まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
歴史と藤原佐為の事情を踏まえてみれば、やっぱり有力なのは花山天皇さん、かなぁ?
※花山天皇
(かざんてんのう、安和元年10月26日(968年11月29日)
寛弘5年2月8日(1008年3月17日)、在位:永観2年10月10日(984年11月5日)
寛和2年6月23日(986年7月31日)は、第65代の天皇。平安時代中期にあたる。(wikiより)
まあ、清少納言在籍云々とかの差が多少あるのは何しろ昔のことだし。
多少の十数年程度のタイムラグは記録上の誤差もあるかもしれないし、ということで。紫式部達がいた時代は、一条天皇の時代、とおもわれてますしね。
※一条天皇(いちじょう てんのう、天元3年6月1日(980年7月15日)
寛弘8年6月22日(1011年7月25日)は第66代天皇。
在位は寛和2年6月23日(986年7月31日)
寛弘8年6月13日(1011年7月16日)。(wikiより)
まあ、こんなかんじで歴史と照らし合わせてヒカゴをたのしむのもわるくないですよv(かなりまてv
でも、花山天皇が在位少しで出家した…って、佐為が絡んでたら…とおもったら。
何か不思議な気がしませんか?
ふふふふ♪
何はともあれゆくのですv
今回からヒカルサイドの鬱々シーン(汗
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「……いない?」
でもたしかに佐為はここにいるのに。
それでも、いない、というのだろうか。
「ああ。きちんと教授などにも確認してみたが。そんなものは確認されていない、らしいぞ?
まあ、もっとも、いない、とはいいきれんがな。資料が何ものこっていない、というだけで。
しかし、何だ?進藤。いきなり平安時代、天皇に囲碁指南した貴族の名前、なんて?」
歴史担当の先生にと聞いてみた。
正月、佐為の数珠を手にいれたのちに。
「フジワラのサイ、などという人物は歴史上、確認されてないらしい。しかし、何なんだ?いったい?
まあ、進藤がいう紫式部や清少納言といった人物がいた時代とおなじ…といったら…
歴史的には一条天皇が根強い、かな?もしくはその前の花山天皇か。
しかし彼のときの囲碁指南はきいたことがないなぁ?」
986年から1016年の間に在位していた、といわれている歴史上の天皇。
それが一条天皇であり、その前の天皇は984年から986年までという短い期間に在籍していた、という。
もっとも、ヒカルがかつて数珠より読みとった残留思念から考えるのに、
一条天皇ではないような気がするのは気のせいではないであろう。
一条天皇はたしか七歳で在位につき、死後まで天皇をつとめた人物のはずである。
その前の花山天皇がいきなり内裏を抜けだして出家したため、というのが通常の節であるが。
それを踏まえれば、おそらく、佐為がつかえていたのは……
「だけど、その人がどうかしたの?」
「あ、いえ。どうもありがとうございました」
やっぱり記録はのこってないんだ。
それがかなり…くやしくもあり、さみしい。
『ヒカル。気にしないでください。私は大丈夫、ですから』
ヒカルが気にかけてくれているのが…佐為からすればとてもうれしいこと、なのだから……
星の道しるべ ~狂った歯車~
五月九日。
月曜日。
医者につれていかれてもたまらないので朝もはやくに家をでてひとまず学校にとやってきた。
土曜日、明子と連絡がとれたことにはとれたが…今、明子は行洋とともに海外にいるらしい。
すぐにはうごけない、とのこと。
戻ってくるのは今日だ、ときいた。
もう、たよれるものは明子おばさんしか…いない。
そんなことをおもいつつも、ぼんやりとする中で授業は関係なく進んでゆく。
「…う、進藤!何ぼさっとしておる!ん?何をもって……」
首からはずして握っていたネックレス。
佐為の形見だといって手渡されていた品。
こうして手にふれていればすこしは気がやすまる。
この品からは佐為とおなじ波長を感じればなおさらに。
学校にそんなものを持ってきている、と知られたらどうなるか。
今のヒカルにそこまでの意識はまわらない。
「必要のないものは没収!」
いって、ヒカルの手からそれを奪い取る教師に対し、
「先生!それは佐為のっ!!」
ぞくっ。
教師にソレを取り上げられたその直後。
ヒカルの全身に何ともいえない悪寒が襲いくる。
そして、まるで機会を今か、今かとまってきたかのごとくにヒカルの周囲にいつのまにかあった闇が、
…石によってかろうじて防がれていたとおもわれる【悪意】のすべてが一気にヒカルにとおそいかかる。
パタ~ン!
