まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

日本棋院さんのサイトをとにかく検索、検索!しまくってたらようやく発見!さまざまな対局の日程さん!
忘れないうちに、主たるものをばここに記載しておこう(こらこらこら)
棋聖戦。賞金金額:4200万。挑戦手合い七番勝負。コミ、六目半。
持ち時間、挑戦八時間、リーグ戦五時間。秒読み、挑戦十分、リーグ五分。
Aリーグ、六月から十月。Bリーグ、六月から十月。(各六名からの優勝者が挑戦者)
名人戦。賞金金額:3700万。挑戦手合い七番勝負。
コミ、六目半。持ち時間、秒読みとも上記とおなじく。
約一年かけて対局あり。
本因坊戦。賞金金額:3200万。挑戦手合い七番勝負。コミ、六目半。
八名リーグ優勝者が挑戦者。それ以外は上記と同じく。
四月より約一年間。
王座戦。賞金金額:1400万。挑戦手合い五番勝負。コミ、六目半。
16名によるトーナメント戦。挑戦手合い三時間、秒読み五分前。
四月よりトーナメント開始。
碁聖戦。賞金金額:777万。挑戦者手合い五番勝負。コミ、六目半。
日本棋院、五段以上、関西棋院、全棋士対象。
十一月より一回戦開始。
富士通杯。賞金金額:1500万。決勝一番勝負。コミ、六目半。
八月より開始。トーナメント形式。

主たるものはこれくらいかな?この作品に関係してたのは?
まあ、それ以外にもでてくるでしょうけど、それはまたおいおいと~♪
しかし、賞金金額があったのにはたすかりますねvふふふふふ(こらこら
何はともあれゆくのですv

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そういえば、とおもう。
佐偽とであってからよくあった金縛りも最近はまったくない。
それどころかよく道端でよくない霊を視ることもなくなった。
おそらくそれは佐偽の霊力の影響なのかもしれないが。
近くによくないものがいる感覚を感じても次の瞬間にはその感覚は消えている。
それども普通にやはり人々の背後霊などは視えてはいる。
ゆえに自身が変わった、とはヒカルはあまりおもっていない。
ましてや自身の霊力が変化をとげている…などとは、夢にも思うはずもない……

星の道しるべ   ~疑惑、そして始まり~

がちゃ。
会話をしつつも扉をあける天野達。
と。
しばしそのまま扉をもったまま固まってしまうのは仕方がない。
「…って、え!?緒方先生。それに桑原先生まで!?」
緒方はまあわかるが、どうしてここに桑原本因坊もいるのだろう。
それゆえにしばしその場にて立ち尽くす。
「えらく時間をくったな。開始がおくれたわけじゃないだろう?天野さん」
「え、は、ええ」
バタン。
話しを振られてはっと我にともどり、とりあえずノブをもったままの扉をようやく閉める。
「本当、進藤君にはおどろかされましたよ。第一手に二十分、ですからね」
いいつつも、桑原達の横にある席にと座り、モニターをみつつ、
「しかし、桑原先生。今日はやはり進藤君がめあてで?」
疑問におもっていることをひとまずといかける。
緒方はまあ、ヒカルを評価していたらしく、院生試験のときにも推薦したくらいであり、
また無理をいって若獅子戦のときにまともな棋譜作成をしたくらいである。
それゆえにいてもおかしくはない、とはおもうが。
「そうよ。わしはあの小僧をかっておるでな、すれちがったときにピンときたんじゃ」
天野の質問ににやっと笑みを浮かべて答える桑原。
「は?スレちがったとき?まさかたったそれだけで彼の評価を?」
一瞬その言葉の意味がわからずにおもわず間の抜けた声であらためて問い返す。
「それだけですよ。勘、だそうです」
天野の気持ちがわかるのか、あきれたようにそんな桑原にかわり答えている緒方の姿。
「カン?」
「ほほほ。わしの勘を馬鹿にしているようじゃいつまでたってもわしにかてんぞ?緒方君」
何やらそんな会話が緒方と桑原の間でくりひろげられはいるが。
まあ、先生もいろいろとあったんだから進藤君に何かかんじるものがあったのかな?
何しろ進藤光は霊能者いわく、けっこうな能力の持ち主、であるらしい。
ならば囲碁界の大御所、ともいわれている彼が何かを感じ取ってもおかしくはないのかもしれない。
そもそも、今までも彼は幽霊をみた、とかいっていたことがあるくらいなのだから。
まあ、長くいきていればそういうことも多々とあるのではあろうが……
いかんせん、そういう経験がないとどうしても信じられない、というのがひとの常。
「あはは。まあ、ただの勘にしても桑原先生に注目されるとは大したものですよ。
  若獅子戦の前ですか、あとですか?」
若獅子戦のあとならば、院生初優勝、というのもあり気に掛けるのならばわかる。
それゆえに気になってそのあたりを問いかける。
「前じゃの。あやつとすれちがったのは。その後、あやつは初優勝しおった」
「それはすごい。しかし桑原先生にしても緒方先生にしても進藤君は注目されてますねぇ。
  塔矢名人にいたってはこの対局相手に進藤君を指名したほどですからね」
天野から話がいった棋院はかなり喜んだものである。
何いろ今まではいつも塔矢名人には多忙を理由にことわられていた。
彼が出るとでないとでは週刊碁の売れ行きもかなり違う。
「「指名!?」」
天野の言葉におもいっきり驚きの声をあげる和谷と越智。
離れた場所に座っているとはいえ所詮は狭い部屋の中。
会話も聞こえてくる、というもの。
それが気になる会話ならばどうしても聞き耳をたてずにはいられないのが人というもの。
無関心を通せるものはよほど精神力がつよいものでなければ無理であろう。
「ほお!指名か!やるのぉ。あやつも。わしもやればよかったかのぉ」
気にかけていたのだから、それくらいはやってもよかったかもしれない。
指名まではおもいつかんかったのぉ。
そんなことを本気でおもいつつも感心した声をだす桑原であるが。
「し、進藤って……和谷…」
「お、オレたちの…いうな、もう…越智……」
どよ~ん……
そんな彼らの会話をききつつも、部屋の隅でさらに暗くなっている和谷と越智の二人。
たしかに、彼らからすれば雲の上ともいえるトップ棋士にそこまでヒカルがいわれているのを聞けば、
どうしても自分たちと比べてしまい暗くなってしまうのは仕方ないのかもしれない。
院生生活の中でヒカルの棋力を知っているがゆえになおさらに。
「まあ、塔矢先生にいたっては、明君が進藤をライバル視してますし、元に明君とは進藤、仲がいいですしね」
桑原の声に応じるかのように、それでいて少しばかり否定するようにしていってくる緒方。
「いやいや。息子なんぞ関係なしにあやつが小僧をきにかけているはずじゃて。
  あの男もわしと同じで勘がはたらくからのぉ」
直感勝負ならば互角だ、とそう桑原は信じている。
真実まあそのとおりなのだが。
「ところで?先生がた?その万札は何ですか?」
座ったさきに目についたのは碁盤の前にとおかれている二枚の万札。
気になっていたので天野がといかけるのとほぼ同時。
「…あ!進藤が!戦いをしかけてきた!…こんな序盤で!?」
モニターを食い入るようにみていたアキラが驚愕の声をだす。
たしかにみれば、いまだに徐番、だというのに勝負をかけてきている一手が繰り出されている。
しばし、それゆえにモニターに視線を釘付けにさせるその場にいる全員の姿が、しばし見受けられてゆく。

