まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

よ…ようやく菫ちゃん登場だぁぁぁぁぁぁぁぁ!
しかも一回目の登場…というんだから先がこわいぞ、切実に……
まあ、これは布石、だからなぁ。ふみゅ。
何はともあれ、ゆくのですv
※タイトル戦の説明はwikiさんから活用しておりますv

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「振込?」
「うん。何か賞金がでるんだって。それで通帳の番号とかわかったら教えてください、って」
何でも防犯上の都合もあり、最近は現金よりは振込形式にしているらしい。
「賞金なんてでるの?」
「らしいよ?」
金額を聞いたような気もしなくもないが、何やらもみくちゃにされてはっきりいって覚えてない。
「ヒカルの郵便局の通帳でもいいのかしら?パルルは全国共通だし」
今は国営ではなくなったにしろ、やはり郵便局は手堅い貯金口であろう。
それが子供ならばなおさらに。
美津子からすれば気持ちほど金額が出される程度にしかおもっていない。
それゆえに。
「あとでかいといてあげるわ。ヒカルの通帳番号。それで電話しときなさい」
「は~い」
基本、通帳は美津子…つまり母親が管理している。
まあ、子供ながらに自分で通帳を管理している…という人物はそうそうはいないであろう。
毎年、一応はお年玉などを今まできちんと郵便局に貯金していた。
それゆえに一応、ヒカル名義の通帳はある。
どうせ千円かそこらくらいでしょぅけど。
よくて一万程度くらい。
そんな感覚で聞き流しつつも、
「さ。冷めないうちにたべなさいね」
「今日も父さん、おそいの?」
「みたいよ?」
たわいのない会話をしつつも、夕飯をたべる光景が、進藤家においてみうけられてゆく……

星の道しるべ   ~視えざる少女~

「でも、進藤君が優勝、とはね。ひとまずおめでとう」
「けっ。どうせまぐれにきまってる」
「もう!素直におめでとうくらいいってあげなさいよね!」
塔矢行洋が経営している碁会所。
受付をしている市川がヒカルがやってくると同時にお祝いの言葉を投げかける。
ヒカルが今日、やってくる、と事前にアキラより連絡がいっていたがゆえに、
碁会所にいる人たちがそれぞれお祝いの言葉をなげかけてくる。
「でも、実際にまぐれだとおもうし。若獅子戦ってお祭りみたいなものなんでしょ?
  プロの人たちもそれで手加減してたんじゃないのかなぁ?」
事実、ヒカルからしてみれば手ごたえのない棋士が大半であった。
まあ、毎日のように佐偽とうっているがゆえに他が手ごたえなく感じてしまうその感性は仕方ないのかもしれないが。
「手加減してたにしても、普通はかてないってば」
おもわず本気でいっているとおもわれるヒカルの台詞にため息まじりにつぶやくアキラ。
「それよりさ。あ、市川さん、えっと、千円だったっけ?」
「いいわよ。若獅子戦優勝のお祝いもかねて、いつもいうけど、進藤君って律儀よね」
毎回、アキラの友達でもあり、また塔矢行洋からも言付かっているので席料はいらない。
というのにそれではわるいから、といってヒカルはがんとして受け付けない。
それゆえにアキラも最近はこの碁会所にくるよりは、もっぱらヒカルの家に直接いく回数のほうが多い。
何となく石心のほうではついついマスターに甘えてしまうのがあるが、ここではそうはしたくないのがある。
それはやはりアキラの父親の経営している場所なのであまりなれあいはよろしくない。
とヒカルなりに考えての結論なのだが。
「進藤。今日くらいあまえれば?」
「そう?」
「それよりさ。母がくるまで時間あるし。数局うつ?」
「明先生が進藤君つれてきたらいつも進藤君にかかりっきりになっちゃうよね」
「でも、対局みるの楽しいからいいけどね」
何やら他のお客がそんなことをいってくる。
事実、ヒカルがここにきたときには、アキラはもっぱらヒカルのみと対局し、他のお客とうつことはまずない。
それでもプロになっている以上、そしてまた、経営者の息子、という立場上。
指導碁などをたのまれれば断るわけにはいかないのだが。
そんな会話をしつつもヒカルとアキラは碁会所の奥。
横手にトイレがあるとある隅の一角にと移動してゆく。

