まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

なぜか今朝がた。このヒカさんと○マさんコラボの夢をみていたり。
なぜに!?
ちなみに、ヒカルがユーリ(しかも女の子)アキラが村田君(こちらは男の子のまま)という夢でした~
しかもちらっとハラキヨびより?アキラも佐偽が視えてたりする、という(まて
佐偽ちゃんが異世界にいっておどろきまくる様が何よりもかわゆかったですv(まて
でもコンラッドはコンラッドのままだったなぁ(苦笑

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「韓国はまた力をつけたようだなぁ」
紙面をみつつおもわず唸る。
「ああ。日韓新鋭戦、ですか?確かに、日本はいいとこなし、でしたね」
何やら書類が山になり机すらもみえなくなっているようなとある一室。
週刊碁や、囲碁関係の出版物を扱う編集室。
そんな編集室の中で繰り広げられているひとつの会話。
「中国も強いよね。日中俊英戦は日本のストレート負け…」
「日中天元戦では塔矢名人が日本の面目をたもちましたけどね」
「日中女流戦では木之内さんの快勝、でしたよ?」
「日韓戦では倉田さんがけっこうがんばっていましたしね」
「だけど、トータル的に日本はおされてる、よねぇ」
「もう!天野さん!日本が少しばかり調子がわるいからって、みんなも何ですか!はい!写真できましたよ!」
「高橋君のいうとおりだけど、だけど、やっぱりこう、若い人がでてこないと囲碁界の気運がどうも、ねぇ」
「塔矢名人の息子に期待するにしても、子供ひとりじゃ、ねぇ?」
「ま、たしかに。一人では…ね。だけど、君たち?おそらく来年以降、面白いことになるよ?」
ふふっ。
どこかいたずらを含んだように怪しい笑みをうかべる。
『天野さん?』
その場にいる彼…天野以外、進藤光、という少年の存在を…知らない……

星の道しるべ   ~韓国研修生、洪秀英~

「しかし。さんきゅ~、塔矢」
「まったく。君はいつもいきなり、だよね?」
先週、というかこの日曜日にアキラの新初段としての対局があったばかり。
「でもさ。ついうっかりわすれててさ~。あいつおこったら面倒なんだよ」
すっかりアキラの対局のほうに気をとられていたがゆえに、
幼馴染のアカリの誕生日プレゼントを綺麗さっぱり失念していた。
すでに誕生日は過ぎてはいるが、それゆえにアカリの機嫌はものすごくわるい。
「だからってさ。昨日の夜、いきなり電話かけてきて今日の夕方つきあってくれ、はないんじゃない?」
まあ別に用事もないのできているわけなのだが。
それでなくてもここしばらくは院生になり、日曜日などにもどこかに遊びにいく、ということがなくなった。
家が近所であることから、学校でのこととかを暴露されたらこまることもヒカルにはある。
それゆえのワイロにちかい誕生日プレゼント、ともいう。
「でも、お前に相談して正解、だったなぁ」
「正確にいえば、母の意見、だけどね」
いきなり電話がかかり、何事か、ときけば幼馴染の子の誕生日を綺麗さっぱり失念していて機嫌をそこねたので、
誕生日プレゼントを選ぶのにつきあってほしい、ときた。
相手をきけばアキラもいく度かあったことのあるあの藤崎朱里、とのこと。
とりあえず、アキラにしても相談されてもそういったことは彼もまた疎い。
それゆえに彼の母親の明子に相談したアキラなのだが。
どちらにしても碁会所にいく予定だったこともあり、とりあえずつきあっているアキラ。
ついでに家の用事までたのまれてしまったのはまあしょうがない、といえよう。
誕生日プレゼントにかったのは、シルバーではあるが小さなプチネックレス。
女の子ならば対外アクセサリー類は好きなはずよ?
という明子の意見。
まあ、中にはアクセサリーにまったく興味を示さない子もいるにはいるだろうが。
シルバー、すなわち銀なのでプラチナや金などとは違い値段もかなりやすい。
以前、ヒカルが選んだ化学式の法則、という分厚い本をプレゼントしたときにはおもいっきり怒られたものである。
「そういや、塔矢、お前が用事がある碁会所ってどのあたり?」
『ヒカル、ヒカル。新しい場所にいくなら私はうってみたいですっ!』
何やらヒカルの知らない碁会所に何でも塔矢の父親関係で届け物があるらしい。
とりあえず交換条件でそれにつきあわされているヒカルなのだが。
「たしかこっちのほうのはずだよ?何か韓国からある人がきてるから、その人にわたしてくれって」
何でも父いわく、韓国棋院の人がいま、この日本にきているらしい。
何やら塔矢行洋として韓国の人から頼まれたものがあるらしく、それを渡してきてほしい、とのこと。
別に用事があるわけでもなし、そこにちょうどヒカルからの誘いというかお願い。
ならばさくっと用事をすませてしまおう。
とおもうのは人の心情として当たり前。
さらにいえば、ちょうどこの十四日がアキラの誕生日、ということもあいまって。
ならついでにアキラのお祝いもしてしまおう!
