まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

さてさて、ヒカルを院生一位にしてしまったので予選はないですけど(まて
だけど、やはり椿とはあわせておきたかったので、棋譜目当てに棋院にいってもらいましたv
おそらく、あの椿さんに呑まれたのはヒカルがいなければ別の受験生だったんでしょうねぇ(苦笑
気のどくな初回の相手は奈瀬さんでv
とりあえず、今回から途中から旅行にいくのですよv
この旅行、佐偽にとってもヒカルにとっても一応重要なことがあるものでvふふふふふv
何はともあれゆくのですv

※ちなみに、料金や時刻などは新幹線の時刻表検索などで割り出している、
  打ちこみしている当時の年度の金額&時刻となっております。あしからず。

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「囲碁界に新しい波がくる…か。ふほほほほ」
「?」
新しい波がくるのでタイトルを奪いたい。
そんな緒方の言葉を思い出し、いきなり笑いだす。
「前も塔矢のやつがそんなことをいっておったの。しかし、お前さんがいっているのは、
  塔矢のせがれとあの進藤とかいう小僧のことかの?」
「若獅子戦の結果、ですか?彼の名前をしったのは」
「ほほほ。まあ、それもあるがの。以前ちょこっとすれ違ったことがあっての。きにかけてたんじゃよ。
  わしのシックスセンスもたいしたもんじゃて」
あやつが塔矢のやつがいっていた、もう一人の波、か。
碁は一人ではうてない。
たしかにそうじゃの。
「シックス…?」
「勘じゃよ、勘。だからこそ、まだまだ若いもんにはまけられんて」
もつれにもつれて七番勝負にまで持ち込んだ、本因坊のタイトル戦。
二か月前、つまりは五月ごろから一戦目が始まり、このたびの戦いで勝敗はきまる。
「?あの?先生がた?何を?」
対局の間にてそんな会話をしている二人にただただ首をかしげざるを得ない。
今日は一番重要な戦いのはずだ、というのに。
「時間です。先生がた、そろそろ準備をおねがいします」
記録係の柿本、という男性が問いかけるのとほぼ同時、進行係りが開始時刻を告げてゆく。
今日と明日。
この二日にわたっておこなわれる結果において、本因坊のタイトルがどうなるかが決まる……