『5-5…ヒカル?』
アキラとうつにあたり、せっかくだから、というので佐偽に打たせていたヒカル。
佐偽が指示し、その場にヒカルが打ちこみしてゆく。
盤面の途中まではヒカルは素直に打ちこみをしていた。
だがしかし、いきなりその手が何やらとまる。
怪訝に思い、おもわずヒカルに問いかける佐偽ではあるが、ヒカルの視線は別の方向を向いている。
…あの子…どこかで?
いつのまにはいってきたのかものすっごくかわいい女の子がいつのまにかちょこん、とヒカルの間横にと立っている。
歳のころは十代にいくかいかないか、といった小さな女の子。
フリルのついたスカートに淡いピンクと白で統一された服。
漆黒の長い髪をポニーテールにし真赤なリボンで蝶々結びにしてあり髪をたばねている。
どこかであったような気もしなくもないが、それがどうしても思い出せない。
それよりも気になるのはこの場にいる誰もが目をひくほどの美少女だ、というのに誰も騒いでない。
というところ。
「進藤?どうかしたの?」
アキラもまたいきなり手をとめて一か所をじっとみているヒカルをみて思わず首をかしげる。
「塔矢、そこの子供って…」
「子供?子供なんていないけど?」
事実、この場にいる子供はヒカルとアキラのみ。
つまりは、アキラたちの目にはその少女の姿は目にはいってはいない。
――こんにちわ。ヒカルお兄ちゃん。話があるけど、いいかな?
ぱしっ。
いきなり頭にひびいてくるようなかろやかな声。
『ヒカル?どうかしたんですか?ひかる~??』
何やらかたまったようになっているヒカルを心配してヒカルをのぞきこむようにして話しかけてくる佐偽。
どうやら佐偽にもその少女の姿は視えていないらしい。
佐偽。
お前、そこの子、視えてないの?
『子供?子供なんていませんけど?』
幽霊である佐偽にも視えていない、とはいったいどういうことなのであろう。
ヒカルが意味がわからずに首をかしげていると、
――そこの個室に、いいですか?あ、この程度の距離だと佐偽さんも離れられるでしょうし。
どうやら相手のほうは佐偽のことが視えているのか、しかも名前までいいあててきている。
誰にもみえていない女の子。
佐偽にすら。
だけどもどこか懐かしさを感じるのも事実。
それゆえに、意を決し、
「わるい。塔矢。ちょっとトイレ」
あ、佐偽はちょっとまっててくれな。
いいつつも、佐偽が先ほど指し示した一手を打ちこんで立ち上がり横手にある個室にとはいってゆくヒカル。
そんなヒカルを見送りつつも、
「進藤、もしかして局面に集中するあまり、がまんしすぎてたのかな?」
おもわずそんなことをぽそっといっているアキラ。
アキラもそういうことがいままでにも幾度かあったのでその可能性もありえる、というのは理解できる。
『?ヒカル、どうしたんでしょう?子供なんてこの場には塔矢とヒカルしかいませんのに??』
もしかしたら、自分以外の幽霊でもいたんでしょうか?
そんなことを佐偽はおもうが、そういえば佐偽はいままで自分以外の幽霊、というものを視たことがない。
それが何を指し示しているのかは、佐偽は知る由もない……

かちゃり。
トイレのドアをくぐり、カギをかける。
「で?俺に何かよう?えっと…」
「私は菫。といいます。ヒカルお兄ちゃん、以前神社でもらった佐偽さんへの贈り物の数珠、今もってますよね?」
いきなり本題とおもわしきことをいわれておもわず目をまるくする。
「君はいったい……」
どこかで、そうどこかであっているはずなのにそれがおもいだせない。
「まあ、ヒカルお兄ちゃんにあったのはヒカルお兄ちゃんが二歳のころだし。まあ、それはそれとして」
いや、よくないんじゃあ。
というか二歳?
「とりあえず、数珠、だしてもらえます?
  あれにはめ込まれているあの石、ヒカルお兄ちゃんも予測ついてるとはおもいますけど。
  あれ、佐偽さんが耳につけてるあの耳飾りの石、あれの現物なんです。
  あのとき、佐偽さんの体から石のみ時の帝に渡したのはほかならない私ですから」
何やらさらっとものすごいことをいっているような気がしなくもない。
「君は…佐偽のことをしってるの?」
今まで明子以外には視えなかった、というのに。
「私のことはまだ時期ではないので佐偽お兄ちゃんには内緒にしといてくださいね♪」
どこかいたずらかかったその口調。
信じられないがどうやら本当に佐偽とは顔見知りのようらしい。
佐偽がきづいてなかったのが気にはなるが。
それ以上に、この子も千年以上の前の幽霊、だとはおもえないのだが…
「ああ。私の姿は、ヒカルお兄ちゃんにのみ今は視えるようにしてるだけですから。
  それより、数珠、いいですか?あまり長居したらあやしまれますよ?」
たしかに言われるまでもなく今は対局中。
もっとも打っているのはヒカルでなくて佐偽なのだが。
「あるけど…これ、どうするの?」
いいつつもポケットの中にいれておいた水晶の数珠をとりだして前にとかかげるヒカル。
何となくだがいうとおりにしなければいけないようなそんな感覚。
「物質化をときますから。これそのものは佐偽さんにわたしてくださいね」
「え?」
ヒカルが手にしたそれに菫、となのった女の子が触れると同時、数珠があわい光を発し、
次の瞬間には水晶はまるで霊体のみのように、つまり実質的な形をいっきに失ってゆく。
「な!?」
「で、これが佐偽さんの形見、です。肌身はなさず、もっていてくださいね。
  小さな石だからとりあえず……」
ふっ。
ころん、と手の中にのこった赤い石が二つ。
少女がつぶやくと同時、銀色の鎖が出現し、ちょっとしたネックレスへと変化する。
石はトップ式になっており、自由に取り外しがきくような形の首飾り。
「え、えっと、あのその!?」
「それは佐偽お兄ちゃんと、ヒカルお兄ちゃん、二人をつなぐ道になるもの。なくさないでくださいね?」
「??」
道、といわれてもよくわからない。
そもそも、目の前の子どもが何ものなのかすら。
人ではない。
それだけはまちがいはないのだが…
だがしかし、幽霊、という感じもまったくない。
一般的にいう自然霊、つまりは精霊ともまた異なる。
何とも不思議な感覚。
「じゃ、私の用事はそれだけ、ですから。また時がきたらあいましょう。ヒカルお兄ちゃん。それじゃ」
ふっ。
「あ、ちょっ!?」
にこりとほほ笑むとどうじ、いきなり目の前から少女の姿は掻き消える。
あとにのこされたのは、ヒカルの手のなかにのこされた、実体ではなくなった数珠が一つと、
そしてひとつのネックレス。
意味がわからない。
いいたいことだけいっていきなり消えた一目みたらわすれられないほどのかわいい少女。
たしかにどこかであっているはずなのに、それがどうしても思い出せない。
思い出せないのも道理。
ヒカルが二歳のころその力ゆえに死にかけたときに彼女とはヒカルは実はあっている。
そしてまた、小学一年のときにも……
そのときのことをヒカルは『今』は覚えていないのだから……

