まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
さてさて、一期に月日をとばして、すでに中学二年の春vですv
ラストのほうから若獅子戦がはじまりますよーv
ふふふv
この若獅子戦、原作とはまったく異なる展開なのはおやくそくv
何はともあれ、ゆくのですv
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「ヒカル、今日はおそくなるの?」
四月。
新たな門出の月であり、また旅立ちの月でもある。
「うん。今日は棋院で何か話しがあるんだって」
今日から中学二年。
周囲の人々も新たな旅立ちをむかえている。
「まったく、あなたがここまで囲碁をつつげるとはおもわなかったけど。
だけどあまり遅くなるようなら連絡するのよ?」
「は~い」
中学一年の成績は学年の順位からすればまあまあの成績。
何しろ一部の試験の成績がわるいがゆえにどうしても順位はおちてしまう。
担任の教師も進藤君は英語とかの成績がよければ上位十組にもはいれるのにねぇ。
とため息をつきまくっていたりした、というのはヒカルからすればどうでもよいこと。
『ヒカル。今日から上位のクラスに、ですか?』
どうも学年が上がるとかいっても佐偽にはピン、とこないらしい。
江戸時代の寺小屋などの感覚がいまだにつづいているらしく、そちらの感覚でいまだにいってくる。
「おまえな~。そろそろおぼえろよな」
「?ヒカル?」
「あ、何でもない。じゃ、いってきま~す!」
いきなり独り言をいうヒカルをみて多少眉をそめる美津子。
また何かがいるのかしら?
一応、ヒカルがそのような力をもっている、というのはきかされてはいる。
いるがどうしても信じられない、というほうがつよくそれゆえにどうしても怪訝そうな表情をしてしまう。
そんな母の様子に多少溜息をつきつつもそのまま家をあとにしてゆくヒカル。
あのような両親の様子はもうなれた。
だがしかし、慣れたとはいえやはりどこかさみしいものがある。
人は、どうしても自分にない力を畏怖していまう、というのは今もむかしも変わらない……
星の道しるべ ~始まりの月~
ざわざわざわ。
日本棋院の敷地内にとあるとある建物。
今日は全国からさまざまな棋士や関係者たちがあつまってきているがゆえにかなりの人だかり。
「あ、緒方さん!」
周囲はほとんど大人ばかり。
同期合格した人達もまたアキラからすれば大人というかかなりの年上。
そんな中で見知った顔をみつけたら、ほっとするのは仕方ないともいえる。
確かに彼の家においては彼は彼の父親の門下、ということもある。
そして、今までは彼は師匠の息子、という立場であった。
だが、これからは……
「緒方さん?」
何よりも強力な相手になるはずである。
それゆえに、
「ようこそ。プロの世界に」
挨拶するわけでもなく、今日から君はプロなんだよ?
という確認をこめて駆け寄ってきたアキラにといっている緒方の姿。
その言葉に、はっとして。
「よ、よろしくおねがいします!」
たしかに、今日から自分の立場は今までとは違う。
それゆえに、ぴしっと姿勢を正して挨拶するアキラ。
ざわざわざわ。
そんな中、人々のざわめきはさらにと増してゆく……
「え?この対局表って……」
四月というので日本棋院にと集められた。
何でも四月の対局表は直接に院生当人たちにと手渡されるらしい。
受付で手渡されるので手合いの間に別にいくこともない。
がさがさと棋院のロビーで手渡された今月の対局表の封筒を開く。
『?ヒカル?この対戦表は?』
そんなヒカルの手元を興味深そうにのぞきこみつつもヒカルにと問いかけている佐偽。
「五月にある若獅子戦の対局表、だってさ。ほら、ここ、みてみろよ。佐偽」
『え?』
手渡されたその表には来月の若獅子戦の対戦表がのっている。
普段はいつも月はじめに自宅に送られてくるというのに、どうやら棋院からしても五月の大会は重要なものらしい。
『おや。対戦者の名前がかかれているのですね?うん?ヒカル…ここ?』
「ああ。どうやら塔矢とは俺たちが勝ち進んだら二回戦、にあたるな」
いいつつも、にっと笑みを浮かべ、
「よぉし!今度こそ!大会であいつにかってやるっ!!!今度こそ公式試合での妥当塔矢だ!!」
『ヒカル、いまだにあの大会でのよみ間違い…きにしてるんですねぇ~…気持ちはわからなくもないですけど……』
普段のときでかってはいるものの、やはり公式の大会で、というのが重要になる。
しかし、たしか五月初めに発表される順位で若獅子戦の順位が決まるとかきいたはずだが。
「え~と、来月と再来月の土曜日、かぁ。
あ、すいませ~ん、たしか話しでは五月初めの順番で対局がきまるとかきいたんですけど~」
とりあえず疑問におもったことはきかなければ気がすまない。
近くにいた受付にいる人物にとひとまず問いかける。
「うん?ああ、君は確か進藤君、だったよね。君の場合はね~。
何だか篠田先生もいってたけど絶対に順位がさがらないから先にきめといても問題ない、とかいってきてね。
なので先にきまったんだよ。ほら、よくみてみて?番号、だけかかれている場所もおおいでしょ?」