というヒカルの意見。
今日は十二月の十九日の土曜日。
土曜日なので学校は半日。
ちなみに今日は院生の手合いは棋院の都合というか手合いの間を使うとかでないらしい。
「あ。塔矢。あれじゃないのか?」
みればハングル文字で書かれている看板の下に、碁会所の名前だという柳、という文字。
「あ、一階にコンビニがある。ちょっと飲み物かってくるわ。塔矢。お前も何かかう?」
「そういえば、のどかわいたね。ちょっとよっていこうか」
見ればたしかに碁会所の一階はコンビニとなっているらしく、ちょっとしたものをかうのにはうってつけ。
そんな会話をしつつも、ひとまずコンビニの中にとはいってゆくヒカルとアキラ。
ガァ。
「いらっしゃいませ~」
入口をくぐると定員の明るい声がでむかえてくる。
「進藤、君、それのむの?」
「けっこういけるぜ?お前のんだことないの?」
ヒカルが手にしたのは野菜生活の紫シリーズ。
飲みやすいのでヒカルは結構きにいっていたりする。
「僕はあまり」
「なら、お前ものんでみろよ。別に体にわるいとかじゃないんだしさ」
むしろその逆である。
そんな会話をしていると、ふと棚の間をとおっている別の客の子どもの姿が目にはいる。
何か気に入らないことがあったのか、小さく棚をけって八当たり。
「って、おいっ!」
その反動で棚のいくつかの商品が下にとおちる。
「ちょっと、お客さん、そんなことされてはこまります!」
定員もそれにきづいて近寄ってくるが、その子供はそのままスタスタと立ち去ろうとしていたりする。
むか~。
「「おい!おまえっ!!商品を棚にもどして定員にあやまれっ!!!!」」
ぱしっ!
「進藤?」
めったなことではしないのであるが、さすがにこれはヒカルの許容範囲をこえている。
それゆえに声に霊力をこめて相手にと投げかける。
「・・・っ!?・・・!?・・・っ!」(な!?頭の中に声が!?何だこれ!)
何やら聞き取れない言葉を頭を多少押えていっている子供。
ヒカルがやった方法は、言葉に力をこめたゆえに直接、脳にと言葉を伝える手段。
この方法は声にださずとも意識することで相手にも伝えることが可能なのだが。
いかんせん、方法が方法である。
ヒカルはめったなことではこんなことはしない。
だがしかし、無視して立ち去ろうとする子供に我慢がならず、直接脳にと語りかけた、というわけなのだが。
「君!こんなことされちゃこまるよ!いいかい?これは売り物なんだよ?」
相手は子供。
それゆえにそんなことをいいつつも品物を片づけている店員の姿。
「あ、僕も手伝います」
そんな店員を率先して手伝っているアキラの姿が目にとまるが。
「「きこえてるんだろ!?あやまれよっ!!それとも何か!?子供だからって許される、とおもってるのか!?」」
きっと目の前の子どもをにらみつけて相手に指をつきつけていいきるヒカル。
『ヒカル~。その方法は普通は驚くのではないでしょぅか?たしかにこの子もわるいですけど』
生前、その方法は陰陽師からうけていたことがあるので何となくヒカルが何をしているのか理解して、
とまどいながらもヒカルに意見している佐偽。
「・・・!?・・・・・!」(こいつ・・・何なんだ!?えたいがしれない!)
相手からすればいきなり頭の中に声がひびいてきて、しかもそれがどうやら目の前の子どもの声らしい。
それくらいは何となくだが理解はできる。
「・・・!・・・っ!!」(僕がわるいんじゃないっ!けったらただおちただけだ!!)
得体のしれないものの恐怖、というのもは誰でももっている。
それゆえに、じりっとあとずさりながらも吐き捨てるようにと叫び、そのまま店をとびだすその子供。
「あ、おいっ!…あんやろぉぉ!!」
そんな子供の姿をみおくりつつ、おもわずそんなことをつぶやくヒカルだが。
「進藤。言葉がつうじてなかったみたいだし。あの言葉、どうやら韓国語、みたいだったね」
「ああ。ならこの上の階の関係者、かな?あとで上の人にいってもらっておくよ。
  でも、わるかったね。君、関係ないのにてつだってもらって」
定員とともに棚を片づけながらもそんな子供の姿を見送りつついっているアキラに対し、
ようやくのどおりがいってしみじみとそんなことをいっている店員の姿。
棚からしなものが落ちた、といっても完全にすべてがおちたわけではないので二人係りで直せばそうは時間はかからない。
しかし、落ちたのが普通というかお菓子の棚の品物でよかった、とおもってしまう。
一応包装されているので少々のことでは割れたりなどはしない。
これがもし、食品のタナとかならば下手をすればおおごとになっていたかもしれない。
「しかし、むかつくぅぅ!何なんだよ!?あいつは!自分がわるいのにそのまま無視していきやがって!」
「まあまあ、進藤。おちついて。たぶん、相手には言葉つうじてなかったようだし」
「言葉はつうじなくても直接たたきこんだから理解したはずなのにっ!」
「え?直接…って…?」
ヒカルにそういわれても、すぐにはピンとこないアキラ。
いくどか母親にそのようなことをされたことはあるが、それがヒカルとは結びつかない。
「何でもない。あ~、何かいらいらするっ!」
「まあまあ。とりあえず会計をすまそうよ」