『きゃぁぁぁぁぁぁぁ~!!!!』
「先生!進藤が、進藤が!倒れました!!」
「い…息をしてません!先生っ!!」
ピ~ポ~ピ~ポ~
なりひびく救急車のサイレン。
生徒たちにとっても、また教師にとっても何がおこったのかは理解不能。
ヒカルから必要のないしなとおもわれるネックレスらしきものを没収し教壇へともどっていた矢先。
いきなり背後からきこえた何かが倒れる音。
振り向いたところ進藤光が椅子ごとたおれており、しかも…かけよってみれば意識もなく息もしていない。
月曜日。
葉瀬中。
そして進藤光の周囲はにわかに騒ぎを増してゆく…
――ヒカルの意識は深い闇に沈みこみかけてゆくのを理解しつつも、
そのままなすすべもなくヒカルはそのまま意識ごとのみこまれてゆく……
五月十一日。
水曜日。
「……進藤?」
大手合いがある日だ、というのにこない。
携帯にかけてもつながらない。
「…なあ、塔矢?お前、何かきいてないのか?」
エレベーターの前でひたすらに手合いの間の前でヒカルをもっている和谷とアキラ。
「いや、僕も連絡をとろうとはこころみたんだけど・・・」
朝、いや、昨日からまったくもって連絡がつながらない。
家にかけてもだれもでない。
留守電にすらなっていない。
「オレも。昨日、家に電話したけど誰もでなくてさぁ~…・・」
ここしばらくヒカルの顔色がわるかった。
それを知っているからこそ不安は募る。
「明?どうした?もう対局開始の時間だぜ?」
そんなアキラにと声をかけてくる芦原の姿。
「あ、芦原さん。進藤がまだこないんです」
「え?あ、そっか。…とと」
いいかけてハタっと口をつぐむ。
芦原は知っている。
ヒカルがこれない理由、を。
原因不明の病。
【ヒカル君は二度も昔、これにかかってますね】
医者の声がどこか遠い。
たしかにヒカルは過去に二度、同じような症状にとおちいった。
どこも悪くないのに全体の数値がさがり…意識がもどらない。
それゆえにふらり、としてしまう美津子の姿。
息子である明に黙ってかけつけてみればヒカルを守っていたであろう、
【石】のネックレスが彼の身近にみうけられない。
病院の関係者にきいても、ヒカルの両親に聞いてもそんなものは知らない、という。
ヒカルの守護をしている祖母がいうには、学校で取り上げられた。
そう、いっていた。
月曜日に戻る予定が飛行機トラブルで火曜日になってしまったことは何とも口惜しい。
【このままでは、覚悟しておいてください。過去の二度回復したのが奇跡のようなものですしね】
普通、この状態になった子供は手を施してもやがて死を迎える。
それが医者たちが結論づけている科学的な根拠。
だがしかし、家族にそんなことを普通の医者がいうことじたいが、患者の家族を思いやっていない。
という証拠、でもある。
医者にもよるが、どこにでも周りの気持ちを組まない人、というものはいるもの。
医者はたしかにそういうであろう。
そもそも、この症状は科学では解析不能なのだから。
「とにかく!進藤君を助けるためにも。彼が常に身につめていたお守りの赤い石!
それを早くみつけてください!」
そんなものを探し出して何になる。
と普段ならばいうであろう。
医者ですら手のほどこしようがない、ときっぱりとそういいきられれば何かにすがりたい。
そう思うのは人の…親としての心情。
親としてはどんなことでも藁にもすがりたい思いでもあるのだから。
ここは、どこだろう?
とても暗い。
佐為もこんなところにもしかしたらいるんだろうか?
とふと思う。
あの時、確かに自分は無防備だった。
それは自覚している。
が、まさかいきなり悪意あるモノにひきずりこまれる、とは思ってもいなかった。
周囲にいたであろうそれらの気配にすらヒカルは気づいていなかった。
――こっち、こっちだよ。
何か聞き覚えのある声が暗闇の中聞こえてくる。
「・・・君は……」
暗闇の中。
ぽつん、とどこかさみしい笑みを浮かべて立っている少年が一人……
ざわざわざわ。
「…まだ、意識が……」
「……には、動揺が……」
「…やはり、ここはまだオフレコで……」
何やら棋院関係者たちがざわざわと落ち付かない。
五月十四日の土曜日。
若獅子戦初日。
そこに去年の優勝者である進藤光の姿はどこにもない。
「え!?進藤君って大手合いにもこなかったの!?」
院生である奈瀬が和谷の言葉に驚きの声をあげる。
「病気?」
同じく院生仲間であった本田が戸惑いながらも和谷にと問いかけるが。
「それがさ。棋院の人に聞いても心配いらない。としかいってこなくて」
携帯にかけてもつながらない。
「僕のほうも家によったけど・・・誰もいなくて……」
院生の彼らに交じり、そんな会話をかわしている塔矢の姿。
とにかく気になり水曜日、進藤光の家にといってみた。
しかし、家には誰もいなかった。
「…君のほうもつながらないんだ。僕のほうもかけても進藤につながらなくて……」
もしかしたら、院生仲間であった彼らならば知っているかも。
そうおもって話しに交じってきたアキラである。
だがしかし、どうやら彼らもまた知っている気配はない。
何だろう。
この不安は。
不安は月曜日。
手合いの最中にいきなりコップが割れたあのとき、から。
「塔矢君のお母さんって、たしか進藤君と仲いいんだよね?おばさんは何ていってるの?」
「それが。母も火曜日からもどってないんだ」
父がいうには母にしかできない急用がはいったからしばらく戻れないかもしれない、とのこと。
「どうしちゃったんだろ。進藤……」
あの彼が何の連絡もなしに休むだろうか?