『ヒカル?どうかしたのですか?』
「進藤?」
「え、あ。うん。何でもない」
何やら頭の中がもやもやする。
それでもアキラたちをまたせるわけにはいかない。
そもそも長時間、多少なりとはいえ佐偽と離れていることはできないらしく、
あまり時間が経過すれば佐偽が扉をすり抜けてやってくるのは明白。
とりあえず、手渡されたともいえるネックレスを首にとかけてはみた。
服に隠れてそれがみえないのは不幸中の幸いか。
とりあえず、手にもっていたままの数珠を椅子にすわりがてらに佐偽にと手渡す。
『ヒカル?これは…!?』
話しはあとで。
それはたしか、以前、とある神社でもらった佐偽にむけての大君からの贈り物。
佐偽は触れることすらできなかったはずの品がどうして佐偽に手渡されるのか。
驚きの声をあげる佐偽にひとまずコメカミを押さえつつもひとまず返事を返し、
「わるい。塔矢。さ、続きやろっか」
「あ。うん」
『ヒカル、これいったいどうしたんですか!?』
佐偽からしてみれば驚愕以外の何ものでもない。
あとで、といわれても気になるものは仕方がない。
そんな会話をしている最中。
カラッン。
「あ、いらっしゃ…でなくて、奥様。お久しぶりです」
何やら入口のほうからそんな声が聞こえてくる。
ふと出入り口のほうをみてみれば、入口からはいってくる塔矢明子の姿が見て取れる。
「あ、進藤く~ん。それに明さん、おまたせ。あら、一局うってたの?」
奥のほうで何やら席に座っている二人に近づきながらも声をかけてくる明子の姿。
「あ、おばさん。おはようございます」
「お母さん。今、彼と一局やってたところです」
「で、どっちが今のところかってるのかしら?」
にこやかにといかける明子のことばに、とりあえず指で佐偽を無言で指さすヒカル。
はたからみればヒカル自身を指さしているように第三者からみればみえる。
あら。
今うってるのはじゃあ、佐偽さんなのね。
『おはようございます。塔矢の母君』
明子の姿をみて、今だに多少動揺しつつもすばやく気持ちをきりかえて丁寧にお辞儀をしている佐偽。
このあたりのキリカエは、さすが宮中で活動していたがゆえ、といえるであろう。
「どうする?進藤?まだうつ?」
このままうちつづけていてもまちがいなくアキラの負けは明白なのだが。
するっと長考することなく打ち込みしてきているところをみるともう一人の彼、のほうでうってるな。
それだけはアキラにもわかる。
それがよもや佐偽に指示されて…というところまではいまだにアキラは思いもついていないのだが。
「ん~と。どうしよ?」
いいつつも、ちらりと視線を佐偽にとむける。
『え?あ、母君がこられたことですし、終局しますか?』
何だかいま碁をうっても動揺しているのでまともな一局がうてるような気がしない。
それゆえにアキラの提案は佐偽にとっても救いでもある。
「じゃ、やめよっか。かたづけよ」
「またあとでしようね」
「そういえば、今日はおまえのおやじさんは?」
「父は地方でまた対局、だよ」
「おまえのおやじさんっていそがしいよな~」
そんな会話をしつつもじゃらじゃらと石を片づけ始めるヒカルとアキラ。
「あら?それ……」
ふと、佐偽、そしてヒカルが身につけている新たな品にと気づいてふと声をだす明子。
かなりのそれぞれから霊力を感じるのはおそらく間違いなく気のせいではない。
「進藤君、それら、どうしたの?」
それ、というのが何を示しているのか理解したがゆえに、苦笑しつつ、
「それが俺にもよくわかんなくて。あのこいきなり消えたし。用事すんだら」
それだけで何となくだが理解する。
つまりそういう存在から手渡された品、なのであろう、ということを。
「物質を転換するなんて、かなり高度よねぇ」
「それは俺も同感。というかやっぱりおばさん、わかるんだ」
「まあね。それだけ【霊力チカラ】がつよければね」
「?お母さん?進藤?」
二人の会話は理解不能。
それゆえに首をかしげるアキラ。
「何でもないのよ。明さん。それより進藤君、若獅子戦の優勝、おめでとう。
  行洋さんにも電話連絡したらよろこんでたわよ」
わざわざ電話するほどのことでもないような気もするのだが。
一応、今、彼がいっているホテルに電話をして結果報告している明子。
「そうなんですか?うちの親なんて、あ、そう。でおわってましたけどね~」
「…ほんと、君の両親って無関心、だよね…囲碁界のことに関して……」
そんなヒカルの言葉をきいて思わずため息まじりにつぶやくアキラ。
「まあ、興味なければ知らないのも道理、だけどね。二人とも、そろそろ用意はいいかしら?」
そんな会話をしつつもどうやら机の上を片付け終わった二人にと声をかける。
ちらりと時計をみれば時刻は十一時半を回っている。
できれば昼前には予約しているお店にたどり着きたい。
「あ。はい。お母さん」
「えっと、よろしくおねがいします」
お祝いにお昼をおごってくれるらしい、というのは一応母親にもいってある。
あまり迷惑をかけないようにね、と母親から釘をさされているヒカルであるが。
「じゃあ、市川さん、あとはよろしくね」
「はい。奥様も気をつけて」
たわいのないそんな会話をしつつも、ヒカルたちは明子につられて、碁会所をあとにしてゆく。

