まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

今回で試験結果までいきたかったんですけど。
どうもけっこう長くなりそうな予感……
長くなりすぎたときには小話はおあずけです(笑
さてさて、何はともあれゆくのですv
しかし、長くなってきたから題名リンクに副題…いれるかなぁ?

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あれから毎日考えた。
たどり着いた答えはどうしてもひとつに絞られる。
ネットの会話をするのも大変、という相手とそう頻繁にはなせるだろうか?
可能性とすれば、当人とあって話している、という可能性のほうが高い。
きっと進藤のやつはsaiがだれか、知っている。
パソコンの画面をみつつも強くおもってしまう。
saiのことを話しているチャットにいっても子供がかかわりあるかもしれない、というような会話がなされていた。
そんなバカな。
という会話もあるにはあったが、たしかにあの子供ならばかかわりあいがあるかもしれない。
という意見。
それらすべては今年のアマチュア囲碁選手権にやってきた選手たちの意見らしい。
きけば、あのとき大会にいた子どもは…ただ一人。
進藤光。
彼のみ、なのだから。

星の道しるべ   ~一組と疑念~

たったったっ……
足も弾む、というもの。
「和谷!!」
「?進藤?どうかしたのか?」
昨日送られてきた封筒。
いつものように対局表のところにいき、そこに見慣れた顔をみつけて声をかける。
「みてみて!俺、今日から一組!一組だぜ!?」
いいつつも、一枚の紙をみせる。
「…どれどれ?」
そろそろくる、とはおもっていたが、けっこう早い。
ヒカルがとりだした紙をのぞきこみ、その順位を確認する。
そこには、一組の一番最後に進藤、の文字がみてとれる。
「一組の一番最後、かぁ。でも進藤、あがってくるの早かったな」
「ふ~ん。どんけつ、だがな」
「和谷君。おめでとうくらいいってあげなよ」
幾度も碁会所めぐりをした仲間、というものありかなり仲良くなっているのも事実。
伊角がいい、和谷がぶっきらぼうにいい、福井がたしなめる。
どうやら彼らはそういう関係らしい。
「でもすごいよ。進藤君。この前院生になったばっかりなのに」
確かにヒカルが院生になったのはこの八月。
一月足らずで一組にあがっくてるなどあまりない。
もっとも全戦全勝しているのでそれも当たり前、といえば当然だが。
「へへ~。よぉし!でもこれで近づいただろ!?」
「はいはい。塔矢明に…だろ?でも、わかってるのか?進藤?」
「何が?」
わかっているのかいないのか。
きょとん、とするヒカルの様子に危機感というかそういうものはまったくない。
「今日から進藤。お前の相手は俺達、一組なんだぜ?」
「え?」
いわれてきょとん、とするしかないヒカル。
「もう。みんな。プレッシャーかけないの」
そんな会話をききつけて、奈瀬もまた会話にとまざってくる。
「いっとくが。一組は二組ほど簡単じゃないぜ?」
暗にヒカルが相手にあわせてうっていた、ということを踏まえて忠告する。
そのことは他の子たちの気力低下にもつながりかねないので和谷は他言していないが。
「ま、よろしくな」
「よろしく」
幾度か一緒に碁会所めぐりしたことがあるメンバーがいつのまにか集まってきている。
ヒカルが碁会所めぐりをしたのはほとんど一組のメンバーばかり。
「ようこそ。一組へ」
『ほら。ヒカル。しゃんとして』
そんなヒカルに対し、かるくぱんっと肩をたたく佐偽。
「よ、よろしくおねがいしますっ!」
佐偽に促され、ようやくはっとして大きく頭をさげるヒカル。
「へぇ。新しく一組にきた子がいるんだ~」
何やら聞きなれない声がする。
「…げっ」
「真柴のやつ、きてたのか……」
何やらものすごく嫌そうな声をだしてそちらのほうをみている奈瀬と和谷。
みればみたことない人物が一人、そこにたっていたりする。
「…誰?」
「真柴充。進藤君。こいつと打つときだけはおもいっきりいっちゃっていいからっ!」
うんうん。
おもいっきり奈瀬の言葉に周囲にあつまっていた一組の生徒たちがおもいっきりうなづいているのが見て取れる。
「?」
意味がわからずにきょとん、とするヒカルであるが。
「まあ、一組のドンケツだとすぐにまた二組にもどるだろうけどね~」
何だか口調がとても嫌味口調。
「真柴!そういうけど、あんたは進藤にこてんぱにやられちゃえばいいのよ!
  進藤君が院生になったのはこの八月!もう一組昇格してきてるんだからねっ!
  あんたなんかひとひねりよっ!」
「どうだか。二組はしょせん、二組での成績、だしねぇ。それに再来月にはもう僕、ここにはいないし」
むかっ。
何やらつっかかってゆく奈瀬に対し、嫌味っぽく笑いながらそんなことをいってくる。
傍目からみていても何だかとても嫌味な人物、としか到底みえない。
「いっとくがな!真柴!こいつはあの塔矢明が唯一みとめてるやつなんだぞ!?」
いきなりがしっと肩をつかんでぐいっとヒカルを前につきだしそんなことをいっている和谷に思わず戸惑ってしまう。
いったい全体何がどうなっているのかヒカルには理解不能。
「それはただの噂、だろ?ま、お手並み拝見、だね~。さ~て、とっととおわらせて試験にそなえるか」
「きぃぃ!むかつくぅぅ!」
「進藤。本気であいつと対局があたったら森下先生のときみたいに本気でいってやれっ!」
一人、じたばたしつつも叫んでいる奈瀬とは対照的に、がしっとヒカルの肩をつかんでいってくる和谷。
『あのもの。言い方に問題がおもいっきりありますね』
「同感」
佐偽の言葉にしみじみうなづく。
おもいっきり初対面、というのに相手を見下したその言い回し。
「よし!約束だからなっ!」
ヒカルからすれば佐偽の言葉にうなづいたのだが、和谷からすれば自分の言葉に同意した、ととらえていたりする。
「そういえば、進藤君との初対決、誰?」
「…奈瀬。俺だよ」
ヒカルの力は無理やりつれまわされたといっても過言でない碁会所めぐりで何となくだがわかっているつもりである。
それゆえに警戒せざるを得ない。
「あ。飯島、なんだ。ま、がんばって。今日の対局は二局。進藤の相手は飯島と…」
「あ、僕だ~」
対戦表をみてみれば、どうやら今日は知りあいとばかりらしい。
「今日は飯島さんとフクなんだ。よろしくおねがいしますっ!」
「進藤君、おてやわらかに~」
まだ、こいつとは実際に対局したことはないから要注意。
そうおもいつつ警戒する飯島とは対照的に、にこやかに手をさしのべてきている福井の姿。
「さ。それより、進藤。お前も碁盤だすのてつだえ!」
「あ、は~い」
たしかにまだ全部の碁盤がだされていない。
碁盤をだすのも片づけるのも生徒の役目。
それゆえに、碁盤をだす手伝いを始めるヒカルの姿がしばし、一組の間においてみうけられてゆく。