答えは…否。
だからこそ、気になる。
不安になる。
それはヒカルという人物をしっている彼らだからこそ、といえるであろう。
「え~!去年の優勝者である進藤光君は家庭の事情でお休みです。では若獅子戦を始めたいとおもいます」
本来ならばヒカルと奈瀬が一回戦で戦うことになっていた。
なぜヒカルが休みなのか、ということは家庭の事情、ということで参加者たちには説明し、
とにかく棋院関係者達は大会を開催することに。
もしも、参加者たちに悟られ、知られでもすれば動揺が広がり、大会どころでは…ない。
「…本当、どこにいっちゃったのよぉ~……」
もはや涙目。
火曜日。
塔矢明の母親、明子よりヒカルのお守りがヒカルから離れたことに倒れた原因がある。
と聞かされた。
アカリはかつて、ヒカルよりそれを見せてもらってどんな品なのかを知っている。
そして教師がそれを没収した直後、ヒカルは倒れた。
と金子からも聞かされた。
先生に確認してみれば、あの騒ぎで気づけばそのお守りはどこかになくなっていたらしい。
あの時は学校中が大騒ぎとなった。
何しろ授業中、生徒が倒れ、意識不明の重体にまでなったのである。
まず疑われたのは教師の体罰。
が、これは他の生徒の証言によりその可能性は却下された。
美津子にしろ正夫にしろ、学校から連絡がありあわてて病院へとかけつけたほどである。
本当にバタバタしていたのだ。
教師もそんなひとつのネックレスなどどこに置いたかなんて覚えているはずもない。
「早くみつけないと、ヒカルが…」
泣きそうになってしまう。
ヒカルが…死んでしまうかもしれない。
そうおもえばなおさらに。
「あった?藤崎さん?」
ふるふる。
ヒカルのクラスの担任でもあり、囲碁部の顧問でもある人物にとたのみ、
本来は休みの学校中を一緒にと探している。
いるが…小さな品、である。
見つけ出すのはまず困難、といえるであろう……
五月十五日。
日曜日。
……おかしい。
絶対に。
家も携帯も、どこにかけても誰ともつながらない、なんて。
「…塔矢君!?」
だからこそ、ここ、藤崎朱里の家にとやってきた。
「朝早くごめん。でも、藤崎さん。実は進藤のことで。彼とずっと連絡がとれなくて……」
おそらく彼女ならば知っている。
確実に。
だからこそ、となりに住んでいるアカリを訪ねたアキラ。
「…しらないの!?塔矢君!?いま…今、ヒカルはヒカルは大変なことになってるのにっ!!」
どうして明子おばさんは塔矢君にはなしてないの?
理不尽な何ともいえない想いが、アカリの中を埋め尽くしてゆく……
「へ~。以外と綺麗にしてるじゃん。和谷」
彼らは何もきかされていない。
篠田とて院生の子どもたちに余計な心配をさせたくはない。
そもそも、今だに進藤光の意識はもどっておらず、回復するかどうかわからない、といわれればなおさらに。
「っていうか、モノがないんだな。基本的に」
「冷蔵庫くらいいるんじゃない?自炊とかしないわけ?和谷?洗濯は?」
若獅子戦がおわり、和谷がアパートを借りた、というので翌日の日曜日。
ひやかしと引っ越しの手伝いをかねてその部屋へとやってきている本田達。
「洗濯はうちにもってかえるつもりだし。食事もうちでたべたり師匠ん家でたべたりするだろうしさ」
何でも掃除事態は先にとすましたらしい。
今日は基本的に必要な品を運んだのみ。
「何それ~。どうりで荷物、少ないとおもった。全然自活になってないじゃないのよ」
奈瀬の意見も至極もっとも。
「とりあえず、碁盤と碁石があればいいんだよ。ここならうるさくいわれないしさ」
「い~な~。オレも一人暮らしして~」
「いつでも泊まりにこいよ。小宮。差し入れもってきたらいつでもとまらせてやるぞ」
「ちぇっ」
そんな小宮にすかさずそんなことを言っている和谷であるが。
つまり、何かもってこい、と暗にいっているのに他ならない。
「とりあえず、毎週土曜日はプロがここに集まることにもなったんだぜ?」
にかっと笑いながらも説明する和谷に対し、
「プロってだれ?」
本田の疑問も至極もっとも。
「冴木さんに岡田さんに中山さんに……」
いいつつ指をおる和谷であるが。