いわれてみれば全部で三十二名ほどの対戦表。
その中に十五個ほど名前がなくてそのまま文字がかかれている場所がある。
院生研修日ではない日もそれに記載されているので予定はたてやすい。
『そういえば、ヒカルの横には、小さく、一、とかかれてますね』
たしかにいわれてみてみれば、ヒカルの名前がかかれているその横に小さく、一、の文字が示されている。
まあ、たしかに。
自分に枷をかけて半目勝ちをつづけている、ときかされればあるいみ納得せざるを得ないのも事実。
とはいえ、一応は仮の対局表。
万が一にも変更するかもしれないので一応、当人だけに手渡しているのも事実。
他の人に渡された品には名前は記入されていない。
「正確な対戦表は五月に発想されてくはずだから、こころがけといて」
どうやら暫定的な予定、らしい。
それでも大まかの対戦相手がわかる、というのでは心が前が違う。
「わかりました」
今日は別に日本棋院に用事がある、といえども手合いがあるわけではない。
それゆえに受け取るものだけうけとり、棋院のロビーのソファーに座りしばらく紙面とにらめっこ。
「どうする?佐偽?これから?」
『ヒカルはどうしたいんですか?』
そういわれても、どうしてもちらりと視線をむける先にはかなりの人だかり。
日本棋院付属の会館。
そちらのほうにて今日は何でも新たな免状授与式などが行われるらしい。
「そうだなぁ。できればのぞいてみたいのは山々なんだけど……」
何やら棋院の中もざわざわと騒がしい。
今日は新初段の免状授与式以外にも一年の功績をたたえての発表などもあるらしい。
『私もいってみたいですぅ!ね、ね!ヒカル、いってみましょ!ね、ねっ!』
ヒカルの問いかけにそわそわしつつもヒカルに抱きつきながらもいってくる佐偽。
絶対にしっぽがあったらこいつ、尾をぱたぱたふってそうだよな~。
そんな佐偽をみつつもそんなことを思うヒカル。
「あれ?進藤じゃないか」
「あ、和谷」
佐偽とソファーの上でそんなじゃれあいともいえる会話をしていると、ふと玄関の出入り口の扉がひらく。
扉からはいってきた人物をみてみれば見慣れた和谷義高の姿が目にとまる。
『和谷も用紙をとりにきたんですかねぇ~』
「だろうな。和谷もこれ、もらいにきたの?」
とりあえず出していた紙を封筒の中にとしまいこみながらも座ったままでと問いかける。
「まあな。進藤ももらいにきたのか?」
「うん。あ、そうだ。和谷。今日やってる授与式って俺たちもみれるの?」
とりあえず、疑問におもっていることを問いかける。
昨日の電話においてはアキラは誰でもはいれる、ようなことをいっていたが。
どうも彼の基準はひととだいぶかけ離れているので保険が大事。
「別に制限はないとおもうけど、どっちにしても来年、絶対にオレもあそこにたってやるっ!
お前も来年いくんだろうし、今いかなくてもいいんじゃないか?」
それに何よりも。
院生である自分たちがいったらかなりめだつ。
それでなくてもあそこには間違いなく子供はあまりいないであろう。
さらにいうならば、あそこに今、進藤のやつがいったら絶対に騒ぎになるっ!
それを確信しているがゆえの台詞。
たしか今回、受賞される中には進藤光のことをしっている人たちもいるはずである。
さらに塔矢明が進藤の姿をみてほっとくはずがないし。
そう確実に確信がもてるがゆえの台詞。
「そんなもの?」
「おまえ、大人たちにもみくちゃにされたいのか?あそこには絶対にカメラとかたくさんきてるぞ?
院生がきてるなんてしったらそれこそ意見をきかせてくださいとかいってもみくちゃにされまくるっ!」
「うっ」
それはかなり遠慮したい。
一瞬、和谷の言葉にありありとその後継が脳裏に浮かびおもいっきり言葉につまる。
『うわ~。これはたしかにいや、ですねぇ~……』
ヒカルがつよく脳裏に思い描いたがゆえに佐偽にも伝わり佐偽もまた嫌な顔をしているようだが。
たしかにさまざまな人たちにもみくちゃにされる様はあまり好ましくない、といえよう。
しかもそうなれば、横にいる佐偽の体を素通りする人々も多数となってくる。
佐偽の姿がはっきりと視えて、しかも触れることもできるヒカルからすればそれはあまり精神面においてもよろしくない。
佐偽からしても、自身の体を何人も素通りされてはたしかに面白くはない。
「そっかぁ。ならあとで塔矢にでもき~とくか」
「そういえば、お前はこれからどうするんだ?」
「ん~。今日は石心にちょこっとよってから家に戻る予定。教科書とかも先に片付けときたいし」
数学の教科書などの穴埋めはまだ完全には済んでいない。
「お前、あれからよくあそこに入り浸り、だよな~」
「前、塔矢つれてったらものすごく何だかさわがしくなったけど」
「…そりゃそ~だろうな……」
その場にいたわけではないが、ありありとその様子が目にうかび、おもわず片手を頭にやりつつつぶやく和谷。
進藤の感覚、どこかずれてるからなぁ~……
そんなことをも思うが、
「ま、お前は中二、俺は中三。今年こそはがんばろうぜ」
今年もよろしく、というのはすでに新年のときにいっている。
「うん。そうだな」
そういや、こいつ来月の若獅子戦…結果どうなるんだろう?