とりあえず床におちた品物をきちんと元にともどし、苛立つヒカルをなだめつつも購入する品物を手にして会計をすます。
「上の階、か。今からいくところ、だよな?責任者の人つかまえてよくいっとかないと」
「まあ、たしかに。あの子はあれは完全にわるいけどね」
どちらにしろ今からそちらにいくのである。
何やらいいようのない苛立ちをかかえつつも外にとでる。
と。
「あれ?」
「あ?」
ふと店からでるとそこには何やら店の前にとたち、上をみあげている二人の姿が目にとまる。
「あれ~?和谷。それに伊角さんじゃないか!どうしたの?」
「「って、進藤!?…に塔矢!?」」
小さな紙を片手に二階をみあげているのは、ヒカルもアキラも知っている人物。
「というか、お前、何でこんなところに?というか塔矢と一緒って、お前……」
仲がいい、というのは知ってはいるが、それでもあきれずにはいられない。
「こんにちわ。えっと、和谷君。それに伊角さん、でしたよね。ちょっと二階に父の用事がありまして、おつかいです」
ぺこり、とそんな二人に頭をさげてきちんと丁寧に挨拶しているアキラの姿。
「俺はひっついてきてるだけ。それより、二人とも、どうしてこんなところに?」
「え?ああ。前にここの碁会所のことをおしえてもらったことがあってね。
  強い人とうちたいならばここにいってみなさい。ってそれできてみたんだけど……」
何でも話をきけば以前、どこかの碁会所にいったときに強い人と相手をしたいならばここにいってみたらいい。
といって地図をかいてもらったらしい。
それで土曜日、ということもあり二人してやってきたらしいのだが。
「塔矢。ついでにさっきのイライラ解消かねて一局うってく?」
「そうだね。それもいいかもね」
「…おひ」
そんな会話をする二人に思わずつっこまずにはいられない。
そもそも、この二人にかなう一般人などはっきりいっておもいつかない和谷。
それは伊角とて抱く思いは同じらしい。
「とにかく、和谷達もいくんでしょ?この二階?」
「「あ、ああ……」」
そもそもこんなところで塔矢明に会うなどとはおもってもいなかった。
すでにアキラはこの中では唯一、プロになっている子供でもある。
院生の彼らからすれば目標ともいえる存在になっているわけであり…
こいつ、そんなことみじんもおもってないんだろうなぁ~……
おもわずアキラと行動をともにしているヒカルに視線をむけてしみじみとおもう和谷。
事実、ヒカルはまったくもってそんなことは微塵も感じていない。
それがヒカルらしい、といえばヒカルらしい。
断る要因もみつからず、四人にて階段をのぼってゆく彼ら達。

きぃっ。
扉をくぐると普通の碁会所のイメージとかなり違う。
「あ、すいません。柳、さんいらっしゃいますか?届け物をあずかってきているのですが……」
とりあえず受付らしき場所にいる人物にと話しかけているアキラ。
「?君は?」
「塔矢明、といいます。父、塔矢行洋から預かりものをあずかってきました」
「ああ。君があの塔矢名人の。話はきいたことがあるよ。私が柳、だよ」
「リュウ?」
「表のハングルモジ、といいい。ここは韓国の人が経営してるお店、らしいね。
  店の中にいる人たちもほとんどが日本人じゃないし」
きょとん、と首をかしげるヒカルとは対照てきに、しっかりと状況をとらえてつぶやいている伊角。
「では、これを」
「たしかに」
何やら封筒らしきもの、らしい。
中身はアキラもしらないらしいが。
キィ。
そんな会話をしていると、また扉がひらき、はいってくる子供がひとり。
「ああ!?」
『あ、あの子はさっきの!?』
「・・・!?」(な!?)
みればさきほど、一階のコンビニにて棚をけったあげくにしなものをおとし、さらには逃げていった子供。
「おまえ!さっきの!何で定員にあやまらずにそのままにげたんだ!?」
まさかあえるとはおもわなかったので普通に相手に言葉をなげかける。
「?君?秀英が、何か?」
「?おじさん。この子のことしってるの?この子ったら下のコンビニで何がきにくわなかったのか。
  棚をけって商品をおとしたけあげくに店員にあやまりもしないで、しかも商品を棚にもどすことなくにげたんだよっ!」
「・・・・!?・・・・!?」(秀英!?ほんとうなのか!?)
ぴしっと指をつきつけてきっぱりはっきりいいきるヒカルの言葉に驚きの表情をうかべ、
何やら聞きなれない言葉で相手に問いかけているらしき、リュウ、となのった人物。
何やら二人して言い合いらしきものをはじめているが、ヒカルにはその意味はわからない。
「しかし。ここはたしかに、腕試しにはいい場所、みたいだな」
「だな。俺達院生の腕がどこまで世界に通じるか、試せるし」
え?
店内を見渡してそんなことをいっている伊角と和谷の言葉に一瞬二人にと視線をむけ、
「院生!?君たちが!?それはおどろいた。この子も韓国の研修生、なんだよ。
  でも、わるかったね。君、でも秀英がいってたのも気になるけど…
  とにかく、あとでこの子をつれて下の店にはあやまりにいくよ。
  このこは洪秀英。十二歳。私のおいっこでちょっと日本に遊びにきてるんだ」
「なあ?塔矢?研修生、ってなに?」
「進藤~!君は!ほんとうに囲碁界のことをもっとしらないと!