「そういえば。進藤とは?連絡とれた?」
「まだ。あいつ棋院にも立ち寄ってないみたいだし。森下先生たちに聞いてもきにするな。
って言葉濁すし。家に電話しても誰もでないまま」
そもそもほとんど病院にカンヅメになっていれば家に電話してもだれもでれるはずもない。
だが、和谷達はその事実をまだ知らない。
「なあ。和谷。土曜日のその研究会。オレもきていいかな?オレの師匠の研究会土曜日にはないし」
「もちろんさ。みんなもこいよ」
「本田君や小宮は実力あるからいいよ。あたしなんかレベルさげるからきにくい」
「んなこといってたら勉強になんないじゃん」
奈瀬の言葉に突っ込みをいれる和谷に対し、
「私は今年のプロ試験もまた予選からよ。飯島君もやめちゃったし。私もそろそろ限界…かもなぁ」
それか、普通のプロ試験にしぼらずに女流限定のプロ試験をうけるか、である。
負けず嫌いの奈瀬としてはどうしても普通のブロ試験のほうで合格したいので頑張っているのだが。
「あ、そうだ。和谷。しってる?九星会出身の棋士何人かが勉強と交流をかねて中国にいくんだって」
「ふ~ん。それで?」
「伊角君も一緒にいったらしいのよ。それに」
「伊角さんが!?」
「碁、続けてたんだ。伊角さん。そうか、来年もプロ試験うけるのか」
「俺達とはまた本戦でぶつかりあうのかぁ」
「伊角さんは外来になるから二か月後の本線からくるわけだ」
奈瀬、和谷、小宮、本田達がそんな会話をしている最中。
プル…フルルル……
「あ、和谷。電話~」
「お。ほんとだ。…あれ?珍しい。塔矢からだ。何かわかったのかな?」
携帯のトップには塔矢明の文字が。
ヒカルのこともあり一応携帯電話のアドレスを交換しているがゆえに誰からかはわかる。
日曜日。
ヒカルの家にいってみる、といっていたアキラからの電話である。
「もしもし?」
「もしもし?和谷君?わかった!中央総合病院だって!」
……ぴしっ。
まさか、とはおもった。
だけども、まさか……
電話の向こうから聞こえてくる叫び声。
「ちょ。ちょっとまて!病院!?まじで!?何で!?」
「「「?」」」
一瞬何かわからずに顔をみあわせている奈瀬達三人。
「進藤の幼馴染の子の藤崎さんっていう子からきいたんだけど。
月曜日に進藤、いきなり授業中に倒れたらしくて…それで救急車で……
まだ、意識がもどらないらしくて…うん、僕は今藤崎さんってこと病院にむかってる。
あ、藤崎さんってしってるかな?藤崎朱里さん。進藤の幼馴染で隣にすんでる子なんだ。
で、病室は……」
電話の向こうから聞こえてくるアキラの声は気のせいではなくどこか震えている。
「ちょ、ちょっとまて!塔矢!誰か!メモ紙!!」
何だか唯らならぬ気配である。
それゆえにその場にいた奈瀬、本田、小宮の三人も顔を見合わせ和谷の近くにとよってゆく……
ピッピッ……
「何だよ……何なんだよ!?コレっ!」
「お静かに。ここは病院です」
集中治療室。
さまざまな機械につながれているヒカルの姿が痛々しい。
そんなヒカルの姿をガラス越しにみて愕然としてしまう。
原因不明の主に子供がかかる、といわれている奇病。
脈はあるのに意識はない。
「…とにかく、進藤がもっていたっていう【お守り】それをみつければ何とかなるんだな?」
「母がいうには……」
科学でどうにもならないのならば、そういったモノを信じてみるのも一つの手。
アキラから説明をうけ、しばしこくりとうなづく和谷達の姿が、ここ病室の前で行われていることを、ヒカルは知らない。
ここは…?
あれは?
すべては河の流れのように、時は移り変わってゆく。
時は戻ることのないもの、そしてまた河の流れもまたしかり。
私が佐為の…あの方のために選ばれ、そしてあなたはさらにその高みを目指すためにと選ばれた。
そして今。
私があなたに伝えるものは……
ヒカルの魂は今は肉体にとどまってはいない。
不思議な空間。
その中において人類の歴史がゆっくりとまるで映画のごとくにヒカルの前に浮かんでは…きえてゆく。
すべては、神の一手のための布石。
碁の起源、いわれ…そして、さまざまな思い……
…何で俺にこんなものを?