星の道しるべ   ~予選と旅行~

「…え?」
おもわず硬直。
『おやまぁ』
とりあえず、新聞ではラチがあかない。
それゆえに棋院にくれば昨日の棋譜はあるはずである。
それゆえに朝もはやくに佐偽にせかされたのもあり、やってきているヒカルたち。
今日から五日間、一日一局。
三勝したものから抜けて来月にとあるプロ試験にと挑むことができる。
それはわかってはいる。
いるが……
「…なあ、佐偽?この大人の人たち…もしかして全員受験生?」
『おそらく…そういえば、試験は三十までうけられるとかいってましたねぇ』
思わず入口のあたりで突っ立ちながら呆然と佐偽と会話を交わしているそんな最中。
ドッドッドッ。
何やらうるさいバイクの音。
ふとそちらをみてみれば、何やらものすごく毛深い男性の姿が目にはいる。
「ひゃ~!ったく夏はたまったもんじゃいなっ!」
ヘルメットを脱ぎつつもいきなり大声をだしてくる。
顔も体と同じようにかなり毛深い。
何となく河合さんのイメージにだぶるところがあるような、ないような…
どちらかといえば、ぱっと想像的に浮かんだのは、熊。
『ク…ぷくくっ。ヒカル。その発想、おもしろいですっ!』
思わず強くそのことを連想したので、佐偽にもダイレクトに伝わり、横のほうで笑いをこらえている佐偽。
「あん?何だ?坊主。お前もプロ試験、か?」
「え?あ、うん」
予選はうけないが、試験をうけることにはかわりない。
いきなり話しかけられて思わず反射的に答えるヒカル。
「オレもだ。ま、よろしくたのむわ」
って、このクマおやじもうけるの!?
その言葉に思わず逆に驚いてしまうヒカル。
しばし唖然とその男性が棋院の中に入っているのを見ている最中。
「ん?おい。進藤」
「あ、飯島さん。おはよう」
「何だ。お前、予選免除だろ?何でここにいるんだ?」
「え~と。昨日あったっていう本因坊戦の七番勝負の棋譜がみたいな~、とおもって」
飯島からすれば、自分たちとはちがいヒカルは院生一位で予選免除。
それゆえにここにどうしているのかが気にかかる。
「ああ。なるほど。それより何でそんなところにつったってたんだ?」
「いやあの、ものすごい大人の人がいたから。あんなおじさんたちも試験ってうけるの?!」
それがヒカルの本音といえば本音。
理屈では三十まで云々、とはきいていたので理解していたつもりでも実際に目の当たりにするのとでは話が別。
「はぁ。当たり前だろ。プロ試験は三十まで。外来だってくるんだから。
  アマの大会で優勝したひととかもやってくるんだからな。中には元院生だった人もいるし」
「そういえば、院生って十八まで、だったよね。でもほんとうに大人の人もうけるんだ~」
いつも子供の中でうっていたのでどうも大人が混じっている、という感覚になかなかなれない。
「ま、せっかくだし。のぞいてくか?今日は初日だし」
「そだね。じゃ、先にちょっとみんなに挨拶してこよっと」
何だか緊張していたが、ヒカルの間の抜けた質問にその緊張がゆるゆると解けてゆくのを感じつつ、
思わず苦笑しつつも、ヒカルにいってくる飯島。
彼は緊張して昨夜はあまり寝ていない。
そんな中でかなり間のぬけたことをいっているヒカルをみれば何だか緊張しているのがばからしくもなってしまう。
碁は普段通りにうつことができなければ、気持ちの上でまけていればどうしても局面にでてしまう。
そのことをふと思い出す。
そんな会話をしつつも、飯島とともにヒカルたちはエレベーターで予選がある六階にむけて移動してゆく。
どきっ。
「ねえねえ!飯島さん!?大人ばかりだよ!?」
「…進藤。たのむからあきれることいわないでくれ」
エレベーターを下りれば何やら大人がものすごくたむろしているのが目にはいる。
それゆえに驚いて隣にいる飯島に聞いているヒカル。
しかも全員、何やらピリピリしまくった空気をもっている。
と。
『これはみごとに大人、ばかりですねぇ~』
佐偽がそうつぶやくと同時、
「何だ!?その態度は!お前!ひとが声かけてるのに無視しやがって!おいっ!」
いきなり耳をつんさくような大きな声が聞こえてくる。
「「……」」
おもわず目をテンにして顔を見合わせる飯島とヒカル、そして佐偽。
「おいってば!おまえ!このバカヤロウ!」
あ、さっきのクマおやじ。
みればさきほどの男性が何やらおもいっきり場違いな大きな声を出している。
「あんた、静かにしたら?みんなの迷惑だろ」
そんな彼にと別の受験生らしき人物がたしなみをいれて注意をしてくるが、
「おい!オレはな。お前どっからきたんだ、ときいただけだぞ!?」
おもわずあまりの大声に耳を押さえてしまうのは仕方ないであろう。
「誰だよ。騒いでるの」
「何?あの人受験生?」
「うるせえなぁ」
どうやら気持ちは全員同じ、らしい。
あのおじさん、いい大人なのに空気を読む、というのしらないのかなぁ?
ヒカルがそんなことを思っていると、
『ヒカル。とりあえずみんなに挨拶いきましょ』
このままではヒカルがいらないことをいいかねない。
それゆえに先に促す佐偽の姿。
「そだな。飯島さん、いこ」
「あ、ああ。今回は変な外来がいるな……」
一瞬、あまりの大声に飯島もまた呑まれていたが、ヒカルにいわれてはっと我にと戻り対局場にと向かってゆく。
「あ!飯島さん!って、進藤くん!?うわ~。激励にきてくれたの!?」
「あ、フク。おはよう」
待合室を兼ねた休憩場にいくとすでにかなりの人数があつまっており、その中に福井の姿が垣間見える。
ふとはいってきたヒカルたちにと気づいて手をふりながら声をかけてくる。
「こいつは、本因坊戦の棋譜しりたくてついでによっただけさ」
いいつつも、その場に荷物をおいて手近な場所にと座りつつ福井にこたえている飯島。
「そうなんだ。ねえねえ。さっき向こうのほうが騒がしかったけど何かあったの?」
福井が先ほどの騒ぎがここまできこえてきたがゆえにヒカルたちに問いかけるとほぼ同時、
「何?あれ?あれ?進藤君。おはよう。激励?」
ここにいるはずのないヒカルの姿をみつけて部屋にはいってくるなり声をかけてくる奈瀬。
「え、あ、うん」
立ち寄ったついでに声をかけにきただけ、とは言いにくい。
「そういえば、さっきそこでとんでもないヒゲオヤジみたわよ。騒ぎまくってるの。
  相手を大声だして動揺させるつもりなのかしら!?あのクマおやじっ!」
「く…、奈瀬もそうおもったんだ。俺もあのおじさんはクマ連想したよ」
「あ、やっぱり?いやねぇ。あんな人とあたりたくないわ」
「??ねえねえ、いったい何があったのさ?」
しばしそんな会話をしている二人にと首をかしげてきょとん、とする福井の姿が、
手合いの間の待合室においてしばし見受けられてゆく。