あ。
結構楽かも。
二組のときと違い、下手な手をどうするか考えなくてすむ。
それゆえにかなり相手の棋力にあわせてうつのは難しくない。
対局時間は一時間。
二組のときには四十分ほど持ち時間であったが。
『しかし、この人、長考ばかり…ですねぇ……』
確かに。
こっちがつかれちゃうよ。
前半にて相手の棋力はだいたいつかめた。
それゆえに途中から打ち方をかえてみた。
それから何やら長考時間が伸びているような気がするのは気のせいではない。
佐偽のつぶやきに思わず心の中でおもいっきり同意する。
対戦相手の飯島からすれば目の前の子ども、進藤光にたいして警戒を抱いているがゆえに慎重な一手をうっている。
そのつもり。
だがしかし、いともあっさりとたしなめられるように回避され、
さらにはおいついてきてください、とばかりの手をうってくる。
気付けば対局時間が残りすくない。
それゆえに。
「……まけました……」
気付けば時間オーバー。
盤面上はまだまだ中盤にもさしかかっていない。
「まだ盤上途中なのに…飯島さん、長考がながすぎたんじゃあ?」
「え?あ。ああ。ちょっと…な」
まさか警戒していたから、とは意地でもいえない。
高校生の自分が中学生、しかも彼相手に恐れていた…とは思いたくない。
それでもやはり、さきほどの和谷がいった塔矢明がライバルとみとめている子。
その言葉が彼の心に大きくのしかかっているのも事実。
彼は試験のさなか、塔矢明と対局しおもいっきりぽろまけしてしまった。
それゆえの警戒。
じりりりり……
そんな会話をしていると、対局の間にベルが鳴り響く。
「はい。一度めの対局はやめてください。二局目にうつりますよ?勝った人は対戦表に結果をつけてください」
その言葉をうけて、わらわらと対局表の元にとあつまる生徒たち。
「進藤君。おてやわらかにね~」
「こっちこそ」
いいつつも互いに向き合い碁盤を囲んで座り込む。
「そういえばさ。来月からまた新しい院生の子がくるらしいよ?」
「え?」
いきなりそんなことをいわれて思わず福井の顔をみつめるヒカル。
「篠田先生がいってたもん。九月の院生試験がこの前の土曜日にあったんだ」
「へ~」
試験が行われている間の院生手合いの曜日は月曜、水曜、金曜日の三日間。
いつもは土曜日、日曜日が主なのだが、その日は手合いの間は試験会場として使われている。
どうやらその合間に院生試験が行われたらしい。
「進藤君みたいな強敵がまたはいってくるのかなぁ?」
「強敵って。俺はまだまだだよ。勝てないやつ、いるもん」
事実、今だに佐偽には手加減されまくって一度もかてないし。
いつになったらおいつくことやら。
しみじみおもっておもわず溜息がでてしまう。
『まあ、年期が違いますから』
そりゃぁなぁ。
お前は千年以上も囲碁のことばっかりだもんな。
「はぁ~……」
「塔矢くん?」
盛大にため息をつくヒカルに対し、きょとんと首をかしげて勝てない、という相手はあの塔矢君のことかな?
そうおもい問いかける。
「ううん。あいつとはほぼ五分五分で勝率わけあってる。ちなみにいまのところ俺のほうが四勝勝ってるけどさ」
さらっといわれるその言葉におもわず目を見開いてしまう。
やっぱり。
進藤君ってかなりつよいんだ。
塔矢明と手合せしたがゆえに相手の強さはわかるつもり。
その塔矢明にかったことがある、というのだから目の前のヒカルの棋力はおしてしるべし。
「いっつもそいつにはぼろまけでさ~。もう、嫌になるほどに。
  そういや、緒方のおじさんが間にはいってくれなかったら、俺もこの九月の院生試験になってたんだよな~」
あのとき、緒方がいなければおそらく門前払いをうけていたであろう。
その点は緒方のおじさんには感謝だよな。
当人の前でおじさん、とは禁止されたのでいえないが。
「へぇ。進藤君でも勝てない人がいるんだ。そういや、緒方先生とはどういう関係?」
「塔矢んちで幾度かあったことがあるんだ」
つまりそれはいく度も家にいったことがある、ということ。
「そこ!話してないで対局をはじめなさい!もう対局ははじまってますよっ!」
そんな会話をしていると篠田から注意の声が投げかけられる。
「まず」
「じゃ、始めようか。進藤君」
「だな。よろしくおねがいします」
たしかにみればすでに周囲は対局を始めている。
それゆえに会話をとめて互いに対局を始めるヒカル達。

