに。
…正確にいえば一年もたっていないのだ、ということを。
「あ」
そんな会話を後の席で疲れたから横になっていた通訳の人物がふと声をあげる。
「今の会話で思いだした」
いってひょいっと前の席をのぞきこむ。
「何だよ。通訳疲れでねてたんじゃないのか?」
そんな土井、とよばれた男性の言葉に。
「思い出した。って何をですか?」
きになってといかけている古瀬村とよばれた男性。
「向こうで洪秀英君にきかれたんですよ。日本語で」
「?聞かれた?って何を?」
たしかそれは今韓国でかなり有望視されている子供の名前のはずである。
どうして彼の名前がでてくるのかがよくわからない。
「シンドウヒカルはプロになっていますか。ってね」
その言葉に思わず顔をみあわせる土井と古瀬村。
そんな会話を横でききつつも、
「進藤、か。あいつはほんっと怖いですよ」
いきなり会話に割って入った倉田の言葉にきょとん、とした声をだす。
「以前、あいつがプロになる前。まだ院生時代のときに一色碁をうったんですけど。
そのときあいつ、一色碁は初めてで。でもあいつの読み間違いがなかったら…オレ、確実にまけてましたよ」
しかも石の形をド忘れしていた倉田には勝ち目はなかったであろう。
ざわっ。
「く、倉田さん?それ、本当ですか?」
そんなこと聞いたことすらない。
というか院生時代で倉田プロに勝ちかけた…とは信じられない。
しかも、一色。
つまりは、同色の碁石で碁をうった、ということである。
「まあね。それに塔矢明が唯一、あいつをライバルだって認めているのもありますし。
あいつらつるんだらとんでもない手をおもいつくらしいですしね」
乃木から倉田は一柳とのアキラの対局ののち、ヒカルたちが会話をしていた内容を聞かされている。
「倉田さんにそこまでいわせる進藤初段って…いったい?」
「まったく。師匠もいずにアイツ何で力をつけたんだか」
「…え?」
ぼそっとつぶやいたのちにヤケグイ再開。
倉田の言葉の意味は…情報に詳しくないこの場にいる誰もがわからない……
「ふ~」
棋聖戦、第一次予選クリア…と。
ゆえにふぅっと溜息ひとつ。
棋聖、名人、王座…は予選が関係してヒカルはこのたびの棋戦はうけられていない。
一次予選が始まった時期、ヒカルはまだ入院していたのだから仕方がない。
天元、碁聖、さらには新人王戦。
これは二十五歳以下の六段以下の棋士対象の棋戦であり当然ヒカルもアキラも対象内。
棋戦形式は二十四名のトーナメント戦で、その人数にしぼるための予選もある。
王冠戦、というのもあるらしいがそちらは日本棋院の中部のみが対象の棋戦らしい。
着実にすべての予選をクリアしてゆくヒカルの手合いは日々増えてはいっている。
そういえば、あいつも棋聖ってよばれてたんだっけ。
佐為……
手にした扇の中に佐為の扇の魂ともいえる霊体をいれてある。
ヒカル以外の人がもてばそれゆえに霊力の高さゆえにぴりっときてしまうしな。
ゆえに扇ではあるまじきほどに霊力のたかい品となっていたりする。
まだまだ…佐為にはおいつけない、とおもう。
だからこそ、一歩、一歩、前に進んでゆくしかない。
彼があのまま打ち続けていたらたどり着けるはずだった高みを目指すためにも……
「あ、進藤君」
出版部でヒカルの写真を確かめた。
顔すら知らなかったのも事実である。
「?」
「対局おわったの?はやかったね。あのさ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
そういわれても、相手が誰なのかがわからない。
「はい?え~と……」
棋院関係者なのはわかる。
わかるがどうしてもわからない。
まったくもって初対面なのは間違いようがない。
…たぶん。
そんなヒカルの戸惑いに気づいてか、
「あ、僕は出版部の古瀬村。あのさ。ねぇ、韓国のプロで洪秀英ってこ、しってる?」
「え!?スヨン!?あいつプロになってたの!?なつかし~!」
かなり懐かしい名前ではある。
ヒカルがはじめの一局をうちその後はことごとく佐為が指導碁をうち、
そののち、最後にヒカルがもう一局うった。
だが、その佐為は…もう、いない。
「あ。やっぱり知りあいなんだ」
「院生のとき、日本で打ったことがあるんです。勝ったのオレ。
その後、何局もうったけどずっと俺がかって。あいつくやしがってたな~」
最も、はじめの一局と終わりの一局以外はすべて佐為がうったけど。