「……うん。やっぱりきてみて正解」
「おや。進藤君。激励かい?」
すでに予選開始時刻になっている。
それゆえに福井達は手合いの場にと向かっていった。
一人、残されたヒカルはといえばしばらくその場でたわいのない会話をしつつも佐偽とともに部屋をでてゆく。
そんなヒカルの姿をみつけて、声をかけてくる篠田。
「あ、篠田先生。はい。昨日あったという七番勝負の本因坊戦の棋譜がしりたかったですからよってみたんです」
「なるほど。棋譜、ね。じゃ、来なさい。コピー頼んであげるよ」
「ほんとですか!?やりいっ!」
おもわずぐっと篠田の言葉にこぶしを握りしめるヒカルと横ではとび跳ねて喜んでいる佐偽。
「あ、先生。何かかわった大人の人がいるようですけど、あんな人もうけられるんですか?」
ヒカルがそう問いかけるのとほぼ同時。
「ん?あん?さっきのガキじゃねぇかっ!」
エレベーターに乗り込もうとしたところ、いきなり背後から声をかけられる。
「げっ」
「君は?受験生かい?」
「あ、ども。椿といいます」
ふとその横にどうやら大人の棋士らしき人物の姿を見つけてとりあえず頭をさげてくる椿、といったその男性。
「?先生。もう対局はじまってるんじゃないの?この人、何でこんなところにいるの?」
「そういうお前はどうなんだよ?お前も試験、なんだろ?」
今日は院生の手合いはないはずである。
それゆえにここにいるのはおそらく予選をうける子供なのだろう。
そうおもっていたのに、試験会場に目の前の子どもの姿は見当たらなかった。
「この子は予選免除だからね。そういう君は気分転換かい?」
「気分転換?先生、それって?」
「ああ、よくあることなんだよ。特にプロ試験、ではね。気持ちをおちつかせるためにいろいろとするひとが」
本当はそんなことをしても逆に精神がたかぶっていい碁がうてないんだけどねぇ。
小声でつぶやく篠田の声はどうやら相手には聞こえていないらしい。
「なら試験前に一局他人とうってみるとか。それだと気持ちかなりおちつくけど」
「進藤君、そういうのはおそらく、君たちくらいだ、とおもうよ?本気で」
おそらく、そんな気持ちになるのは塔矢明と進藤光、この二人くらいであろう。
自覚がないらしいヒカルにひとまず苦笑しながらも答える篠田。
「予選免除、か、本戦で坊主と戦える日がたのしみだな。がははははっ!じゃあなっ!」
チッン。
そんな話をしている最中、エレベーターは一階にとたどり着き、そのまま外にとでてゆくその男性。
しかもそのまま、バイクにのってどこかにいっていたりする。
「…先生、あ~いうの、あり、なの?」
「まあ、対局時間をどう使うか、はひとそれぞれ、だけどねぇ」
しかし、あれじゃ、相手の人が気の毒かな?
ぽそっといった篠田の声に思わずヒカルもまた同意してしまう。
『いま、もう対局は始まってる…はず、なんですよね?ヒカル?』
そのはずだよ。
自分たちは対局が始まるころ合いをみて部屋からでたのだから。
「ま、とりあえず。進藤君、ちょっとここでまっててね」
「あ、はい」
そのまま、棋院の事務室にとはいってゆく篠田の後姿を見送りつつも、しばらくロビーにてくつろぐヒカルたち。
何ともいえない緊張感のような雰囲気が今日、この棋院にはある。
それが何なのかヒカルにはよくわからないが、おそらくそれは試験をうけている人たちの気持ちの表れ、なのであろう。
強い思いは周囲の空気などにも影響を及ぼす、ということをヒカルはよく知っている。
佐偽をみればあいかわらず、ロビーにある偽物の魚を扇でつついてはちょっかいかけている。
こいつ、ほんとうにあの水槽、好きだよなぁ。
好き、というよりは興味をひかれてしかたがない、といったところなのだが。
ぼんやりしていることしばらく。
「おまたせ。はい。進藤君。ついでにこのたびの棋譜、全部コピーしてきたよ」
「すいません。篠田先生。ありがとうございます」
知りたかったのは昨夜あったという七番勝負の初日の棋譜だったのだが。
「興味あるなら、君の家にファックスあれば明日のもおくるよ?」
「あ、ないんです。残念ながら」
「そうなの。じゃぁ、メールアドレスは?」
「あ、それなら……でも、いいんですか?」
「ま、興味があるのはいいことだからね。勉強にもなるし」
篠田より封筒にはいっている棋譜をもらいながらもそんな会話を交わすヒカルたち。
しばらくとりとめのない会話をしつつも、篠田は用事があるから、とまたまた事務室の中にとひっこんでゆく。
『ヒカル、これからどうします?』
「う~ん。とりあえずあのおっさんの対局相手がきになるし。ちょっとのぞいてみようぜ」
おそらく、対局相手は呆然としているはずである。
そんな会話をしつつも、再び六階にとヒカルと佐偽はエレベーターにおいてあがってゆく。

「えええ!?あ、あのおやじぃぃっ!」
対局場の中をみてみれば、一人、ぽつん、とすわっている奈瀬の姿が目にはいった。
おそらく奈瀬が対局相手なのだろう、そう判断し中にははいらずに手まねきで奈瀬を呼び寄せた。
ヒカルから、バイクであのヒゲおやじが外にいった、というのをきいたところ、一人怒り出す奈瀬。
「あ、あの不潔おやじっ!でも、ありがと。進藤君!俄然ファイトわいてきたっ!」
すでに対局時間はとっくに十分以上経過している。
それでもあいては戻ってくる気配はない。
万が一のことを考えてヒカルたちが会話をしているのはエレベータの目の前。
いきなり対局がはじまってすぐにどこかにいった相手。
時間だけがこちこちとすぎていき、多少あせってはいた。
そこへヒカルがやってきて、相手がバイクでどこかにいった、というのをきかされれば。
おのずと相手の考えが読める、というもの。
いきなり長時間、はなれることにより相手を動揺させて、そのまま動揺したまま一局をうたせて勝ちをとる。
かなり姑息な手段ではある。
「そうだ。ついでだし。進藤君。一局うたない?」
「え?」
「だって、何かいらいらしてるし。私。気持ちおちつけたいもの」
「ん~。別にいいけど。時間はいいの?」
「いいのよ。相手がもどってこないとどうにもなんないし」
「じゃぁさ、マグネット碁盤があるから、ここでうつ?」
「やるやる~」
佐偽、お前やる?
『はいっ!!では、気分をほぐす一局にいたしましょう』
…さらっと言い切れるお前のほうがすごいよ。
そんな会話をしつつも、エレベーターの前にとるカウンター。
そこにマグネット碁盤をおいてしばし、奈瀬とヒカル…正確にいえば奈瀬と佐偽の対局がくりひろげられてゆく。