フクって初めて対局するけど、全然長考しないんだなぁ。
飯島さんは長考しまくって時間切れになったけど。
しかし、やはりさくさくいくほうが打ちやすい。
感覚でいくほうが相手の棋力にあわせるにしても結構ヒカルからすれば楽なところがある。
『早打ちでの相手の棋力にあわせての力はヒカル、だいぶついてきてますね』
やはり碁会所での多面打ちの持碁がけっこう勉強になってますね。
そんなことをおもいつつも、ヒカルにと話しかける。
そんなものなの?
『そんなものです』
しかも対局中に他に意識がいくほどに余裕があるのも実力がついてきている証拠。
「よっし!半目!」
「まけた~」
「あ、ごめん」
早打ちなので半目勝ちできるかどうか多少不安だったが終局してみれば半目でヒカルの勝ち。
「いいの、いいの。進藤君があそこもってっちゃってもう細かくなってもうわけわからなかったよ」
そりゃ、フクにあわせて打ってたし。
その言葉はかろうじてのみこみ。
「フクってさ。打つの早いよね」
「うん。みんなそういうよ。ねえ、もう一局うとうよ」
「そうだな。時間もあるし」
『ヒカル、私もやりたい……』
確かに、勝敗に関係ない対局ならば佐偽に打たせても問題はないであろう。
まあ、佐偽も視てるだけ、というのもつらいだろうしなぁ。
じゃ、次、佐偽、お前やるか?
『はいっ!!』
ぱたぱた。
何か幻影でしっぽをおもいっきり振っているように視えたような気がするのは気のせいか。
絶対にしっぽがあればおもいっきり尾をふってるぞ、こいつ。
ぱぁっと目を輝かせて返答してくる佐偽を視て苦笑がもれてしまうのは仕方がない。
「碁ってさ、面白いな。盤面の上でいろいろと模様できるし」
「うん。和谷君もそういうよ」
しかし、そのようにできるのは実力があるからこそ。
普通はそんな基面はできはしない。
「和谷ってつよいの?」
「うん。強いよ。でも僕、そんな和谷君にかっちゃうんだ」
「へぇ。じゃあ、和谷を負かすフクにかつななんて俺ってけっこう実力ついてきてるのかなぁ?」
「塔矢くんと相手できるので十分に実力あるよ」
まったく自覚がないらしいヒカルに対し溜息をつかさざるを得ない。
今ですら相手におもいっきり翻弄されている、というのに。
つまりそれは先ほどのはかなり実力を押さえて打っていた、ということなのだろう。
『三の四』
ぱちっ。
「しかし、フク、おもいっきりここ、ひろげてきてるなぁ」
「ここは僕の広野だもん。僕の大地。進藤君こそ、試しの一手うってこないでよ~」
そういえば、今、佐偽が示した一手は相手がどううってくるか試している一手。
「へへ~ん。相手がどううってくるか試すのも別にいいだろ?」
「そこ!静かにしなさい!まだ対局している子もいるんですよっ!」
「う。は~い」
「ごめんなさい」
二度めの注意をうけておもわずしゅん、となってしまう。
そんな中、どうやら対局がおわったらしい和谷がヒカルとフクの横にと近づいてくる。
「対局は?どっちがかったんだ?やっぱ進藤か?」
「うん。進藤君に半目勝ちされちゃったよ」
「・・・・・・・・・」
つまりは、一組にあがってきてもこいつまだ半目勝ちを枷にしてるわけ?
そんなことをおもいつつおもわずじと目でヒカルをみる和谷であるが、
「そういえば。和谷はフクによわいんだって?」
「フク…てめぇ……」
それはつまり、福井がヒカルにそのことをばらした、ということ。
それゆえにおもわずじと目でにらむ和谷。
「だってそうだもん」
そんな和谷の視線にしれっとこたえている福井の姿。
「調子にのってるが、次の相手は俺だからな。三連勝はともかく。半目勝ちはストップさせてもらうぜ?」
負けるにしても力をセーブして勝ちをもっていかれたら何だかとても腹がたつ。
せめて半目勝ちの連勝をストップさせるくらいはしてみたい。
「へへ~ん。そうかな?」
「こ、このやろう……」
森下との対局をみているがゆえに油断はならない。
あの先生すらも負けた相手なのだから。

