まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さてさて、今回ようやく象徴的な例の佐為の扇!です!
私的には、目覚めたヒカルのもとに実際に扇があってほしかった~
とおもったのはこっそり内緒(まて
いあ、よく夢だけど夢でなかった、という話はあるじゃないですか。
現実にもさ~
しかし、よくよく考えてみたら、ヒカルってちょうど思春期真っ盛りのころに佐為と出会って別れたわけで。
精神の傷はかなり深いものがあるとおもうのですよね(汗
なので何か象徴的なものくらい実物としてあってもいいのでは…
とおもったのも事実です(笑
まあ、この二次もどきさんに関してはいろいろと関連ありまくりの品がでまくってますけどね~
佐為の絵の掛け軸やら、佐為が生前身につけていたピアスやら(まて
さらには虎次郎の遺言書もヒカルはまだ手本にあるわけで~(こらこら
ま、両親が興味がないので気づかれない、というのもありますが(苦笑
何はともあれ、ゆくのですv
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九月二十二日。
水曜日。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
何よりも光が元気でいてくれるのがうれしいのだ、と今回の入院騒ぎで思い知らされた。
いつのまにか囲碁なんてわけのわからないものに興味をもち、その道にと進んでいった一人息子。
さらには生まれながらにして自分たちにはわけのわからない力をもって生まれた子供…
だけども、今はすべてがどうでもいい。
元気で…元気でいてさえくれれば。
失う怖さよりは、よほど…いい。
ゆえに美津子はもうヒカルのすることにはよほどのことでない限り口出しはしないことにした。
それは親心、なればこそ。
星の道しるべ ~残されるものと託されるもの~
「今日、冴木さん、大一番、だな」
「そうなんだよ。塔矢門下の芦原さんと、だぜ?」
六階のエレベーターの前、靴箱の前のカウンターにてそんな会話をしている和谷と冴木。
「はは。これにまけたら森下先生のカミナリがすげえだろうな」
「プレッシャ~かけんなよ~。和谷~……」
それがわかっているからこそ、緊張するのに。
「あ。おっはよ~。冴木さん。今日はよっろしく~♪」
そんな二人に気づいてエレベーターから降りてキガリに声をかけて通り過ぎてゆく対局相手の芦原の姿。
そんな彼の姿を見送りつつ、
「…なあ、冴木さん。前からオレ、ずっとおもってたんだけどさ。塔矢門下に対するライバル意識って。
もしかしたら森下先生が勝ってにそういってるだけじゃぁ?」
というか塔矢門下のすべてはそんなことを気にかけてもいないとしかおもえない。
「…いうな。和谷。それは禁句だ」
どうやらそれは冴木もよくよくわかってはいるらしい。
実際に塔矢明に対してもそんなソブリがまったくみえないのだからそう、としかいえないであろう。
まあ、和谷達とてヒカルがらみでもなければアキラと話すことなどはめったとないのだが。
「あ。和谷。冴木さん。おはよう」
ふとエレベーターから降りると二人の姿が目にとまる。
それゆえに朝の挨拶をするヒカルに対し、
「おう。進藤」
「おはよう」
「あ。そうだ。進藤!昨日、伊角さんが電話があってさ。プロ試験、合格したって!」
「え!?本当。あと確か、二日。四局のこってたよね?それなのに!?」
「ああ。ここまで全勝。昨日もかって合格が決まったんだってさ。
伊角さん電話でよろしく先輩、なんていうんだぜ?へへ」
院生のときはずっと伊角が先輩であったがゆえに和谷としてはどこかくすぐったいものがある。
そんな会話をしていると、
「…伊角さん、うかったんだ…」
ぼ~としながらいきなり会話に割って入ってくる人物が一人。
「あ。真柴さん」
「うわ!?真柴!?」
そんな彼に気づいて声をかけるヒカルと和谷。
「プロになったら上ってくるの早いだろうな。長い間もたついていたのに。実力あるからな。あの人」
いって溜息ひとつ。
「…毎年、毎年新しいやつがどんどんきやがる。…くそ!今日は負けないからな!和谷!」
いってそのまま靴箱から奥にとむかってゆく真柴の姿。
「?今日の和谷の相手って、真柴さん?」
そんな真柴と和谷を見比べつつもといかけるヒカルに対し、
「ああ。お前は塔矢と、だな」
「うん」
チッン。
そんな会話をしている最中、再びエレベーターが止まる音。