うん。
調子いい。
先ほどの一局で気分がかなりほぐれた。
というよりは他のことをすべてわすれさせられるような一局でもあった。
しかも、自分の力を引き出すような一局を進藤はうってくれたし。
今の自分ならば全ての力を出しきれるような気がする。
相手がもどってきたのは三十分を経過してから。
しかもちらちらと時間をきにしつつうっているところをみると、打ちかけ時間を気にしているらしい。
つまりそれは自分に自信がないから、ともいえる行為。
外見でびびらされないんだからっ!
ぱしっ。
気合もあらたに、奈瀬は碁盤に一手を打ちこんでゆく。


「あ、らっき~。ついさっきまでの棋譜もある」
『なるほど。封じ手は三の十二、ときましたか』
とりあえずそのまま家にと戻り、すぐさま封筒の中身を部屋にと戻り確認する。
昨日の一局につづく本日の一局。
どうやらヒカルが立ち寄った時間までに送られてきていた棋譜も篠田は一緒にいれてくれていたらしい。
『しかし、本当に今の時代はおもしろいですねぇ。わざわざ二日かけてうつ碁、なんて』
佐偽からしても、新鮮な形式のためかそういう対局にはかなり興味がある。
「お前はそういや、そこまでしなかったとかいってたもんな」
『というか、翌日にまわすことなく勝ってましたし』
「あ~……」
何となく想像がついて、当時の佐偽の相手に対し思わず気の毒な気分になってしまう。
『人の心理として勘違い、というものもありますからね。この封じ手は大変に興味深いです』
迷う一手をくりだしていればなおさらに人は間違いを犯すこともある。
「でもさ。左辺をさくのが大きい、という判断かぁ。俺的にはここでこうしたほうがよくない?」
『でも、ヒカル。それをこうきましたら…一度、ならべてみましょうか?』
「だな」
棋譜上で論理をかましていても、埒があかない。
それゆえに碁盤を用意して一手目から並べてゆくヒカル。
しばし、ヒカルと佐偽による本因坊戦、タイトル戦挑戦試合の検討がヒカルの部屋にて行われてゆくのであった。

「すいません。わざわざ」
「いえいえ、こちらこそ。息子をよろしくおねがいしますね」
結局のところ、待ち合わせの東京駅。
そこにいくのに明子がまず車をだし、アキラとヒカルを乗せていき、
さらには河合が駅にいきがてらに和谷と伊角をひろってゆくらしい。
荷物を車のトランクにいれつつも、何やらそんな会話をしている美津子と明子。
「何でもそちらのお知り合いの人も保護者としてついていってくださるそうで。
  子供ばかりで心配してたんですよ。一緒にいくらしい人もタクシー運転手、というのしか私はしりませんし」
とりあえず、明子の…つまりは、塔矢家の知り合いの男性がついていく、となれば親としても心強い。
「ええ。とりあえず一番暇そうなのは芦原さんでしたから」
さらりと何やらひどいことをいっているような気がするのはおそらくヒカルの気のせいではないであろう。
「芦原さんもやっぱりくるの?」
「うん。父が話しをつけたらしいけど。もっとも、芦原さんもかなりの乗り気みたいだったけどね。
  夏の二次予選にむけてお参りにいくのにちょうどいいとかいって」
一応、囲碁棋士の中においても因島の秀作の記念碑は結構有名。
だがしかし、なかなかいく機会に恵まれない、というのもある。
荷物を車のトランクに詰め終わり、とりあえず後部座席にと乗りこみアキラの横にと座るヒカル。
形的には、アキラ、ヒカル、そして佐偽、というような形で後部座席に座っているように視えるが。
佐偽の姿は、明子とヒカルにしか見えないがゆえに他からみれば子供が二人ほど後部座席に乗っている。
としか映らない。
「そうなんだ。だけど河合さんのいいおもちゃ…じゃない、相手させられちゃうんじゃないのかなぁ?」
「まあ、でもこれで一応、部屋もうまくわけられたことだし」
何でも因島はしまなみ海道沿いにあるらしく、昔よりかなり交通の便がよくなっているらしい。
「そういえば、一日目の宿泊施設ってどこ?」
「グリーンヒルホテル尾道、らしいよ。尾道駅の近くにある。
  そこからだと古い寺めぐりとか、ろけ地めぐりにも最適、というのもあるし。大浴場がないのがもったいないかな?」
東京駅から新尾道駅まで。
九時十三分発、博多行きの、のぞみ177号。それにのり岡山で乗り換え、
十二時四十六分発、岡山発のこだま651号にと乗り換えて、新尾道には一時二十七分にと到着する。
『ろけ地?何です?ヒカル?それ?』
あ~、えっと、映画とかの撮影する昔ながらの景色がのこってる場所とかのこと。
嘘ではない、嘘では。
ヒカルからすれば何よりもわかりやすい説明のつもり。
『そういえば、テレビとかいう箱のなかでよく江戸時代の物語やってますねぇ、おかしなところおおいですけど』
佐偽からしてみれば、その時代に虎次郎とともに生活?していたがゆえに、
現代における時代劇には多々とつっこみたいところは山とある。
それでもやはり懐かしさも手伝い、どちらかといえば佐偽は時代劇という物語がけっこう気にいってはいる。
とりあえず、二泊三日、三泊四日のどちらか。
でしばらく悩んだが、せっかくだから、というの三泊四日の旅になっているヒカルたち。
一時、瀬戸内しまなみ海道は開通と同時に騒がれたものの、それほど今では有名でもない。
そんな会話をしていると、どうやら母親たちの挨拶はおわったらしく、明子が車にと戻ってくる。
「さ、じゃ、いきましょうか。あ、明さん、お守り、絶対に肌身からはなさないようにね?」
何しろいく場所が場所である。
古城やそれなりの観光地、というところはいわくつきの場所でもあることが多い。
念には念をいれておくことにこしたことはない。
いつ、何どき当人の知らないままに波長などがあい、憑いてくる可能性もあるのだから。
いざとなればおそらく、ヒカルはその手のことを対処するくらいはできるであろうが、あまり負担をかけたくない。
最も、霊力が強いヒカルがそばにいればおいそれと変な輩は近づいてなどはこれないであろうが。
何しろ佐偽の霊力が霊力、である。
明子から視た佐偽の力はほぼ神々にも匹敵する、としか思えない。
それほどまでに強い光を佐偽はその魂から放っている。
最も、佐偽自身においてはまったくもって無自覚極まりないのだが……
ブロロロロ……
そんな会話をしつつも、明子の運転する車は東京駅にとむけて出発してゆく。