ここで勝負?
相手がうってきた一手。
これはまさに中番以降に繰り出すはずの一手のようなきもしなくもない。
どうみても相手のこの一手は勝負をかけてきた一手としか読み取れない。
やはり普通の互い戦のハンデではないな。
まだ相手がどれだけのハンデを自らに課したのかが読み切れない。
だけどもこの局面からは早々にしかけてこなければ勝機がない、とおもっているのはよくわかる。
これは…複雑な戦いに持ち込もうとしている?
ヒカルからは感じないが、たしかに感じるものすごい圧迫感。
精神がとぎすまされるこのここちよい感覚。
行洋がそう思っているのとほぼ同じく、
複雑な戦いにもちこみ、ヨミの勝負にもってゆく。
攻めたくなるような隙をわざとこちらからつくる。
そんなことを思いつつも、相手の一手をうけて次なる指示を出す佐偽。
『十三の十四。ボウシ』
ボウシ?
おもわず佐偽の指摘にちらりと横にと視線をむけるヒカル。
佐偽の表情は真剣そのもの。
たしかに、局面で十五目以上の差をつける、というのはかなり集中していなければできない技ではある。
ごくっ。
そのあまりの真剣な表情に一瞬つばを飲み込むヒカル。
ヒカルとの対局においてはあまり見られたことのない佐偽の真剣な表情がそこにある。
対局中に視線をはずすなど普通はありえない。
そう、普通ならば……
そんなヒカルの一瞬の行動を行洋は見逃してはいない。
行洋が気づいている、と知るはずもなく、そのまましばらく佐偽をじっとみているヒカルであるが。
相手がいっきに勝負をかけてきたとき、そこから黒の活路がうまれる。
それゆえの一手。
佐偽に示されたその場所に視線を盤面にと戻して石を打ちこみしてゆくヒカルの姿。
これは。
打っているのはおそらく、彼、ではない。
もう一人いる、誰か。
今ので漠然とした感覚がほぼ確信にかわった。
おそらく、彼は誰かの指示をうけて変わりにうっている。
だけどもこの圧迫感からしてただものではないのは明白。
対局しているのは間違いなく進藤光、という息子と同い年の子ども。
今年合格したばかりの。
だがしかし、この威圧感は子供のものではない。
そもそも雑のようにみえるがこの一局は奥が深い。
ならば。
おまえが何ものなのか、見極めさせてもらおうっ!
負けん気の強さと好奇心はアキラにおとらず彼とて人一倍。
ゆえに行洋もまた佐偽の誘いにのってゆく。