「……必要。だから」
横にいるのは小さな子供。
彼が…佐為と出会ったときの姿なのであろう、小さなままの虎次郎の姿。
そしてまた、佐為とともにいた虎次郎の、そして佐為が佐為として生きていたときの想い。
目覚めればすべては記憶の奥底にと眠ってしまう。
だけども、【知る】ことが重要なのだ。
すべては、世界を新たな局面へとすすませてゆくために……
たしかに脈はある。
数値も安定してきた。
なのに目覚めない。
集中治療室から個室へと移された。
膨大になるであろう金額は塔矢家が建て替えてくれることとなったらしい。
何しろ進藤家にはそんな大金をひねりだすほどの余裕はまったくない。
常識で考えればしんじられないが、たしかにそれは事実、なのであろう。
ヒカルの元にある霊能者、と紹介された人物が数珠を託していったのち、数値が安定すればなおさらに。
信じない両親とてそれを目の当たりにすれば信じないわけにはいかない。
科学では割り切れないモノがたしかにあるのだ、と。
だがしかし、ヒカルの霊力はすでに一般の存在と比べても神格に近いモノへと変化している。
ゆえにその数珠も一時しのぎにしかすぎないことも明子は理解している。
必要なのはその力を補佐しうるほどの霊力を秘めている、という【石】。
それしか彼を、進藤光を助ける手立ては…ない。
「進藤。目をさませよ。いくらねぼすけなお前だからって…いくぞ!オレが先番だ!十六の四。星!」
何とか意識を戻したい。
それゆえに暇があれば病室にとやってきて、ヒカルの枕もとにとすわり一手をヒカルに示す和谷。
負けず嫌いのヒカルのこと。
もしかしたらこの声で目を覚ましてくれるのではないか、と期待しての行動。
それは、和谷だけでなくアキラとて同じ思い……
「東京、北京って四時間でついちゃうのねぇ。ここからはタクシー?中国棋院までどれくらいかかるの?」
「道路事情もよくなってるし。三十分くらいかな?何だ、桜野も伊角も中国は初めてか」
たしかに最近は道路事情云々はともかくとして、治安がいい、とは言い難い。
ましてや日々、光化学スモッグなどが発生しているご時世でもある。
「しかし。伊角。お前が去年、九星会を辞めたときにはもうプロを諦めるかとおもったぜ」
「何であきらめないといけないのよ。慎ちゃんはその辺のプロとなら互角に渡り合うわよ?」
車の中、そんな会話をしている人物が三名。
「力が足りない、なんていってないだろ?気落ちしてやる気をなくしたかとおもったんだよ」
そんな運転している男性のセリフに、
「すいません。しばらく一人になって気持ちを立て直してました。心配かけてすいません」
「成澤先生が今日、お前をこの親善試合に誘ったのはお前の力を認めているってことだ」
当の成澤という人物。
九星会主宰の彼はいきなりのぎっくり腰となってしまい、このたびのこの親善試合にはこられなかったが。
今、ここにいるのは九星会所属の女流棋士・桜野千恵子二段、と、そしてもう一人。
「ええ。先生の気持ちに応えるためにも今年こそ合格しますよ」
「まったくだ。お前ももう十九なんだからな」
「あら?私だってプロになったのは二十歳すぎよ?」
伊角が九星会にはいったときから何かと彼女は伊角の面倒をみている一人、でもある。
「そういえば、今回、何局うつの?二泊三日で三局くらい?まあ、勝ち負けはきにせずにやるわ。
何か学べばいいのよ」
「このやろ~」
そんなたわいのない会話をききつつもおもわず苦笑してしまう。
ここまでやれるだけのことはやってきた。
二か月碁にはプロ試験予選もはじまる。
今回の親善試合、プロ試験とおもって臨んでみよう。
それは、伊角の決意。
そして、この中国で彼、伊角は自身に必要な技術を身につけることになる――
今、このとき、伊角はヒカルが置かれている状況を…知る由もない……
「聞こえてる?進藤。
越智君は四局うって、四連勝、だって。伊角って人は今、中国に碁をうちにいってるんだって。
早く、目覚めてくれよ?君がいないと……」
キミがいないと、張り合いがない。
あのときから。
キミと初めて出会って対局したあのときから、君は、君は僕にとって、かけがえのない……
初めて親友、と呼べる大切な友人。
だからこそ。
「…僕もがんばる。だから、進藤。君も…頑張ってくれ」
理不尽な状況なんて跳ね飛ばして。
君だって楽しみにしていただろう?
本因坊戦の予選の始まる夏までには、絶対に……
ヒカルは何よりも本因坊戦を楽しみにしていた。
だからこそ…言わずにはいられない。
時間があるときは毎日のようには病院にとでむき、ヒカルに話しかけるアキラの姿が、
しばらく間見受けられてゆく……
六月。
「進藤君の様子は……」
無言で首を横にふる。
ヒカルが倒れたのは五月の九日。
下手をすればそろそろ一か月が経過する。
あれからヒカルの意識は今だに回復の兆しすら見当たらない。
今だにヒカルのお守りは見つからない。
どこにいってしまったのかもわからない。
「四月にあった、二度の手合いとかいう仕事のときまでは元気だったんです。あの子…でも……」
そののち、ヒカルの様子がおかしくなり、ついに倒れた。
「プロ棋士が所属しているという棋院のほうには、
私ではわからないので知りあいの奥さんに連絡をとってもらってるんですけど」
「ああ、海王の塔矢君、ですね。よく彼もここにきてましたし」
ヒカルとアキラが仲がよい、というのは、
目立ちまくる制服を着てやってくるアキラのせいでかなり教員たちの間でも知られている。
「あの子にもいろいろとあったとおもうんです。プロになって社会にでて…周りは大人ばかりで…だけど・・・…」
「とにかく、今は回復を祈りましょう」
「・・・ええ」
ヒカルがやっていた通信教育の塾には一応、入院しているから、と断りをいれてはいる。
出来る状態ではないから、と。
だけどもおそらくヒカルが目覚めたとき、【何で勝手にやめたの!?】と言われることがわかりきっている。
それゆえにずっとテキストだけは欠かさずにずっと送ってもらうようにはしている。
書きこむべきはずの人物が意識不明、という状況、というにも関わらず。
しばし、学校に一応連絡をいれにいった明子は担任の教員と今後のことを話しあってゆく。
「…週刊碁って、ヒカルが入院中、っていうのまではのらないんだね」
ただ、成績のところに不戦敗、とのっているのみ。
まるでこれじゃあ、ヒカルがさぼってるように思われるじゃないっ!