ざわざわざわ。
東京駅。
さすがに人だかりの数はものすごい。
『うわ~。ひとだらけ、ですね』
「お!きたな!おまえら!あ、これは、塔矢夫人ですね。このたびはよろしくおねがいします」
ふと、明子に気づいて帽子をとり、丁寧にお辞儀をしている河合の姿。
どうやら三谷と伊角は先についていたらしく、すでにタクシー乗り場付近にてヒカルたちをまっていたらしい。
三泊四日、とはいえ男の子。
荷物はさほど多くない。
「あ、いたいた!明君!進藤君!それに明子夫人!」
きょろきょろと周囲をみわたし、何やらそんな声をなげかけてくる男性が一人。
どうやらタクシーでここまで来たらしく、荷物をずるずると運びながらも言ってくる。
「そういえば、和谷。おまえ、森下先生のほうは大丈夫なのか?」
一応、自分たちと旅行、とはいえ塔矢明と芦原弘幸の二人を交えての旅行。
異様に塔矢門下をライバル視している森下棋士の弟子の和谷にとってはあまりいい、とはいえないであろう。
「伊角さんや進藤と一緒にいく、とはいったし」
そこに塔矢明や芦原棋士までいく、とはいってはいないが。
まあ、ライバル視している、とはいえ嫌っているわけではないのでそれほど問題ではないであろう。
もっとも、こちらからいったりすればかなり絞られる可能性は高いが。
今回、旅行にいくのは、ヒカルとアキラ。
そして和谷と伊角。
そして、保護者として河合と芦原。
この六名。
そういえば、佐偽をこの東京駅そのものに連れてきたことはなかったっけ?
そんなことをふと思うヒカル。
常に電車移動などで駅にはいっていても、それは最寄の駅であり、東京駅自体には今まで来たことがない。
東京駅は他と異なり、常にひとでごった返している。
「あ、みなさん。はい、これ」
何でもツテでかなり格安で新幹線のチケットが取れたらしい。
しかも往復分。
六人、ということもあり、六枚綴りの回数券をつかえばかなり金額的には軽くなる。
さらに往復となれば纏め買いをすればさらに安くなるのはJRのサービスの一環。
明子からとりあえず、それぞれにとチケットが手渡される。
「じゃぁ、みんな、気をつけてね」
そんな会話をかわしつつも、とりあえず東京駅の八重洲中央入口から中にと入る。
そこからはいるのが一番新幹線を乗り継ぐにあたり一番迷いようがない。
人がおおくて気をぬけば迷子になりかねないほどの人だかり。
それでもやはり、この付近は新幹線の利用客が多いためか荷物を多くもっている人たちの姿が目にはいる。
時期的にはちょうど子供にとっては夏休み。
大人にはそんな夏休み、というものは普通は盆休み程度しかないが、それでも、有給休暇などを使い、
子供とともに旅行に出かける家族は少なくない。
自由席ならば座る場所の確保にも困ったであろうが、券は一応指定席のもの。
どういったやり取りで手にいれたのかはヒカルたちは知らないが、
とりあえず本来、片道での通常料金は一万八千二百三十円ほどかかる。
それはしかし、自由席でのばあい、にかぎる。
指定席は指定席でまた別料金が追加される。
とりあえず、どれだけ必要となるかわからないのでそれぞれに銀行のカードは持ってきてはいる。
あまり大金を持ち歩くのは好ましくない。
かといって、すくなければ逆にこまることもある。
新幹線のチケットさえあればそのままスムーズに新幹線のホームに入ることも可能。
たわいのない会話をしつつも、とにかくはぐれないようにとヒカルたち六人はそのまま階段を上ってゆく。