そしてエレベーターの中からでてくる二つの人影。
「あ。越智。塔矢。おはよ」
そんな二人に気づいて声をかけるヒカルであるが。
「あ。おはよう。進藤。あ、進藤、母がさ~」
「何何?」
いいつつも、
「じゃ、また。和谷。冴木さん」
いってアキラとともに対局場にとむかってゆくヒカルとアキラ。
「…あいからわず、だよなぁ。あの二人」
そんな二人をみて思わず苦笑する冴木に対し、
「越智。そういえばお前、塔矢とエレベーターの中で何か話してなかったか?」
何か降りてきたときにそんな感じをうけたようなきがするが。
「ああ。塔矢が僕に連勝しているようだね。って声をかけてきたんだ」
「それで?」
「リーグ入りしたあなたの活躍に比べれば比べ物になりませんけどね。って答えといた。
そののち、今日の進藤戦なんて今のあなたなら楽勝でしょ、っていったんだ」
ごくっ。
「・・・何ていったんだ?塔矢は?」
越智の言葉に興味をいだき、予測はつくが気になってといかける。
「勝負はやってみなくちゃわからない、ってさ」
「「・・・・・・・・・・・」」
「そののち、ネット碁で打つかぎり、進藤は前よりも強くなってるから楽しみだ、ともいってたけど」
言葉につまる和谷と冴木にたたみかけるようにつづける越智。
「…あいつら、ネット対局やってんだ……」
「そういや、最近、オレ。ネットしてないな……」
一人暮らしをはじめてからネットなんてものはさわってもいない。
そもそも、あの部屋にパソコンなんてものはおいていない。
saiがいなくなったのちの、laitoとakiraの大局は最近のネット上の噂の的でもある。
何しろ十秒早打ちの碁を片っ端からやっていればなおさらに。
「…僕たちもボヤボヤしていられないな」
「ああ。オレだってこれからさ」
そう、負けてなんかいられない。
自分たちももうプロ棋士、なのだから。
「和谷。来週僕と、だよね。楽しみにしてるよ」
「なにを!こっちだって!」
挑発的な越智のセリフにおもわずくってかかる和谷の姿。
「ハハ。さ。俺も気合いれていくか!」
「ああ、がんばろうぜ。冴木さん」
いいつつ、それぞれがそれぞれに気合を新たに入れてゆく。
「え~と…席は…あ、あそこだ」
席の場所がわからないので対局案内盤において確認をする。
「…長かったね」
「そういや、まともな対局は若獅子戦のとき以来…か」
アキラのつぶやきにヒカルもまたぽそりとつぶやく。
「うん。あれからいろいろあったし…ね」
父、行洋の引退に、ヒカルの入院。
すべてを超えていまがある。
「一年と四か月振りの君との公式手合い。…君がどこまで強くなっているのかみせてもらうよ。進藤」
「お前だって強くなってんだろ?俺だって楽しみにしてたんだぜ?」
何よりもこの対局はきっと佐為も見守っていてくれる。
そう、心から思えるから……
「そういえば。座間先生との一局。週刊碁でみたぜ。おしかったな。徐番の差が後々までひらいてさ」
「元、王座だ。一度の大局で倒せるとはおもってないよ。だけど次に対局するときは僕だって今のままじゃない」
「…そう、だな。俺達には先がある。がんばろうぜ。塔矢」
「……ああ」
時々、ある。
彼が退院したのち、ふとどこか誰かを示しているのではないのか?というような言動をすることが。
そしてまた、どこか悟りの胸中をかたっているような感じをうける言動もしばしば見受けられる。
だけども、聞かない。
いつかきっと彼が話してくれるのを待ちたいから。
ビ~
「「おねがいします」」
先心の間に対局開始をつげるブザーの音が鳴り響く。
アキラの、そしてヒカルの互いにプロになっての初ともいえる公式手合いは今、始まる……
名人戦一次予選は持ち時間五時間。
だが、互いにほとんど早碁に近い。
アキラのほうもネット上だけでなくこうしてヒカルと対面して対局できる日を待ち望んでいた。
あのとき…彼が目の前からいなくなるかもしれない。
そうおもったときのものすごい喪失感と、そして意識が戻り、元気になったと聞かされたときのうれしさ。
その相手がいま、目の前にいるのだから。
ずっと望んでいた。
自らと互角に戦えて気兼ねなく付き合える相手を。
小学六年生の九月。
…そして、出会った。
進藤光と。
何も知らなかった彼を何とかしてこの道にひきづりこみたかった。
自分のため、そして彼のために……
互いが互いに一瞬に的確に読んでくる。
高段の棋士と対局するとき以上の手ごたえ。
……君、こそ、僕の唯一最大生涯無二のライバルだ!進藤!