暗い……
何かにおいかけられたまではおぼえている。
そしてひきずりこまれたのも。
きょろきょろと周囲をみわたせば、一か所がとても明るい。
「まだ、そっちにいったらだめよ?君?」
ふとそちらにいこうとして呼び止められる。
暗闇だというのにはっきりと浮かび上がる小さな女の子の姿。
まるでどこかのおとぎ話などにでてくる妖精や精霊のようなそんな格好というか、
薄い生地とおもわれるふわり、とした服装が少女をさらに引き立てている。
でも、僕、かえりかたがわかんない。
ねえ、お姉ちゃん?
僕、どうなったの?
覚えているのはかなりの数の人にすがられたこと。
そしてきづいたら何だかそのままよくわからないぐちゃぐちゃのようなひと達に飲み込まれた。
「まだ能力のコントロールがきかないから、考えのない存在がひっぱろうとしたみたいだけどね。
  だけど、進藤光。あなたにはこれからやるべきことがある。だから…もどりなさい」
すっとそういうとどうじ、すきとおるまでの白い手がヒカルのほうにとかざされる。
その直後にみえたのは、ほほ笑んだ少女の青く吸い込まれそうなほどのその瞳――
…ル…ヒカル!!
次に目をひらいたのは、どこか白い壁にかこまれた空間。
「よかった……」
そして次に目にはいったのは泣きそうな顔をしている母親の姿。
「…た~たん?」
何がどうなったのかわからない。
「いきなり倒れて心配したのよ?」
家族旅行のさなか、とある場所でいきなり倒れた息子。
どうしてそうなったのか、などとは彼女たちはわからない。
というかいわくつきの場所に能力があり、しかもコントロールもできない幼子つれてゆく親のほうが悪いのだが。
いかんせん、ヒカルの両親はそういうことにはとことん無知。
それゆえにその場にたまっている悪意ある存在がヒカルを自分たちのほうにひっぱろうとし命を取ろうとしたのだが。
そんな事情はヒカルもまたわからない。
「しかし。目がさめても油断は禁物ですよ。この症状におちいった子は危険ですから……」
何やら後ろのほうでは医者と父親が会話しているのが何となくだが耳にとはいってくる。
だけども、その意味はヒカルはよくわからない…
それは、進藤光が一歳と少しになったばかりのあるひのこと……