  いい機会だ。この冬休み、君にはみっちりと囲碁会の知識をおしえてやるっ!」
「げっ」
「し~ん~ど~う~。韓国の研修生、といえば俺達院生と同じ、なんだよ。
  日本では院生、韓国では研修生、とよばれてるんだ。同じプロを目指しているやつ、ってことさ」
アキラの言葉にたじろぐヒカルとは対照的に額に手をあてて溜息をつきつつも律儀に説明している伊角。
「韓国にもプロがあるの?へぇ」
「君は~。何で僕と対等、それ以上にもうてるのに!何でそんな基本的なことまでしらないの!?」
「しょうがないだろ!?まわりに詳しい人なんてまったくいないんだしっ!」
「それにしても知識が君はとぼしすぎるっ!せめて僕のライバルとしてふさわしくあってよねっ!」
「碁がうてれば関係ないんじゃ?」
「「「そういう問題じゃないっ!!」」」
感心することしきりのヒカルに対して、おもいっきり突っ込みをいれているアキラ。
最後のヒカルの言葉にきれいさっぱりとアキラ、和谷、伊角の言葉が綺麗に重なる。
「何だ?何だ?うん?ああ、君はたしか、塔矢名人の息子さん、だね。週刊碁でみたよ。
  プロ試験、合格したんだってね?おめでとう」
「え。あ、はい。どうもありがとうございます」
そんな会話をしていると、店の奥から一人の男性が出てきてそんなことをいってくる。
ざわっ。
「塔矢ジュニア、だって!?」
その言葉に店の中がざわめきたつ。
「・・・・。・・・・・。・・・・・」(ふん。韓国は日本のようにぬるくない。どうせプロでも弱いにきまってる)
そんな彼らの会話に吐き捨てるように何やらいっている洪、秀英、となのった子供。
「?何ていってるの?こいつ?」
「す…秀英!!」
相手に言葉が通じていないとはいえ、そんな甥の言葉にあわてざるをえないリュウ。
「彼はこういってるんだよ。韓国は日本のようにはぬるくない。どうせ弱いにきまってる、とね」
とりあえず、プロでも、という言葉はいくら何でもそれはない。
というのがわかっているのであえて翻訳せずに、きょとん、としているヒカルたちにといってくる一人の男性。
「むかっ!何だと!?そういうお前こそどうなんだよ!おまえこそあんな礼儀がなってんだからよわいんだろ!?」
「あ~…進藤、頭に血がのぼっちゃった。こうなったらとめられないんだよね……」
ヒカルの性格はとてもわかりやすい。
それゆえにため息をつかざるをえないアキラ。
「・・・?・・・・?」(何いってんだ?こいつ?)
「・・・・。・・・・」(彼は君がよわい、といっている)
「ちょっと!王さん!たきつけないでよ!」
しなくてもいい翻訳をしている客にたいしてあわてた声をだしているリュウ。
「・・・!?・・・・」(なんだって!?でもよわいやつほどよくほえる、というしな)
「彼はよわいやつほどよく吠える、といってるよ」
「王さんっ!」
「こりゃ、修復不可能、だな」
「だな」
あせる店主とは対照的にため息まじりにつぶやく和谷と伊角。
むかっ。
「「何だと!!そこまでいうなら一局うってみろよ!おまえのようなやつにはぜったいにまけないから!
  おまえのほうこそおもいっきりよわいんだろうがっ!!」」
きぃっん。
「っ!?」
「何、これ?」
何だか頭の中に直接響いてくるようなヒカルの声。
この場にいる全員の脳に響くような大きな声。
実際に脳の中に直接声をたたきこむ方法を特定の相手だけでなく無意識のうちに声に力をのせたがゆえに、
この場にいる全員にその声がとどいているのにほかならない。
耳鳴りのようにもにたその叫び声はこの場にいる誰の脳にも伝わってゆく。
「・・・っ!・・・!!」(・・っ!何だと!そこまでいうならうってやる!おまえのようなあやしいやつにまけるもんか!)
売り言葉に買い言葉。
とはまさにこのことをいうのかもしれない。
まただ。
またいきなり日本語はわからないはずなのにいきなり声が響いてきた。
それゆえに相手の子どもに畏れを感じる。
感じるが、だからといってそこまでいわれてだまっているわけにはいかない。
「すいません。彼、いいだしたらきかないんです。だけど騒ぎにならいかなぁ?」
「いや、塔矢。すでにもう騒ぎになってるから」
とりあえず店主に謝りつつもつぶやくアキラにたいし思わずつっこみをいれる和谷。
事実、この騒ぎはすでに店にいた誰もがききつけており、全員がこちらに注目している。
「だけど、進藤と韓国の研修生か…どっちががつとおもう?和谷?」
「そりゃ、進藤、だろ。あいつ、研究会につれてったらうちの師匠にすらかつんだぜ!?
  もうしんじられないったらありゃしないよっ!」
そのせ~で、いつも和谷に彼をつれてこい!
今度こそ!まけるものか!