パチッ。
ヒカルが撃ち込みしてきた一手にほぼ時間をおかずに打ち込んでいた手が…ふと、とまる。
………sai。
あの一度目と二度め。
そしてネット…そして…父。
その打ち方、そのものの……
やっぱり、進藤はsaiの……
師と弟子とでは少なからず似てくるもの。
明も父、行洋の打ち方に似通っているように。
進藤光の中にみえかくれしているsaiの影。
が、これだけは言える。
今、うっているのはヒカルであり…saiでは、ない。と。
しかも、以前よりヒカルはどこか…何といったらいいのか、一皮むけている。
そう。
まるで自らの中の【何か】を追い求めているかのような、そんな一局にすら思えてしまう。
…何か失ったモノを追い求めるかのごとく、に。
「ねえねえ。韓国のこの子の名前。何てよむの?洪…ホン、かな?」
海外の新聞をみて首をかしげる。
「ああ。金康日九段にかったという少年、ですね。
スヨン、です。洪秀英」
「ほう。洪秀英十四歳。またすごい新人が現れたな。韓国は」
「今、連勝記録を更新しているのは、十六歳の高永夏。ですしね」
「やっぱり韓国は低年齢の壁が厚いですね」
「洪秀英、高永夏。このあたりがでてくるのかなぁ?」
新聞をみつつもふとおもう。
「?でてくる?何にですか?」
そんな天野のつぶやきに別の出版部所属の職員が声をかけてくる。
「まだ噂だが。日中韓Jr杯。
十八歳以下の棋士が対象の団体戦をある企業がスポンサーになってやろうとしているらしい」
あくまでもまだ噂、の段階、であるが。
「日中韓jr杯!?」
「十八以下!?」
「そんな!日本でその年齢で中韓に対抗できる子なんて…!」
「塔矢明がいる」
「お!」
「いや、しかし、塔矢君一人じゃあ」
「あの子はどうだ?越智君」
「越智君。か、まだ十四だっけ?」
「そう。彼はまだ十四。年齢的にも評価できるぜ?」
「でも、中韓相手じゃきびしいでしょ。他には……」
ざわざわと事務室や他の部署も一緒になっている部屋の中がざわめきたつ。
「進藤君がいるよ」
そんな天野の言葉に。
「え?」
「あ。そっか」
「そういえば、今日、進藤君と塔矢君の対局、でしたっけ?」
「倉田さんもそういえばきにしてましたね」
「でも、二か月近く入院していたしな。彼」
「でも、本因坊戦、一次予選二回戦は突破したよ?」
「騒がれてましたよねぇ。第二の塔矢明か!?とかいって……」
ざわざわ。
「進藤君はプロになる前から、塔矢行洋、桑原本因坊、緒方十段、というそうそうたる人たちが気にかけてたからね」
そう、しかも院生試験をうけるのに緒方は進藤光を推薦したほど、である。
「ですけど。塔矢先生が指名した新初段シリーズの対局はおそまつでしたよ。勝ってるのに投了してきましたし」
なぜ投了なのか彼らからすれば理解にかなり苦しむ一局でもあったのも事実である。
「しかし、不思議なことに桑原先生たちはそれで進藤君の評価をさげたりはしなかった。
それに何より塔矢君自身がはっきりと進藤君をライバルとしてみてるしね」
天野が、彼、進藤光を知ったのは、真柴、という人物の新初段シリーズ。
そして…若獅子戦、である。
「進藤君。か、あの子も不思議な子ですよね。師匠もいないっていうのに」
ヒカルにはブロ棋士の師匠がいない。
さらには家族もまったく囲碁界のことに詳しくはない。
両親にいたってはまったくもって無知というか興味すらさらさらない。
進藤光が囲碁に興味をもち覚え始めたのは小学六年の終わりごろ、だという。
師事するものもいなくてどうやって、と常々疑問視されているのも周知の事実。
「彼も復帰してからはたしか全対局、全勝中、でしたっけ?」
「そっかぁ。でもいいですね。その調子で若い人がどんどん上を脅かしていってほしいな!」
おしいかな、富士通杯にはヒカルは予選に出れなかったが。
「古豪の連中は一筋なわじゃいかんだろ」
「でももう、緒方先生がいっかくに切り込んでますし」
「倉田君だっているじゃないですか!」
「いや、やっぱり塔矢君ですよ。いずれは緒方先生や倉田さんさえ超えていきますよ!かれは!」
「そういえば、今日の塔矢君と進藤君の大局、どうなってるのかなぁ?」
「一次予選や低段者の対局は棋譜が残らないからねぇ~」
わいわい。
がやがや。
何やら話しがかなりずれているような騒ぎである。
「未来を思うと、胸が躍る、な」
それは本音。
「天野さん」
「塔矢君がいる。進藤君がいる。それに越智君たちも加わっておおきなうねりとなってゆく」
囲碁界がたしかに何かに導かれるように動き始めている。
そう、塔矢行洋名人の引退をかわきり、として。
「そうそう!若い力!新時代の到来!」
「塔矢君を筆頭に!」
「その塔矢君と進藤君は同じくらいの器っていうし」
「そしたらいよいよ世界、ですね!日本のまきかえしです!ねえ、天野さん!」
「いいな!そりゃ。週刊碁もそうなれば部数が倍増だ」
わはははは。
そのセリフにどっと出版部所属の者たちから笑い声が巻き起こる。
「まあ、しかし、どうなるかはわからん。夢をみるのはここまでにしておこう」
しかし、いつか、そう遠くないみらい。
その夢が実現する。
何となくだが…天野はそう信じられる。
その道をつくるのは…おそらくは、あの、進藤光、という子供であろう…とも……
び~!!
昼を告げる合図が鳴り響く。
ごくっ。
おもいっきり進行早いな。
それぞれ昼の合図をうけててをとめてヒカルとアキラの局面をのぞきこむ。
盤面複雑な戦い。
あいかわらず読めない手順。
しかし、この激しい戦いの中でも塔矢相手にまったく負けてないし、進藤……
ヒカルがどうみてもかなり有利な局面、ではある。
それゆえに驚愕せざるを得ない。
自分ならここまで打てるか。
答えは…否。
と。
「冴木く~ん!昼飯たべにいかないつれがいないとご飯っておいしくないよね?
アキラは対局中のメシはいつもたべないからさ~。さ、いこいこ!」
「って、あ、ちょ、ちょっと!」
そのまま有無をいわさず冴木の手をひっぱってにこやかに対局場をあとにしてゆく芦原の姿。
…塔矢門下って、もしかして森下門下をなめてないか?