毎週、日曜日と第二土曜日にある手合せが院生の手合い日。
そしてまた、水曜日と木曜日にあるのがプロ棋士たちの手合い日。
「タイトル戦などとかになったら、海外である試合もあるし、ホテルである手合いもあるよ?」
「ほえ~。だからいつもお前のおじさん、いそがしそうなんだ」
とりあえず、どうしてそこまで地方などの対局があるの?
と何やらものすごく初期ともおもえし質問をしてきたヒカルにため息まじりに説明しているアキラ。
「日本棋院も全国にあるからね。まったく。行洋さんったら、対局ばかりで手づまりにならなければいいんだけど」
休む日がない、とはまさにこのこと。
それでなくてもいくつかのタイトル戦の防衛線などをもこなしている。
車を運転しつつも後部座敷にいるヒカルたちにとそんなことをいっている明子。
一応、塔矢家にはおかかえの運転手はいるにはいるが、その彼は基本、いつも塔矢行洋専属、という形であるがゆえに、
こういった日々の運転などは家族がするのがほとんど日課となっている。
佐偽。
お前も対局おおかったら具合わるくなったりとかしてた?
『いえ。まったく。逆に元気になってましたね~。それとかよふかししまくったりとか。
  虎次郎とも対局してて気付いたら朝、ということはざらでしたし』
ヒカルの問いかけになつかしそうにそんなことをいっている佐偽。
結局のところ、一応、ヒカルがさきほどお前にはみえなかった女の子がこれをお前に、とのことだったんだけど。
お前、あの子がだれかしらない?
そう佐偽に心で問いかけたものの、答えは否。
容姿をきいて何となく想像がつく人物はひとりほどいたが、それはもはやはるかな記憶のかなたの人物。
こんな場所、この時代にいるはずのない人物。
「まったく。碁打ちの人ってどうしてそう健康をかえりみないのかしらねぇ」
佐偽さんはまあ肉体がないから今ではそんなに苦にならないかもしれないけど。
そんなことを言葉の奥に飲み込んで、しみじみといっている明子。
まあ、明子の気持ちはわからなくもない。
それでなくてもいわくつきの場所などにその職業がら気付かずにいくことも多数。
「進藤君も気をつけなさいよ?へんなところでなぜか囲碁界の人って対局くんだりするからね~。
  明さんも行洋さんもその手のことにはうとすぎて、つれてかえってもまったくきづかなかったりするし」
「まあ、一応ガードはできますし」
「そうなのよねぇ。行洋さんにしろ、明さんにしろ、ガードくらいは覚えてほしいけど。
  手渡すお守りだけじゃ、完全、とはいいがたいしね」
何となくだが、ヒカルが母とおなじ力をもっているのではないか?
という予測はついていた。
母が仲間というか同士、といっていたこともあり、アキラなりに推測はしていた。
だが、どうもこの会話から推測するにそれはどうも間違いではないらしい。
だけども、わからない世界である以上、会話の意味はアキラには不明。
「そういえば。進藤。優勝賞金、どうしたの?」
「よくわかんない。篠田先生が通帳番号おしえてほしいとかいってたから。
  一応、昨日の夜のうちにお母さんから聞いて、連絡はしといたけど」
何だか会話が意味不明な方向にむかいそうな気がひしひしとする。
それゆえに話題を変えてヒカルにといかけるアキラ。
『そういえば、ヒカル。ふりこみとか何ですか?』
くすっ。
首をかしげてヒカルに問いかけている佐偽の姿を目の隅にとらえおもわずくすりと笑う明子。
「そういえば、今はほとんどの対局が振込形式になってるからね。昔はね。進藤君。
  現金だったから大変だったのよ~。しかもあの人ったら大金もってても無関心でね~」
幾度賞金をいれた袋をなくしたり置き忘れたりしたことがあったことか。
おもわず昔を思い出しながも苦笑してしまう。
そんな会話をしている最中、やがて車はとあるホテルの駐車場にとたどり着く。
バタン。
会話をしつつも車をおりるヒカルたち。
何でもここのホテルの最上階に予約しているお店はあるらしい。
「そういえば、君もあたらしく通帳とかつくっといたほうがいいよ。プロになる前に。
  プロになれば収入も各自、対局にあわせてそれに振り込まれるし。
  何よりも確定申告のときに通帳別にしといたほうが楽だし」
「確定申告!?んなのやんなきゃいけないの!?プロって?お前もやってるの?」
たしか確定申告というものは一月から十二月の間の計算云々で税金を確定させるもののはず。
二月から三月までの約一ヵ月間で申告をしなければならない。
というのは昔、多少興味があったので知識的には知っている。
何しろあのけいさんをするのが一時楽しかった…というのはとりあえず今はいわないでおくヒカル。
どうやったら税金をすくなくできるか、というような遊び感覚で趣味としてやったのはおそらくヒカルくらいであろう。
「でも、申告か~。それって何かおもしろそう」
「「おもしろい、って……」」
ヒカルの言葉に思わず同時につぶやく明子とアキラ。
「まあ、まずは、この夏の試験に合格するのが先、だけどね」
「そういえばさ。院生上位八人は予選うけなくていいとかいってたけど、そうなの?」
『あの~?それで、ふりこみ、とはなんなんですか?ねえねえ?』
何やらおもいっきりおいてけぼり。
今だに理解していないらしく、首をかしげては、ヒカルがどうやら答えてくれそうにない。
と判断してか明子に問いかけている佐偽。
「ちょくせつに現金をもらわずに、その人のお金を別のところに保管しとくためにさきにそっちにあずけることよ」
『両替商とか質屋のようなものですか?』
「少しちがうけど、ね」
とりあえず話しこんでいるヒカルとアキラとは別に佐偽に説明している明子。
そんな会話をしている明子と佐偽の横では、
「基本、院生上位、一位から八位までの子は試験免除、なんだよ。三か月の平均でいくから問題はないし。
  少しでも予選の人数をへらすのにも約にたつしね」
「予選は全国でおこなわれるけど、本戦はここ、東京であるからね。
  だからその間のプロ棋士の手合いなども基本的には地方であったりするんだよ」
「へ~」
なぜ問題がないのかヒカルにはよくわからないが、だけどもそういうものなのだろう。
と、とりあえず納得する。
「予選は来月、七月から。本番は八月。その間院生の手合いはないから時間はあるよ?」
「そうなんだ。じゃあ、今年はどこかにいこ~かな~。去年、どこにもいかなかったし」
そもそも、海にすらいっていない。