ふとそんなことを思う和谷。
今まで院生で優勝、もしくは決勝戦までのこったものなどはいないが、だがしかし進藤ならば快挙を成し遂げそうで怖い。
「ま、それじゃ、また今度な」
「うん。またな。和谷」
たわいのない会話。
そんな会話をしつつも、それぞれ棋院をあとにしてゆくヒカル達。
本当の意味で今月から新たな年となる。
アキラは今月から本格的にプロとしての道を進み、ヒカルはまた今年の夏に試験をうける。
しかし、今だにヒカルはよくそのプロ試験の概要を完全に把握しているわけではない……
「ま、僕には関係ないね」
ずずっと飲み物をのみつつもぶっきらぼうにといいきる越智。
五月にはいり、今月の順位表がてわたされた。
その結果、今月ある若獅子戦の対局メンバーが確実に決定した。
ヒカルにとりあえず若獅子戦のことを詳しくきかれ、手合い日の昼間に全員で昼食にでているヒカルたち。
「来月と再来月の院生研修のない土曜日にやるんだよ」
そんなヒカルに丁寧に説明する本田に対し、
「一日じゃおわんないよ。院生十六人と若手棋士十六人のトーナメント、だぜ」
苦笑しながらも追加説明している伊角。
それぞれに向かい合ってすわっており、ヒカルの左右には伊角と越智。
そしてヒカルの目の前には和谷、その左右には奈瀬と本田が座っている。
この六人で昼食をとっているヒカルたち。
「一回戦はみんな院生とプロの対決。もちろん互戦よ」
「へ~。でもプロにかつ、なんてすげぇっ!」
奈瀬の言葉に目をきらきらとさせていいきるヒカル。
『でも面白そうですよねぇ。その若獅子戦とかいう大会v』
そんなヒカルの後ろではにこやかにそんなことをいっている佐偽。
「おまえなぁ。無自覚もそこまでいけば嫌味だぞ?」
ときどきつれてく森下先生の研究会でかってるやつがよくいうよ。
そう心の中でつっこみをいれつつも、あきれつつもヒカルにいっている和谷。
「というか、森下先生たちにもかてる進藤のほうがすごいよ。絶対に」
福井もまた、和谷達からそのことをきいているので素直に感心することしきり。
「プロに勝てるようでなきゃ、プロ試験なんかうからないしね。若獅子戦はいい腕試しさ」
いまだに一度も横にいる進藤光にはかてないまま。
それでも、どうにか三位をいったりきたり、しているこの現状。
祖父は常に一位をめざせ!
とはいうが、越えられない壁、というものを始めて経験した越智。
それゆえにどこか進藤ヒカル、という子供に一目置いているのも事実。
「しかし、今年はけっこういいところまでいけるかもなぁ」
「俺、森下先生にもいわれた。最近、よく伸びてきてるって」
事実、ヒカルが常に指導碁のようなものをうっているので院生内のレベルは確実に向上していっている。
ヒカルはそんなつもりはないのだが、佐偽のみはその事実に気づいて周囲の子どもたちの成長ぶりを楽しんでいたりする。
「ま、とりあえず。まずは一回戦突破!が目安、よね」
「ま、来週、がんばろうぜ」
来週、五月の八日の土曜日にその若獅子戦は開始される。
そんな会話をしつつも、それぞれがハンバーガーなどにかぶりつく。
最近の昼食は手軽でかさばらない、という理由から棋院近くのこのバーガーショップにかよっている彼ら達。
この店もまた棋院が近いこともあり院生などがよくくるので別に平日などに子供がいてもあまり不思議にはおもわれない。
「しかし、あ~あ、昼からの相手は進藤か~。せめてお前の半目勝ちだけはストップさせたいよな~……」
自分がミスをしてもそれにあわせてきちんと半目にもってくるのだからたまったものではない。
「ま、とりあえずメンバーはきまったんだし。がんばろうね」
今、ここにいる六人は全員若獅子戦のメンバーに選ばれている。
そんな会話をしつつも、しばし昼食を食べる彼ら達の姿が、その葉゛においてみうけられてゆく――
「院生、まだきてないのは?」
若獅子戦の進行係り。
何が大変、といえば人数があつまるまでがどんな大会においてもいえることだが気がやすまることはない。
「えっと、野崎と進藤と…あ、進藤きました」
あと来ていないのは二名のみ。
和谷がそう説明しかけるとどうじに、ヒカルが会場の中にとはいってくる。
「和谷~!いよいよだね、かぁ、もえるぅっ!あれ?みんなも参加するの?」
がくっ。
ふとみれば一組の十六位以外の院生仲間たちの姿がそこにある。
それゆえにそんな彼らに問いかけているヒカル。
「あのなぁ!進藤!おまえ、力あるくせに無知すぎ!俺達は応援っ!」
「見学だよ!」
「そうなの?てっきりみんなも何らかの対局があるのかとおもった~」
はぁ~……
本気でしみじみというヒカルにその場にいる誰もがおもいっきり溜息をついてしまう。
院生になってからものすごい実力を見せている、というのに、その手の知識はほとんどなきにひとしい。