おもわず和谷がおもったのは…おしてしるべし……
塔矢のカタツキでうちかけ、か。
この後…しばし、局面をみてさまざまな手を考える。
「・・・っと、おっと。お昼だ、お昼!」
いつもならば食べないのだが…医者や親にもきちんと食べなさい!
といわれていれば従わざるを得ない、というもの。
「塔矢。お前。お昼は?メシはたべないの?俺もあんまりお腹すいてないけど、食べないと医者もうるさいしな~」
今でもひと月に一度は病院に定期検査をしに通っている状態、である。
ゆえにまあ、仕方ない、とヒカル的にはアキラメもはいっている。
別に食べなくても問題ないのだが、バレタとき母親がさめざめとなくのをみるのは…かなりつらい。
話しかけても無言のままのアキラをみつつも、そのままそっと立ち上がる。
「時間なくなるから俺、さきにいくぞ?」
いって立ち上がるヒカルに対し、
「……sai」
ぽつり、と小さくつぶやくアキラ。
「え?」
「…君とうっていて、ネットのsaiを思い出した」
言わないわうがいいのかもしれない。
だけどいわずにはいられない。
…塔矢……
その言葉にふっと笑みをうかべ、そっと目をとじ、
「…俺、はsai、じゃないぜ。ざんねんだけど、な」
そう、佐為はもう…いないのだから。
「……いや、君、だよ」
「塔矢?」
彼が何をいいたいのかがよくわからない。
「もう一人の君、だ。もう一人いるんだ。君が。出会ったころの進藤光。彼が…sai、だ」
「!?」
いきなりきっぱり言い切られてその場にておもわず硬直し固まってしまう。
「碁会所で二度、そして…君が直感打ちだ…といっていたあの…彼がsai、だ。
君を一番しっている僕だからこそ、わかる。僕だけがわかる。君の中にもう一人…いる。
今は、……君の、碁、の中に……」
おそらくそのsaiはもう、いないのだろう。
というのもアキラ的にも何となく理解している。
母の、そしてヒカルのやり取りをハタからきいていれば何となく推測もつく、というもの。
「…塔矢、お前…それ……」
明子夫人や行洋から聞いたわけではなさそうである。
それゆえにかたまってしまうヒカル。
「・・・でも、君は、君。だ。君のうつ碁が君のすべて。僕が僕であるように……」
そう、自分はいつも塔矢行洋の息子、という目でしかみられなかった。
その殻をもうちやぶってくれたのもまた、ヒカル。
だからこそ、いわずにはいられなかった。
ヒカルの碁は…
最近では、saiをどうにか碁の中においてよみがえらせよう、とあがいているのがみえるからなおさらに。
「……サンキュ。塔矢。…お前には。そうだな。…いつか、話すかもしれないな。きっと……」
いいつつも、そのばをそっと立ち去るヒカル。
アキラは知る権利がある、であろう。
彼ならば笑わずに聞いてくれそうな気がするのも事実。
そしてまた秀策の名誉のためにおいそれと人に言いふらすわけでもないであろうから。
「!?進藤!?どういうことだ!?」
ヒカルからそういわれ、おもわずはっとしてしまう。
「な、何だよ!」
「やっぱり何かあるんだな!はなせ!」
「話せ、ってやだね!おまえ、さっき俺のうつ碁が俺のすべて。それでいいっていったじゃないか!」
「それはそうたけど!」
「ならもうきくなよ!」
「でも、君は僕には話すって~!」
「いつか、だよ!い・つ・か!今じゃねえ!」
「僕だけが仲間はずれなのか!?」
「って、そういうなよ!明子おばさんやおじさんは別、なのっ!」
…は!?