と何やら師匠がいきまいている、という事情があるがゆえに和谷からすればたまったものではない。
「…森下先生に?…あいつっていったい……」
和谷の言葉に呆れる以外の何ものでもない伊角。
それだと自分たちが勝てないのも道理。
「何かさ。集中力が違う、とかいってたなぁ。最近も師匠も対局するときにはひっしにやってるみたいだけど」
それで最近勝敗はわからなくなってきているのも事実。
それでも、先生曰く、進藤のやつ、さらにのびていっているらしいけど。
それがこわくてたまらない。
ふとみれば、いつのまにか二人の対局は決定事項らしく、それぞれが席にとついている。
何やら面白そうなことがはじまっている。
というので和谷達三人以外はいつのまにかその席の周囲にむらがっている様がみてとれる。
「そういえば。塔矢君はどうする?」
「そうですね~。そういえば進藤が最近僕以外との対局するのみたことないですし。少しばかり興味はありますね。
  そういえば、あの彼ってどれくらいの強さ、なんですか?リュウさん?」
とりあえず、何やら信じられない会話をきいたような気がするので唖然としているリュウにと問いかけるアキラ。
「今のあの子じゃ、君にすら勝てる、というあの子はかてない、だろうね。技術以前の問題に。
  今のあの子は…ねぇ。今、彼はつまづいてしまってるから。
  韓国の研修制度はしってるよね?君たちは?」
「あ、はい」
「たしか。一組から十組まであって一クラスが十名。でしたよね?」
「日本は一組と二組、だけだけどな」
リュウの言葉にうなづき、思い出すようにつぶやく和谷に補足説明している伊角。
「あの子は順調にかちすすんでいったよ。だけども初めてクラスがさがってしまって。
  それだけであの子はくさってしまったらしく、次の月もクラスをさげた。
  結果は誰もが合格確実、といわれていたプロ試験すらおちてね。
  これはちょっと息抜きさせたほうがいい、というので彼の父があの子を私のところによこしてるんだよ」
そんな会話が耳にとはいったのか、
「レベルが違うよ!リュウさん!韓国は棋士を目指す子が日本よりおおい!強さは日本と比較にはなりませんよっ!
  それに、この子の対局…たい…きょく?」
ちらり、と盤面に目をやりおもわず目をみひらき、それから先の言葉をなくす。
「とりあえず、みてみるか?」
「結果はわかりきってるとおもうけどな~」
「だけど、確かに興味あるよ」
どうやら何かがおこっているらしいのは明白。
それゆえに顔を見合せて、ヒカルと洪秀英という少年が対局しているほうにとむかってゆく伊角、和谷、アキラの三人。

何なんだ?
何なんだ、こいつは!?
韓国にプロがあることすらしらなかったらしい目の前の子ども。
しかも意味不明の謎の力すらもっているとしかおもえない。
そう、まるで物語などでみる導師に近いような力なのかもしれないが。
そんなことはどうでもいい。
こんな無知ともいえるヤツにまけたくない!
イライラする。
何もかも。
それでやつあたりをした。
やつあたりをしてモノがおちて壊れればすかっとするかとおもったのに。
さらにイライラがましただけ。
一手、一手に気が抜けないどころか完全に自分を圧倒している。
負けたくない。
こんなところで負けたくない。
こんな意味のわからないやつにまけたくない!
「・・・!・・・!」(でもこんなところで負けたら僕もおわりだ!負けたらお前の名前をおぼえてやる!)
それは自分にむけての言葉。
まだ局面は始まったばかり。
それでも圧倒的な差は彼でもわかる。
それでも自分の力に自信があるがゆえにまけられない。
「?あの?彼は何といってるんですか?」
言葉がわからないがゆえにとりあえず近くにいる大人にとといかけているアキラ。
「彼は、自分がまけたら相手の名前をおぼえてやる、といってるんだよ。
  しかし、この相手の子…すごい集中力だ」
「彼は対局はじまったら僕もですけど。周囲の雑音、一切耳にはいりませんから」
事実、その点はヒカルもアキラも似た者同士。
それゆえにヒカルは相手の言葉はまったくもって聞こえていない。
盤面に一点集中。
ヒカルとてあんな態度をしめした子供を許しておけない。
だからこそ意地になる。

キィ。
ざわざわざわ。
扉をくぐると何やらざわざわと騒がしい。
「?どうかしました?何かあるんですか?今日は?」
何やら聞きなれた声を耳にして、ふとそちらのほうにと視線をむける。
「あれ?尹先生?」
「って、塔矢君?君、どうしてこんなところに……何かやってるの?」
彼がここにいる、というのはあまり信じられない。
そもそも彼はすでにプロ試験にうかったはずである。
こんな場所にふつうはこないであろう。
だからこその、海王囲碁部顧問、尹の問いかけ。
「進藤と、韓国の研修生が一局うってるんですよ」
「え?」
そういわれて興味を抱かないわけはない。
あわててそちらのひとだかりのほうにとかけよってゆく尹。
みれば圧倒的に白、優位。
どうやら進藤君が白、のようだけど……
相手の黒がひっしでくらいつこうとしているのが目にみえる。
『相手のこの子、面白い一手をかえしてきますねぇ。ヒカルもそれにまったくまけてませんし♪』
視ていてこころが踊る、とはまさにこのこと。
塔矢達との対局と違い、この対局相手の子どもはかわった手をひねりだしてくる。
それは絶対にまけたくはない、という気合からなのであろうが。