それゆえにどこか親しみのようなものをもつのも事実なのだが。
「ねえねえ、それより、プロの人ってどこ?!」
がくっ。
「お前、顔くらいおぼえとけよ…ほら、あそこさ」
何やら脱力してしまうような気がするのは気のせいではないだろう。
脱力しつつも、とりあえず数名固まっている人たちのほうを指し示す。
若獅子戦に参加するメンパーはその胸に花飾りをつけている。
だが、それだけでは院生なのかプロなのかはわからない。
「あれがプロ?みえね~」
たしかに、花飾りをつけているのはみてとれるが、どうみても普通の人々にしかみえない。
『?見た限りあまり強くないですねぇ。みなさん』
佐偽もさらっとそちらに視線をむけてさりげにあるいみきついことをいっているが。
お前からしたらそうだろうけどな~。
おもわずそんな佐偽に心の中でつっこみをいれていると、
「まあ、ネクタイしてる人がすくないからね。若獅子戦はお祭りみたいなものだから、リラックスしてるんだ」
ヒカルに対して苦笑しながらも丁寧に説明してくる伊角の姿。
と。
「いよ。みんな久しぶり~」
そんな会話をしていると、何やら横手のほうから投げかけられてくる声が一つ。
「なんだ。真柴さんか」
ふとみれば、去年の夏のプロ試験にうかり院生を卒業した真柴の姿がそこにある。
それゆえに、おもいっきりいやそうにぼやいている和谷。
「誰?」
一方で、彼からすれば見たこともないひとなので首をかしげて横にいる奈瀬にとといかけている越智。
越智が院生になったのは十月から。
すでに真柴は院生研修にはかよっていない時期。
それゆえに、彼は真柴のことをまったく知らない。
「越智。こいつは去年の試験でうかったやつよ」
越智に説明しつつも顔をしかめている奈瀬。
真柴がこのように話しかけてくるときにはろくなことがない。
そのことを彼らは身にしみてよく理解している。
それゆえにおもいっきりいやそうな表情をしているのがヒカルですら理解できるほど。
「よ、みんな元気にがんばってる?」
いいつつも、ヒカルの姿をみて一瞬眉をひそめるものの、
「伊角さん、今日はよろしく、お手柔らかにおねがいします」
おもいっきり嫌みを含めた口調でそんなことをいってくる真柴。
「そういえば、伊角さんって今日……」
ふと対局表の対戦相手のことを思い出し、ぽそっとつぶやくヒカルの言葉を肯定するように、
「そ。真柴さんが一回戦の相手」
きっと真柴をにらみつけながらも答える和谷。
「ねえ、伊角さん、さっさとこっち側にきてくださいよ。
プロになると院生のときの切羽つまった感じがなくなるんですよ。
それでのびのびうてるんですから。ほんと、この感じ、なってみなくちゃわかんないでしょうけどね。
プロはいいっすよ。じゃ、ま、のちほど」
何やらおもいっきり嫌み口調でいいたいことだけいいはなち、その場を立ち去る真柴であるが。
「何なの?あの人?」
越智からしてみれば、変なひと。
その一言につきる。
「あ~、やだやだ」
「むかつくぅぅ!」
「プロになったら今まで以上に嫌味になってさらにいばってやがる!」
何やら院生仲間からそんな声がきこえてきていたりもするのだが。
まあ、それは当然、といえば当然なのであろう。
「よおし!こうなったら絶対にかちすすんでやる!」
あの真柴をギャフンといわせるのはそれしかない。
それゆえにきっぱりといいきっている奈瀬。
「しかし。受かったのは事実、だしな。あんな真柴でも」
「もう、飯島。それはあいつの運がよかっただけよっ!
あいつ、試験中も嫌味ふりまいてみんなのペースみだしまくってたしっ!」
事実、そのとおりなのだが。
「奈瀬。たしかにそうかもしれない。でも、うかった。俺達はおちたのに」
「それをいわないでよ……」
現実主義もここまでくればあるいみ立派、なのかもしれない。
どんな経緯があれ、結果のみを重視する。
それが飯島、という人物なのだから。
「伊角さん!絶対に真柴なんかにまけないでよっ!」
「おう!ぎゃふんといわせてやれっ!」
ふとみれば、ヒカル以外の院生全員。
越智はよくわからないのか首をかしげているばかりだが。
ともかくヒカルと越智以外の全員が伊角をみながらうったえてくる。
「ぜ…全力をつくします。とにかく。今日は去年の試験のことをいう場じゃない。それぞれ若獅子戦、がんばろう」
「そうよね」
「たしかに。伊角さんのいうとおり…かもね」
伊角、奈瀬、飯島の三人がそんな会話をしている最中、
「和谷。進藤」
ふと、ヒカルと和谷に話しかけてくる別の人物が一人。
名前をよばれてそちらをふりむくと、何やら見慣れた姿が。
「あ、冴木さん」
「こんにちわ」
たしか、和谷んとこの先生のお弟子さんのひとりだったっけ?佐偽?