「って、ええ!?お父さんがうけた!?」
「というか、何をやってるんだ?名人らしくもない。それに進藤も、だ」
今だに始まったばかりだ、というのにいつのまにやら局面は大混乱。
「でも、この場合、この石をとりにいかれたら黒はもうおしまい、でしょ?」
「とりにいきたくなるような石だ」
「でもお父さんはとらなかった」
普通に考えれば黒が圧倒的に不利の形をしている場所がある。
なのに名人はとらなかった。
それゆえに観戦しているものからすれば不思議でたまらない。
「ほぉ。これはこれは。おもしろい一局じゃのぉ。どうおもう?緒方君?」
序盤だ、というのに気づけば盤面は複雑極まりない手になっているような気がしなくもない。
実際に複雑極まりなくなっている。
まるで、そうずてに中盤以降の局面にさしかかったかのような打ち方を互いが互いともしているのが見て取れる。
「あやつ、どれだけ自らに課しておるのかのぉ?ほっほっほっ」
「…そうかっ!」
「?」
桑原の言葉におもわずガタン、と席をたちあがるアキラ。
アキラ以外は今の桑原の言葉の意味はわからない。
「って、ええ?どういうこと?ここはこううたれたらこう、だろ?」
「しかし、名人はこうきた」
モニター画面を見る限り、和谷達にはヒカルの意図も、そしてまた塔矢名人の意図もまったくもって理解不能。
石を並べつつ検討していても、はっきりいってまったく先がよめない。
いや、先どころかどうしてこんな打ち方をしているのか、ということですらわからない。
「なんじゃ、誰もきづいておらんのか。しかしほんと、面白い小僧じゃのお。あやつあいてにのぉ」
相手はあの五冠をも制した塔矢行洋である。
知らないはずではないはずだ。
だからこそおもしろくてしかたがない。
ましてや自分の考えが正しければ相手の進藤光、という子ははっきりいつて負けていない。
「そういえば、前、進藤から夜、お母さんに電話があったことがあったけど…それが関係してるのかな?」
ふとあのときのことを思い出す。
「ほぉう。ならばあやつももしかしたら知らされてたのかもしれんの。小僧が何をやらかすか。
  あやつも負けん気はつよいからのぉ。ほほほほほ。」
かつて、行洋から彼の妻が霊能者に近い能力、というかほぼ霊能者、といっても過言でないのだが。
とにかくその筋の力の持ち主であることはきかされてはいる。
それゆえに、彼女に相談、というのはあながち普通の生活においても迷っているものならばしても不思議はない。
相手がハンデを課して打つ、ということをもしかしたら聞かされていたのかもしれない。
もしくは打っていて相手の意図に気がついたか。
ともあれ、塔矢行洋は相手のその意図をうけた局面を繰り出している。
だからこそ、面白くてしかたがなく、局面から目が離せない。
二人がこれからどのような局面をなしとげてゆくのか、ということに。
しばし、全員が唖然としたり、笑みをうかべたりし、また驚愕しながら見守っている最中。
ゆっくりとではあるが盤面上の戦いはさらに激しさを増してゆく。

「一隅でたたかった戦いが盤面上にひろがっている。しかし、これは……」
さすがにここまでくれば桑原がいわんとしていたことがようやくわかる。
それゆえにうなるしかない緒方。
「しかし、これはいったい?進藤君らしくもない。むちゃがすぎる。名人もおかしな打ち方をしているし。
  どうみても黒が十目以上損をしている」
一方、意味がわからずにただただ首をかしげるしかない天野。
どう考えても黒が圧倒的不利の局面。
それなのにその不利をはねのけようともせずに次々と攻撃の手を加えているのが不思議でたまらない。
少しほど手をかえればまちがいなく不利な場所も有効に使えるであろうに。
幾度かみたことがあるヒカルの打ち方ではない。
彼はこんな無謀な打ち方をするようなタイプではなかった。
では、なぜ?
考えても考えても天野にはまったく理解不能。
そしてそれはまた、和谷達にとってもまた理解不能でもあることを指し示している。
「…そうか、あいつっ…!」
がたっ。
天野の言葉にようやくとある可能性におもいつきおもわず席をたちあがる緒方。
ヒカルが自らに十目以上のハンデをかして打っている、ということがようやくわかる。
しかし、なぜ先生相手に!?
漠然とした不安が緒方の中にと広がってゆく。
もしも、もしもそうだとすれば…あの進藤は塔矢名人相手にそこまでうてるのか!?
そんな疑問がこびりつく。
「桑原先生。何目だ、とおもいますか?」
だけどもその不安を物色するかのごとくに、先に気づいていたであろう桑原にと平静を装いといかける。
「どうみても十目以上なのは確か、じゃのぉ。おもしろい小僧じゃて」
「だけど、そう考えたら…二人は互角、いや、進藤のほうが…上をいっている?」
六目半の逆コミハンデがヒカルにある、と考えたとしても、
それらのハンデを気にしなくてもいいような局面にするためには。
どうしてもそれ以上のハンデを自らに課してうたなければこのような局面にはなりはしない。
ましてやちょくちょくヒカルとよく対局したことがあるアキラだからこそわかる。
ヒカルが確実に自らにハンデを課して間違いなくうっている、ということが。
だからこそ気づいたがゆえにつぶやかざるをえないアキラ。
「?あの?まったく意味がわからないんですけど?明君?桑原先生?緒方先生?」
そんな彼らの会話の意味は天野達にはきれいさっぱりと理解できない。
「ひゃっひゃっひゃっ。天野さんたちにはわからんか。ひゃっひゃっひゃっ!」
しばし、部屋の中、桑原の何ともいえない笑い声が響き渡ってゆく……