ヒカルにゼロから碁を教えている佐偽からすればヒカルの成長ぶりがとても喜ばしくもある。
子供、というものは伸びるときにはものすごく一気にのびる。
そのいい例がまさにヒカル、という子供。
『ふっ』
「ふ」
「え?」
「?」
ぱちっ。
ヒカルがうった手をみて笑みをうかべている佐偽とアキラ。
それ以外のギャラリー、ましてや対局している相手も何やら余裕の、しかも馬鹿にしたような表情をしているのがみてとれる。
『どうやら。塔矢もヒカルの狙いに気づいたようですね。しかし、この場で塔矢以外に誰も気づいてない、とは……』
この場で今のヒカルの一手の意味を理解しているのはどうやら塔矢明、だけらしい。
相手の子どもにも今まで余裕のなかった表情だったのに余裕がでてきたようにもみえているが。
それはかんぜんに局面をよみきっていない、という証拠。
『ふっ。まだまだ、ですねぇ』
先手をかけて必要な場所に一手をうちこむ。
それは後々の戦いにおいて有利となる。
打てるときにうっておく。
これは常識。
それがどうやら塔矢明以外の人々はまったくもって気づいてすらいないこの現状。
パチパチ。
しずかに碁石がたたきつけられる音のみがその場にひびきわたってゆく。

「…あ」
「…え?」
「……うっ」
局面が進むにつれて短い声をあげている和谷と伊角。
そしてまた対局相手のスヨン、とよばれている子供。
『どうやら、ここにくるまできづかなかったようですねぇ』
まだまだですね。
この子も。
「そうか。さっきの一手はここの左上の攻防をにらんでの手だったのか!」
「進藤にしてはめずらしく悪手、とおもったのに…なるほど」
「?お二人とも、きづいてなかったんですか?打てるときに絶好の位置にうっておく。常識では?」
さきほどの一手の意味にようやくきづき、おもわず叫ぶ伊角と和谷の言葉にきょとん、とした声をだすアキラ。
「たぶん、それに気づいてたの塔矢君だけだ、とおもうよ?みなさんもきづいてないみたいだし」
みれば誰もがその事実に気づいて唸り声をあげている。
それゆえにそんなアキラにいっている尹。
「あ、あの一手をうったときにここまでよんでいたのか!?日本のこの子は!?」
「しかし、黒、圧倒的不利だというのに、洪君も負けずとよくがんばってるよ」
対局している最中、そんな声が周囲から秀英の耳にと聞こえてくる。
わかってるよ!
圧倒的に自分が不利のは!
くやしいが、みとめざるをえない。
それでも、ぜったいに挽回してみせる。
もはや意地、である。
いくら何でも中押しで負けを宣言などしたくない。
『この子供も意地、ですねぇ。たしかに挽回の策はまだまだありますけど』
しかし、この子供がそこにいたる道をみつけられるかどうかは不明。
先ほどの一手の意味もよめないようであればそこにたどりつくのは無理であろう。
「でも、まだ相手のほうによりますけど、一目くらいまでにおいつく手はありますけどね」
え!?
さらっというアキラのセリフに思わずその場にいた誰もがおもわず彼のほうをみやる。
「彼は?」
「さあ?」
「そういえば、週刊碁でみたことが。たしか塔矢名人の息子さんのはずじゃあ?」
「じゃぁ、今年からプロになったとかいう期待の星かい!?」
たしか大々的に初戦からして勝ちをおさめ堂々の門出!とか紙面をにぎわしていた。
それゆえに日本のその手の紙面に目をとおしたことがあるものならば大概は知っている。
何しろしっかりと写真入りで掲載されるのだから知っていて当然といえば当然。
そんな会話が耳にとはいるが、そんな手はおもいつかない。
そもそもそんな手があるかすらもわからない。
ただわかるのは、どんどんひきなされそうになってゆく差をどうにかくいとめることに必至。
しばし、ざわざわとしたそんなギャラリーの思惑とは対照てきに局面は先に、先にと進んでゆく……

「進藤の六目、勝ち、か。コミをいれたら十一目半……すえおそろし~やつ……」
対局がおわってみれば、ヒカルが白であったがゆえにコミが五目半ほどかかる。
そのコミをいれなくてもヒカルの圧倒的勝利。
「いやぁ、大接戦、だったね!」
「たしかに。黒もよくうちましたよ!徐番の圧倒的力の差からどうにか僅差までもちこみましたし!」
「黒の攻めもみごとだったが、それをかなり白がうわまわっていたね」
ざわざわと、何やらそんな会話をしている周囲の大人たち。
「秀英」
みれば負けたほうの黒をもっていた洪秀英は座ったまま、その体制のまま涙をながしているのがみてとれる。
それゆえに声を何とかけていいのかわからない柳。
く…まけた…まけたっ!
「く…ウワアアツ!」
こんな悔しい対局を今まで一度もしたことがなかった。
圧倒的なほどにみせつけられた力の差。
だがしかし、これがもし佐偽がうっていたとすればもっと彼は屈辱をあじわっていたであろう。
ヒカルがうったからこそ、まだコテンパに一刀両断…とまでにはいかなかっただけ。
投げやりな碁ばかりをうっていた。
自分より強いやつなんかいるはずがない、そうおもっていた。
初めてクラスおちして、おちこんで…周囲にあたりちらしもした。
そんな自分に挑戦的にしかも不思議な力でいきなり声をたたきつけてきた目の前の子ども。
韓国のプロのことすらしらない、という無知さなのに、この圧倒的な力の差。
日本の棋士はモウダメだ、と自分ではおもっていたのに。
くやしい。
くやしい、くやしい、くやしい!