あの子は伸びますよ。
そういっていた佐為の言葉もありありと覚えている。
「勝った?!君が!?なぁ~んだ。日本にもいるじゃん。期待できる棋士が。
日本には勝ち目がない、なんて土井さん、弱気だなぁ~」
日本には若い実力ある棋士は塔矢明くらいだろう。
としか彼はいっていなかった。
だがしかし、他にも…ここにいる。
それがわかりおもわず笑みがこぼれてくる。
「一柳先生をやぶった塔矢君がいるし。スヨン君にかった進藤君がいるし。
五月に開催が決定した日中韓Jr団体戦、北斗杯はこりゃ、日本が優勝だな」
最近国際棋戦においては日本が負け度押しだっただけに期待度は高い。
勝ったことがある、といわれればよけいに期待してしまうのがひとというもの。
「え?五月にきまったんですか?予選はいつですか?」
「四月だって」
「よっし!受験にかぶらないっ!」
おもわずそれをきいてぐっとこぶしをにぎりしめる。
「…高校…いくの?」
「あ。はい。塔矢と一緒の高校に。親も高校くらいは出てないとだめっていいますし」
「そ…そう。本当に君、塔矢君と仲がいいんだ」
親の気持ちはわからなくもない。
ないがすでにプロ棋士になっている子どもにいうような内容ではないようなきもしなくもない。
「まあ、あいつとの付き合いは長いし。小六の九月だから…もう三年になるのか・・・」
あのときいた佐為は…いないが。
あのときは考えてもみなかった。
自分がブロ棋士とよばれるモノになるなんて。
「塔矢はもう代表決定したっていってたし。よ~し!俺もがんばるぞ!」
「あはは。あ、あとさぁ。倉田さんと打ったっていう一色碁の内容、おしえてくれるかな?」
「あ、いいですよ?それもなつかしいですね。でも何でしってるんですか?」
そもそもあの一局をしっているのは和谷と、そして倉田くらいであろうに。
あとは塔矢明。
あのあと、あまりの悔しさに佐為やアキラといく度も一色碁をしたヒカルである。
「倉田さんがいってたから。気になって」
「あのときは一色碁、はじめてで。読み間違えさえしなきゃなぁ。
ああ!今おもいだしてもくやしいったら!かってたのにぃぃ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
そもそも、始めての一色碁でそこまでうてるほうがすごすぎる。
…が、ヒカルはそうはおもっていない。
伊達に棋院に努めているわけではない。
そのあたりのことは古瀬村とて理解できる。
ゆえにしばし無言になってしまうのは…仕方ないであろう……
十二月四日。
土曜日。
「ええ!?日中韓Jr団体戦!?」
「本当にきまったのか!?あれって!?」
ヒカルの言葉に思わず同時に叫ぶ伊角と和谷。
今日は和谷のアパートである毎週恒例の研究会。
といっても手合いが増えてきているヒカルはちょくちょく顔はだせないのだが。
「うん。おもしろそうだよね。北斗杯っていうんだって。十八位回で一チーム三名らしい。
出版部の人がおしえてくれたよ」
「日中韓の団体戦!?」
「今の国際団体戦は五名枠だけど、三名、なんだ」
?
そうなんだ。
伊角の言葉に知らなかったヒカルは素直にそうなんだ、と感心するが。
一応棋戦の名前などはアキラからもかなり頭がいたくなるほどにきかされて、
どうにか名前、くらいはいえるようになってはいるが…内容に関しては詳しくないのも実情、である。
「そういや。進藤。本因坊戦、二次予選に進出きまったんだって?」
「あ。うん。最近それとは別に塔矢がうるさくてさ~。棋士の名前くらい、上位にいる人たちくらいおぼえろ~!てさ」
覚えきれない、というか覚える気がない。
というか。
そもそも、名前だけいわれても、ピンとこないのも事実である。
それで覚えられるやつのほうがすごいぞ。
ヒカルはそうはおもうのだが、一般的にはそうでは、ない。
「…塔矢の気持ち、オレ、わかる……」
「ど~かん」
そんなヒカルの言葉にものすごく塔矢明に同情ししみじみつぶやく和谷と伊角。
「もう!何だよ!和谷も伊角さんも!」
「知らないお前のほうがおかしいんだよ!」
何しろヒカルはどの棋士がどのタイトルをもっているのか・・・ということすら知らない、のだ。
これはプロ棋士として驚愕にあたいする。
普通、タイトル所得をした棋士くらいは覚えているもの、であるというのに。
「あはは。まあ、進藤だしなぁ。それで、それで?その北斗杯って予選とかあるのか?