それが…悔しい。
「そういえば、噂をきいたんだけどさ」
「何?金子さん」
ヒカルのクラスであの後、何だか眠れなくなりそして、何か異様に怖がりになった女の子がいるらしい。
たしか明子おばさんがいってたっけ?
あの品は霊力が高い品だから下手な人物が手にすれば怖い目にあうかもしれない、と。
「その子ってだれ!?」
そんな金子におもわずくいつくようにして問いかけるアカリの姿。
どこを探しても見つからなかった理由。
それは…
ヒカルに好意を抱いていたがゆえに、先生が動揺して落としたネックレスを自分のものとし。
そののち、続く不可解な現象がこわくなり、ひとにあげた。
アカリたちがその人物からそのことを聞きだし、それを手がかりにお守りの行方を探してゆくことしばし。
すると最終的には質屋に売られたらしい。
「…とにかく!かった人をつきとめてかえしてもらおうっ!」
事情を話してゆずってもらおう。
難しいかもしれないが、だけども、今のアカリにはそれしかヒカルのためにできることはないから……
六月六日。
月曜日。
「……あれ?……って、佐為!?」
おもわずぼんやりと浮上する意識の中視えたなつかしい顔。
「「「ヒカル!!」」」
「進藤君っ!」
「よかった!!」
ふと気付けばなぜだかヒカル自身はペットの中にねており、周囲にはたくさんの人だかり。
そしてまた、そんなヒカルにいきなり抱きついてくる母親の姿。
そして何よりも、壁になぜだかヒカルがかつて見たことがある…佐為の掛け軸がかけられているのが目にとまる。
ここ、どこ?
というか見たことのない場所である。
自分の部屋でないことだけは確か。
ヒカルは知らないが、ヒカルのネックレスを手にいれた人々はさんざん怖い思いをし、
最終的な所有者が霊能者にと相談。
その結果、彼らのネットワークのつながりが元となり、
ヒカルのことを聞いていたその人物がそのネックレスをもって明子たちとともに病室を訪れた。
その時、なぜか
【これをもってゆくように】
とお告げがあった、と因島にあるとある寺より住職が掛け軸をもって病室へとやってきた。
「せ、先生に連絡しないと」
「ヒカル!?わかる!?お母さんよ!?」
なぜ母はおもいっきり泣いているのだろう?
しかもなぜかこころなしかやつれている。
ヒカルには何が何だかわからない。
「ここ…どこ?」
戸惑いの声をあげるヒカルに対し、しばし居合わせた人々が顔を見合わせたのは・・いうまでもない。
六月六日。
旧暦でいう五月の五日。
すべてはこの日がカギとなっていることを、この場にいる誰も知る由もない……
「ええいっ!むなくそわるいっ!」
グシャグシャ。
「どうしたっていうんだ?あいつ?」
いきなり何やらそんなことをいっている仲間の姿をみて首をかしげる。
「椿さん、この前もおんなじように怒鳴ってたな」
「ひいきの棋士がまけてんのかい?」
「また不戦敗…だと!?いったいいつまでつづくんだ?!」
彼は知らない。
ヒカルが意識不明の重体となりずっと五月から入院している、というその事実を。
「椿さん、お昼おわったのかい?社長がさ、一局おねがいしたいって」
「ちっ。せっかくの休み時間が」
休憩場にとやってきた一人の人物の言葉に舌打ちしてしまうのは仕方ないであろう。
「いいじゃないか。うまくごますっておけば」
そんな一人の突っ込みに、
「あの社長、下手なくせに負けず嫌いときてやがる。たまんねえぜ!」
いいつつも、そのまま社長室にとむかってゆく男性…椿の姿。
「?何?あの人、碁がつよいんですか?」
建設現場で働いている同士とはいえ相手のことをあまり知らないのも事実。
「去年、プロ試験をうけたって話しだよ」
だからこそ、碁が好きでたまらない社長の目にとまり採用されたのだが……
「へ~」
「そんな人が身近にいるんだ。オレもちょっと覚えてみようかな」
「あ~あ、グチャグチャだ」
いいつつも、椿がぐしゃぐちゃにした雑誌を拾い上げる。
彼らは囲碁のことにはくわしくない。
それゆえに、椿が何をそこまで苛立っているのかも・・・理解していない。
「・・・・・・・・・・・・・」
「何だい。そのぐしゃぐしゃな新聞は」
手にした囲碁新聞はかなりぐしゃぐしゃで読めたものではない。
「また河合さんがやったな!」
「けっ!」
そういわれても謝る気なんてさらさらない。
「河合さん、みんなが読むんだからね。進藤君が不戦敗でも丸めないでくれよ」
そんな石心のマスターのセリフに、
「不戦敗?」
意味がわからない一人の客が首をかしげる。
「だからだよ!あいつは…まだ入院してるのに!さぼってるとおもわれるじゃないか!その書き方!!」
気になってヒカルに家に立ち寄ってみればヒカルは何と救急車で運ばれた、とのこと。
たまたま河合はそのとき家を出ようとしていた美津子とばったり出会い、
美津子をつれて病院へと駆けつけたので意識不明の重体というとんでもないことになっていることを知っている。
「でも、進藤君。まだ意識は回復しないのかい?」
「らしいな」
「だけどさ。棋士ってさ。休みつづけてても首にならないのかい?」
「事情が事情だし。ないだろ」
「どうなんだろうねぇ?」
「オレが知るかっ!」
「マスター?」
「私だって知らないよ」
「クビだぁ?!冗談じゃねえや!あいつの囲碁にかける情熱はすげえのに!