時間があればとにかく佐偽と碁をうっていた。
「僕は地方対局とかあるからあまり遠出はできないけどね。でも都合ついたら僕もさそってよ」
「ん~。かんがえとく。あ、そういえばさ。塔矢。少しタイトル戦とかというので聞きたいんだけど。
  本因坊戦ってどんなことするの?」
「進藤、やっぱりみっちりと基本たたきこんだほうがいいよ。絶対に。
  それかたしかパソコンあるんだよね?検索してみれば?」
「あ、その手があったか」
基本、本因坊戦のタイトルは、
前年度の本因坊七番勝負敗退者と前年度のリーグ戦二位から四位までの4人に加え、
予選トーナメントによって4人を選出し、計8名によるリーグ戦を行って挑戦者を決定する。
リーグ戦の五位以下は陥落となり、翌年度は再び予選トーナメントからの参加になる。
本因坊戦は囲碁のタイトルの中ではかなり重要視されており、これに参加すること自体が一流棋士の証しでもある。
といわれている大会でもある。
それ以外に重要視されているタイトルは、棋聖、名人戦、といったリーグ戦があるのだが。
ともあれ本因坊リーグ戦の一位者はタイトル保持者と七番勝負を行い優勝者を決めることとなる。
七番勝負は全国の有名旅館・ホテルを舞台に、持ち時間各8時間、封じ手制による2日制で戦われる。
「今年は緒方さんが本因坊戦の挑戦者になってるからね。棋院にいけばすぐに棋譜はみられるとおもうよ。
  そういえば、進藤、君は封じてとかしってる?」
「よくわかんない」
「…あとで詳しくおしえるよ」
『虎次郎の時代には数日かけてうつ碁なんてありませんでしたしねぇ。というかいつもかってましたし』
そりゃ、佐偽だしなぁ~……
おそらく佐偽のこと。
時間をかけるまもなく相手をあっさりと負かしていたのであろう。
それゆえに佐偽の言葉におもわずしみじみとそんなことをおもうヒカル。
「でも何で本因坊戦?たしかに君の碁には秀作の棋譜の色がつよいけど」
「目標だから」
「なるほど」
そう。
佐偽はヒカルにとってははてしないほどに高い位置にいる目標。
佐偽のことはしらずとも、碁をたしなむものならば本因坊秀作を目標にしている、というのはうなづける。
「じゃあ、予備知識でおぼえといたほうがいいよ。今の本因坊は桑原先生だけど。
  本因坊位獲得者は、本因坊名跡を継承するという主旨で本因坊○○と名乗る慣例があるってことを。
  桑原先生は桑原本因坊と本因坊の前に名前をつけているけどね。
  あと、本因坊戦を5連覇以上、あるいは通算10期以上獲得した棋士は、
  引退後または現役で60歳に達した際に○○世本因坊を名乗る権利を得るらしいけど。
  あの桑原先生って六十をあっさりと超えているのに今だ現役だしね。囲碁界の大御所、だよ。あの人は」
「あのじ~ちゃんが?」
「…進藤、たのむから桑原先生の前でそのじ~ちゃん、というのはやめとけよ?」
「でもじ~ちゃんじゃん?」
「…そうかもしれないけどさ。あ、最上階についたよ」
チッン。
ヒカルの言葉にため息をつくとほぼ同時、エレベーターが最上階にまでたどり着き扉が開く。
最上階にはいくつかのお店がはいっているらしく、予約しているお店はその中の一つらしい。
『しかし、あの御老人が本因坊…というのは、私としては…虎次郎にしても、虎次郎の義父にしても。
  たしかに虎次郎は本因坊家の養子としてその名前をつぎましたけど・・・もうちょっとこう威厳が……』
くす。
佐偽が本因坊秀作として碁をうっていたことはヒカルから聞かされている。
それゆえにくすりと笑みをうかべつつ、
「まあ、桑原先生もね。自分の名前が本因坊秀作の本名に似てる、というのもあって思い入れがあるみたいだしね。
  そう簡単には本因坊のタイトルはてばなさないでしょうね」
『たしかに。虎次郎の昔の苗字は桑原、でしたけどねぇ~……それにしても……』
くすくすくす。
ずっと生涯をともにしていた、という。
目の前のこの美青年としかいいようのない幽霊は。
それにしても他の幽霊とことなり、彼はかなり感情表現がゆたかすぎる。
そこいらの普通の人間よりも感情表現が豊かであり、ついつい死人であることを失念してしまう。
「虎次郎…か」
「?進藤?」
「あ、ううん。何でもない。虎次郎の肖像画ってあまりのこってないよな~とかふとおもってさ」
棋譜があるのは佐偽がうったもの。
それでもヒカルが虎次郎を身近にかんじるのは佐偽からその話をきかされ、
そしてまた彼の棋譜をもみせられているからであろう。
「そういえばそうだね。何でだろ?」
『虎次郎はどちらかといえば自分で絵をかくのが好きでしたからねぇ。
  よく私の絵もかいてくれていたものです』
それなのに残っていない、というのも珍しい。
『おそらく、虎次郎ははやり病でなくなったこともありますし。住み家は燃やされてしまったんですよ。
  私は虎次郎の死後、そのまま碁盤に再びやどりましたけど。
  碁盤のみは彼を慕うものに手により無事だったのですけど、他はほとんど焼却されたはずです』
当時はとにかく何から感染するか、なんてわからなかった。
それでも碁盤だけでも…とおもったのは彼の熱心な信者がいたがゆえ。
家ごと焼却された、というのは眠りにつく前におぼろげながら聞いた。
「そっか。感染病であったコレラでしんだから燃やされたちゃったのか……」
「ああ。それはあるね。当時はあの病はかなり驚異だっただろうから」
そんな彼らの会話をききつつも、
「はい。ついたわよ」
「ここ?おばさん?」
最上階にとある何だかとても高級そうなお店である。
といってもつくり的にはレトロな感じがしており、どうやら和風のお店らしい。
「ここの店主もお仲間なのよ」
「そうなんだ。その人にも視えるかな?」
「無理でしょうね。私でも特殊な方法つかってどうにか、ですもの」
お仲間、ということはつまりは、ここの店主も霊能力の持ち主なのであろう。
「お母さん?進藤君?二人とも何はなしてるの?」
「おまえ、おばさんの前でクン、つけるのやめろってば。何かこそばゆいぞ!?」
「え…だけど…」
「明さん。進藤君。さ、いきましょ」
自分の前ではどうにかいい子でいようとしている息子のことはわかっている。
別に彼女とて息子の前ではさんづけしているのであまり違和感を感じてはいない。
そんな会話をしつつも、とりあえず明子、明、光、そして佐偽。
三人と幽体一人にて店の中にとはいってゆく。