そこまでいってはっと口をふさぐが、すでに遅し。
「……sai、って…何もの、なんだ?」
おそらく、視えない相手、だというのはアキラも何となく察してはいる。
そして、今は…いきなりいなくなった、ということも。
「……まだ、いえない」
「進藤!」
「……塔矢。俺。約束、したんだ。あいつと…だから…まだ、いえない」
すべて佐為に打たせよう、とおもった本因坊戦。
それに勝ちあがり、そして本因坊のタイトルを会得したとき…きっと佐為も微笑んで俺を認めてくれる、とおもうから。
「…もう…いない…のか?」
「・・・・・・ああ……」
「――…そっか……」
それでも、父である行洋はいつか彼が戻ってくると信じ、前に、前にと進んでいる。
父が待っているのはsai、だ。
とヒカルを失いそうになったあのときに、アキラにもわかった。
求めてやまない、自らを高めあえる相手。
アキラにとってヒカルがそう、であるように、おそらく父、行洋にとってsaiがその人、だったのであろう。
「……なら、僕は君がきちんと話してくれるまで、まつ」
ヒカルの本因坊秀策へのこだわり、といいい。
きっとsaiには【何か】があるのが判るから……
「それより。塔矢。お前さ。さっきの手、だけどさ。何であの1-5にきたわけ?お前らしくね~」
「・・・確かに。アレで君に一目は有利になってるし。でもまだまだ!」
「へへ~ん。今度も俺の勝ち、かもな」
「ま、まだ勝負はおわってないぞ!」
「あ~あ。お前は今では高段者ばかりとうってるんだよな~。いいな~」
「大手合いは君とおなじ、だけど?」
とりあえずアキラとてまだ三段にすぎない。
ゆえに大手合いは低段者同士との戦いとなっている。
もっともさまざまな棋戦の予選についてはそう、ではないが。
「何かさ。ネットでうっていてもお前以外だと、こう何だかむなしくなってきてさ~」
毎日、毎日、いやというほどに佐為とうっていたがゆえにヒカルは【上の棋力】しか相手にしたことがない。
といっても過言ではない。
おいかけても、おいかけても逆に相手がつよくなってゆくのを目の当たりにしていた日々。
だからこそ、対局相手を何か手ごたえなく感じてしまうのは仕方のないことなのかもしれない。
そんな会話をしつつも、ヒカルとアキラは互いにお昼を食べるためにとエレベーターへと乗り込んでゆく。
「ただいま~」
「おかえり」
すでにもうかなり外は暗い。
家にかえるともうへとへとの状態。
「あ~、つかれた~。対局は早くにおわったんだけどさ~、ず~~~と検討やっててさ~。結果は……」
玄関をあがりつつもひとまず報告。
「勝ち負けはいいわよ。お母さん、聞いてもわからないし。あんたの体の心配だけしてるわ。かわりない?」
「うん、絶好調」
とりあえずあれからもう体の不調はどこにもない。
ヒカルの気力が低下しないかぎりあのようなことには二度とならないであろう。
「そう。お風呂。お父さんもうじきでるわよ」
「フロ?あ、いい。入ってきたし。銭湯で。塔矢や和谷達と」
もっとも、風呂の中でまで検討しまくっていたがゆえに、和谷におもいっきりあきれられたのも事実だが。
「そう。ご飯は?」
「食べてきた~。つかれたからも、ねるね」
「無理しないのよ。ヒカル」
「は~い」
いいつつも二階にあがり、服を着替える。
そのまま服を着替え、佐為の掛け軸に声をかけそのまま布団にとヒカルは潜り込んでゆく。
?
あれ?
ここは?
すべてが淡い桃色に染められた空間。
ふと気付けばその空間に靴を履いてたっている自分自身。
ああ、これ、夢だ。
俺、時々わかるし。
これは夢だ、って。
…夢なら…夢ならば何かいいことがおきてくれれば…いいのに……
佐為……
ふと、光を感じてゆっくりと振り向く。
と。
さらり。
一瞬その場に身間違いかとおもって立ちすくんでしまう。
さらりとなびく、見覚えのある漆黒の長い、髪。
見知った白い長襦袢。
振り向いた、その先にいたのは……
「さ……佐為!!」
夢だ。
とわかっている。
だけども、だけども。
「夢に出てきてくれたんだな!おまえ!あのさ!佐為!今日、俺、塔矢と公式戦であったんだぜ!
わら!若獅子戦とき以来さ!あいつとだよ!?
名人戦の一次予選!いい勝負だったんだぜ!?結果は…へへ|。俺の一目半勝ち!
あいつくやしがってさ~!それでさ!
あいつの碁会所もしくは俺ん家かあいつん家でこれからも時々打とう、って話しになったんだ!
って今までとかわんないか。ハハ。あ、あとあと!伊角さんがプロ試験、合格したんだぜ!それから!!」
佐為、お前が消えてからいろいろとあった。
そう、色々、と。
「話すことが…ありすぎて……」
ありすぎて…何もいえない。
「……佐為…何で…何できえた!?ずっと打ちたい!そういってたのに!おまえ、なのに何で~!!」
わからない。
いや、本当はわかっている。
ただ…認めたくない、だけ。
「……消えるとき、どんな気持ち…だった?悲しかった?それとも…今みたいに笑ってた?」
ヒカルの目の前にいる佐為はずっと穏やかな笑みを浮かべヒカルの言葉を聞いているのみで、
一言も発してなどはいない。
……笑ってたら…いいな……
逝ってまで、佐偽に悲しんでいてほしくは…ない。
「そういえばさ。佐為。塔矢のやつ。さすがだよな。あいつ。
お前のことに誰からもきいてないのに気づいていてくれたんだぜ!?