「よっし。今のところ手ごたえよし!」
対局がおわり家にともどり、とりあえずいつものように宿題をかたづけてからのち、
佐偽との対局。
それはもう毎日の日課となっている。
『調子にのってるからいっときますけど。
  和谷によれば来週の一局目の相手は自分なので、半目勝ちはストップしてもらう、とのことですよ?』
言外におそらくヒカルには勝てないかもしれない、というのを含ませていましたけど。
その言葉は表にだすことなく、ヒカルに自分が打つ場所を扇で示しながらも話しかける。
「やってみなくちゃわかんないじゃんか、そんなこと」
『それはそうですけど。そういえば和谷の普通の対局ってまだみたことありませんねぇ』
佐偽との対局はたわいのない会話をしながらでもあるいみ成り立つ。
どちらにしても周囲に気をくばっていなければ佐偽が指示す場所すら見落としてしまう、というのもあるからだが。
あまり集中しすぎれば佐偽の言葉を聞き逃してしまう、というのもある。
佐偽は一手、一手に対して気づいたことがあれば注意をうながしてくる。
それゆえに会話が成り立つこの二人。
「この前の研究会ではあいつうたなかったしな。碁会所では団体戦やってるからみれないし。
  どんな打ち方してくるのか楽しみだよな」
実際に、あのときはヒカルばかりがうち、周囲の人たちが打つのはみれなかった。
全員に全員とも勝ったヒカルもヒカルだが……
平均して二回づつ戦い、一回は佐偽が、一度はヒカルが対局したのは当人たちのみが知る事実。
『何なら和谷の名前をネットでみてみますか?ヒカルは名前をしったんでしょ?』
「そういえば。いるかなぁ?とりあえず、次は佐偽の番だぜ?」
『そうですね。では、そろそろいきましょうか』
ぎくっ。
「よ、よしっ!こいっ!」
思わず身構えるものの、それでも相手が切り込んでくる、といってくるので心構えは一応できる。
盤面上で切り込まれる一手をかろうじてかわしながらも相手に切り込む。
が、しかし、それはきれいにいつものごとくに切り込まれて一刀両断されてしまう。
『ふふふ。楽しみ、ですねぇ』
「…だな……」
本当に俺、力ついてるんだろうか?
佐偽にはいつものごとくにきれいに負けてるしなぁ。
佐偽と打つたびにそんなことを思ってしまうのは仕方がない。