……あれ?ここは?
今日は何かいろいろあった。
それゆえに家にと送り届けられ、おもわずベットに横になる。
何やら寝る前に佐偽が何かいってたような気がするが、疲れていたのかそのまま意識は沈んでいった。
ふときずけば、周囲は淡い桃色の空間。
あ、これ夢だ。
昔からときどきある。
夢、と自覚している夢が。
「こんにちわ。ヒカルお兄ちゃん」
ふと、聞き覚えのある声におもわず振り向く。
そこにはにこやかに、昼間みた少女が微笑んでたっているのが目にとまる。
「君…」
ここは間違いなく夢の中。
なのにどうしてあの子供がこの夢の中にいるのか、一瞬ヒカルは理解できない。
「夢の中のほうが説明するのにいいか、とおもって。ヒカルお兄ちゃん。
  今日、明子さんからも何となくいわれたとおもうけど。ヒカルお兄ちゃんがそれをもっている限り。
  佐偽お兄ちゃんとのつながりが佐偽さんの姿が視える人には視える、から」
「って、ちょっとまってよ!?何がいったいどうなってるわけ!?
  そもそも、佐偽にもきちんと説明できないままなんだけど!?」
とりあえず夢と自覚しているがゆえに相手にと質問を投げ返す。
これでパニックにならないのは少女があまりに美少女すぎるから現実離れしすぎているからであろう。
「説明、っていっても。口で説明するのは難しいんじゃないのかなぁ?」
「いや、かなぁ、って君がやったことだし」
おもわず少女のセリフに突っ込みをいれる。
「とりあえず、ヒカルお兄ちゃんの知ってることを佐偽さんに【伝える】だけで十分だとおもうけど。
  それをヒカルお兄ちゃんが身につけているかぎり、佐偽さんと深く意思疎通だけでなく、
  いろいろな意味でつながれることが可能だから。たとえば、強くどちらかが思ったことを相手に映像ごとつたえたりとか。
  その場合は、石をもって念じるようにすれば問題ないし」
いや、さらっといわれても。
「というか、君はいったい!?」
「私?私はヒカルお兄ちゃんにも、佐偽お兄ちゃんにもあったことがあるわよ?
  それに、あなたたちは私のことを【知って】いるから……」
そういわれても意味がわからない。
「じゃあ、来年、またあいましょう。じゃあね♡」
「って、まっ!?」
ざあっ。
少女がにっこりほほ笑むと同時、視界が淡い桃色で覆われる。
それが桜の花びらだ、と理解するのにそう時間はかからない。
『…あれ?ヒカル?』
何だかめずらしくものすごく睡魔に襲われた。
そのまま、こてっと眠ったとおもったら何やらどこかでみたような景色の場所へとやってきた。
しかも、そこにヒカルの姿をみつけて思わず声をかける。
「って、佐偽!?って、ああ!?あの子、またどこかにいった!?」
きょろきょろと周囲を見渡しても先ほどの少女の姿はまったくみえない。
あの子が何ものなのかすらもヒカルはわからない。
思い出せそうなのに思い出せない。
まるで、カスミがかかっているかのようにどうしても思い出せない。
確かにどこかであったことがあるはず…なのに、である。
『これって、夢…ですよねぇ?今の次期、こんな桜並木はないでしょうし』
佐偽にいわれて気付いたが、どうやら周囲はすべて桜並木で覆われている空間らしい。
というか大地すらも淡い桃色、というのはいったいぜんたいどういう夢なのか。
「佐偽も夢だ、って認識してるんだ……というかお前もねたの?」
『何だか、ヒカルに質問なげかけまくってたらいきなり睡魔に襲われまして。きがついたらここに……』
――二人とも、元の場所にもどりなさい……
そんな会話をしている最中、いきなりどこからともなく澄み切った声が二人の耳にと聞こえてくる。
「って、この声!?」
『この…声は?』
ヒカルはさきほどの少女の声だときづき、佐偽はまた遠い昔にきいた声を思い出す。
それと同時、二人の視界は淡い桃色をおびた金色の光に覆われてゆく……