「あ、投了した」
モニターをみればヒカルが頭をさげているのが見て取れる。
どうやら投了を申し出たらしい。
「十目以上の差か。進藤君、へこんでるだろうな」
普通に考えればたしかに白が圧倒的に有利な局面。
だが、この一局に隠された事情にきづいているものはそうはおもわない。
「この打ち方をするなんて進藤君らしくないな。とりあえずいこう」
何か攻めを優先しすぎたような局面。
しかもそれに塔矢名人もうけてたった。
他にもまだ薄い個所は多々とあった、というのにもかかわらず、である。
彼らしくない。
それが天野の抱いた感想ではあるが、それでも仕事は仕事。
対局がおわったがゆえに、
再び取材をするためにとカメラマンのものとともに幽玄の間にとむかってゆくために立ち上がる。
そのまま、部屋をでてゆく天野達とは対照的にしばしその場にのこりつつ、
「ふぅ。…この場合、カケはどうなりますかねぇ?」
「じゃのぉ。ハンデの数にもよるのぉ」
いいつつも、しばらくモニターを眺めている緒方と桑原。
「「ハンデ?」」
検討が始まるのでその場を立ち去ろうとした和谷達のみみに桑原の言葉が聞こえてくる。
「あ、あの?桑原先生?」
それゆえにおもわず二人して足をとめて恐る恐る問いかける和谷。
「うん?何じゃ?お主らはたしか、小僧と同期のやつらじゃの?」
見覚えのないような気もするような、見覚えがあるような。
おそらくこの場にいる、ということは同期合格者、なのであろうことくらいは容易に推測はつく。
だが、名前は彼は興味をもった人物しか覚えない。
それゆえに彼らの名前は桑原は知らない。
「あ、はい。あの、いったいどういう……今の一局に何か深い意味があるんですか?」
聞くのがこわい。
だけども疑問におもっているままでは前には進めない。
越智とてヒカルの強さはわかっているつもりである。
彼には一度たりとて勝てたことはないのだし、アキラに師事を仰いでいてもさらにその上をヒカルはいった。
意味もなくこんな戦い優先のむちゃな一局をうつ、とは到底越智的にも思えない。
だからこその問いかけ。
「ひゃっひゃっひゃ。お前たちはきづかんかったか。まだまだ若いのぉ。ふぉっほっほっ。
  今のはの。あやつが自らに大きなハンデを課して打っていた、とすればすべて納得いくんじゃよ。
  塔矢のやつもそれに気づいてうけていたようじゃしの」
「…は?」
「まさか!そんなバカな!だって相手は塔矢名人なのに!?」
桑原の言葉に一瞬思考が真白になるのを感じつつ、
間の抜けた声をだす和谷とは対照的にありえない、とでもいうように声をあらげる越智の姿。
「ふぉっほっほっ!なぜそんなことをしたのかはわからんがの。ほんと、面白い小僧じゃて」
そんな驚愕する二人の前で面白おかしくわらう桑原。
「とにかく。進藤にいくらだったのか問いただす必要があるな」
「まあ、そうじゃのぉ。しかし、今回のカケはこりゃ、すぐにはわからんの。
  十三以上ならばお主の勝ち。それ以上ならわしのかち、じゃ。ほっほっほっ。
  のお、緒方君?もしまたこんな対局があればわしはまよわずに小僧のやつにかけるぞい?」
しばし、何やら信じられない会話をしている雲の上の棋士たちの会話をききつつ、
その場に和谷と越智はしばし固まってゆく。
普通で考えてもありえない。
五冠を達成した相手にみずからハンデをかけて打つ、などとは。
しかし、相手はあの進藤。
常識を覆しまくる、ということは和谷も越智も身にしみてよくわかっている。
ヒカルならばそれすらもありえてしまうかも、とおもえてならないのである。
何しろヒカルには師匠がいない。
すべては自らが自分にさまざまな試練をかしては乗り越えていっている。
そう和谷的には判断しており、また和谷の師匠もまたそう分析している。
現実においては佐偽がヒカルに教えており、また試練をあたえているのだが和谷達はそんな事情をまったく知らない。