「おはよ~」
「おはよ」
とりあえず初めて顔を合わせたときは昼からでもおはよう、で通すのが院生仲間たちの礼儀らしい。
「そういえば、進藤君。明後日誕生日だって?」
「うん。十三になるんだ」
今日は九月の十八日の金曜日。
「そっかぁ。二十一日から祭日が続くから、月曜日の対局のあと、何かお祝いしてあげようか?」
今年は暦の上では四連休。
国民の休日や敬老の日、秋分の日と日曜日がかさなり珍しく連休となっている。
「ほんとう!?奈瀬!?」
「火曜日は試験があるから無理、だけどね」
ぱっと瞳を輝かすヒカルの姿をみて苦笑しながらもとりあえずいっておく。
今はまだ試験まっただ中。
それでもヒカルをそのような場に誘うのは気分転換をかねている。
「あ~あ。僕もう二敗~。今年はやっぱり初めてだしだめかなぁ?」
横ではなにやら泣きごとをいっている福井の姿が目にはいるが。
「おはよ。進藤。なあ、進藤。簡単、だよな。ネット碁なんて」
「え?あ、うん。まあ、どうかしたの?」
見れば横のほうで会話している和谷がいきなり声をかけてくる。
「ほら、こいつだってパソコンできるんだから、簡単だって」
「和谷~、この俺でも、ってどういう意味だよ!?」
「まんま。それより何の話?」
「あ、進藤君。おはよ。和谷にさ、いとこがパソコンをくれるとかいうからネット碁のことをきいてたんだ」
一組の一人らしき男性がそんなことをヒカルにといってくる。
「そういえば、機種は何?」
「そんなの知らないよ。とにかく従兄に使い方をおそわったら使い方、おしえてくれよな」
「ま、いいよ。そうしたら家でも対局できるし、な。そういや、進藤君もやってるの?ネット碁」
「こいつはやってるみたいだぜ?パソコンつかえるようにはみえないけど」
「わるかったな。みえなくて。え、えっと。今は父さんからパソコンもらったからいつでもできるけど。
  前はネットカフェでやってたんだ。学校の友達のお姉さんがネットカフェに努めてて代金融通してくれてたから」
和谷の言葉にひとまず突っ込みをいれつつも、問いかけられた疑問にひとまず答える。
どうやら話をしているのも一組の一人らしい、というのはわかるが。
ヒカルはまだ彼の名前を知らない。
「なあ、ネット碁って強い人いる?」
「そこそこいるよ。十分勉強になるぜ?ときどきプロも交じってるしな」
「へぇ。一般の中に?」
「おふざけでときどきやるんだよ。といっても本名ださないから気付かれないけど」
「へえ」
たしかに、ネットの中は闇。
だからこそ佐偽にも打たせてやれるんだし。
和谷の言葉にしみじみと改めて納得しつつもかるくうなづくヒカルであるが。
「ところが、一度本名をみかけてさ、アマがプロの名前を語ってるだけとおもって対局してみたんだ」
「それで?」
和谷の言葉に興味を抱いたのはヒカルだけではなく、話をしていたもう一人の少年も同じらしい。
「簡単にのされた」
「あはは。誰?それ?」
「一柳先生。あとで確かめたらやっぱり本人だった。ネット碁の中でIchiryuといえば有名なんだってさ」
「あ、それは俺も対局したことがある。というか初めて使い方おそわったときに教えてくれた人だもん。その人」
嘘ではない、嘘では。
それからいく度か名前をみかけては対局を申し込んだことはあったりするが。
「へぇ。お前も一柳先生とやったのか?」
「え~と。何とか杯とかいうのをともだちと見にいったときに、ネット碁のことを教わってさ。
  そのときに和谷が何かチャットで叫んでたのもみたよ?たしか。
  テメェ、オオイシトラレタカラッテカッテニキルナ!バカヤロウ!とかいってたやつ。
  それでネット碁を教えてたお兄さんが子供かも、といって興味もって覚える気になったんだしさ~」
「あ~、あれか。というかお前もあれ、みてたんだ。あの相手ってそ~いう場所からやってたのか」
あの一局はけっこう覚えがある。
下手なところにうってきてごっそりととったらいきなり回線をきってきたのだから。
「へぇ、有名なんだ。おもしろそうだな」
確かに、現実では無理なプロとの対局はかなりの魅力。
自分の実力がどこまでなのか試せるいい場でもある、ということなのだから。
「ところが!中にはプロより強いやつもいるんだぜ?」
「え?そんなヤツがいるのか?」
「ああ。対局が殺到しまくってるからなかなか手合いできないけどさ。時間限定でしかいないけど」
「そんなヤツまでいるのか?名前は?」
「名前?sai」
やっぱし。
そんな二人の会話をききつつもある意味納得して横にいる佐偽にちらりと視線をうつすヒカル。
『そういえば確かに最近はあまりネット碁やるにしても一時間とすこし、ですしねぇ』
そのかわり、お前は早打ちで百人切りしまくってるけどな。
事実、最近佐偽は早打ちですべて中押し手前などで勝っている。
「そんなにつよいのか?そいつ」
「もう強いの何の。何しろ韓国のプロさえ負けたっていうんだぜ?」
「え?韓国にもプロなんてあるの?」
おもわず和谷の言葉に突っ込みをいれてしまう。
そんなことは今まで知らなかった。
というかヒカルが無知すぎる、のであるが。
「進藤。お前そんなこともしらないのか?」
「しょうがないだろ。しらないんだから。でもそうなの?」
佐偽。
そんなやつ、相手にいたっけ?
『さあ?たしかにそこそこ力があるハコの中身の相手はいるにはいましたけど、そこまでは……』
どこまでがプロの棋力なのか佐偽はわからない。
そもそも佐偽自身が突起しているのだからそれも仕方ないのかもしれないが。
「すげえつよいんだぜ。韓国やら中国の棋院のプロもまけた、っていうし。
  俺が知る限り負けなし。お願いすれば指導碁も可能らしいけど。対局待ちが多すぎてなかなかつながらないんだよな」
「でも、そんなに強いやつってどこかのプロか何か?」
「佐偽はプロじゃないよ?」
思わず二人の会話に口をだしてしまう。
現代のプロというよりは江戸時代のプロみたいなものだけど。
その言葉はどうにかひとまずのみこむヒカル。
「何だ。進藤君もそのsaiって人、しってるのか」
「え、あ、まあ」
「こいつが実力つけてるのきっとそのsaiとネットで碁をうってるからだぜ?きっと」
『本や箱の中で、でなくて現実で、ですけどねぇ。ですけど和谷ってあるいみ鋭いですよね』
「しかし、本当に面白そうだな。パソコンが使えるようになったら和谷ともうとうぜ。
  そういや、和谷の名前は何ではいってるんだ?」
「俺?俺はzalda。そういや、進藤、お前は?」
「え?俺?俺はlaito」
その名前には覚えがある。
あのとき、大会で塔矢明と会話をしていた相手。
やっぱり塔矢明がいってたのはこいつのことか。
今さらながらに納得する。
「そういえば、お前、saiがだれかしってるんじゃないのか?そもそもよく話すみたいだし?」
「え?え~と…気のせいだよ、気のせい」
「オレ的にこの前、お前からきいた会話から導き出したのはお前は実はsaiの弟子で、
  お前がかわりにネットを代行してやってたりとかともおもったんだが?」
ぎくっ。
『ヒカル。和谷ってほんと~に鋭いですね』
事実、佐偽が実際にできないのでヒカルが指示をうけてやっている。
「saiに碁を教わってるとしたら、お前にプロの師匠がいない、というのもうなづける。
  門下生に入る気がない、というのも。その強さもな。どうなんだ?進藤?」
「え、えっと。saiは頼まれればだれでも指導碁はうってくれるよ?よくsaiは他にも指導碁はうってるもん」
今ほどsaiが他にも指導碁を一時しまくっていたのをありがたい、とおもったことはない。
「そ、それよりさ。碁盤、ださなくていいの?準備まだみたいだし」
「それもそうだな。和谷。パソコン使い方覚えたら対局しような」
「おう」
たしかにヒカルの言うとおり。
このまま話していても時間がないのも事実。
何か話しをうやむやにされた感は否めないがとりあえずそれぞれに碁盤を準備し対局の準備を始める彼ら達。
金曜日は学校も六時間のところもおおいいがゆえに午後の部の対局はたったの一局。
それでも五時から六時まで。
それゆえにどうしても学校によっては早退してこなければ間に合わない。
「はい。それでは時間です」
準備が整ったとほぼ同時。
篠田師範より開始の合図。
「よっし。おねがいします」
「進藤!絶対に半目勝ちにはさせないからなっ!」
「ふふ~ん。そうはいくかっ!」
何しろその目標が達せられなかったら家で佐偽からどのように延々と検討がなされるとも限らない。
だからといって負けたくはない。
勝つ気持ちでやっていく。
おそらく目の前の相手にかてればあの塔矢明にすら勝てるような気がするから…
それぞれの思いをいだきつつ、本日の対局は幕をあけてゆく。