                                -第42話へー

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あとがきもどき:
薫:さてさて、ちらほらとでてきました菫ちゃんvしかし意味深なことだけいって姿けしてます(笑
  すべては後々の布石につながってゆくのですよv(そのつもりでかいてるつもり)
  明子たちとの会話は普通(?)の会話だったのでちらほらとv
  ではではvまた次回にてv
  んで例のごとくに小話しをばvv


「って、ヒカルちゃん!?君、何でこんなところに?というか何で中学の男子の制服きてるの!?」
ざわざわざわ。
「あはは…ばれちゃった…」
中学囲碁大会。
そこに小学五年生ながらも参加したヒカル。
「先生。そのこ、女の子ですよ?」
この競技は団体戦、とはいえ男女別の試合であった。
男女混合の団体戦はまた別にと存在している。
ざわっ。
さきほど、ヒカルがトイレでであった少女が顧問教師にと何やらいっている。
たしかに事実、そうなのだから仕方がない。
しかもいきなり予定日よりも数日早くあの日がきたのだからいいわけは不可能。
何しろ彼女にはアレを借りた、という事実があるのだから。
「というか、ヒカルちゃんは女の子だけじゃなくて、まだ小学五年じゃぁ……」
ヒカルと同級生の妹がいるがゆえに知っている。
「小学生!?」
「どういうことかね!?」
「す、すいません!僕が無理にたのんだんです!メンバーがたりなくて!」
何やらざわめく人々にあわてて一歩前にでて説明している筒井の姿。
「…というか、尹先生?俺…小学五年にまけたんですか?」
小学生であの実力。
信じられるものではない。
噂の塔矢明ならばいざしらず…進藤光、という名前はきいたことすらない。
「君、ほんとうに小学生なの?院生とか?」
「?インセイ?それって何ですか?」
がくっ。
がたがたがたっ!
きょとん、と首をかしげてといかけるヒカルの言葉にその場にいた誰もがおもわずこけたり、
また椅子からひっくりかえったりしているのが見て取れる。
「いや、きみ。ちよっとまって。院生を…知らないの?」
「?」
佐偽、知ってる?
『いえ。まったく知りません』
「え~と、君、誰に碁をならってるの?だれかプロに習ってるとか?」
「プロ?」
「あ…あの!?というか、進藤…さ…ん?君、おんなのこ…なの!?」
何やら別の意味で驚いているらしき人物が約一名。
たまたま来年受験するこの中学にきていた塔矢明が驚きの声をあげる。
とはいえ明の顔はあまり知られていないので騒ぎには今のところなっていない。
「?塔矢君。いってなかったっけ?」
「きいてないよっ!」
おもわずきょとん、といわれて大きな声をだしてしまう。
大きな声をだした自分に驚いてあわてて口をふさいでいるアキラの姿。
「でも私は塔矢君も始めは女の子とおもったし」
「それはよくいわれる。じゃなくて!君、本当に院生とかしらないの!?」
そういえば、対局したこともない、といっていた。
嘘ではないようではあったが…まさか院生すらしらない、とはおもわなかった。
「だから、何それ?インセイ?って、あ、大学院生とか?」
どうやらおもいっきりわかっていないらしい。
それゆえにその場にいた誰もがただひたすらに大きなため息をついてしまう。
なぜにあそこまでの棋譜を作り上げることができる、というのに院生すらしらないのだろうか?
そんな疑問がその場にいる全員の脳裏をよぎったのはいうまでもない。
「…ふぅ。尹先生。私が説明しますよ。その子に」
「岸本君」
二年生の彼らもまた大会を観戦していた。
それゆえに先ほどの棋譜を目の当たりにしていたがゆえに驚きを隠しきれない。
「そういえば、君は院生に詳しかったはずだね。悪いけどこの子に説明してあげてくれる?
  まさかあそこまでの棋譜をつくりあげられるのに院生すらしらない、なんて。
  君、周囲に碁に詳しいひといないの?御両親とかは?」
ふるふるふる。
「うちの両親とも興味ないですし。私もこの間から友達が碁をたしなむから覚え始めてるだけだし」
嘘ではない、嘘では。
そもそも、今日うったのも佐偽である。
いや、かなりまて。
この間…って。
その場にいる誰もがそのセリフに思わず突っ込みをいれたくなってしまう。
「…そういえば、君、この間僕と対局したときがはじめての対局とかいってたよね……」
「そういえば。塔矢君は何でここに?」
「?塔矢?もしかしてきみ、あの塔矢明君?塔矢名人の息子さんの?」
「え?あ、はい」
ざわ。
尹、と呼ばれた男性のその言葉に、さらに海王中において行われている中学囲碁大会の会場は、
さらにざわめきをましてゆく……


こんな感じでv
大会のとき、アキラもやはり見てたのですけど。
二年生の岸本達も決勝戦はみにきてた、という形になっておりますv
そして、アキラはこれまでヒカルを一つ下の男の子、としかおもってなかったので驚愕してたり(まて
無知らしきヒカルにこれから尹達が院生とは何だ、と説明してゆくのですv
中学の大会との明との対局?
あれはこれにはないようであるようで(こらこら
ちなみに、石の打ち方は塔矢名人にヒカルは対局をすすめられたときに教えてもらってたりするのです(笑
ではでは、また次回にて~♪

2008年8月25日(月)某日

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