今年の合格者もでられるのか?!」
わくわく。
わくわくしながらといかける。
が。
「……伊角さ~ん。話、きいてた?進藤のやつもいってたとおり。十八歳以下。
伊角さん…十九、だろ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Jrかぁ…くすん……」
国際棋戦に参加のチャンス、とおもったのに。
それゆえに多少いじける伊角。
「でも、今年の合格者で伊角さんと門脇さんはだめだけど。本田さんは十八歳以下だよな」
たしか本田は十八。
対象内、である。
「あ。そうだ。二人とも、洪秀英、おぼえてる?」
「スヨン?ああ、碁会所であった韓国の子か」
あのときぱったりとヒカルとアキラと一緒になった和谷と伊角。
ゆえによく覚えている。
「あいつもプロになってるんだって。それで何とかっていう九段をやぶったらしいよ?」
「九段?もう九段とたたかってんのか?」
ヒカルの言葉におもわずといかえす和谷。
「塔矢がいうには、韓国じゃ、一回戦からトップ棋士と初段があたったりするっていってた。
棋士の人数も少ないし。棋戦のシステムも少ないんだって」
「韓国の十代はすごいぞ~。十六年の高永夏はすでにトップだし。
中国にいたってはさらにすごすぎる」
何しろプロの中から選ばれたプロ中のプロ、という人々がいるほどである。
「代表三名、か。みてろよ!絶対にのこってやる!」
「お前だけじゃねえ!オレだって!森下せんせいもいってる!
オレだってすごく伸びてるって、まだまだのびるって!」
それもヒカルがこの土曜日の研究会に参加しはじめて和谷も格段にと伸びている。
それは和谷だけでなくこの研究会に参加しているほかの人達にもいえること。
ヒカルの指導というか指摘は佐為のそれとほぼ同じ。
つまりは超初心者にすらわかりやすく、さらには棋力すらめきめきと伸ばしていった佐為の指導。
それと重なるものがあるのだからのびないほうがどうかしている。
ヒカルはもっとも、それに気づいてないが……
「うん。がんばれ。和谷。お前ならできる」
「伊角さん!」
きっぱりいわれておもわずぱっと顔を輝かす。
が。
「ほら。中国にお前そっくりな楽平ってこがいるっていったろ?
お前と楽平がその代表に選ばれて戦ったらすっごくおもしろいからさ!」
それほどまでにくりそつ、なのだから。
世の中、三人にたものがいる、とはいうがまさにそのうちの二人、であろう。
「伊角さん!オレは真剣なの!ちゃかさないでよ!」
「へ~。そんなに似てるの?和谷に?」
「そりゃもう!ミニチュア版の和谷というか、小学生バージョンの和谷そのもの!」
「へ~。みたいな~」
「進藤までぇぇ~!!」
しばし、和谷の部屋に和谷の叫びがこだましてゆく……
-第67話へー
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あとがきもどき:
薫:さてさて、今回いろいろと国際棋戦がでてきました~(まて
ちなみに、日本棋院さんのサイトできちんと正確に調べてますよ。
かなしいかな、次期がかかれてないっ!!!!!!
いつ開催されるとか時期をかいといてくれぇぇぇぇ!
そういえば、一度ほど名人戦ってオープン棋戦になったんですねぇ。
というわけで(何が?)後々やはり塔矢行洋は名人でしょ。
というわけで(まて)オープン戦にする予定v(こらまてや
さて、例のごとくに小話をばvv
↓
「しかし、棋院も思い切ったことしたよね~」
おもわずあきれてしまうというか、何というか。
「でも、当然なんじゃねぇのか?」
引退してしまった塔矢行洋。
そしてプロ棋士になる気がさらさらない佐為。
この二人をどうしても手本におきたい、とくればこの方法は必然的なのかもしれない。
そもそも、シード枠で二人とも参加しているので予選であたることはない。
今までは棋士のみの参加条件であった棋聖と名人戦。
それを一般開放して棋戦を行うことにきめたという日本棋院。
それゆえに一般参加もアマ、プロだれともなく参加できてかなりにぎわいをみせている。
決勝まで二人がかぶらないようにした棋院関係者の采配はみごと、としかいいようがないが。
「しかし、ものすごい戦い、ですねぇ」
「私なんかじゃ、まったくよめませんよ」
大盤解説の二人がそんなことをいっている。
そんな二人の対局をみつつも棋譜作成を買って出ているヒカルと和谷。
そしてまた、アキラは見届け人として参加している。
何しろ本因坊や碁聖、といったタイトル所持者でもあるヒカルとアキラ。
その二人が参加する、というのと、ネット上で噂のsaiとあの世界になだたる塔矢行洋。
この対局を世界が見逃すはずがない。
何やらすごいことになっているのも事実である。
二人の間では半目が揺れ動き、まるでかつてのネットでの対局を思い起こさせる。
佐為が彼、塔矢行洋と打つことによってまた消えるのでは?