「ふん。二組…か」
九月の試験でうかったのは自分ともう一人。
だけども目指すは来年のプロ試験。
それには一組に勝ちあがる必要がある。
「今回はいってきた子もあの子みたいにはやいのかなぁ?」
「さあ?」
何やらそんな会話もきこえてくるが。
あの子、というのがよくわからない。
「そういえばさ。あの子、もう一組にはいったらしいよ?」
「というか、今までずっと半目勝ちじゃない?このままだとすぐに上位にいくよね」
そんな会話が聞こえてくる。
「やっぱり、あの塔矢明のライバルって噂本当なのかな?」
「かなぁ?」
むっ。
塔矢明の名前は彼とてきいたことがある。
だからこそおもわずむっとしてしまう。
「越智君?」
「何でもないです」
新人の自分よりもどうやら別の誰かの話題でもちきり、らしい。
それがどうしても気に食わない。
「そういえば、越智君の前、前回の院生試験でも一人ほどはいってるんだよ。
  その子はもう一組にいったけどね」
つまりそれは、一か月たらずで一組に勝ちあがった、ということ。
「康介!その子にまけるなよっ!」
「わかってるよ。お爺ちゃん」
彼が一緒にきたのは彼の祖父。
「越智君には来月からきてもらうようになります。そして……」
何やら説明がなされているが、そんなことはどうでもいい。
気になるのはあの塔矢明のライバルとかいわれている相手のこと。
それゆえに噂話をしている院生のほうにとつかつかとあるいてゆくメガネをかけ、キノコのような髪型をしている少年。
越智康介の姿がしばし見受けられてゆく。