『ですね。研究会にいったときによくみかける人の一人ですね』
とりあえず挨拶をしてから佐偽に確認をもとめてといかける。
どうも、俺って人の顔と名前覚えるの結構苦手なんだよなぁ。
それが服装とかがかわればなかなかわかりにくい。
いちいち認識していたら、視えるものなどもごっちゃになってしまう、というのもあるのだが。
そんなヒカルの思いは当然誰も知るはずもない。
「俺たち、一回戦であたらなくてよかったなぁ。
森下門下でつぶしあい、な~んてな。進藤君もがんばって。期待してるよ」
「冴木さん、それって洒落になんないってば……」
もしそんなことになれば、森下先生に何といわれるか。
考えただけでもあとが怖い。
それゆえに先輩でもある冴木の言葉に溜息まじりに答える和谷。
「あ、はい!」
そしてまた、いきなり話しをふられて、おもわず姿勢を正して返事を返す。
「じゃあな」
しばらく、一言、二言和谷と話しをし、その場を立ち去る冴木の姿がそこにあったりするのだが。
ふとみれば、どうやら残りの院生たちも全員そろったようである。
何やら進行役の人たちがあと誰がきていない、とか会話しているのが傍目にみえる。
『そういえば、まだ塔矢きてませんねぇ』
「ほんとだ。塔矢のやつ、まだかな?」
そんな彼らが塔矢明がまだです、といっていたのをうけて、きょろきょろと会場の中を見渡すヒカルと佐偽。
と。
「あ、進藤!」
入口のほうからはいってくる一人の少年。
ふとちょうど目につくところにたってきょろきょろとしていたヒカルの姿を目にとめ思わず声をかける。
「あ、塔矢!おはよう!おそかったな。お前にしちゃ」
塔矢のやつは時間にはけっこううるさいのに。
何か用事でもあったのかな?
そうはおもうが別にそれをどうしてもきかなければいけない、というわけでもない。
何しろ時間はまだたっぷり余裕があるのだから。
そんな塔矢明の姿に気づいてヒカルもまた近づきながらも声をかける。
「おはよう。ちょっと先にあっちに挨拶してくるね。君とは二回戦にあたるけど。無様にまけるなよ?」
あっち、というのはプロたちが集まっている場所。
一応、アキラもまた新初段。
つまりは父親がどうあれプロ棋士としては新人。
そのあたりの礼儀、というものはどうしても必要。
一言、ヒカルにいいつつも、とりあえず気になることをいっておく。
彼がまける、とはおもわない。
おもわないが、やはり中学などの普通の大会と、こういったプロを相手にした大会、とでは意味が違う。
それゆえの忠告。
「そっちこそ!いっとくけどな!前の大会のようにポカはもうやんないかんなっ!」
『私の教えがいいので、ヒカル。完全に目算とか確実にできるようになりましたしねぇ♡』
どうも小寄せなどが苦手、というのを見抜き、それらを克服するために指導していた。
その成果もありヒカルは今ではそんな以前のようなポカみすのようなことはしでかさない。
「くすっ。たのしみにしてるよ。君と本大会で対戦できるときを僕だって楽しみにしてたんだから」
そう。
たのしみにしていた。
彼…進藤光がプロの世界…それにつながるこの場にでてくるときを。
「そういや。中学の囲碁部の大会以外、だもんな。
だけど!あのときはお前にまけたけど!今度は絶対にそうはいくかっ!」
何やら二人してそんな会話をしているヒカルとアキラ。
そんな二人を唖然としてみつつ、
「お、おいおい、しんどう、しんどう……」
戸惑い気味にとりあえず忠告しようと声をかけている和谷。
「…ねえ。進藤と塔矢君って周囲がおもいっきり注目してるの気づいてるとおもう?」
そんな二人をみつつもあきれた声で思わずつぶやいている福井。
「いや、こりゃ、してないな。絶対に」
そんな福井のセリフにきっぱりはっきりいいきる伊角。
なごやかというか会話をしている二人におもいっきり注目している会場にといるほとんどの人々。
それはそうであろう。
塔矢明。
あの塔矢行洋名人の一人息子にして囲碁界においては期待の星。
とまでいわれ、プロになる前から騒がれていた人物。
しかも、四月から始まっている手合いなどにおいてもいまだに負けなし。
そんな彼にちゅうもくしていない人々などいるはずもない。
それゆえに、アキラと話しているヒカルに興味をもたないわけはない。
何やらざわざわとヒカルを指さし話しているのもみてとれる。
あの塔矢明と話している子供は誰か…というような会話をしているようだが、ヒカルたちはまったく気にとめてもない。
というか、周囲のざわめきは二人の耳にははいっていない、といったほうが正解なのだが。
しばし、そんなたわいのない会話をしつつも、
「じゃ、またあとで」
「うん。またな」
ひとまず長話をさけて、アキラは一度、プロたちがあつまっている方向にと足をむけてゆく。
そんなアキラの姿を見送りつつ、
「というか。塔矢のやつ、進藤以外には目にしてないよな…絶対に……」
「だな~。あ~あ、俺達他の院生は目にもはいってない、ってとこか」
おもわず、ぽそっと本音をもらす飯島と本田の二人であるが。
その思いはその場にいるヒカル以外の院生たちにとってもみな同じ。
何やら全員がしみじみそのセリフにうなづいていたりするのだが。
そんな仲間たちの様子に気づくことなく、
「よおっし!がんばるぞ~!」
一人、何やら気合をいれているヒカルの姿……
「おはようございます。今日はよろしくおねがいします」
ヒカルと簡単な会話をかわしつつも、奥にいるプロ棋士の先輩たちに対して挨拶する。
「おはよう」
「おはよう。塔矢君」
そんな彼に対してにこやかに挨拶を返してくる先輩棋士たち。
「さっきの子は?」
何やらとても親しそうだったけど。
みたところ院生、かな?