『うわ~うわ~うわ~!?ヒカル、ヒカル!外の景色がものすごい速さで移動していきますよ!?』
予測していたこと、というか、何というのか。
案の定、といえるであろう。
べったりと窓に張り付いて外をみている佐偽の姿をみて思わずため息。
「進藤?どうかしたの?」
席はヒカルとアキラ、和谷と伊角、そして芦原と河合の順番で座っている。
ヒカルたちはといえば向かい合っているような形に席を変えているので四人座りの席の形となっている。
背後のほうでは、
「かあっ!やっぱり旅のビールはうまいぜ!」
「河合さん、河合さん、あまり騒いだら他のお客の迷惑になりますよ?」
何やらビールを片手にそんなことをいっている河合の姿が目にはいる。
そんな河合をたしなめている芦原の姿。
その横では、
「静岡名産、あべかわもちとワサビ漬けはいかがですか~?」
車内販売のワゴン車が通路を通りぬけていっている。
「とりあえず、岡山駅で乗り換え、だけど、ホームは同じらしいから問題ないみたいだよ」
ホームが離れていればそれこそ面倒であるが、どうやらホームは同じらしい。
時刻表をみつつも、ヒカルたちをみてそんなことをいってくる伊角。
さすがに夏休みということもあり、ひとはそこそこ入っている。
これが八月とかになればさらに人は増えるのであろう。
最近の燃料費、つまりはガソリン代の高騰具合からしても公共の乗り物の便利性が叫ばれている今日この頃。
とりあえず、佐偽!少しはおちつけ!
『あ!ヒカル、みてみて!霊峰、富士ですよっ!』
「あ、ほんとだ。富士山だ」
「え?どれどれ?おお、ほんとだ」
「幸先いいね。こんなにはっきりと富士さんがみれるなんて」
それでも新幹線なので一瞬、ではあるが。
天気の具合によってはみえないこともしばしば。
『あ~、もうみえなくなっちゃいました~、この鉄ののりものはやいですねぇ~』
いつものっている箱のような鉄の乗り物と格段に早さが違うことくらい佐偽にも乗ってみれば理解できる。
『うわ~うわ~、おもしろい!』
トンネルの中にはいれば、山の中をくぐっているのですか!?
と驚き、まあ見ていてあきない、というのもあるが。
こうずっと騒がれていてはたまったものではない。
時間つぶしをかねて、カードゲームをしたり、なぜかマグネット碁盤にて対局したり、と。
それぞれに時間をつぶしつつも、やがて新幹線は岡山にとたどり着く。
そこで【のぞみ】から【こだま】にと乗り換える。
「降りる駅は新尾道駅、だっけ?」
「ホテルが駅から近いらしいから。一度ホテルに入って荷物をおいていけばいいよ」
泊まるホテルは駅からかなり近いらしい。
「そういえばさ、せっかくだし。ろけ地めぐりとかもするんだろ?」
伊角や和谷がそんなことを話しているが。
「ねえねえ。パンフレットにあったあのお城っていつたてられたもの?」
「あれはたしか…まって、パンフレット、父がとりよせてくれてるから」
「塔矢名人ってけっこう子煩悩だよな」
ヒカルの質問にごそごそと鞄の中からパンフレットを探しだしているアキラ。
そんなアキラをみてぽそっとつぶやいている和谷。
まあ、塔矢行洋がけっこう子供のことを話しているのはその筋ではけっこう有名。
家ではそんなそぶりをみじんもみせないのが彼らしい、といえば彼らしいが。
「あ、あった。昭和三十九年に建てられた、展望台、だって。
  歴史的価値はないけど外観がお城だから、尾道城、とよばれてるらしいよ」
「そうなんだ」
江戸時代からある城なら、佐偽も喜ぶとおもったんだけどな。
そんなことをおもいつつ、
「でも、尾道はたしか江戸時代から続くお寺とかもあるんだよね?」
「まあね。とりあえずは秀策記念館が先、かな?」
「一度は俺、いってみたかったんだ~」
2008年9月27の土曜日にオープンした本因坊秀作記念館。
当然ヒカルもまだいったことはない。
『?そんなものができてるんですか?虎次郎の記念館?』
きいたことがなかったがゆえに、きょとん、とした声を出している佐偽。
「まあ、本因坊秀策は現代においてもまだ二人しか認められていない棋聖の一人、だもんなぁ」
「そういえば、進藤の定石も秀策の色が濃いいよな」
「あ…あはは……」
まさか教えているのがその秀策、とよばれることになった佐偽当人です、というわけにはいかない。
『なつかしいですねぇ。城碁。十九戦ほどやって全勝しましたっけ』
伝説にもなるよな…こいつは……
感慨深げにしみじみつぶやく佐偽をちらりと横目でみてつくづくそんなことを思うヒカル。
記念館は予約制ではあるが、あらかじめ塔矢行洋より話しは記念館にとつけている。
囲碁界において塔矢行洋の名前は伊達ではない。
相手側も喜んでその申し出に応じた、という事情をヒカルは知らない。
「それがすんだら地蔵院で秀策のお墓参りしようよ」
「そだな」
「そうだね。俺も秀策には挨拶したいし」
佐偽のこともあるし。
「う~、何かわくわくしてきたv今年のプロ試験、絶対にうかってやるっ!」
「何しろ今年もわくが少ないからなぁ」
去年はアキラ、今年はヒカル。
実質枠は二名のみ。
「そういえば、来月からだね。プロ試験」
「そういう塔矢、お前は初日、休んだんだろうが……」
「あとからこいつからきいてびっくりしたけどな。おまえ、こいつが泊まりにくることになったから休んだんだって?」
「でもさ。和谷君?進藤とうつほうが何倍も僕からすれば楽しいよ?」
「あ~、気持ちはわかるけどな。そもそも今だに俺達は進藤から勝ちとれないし」
「いつも半目、でかたれるのも癪だけどな」
だがしかし、ヒカルと碁を打ち始めたことによって、他の人と対局してわかることもある。
すなわち、自分たちもまた格段に棋力はアップしている、という事実。
周囲の大人は何を話しているのか?
という程度でさほど気にしてはいない。
まさか、そこに座っているうちの一人が囲碁界の塔矢行洋名人の息子ですでにプロ棋士であり、
またヒカルたちも棋士の卵である、などと外見上、すぐにわかるものではない。
この場に囲碁のことに興味がある客がいればすぐさまにアキラには気づいたであろうが。
わざわざ動いている新幹線の中で移動するようなモノ好きはあまりいない。
【次は~、新尾道、新尾道、ホームは左側です】
そんな会話をしている最中、どうやらすでに目的地に到着するらしい。
お昼はせっかくだから、というのでとりあえずホテルに荷物を置いてから少し遅めにとることにしている。
「あ、そろそつくぜ」
「荷物、荷物」
ガタガタガタ。
上においていた荷物を降ろし、そのまま扉のほうにとむかってゆくヒカルたち。
『江戸から尾道までこんなにはやくつけるんですねぇ~』
横のほうでは佐偽がひたすら感心しているが。
昔からしてみれば、一日であっさりと移動できる、などと夢にもおもわなかったであろう。
朝出発し、昼にはすでに尾道へ。
いくら足の速い早馬ですらそこまで早くはなかった。
エレキテルの進歩がよもやここまで人を豊かにしたとおもえば佐偽からしてみれば摩訶不思議。
やがて新幹線が駅にととまり、それぞれホームに降り立つヒカル達。
ホームを下りればたしかに山の上のほうに城らしき物体が垣間見える。
「よっしゃ。お子様たち、いくぜっ!」
「もう、河合さん、よってません?ねえ?!」
すでにビールを何本もあけている。
仕事と称して遊べるのである。
たしかにハメをはずしたくなるのもわかる。
ちなみに、河合は一応は、塔矢家に観光係りとして雇われ運転手もどきのような扱いになっているらしく、
きちんとすでに会社にはそれなりの金額は払われているらしい。
そんな河合をたしなめるようにしていっている芦原。
どうやらこの旅行中、芦原は河合のおもりも努めなければならないようである……