でも、うれしかった。あいつがお前のことに気づいていてくれたのが、さ」
ヒカルが話しをしていると、ふと佐為が横をむく。
まるで…何かに呼ばれたかのように。
「…さ…い?…佐為…逝くな!!何かいえよ!佐為!消えるな!頼むから…っ!!佐為っ!!!」
また…消えてしまう。
目の前から。
すがるように手を伸ばすヒカルに対し、にこやかにほほ笑み、すっと手を差し出す佐為の姿。
その手にはいつも佐為が持っていた扇がひとつ。
何もいわなくても、いわれなくてもわかる。
これを佐為がヒカルに手渡す、託す、その意味が示すのは……
「・・・・・・佐為!!」
扇を手にしたところではっと目がさめる。
見渡せどそこには佐為の姿は見当たらない。
ないが……
「――…これ……」
霊体、のみの物質化をともなわない、扇が、ひとつ。
たしかに、ヒカルの手に…夢の中で手渡され握り返したその手に握られている…視えない、扇がひとつ。
「……佐偽……」
「ヒカル~!もう七時すぎよ!学校はぁ!?」
「あ、いく!いくよ!」
「朝ご飯、できているわよ!」
「佐為。俺…がんばる。がんばるから……」
だから、いつも見守っていてほしい。
掛け軸の絵姿の佐為にと声をかけ、ヒカルはぎゅっと【扇】を握りしめたまま、服を着替えて一階へと駆け降りてゆく。
「帰りは棋院と碁会所によってくるから」
「遅くなるの?」
「夕飯までにはかえるよ」
「わかったわ」
「じゃ、いってきます!」
九月、ともなれば三年生はほぼ受験勉強まっしぐら。
それゆえに雰囲気も受験一色にと染まっている。
今日はいつもよりも気持ちが落ち着いている自分自身をとても感じる。
「ヒカル。何かいいことあったの?」
そんなヒカルをみてアカリが横から声をかけてくるが。
家がとなりどうし、というのもあり常にこのご時世、というのもあり一緒に登校しているヒカルとアカリ。
たしかにこのご時世、女の子の一人での通学は…親からしても心配きわまりないところ。
特に、東京や地方においても通り魔事件など意味がわからない事件が多発しているご時世なればなおさらに。
「ちょっとね」
いいつつも、手にした【扇】をぎゅっと握りしめる。
そばに佐為はもう、いないけど、いたんだ、という証が間違いなく今はヒカルの手の中にとある。
だからこそ、今までよりも気分的にもヒカルはかなり落ち着いている。
九月二十三日の木曜日。
そういえば、と思う。
佐為のやつ、もしかして俺の誕生日にこようとして、ちょっと遅刻したんじゃないか、と。
どじだからな~、あいつ。
ときどき自分の体が素通りすることすら忘れて興味をもったものに突き進んでいった姿が目に浮かぶ。
たとえば、ブランコなどにも興味をいだき、座ろうとしてするっとそのまま素通りしてベソをかいていたりもした。
この二十日でヒカルは十五歳にとなった。
九月は小学六年のとき、始めて佐為と出会った月でもあり、ヒカルにとっては想いで深い月でもある。
あの時は、碁のことなんて何もわからなかった。
佐為にいわれるまま打ち、数式や化学式よりも面白そうなので興味をもって覚え始め…そして今の自分がある。
ピッ。
「あ、塔矢?俺」
「おはよう。どうしたの?こんな朝早くに」
「お前、今日も手合い、だろ?」
「え。うん」
アカリと通学しながら携帯にと手をかけて登録番号をピット押す。
「学校がおわったら俺が棋院にいくよ」
「それはいいけど・・・何か用でもあるの?」
携帯電話の向こうから聞こえてくるアキラの声。
「ちょっと、買い物。ほしいものがあるんだ」
「じゃ、僕もつきあうよ。…うん、じゃぁ、またあとで」
このままだと、実体を持たない扇は消えてしまうこともありえる。
ならば、実体を与えてやればいい、というだけのこと。
ずっと、佐為がともにいる、そばにいるんだ、と思いたいから……
「無理に助けようとするとつぶれちゃう、だろう?」
「でも、たとえばこう、打つとさ。そうするとこの交換はない方がいいよ」
「それなら、こっちから……」
ガァッ。
「あら?久米さん、いらっしゃい。お久しぶり」
駅前にとある囲碁サロン。
アキラと棋院で合流したのち、塔矢家が運営しているここにやってきているヒカルとアキラ。
ヒカルの手にはいままではなかった扇がひとつ、ぎゅっと握りしめられてそばにこっそりと置いてある。
それはヒカルが今日、棋院でかったぱかりの扇、なのだが。
何もかかれていない、シンプルな扇。
より佐為がもっていた扇に一番近いしな。
それをヒカルは選んで購入し、実体のない【扇】をそれにと組み入れた。
それゆえにかなり霊力の高い扇となっているのはヒカルしか知らない事実。
「よぉ。市ちゃん。元気でやってるかい。…ん?ひとが集まっている所。
あそこでうっているのは若先生だな。相手は誰だい?」
かなり久しぶりにと顔をだした。
ふと見慣れない子供と塔矢ジュニアが打っている。
それゆえの問いかけ。
「進藤光初段。よ。プロ一年目の。久米さんもみにいったら?プロ同士の話をきけば少しは勉強になるんじゃない?」
そんな市川の言葉に、
「いやぁ。オレみたいなヘボにはきいてもさっぱりだよ。
そうか。あの子が若先生が躍起になってプロ世界にひきづりこんだ子、ねぇ~。何、よくきてるの?」
一応、アキラが必至になってプロ世界にヒカルを巻き込もうとしていたことはこの碁会所ではかなり有名。
「進藤君のほうが席料をきにしちゃうから。あんまり。いいっていうのに払わないと気がすまないんですって」
それゆえにタビタビくるわけではない。
ゆえにどうしてもアキラも自然とヒカルの家に入り浸りとなってしまい、市川としてはかなりさみしい。