何が悔しい、とは彼がいともあっさりと自分の上をはるかにいっている、ということを思い知らされた。
自分がいままで井の中の蛙状態であったのが思いさらされた。
だけども…次こそは、次こそはまけない!
今度は今までのようになげやりにうたずに、きちんと勉強し、精進して。
今度対局するときは、こいつにかてるように!
今度日本にくるときにはプロになって!
「・・・!・・・!?」(おい!おまえの名前は!?)
「?」
相手が涙をふきつつも、何かいっているらしいがヒカルにはわからない。
「進藤君。この彼は君の名前をきいてるんだよ」
「って、あれ?あ、海王の囲碁の先生?いつの間に?」
いや、結構序盤からいたんだけど…
どうやら今さら自分の存在に気づいたらしいヒカルのそんな台詞に苦笑しつつ、
「君と彼との対局をみていたんだよ。それより彼は君の名前をしりたがってるみたいだよ?」
「?そうなの?俺の?」
何で?
ヒカルにはその意味がよくわからない。
『ヒカル。おしえてあげればどうですか?』
心が躍る一局ではあった。
ヒカルのほうが圧倒的に上にいっていたとはいえ、相手の子どもが面白い手をうちだすたびに応じたヒカルの手。
だからこそ佐偽もいわずにはいられない。
おそらく、目の前の子どもはこれからもっとのびてゆくであろう。
負けた悔しさをばねにして。
「でも言葉つうじないんだったっけ?」
『みたい、ですねぇ。ヒカル、力の使いどころは気をつけてくださいね。さきほどのアレは、私も頭いたくなりましたから』
そ~いえば。
さっきはあまり腹がたって特定せずに考えずに言葉に力を上乗せしたっけ?
佐偽の言葉にようやくそのことに思い当たり、
「「俺の名前は進藤光」」
完結にとりあえず目の前の子どもにのみ対象をむけて言葉に力を上乗せして名前を名乗る。
「シンドウ…ヒカル……」
「洪君……」
彼を買っていただけに、この負けようは信じられない。
というか日本の子供に彼をこてんぱにまかすような存在がいたとも信じらない。
それゆえに、ヒカルを挑発するように翻訳してきていた男性が戸惑いの声をあげる。
「王さん。涙をこらえられないくらいくやしいらしい。でも、それでいいんです。
  調子よくあがってきた彼はクラス変えがショックだった。
  そのみじめさから目をそらしたかった。にげたかった。そして悔しさから向き合うことにも逃げた。
  だけど、もう大丈夫。明日は韓国にかえるけど、秀英はこれからさらにのびるでしょう」
そんな彼にとこの店のマスターらしきリュウ、という人物が話している。
「調子よくあがる、という点ではお前も同じだよな~。いまだに負け知らず、だし」
「そんなことないよ。いっつも佐偽にはまけっぱなし!!ああもう!はらたつ!
  しかも、さらに力つけてってるし!手加減されまくってまけてるんだぜ!?くやしいったらないよっ!」
「おまえ、絶対にあのネットのsaiは特別だってば……」
言葉ではその意味はわからない。
だからこそ、和谷はヒカルのいう佐偽はネットのsaiを示しており、ヒカルはネット対戦をしている。
とおもってもいる。
まあ、彼の周囲をちょこっと調べてみても、彼がどこかの家によったり、病院通いしていたり。
というのがない、というのできちんと向き合って対局している、という可能性をどうにかあきらめたのだが。
真実は、和谷がはじめにおもったとおり、毎日、佐偽とヒカルは向き合って打っているのだが……
『でも、ヒカル。ヒカルにいわれて本気でやったら中押しまでは最近はいけますよ?』
ダメおしをどうもありがとな。
たしかに、最近はどうにかこうにか中押しまではもっていけてはいるが…だが勝てないことにはかわりがない。
だが、あのネットのsaiを基準にしているのならば、進藤のやつが自分の実力に疑問をもっているのもうなづける、よな。
などとしみじみどこか納得する和谷。
「ああ、あのネットの?私もうったよ。彼はつよいね~。観戦もよくしてるけど負けしらずだし」
「そういえば、いまだにあのsaiの正体はわからないんでしたっけ?」
ざわざわざわ。
どうやらこの場にもネットの中のsaiのことを知っている人たちはいるらしい。
尹の言葉にその場がざわめきだす。
あのsaiの手と進藤の手がよくかさなるんだけどな……
というか、進藤の直感打ちの手はまちがいなくsaiの手筋そのもの、なんだけど。
そんな彼らの会話をききつつも、心の中でおもいつつ、横にいるヒカルをみているアキラ。
「しかし。尹先生。先生はよくここにくるんですか?」
「そういう君は?君はもうプロになったのに?何で?」
「今日は進藤とでかけていたんです。それで父の用事がありまして、おつかいです」
「なるほど」
たしか、ここの店主は韓国棋院の運営にもかかわっている一人でもあるし。
その関係なのかな?