というヒカルの杞憂はいく度か佐為がうっても無事だったこともあり最近では多少緩和されてきてはいるが。
それでも不安は不安。
どうでもいいが同時に年齢制限なしの一般参加の大会が行われており、
それに対してたかが四歳にみたない美希が勝ち進んでいたりする、というのはお約束。
その対局には普通のプロ棋士もあまたと参加している、というのにもかかわらず…である。
「でも、どちらにしてもさ。僕…お父さんか佐為さんと対局のハメになるんだよねぇ~…」
は~……
こんな一局をまじかでみていれば溜息もでる、というのものである。
格の違いを完全にみせつけられている。
ちなみに、今の名人のタイトル所得者は塔矢明であり、それゆえにこの決勝戦でかったものが、
名人タイトルの挑戦者として決定される。
それでなくてもどうやらこの二人に関しては、さらに高みにいっているのがはたからみても一目瞭然。
素人目ですらものすごい内容の一局だ、とわかるほど。
「私だって。棋聖戦、おじさんか佐為のどっちかだよ?」
そもそも、ヒカルはすでに棋聖のタイトルを女流、そして普通の両方、所得している。
それゆえに、本因坊に続き棋聖も両タイトルを所得!というのでかなり騒がれているのも事実である。
今日、行われているのは名人戦のタイトル挑戦者決定戦。
ヒカルとアキラの活躍、そしてまた佐為と行洋の活躍。
それゆえにマイナーであったはずの囲碁は今や日本中といわずに世界をまきこんでブームをおこしているのも事実である。
「そういえば。進藤さん。予定日、いつ?」
そもそも、すでに四人目の子どもを身ごもっているヒカルは何といえばいいのであろうか。
二人目のときがたまたま双子だった、というのもあるのだが。
「今回は夏場になりそう。タイトル戦挑戦とかさなったらいやだなぁ~」
「・・・そういう心配するの、進藤さんくらいだろうね……」
もっとも、前科があるのだからたまったものではない。
何しろ一度と言わず二度までも。
…対局中に産気づいたとなればなおさらに……
それでも持ち前の集中力と粘り強さでぐいぐいと力わざで勝ちを勝ち取り、それから病院へいったヒカルもヒカルだが。
「あ。佐為が投了した」
「ええ!?ここで投了ですか!?」
「というかここでよみきり…ですか!?…え~と…すいません!
進藤棋聖!塔矢碁聖!解説おねがいしますぅ!私たちではわかりませんっ!」
あまりにこまかすぎてわけがわからない。
二人が呼ばれている理由も…そこにある。
おそらく、塔矢行洋と進藤佐為。
この二人の対局をきちんと解説し説明できるものはこの二人、くらいであろう……
「あ、よばれてる。いこ。塔矢君」
「だね」
何やらみればすでに行洋と佐為は周囲そっちのけで検討にはいっている様子である。
こりゃ、今日も塔矢先生と佐為、ず~とうちまくるかな?
そんなことをふとおもう。
何しろ二人の都合がつく時間、などめったとない、のだからなおさらに。
たけど、最近どんどん佐為と二人っきりの時間が減ってきてさみしいな……
そう思うのは…ヒカルのわがまま…では、ないであろう……
いくら年月がたとうとも、佐為がいきなり消えてしまうかも。
という不安はずっとヒカルにつきまとっているのだからなおさらに。
だいたい、佐為にしろ行洋にしろ、二人がうった手を解説し、ヒカルが打開策を見出す。
これが最近の二人の対局の醍醐味というか見どころの一つともなっている。
ヒカルは誰にも気づかれなかった手を見出すことができる才能をもっている。
それはおそらく佐為相手だからこそ、できるのかもしれないが。
ヒカルはそれを特別なこと、だとはおもっていない。
むしろそのために佐為が一度消えてしまった経験をもっていれば、なおさらに……
↑
みたいな感じでv
ちなみに、名人位は塔矢行洋が息子から奪還し(まて
棋聖は佐為がやはりヒカルから奪取してます(こらまて
んでもヒカルには女流棋聖、というタイトルもまだありますし、つまり棋聖タイトル夫婦になったり(笑
ちなみに、これ以後、ずっとこの二つの棋戦は一般開放、という裏設定v
この裏設定…本編のほうにも面白いから利用するかなぁ?(名人戦だけども…笑
ではでは、また次回にてvv
2008年9月19日(金)某日
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