「ははは。まじめ、だねぇ」
「・・・ど~だか……」
「?」
今までのヒカルの入院騒ぎとなる前までのことがあるがゆえに、そう、ともいいきれないところもある。
「あ~。ヤバクなってきた。そろそろはじまるぞ」
「退散、退散」
「でも、それだけ元気になっているってことで」
何やらそんなことをいいながら周囲を取り囲んでいたほかの客たちがこぞってその場を離れてゆく。
「え~!?やっぱり、なわけ~!?」
おもわずあきれた声をだす市川は何も間違ってはいない、であろう。
それは中学一のころからかわっていないのだからなおさらに。
「?また?やっぱり?」
久米、と呼ばれた男性は彼らが何をいっているのかまったくもって意味不明。
と。
「あ、そうか、だって!?これくらい気づいたらどうだ!進藤!」
「何いってんだ!おまえこそ!そこのサガリがみえてなかっただろうが!!」
「そういう君だってそっちのツケをみおとしていただろ!?」
「お前こそ!ここのハネを指摘したらこの一手に気づいてすらいなかったじゃないかっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「だいたい、君が、あ、そっか。って何回いったとおもうんだ!?」
「三回!だろ!」
「違う!三回じゃない!四回だ!」
「てめぇ!数えてたのか!?ヒマだな!でもお前も俺のいったことに対して、なるほど。
って六回も感心して思いついてすらいなかったじゃないかっ!」
「六回もしていない!五回だ!!」
・・・・・・・・・・・・・
何やら奥の一席で言い合いがおもいっきり始まっている。
会話の内容は高度…なのだがどうみても、何度いった、いわない、というのは子供の喧嘩、である。
それゆえに、呆れかえってしまうのは…仕方ない、であろう。
「・・・市ちゃん?あれ?」
おもわず唖然としてといかける。
「子供の喧嘩。昔っからあの二人、そうなのよね~」
ゆえにそんな二人の姿をみておもいっきり溜息をつかざるをえない市川。
「まあまあ。でも一時期、進藤君。命すら危なかったんだし。元気になった証拠では?」
「けどね~」
たしかにそれはわかる。
わかるが…呆れかえるような喧嘩はやめてほしい。
切実に。
『は~……』
誰ともなくそれゆえにため息をついてしまう。
「?入院?」
「ああ、久米さんはしらないんだっけ。彼、五月に倒れてね。約二か月も入院してたんですよ。
そのせいで昇段に関係する大手合いをかなり休んでしまった昇段できてませんけどね」
「あのときの、若先生の空気、怖かったな~」
「触ると壊れそうなほどに心配しまくってもいましたしね……」
そのときのアキラの様子は彼らとてよくしっている。
「でも、無事に退院できてよかったわよ。…あら?」
「…碁は無限、盤上は宇宙よりも深い闇…か」
ふと、アキラと言い合いをしていてふとその言葉を思い出す。
こうした検討に終わりがないことは、すなわちその言葉が的確に示しているという事実でもある。
「進藤?」
いきなり言いあっている最中、ふっと碁盤をみてつぶやくようにいうヒカルの様子に戸惑いの声を出す。
「あ、いや。いつもそういっていたな…とおもって」
誰が。
とはきかない。
誰がいったのかわかるから。
「……続き、やろっか」
「…ああ」
それゆえにどこか言い合っていた気配もどこにやら。
そのままジャラジャラと石を片づけてはじめからはじめている二人の姿。
ふとみれば、しばらく言い合いをしながらもにらめっこをしていた二人ではあるが、
ふとヒカルが視線を下にとうつし、何やらいっているのが聞こえてくる。
「お。今日はあのまま帰らなかったのか」
「少しは二人とも大人になったのかな?」
「いや、それはない」
碁会所の客たちがそんな会話をしている最中。
思わずそんな彼らにとつっこみをいれてしまっているのは……彼らをよく知っているものだからこそいえること。
「おや。芦原先生」
「こんにちわ~。お、やってるやってる。お~い!明君、進藤君!僕もまぜてよ~♪」
気付けばなぜか芦原が店の出入り口にとたっており、
ヒカルとアキラの姿をすばやく見つけてそちらに向かっていっていたりする。
棋院で二人が碁会所による、と売店で小耳にはさみやってきたのであるが。
そんなことを他の客たちは知る由もない。
「しかし。進藤なんてたかが初段のプロが本因坊リーグの若先生と対等ぶるなんざ。
いささか身の程知らずじゃないかな~」
「久米さん。それ若先生の前でいったら逆に烈火のごとくに怒られるよ?」
「まあ、どんなに力があっても始まりはみな初段。時間をかけてあがっていくしかないしね。
特に進藤君は入院騒ぎで大手合いの昇段対局数が足りないから無理だし」
久米のセリフに別の人物がおもわずつっこみをいれしみじみといっている市川。
「まあ、認めたくはないがり。若先生と対等にうてるのはヤツだけ、だしな」
「あら、北島さん、いつも進藤君といいあってるのに認めてはいるんだ」
「それとこれとは別だ!」
あははは。
たしかにいつもアキラとヒカルの言い合いはあるものの、もっぱら北島とヒカルがいいあっていることのほうが多い。
それゆえにその場に集まっていたほかの客たちから笑い声があふれだす。
以前、段位と力は関係ない。
そうきっぱり言い切った明の気持ちもわからなくもない。
ある程度打てる自分だからこそ、相手の棋力もまた、わかるのだから……
-第66話へー
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あとがきもどき:
薫:さてさて、あと何話にいけば北斗杯?