んな馬鹿なことがあってたまるかっ!」
河合としても自分と旅行にいった三日後に倒れたこともありかなり気にかけている。
なのでヒカルの家族が病院にいくときには河合はいつも無料でタクシーにて送迎をこなしているのも事実である。
碁会所、石心。
ここはヒカルがよく通っていたこともあり、この場にいる人々はヒカルのことを誰よりも知っている。
だからこそ…河合の気持ちは…わからなくもない……
ガコッン。
「……ふ~……何とか勝ちを拾ったぁ」
ここ最近、進藤のことが気がかりで対局になかなか集中できなかったしな。
だけども連絡があった。
目が覚めた、と。
だからこそ今日の一局は集中できた。
それこそ久々に。
と。
「うん?越智?お前もおわったのか?トイレから出てきたところをみるとまけたのか?」
ふとみればトイレから出てくる越智の姿が目にとまる。
それゆえに気になってといかける。
「お前、まけるとトイレにこもるもんな」
「ただの生理現象さ。僕は連勝をつづけているよ。和谷とちがってね」
「このやろ~!」
まあ、たしかに和谷は連勝していない。
どうしても気がかりなことがあったので仕方ないといえば仕方ないのかもしれないが。
「そういえば、進藤、やっと目覚めたんだて?」
「ああ、この月曜日にな。あのやろぉ、心配させやがって」
六月八日、水曜日。
今日は大手合いの日でもある。
連絡があったのは昨日の夜。
だからこそ今日の対局は集中できた。
「棋士会会長の室田九段がお見舞いにいったってきいたけど」
「何だかでも、あいつ、まだぼんやりしてて意識が完全回復ってわけでもなかったそうだけどな」
どこか心、ここにあらず、といった感じであったらしい。
「まあ、対局おわったら、今日、オレもいく予定だし。お前はどうする?越智?」
「僕はいいよ。他に用事もあるしね」
「けっ。友達がいのないやつ」
「どうとでも」
しばし、棋院の中でそんな会話をする和谷と越智。
彼らとてヒカルのことをとても心配していたのも事実である。
ヒカルが倒れ、それは約一か月という期間ずっと意識不明のままであった、といえのだからなおさらに。
今日、病院にいったらあいつにいろいろとはなしてやろ。
若獅子戦のこと、そのほかのこと。
いろいろと。
話すことは…たくさん…ある。
和谷はそんなことをおもいつつも、自動販売機でかった飲料を一気にのみほしてゆく……
じっと掛け軸をみて想いをはせる。
でも……佐為、ではない。
それでも、何もない、絵すらない状態よりははるかにましだ、ともおもう。
それでも思う。
もしも、もしも自分が打ちたい…そうおもったら…そして碁をうてば…
佐為は二度と戻ってこないのではないか。
と。
目覚めてから毎日ずっとその思いにとらわれてどうしてもぼんやりとしてしまう。
一か月近くも昏睡状態であった、というのを聞かされたときにはかなり驚いたが。
だけども、自分は生きている。
それは、きっと……
『あなたはまだくるべきではありませんよ?ヒカル?』
そういっている佐為の姿がふと思い浮かぶ。
もしかしたら自分が生きているのもまた佐偽の想い、なのかもしれない、と。
聞けば、さまざまな人がいろいろと手を尽くしてくれたらしい。
原因は、【佐為の形見の石】をヒカルが手放したことが主な原因だったらしい。
明子やその筋の師がいうには、ヒカルの霊力もまたその石と半ば同化しているので、
様々な【モノ】が浄化を求めてすがってくるらしい。
もっとも、石を身につけていることにより、互いの力が増幅され、
周囲に近寄っただけでその手のものは今まで浄化させられていたらしいが。
が。
ヒカルは今までそんなことには一度も気づかなかったのも事実である。
もしも、碁をやめたら佐為はもしかしたらもどってきてくれる?