パチッ。
…ここまで…か。
しかしそれでも充実感はある。
ばっとみため、黒がかなり不利の局面ではあるものの、課した目数はクリアはできている。
たしかに、ハンデの数を入れても佐偽が一目半ほどかっている計算の局面ではあるのだから。
それでもやはり、満足のいく一局、とまではならなかったが。
それでも打てたことに満足は満足である。
…完全に満たされるものではなかったが。
やっぱし、ハンデがあって完全満足する碁は無理、かぁ。
しかし、さすが佐偽。
十五目ものハンデをかしたのに勝ってるし……
局面をみつつしばしそんなことを思うヒカル。
ハンデを差し引けばおのずと確実に佐偽の勝ちは明白な局面。
それでも投了を申し出たのはこれ以上うてば十五目を維持できなくなってしまうがゆえ。
約束は約束。
佐偽とてヒカルとの約束をほごにしてまで打とう、とまではおもわない。
そもそも、ヒカルにとってもかなり大切な一局を佐偽のわがままのために明け渡してくれたのだから。
「…何のハンデもなしにうちたかったよ。進藤君。次にうつときを楽しみにしている」
どうしてこんなハンデを課したのか何となく理解した。
おそらく、今うったのはヒカルではない。
おそらく、彼の後にいる視えない誰か。
しかもその実力はおそらく自分と同等、いやそれ以上。
もしも、もしも彼が化していたハンデの数が十三以上ならば間違いなく棋力は相手のほうが上である。
「…対局中。まるで歴戦の古豪のような気迫を感じた。この次に機会があれば次は今度こそ本当の互い戦で」
ヒカルが大事な一局をつぶしてまでも打たせたい、誰か。
その誰かにむかって語りかける。
周囲はおそらくヒカルにいっている、としかとらえないであろう。
後の人に、というわけにはいかない。
まだ子供の彼を好機の目にさらすようなまねは塔矢行洋の趣味ではない。
『ええ。いつか必ず』
うわ~。さすが塔矢のおじさん。
佐偽の実力見抜いたのかなぁ?
『それはわかりかねますが……』
「ありがとうございました。おじさん」
「「…おじさんって……」」
ヒカルの言葉にその場にいた第三者たちがおもわず呆れておもわずつぶやく。
まあ、彼らはヒカルがアキラと仲がよい、というのを知らされていないのだからそれはそれで仕方がないであろう。
「…ぜひともまた家に遊びにきなさい。私も明も、それに明子もまっているから」
「はい」
家にさえきて時間があえば、確実な一局をうつことはできるはず。
それがいままでなぜかすれちがってばかりであった。
それがなぜなのかは行洋にもわからない。
ま、とりあえず、佐偽、ここをこうしたわけおしえて?
『え、あ、そこはですね……』
ひとまず対局相手であったアキラの父親である塔矢行洋にお礼をいい、心の中で佐偽とともに検討を始めるヒカル。
おそらく周囲はこの一局に対していいろといってくるであろう。
勘がさえているものはハンデのことにも気づいたかもしれない。
それらの追及を交わすのはやはり検討をしているのが一番よい。
そうすることにより、周囲の雑音はヒカルはすべて遮断することができるのだから。
そう判断してのヒカルの問いかけ。
…佐偽とともにいるがゆえに、ヒカルはこのあたりの要領のよさもだいぶ身につけているのである……

「…ふぅ」
何をいっても下をむいたまま終始無言。
これではインタビューにもなりはしない。
傍目からみれば無謀な一局をやったがゆえに落ち込んでいる、ともみえなくもない。
溜息とともに部屋をあとにする。
とりあえず先ほどまで対局中にあったあの奇妙なほどの緊迫感はもはやない。
「あ、塔矢君」
「そちらの様子はどうでしたか?」
とりあえずしばらく自分なりに検討してみたがどうしても答えにまではたどりつけなかった。
それゆえに直接ヒカルに聞こうと席をたった。
すでに緒方も桑原も席をたって部屋をあとにしている。
「それがねぇ。進藤君。どうしたのかなぁ?回りが何をいってもだまったままなんだよ」
黙っているのは佐偽と心の中で検討を重ねているがゆえ。
検討しているときのヒカルは周囲にまったく無反応となる。
だがまさか、心の中で検討を佐偽とともに繰り返している、などと一体誰が想像できようか。
幽玄の間からでてきたカメラマンの男性にとといかけるアキラに対し首をふりつつも答えるその男性。