といろいろとつっこみ~
そこまでいけば、五月に佐為、復活!なのに(こらこらこら!
そういえば、あの北斗杯って…何日?ねえ?
原作みても、どこにも日付はのってない~…
アニメを見直して一時停止とかしてさがしてみるかな?ううむむ……
五月の連休…ではないとおもうしなぁ?
そういえば、佐為が消えての初めての連休ですけど。
ヒカルがたぶん喪失感で狂いそうにならなかったのは、おそらくヨンハの影響だとおもってたり。
いや、連休前にきかされたわけで。秀策(佐為)の悪口を。
なのでそちらに心が占められていて喪失感どころではなかったんだとおもうんですよね。
すでにいなくなってしまったがゆえになおさらに。
お前に何がわかる!みたいな感じで~
でも、あの北斗杯。
佐為がいたら…うちたい、うちたい、ひかる、うちたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!
とおもいっきり騒ぎまくってたんでしょうね(確信vv
さて、今回の小話しはちょっとした雑談のようなものvv
↓
「・・・・・・」
「?ヒカル?どうかしたの?」
「明日美…あのね。あのね。へんなこときくけど、男の人って…どんなカタチであっちほうめんの知識得るの?」
「・・・は!?」
たしかにかなり変なこと、である。
そりゃ、佐為とは保健体育の時間とかも一緒に授業はうけてたけど。
それに聞けば昔の人はそ~いうことがかなりお~ぷんだったようなこともきくにはきいたが。
…最も、佐為はあくまでも碁を愛していたのでそういうことはなかったらしいが……
「佐為がね。最近夜、おかしいの!ねえ、どうおもう!?」
「え~と……」
何といったらいいのだろう。
それはつまり、ヤハリ、アレ、のことなのだろうか?
「ほかに相談できる人もいないし、明日美~、どうしたらいいの?私?」
「えっと…でも、佐為さん、ウワキとかは絶対にしてないとおもうけど?」
そもそも、佐為ははたからみても囲碁とヒカルしか目にはいっていないのは一目瞭然、である。
「そうじゃなくて!最近、佐為、ほんとうによるおかしいんだもんっ!」
いっておもいっきり涙目になってくるヒカルはハタからみればかなりかわいい。
同性である明日美ですらどきっ、とするほどに。
「……と、いうわけなんだけど。単刀直入にききます!佐為さん!何があったんですか!?」
ヒカルがおろおろしているのははっきりいって目にあまる。
というか涙をうかべて憂いをこめた視線の中で対局していれば男どもがだまってもいない。
それでいきなり肩を抱いたりして投げ飛ばされたりするのが日常となったりしていれば口をださずにはいられない。
「?いえ、私は緒方どのからおかりした書物のとおりに参考とさせてもらってやってるのですが……」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
聞けば、何でも男女の営みの本を緒方が佐為に貸した、らしい。
夫婦には絶対に必需品。
入院生活が長かった佐為は何もしらないだろうから。
と。
「お~が~た~せんせいぃぃ~~!!!」
ゆえに、棋院の中、女性たちの叫びともいえる声がこだましてゆく。
「うん?何だ?別にかまわんだろ。夫婦なんだし」
「って、佐為さんにへんなことおしえないでくださいぃぃっ!」
「お、おれ、頭いたくなってきた……」
どうでもいいが、さまざまな情緒の仕方などがかかれていた本を、佐為に参考にしろ、とわたしたらしい……
奈瀬から話をきき思わず頭をかかえずにはいられない和谷である。
男として気持ちはわかる。
わかるが……
たしかに男に免疫のないヒカルにとってはそれは驚愕したことであろう、というのもうなづける。
だからこそ、緒方にこうして抗議しにきているのだから。
「何だ。和谷。お前もしりたいのか?」
「できたら…でなくて!棋院の規律も考えてくださぃぃ!」
…緒方精次の女遊びは確かに有名どころ、ではあるが。
……進藤佐為、まで巻き込んでほしくないものである。
佐為はどこか抜けており、それゆえに素直にひとがいうことを信じてしまうのが…タマに、傷。
そののち。
佐為の変化は緒方のせい、としった進藤光が騒いだのは…いうまでもない……
ともあれ、今日もヒカルの周囲は平和である……
↑
みたいな感じで。
もう完全にギャグv(まて
佐為、そ~いったその手の知識、皆無、だとおもうんですよね。
何しろおもいっきり昔の人ですし。
そ~いうことはしっていても(笑
現代のそれらの知識の量というものはおそらく絶対に知らないでしょう。
(昔の平安時代は何よりも通い婚、ですしねぇ…笑)
それを緒方がこれは夫婦になったら相手にやらなければいけない云々、とだまし(笑)て。
佐為もまたそんなものなのですか!?
と素直に信じてしまったことからこの騒動v
ちなみに…佐為は他にもいろいろと緒方、さらには桑原などにいろいろと騙されまくったりしてもいます(笑
(何しろほとんど現代の常識などをしらずに嘘教えても素直に信じるのでおもしろがられてます)
棋院関係者も暇ですな(こらこら
ヒカル、がんばv(まて
ではまた、次回にてvv
2008年9月18日(木)某日
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