だけども塔矢明に院生の友達がいる、などと今まできいたことがない。
「友達です」
「へ~。塔矢君にも友達、いたんだ」
「プロ…じゃないわね。院生?」
「はい。彼は家庭の事情で去年の試験はうけれなかったので」
「そうなの」
「でも、あの子、院生、だよね?今まで一度も試験うけなかったの?」
「彼が院生になったのは去年から、ですから。そのときすでに去年のプロ試験の締切はおわってたんですよ。
彼の家族が囲碁界のことにとことん無縁なもので、
彼も囲碁に興味もってもそのせいかかなり無知、ではあるんですけどねぇ~」
そこまでいってかるく溜息ひとつ。
「無縁?めずらしいね。普通院生とかになる子は周りの人たちが熱心なのに」
「彼のケースはおもいっきり特殊、ですから」
たしかに特殊、としかいいようがない。
そもそも、ヒカルにはプロ棋士の師匠すらいないのだから。
「でも、塔矢君に友達、かぁ。あの子も強いの?」
「進藤はつよいですよ?当人はその自覚はおもいっきり無自覚ですけど」
「へぇ。塔矢君が強い、と言い張る子か。じゃ、塔矢君のライバル?な~んてね」
おそらく冗談でいっているのだろう、そうとらえ、かるく冗談まじりにそんなことをいってくる。
が。
「ええ。進藤は僕のライバルですよ?彼以外は考えられませんし。彼との対局は僕自身の勉強にもなりますし」
「「・・・・・・・・・・・・・」」
きっぱりいわれておもわず黙り込んでしまう。
あの塔矢明にそこまでいわせるあの子って…
そんなことをおもいつつ、ちらりと視線をシンドウ、と呼ばれた子供のほうにむける彼ら。
アキラたちがそんな会話をしている最中。
「あれ?あ、やっぱり。たしか進藤君、だったっけ?」
「あれ?あ、たしかえっと…」
『ヒカル。天野殿、ですよ』
名前がすぐにでてこないヒカルに代わり、溜息まじりに佐偽が横から助け舟をだしてくる。
「あ、そうそう。天野さんだ。たしか記者とかいう。おはようございます」
「おはよう。しかし、君もやっぱりでるんだね~。若獅子戦」
一応、きになったのでヒカルの順位は天野も確認済みではある。
その結果、院生になってこのかた一度もまけなし。
さらには半目勝ちを続けて連勝している、というオチまでついている。
それゆえに塔矢明と話しているのがヒカルだと気づいて声をかけてきている天野。
「あ、はい。どうにか」
「?天野さん?この子は?」
「え?ああ、塔矢君の友達だよ。しかし、君と塔矢君の対局は二回戦、かぁ。
別々のルートならば決勝戦までどちらものこるかもしれなかったのにねぇ」
何やらはたから聞けば末恐ろしいことをいっているような気もしなくもないが。
だがしかし、ヒカルの棋力をその目でみている和谷からすればそれもありえそうで否定はできない。
「まあ、がんばってね。そっちの人たちも。お。伊角君。君もがんばってね。
たしか一回戦は君と知り合いの子だったよね。確かもと院生のはずだし」
「はい。天野さんはいつもの取材ですか?」
「ああ。今年は何しろ塔矢明もプロとして初めてでてくるしねぇ。
しかし、こりゃ、今年は騒ぎになるかな?あはは」
「??天野さん?いったい?」
天野のいっている意味がわからずにカメラマンが首をかしげる。
「「あ~……」」
彼が何をいいたいのか察し、その場にいる院生全員がヒカルのほうをみているが。
「?あ、塔矢もどってきた」
なぜみんながどこかなっとくしたようなつぶやきを漏らしているのかヒカルはわからない。
ふと気付けば挨拶がおわったのかこちらに近づいてきているアキラの姿が目にはいる。
「あれ?天野さん。おはようございます」
「おはよう。塔矢君。どう?今日の対局の手ごたえは?」
「そうですね~。まず二回戦が強敵ですよね。…さいきん進藤ってぱさらに強くなってますし。
まったく、師匠がいないのにどうして自力でここまで強くなれるのか不思議ですけどね」
『ヒカルは毎日私とうってますしねぇ』
何しろ教えてもらってる相手が相手…だしなぁ。
佐偽とヒカルの心のつぶやきがおもいっきり一致する。
「あはは。それはたのしみだね。…おっと」
「天野さん、そろそろ開始されるみたいですよ?」
そんな会話をしていると、どうやら全員あつまったらしく、開始の合図が会場にとアナウンスされる。
「じゃ、またあとでね」
「はい」
「う~。わくわくする。そういえば、俺の相手の村上って人、どのひと?」
「あの人だよ。進藤。村上信一プロ棋士」
「へ~。大人の人なんだ」
「へ~、てね。進藤。前にもいったけど、プロ棋士で子供はまずほとんどいないのを自覚しろよっ!」
「そういってもさ~。ピンとこないし」
「はぁ~……」