グリーンヒルホテル尾道。
JR尾道駅より歩いて徒歩二分のところにある、海沿いのホテル。
山陽新幹線駅からも近く、観光の拠点とするにのはうってつけ。
さらにいえば尾道城、とよばれている展望台や海の眺めがとても最適であり見渡せる海原の景色も素晴らしい。
これで最上階などに露天風呂か何かで景色を一望できる風呂があればいうことなし、なのだが。
ちなみにチェックイン時間は二時からで、チェックアウトは基本十一時となっている。
夜遊びする場合においては門限は一時。
ツイン、a,bの部屋においてはゆったりしたスペースが確保されており、
海辺をみながら椅子にすわり、時間をつぶすことも可能。
cの山側にあるツインルームはこころなしか、aとb、とわかれている部屋と比べ狭いような気が案内サイトからは見て取れる。
食事をする場所でもあるレストランは二階にとあり、
朝食が朝の七時から九時半まで。
ちなみに、日曜、祝日は十時まで、となっているらしい。
さらにいうならば朝食はバイキング形式となっており、和食、洋食混合にて¥1260となっている。
昼食は十一時半から二時まで。夕食は五時半から九時までの受付となっている。
ちなみに泊まり客でない人たちもたべることは可能、らしい。
ダイニングルーム、つまりは個室などでは個人向けのサービスも充実しており、
予約すればフランス料理などのフルコースも楽しめるらしい。
「うわ~、すげえながめ!」
『うわ~!!』
思わず二人同時に感嘆のため息とともに叫んでしまう。
時間はまだ二時になっていないとはいえ、すでに掃除はすんでいるらしい。
時刻的にはさほどそれほど早くもないので、それぞれ部屋にと案内されて移動しているヒカル達。
ちなみに、部屋割はなし崩し的に、ヒカルとアキラ、和谷と伊角、そして芦原と河合。
このメンバーで三部屋。
部屋はホテルの最上階付近にあるがゆえに窓からみえる景色がとてもすばらしい。
二泊ほどこのホテルにと泊まり、三泊目は別の場所に移動することになっている。
三日目に宿泊する場所には温泉の大浴場があるらしい。
「よいしょ…っと」
「…お前、荷物が多い、とおもったら何もってきてるわけ?」
三泊四日だというのに異様に荷物が多い、というかキャリーバックをもってきていたはずである。
何やらごそごそと鞄の中から取り出して、窓際の机の上にあるものをおいているアキラ。
「何って、みてのとおり。碁盤」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
折りたたみの簡単な一万程度の碁盤セット。
どうやらアキラはわざわざそれを旅行にもってきているらしい。
最も、ヒカルもマグネット碁盤は常に持ち歩いているのであるいみ似た者同士、といえなくもないのだが……
『まるでお城の天守閣からの眺めみたいですねぇ。ヒカル』
そういわれても、俺はそんな眺めは知らないってば。
苦笑するヒカルに対し、そっとヒカルの肩にと触れて強くその光景を思い浮かべる佐偽。
以前、ヒカルが不思議な女の子からある品を渡されたときより、こうしてそれぞれ思い浮かべた光景を、
互いに伝えることが可能になっているヒカルと佐偽。
ヒカルのつぶやきに答えるように、佐偽がかつて見た景色をヒカルにと伝えてゆく。
そこには、一望できる町並みと、そしてそれにつづく海の景色。
たしかに今ここからみえる景色に似か寄っていなくもない。
「まあ、いいけどさ……」
これが因島の中にある宿泊施設ならば市が囲碁を推奨していることもあり、碁盤は常に貸出可能、なのだが。
とりあえず、手荷物としてもってゆく鞄をそれぞれに旅行鞄の中よりだして、そのまま一度部屋をあとにしてゆくヒカルたち。
ロビーにおいて和谷達と待ち合わせののち、お昼をたべて向かうは、因島にある、という本因坊秀策記念館。