そしてふと、
「そういえば、記録係りの子が妙なことをいってたな」
明の顔をみてふと思い出す。
「妙なこと?」
気付けばその彼の後から先ほどの二人の子ども。
ヒカルと同期でうかった和谷と越智もまた部屋からでてくるのが目にはいる。
「塔矢先生が進藤君に次は互戦でうちたい、っていったそうなんだ」
だけども、何か息苦しかったので聞き間違いかも。
ともいっていたが。
そもそも、対局がおわったときにまるですべての重圧から解放されたかのようにようやく息ができたあの感覚。
それは、記録係りの者たちにとっても今までに経験したことのない不思議な感覚でもあった。
それゆえにほっとしたそのときに聞き間違いなどをしてもおかしくない、とおもうのは人の心理なのかもしれない。
「ええ!?…お父さんが?本当ですか?」
思わずそんな彼の言葉に目を丸くするアキラ。
父がそのようにいうなんて今まで聞いたことなどなかったがゆえに驚くのも道理といえば道理。
父である塔矢行洋はめったに口にだして息子である自分をも褒めることなどはなかったのだから。
とっても、彼は彼で外部にはかなり息子自慢をしているのだが。
それを知らないのはアキラばかりなり。
「うん。塔矢先生に確かめたら言葉を濁していたから天野さんも記事にはできないだろうけどね」
行洋からしても、はっきりと明言できるものではない。
先ほどうったのはヒカルではなく別の誰かだ、そんなことをいっていったい誰が信じるであろう。
だからこそ言葉を濁す。
それでなくてもヒカルはこれからようやくプロになったばかりで注目をあびてゆく棋士である。
そんな特殊ともいえる能力のことで世間の好奇な目にさらしたくない。
とおもうのは大人からすれば当然の配慮。
「進藤って……」
「少しきになってたのは進藤のあの様子、だよな。
  周りにまったく気づくことがないのはあいつが対局してるときのクセだし。頭の中で検討とかしてたのかなぁ?」
和谷達がいくらといかけてもヒカルはだまったままであった。
それゆえに和谷がずばっと真実をいいあてているのも院生時代の付き合いが長いゆえ。
和谷もまたヒカルの面倒をみて自身の力をものばしていったという実情がある。
それゆえにヒカルのことはよく理解しているつもりではある。
まさか、ヒカルにとんでもない幽霊が取り憑いている、などとは夢にもおもってはいないが……
「…、…進藤」
「え?あ、はい」
「もう、みなさんかえるようだよ?」
ふと気付けばたしかにいつのまにかあれほどいた人々の姿はまったくみえない。
目の前にいた塔矢行洋の姿もすでにみえない。
あとはアキラにまかせて、とりあえず彼らにも彼らの仕事がある。
それゆえにそれぞれもどっていった大人たち。
「…って、あれ?ってうわっ!?いつのまにこんな時間!?」
佐偽ととにかく心の中で言い合いをしつつも片っ端から検討しては、
心の中において碁盤を思い浮かべ、それぞれに一手一手を繰り出しては検討を重ねまくっていた。
心がつながっている、というのはこういうときにはかなり便利。
それぞれがひとつの碁盤を思い浮かべ、それに意識をそわすことにより、
そこに思ったとおりに一手を繰り出すことも可能。
心の中で思っているだけなので佐偽ですらきちんと自分の意思で思った場所に石を指し示すことが可能。
よく学校などで暇なときに二人がやっている方法、ではある。
「進藤。今日の一局、あれは……」
「ん~。まだいえない。だけどもお前にはいつかはなすかもなぁ」
何となくだがアキラはすべてを佐偽すら受け入れてくれるような気がしなくもない。
「進藤?」
「何でもない。それより、うわっ!もう外まっくらじゃん!?」
気付けばいつのまにか時刻は七時をまわっていたらしい。
「うわ~!はやくかえんないとっ!明日もまだ学校なのにぃぃ!」
とりあえず佐偽が精神統一していたこの数日、ヒカルはといえばとにかくひたすらに届いた教材にて勉強していたのだが。
「あ、そういやさ。塔矢。お前、英語とか得意?」
「まあ、そこそこ、だけど、何で?」
「今教材やってるんだけどさ~。それでさ……」
話題のすり替えかたもさすが慣れたもの。
違和感なく話題をすり替え、勉強の話をしつつもヒカルもまた幽玄の間をあとにしてゆく。
残されたのは、ぽつん、と置かれた碁盤がひとつ……