そうおもいつつ、一人納得し、
「しかし。進藤君にはおどろかされるよね。小学生の時に見た彼の局面にもおどろかされたけど」
「ええ。僕も彼には圧倒されてますよ。いい勉強になってます」
「まあ、私としたら君と対等な子供がいた、というほうがよほど驚異だよ」
しかも、目の前の子どもには師匠がいない、という。
それで驚かない、というのはどうかしている。
「「あ。そうだ!おまえ、ちゃんとあとで下の店の人にあやまっとけよっ!」」
とりあず肝心なことをいっていなかったのを思い出し、とりあえずいまだに泣きやまない相手にとくぎを刺す。
「それは私も一緒にいってあやまるよ。悪いのはこの子、だしね」
彼から秀英が下のお店のタナをけって商品を落としたときいたときにはたまげたが。
ヤツアタリ、にもほどがある。
目の前の子どもが怒るもの当然、といえば当然のこと。
「小学生?尹さん、彼小学のときに何かしたの?」
「?彼、小学生じゃないの?」
ぐさっ。
『ヒカル、いわれてますね~。たしかにヒカルは他の子より背はひくいけど……』
身長からしてどうやらヒカルは小学生、とおもわれていたらしい。
「彼は今は中学一年、ですよ。こっちの塔矢明君と同い年、ですから。
  それがですね、彼、小学六年のときに中学の大会に偽ってでてきまして。そのときの局面がすばらしかったんですよ」
あれってでもうったの佐偽なんだけど。
そんな尹の会話をききつつも、心の中でおもいっきりつっこみをいれているヒカル。
「そういえば、今の俺でもあんなのできるかなぁ?」
とりあえず小声でぽそっと隣にいる佐偽にとといかける。
『では、ヒカル?今日の対局は局面つくりやってみますか?』
「それもたのしそう。よし、やるか」
「?おい。進藤?何一人ごといってるんだ?」
何やら小さくひとりぶつぶついっているヒカルにきづき、怪訝そうにといってくる和谷。
こいつ、ときどきそ~いうところがあるよな。
まあ、一人っ子、というのは独り言をいう癖がおおい、っていうけどこいつもその口なんだろうけど。
和谷的にはヒカルのことをそう捉えている。
事実は佐偽と話しているのだが、視えない以上、わかるはずもない。
「まあまあ、君たちも、せっかくきたんだし。一局うってくかい?席料はサービスしとくよ?」
そんなリュウの言葉に思わず顔をみあわせ、
「「やりぃ!」」
おもわず飛び上り同時に声をあげている和谷とヒカル。
「すいません」
一人、冷静にそんなリュウにと頭をさげてお礼をいっている伊角。
「でも、いいんですか?」
「何の。プロとなった君からは逆にこっちがお金をはらわないといけないのに」
アキラの素朴な疑問に笑みをうかべて返事を返す。
「シンドウヒカル!・・・っ!」(シンドウヒカル!もういっきょく!)
「?」
名前をいわれたのはわかったが、それでも何をいっているのかはわからない。
「スヨンが君にもう一局ねがってるけど、どうする?」
「どうするって…」
そうだ。佐偽。お前、うつか?
『え?』
最近、お前俺以外の人と対面してうってないしさ~
この前の院生手合いのアレは対局、という対局でもないような気がするし。
こいつ、そこそこ腕あるみたいだし。
まあ、お前には到底およばないけど。
ヒカルにすら及ばなかったものの、たしかに面白い手はかえしてきていた。
だからこそ、佐偽でもそこそこ遊びの一手を試せる楽しみができるのでは、とおもってのヒカルの提案。
『やりますっ!』
よっし、きまりっ!
「あ、ならやります!今度はちょっとかわった形で」
「そういえば、君たち、院生、だってね。どれくらいつよいの?」
「塔矢ジュニア!ぜひ、指導碁をおねがいしますよっ!」
こんな機会はめったとない。
それゆえにいつのまにかそれぞれ大人たちに囲まれている和谷達の姿が目にはいる。
塔矢明のみは指導碁などをせがまれたり、あげくはサインをもとめられたりしているようだが。
ともあれ、しばらくの間、ヒカルたちは、碁会所、柳においてしばし碁をたしなんでゆく……


                                -第36話へー

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あとがきもどき:
薫:ちなみに、アカリちゃんの誕生日の公式設定さんはwikiさんでは不明……
  なので、花言葉というか誕生花でいかせてもらいました。十二月の十七日。
  花言葉は、片思い、親切、丁寧…なベゴニア、です。
  ちなみに、2009年で考えれば月曜日にあたる塔矢明の公式誕生日、十二月十四日。
  この日の誕生花は、つるうめもどき。
  花言葉は「大器晩成」…う~ん、さすが作者!とおもわずうなったりv(笑
  さらにいえば、もしかして作者、花言葉から誕生日設定したのでは?
  とおもえるのが、ヒカルの誕生日。
  九月の二十日。
  この日の誕生花はひがんばな。花言葉は・・・悲しい思いで。です・・・
  十二月の十三日に初雪。
  というのは早いような気もしなくもないけどまあ異常気象なのでそれもありえる…とおもってくださいv(まて
  何はともあれ、ではまた次回にてvv

2008年8月19日(火)某日

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