                                -第44話へー

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あとがきもどき:
薫:自分がいったことがあれば、もっと詳しく描写できるんでしょうけどねぇ(しみじみ
  サイト検索&空想、想像力のみの打ち込みなのでどこか不都合があるのは気にしないでください(汗
  岡山駅なんて一度いったっきりなので忘れてるよ…いや、ほんと。
  ちなみに、ホテルさんは本当にありますよ?念のためにサイトはこちらv(まて
  何か景色よさそうなのでいつかいってみたいなぁ(遠い目…←でもお休みとれないので絶対に無理
  ちなみに、このホテルにしたのは、景色の中に城もどきがあるからです(きっぱり
  やっぱり佐偽は江戸さんにすんでいたこともあり、城がみえる景色ってどこかこう安心できるとおもうんですよ。
  それでここにきめましたv
  本因坊秀策記念館のサイトさんは次回にて張らせていただきますv(こらこら
  しかし、ラストのほうは何かホテルのご案内になっている(苦笑v
  ちょこっと短めの小話しをばv


「しかし、進藤さんが結婚…ねぇ」
母親から進藤光が十七の若さで入籍した、というのを聞かされたときにはびっくりした。
もっとも、身うちの中での婚姻なので騒ぎにしたくない、という思いがあったらしい。
確かに、今では世界中からでも囲碁界においては進藤光は注目をあびている。
そんな彼女が結婚、ともなれば大騒ぎになるのは間違いはないであろう。
相手は何でも彼女に碁を教えた、という男性らしい。
長らくずっと海外で手術後、昏睡状態であったらしいがどうにか持ち直し、それで退院してきたらしい。
いまだに余談が許せない状態らしいので、それで騒ぎにはしたくない、とのこと。
ヒカルに確認をとってみれば、以前、ネットで塔矢行洋と信じられない対局をしたsai、という人物らしい。
あのときの棋譜はさまざまな観戦者の手によりネット上にと広まっていっている。
最も、その対局ののち、病気が悪化してヒカルには死んだ、とまで伝えられてしまったらしいが。
世界から注目をあびている女流棋士、だというのにヒカルの両親は今だに囲碁界のことにおいては無知そのもの。
それゆえにマスコミなども唖然としている、というのもある。
まあ、未成年、ということもあり一応報道規制は棋院のほうでも敷いている。
写真をみれば何となくだが、彼女が碁に興味をもったわけがわかってしまうほどの美青年。
和装がここまで似合う、美青年もそこまでなかなかいないであろう。
しかも、古風な服装が似合う、というのもかなりかわっている。
写真にあるのはまるで平安時代のような和装に身をつつみ、さらには十二単に身をつつんだヒカルの姿。
二人の結婚式の写真である。
棋院とすれば塔矢行洋とタメをはれるほどの棋力の持ち主はのどから手がでるほどほしい逸材。
しかし、それで病気が再び再発しても元も子もないのも事実。
それでヒカルが心配してなかなか今年のプロ試験をうけさせなかったらしい。
今後はどうなってゆくかはわからないらしいが。
「何とかなりませんかねぇ?」
プロ棋士でなくてもあの棋譜をみるかぎり、かなりの打ちてであることは明白。
ずっと入院していたのであればだれも名前をしらなかった、というのも。
ずっと入院していてどうしてそこまでの棋力が養われたのか不思議ではあるが、実力は実力。
せめて、棋院の職員として採用できないか?
というような話題がここ最近、まことしやかに極秘会議でなされていることをヒカルたちは知らない。
最も、彼らもまた知らない。
進藤光と結婚した、という藤原佐偽、という人物は実は元は平安時代の天皇指南役の棋士であり、
そしてまた、本因坊秀策、として公式手合いを虎次郎にかわって打っていた人物である、ということを――
もし、今、彼女の婚姻が表に漏れれば、マスコミはこぞって新郎は無職とか面白おかしくかきたてかねない。
彼女が昔、プロになった直後ながらく不戦敗を続けていたのも彼がしんだ、と聞かされたかららしい。
もし、またそんなことになり、今度こそ彼を失ったとすれば、彼女は悲観にくれてあとを追うか、
囲碁界から綺麗に身をひくことにもなりかねない。
それだけは、棋院としても何としても避けなければならない。
彼女たち…彼女や塔矢明の功績にて、囲碁、という種目が世界に、そして日本中に浸透してきているからなおさらに……
しばし、今日もまた関係者のみの会議は夜遅くまで繰り広げられてゆく……


こんな感じでv
佐偽ちゃん、おそらく病弱、というのも手伝って(ただそのように情報操作されただけだが)
普通の就職はまず困難だとおもわれます(まて
かといって、棋士になればその棋力もありあっさりとトップにたつのは明白ですが(笑
いきなり塔矢行洋のように現役引退されても棋院としても困るわけで(まて
とはいえ、そこまでの棋力の持ち主をどうにかして手にしたい、とおもうのはひとの常v
ほっといたら諸外国にうばわれかねませんから(笑
というわけで、日々、佐偽のことを聞かされた棋院ではこうして極秘の会議が執り行われることになるのですv
ちなみに、光は十七の歳に佐偽と身うちだけでこじんまりととある神社にて挙式をあげて籍をいれておりますv
まあ、未成年とはいえ両親、つまり保護者の承諾があってのことですし。
ちなみに、ヒカルは高校にいってますよ~(しかも海王高校)v←囲碁に関して寛容なので
ではでは~♪

2008年8月27日(水)某日

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