理屈では理解してもやはり院生仲間が全員子供、ということもありいまいちピンときていないヒカル。
しかも、大人のはずの佐偽ですら子供よりも子供らしい、
という事実があればなおさらにピンとこないのも仕方がない。
【え~。静かにしてください。ただいまより、第〇回、若獅子戦を開始いたします】
そんな会話をしている最中、アナウンスがながれてくる。
「あ、俺とおまえ、前後の席だ」
「だね」
放送で指定された席はちょうどヒカルとアキラが隣り合った席。
隣同士、といっても席の形からちょうど向き合うか、もしくは背中あわになる格好。
なあ、佐偽。
やっぱり全力でいってみたほうがいいかな?
『ですね。相手はプロなわけですし。相手の棋力もわかりませんし』
「了解。…おねがいします」
「…おねがいします」
院生が黒をもつ互戦。
だがしかし、目の前の相手はあなどれない。
院生の一位というのをさしひくとしても、あの塔矢明と親しそうにはなしていたのもきにかかる。
彼は手合い日にてアキラにかてたことは一度もまだない。
だからこその警戒。
それでも所詮は子供。
進藤光、なんて名前は一度もきいたことがない。
ま、まずは様子見…かな?
そんなことをおもいつつも、ヒカルにむきあう、一局目のヒカルの対戦相手、村上信一、という男性。
今、ここに若獅子戦が幕をあけてゆく……
-第38話へー
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あとがきもどき:
薫:さてさて、はじまりました、若獅子戦。
何だかさいきんものすごくつかれてるのかパソみるのすらきつい状況…
朝のうちこみは平気なんですけど、夜がどうしても眠気にかてず…
さてさて、んでは例のごとくに小話、いっきますv
↓
「そういえば、進藤って秀作の署名鑑定師、だったっけ?」
男女の区別はしていないとはいえ、それでも選ばれたのはヒカルのみ、というのもあるいみすごい。
他の国というか残りの二つの国ですら女性はえらばれていない、というのに。
「おねがいします!倉田さん!あんなこといわれっぱなしなんて!
彼の強さがどれほどのものかわかってないのにきまってるっ!」
ずっと一緒にいたからこそわかる。
彼の強さは。
だからこそ、暴言を吐いたあの男を許すことなどできはしない。
明日の対局をみてきめる。
そうなだめて部屋にとかえらせた。
「しかし、進藤って、本因坊秀作のことになったら人がかわる、よな」
ヒカルがまだプロになる前から知っているがゆえにそんなことをつぶやく倉田。
アキラはヒカルがだれか大切な人を失って、碁をうてなくなっていた、ということを知っている。
その内容まではきかされてはいないが。
もしかしたらその大切な人が本因坊秀作と何らかのかかわりがあったのかもしれない。
だが、ヒカルの許可もでていないのにそれをいうわけにはいかない。
「しかし、進藤…大丈夫でしょうか?」
どこか張り詰めたようなそんな感じをうけた。
それゆえに至極もっともなつぶやきをもらす社。
「まあ、あとに奈瀬にでも様子みにいってもらうよ」
回りは男ばかりだと何かあったらいけない、というので自らヒカルの付添を申し出ている奈瀬。
たしかに女の子同士のほうが通じることろもあるのだろう。
そんな会話をしつつも、
「さ、明日も対局だ。お前らももう、ねろ、な?」
「はい」
「はい。じゃ、また明日、倉田さん」
「おう」
たわいのない会話をすまし、それぞれの与えられた部屋にともどってゆくアキラたち。
明日は中国、そして明後日は韓国戦が待ち構えている……
何なんだ?この女……
女だから、となめていたのも事実。
だが、いざはじまってみれば自分のあっとうてき不利。
しかも相手はものすごく早打ちで仕掛けてきている。
その手にまったく隙はない。
表情からしてもまるで鬼神がついたごとくにぞくりとするほどのロビーであったときとは別人のような顔。
「これは…韓国のコ、ヨンハ選手。圧倒的です。圧倒的に負けております」
「しかし、相手のこの日本の進藤って女の子。まだプロになってまもないんですよね?」
局面はものすごくヒカルに優位、というか圧倒的なまでの力の差は局面からしても一目瞭然。
「さあ、挽回のよちはありますかねぇ?韓国の大将」
「どうでしょぅ?このままだと中押しで大将戦はカタがつきそう、ですねぇ」
「しかし、進藤選手、ものすごい早碁です。相手もその気力にのまれてますね」
「あれは相手が手を考える間にさまざまな手を頭の中で考えてそれでうちだしてる、のでしょうね」
そんな会話がヨンハの耳にと聞こえてくる。
気がぬけない。
しかけてもすぐに殺される。
何なんだ…何なんだ!?こいつは!?