「って、塔矢?」
なぜここに塔矢がいるんだろう?
「あ、進藤」
どうやら周囲のざわめきはいっさい気にしていないらしい。
今日の手合いがおわり、片づけをしているそんな中。
なぜかきょろきょろと手合いの間にはいってきた一人のおかっぱの少年。
その容姿ははっきりいってかなりめだつ。
きょろきょろと周囲を見渡しているその姿に気づいてふと声をだすヒカルに気づき、近づいてくるアキラの姿。
ざわ。
未だにのこっていた一組の生徒たちがその姿をみて一瞬ざわめいているが。
今年の試験をうけているもので塔矢明の姿を知らないものはいない。
そもそも一組のほとんどのメンバーがプロ試験予選はうけている。
それゆえに彼のことを知らないものはまずいない。
「どうしたんだよ。こんなところに」
「うん。ちょっとね。用事があったから。今から暇?」
「はやくかえらないと遅くなるし」
たしかにすでに時刻は六時をまわっている。
季節は九月なので六時をまわればけっこう外が暗くなるのはかなり早い。
「それがさ。君、この二十日で誕生日だろ?母がぜひともお祝いしたい、とかいってるんだよ」
「そうなの?おばさんが?でもいいのかなぁ?」
「母いわく、僕に友達ができたのが始めてだからとかいうんだけどさ~」
え~と。
何をなごやかに会話をしているのだろうか?
その場にいる誰もがそんなことをおもってしまう。
「そういや、お前、あんまり友達いなかったんだっけ?」
「父の門下生にはいるけどね」
「それ、普通の友達とはちょっとちがうんじゃあ?」
ヒカルの素朴な疑問は何のその。
「そうかな?君ともにたようなものだとおもうけど?それより、この前のトランプゲームとかいうのおもしろかったよね」
あの日、始めてアキラは普通のゲームというものをやった。
といっても母親をまじえてのババヌキではあったが。
「おまえさ~。あ、そうだ!きこうとおもってたんだけど、お前、試験初日やすんだんだって?
  まさか、おれが泊まりにいったあの日が試験だったんじゃないのか!?
  お前、用事があったけどことわったとかいってたけど!」
「何のことかな~?」
「って、目をそらすな!やっぱそうなんだな!」
何やらそんな言い合いをはじめているヒカルとアキラ。
「あ~。進藤君。それに塔矢君。二人とも。こんなところで立ち話してないで。
  話があるなら外でおねがいするね。みんなが唖然としてるから」
たしかにふとみればその場にいた全員が唖然としたように二人をみているのがみてとれる。
「あ、すいません。篠田さん。進藤、もうかえれるの?」
「あとは帰るだけだけど、何で?」
「母と一緒にきてるんだけど、一緒にかえらないかい?」
「え?おばさんもきてるの?」
「うん」
「う~ん。じゃ、お言葉にあまえる、かな?あ、和谷!今日はありがとな!」
「あれ?君は確か……」
たしかプロ試験本線にきている子供である。
それゆえに一応覚えているアキラ。
「それじゃ、篠田先生、失礼しま~す」
「はい。気をつけて」
わざわざまさかあの塔矢君が顔をだしてくるとはおもわなかった。
つまりは明君があの子をライバルとして友達として認識している、という証拠でもある。
帰り支度を始めて何やら言い合いをしながらもその場を立ち去る二人を見送りつつも、
「はいはい。君たちもはやく片づけてね。あまりおそくなったら真っ暗になっちゃうからね」
一応、今の時期は平日の場合は保護者が迎えにくるのが常識となっている。
遅くなったらなったでこのご時世、何がおこるかわからない。
それゆえの棋院の判断。
何やら塔矢明と会話をしていた進藤光の影響でざわめくその場の生徒たちにと片づけを促す篠田。
彼らの気持ちはわかる。
痛いほど。
しかし、おそらくあの進藤君…無自覚…なんだろうねぇ。
それがわかるがゆえに溜息をつかさざるを得ない。
「なあ、進藤って……」
「あいつ、たぶん、塔矢明の存在の意味…わかってないんじゃないのか?」
この場に彼がいても別に何ともおもっていないようなあの口ぶり。
かなりきになるのは試験初日云々のところもきになるが。
「というか。やっぱり塔矢君と進藤君って仲、いいんだね」
「まあ、あいつは塔矢明と同い年、らしいしな」
動揺をおしころして何とか声をだしている飯島とは対照的に、
「…な、なんなんだ?あいつ……」
あの塔矢明と仲好さそうに。
たかが二組からあがってきたばかりの院生だ、というのに。
「ふふ~ん。真柴。だからいっただろ?あいつは塔矢明のライバルだって」
一人、何やらその光景に衝撃をうけてたたずんでいる真柴の姿をすばやくとらえ、
とどめとばかりにいっている和谷。
「そ、そんなはずあるかっ!ただの友達だろ!ふんっ!」
あの塔矢明ほどの棋力をもった子供が他にいるはずがない。
それゆえの強がり。
だがしかし、一抹の不安を感じたのもまた事実。
何しろ塔矢明はプロ試験において初日の不戦敗以外はすべて連勝しているのだから。