リリ…リリ……
窓からは秋を示すかのように虫の鳴き声が聞こえてくる。
明日から十一月。
とにかく無事に新初段シリーズの対局も完了した。
残りの越智や和谷の対局も日程が決まり次第連絡がはいるらしい。
「お前の実力まで何かはっきり見抜きかけてたなぁ。さすが塔矢のおじさん。
  あれが普通のハンデの一局でない、というのはわかったみたいだよなぁ」
は~。
溜息まじりに窓のへりに腰をかけて外をみあげて思わずつぶやく。
『ですけど、私的には満足です。あのものは私の一手にこたえてくれました』
そんなヒカルの横ではちょこん、と正座している佐偽の姿が。
「何もいわなくてもわかってくれたのは嬉しいけどさ。しかも周囲にわからないようにいってきたし」
あの言葉はおそらく佐偽にむけたもの。
ヒカルとしても自分でうってみたいがそれ以上に佐偽と塔矢名人の一局をまともにみてみたかった。
何よりも彼が気づいてくれたような気がするのがとてもうれしい。
まあ、明子がどのように説明したのかヒカルはしらないが。
まさか佐偽のことはなしたのかなぁ?
おばさん?
そんなことをおもいつつ、
「互戦か~…おまえもまともにうちたいよな~」
『……ええ』
一局まじえたがゆえにわかる。
相手の棋力が。
全力をだしきり打ってみたい相手を始めてみつけた。
だからこそしゅん、となりつつうなづかずにはいられない佐偽。
「はぁ。実現…できるのかなぁ?」
『かなぁ!?そんな、ひかるぅっ!』
「そういわれても。塔矢のおじさんもいそがしいらしいし。
  都合がつけば明子おばさんの協力でどうにかなるだろうけど。ま、いつかは何とかしてやるよ」
『いつか、っていつですか!?』
「そういわれても!俺にわかるはずないだろ!?あ~あ、おじさんがネットでもしてたら楽だったのにな~」
アキラいわく、塔矢行洋はそういったものはまったくもって興味がないらしい。
「ネット碁やってたらどこにいても時間の都合がつけば対局できるのに。
  まあ、たしかに今日の対局がいままで以上に塔矢のおじさんと対局してみたい、とおもったのは俺にもわかったよ。
  俺だってさ、二人の本気の碁みてみたいしさ~。だけどお前にうたせたら俺がうてないし。
  俺がうったらお前が打てないし。何だかな~。そういえば虎次郎ってお前に全部うたせてたんだっけ?」
碁打ちを目指していたのにもかかわらずに彼にすべてうたせたその想い。
それはあのとき、彼の遺言ともいえる手紙でヒカルにも伝わった。
『ごめんなさい。わがままばかりいって……。
  私がいけないんです。虎次郎にもわがままばかりいって全部打たせてもらったんです。
  私はあのとき現世にもどってあせっていて、虎次郎におもいっきりわがままいいまくって……』
「あ~…何となく理解できた。それって」
それでか。
あのとき虎次郎が夢の中でいってたのは。
『虎次郎…ほんとうにいい子でした…かしこくて、それでいて優しくて……私はあのとき何もできなかった…』
虎次郎の最後の姿をおもいだし、またまた自己嫌悪に陥ってしまう佐偽。
「ああもうっ!おまえなぁ!虎次郎の手紙にもあっただろ!?お前のせいじゃないって!
  おちこむなってば!…しゃ~ない。佐偽!」
『え?あ、はい?』
いきなり名前を呼ばれておもわずきょとん、とした声をだす。
「本当はさ、正月のサプライズに言わない予定だったんだけどさ~。
  とりあえず、お前のその鬱々した状態がつづかれるのも俺的にも精神的にもこまるし。
  だから、今、今日ここで宣言しとく!」
『ヒカル?』
ヒカルが何をいいたいのか理解できずにきょとん、とした声をだす佐偽。
「これから先。プロになってからの大会における、本因坊戦においては、予選、本戦ともすべて、
  進藤光は藤原佐偽に打たせることをここに誓いますっ!」
『ひ…ヒカル!?』
いきなりといえばいきなりの宣言。
それゆえに目を丸くせざるを得ない。
ヒカルがいっているその意味を飲み込むまで一時の時間を要する。
「だってさ。もともと本因坊戦ってさ。本因坊秀策の偉業をたたえてつくられたんだろ?
  でも元となったのお前じゃん?
  まあ、お前の存在をどうにか他にも知らせることができるんだったら問題ないんだけどさ~。
  俺もだいぶかんがえたんだぜ?だけど、そのかわりっ!
  あまり棋力の差が激しすぎるのは俺だって理解してるからっ!
  佐偽、お前はこれから先、俺がお前のかわりにうっててもあまり怪しまれない程度に鍛えてくれよ?」
にやっ。
どこかいたずらを思いついたような子供の笑み。
びしっと佐偽に指をつきつけてにやりと笑みをうかべながらも宣言するヒカルであるが。
事実、何でも本因坊戦は本因坊秀策をたたえてつくられたタイトルらしい。
ここにその元となった人物がいるのに参加しないのはもったいない。
ヒカルは囲碁界の知識をおぼえてゆく上で常々おもっていた。
その結果、佐偽の幻影を背負うことになろうとも。
あのとき、あの虎次郎の手紙をみてヒカルの中ですでに決意はできている。
『え?え?ヒカル、でも、ですけど!?』
おろおろ、そわそわ。
「あはは。やっぱりおろおろしてる~。あ~あ、いきなり正月サプライズ企画にしようとおもってたのにさ~。
  まあ、運がよくて名人戦に勝ち進めたらお前にゆずってやるよ。挑戦する一局の手合いは」
『え?え?ええ~!?ヒカル、ヒカル、それって…本当に!?ねえねえ、ヒカル、ヒカルってばぁ!?』
「さ~あ、どうかな~」
『ヒカル!意地悪しないでこたえてくださいよぉぉ!!』
「ひかる~!!何一人でさわいでるのっ!いい加減にねなさい!明日も学校でしょうっ!」
佐偽をこうしてからかうのはとても最近おもしろい、とヒカル的には思っている。
真実、佐偽の表情はみていてあきない。
ころころと感情のままに表情がころころとかわる。
今のヒカルの言葉にウソはない。
だけどもうまくその真意を佐偽にはわからないように覆い隠しているがゆえに佐偽はとまどう。
二階にて、佐偽とたわむれるヒカルに対し、階段の下より美津子が叫んでくる。
どちらにしても美津子たちからすれば、ヒカルが一人で何かいってる…としか聞こえない……