始まる前に、対戦相手がいっていた言葉。
自分がかったら、あの暴言を訂正して虎次郎たちにあやまって!
という言葉。
達、というのが多少きになるものの、だがしかし、自分に女がかてるわけがない。
そうおもったのも事実。
おそらく、スヨシがまけたのも女の子だから、といって油断したからなのだろう。
心のどこかでそうおもっていた。
なのに……
囲碁の世界は男女平等。
強いものが勝つ。
それは当たり前。
だが、この一局でかれの思い上がりともいえる傲慢ともいえるプライドはずたずたにひきさかれることになる……
勝てても、それでも佐偽がもどってくるわけではない。
一番喜んでほしい人はもうそばにはいない。
対局がおわり、ふと横をみるたびに喪失感に襲われる。
何やら目の前で呆然と局面の前にすわっているヨンハが視界にはいるがそんなことはどうでもいい。
「ちゃんと閉会式で開会式の暴言!とりけしてよねっ!!」
公言したのがよりにもよって開会式。
つまりは世界にむけて佐偽の悪口をいったに他ならない。
だからこそゆずれなかった。
佐偽の力もわからないくせにあんなことをいう目の前の男性が。
だからこそ全力をかけた。
「こ…これは!進藤選手!韓国のコヨンハ選手を中押しで勝ちをきめました!」
ざわ。
その事実に会場がにわかにざわめきたってゆく……
「彼は本因坊秀作を馬鹿にしました。だからゆるせませんでした。
日本の歴史上、私は彼こそ最高の棋士だと尊敬しています。そんな彼を馬鹿にされて怒らない人がいますか?
私にとっては彼はすべて、です。彼がいなければ今の私はありませんから」
対局後のインタビュー。
記者にかたったヒカルの言葉。
そう、尊敬している、誰よりも。
そしてまた、愛してもいる。
今はそばにいないけど、だけどいつもその姿をおいもとめている。
そしてまた、彼のあのすばらしい棋力を。
噂では進藤光には師匠がいないらしい。
自力で棋力をやしなった、そう関係者たちはきかされている。
それゆえにその事情をしる人々はどこかヒカルの言葉に素直に納得してしまう。
何よりも世界でもいまだに本因坊秀作は最高の棋士だ、とその筋では確実に誰もがおもう事実なのだから。
おもいあがったコヨンハ棋士、逆鱗にふれた日本の女流棋士にやぶれる!
各国でそのような見出しの記事が飛ぶように売り出されたのは…いうまでもない……
「…今の進藤のあの局面……」
ずっとみていたからわかる。
あれは…あれは……
「……sai?」
今のヒカルの一局、最後の大将戦はまちがいなくsaiの手筋によく似ていた。
まるで…そう、本人、もしくは彼の意思をつぐ人がうっているかのように。
あそこまでヒカルが怖い顔をしているのを和谷達はみたことがない。
「あれであの女の子、まだ十四、というんだから先がたのしみだね」
「でも、この説明によれば、あの子、この四月からプロになったばかりの新人らしいわよ」
そんな会話が会場内からきこえてくる。
事実、そうなのだから仕方ない。
つまりはプロになってまだ一年も経過していない新人棋士。
それが韓国で今もっとも有望視されているプロ棋士を圧倒的なまでの力の差で打ち破った。
これで興味を抱かない人は…いるはずもない。
しかも、ヒカルはその容姿からしてけっこう目立つ。
前髪部分のみ金髪にはえてくるその地毛も、その後ろに長くのばされている髪も。
それにともない、整った顔立ちに薄茶色の瞳。
だまっていればかなりの美少女。
そんな容姿の持ち主が有名な棋士をやぶったとなれば…話題が大きくなるのは…必然……
↑
こんな感じで。
はじめての北斗杯vですv
ちなみに、そのせ~で、彼はかなり世界各国からバッシングうけるハメに~
んでもまあ自業自得、ですけどね。(うんうん
言い訳みたいなことをしても、あんな場でいうことではなかった。
という国内からも批判の声が続出したのはお約束v
時期的には、十二月、という設定にしてあります。
つまりヒカルがプロになった年の十二月、なのですよvふふふふv
ではでは、また次回にて~♪
2008年8月21日(木)某日
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