「それはそうと!塔矢!やっぱし三十日が試験初日だったんだろ?」
「大丈夫。一敗くらい何ともないから」
「そういう問題じゃないっ!」
「ふふ。明さんは進藤君と一緒のほうが楽しいから、とそっちのほうをとったんですよ。
  進藤君がうちに泊まりにこれる日って限られますしね」
「おばさ~ん、なんでわかっててとめなかったんですか~?」
車に乗り込み、言い合いの続きをしているヒカルとアキラ。
ちなみに、明子が運転し、ヒカルたちは後部席にと乗っている。
「あら?きくような子ではありませんわよ?明さんは行洋さんににて頑固、ですから」
ころころころ。
笑いながらそういいつつ、
「ねえ?そうおもいませんか?」
視線をバックミラーにおいて佐偽にと向けて問いかける。
『まあ、いいだしたらきかないのはヒカルも同じですからねぇ~』
それはお前もだろうが!
おもわずそんな佐偽のつぶやきに心の中でつっこみをいれてしまうのは仕方がない。
「でもさ。今まで対局したけど、こう何か手ごたえがなさすぎるのも事実なんだよ?
  何ならこれまでの大局の局面、みてみる?」
「え?いいの?あ、でも遅くなったらお母さんが心配するかな?」
「進藤君。何やら携帯で連絡すれば?はい。これ」
たしかに今日は金曜日。
それゆえに多少遅くなっても明日は学校はお休み。
それゆえにヒカル的には問題はないが、アキラのほうは一応試験がある。
「あ、すいません。じゃ、お言葉にあまえて」
試験の局面にはかなり興味がある。
それゆえに手渡された携帯電話をうけとり電話を家にとかける。
ヒカルの母の美津子はといえば、ヒカルが塔矢家にいくのをどちらかといえば大変に歓迎しているところがある。
何よりもあのヒカルが多少なりとも礼儀作法をまなんでくるのである。
これ以上の申し出はない。
「ヒカル。でもあまり御家族のみなさんに迷惑かけないようにするのよ?」
「は~い」
いつものごとくにいともあっさりと許可がでる。
それは相手の家がしっかりしている、とわかっているがゆえ。
ブロロロ……
車の中でそんな会話をかわしつつ、ヒカルとアキラをのせた明子の車は塔矢邸にとむかってゆく。
すでに外は暗くなりはじめ、空には星が垣間見えている。
風もだいぶ肌寒くなり秋の気配をかもしだしている。
『しかし、このうごくクルマ、というのものはいくどのっても不思議ですよね~』
佐偽からすればいく度か車にのったことはあるがどうしてもなれない。
そもそも佐偽からすれば牛車や籠が主体であった。
それゆえにどうしてもとまどわずにはいられない。
「身をのりだしたらあぶないですよ?」
「?お母さん?僕達別にのりだしてませんけど?」
たしかに窓はあけている。
いるにはいるが…
佐偽!おまえ心臓にわるいから乗り出すなぁぁ!!
ふとみれば、佐偽が何やら窓かに身を乗り出しているのが見て取れる。
「?進藤君?」
何やらはためからしてみれば、何もない空間にいきなり手を伸ばして何かをひっばるような動作をしているのが見て取れる。
『ええ?ヒカル、ひっぱらないでください~~!』
というか、子供でものりだしたりしないぞ!おまえはぁぁ!
「明さん。それより」
「え?あ、はい」
母に話しかけられてヒカルから視線を移す。
今のうち。
とばかりにもがく佐偽をどうにか窓からひきかばし、あわてて窓をしめるヒカルの姿。
こういうときは機転がきく明子にものすごく感謝せざるを得ない。
やはり自分にしか視えないはずの佐偽の姿が視える人、というのはかなり何かあったときに心強い存在となる。
「あまり進藤君をひきとめないのよ?」
「わかってます」
「…ふぅっ」
『ぷうっ。どうして景色がうごくのかきになってのぞいてたのに~……』
窓から身を乗り出していた佐偽をどうにかおしもどし、ひといきつくヒカルとは対照的に、
何やらものすっごく残念そうにいっている佐偽。
「おまえなぁ。いくら何でも。問題ないかもしんないけど心臓にわるいって」
おもわずぽそっといってしまうヒカルの気持ちは…至極当然、といえるであろう。
確かに佐偽はすでに肉体をもっていない。
対向車などがきたり何か障害物などがあったとしてもその体をすりぬける。
とはいえ視えているものからすればたまったものではないのも事実。
こいつ、絶対に子供より目がはなせないかも……
ヒカルがそう思ったのは…いうまでもない……
その思いはどうやら明子も同じらしく、くすくすと笑いながら運転しているのが見て取れる。
この場において状況を理解していないのは、アキラ、一人のみ。


                                -第32話へー

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あとがきもどき:
薫:みなさんはぜったいにやってはいけません、窓からののりだし。
  手などを出すのももってのほか。
  下手しなくてもおおごとになりますからねぇ(汗
  佐偽は怖さをしらないがゆえに、やりそうだ、とおもってこのエピソードをいれてみたり(笑
  佐偽ならやる。確実に(まて
  明がいなければ必至に止めようとヒカルもしたでしょうけどね。
  まあ、明子がアキラの目をかわしてくれたのでどうにか阻止(笑
  さてさて、ではでは次回にてv
  次には一色碁にいけるかな?
  では~♪

2008年8月16日(土)某日

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