しばし、そんなほのぼのとしたやり取りがヒカルと佐偽の間でとりおこなわれていき、
その光景をしずかに空に浮かぶ満月がそんな二人の姿を静かに照らし出してゆく――


                                -第53話へー

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あとがきもどき:
薫:ん~、何か今回、本分が少なめ?ま、いっか(よくない
  ラストのほうの佐偽の混乱した表情はみなさんで想像してみてくださいなvv
  絶対におろおろする佐偽はかわいいとおもうんですよねぇv(にやっ
  ちなみに、いうまでもなく44話しにもあった虎次郎の遺言。
  あれをうけて決意していることでもあったりするのです(笑
  何しろ佐偽はヒカルにしか視えませんし、その棋力はたしかに確かなもの。
  埋もれさせたまま、というのはかぁぁぁぁなりもったいないですからねぇ。
  囲碁の実力をつけてきてそれがわかったヒカルからすればなおさらに。
  しかし、この決意が生かされることは?…原作しってる人は理解できるかとおもわれます(汗
  あしからず……
  ではでは、また次回にてvv



「ありがとう。塔矢君」
「あ、いや……」
というか、明からしてみればお礼をいわれるようなことではないとおもう。
ひしひしと。
結局のところ、佐偽にネット碁をうたせていたヒカルは自分はやっぱりまだまだだし。
そうおもい、ひたすらに佐偽に基本を習ってのんびりと実力をつけてはいっていた。
その合間にゼミや、さらには他の習い事。
佐偽が何でも花に興味があったらしいので最近ではいけばなの稽古にもいっている。
ヒカルはこの春から小学六年生。
アキラはアキラで海王の中学にと進学した。
何でも院生とかいうのになったとしても、囲碁部には入れるらしい。
もっとも大会などには参加できなくはなるが。
それでも、やはり人数がいない、というのは廃部というか部としてなかなか認められないものがある。
ひとつ上の去年知り合った三谷、という人物はヒカルの説得でしぶしぶながらも囲碁部に入ることを了解した。
三谷という人物につられてもう一人部にははいったらしい。
そう中学二年となった筒井からヒカルには連絡がはいっている。
「ごめんなさいね。塔矢君。私も何もわからなくて……」
母親である美津子はまったく囲碁のことにはまるっきり無知。
ヒカルが試験をうけにいくことにきまっても、どうしたらいいのかまったくもってわからない。
「いえ。僕も暇でしたから」
そんな中、アキラが率先してなら自分がついていきます。
といって申し出てくれたのは美津子からしてもかなりありがたい。
みたところかなりいいところのおぼっちゃんらしく、礼儀もきちんとしている。
ヒカルに下手なムシがつかないか心配なのは母心。
やはり娘はきちんとした人とつきあってほしい、とおもうのが親心なのかもしれないが。
ともかく人間関係には美津子とて十分気をつけているつもりである。
このご時世、何がどうなって死に結び付くことにもなりかねない世の中になってきていればなおさらに。
「よ~し!まずは妥当塔矢君!ね!」
…頼むからそれ以上強くなったら僕の立場は?進藤さん?
棋院への案内係りとして一緒についてきているアキラである。
棋院の六階にとでむき、そう叫ぶヒカルに対しておもいっきり心の中で突っ込みをいれてしまう。
『ですけど、ヒカルもこの数か月でだいぶ上達してますよねぇ。あ、ヒカル、ヒカル。
  みてください!あそこ!何か対局してますよっ!』
佐偽の言葉に視線をむけてみれば、たしかにたたみの間にて子供がたくさん正座しているのがみてとれる。
「?」
そんなヒカルの背後をすっとすり抜ける少年が一人。
今の女の子と一緒にいた男の子、どこかでみたことがあるような気がするけど、はて?
アキラのことは以前週刊碁でみたことがあり一応は知ってはいるが詳しくはしらない。
それゆえにぱっとみただけではまさかあの塔矢明がこの棋院にきてる、などとは夢にもおもわない。
いくら森下九段の弟子だとはいえ、そこまで詳しくないのが実状。
それゆえにしばし首をかしげつつも、自動販売機で飲み物を購入してゆく男の子が一人。
「次の人、どうぞ」
「あ、僕は下でまってますから。父に頼まれた用事もありますし」
「ほんと、ありがとうね。じゃ、またあとでね」
そんな会話をかわしつつ、明は一階のロビーへ、そしてまたヒカルと美津子は案内されるがままにと一つの部屋にとむかってゆく。
本日は、ヒカルの院生試験が行われる日。
そして、これこそがヒカルにとっても、そして囲碁界にとっても始めの一歩。

進藤さんが院生試験にうかったら、僕もプロ試験、うけよう。
そうすれば、若獅子戦で彼女と本当の意味で対局ができるっ!
そう固く決意したアキラがいることを…ヒカルは知らない……


みたいな感じで。
ちなみに、いまだに塔矢、ヒカルの棋力を勘違い中(笑)
まあ、ヒカルは真実囲碁界のことを何もしらないし、しかもヒカルはだまってればかなり美人さんだし。
そういう面でヒカルのことが忘れられなくなってる明です(笑
つまり、ものすごい力があるのに知識は皆無、というのでほっとけない、というのもあるのですv
でもそれが、恋だ、と自覚するにはまだ遠いv
最も、ヒカルからすれば仲良くなった友達感覚なので恋愛感情はまったくの皆無v
何しろヒカルは佐偽にぞっこん中ですからねぇ(苦笑
あるひみ、アキラはピエロかも(こらこらっ!
ちなみに、すでにネット上ではおもいっきり大騒ぎになってます。
saiの正体は~!?と。
九月から四月まで、いまだに負けなし連勝続き。
ちなみに、誰もまだたどりついていないという裏設定なんですけど、
ヒカルは趣味でつくってた有料サーバーさんをかりて作ってた創作小説サイトさん。
そこにあらたなページをつくってsaiとiaitoの囲碁講座v
というのを作っていたりするのはこっそり内緒(笑
そこにはヒカルが佐偽にネットで打たせた棋譜や、さらにはヒカルが家で佐偽に教えてもらった棋譜。
そして注意点などがかかれていたりする、というかなり濃い内容が掲載されてる、という裏設定です。
いちおう、変なひとがくるのを防ぐために検索ヨケとかのタグをいれているので、
下手なところからとんできたりすることもなく、本気の趣味さんなので、
それほど閲覧者はいないので騒がれていない、というのが実情なのですよ~。
それをみたひとも、あ、囲碁に興味もちはじめたんだ。
という感覚ですので騒ぎにもならなかったり(笑
こののち、一年ほど院生生活を得て、中一にてプロ試験に合格、中二にてプロ活動。
んでそこにて佐偽が消える、というショックを経験するヒカルですけど。
んでもって佐偽がもどってきたのは十七の歳になる春の五月です。
つまり高校二年のときですね。
ちょうどきっかり佐偽がいなくなってから二年、です(まて
ではでは、また次回にて~♪

2008年9月5日(金)某日

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