だけどももしも碁をやめたとすれば、佐為は何よりも悲しむだろう。
何よりも、彼は自分の代わりにこれからもうってほしい、そういっていたのだから。
でも、もしかしたら打てば…二度と会えない予感がするのも…事実である。
だけど…
ぐるぐるぐる……
だた意味もなく、思考のみが混乱してゆく。
ヒカルの中で解決策は…見つからない……
佐為が消えた。
これだけはもうぬぐいされない事実、なのだから……
-第63話へー
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あとがきもどき:
薫:さてさて、このヒカルが入院中。さまざまなドラマが裏で展開されてたり。
ヒカルが取り上げられた佐為の形見の石さんの影響でものすっごく霊現象、おきまくり、です(まて
いあ、霊力が強いしななのですがろうとさまざまなものがよってくる、のですよ。
んで、持ち主も力があるにちがいない、とすがってくるわけで…
何の力もない人にとってはたまったものではありません~。
しかも、下手に石の霊力が高いのでそれらの姿が視えればなおさらに(汗
んでもって、めぐりにめぐって、石を手にいれた人物がとある霊能者に相談し。
明子つながりでとにかくひたすらに仲間に連絡を入れていた明子の師。
その人物のつながりでようやく石はヒカルに戻ることとなるのですけど。
…気がむいたら番外編、としてかく…かも?
そちらの裏話しはまったくもってヒカルノゴ、というよりはどちらかといえば「幽霊関係話し」ですしね
さてさて、んではひさかたぶりに、小話しをゆくのですv
何か鬱々展開なのであかるいものをばv
では、いっきますv
↓
「でも、ほんっとヒカルと佐為さんって仲、いいわよね~、あてられちゃうわ」
というか、またまた妊娠している、というのが仲のよさがわかる、というもの。
「だけど、不安なんだよ?明日美?私はいっつも。また佐為がきえるんじゃ…って、もう毎日」
「大丈夫だよ。佐為さんは、ヒカルをおいて逝ったりはしないって。
だってさ、きちんとヒカルのもとにもどってきてくれたんでしょ?だから大丈夫」
ヒカルがなぜそこまで心配症になっているのか、というのは明日美達からしても理解はできる。
それゆえにヒカルが佐為と離れたりすればかなり情緒不安定になってしまうことも理解はしている。
それほどまでにおそらく十四のとき、
佐為がしんだ、とかされたときのヒカルのショックは…計り知れないものだったのだろう。
ということも。
「うん。佐為もね。わがままきいてくれていっつも抱いてねてくれるの」
「あ~、はいはい、のろけはいいから!それより、ヒカル。今日は女流本因坊戦、だっけ?」
そもそも、女性において普通の本因坊タイトル、そして女流タイトルの両方を所得したのはヒカルが初、である。
女流本因坊、そして本因坊、棋聖、と今だに二十歳前だというのにこのタイトル所得数は快挙、といえる。
「たしか今回の挑戦者は桜野先生だっけ?」
「うん。たしか伊角さんの先輩棋士さんだったかな?」
「ま、がんばりなさいよ。それよりつわりはへいきなの?」
「うん。対局はじまったら対局のみに集中するから、あとからいっきにくるけど」
「・・・その集中力、すごいわよね……」
痛みすらわすれるほどの集中力。
すごい、とはおもうが逆に危険でもあるのも事実である。
「そういや、佐為さんは?」
「それがね。さっき塔矢先生につかまっちゃったの」
「あ~……」
塔矢行洋元名人は佐為の姿をみつければすぐに一局をせがんでくるのでも有名、である。
それゆえにおもわず納得せざるをえない奈瀬。
「それで、美希ちゃんは?」
「院生手合いの間にいってる」
「…美希ちゃん、さすが二人の子だけあって小さいのに実力あるものね……」
何しろ遊びをかねて佐為やヒカルとうっていればおのずと棋力もつく、というものである。
「篠田先生が面倒みるから心配せずにがんばってきなさいって」
「なるほど。ま、気分わるくなったらすぐに途中退席してでも吐いたほうがらくだよ?」
「うん。気をつけるね」
そんな会話をしつつも、ヒカルは対医局が行われる流水の間にとむかってゆく。
「さって、私もがんばらないとね」
明日美とて今日は大手合いの日、である。
それゆえに気分をきりかえて、先心の間へと向かってゆく。
たしかに、ヒカルたちを中心にして、囲碁界において新しい風が、確実に広がっていることを、
明日美とて理解している。
だからこそ、彼女もまた高みをめざそう、と決意しているのだから。
↑
のような感じでv
ヒカルが院生時代、とても仲よくなったのが奈瀬明日美という設定なので。
同じプロ仲間としていろいろと面倒をみているのも彼女、という設定です。
んで彼女サイドのほうからの視点をば、すこし(笑
ヒカル、さらっとなにげに爆弾発言しつつものろけてますけどね(爆
かつては心同士がつながっていて何もいわずとも心が通じ合っていましたけど。
今は普通の生身の肉体同士なのでヒカル、無償に不安になりまくってる、という状態がつづいてたり(まて
なので佐為を強くかんじることがヒカルにとって安らぎにもなっている、というような感じで。
(つよく、の意味はご想像におまかせしますv)
ちなみに、佐為は娘に古の遊びをおしえてたりしますよv…百人一首とか(笑
もしもし?佐為さん?今の子は毬あそびなんてふつーはあまりしませんよ~、じょうたいな。
いまだに時代錯誤の佐為という設定だったり(こらこら
しかし、こんな両親の元に生まれた子供はどんな子供に育つやら(笑
ではまた次回にてvv
2008年9月15日(月)某日
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